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センター研究1 (2年計画・1年次) 主体的・対話的で深い学びの 実現を目指す授業づくり

センター研究1 (2年計画・1年次) 主体的・対話的 …ckyk/kenkyu/h30/h30gaiyo1.pdfⅡ 冊子作成上の留意点 新たな冊子を作成する上で留意したことは次の3点です。<留意点1>

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センター研究1 (2年計画・1年次)

主体的・対話的で深い学びの

実現を目指す授業づくり

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目 次

Ⅰ 研究の概要

1 研究の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2 研究のねらい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

3 研究の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

Ⅱ 冊子作成上の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

Ⅲ Akitaractive Eyeの概要

1 名称 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

2 対象とコンセプト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

3 構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

Ⅳ Akitaractive Eyeの活用例と意識調査の結果

1 Akitaractive Eyeの活用の仕方 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

2 小学校初任者研修における活用例 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

3 小学校初任者の意識調査の結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

4 中学校初任者研修における活用例 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

5 中学校初任者の意識調査の結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

6 高等学校初任者の意識調査の結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

Ⅴ 今後の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

■ 資料 Akitaractive Eye ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

■ 引用・参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

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Ⅰ 研究の概要

1 研究の背景

秋田県総合教育センターでは,2011年

に若手教員の指導力向上を目指し,秋田

の教師が年齢や校種の壁を乗り越え,大

切に守り育ててきた「授業の基礎・基本」

を,「あきたのそこぢから」(図1)とし

て冊子にまとめ,発行しました。この冊

子は,秋田県の先生方の机上の一冊とし

て大いに活用されることを期待して発行

されたものであり,現在も当センターの

研修で活用されています。

2015年度から2017年度までの3年間,

学習指導要領の改訂を踏まえ,「主体的・

対話的で深い学びを通した課題解決的な

授業モデルの提案」という研究主題の下,

研究協力校における授業実践を通して,

新しい時代の教育への対応について研究

を進めました。その中で,「Akitaractive」

という学びの理念,「Akitaractive学びを

つなげるイメージ図」(図2)などを提案

しました。

「Akitaractive」とは,主体的・対話的で深い学びの実現を目指すためのポイントで

ある「Active Learning」,「Interactive」,「Collaborative」と,秋田の探究型授業を中

心とする今までの優れた授業実践である「Akita Method」を基に考えた造語です。

2 研究のねらい

本研究は,子どもの資質・能力の育成に向けた「主体的・対話的で深い学びの実現を目

指す授業づくり」に資するため,これまでの研究を分かりやすくまとめた新たな冊子を作

成し,個人の授業研究や校内研修等における活用方法を提案することをねらいとします。

3 研究の内容

研究は2年計画で行います。1年目は,冊子の試案を当センター研修講座で活用し,受

講者の意識調査を基に完成を目指します。2年目は,具体的な活用方法を提案します。

図1 あきたのそこぢから

図2 Akitaractive学びをつなげるイメージ図

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Ⅱ 冊子作成上の留意点

新たな冊子を作成する上で留意したことは次の3点です。

<留意点1> アクティブ・ラーナーとしての教師

当センターでは,「受講者自身が主体的・対話的に研修を進められるようなプログラ

ム」,「校内研修のアクティブ化を促進するプログラム」などを通して,アクティブ・ラ

ーニング型研修を推進しています。「子どもたちの資質・能力の育成に向けた主体的・

対話的で深い学びを実現するために,教師はアクティブ・ラーナーであるべきである」

と考え,冊子は教師の主体的な取組を促すものとなるよう留意しました。

<留意点2> 秋田県教員育成指標

教育公務員特例法の一部が改正され,教員としての資質の向上に関する指標及び指標

を踏まえた研修計画の策定が求められました。本県では,2018年3月に「秋田県教員育

成指標」を策定し,マネジメント能力,生徒指導力,教科等指導力について,秋田県の

教員として求められる資質能力を示しました。教科等指導力に関しては,「教科等指導

の基本的な指導力」,「秋田の探究型授業の実践力」,「授業研究・授業改善を推進する実

行力」の三つの資質能力を示しており,冊子はこの三つの資質能力の向上を図ることが

できるよう留意しました。

<留意点3> 秋田の授業実践の継承

本県では,近年の教職員の大量退職・大量採用により,年齢構成や経験年数にアンバ

ランスが生じています。そのため,経験を積んだ教員から若手教員へ「知識や技術など

を伝達すること」,「秋田の先生方が今まで取り組んできた優れた授業実践を継承してい

くこと」が課題となっており,冊子はその解決を図ることに役立つものとなるよう留意

しました。

Ⅲ Akitaractive Eyeの概要

1 名称

新たな冊子の名称を,「Akitaractive Eye(アキタラクティブ・アイ)」としました。

「Akitaractive」は,前述のとおりであり,それに,日々の授業づくりにおいて,個人で

授業研究を推進できるよう授業づくりの視点を押さえたいという願いと,校内研修等にお

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いて,協働で授業研究を推進できるよう

授業を見る目を養いたいという願いを込

め,「Eye」を付け加えました(図3)。

2 対象とコンセプト

冊子の対象は,留意点3「秋田の授業

実践の継承」を踏まえ,初任者を主とし

た若手教員としました。そのため,文章

よりもイメージを優先し,平易な言葉で

表現するようにしました。

また,留意点1「アクティブ・ラーナ

ーとしての教師」と留意点2「秋田県教

員育成指標」を踏まえ,答えではなく考

える視点を示すこととし,若手教員の主

体的な取組を促すようにしました。

授業づくりについては,1単位時間の

授業はもちろんのこと,単元構想,カリ

キュラム・マネジメントまで考えること

ができるようにしました(図4)。

3 構成

Akitaractive Eyeは,見開きにして使用します。

1ページと2ページでは,Akitaractive Eyeの概要が分かるようにしました(図5)。

図3 新たな冊子の名称

Akitaractive Eyeアキタラクティブ アイ

(秋田の探究型授業の継承)

秋田の今までの優れた授業実践

Akita Method

(新しい時代の教育への対応)

主体的・対話的で深い学びActive Learning

Interactive & Collaborative

(個での授業研究・授業改善)

授業づくりの視点

(協働での授業研究・授業改善)

授業を見る目

Akitaractive Eyeの概要(名称)

図4 新たな冊子の対象とコンセプト

対象

初任者を主とした若手教員

文章よりもイメージ優先で

答えではなく考える視点を

1単位時間の授業単元構想カリキュラム・マネジメント

平易な言葉で

Akitaractive Eyeの概要(対象、コンセプト)

図5 Akitaractive Eyeの概要

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3ページと4ページでは,Akitaractive

Eyeの見方を記載しました。左のページに

4コマ漫画の見方(図6),右のページに

授業づくりのポイントの見方などを示して

います。いずれも留意点1「アクティブ・

ラーナーとしての教師」を踏まえ,若手教

員の主体的な取組を促す表現になるよう配

慮しました。

5ページ以降は,2ページで紹介した学

びをつなげるイメージ図にある「何を学ぶ

か」など大切な内容についてテーマを設定

し,説明することにしました。その際,イメージ優先のコンセプトを踏まえ,左のページ

には4コマ漫画で授業改善のイメージを示しました。そして,「平易な言葉」,「答えでは

なく考える視点を」のコンセプトに基づき,右のページにはテーマに迫るための授業づく

りのポイントを4コマ漫画に対応させて示しました(図7)。

図7 「何を学ぶか」についての説明

図6 4コマ漫画の見方

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Ⅳ Akitaractive Eyeの活用例と意識調査の結果

1 Akitaractive Eyeの活用の仕方

Akitaractive Eyeの活用の仕方について

は,研究1年目ということで,各校種各教

科で多様な活用を試みました(図8)。

名称に込めた願いのうち,「主体的・対

話的で深い学び」については,当センター

の研修講座における講義や協議の他,授業

場面を想定した演習を行いました。

「秋田の今までの優れた授業実践」につ

いては,Akitaractive Eyeとの関連を講義

したり,各校の取組を紹介し合ったりしま

した。

「授業づくりの視点」については,Akitaractive Eyeを参考に授業構想を練る演習を行

ったり,自校でAkitaractive Eyeを意識した授業を実践したりしました。

「授業を見る目」については,Akitaractive Eyeを参考に授業分析をしたり,指導助言

を行ったりしました。

以下に今年度の活用例を述べます。ただし,活用例は全てレイアウト等を変更する前の

Akitaractive Eyeを活用したときのものです。

2 小学校初任者研修における活用例

初任者研修講座(小学校)Ⅶ期では,「授

業研究の実際」というテーマで小学校第4

学年算数「小数の仕組みとその計算」の授

業づくりを考える研修を行いました。最初

に受講者は,Akitaractive Eyeを使用せず

に,指導する上で調べる必要があることや,

単元の中における授業の位置付けなどにつ

いて,自分なりの考えを演習シートに書き

出しながら授業を構想しました(図9)。

全員が授業構想について自分なりの考え

をもった後,Akitaractive Eyeの内容につ

いて講義・演習を行いました。

図8 Akitaractive Eyeの活用の仕方

Akitaractive Eyeアキタラクティブ アイ

秋田の今までの優れた授業実践について

・関連を講義・各校の探究型授業を紹介

主体的・対話的で深い学びについて

・内容を講義・内容の一部を協議の視点・授業場面を想定した演習

授業づくりの視点について

・授業構想・自校で実践

授業を見る目について

・授業分析・指導助言

図9 Akitaractive Eye使用前の構想

初任者研修(小学校) 授業研究の実際 受講者68名

指導する上で、調べる必要があること

単元の中の位置付け

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その際,受講者は,大切だと感じた部分

に線を引いたり,気付いたことを記入した

りしました(図10)。

そして,受講者自身が考えた授業構想,

Akitaractive Eye,他者が考えた授業構想

の三つを照らし合わせながら,授業づくり

をする上で大切にしたい視点についてペア

で協議を行いました(図11)。

協議の報告では,振り返りを重視し,児

童の学びをつなげていこうとする発言が聞

かれました。Akitaractive Eyeを参考に

しながら授業構想を練ることで,受講者

は授業づくりの視点の一つを今までより

深く理解できたようです。

3 小学校初任者の意識調査の結果

Akitaractive Eye使用前後における「不

安に感じているもの」に関する小学校初

任者68名の意識調査の結果(図12)では,

新学習指導要領などについて不安が軽減

されました。自由記述を分析したところ,

「4コマ漫画が授業をイメージしやすい」

など,主に4コマ漫画や授業づくりのポ

イントなどに関する記述に分類できたこ

とから,Akitaractive Eyeの「イメージ

優先」,「平易な言葉」というコンセプト

が効果的であったことが考えられます。

一方,系統性などについて不安に感じ

ると回答した割合が大きくなりました。

自由記述を分析したところ,「小学校の全

教科に拡張していくにはどうしたらよい

か」など,主に具体性や各教科の指導に

関する記述に分類できました。答えではなく考える視点を示したことで,どの教科でも系

統性が大切であることに気付いたことが考えられますが,Akitaractive Eyeの内容を各教

科の具体的指導に生かす活用方法を検討していく必要がありそうです。

図10 Akitaractive Eyeへの書き込み

図12 小学校初任者の意識調査の結果

図11 ペアでの協議

Akitaractive Eye自分の授業構想

他者の授業構想

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4 中学校初任者研修における活用例

Akitaractive Eyeを使用する前のA教諭

とB教諭の提案授業に対する授業分析シー

トでは,貼られる付箋の数が30枚前後であ

り,一つの項目に対して,成果を表す青か,

課題を表す赤のいずれかの付箋しか貼られ

ていませんでした(図13)。

授業分析の後,Akitaractive Eyeの内容

について講義したり,Akitaractive Eyeに

示されている問題解決のプロセスに関連し

て「浮力を利用して重い石を船で運ぶ方法」

を協働的に見いだす演習を行ったりしまし

た。Ⅴ期ではAkitaractive Eye と「あきた

のそこぢから」を併用した授業分析を行い

ました。

そしてⅥ期では,C教諭の授業DVDを

視聴し,授業分析を行いました(図14)。

C教諭は,第2学年「化学変化と原子・

分子」の単元において,Akitaractive Eye

に示されている「問題解決のプロセス」を

重視し,予想を練り上げることを授業のね

らいとしました。

そして,「気付き」に着目し,生徒の気付

きを基に,予想を4種類に分類して板書し

ました(図15)。さらに,「対話場面」に着目し,同じ予想同士が集まるようグループを再

編成し,予想ごとに根拠を発表させ,予想を練り合う場面を設定しました(図16)。

図13 A教諭とB教諭の提案授業

に対する授業分析シート

初任者研修(中学校)理科 受講者7名

Ⅳb期 初任者研修講座(中学校) 理科

A教諭の授業分析付箋紙29枚

B教諭の授業分析付箋紙35枚

一つの項目に対して青か赤の付箋のいずれか

図14 中学校理科の初任研における活用

初任者研修(中学校)理科 受講者7名

Ⅳb期

・Akitaractive Eyeの内容についての講義・「浮力を利用して重い石を船で運ぶ方法」を協働的に見いだす演習

Ⅴ期

・Akitaractive Eyeと「あきたのそこぢから」を併用した授業分析

Ⅵ期

・C教諭の授業DVD視聴 授業分析

図15 生徒の気付きを基に予想を分類

Ⅵ期にC教諭が提案した授業

第2学年 単元名「化学変化と原子・分子」

初任者研修(中学校)理科 受講者7名

4種類の予想

気付きを生かした授業展開を意識する。

生徒の気付きを基に、予想を4種類に分類

図16 予想を基にグループを再編成

Ⅵ期にC教諭が提案した授業

第2学年 単元名「化学変化と原子・分子」

初任者研修(中学校)理科 受講者7名

同じ予想同士でグループ

予想ごとに根拠を発表して練り合う

多様な見方を生む対話

のために効果的な課題と対話場面を設定する。

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C教諭の提案授業に対する授業分析シー

ト(図17)では,Akitaractive Eye使用前

と比べ,付箋の数が53枚と増えました。ま

た,一つの項目に対して成果(青)と課題

(赤)の付箋紙の両方が貼られるようにな

り,互いに異なる考えを述べ合うことで分

析に深まりも見られました。

これらのことから,授業を見て成果や課

題に気付く力が向上し,受講者全員に授業

を見る目が養われつつあると言えるのでは

ないでしょうか。

Ⅵ期の最後に,Ⅱ期からⅥ期までの理科

の研修をKP法で振り返る演習を行いまし

た。C教諭は「あたらしい」,「きづき」な

どAkitaractive Eyeから1文字ずつとって

プレゼンテーションを発表しました(図18)。

C教諭にとって,Akitaractive Eyeは,子

どもの資質・能力の育成に向けた主体的・

対話的で深い学びの実現を目指し,アクテ

ィブ・ラーナーとして個人で授業研究を推

進していくきっかけとなったようです。

5 中学校初任者の意識調査の結果

Akitaractive Eye使用前後における中学校

初任者47名の意識調査の結果(図19)では,

授業の進め方を除く四つの項目について,不

安が軽減されました。自由記述を分析したと

ころ,「4コマ漫画が分かりやすい」など,

主に4コマ漫画や授業づくりのポイントなど

に関する記述に分類できたことから,小学校

同様,「イメージ優先」,「平易な言葉」とい

うコンセプトが効果的であったことが考えら

れます。

一方,授業の進め方について不安に感じる

と回答した割合が大きくなりました。自由記述を分析したところ,「気付きを手掛かりに

学びを始める方法を知りたい」など,具体性に関する記述に分類できました。答えではな

く考える視点を示したことで,自分の授業の進め方を見直し始めたことも考えられますが,

小学校同様,各教科の具体的指導について検討していく必要がありそうです。

図18 C教諭のKP法による発表

Ⅵ期 C教諭のKP法による研修の振り返り

あ き た ら く て い ぶ Eye

Akitaractive Eye を意識した振り返り

Akitaractive Eyeがアクティブ・ラーナーとして個人で授業研究を推進していくきっかけ

初任者研修(中学校)理科 受講者7名

図17 C教諭の提案授業に対する授業分析

初任者研修(中学校)理科 受講者7名

C教諭の提案授業に対する授業分析シート

授業を見る目

一つの項目に対して青と赤の付箋紙

気付く力

付箋紙53枚

図19 中学校初任者の意識調査の結果

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6 高等学校初任者の意識調査の結果

高等学校初任者14名のAkitaractive Eye使用前後における意識調査の結果(図20)では,

新学習指導要領への対応や授業の進め方について,わずかに変容が見られました。

自由記述を見ると,「大事なことが目に

入りやすい」,「授業のポイントが把握し

やすい」など,Akitaractive Eyeの見や

すさに関する記述があり,高等学校にお

いても「イメージ優先」のコンセプトは

効果がありそうです。

一方,「具体的な事例が欲しい」などの

記述があり,Akitaractive Eyeの内容を

各教科の具体的指導に生かす活用方法を

検討していく必要がありそうです。

Ⅴ 今後の方向性

今年度の小・中・高等学校初任者の意識調査と,研修の様子を観察した結果を踏まえ,

Akitaractive Eyeの内容,表現,レイアウトなどを精査し,完成を目指します。

また,Akitaractive Eyeを引き続き研修講座で活用し,次年度の受講者の変容を把握し

ながら期待される効果を明らかにするとともに,各校種から要望があった「指導の具体」

を意識した有効な活用方法を探っていきたいと考えています。

図20 高等学校初任者の意識調査の結果

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資料 Akitaractive Eye

よりよい学校教育を目指して

子どもたちの資質・能力の育成のために,主体的・対話的で深い学びの視点をもって授業改善

を積み重ねていくことが求められています。

秋田県の授業実践が今後も発展していくためには,次世代に継承されることに加え,教員一人

一人が研究の視点をもって授業に取り組むことが必要であると考えます。

秋田県総合教育センターでは,これまでの研究から,授業をよりよくしていくためのポイントを

まとめ,“Akitaractive Eye” と名付けた冊子を発行しました。本冊子が授業づくりや校内研修で活用をされることで,「このポイントを意識して取り組ん

でみよう」という向上心をもってもらい,主体的な実践につながることを期待しています。

秋田の探究型授業の継承と発展~新学習指導要領への円滑な移行に向けて~

<Akitaractiveの概念図>

~主体的・対話的で深い学びのために~

学習指導要領の改訂を受け,秋田の優れた学校教育の実践を継承し,更なる発展を目指す。

Akita Method

interactive collaborative

Akitaractive

Akita Method(Activelearningの視点からの授業づくり)「見通しをもつ」「自分の考えをもつ」「ペア・グループ・学級で話し合う」「学習内容や学習方法を振り返る」という基本プロセスを理解します。各段階を機能させ,プロセスとして関連付けた授業づくりを目指します。

collaborative(協働的)机の配置や課題設定,話

し合う場の工夫,子どもの思考をつなげる教師のコーディネートなど,必要感のある協働の場を構築するための手立てを常に意識しながら授業を構想していきます。

<Akitaractive>固定された単一的な「手法」より,授業における「理念」の理解が重要です。今まで秋田県で

培ってきた秋田の探究型授業のよいところを継承し,自ら発展させていく。そのためには,型の理解と習得だけでなく,理念を理解し,型から抜け出すといったいくつかの段階が必要です。

interactive(対話的)ペアやグループでの対

話,問題との対話,これまでの学びとの対話等,対話を通して自他の考えを言葉に表したり,図等で可視化したりして伝え合う場面を設定します。対話的な学習が子どもの思考を広げ,深めていきます。

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Akitaractive~Akita method + active learning, interactive, collaborative~

~主体的・対話的で深い学びのために~

<Akitaractive 学びをつなげるイメージ図>子どもの姿(思考)から深い学びを目指して授業構想,単元構想の際に参考になるように作ら

れたものです。「学びの出発」「学びの再思考」「学びの獲得と新たな学びの創出」は,子どもの問いや発見等

によって連続しており,授業,単元や題材,年間を通してあるいは子どもたちの人生において,身に付けた教科等特有の見方・考え方が子どもたちの中で成長していくイメージを表しています。

AkitaractiveCheck Sheetによる省察

Akitaractive 学びをつなげるイメージ図 子どもの姿(思考)から深い学びを目指す

教科特有の見方・考え方の広がり深まりは,探究心の芽ばえとなり,新たな“問い”を生む。連続する学びは生きる力へ。学びの獲得と新たな学びを創出する。

アキタラクティブ

これまでの学びを振り返り,学びの中での気付きを手掛かりに,学びが始まる。

何を学ぶか

Akitaractiveを基に授業構想

何ができるようになるか

「友達の考えを使ったらできた」「次はこんなことを試したい」「あの場合はどうなるのだろう」

「このことは知っているよ」「こうなるはずが,なぜこうなるのだろう」

学びの再思考

学びの獲得と新たな学びの創出

進化→深化

進化→深化

互いの考えを伝え合い,相手の考えを受け止め,自分の考えを練り直す。一人の学びは,さらに大きな学

びへ広がり,他者との関わりを通して 「学び」の再思考が新たな価値を創造する。試して失敗→もう一度探し直す→

選び直す→再び試す→

どのように学ぶか

「こんな考えもあるんだ」「こうなるかもしれないよ」

探し直す・選び直す再び試す

学びの出発

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Akitaractive Eye の活用に向けて

本冊子は,以下の三つのポイントを押さえ,優れた教育実践につなげるための資料としての活用を目指して作成しています。① 育成を目指す資質・能力の明確化② 「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の推進③ 各学校におけるカリキュラム・マネジメントの推進

~主体的・対話的で深い学びのために~

この見開きのタイトルです。 見開きの内容を要約したものです。何にどう取り組むべきかを簡潔に示しています。

左側の漫画「例えばこんな授業を」と,右側の「こうしてみませんか?」は,いずれも授業実践例を紹介したものです。秋田県教員育成指標を意識しながら授業改善を積み重ね,右側の授業へ少しずつ挑戦していきましょう。上司,同僚,同期から必要に応じてアドバイスをもらい,挑戦する気持ちをもち

たいものです。また,実践を記録する等して,教材等についての研究を深めていきましょう。

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“Akitaractive Eye”は授業改善の視点を提供します。授業には「この手順で,この通りにやれば誰にでも当てはまる」といった正解は存

在しません。仮に,似たような状況の子どもたちに,同じ教科の同じ単元や題材で,同じ手立てを講じたとしても結果は同じものにはならないものです。だからこそ,目の前の子どもたちの実態をよく理解して,柔軟に軌道修正をすることが必要です。多くの先生方にとって,“Akitaractive Eye”が一つのきっかけとなり,授業改善

の役に立てたら幸いです。

ここにあるポイントは,秋田県の教育実践を基に本研究を通して見いだされたものです。授業をよりよくしていくためのポイントを,4コマ

漫画に対応させて紹介しています。

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これまでの学びを振り返り,学びの中での気付きを手掛かりに新たな学びが始まる。

何を学ぶか 学びの出発

例えばこんな授業を こうしてみませんか?

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◇資質・能力を焦点化する ◇入念な教材研究をする

目指す子どもの姿を明確にし,これまでの学びや実生活で学んだことを子どもたちから引き出して,興味・関心,好奇心や向上心をくすぐるような内容の精選をしましょう。

わくわく授業をするために

◇適宜,振り返る場面を設定する ◇課題づくりの場を設定する

これまでの学習を振り返ることから生まれる「あれっ」「そうか」という気付きや,「だったら」「もしかしたら」という問いから,本時の授業が始まります。子どもたちの課題意識を高め,引き出し,学びを出発させましょう。

◇教科等の特質を踏まえる ◇子どもの声に耳を傾け受け止める

教科等の特質を踏まえながら,子どもの反応を予想し,思考をつなげて授業の舵取りをしていきましょう。これまでの学びとこれからの学びをつなげることで,学ぶ意義の自覚が促されま

す。

~主体的・対話的で深い学びのために~ vol.01

学びをつなげるために2 3

新たな学びを出発させるために4

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互いの考えを伝え合い,相手の考えを受け止め,自分の考えを練り直す。

学びの再思考どのように学ぶか

例えばこんな授業を こうしてみませんか?

Page 19: センター研究1 (2年計画・1年次) 主体的・対話的 …ckyk/kenkyu/h30/h30gaiyo1.pdfⅡ 冊子作成上の留意点 新たな冊子を作成する上で留意したことは次の3点です。<留意点1>

◇子どもの試行錯誤を大切にする ◇獲得した学びをまとめる場を設定する

じっくり思考する時間を保障し,考えた足跡を振り返ることにより,子どもが「どうして間違ったのか」「どう考えたら分かったのか」等について自分の言葉でまとめ,表現できるように促しましょう。

◇子どもの思考の流れに沿って展開する ◇想定外の反応にも柔軟に対応する

事前に想定した反応と異なっても,実際の授業で対話から生まれたつぶやきや発言を取り上げながら,児童生徒にとってストーリー性のある授業展開にしましょう。

◇学習活動を吟味する ◇効果的な学習支援を考える

ねらいに迫るための必然性のある対話場面や,場面に応じて必要な支援を具体化し,ねらいを達成できるように授業の創意工夫を心掛けましょう。

◇これまでの学習を踏まえる ◇多様な展開を考える

子どもが相違点や共通点に目を向けたり,互いの意見について比較や検討をしたりすることを通して,一人一人の見方・考え方が働くように授業を展開させましょう。

問題解決における一連のプロセスを重視するために

気付きを生かした展開にするために

「見方・考え方」が働くようにするために

~主体的・対話的で深い学びのために~ vol.02

ねらいに迫る授業をするために1

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連続する学びは力へ。新たな学びの獲得と新たな学びを創出する。

何ができるようになるか学びの獲得と新たな学びの創出

例えばこんな授業を こうしてみませんか?

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◇子どもの変容を取り上げる ◇フィードバックして働き掛ける

「分からなかったことが分かるようになる」「問いが深化している」等の子どもの変容を的確に見取り,適切な声掛けをして自覚を促しましょう。

◇学習全体を振り返る場面を設定する ◇新たな学びが連続するようにする

資質・能力の育成を目指し,本時だけでなく,単元や題材の全体を振り返って「どんどん疑問を解決したいな」「次の学習が楽しみだな」等の新たな学びにつながる子どもの姿を大切にしましょう。

~主体的・対話的で深い学びのために~ vol.03

◇学んだことが生かされる場面を設定する ◇本時の振り返りから課題を引き出す

次時だけでなく他教科等や実生活でも「見方・考え方」を更に働かせ,解決する力を高められるようにしましょう。

学びの実感を促すために

◇評価方法を検討する ◇授業プランを修正する

自校で目指す子どもの姿に照らして指導内容を見直し,めあての達成に向けて授業改善をしましょう。

新たな学びを創り出すために

学びを見取るために

活用・発揮を促すために1

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<引用・参考文献>

秋田県教育委員会(2018)『平成30年度秋田県教職員研修体系』

秋田県教育委員会(2018)『平成30年度学校教育の指針』

秋田県総合教育センター(2011)『あきたのそこぢから』

秋田県総合教育センター(2016)『平成27年度研究紀要 47集』

秋田県総合教育センター(2017)『平成28年度研究紀要 48集』

秋田県総合教育センター(2018)『平成29年度研究紀要 49集』

文部科学省(2017)『小学校学習指導要領』東洋館出版社.

文部科学省(2017)『中学校学習指導要領』東山書房.

文部科学省(2017)『小学校学習指導要領解説 総則編』東洋館出版社.

文部科学省(2017)『中学校学習指導要領解説 総則編』東山書房.

文部科学省(2018)『高等学校学習指導要領』

文部科学省(2018)『高等学校学習指導要領解説 総則編』

文部科学省(2017)『平成29年度小・中学校新教育課程説明会(中央説明会)における文部

科学省説明資料』

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センター研究

教科・研究班

主幹(兼)班長 森 山 直 人

主任指導主事 黒 澤 望

加賀谷 英 一

小 玉 和 彦

指 導 主 事 阿 部 智 博

椎 名 美穂子

小松田 哲 也

佐 藤 康 一

藤 谷 寛

部 谷 靖 子

萩 原 亨

田 森 舞

佐 藤 栄 幸

主体的・対話的で深い学びの実現を目指す授業づくり

(2年計画・1年次)