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コレラ毒素の 免疫アジュバント活性の 作用機序の解明 和歌山県立医科大学 先端医学研究所・生体調節機構研究部 佐々木 泉 改正 恒康

コレラ毒素の 免疫アジュバント活性の 作用機序の …...2019/02/18  · コレラ毒素(Cholera toxin)は、 コレラの病因物質であるばかりでなく、

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Page 1: コレラ毒素の 免疫アジュバント活性の 作用機序の …...2019/02/18  · コレラ毒素(Cholera toxin)は、 コレラの病因物質であるばかりでなく、

コレラ毒素の

免疫アジュバント活性の

作用機序の解明

和歌山県立医科大学

先端医学研究所・生体調節機構研究部

佐々木 泉

改正 恒康

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本研究の背景

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免疫アジュバント

病原体センサー

炎症性サイトカイン

(IL-1b,IL-6など)

免疫アジュバント(免疫増強剤)は、

マクロファージや樹状細胞を活性化して、

炎症性サイトカインの産生を誘導し、感染症やがんに対する防御免疫を高める

微生物感染防御応答

抗がん作用

マクロファージ

樹状細胞

炎症反応

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TLR7

TLR9

エンドソーム

TLR3

細胞表面

細胞質

TLR2 TLR6 TLR4 TLR5

RIG-I MDA5

二本鎖

RNA 一本鎖

RNA

CpG

DNA

Mincle

リポタンパク リポ多糖

(LPS) 鞭毛

二本鎖RNA 5’リン酸RNA

結核菌

真菌 尿酸結晶

ATPなど NOD1 NOD2

C型レクチン

NOD様受容体

RIGI様受容体

NLRP3

Toll様受容体

免疫アジュバントとそれを認識するメカニズム

(病原体センサー)がわかってきた

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GM1

細胞内cAMPを増加させ、 下痢を起こす(コレラ)

GM1: ガングリオシドGM1

細胞膜上の糖脂質

Aサブユニット(CTA)

Bサブユニット(CTB)

コレラ毒素

コレラ毒素(Cholera toxin、CT)は、

感染症コレラの病因物質である。

AサブユニットとBサブユニットから構成され、

Bサブユニットは糖脂質GM1と結合し、CTを細胞内に誘導する。Aサブユニットがコレラを引き起こす。

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コレラ毒素(Cholera toxin)は、

コレラの病因物質であるばかりでなく、

免疫アジュバントとしても機能する。

しかし、どのようにして免疫アジュバントとして

機能するのかについてはわかっていない。

T細胞やB細胞を活性化して、免疫アジュバントとしても機能する。 そのメカニズムは?

GM1

細胞内cAMPを増加させ、 下痢を起こす(コレラ)

GM1: ガングリオシドGM1

細胞膜上の糖脂質

Aサブユニット(CTA)

Bサブユニット(CTB)

コレラ毒素

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研究手法・結果

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CTBはマウス由来のマクロファージに作用し

リポ多糖と協調して炎症性サイトカインIL-1bの産生を誘導した

マクロファージ

IL-1b (ng/ml)

リポ多糖 CTB

0 5 24 (時間)

測定 0 2 4 6

腹腔からマクロファージを回収

マクロファージをリポ多糖とCTBで刺激

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カスパーゼ

リポ多糖

活性型

IL-1b

活性型IL-1bの産生には、IL-1b前駆体遺伝子の発現誘導とIL-1b前駆体のタンパク切断が必要である リポ多糖は前者、CTBは後者に関与する

CTB

CTB 1 3 6

リポ多糖 IL

-1b

(n

g/m

l)

0

1

2

3

活性型IL-1b 上清

細胞

(時間)

野生型

マクロファージ

IL-1b前駆体

遺伝子

IL-1b前駆体

IL-1b前駆体

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野生型マクロファージ

カスパーゼ

リポ多糖

CTB

GM1

CTB 1 3 6

リポ多糖 IL

-1b

(n

g/m

l)

0

1

2

3

上清

細胞

(時間)

野生型

マクロファージ

活性型IL-1b

IL-1b前駆体

活性型

IL-1b IL-1b前駆体

遺伝子

IL-1b前駆体

CTBは糖脂質GM1を介して細胞内に侵入する

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CTBは糖脂質GM1を介して細胞内に侵入する

この細胞内侵入がIL-1b産生に必要である

カスパーゼ

リポ多糖

CTB

GM1

CTB 1 3 6

リポ多糖 IL

-1b

(n

g/m

l)

0

1

2

3

上清

細胞

(時間)

野生型

マクロファージ

糖脂質GM1欠損

マクロファージ

1 3 6

活性型

IL-1b IL-1b前駆体

遺伝子

IL-1b前駆体

糖脂質GM1欠損マクロファージ

活性型IL-1b

IL-1b前駆体

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CTB

GM1

活性型IL-1b

リポ多糖

?

カスパーゼ

細胞内に侵入したCTBを認識する病原体センサーは?

IL-1b前駆体

IL-1b前駆体遺伝子

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CTB

GM1

カスパーゼ

NLRP3

ASC ASC

ピリン

結合分子

病原体センサー

インフラマソーム

リポ多糖

?

インフラマソームは、病原体センサーとカスパーゼの複合体である

活性型IL-1b IL-1b前駆体

IL-1b前駆体遺伝子

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0

2

4

6

8

***

0

1

2

3

4

5

**

IL-1

b (

ng

/ml)

6

5

4

3

2

1

0

***

CTBによるIL-1b産生には

病原体センサーNLRP3とピリンが必要である

CTB + リポ多糖

ピリン欠損マクロファージ

NLRP3欠損マクロファージ 野生型マクロファージ

ASC欠損マクロファージ

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CTB

GM1

CTBは、病原体センサーNLRP3とピリンを介してIL-1bを産生する

カスパーゼ

NLRP3

ASC ASC

ピリン

結合分子

病原体センサー

インフラマソーム

リポ多糖

活性型IL-1b IL-1b前駆体

IL-1b前駆体遺伝子

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本研究のまとめ

■CTBはマウス由来のマクロファージに作用し

リポ多糖と協調して炎症性サイトカインIL-1bの産

生を誘導する

■CTBは糖脂質GM1を介して細胞内に侵入する

この細胞内侵入がIL-1bの産生に必要である

■CTBは、病原体センサーNLRP3とピリンを介して

IL-1bの産生を誘導する ■ピリンの新規の活性化機構を示した

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本研究の成果(論文発表)

2019年1月25日、国際誌International Immunology (電子版)に掲載された

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波及効果

病原体センサーNLRP3やピリンを介したIL-1bの産生は、糖尿病や自己炎症性疾患などの病態形成にも関与する。

本研究成果は、CTBの免疫アジュバント活性に基づく新しいワクチンの開発ばかりでなく、糖尿病や自己炎症性疾患の病態解明にも貢献することが期待される。

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謝辞

和歌山県立医科大学

先端医学研究所

生体調節機構研究部

折茂 貴是(博士課程4年) 小笹 俊哉(博士課程1年) 北内 真理子(医学部6年生) 森中 美緒(医学部4年生) 大田 友和

大田(福田)有里

邊見 弘明

和歌山県立医科大学

先端医学研究所

分子医学研究部

片山 圭一

中部大学

生命健康科学部

スポーツ保健医療学科

古川 鋼一