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クラウドの利活用促進のための自立的なネットワーク 形成と新たなビジネスモデルの構築に関する調査等 平成253独立行政法人 情報処理推進機構

クラウドの利活用促進のための自立的なネットワーク 形成と新た … · ユーザ向けクラウド導入ヒント集の作成に向け、方向性の整理を行った。

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Page 1: クラウドの利活用促進のための自立的なネットワーク 形成と新た … · ユーザ向けクラウド導入ヒント集の作成に向け、方向性の整理を行った。

クラウドの利活用促進のための自立的なネットワーク

形成と新たなビジネスモデルの構築に関する調査等

平成25年3月

独立行政法人 情報処理推進機構

Page 2: クラウドの利活用促進のための自立的なネットワーク 形成と新た … · ユーザ向けクラウド導入ヒント集の作成に向け、方向性の整理を行った。

1 事業の概要

2 各地域の取り組み 2-1 北海道地域

2-2 関東地域

2-3 中部地域

2-4 近畿地域

2-5 中国地域

3 各地域の現状

4 地域独自の取り組み・成果など

5 5つの視点から見た現状の課題

6 今後の方向性

7 まとめ

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目 次

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1 事業の概要

我が国経済の発展には、それを支える中小企業の生産性向上や競争力強化が大きな原動力であり、企業活動に大きな影響を与えるIT利活用の重要性は高まっている。今後、中小企業が更なるIT経営の実践促進を図るためには、発展・普及が進むクラウドコンピューティングを背景にしたサービスの効果的な活用が重要なポイントになる。また、ITベンダにおいても、クラウドコンピューティングに適応したサービスへの変革が必要とされる。

本事業においては、中小企業におけるクラウドコンピューティングの利活用促進を軸に、ITベンダとITユーザである中小企業とが協業関係を構築できるよう支援機関を巻き込みながら、自立的なネットワークを形成し、当該ネットワークを通じたIT利活用による新たなビジネスモデルの構築、地域ビジネスの創出を実現することに資することを目的として調査等を実施した。

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地域 取り組み内容 実績

北海道地域 北海道食関連産業クラウド利活用ネットワーク 研究会

4回開催

クラウド導入マッチング会 1回開催

関東地域 関東地域クラウド事業研究会 3回開催

事例調査 22件

中小ユーザITニーズ調査 99件

中部地域 クラウド型EDI普及ビジネスモデル事業化研究会 4回開催

トリプルSaaS事業化研究会 4回開催

IT経営モデルケース調査 10件

ベンダ間連携マッチング 3回開催

ユーザマッチング 2回開催

近畿地域 中小ユーザIT利活用研究会 3回開催

関西クラウド研究会 3回開催

ベンダ連携交流会 1回開催

中国地域 全体会議 2回開催

テーマ別研究会(製造業) 2回開催

テーマ別研究会(サービス) 3回開催

テーマ別研究会(小規模ベンダ) 4回開催

テーマ別研究会(SNS) 4回開催

全国の5地域において、下記4項目を趣旨として、これ

までの地域関係機関等における検討経緯やそれぞれ地域毎に異なる実情、実態を踏まえた調査、研究を実施。

① 中小ITベンダとITユーザ双方にとって有効で持続的かつ自立的なネットワーク形成について

② 事業化に向けた自立型ビジネスモデルの構築について

③ ITコーディネータ等と連携した中小ITベンダ・ITユーザのマッチングについて

④ 地域金融機関と連携したITユーザの発掘とクラウドサービスの活用について

事業の目的

事業の内容

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ネットワークを構築・維持するためのガイドラインとして、そのネットワーク形成の現状と課題、今後の方策等を取りまとめた。 マッチング会開催を通じて、効果的なマッチング手法の整理を行った。 ユーザ向けクラウド導入ヒント集の作成に向け、方向性の整理を行った。

北海道地域は、ユーザとして道内の基幹産業の一つである食関連産業に着目し、中小の食関連企業のIT化促進と中小ITベンダの業態変革を図るために、自立的ネットワークの構築ガイドライン、効果的なマッチングの手法等を検討する「北海道食関連産業クラウド利活用ネットワーク研究会」を開催し、また、ユーザ産業とITベンダとのマッチングを促進するために、モデル的にマッチング会を開催した。

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事業概要

実施体制

成果

2-1 各地域の取り組み 【北海道地域】

ユーザ産業とITベンダとのマッチングを促進するためモデル的に実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

食関連事業者からの導入事例報告 ITベンダによるプレゼンテーション ディスカッション

自立的ネットワークの構築ガイドライン、効果的なマッチングの手法等を検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

食関連産業とITベンダとの効果的・効率的なネットワーク形成の検討 必要なコーディネート機能、方策等の検討 マッチング会開催・準備・結果の分析 クラウド導入ヒント集の方向性の整理

クラウド導入マッチング会

企画・開催 結果

北海道食関連産業クラウド利活用ネットワーク研究会

「クラウド導入ヒント集」の作成を検討 食関連企業向けのIT、クラウド関連の簡単な情報を記載。 導入検討のきっかけになることを期待。

今後は、研究会の委員有志により作成検討を継続。

<タブレット活用シーンのイラストのイメージ>

●●●●●●●●●●●●●●● 77

SAMPLE

■■■■■■■■■■■■■■■ 100

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲ 35

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 30

★★★★★★★★★★★★★★★ 12

品名 在庫数

シンプルな在庫問合せ

製品と原材料の両方必要と思われるの

で表示の際に分類等が必要

複数倉庫、受注残、発注残などの情報

が必要な場合は →で、別画面へ

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活動情報、課題、成果の共有と自律的ネットワーク形成等

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 実態を踏まえた中小ITベンダの成長戦略を検討 ITコーディネータ、支援機関、地域の中小ITベンダ等の連携による地域サポート手法の共有

地域を越えた連携による協業等、ITユーザの課題解決手法の検討等 地域活動事例紹介、ITニーズ調査結果の報告

地域を越えた情報共有によりそれぞれの活動を充実させた。県施策との連携につながった地域もあった。 本事業の参考になる取り組み事例の情報共有を行った。 ⇒今後の取り組みに生かす。 ITニーズ調査により、ユーザのニーズが把握されたとともに、参加した支援機関と専門家の連携推進につながった。

関東地域は、地域の自律的活動の推進をサポートするため、具体的には、中小企業支援機関、専門家組織、情報産業団体などによる地域事情に即した支援について、それがより円滑に進むよう連携をサポートするために、活動情報、課題、成果の共有と自立的ネットワーク形成を目的とした研究会や、参考にすべき活動実施関係者へのヒアリングを行った事例調査、ユーザのITニーズを調べたITニーズ調査を実施した。

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事業概要

実施体制

成果

2-2 各地域の取り組み 【関東地域】

関東地域クラウド事業研究会

企画・実施 事務局が企画・実施

中小ユーザITニーズ調査 中小ユーザのITニーズを調査

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ITベンダが具体的なサービスを提示し、ユーザの反応をヒアリングする「ITベンダマーケティング調査」 (27件)

地域ごとの産業ニーズや今後IT活用が有効と思われるニーズを発掘する「地域ITニーズ調査」(72件)

事例調査 参考にすべき活動実施関係者へのヒアリング

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

参考になる取り組みを展開している地域の関係者(支援機関、ITベンダ、専門家、ユーザ等)に具体的

な歩みと成果についてヒアリングを実施 (22件)

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ITベンダとITコーディネータの協業ビジネスモデル創出を検討

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 地域ITベンダとITコーディネータとの協業体制 顧客獲得に向けたサービスメニュー 収益モデル

中小企業の海外展開に対応したEDIサービスの展開

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

海外現地企業との取引など「中堅中小製造業の海外展開」に注目

そのITサポートに主眼を置いたクラウド型EDIサービス提供可能性

海外展開に対応したクラウド型EDIサービス提供のあり方とビジネス展開を整理し、今後の取り組みフェーズにつなげた。 トリプルSaaSの事業化に向け、連携体制、サービスメニュー、収益モデルに関する企画案を取りまとめた。 マッチングセミナー参加者に各種情報提供を行い、また得られたニーズ等の情報を研究会の検討材料とした。

中部地域は、これまでの地域関係機関等で実施した調査・研究事業から得た成果を踏まえ、地域の実態に応じた中小企業におけるクラウドの利活用促進、自立的なネットワーク形成と新たなビジネスモデルを構築するため、クラウド型EDI の普及ビジネスモデルの事業化に資することを目的とした「クラウド型EDI普及ビジネスモデル事業化研究会」と、ITを活用した中小企業の経営力強化に資することを目的とした「トリプルSaaS事業化研究会」を実施した。

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事業概要

実施体制

成果

クラウド型EDI普及ビジネスモデル 事業化研究会

クラウド型EDIサービス事業化に向けたセミナー ①ユーザー企業向け(1回開催)※SaaSと併催 ② ITベンダ、ITコーディネータ向け(1回開催) SaaS拡充と普及に向けたセミナー ①ユーザー企業向け(2回開催)※1回EDIと併催 ②ITベンダ、ITコーディネータ向け(2回開催)

結果

トリプルSaaS事業化 研究会

マッチングセミナー

2-3 各地域の取り組み 【中部地域】

企画・実施

IT経営モデル ケース調査

クラウド活用モデルケースを調査 (3事例)

結果

IT経営モデル ケース調査

クラウド活用モデルケースを調査 (7事例)

企画・実施 企画・ 開催

企画・ 開催

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新たなSaaSサービスの創出と提供の方策を検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

多様な業種の多くの業務機能の中から典型的ビジネステーマを選定

ITベンダ各社が持つSaaSソリューションやパッケージソリューションを組み合わせる(連携)

新たなSaaSソリューションによる新たなサービスをエンドユーザに提供

関西地域ベンダが連携したSaaS提供ビジネスモデルの検討

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 関西のベンダが保有するSaaSソリューションの調査 集まったSaaSソリューションをもとにSaaSソリューション連携案の検討

検討プロセスの周知と実現課題を明らかにするためのベンダ連携交流会の開催

金融機関と連携したITユーザ発掘・支援スキームを検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

中小企業のIT調達までのプロセスの支援スキームを構築 中小ユーザ企業向けのガイドブックを作成 ガイドブックの利用方法を各金融機関に説明

公的支援機関と連携し支援が必要な企業に無償で専門家を派遣

経営にIT活用が必須であることの気づきを促すための「IT経営ガイド」を作成。 IT化案件の発掘から調達支援までの仕組みの整理を行った。 SaaS連携モデルの実現に向けての課題や解決策について取りまとめ、SaaSソリューションの連携案として4分野を整理した。 交流会を開催し、SaaS連携に向けて、ITベンダの意識高揚を図ることができた。

近畿地域は、地域の金融機関とITコーディネータやITベンダ等が連携してIT案件の発掘から支援、IT投資までのスキーム構築を検討する「中小ユーザIT利活用研究会」と、関西地域におけるITベンダがクラウドビジネスへ参入する際の課題と考えられる「新たなSaaSソリューションの構築」について検討する「関西クラウド研究会」の2つの研究会によって自立可能なビジネスモデルの構築に関する調査を実施した。

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事業概要

実施体制

成果

ベンダ連携交流会

結果

2-4 各地域の取り組み 【近畿地域】

関西クラウド研究会 / WG 中小ユーザIT利活用研究会

金融機関向け説明会を開催 概ね理解できたとの意見が 大勢を占めた。

企画・開催

1.はじめに 2.ITのご相談は「e相談所」へ

「IT経営ガイド」を作成

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組込みシステムのビジネスモデル等を検討

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

スマート家電に代表される「繋がる」ことを前提としたものづくり、組込みシステムに着眼しビジネスモデルや取り組みの注意点などについて考える。

SNSを活用したITベンダの情報発信を検討

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自社や自社製品の情報発信のためのSNS活用のあり方やノウハウを研究、蓄積する。

小規模ベンダのクラウドサービス参入を検討

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

商品開発はできても販路がない、営業に割く人的余裕、資金が少ないという課題を解決すべく協業・連携をキーワードに、クラウドサービス参入について掘り下げる。

ソリューションのベストミックスを検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

科学的・工学的アプローチによる生産性向上の切り口から、サービス企業におけるIT若しくはクラウドの利活用について企業活動全体の中での最適解を掘り下げる。

テーマ別研究会の総括や調整、自立的なネットワーク等を検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自立的なネットワークを形成の用件 テーマ別研究会デモンストレーション テーマ別研究会報告

自立的なネットワークを形成するために必要な用件の整理を行った。

テーマ別研究会の各テーマ毎に、現状の分析や、今後の方向性・あり方等の整理を行い、全体会議において情報共有を行った。

中国地域は、クラウドの利活用による中国地域中小企業をITベンダ等との連携による競争力強化や新ビジネス創出等を図るためのコミュニティである「ちゅうごく地域クラウドビジネス推進ネットワーク」(CCBNET.)のこれまでの活動結果を踏まえ、4つの研究会を設置し、開催するとともに、各々の研究会の総括や調整、自立的なネットワークに向けての検討等を行うための全体会議を開催した。

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事業概要

実施体制

成果

小規模ベンダ向け ビジネスモデル研究会

結果を報告

SNS活用型 ビジネスモデル研究会

総括・調整

製造業向け ビジネスモデル研究会

2-5 各地域の取り組み 【中国地域】

全体会議

サービス産業向け ビジネスモデル研究会

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<北海道地域> 食関連企業のクラウド利活用促進コミュニティ

− 食関連企業とIT企業とのコミュニティは形成されていない

コミュニティ形成のための課題

− 双方の課題を解決し持続的・自立的なネットワーク形成を

自立的ネットワーク形成の考え方

− まず「知り合うこと」が重要、お互いを理解し連携を強化

− 緩やかな連携から始め、徐々にネットワークを強化

<関東地域> 関東地域でのネットワーク

− 他地域の動きを客観的に「見る」ことで地域連携を加速

地域独自のネットワーク形成(4つの事例)

− コミュニティ型:ITベンダ、ITコーディネータ等専門家とユーザ企業のコミュニティ

− 研究会型:製造業ユーザ企業とIT産業界とのマッチングを推進

− ベンダ団体取り組み型:ITベンダが主体となり地域連携を強化

− 定期セミナー開催型:ユーザ企業、支援機関等とITコーディネータとのネットワーク

ITを活用した中小企業の経営基盤強化

− 商工会議所が行うIT経営支援では、Web活用による販促支援に成果

<中部地域> 中小ITベンダとITコーディネータとの連携で課題解決

を検討

− 多くの中小企業ではIT利活用スキルを持つ人材が不足

− ユーザの経営実態を踏まえたIT戦略の提案を行い経営基盤の強化につなげる

− ITベンダとITコーディネータの連携は多重下請構造からの脱却のきっかけ

− クラウドEDIサービスをベースとした海外展開ビジネスも視野

<近畿地域> 地域金融機関と連携したITユーザの発掘を展開

− 中小企業向け「IT経営ガイド」を作成し金融機関に説明配布

− 法人担当者が企業訪問時にガイドで説明しITニーズを発掘

− 中小企業のIT戦略策定には専門家の支援が不可欠

− ユーザのニーズに応じた支援制度等の組み合わせが必要

<中国地域> 自立的なネットワーク形成のための現状の課題

− まずはベンダとユーザの信頼関係を醸成

− 多種多様な業界が集まるネットワークが望ましい

− ユーザのビジネスに有益なサービスを提供できる企業の発掘

取り組みの課題

− 潜在的な顧客ニーズを引き出し形にできる人材の育成

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3 各地域の現状

(1) 中小ITベンダとITユーザ双方にとって有効で持続的かつ自立的なネットワーク形成について

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<関東地域>

一部のITベンダはクラウドサービスに果敢に挑戦

− 多くのベンダは従来型のビジネスにとどまっている

クラウドビジネスは売り上げの上がり方が緩やか

− 一定の月額収入が得られるまで資金繰りの課題がある

若い世代のベンダ経営者には人月ビジネスにこだわらないケースも

− 当初からWeb系・モバイル系ビジネスを指向

採算を取るには「マーケティング」や「売り方」が重要

− ビジネス成功には開発支援よりマーケティング支援が大切

農業分野や位置情報活用ビジネスの分野に期待

<中部地域>

ASEANの製造業でクラウド型EDIのニーズあり

− ASEAN進出企業へのヒアリング調査で、日本品質レベルのEDI、ITサービスのニーズが確認された

ITベンダ、ITユーザ双方に有効なネットワーク形成による自立型ビジネスモデル実現の可能性を探求

− 地域の複数の中小・大手ITベンダやSIer、ITコーディネータ、業界団体等が連携することで、知名度向上、サービスメニューの充実、中小企業の実態に応じたIT戦略の提案を可能にする

− 海外展開も視野に受託開発型からの脱却を目指す

<近畿地域> 複数ベンダ共同でのSaaSソリューション構築を検討

ビジネス化の課題

− ビジネス化の各ステップにおける課題を整理

技術的な課題

− 各ソリューション間の連携におけるDB処理方式の変更、シングルサインオン化の対応が必要

課題解決に向けた方策

− SaaSソリューションの連携開発・提供に向けた勉強会の設置

− SaaSソリューション導入・保守・運用サポート組織の設置

<中国地域> クラウドサービスで成功している事業者事例の研究

− ベンチャー的中小事業者は強みの徹底的な磨き上げとニッチトップを狙うスピード感ある商品・サービスの市場投入が重要

− 受託開発型を主としてきた中小事業者は多重下請構造からの「脱却」ではなく、フロービジネスとストックビジネスの「バランスの適正化」が重要

− 技術やサービスに対して正当な対価を支払って利用したいと考えているユーザは確実に存在するので、そのようなユーザ層にリーチしていくことが重要

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3 各地域の現状

(2) 事業化に向けた自立型ビジネスモデルの構築について

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<北海道地域> 新ビジネスの展開状況

− 新たなビジネスチャンスにつながるような事例は未だ少ない

マッチング会等の必要性

− 新たなネットワークを形成する第一歩として「お互いを知る」きっかけとなるマッチング会は有用

マッチング会等を実施するための視点

− ベンダより支援機関等が主催する方がユーザは参加しやすい

<関東地域> 地域支援機関によるマッチング支援

− 地域の支援機関が仲介役となり企業のIT経営推進とITベン

チャーの育成とを同時に実現し、クラウドサービスとして全国展開を開始

<中部地域> ビジネスモデル実現に向けた連携体制の強化

− SaaS商品拡充のためのITベンダに対する参加要請

− ユーザ企業に対する知名度向上と理解者・利用者の拡大

− 中小企業に対するIT利活用のサポートができるITコーディネータとの連携

<近畿地域> 中小企業向け「IT経営ガイド」を作成し、金融機関法人担当者がユーザ企業を訪問してITニーズを発掘

− 各行で法人担当者にガイド利用方法説明会を開催

− ITが解決の手段になりそうな経営課題を発掘し、専門家によるIT相談につないだ

中小企業のIT戦略策定には専門家の支援が不可欠

− 社内にIT専従者がいない中小企業のため支援体制を整備

公的支援機関との支援連携スキーム構築が必要

− 専門家派遣負担は公的支援制度を紹介するスキームを構築

IT導入の提案依頼(案件情報)を地域ベンダに提供

− ビジネスチャンスを拡大し地域IT市場の活性化につなげる

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3 各地域の現状

(3) ITコーディネータ等と連携した中小ITベンダ・ITユーザのマッチングについて

(4)地域金融機関と連携したITユーザの発掘とクラウドサービスの活用について

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4 地域独自の取り組み・成果など

<北海道地域>

食関連産業とIT産業との連携による事業展開 本事業を契機として食関連業界団体とIT関連業界団体とがイベントを併催

食関連企業向けにIT、クラウド関連の簡単な情報を記載した「クラウド導入ヒント集」作成を検討

− 研究会に参加した委員有志により作成検討を継続。

<関東地域>

新潟「アグリノートプロジェクト」(地域支援機関によるマッチング支援事例) ユーザが求めるITを支援機関が仲介しITベンダが具現化しクラウドサービスとして全国展開を開始

− アグリノートとは田畑を航空写真から確認し農作業を記録できるクラウドサービス。

− 開発に際してユーザの声を聞きプロトタイプを提示して改良を重ねた。

− ユーザの反応や意見を取り入れていくことで現場作業に即した使いやすさを追求できた。

− ビジネスを軌道に乗せるためには全国への販促活動が必要。

<中部地域>

クラウド型EDIサービス提供及び中小ITベンダのビジネスモデル調査

海外展開に対応したクラウド型EDIサービス提供のあり方とビジネス展開

− 「国内クラウドEDIサービス」をベースとした海外進出日系企業対象のサービスが提供可能。

− 国際標準準拠の規格を採用すれば国内外、海外間においても多画面、多端末の回避に有効。

中小ITベンダとITコーディネータの連携によるビジネスモデルの創出

− 多重下請構造が課題の中小ITベンダとITコーディネータが連携体を構築しクラウドサービスを提供したモデル事例を調査。

− 副次的な成果としてモデル事例が地域活性化事業のモデルケースとなる等、クラウド活用が地域貢献にもつながっている。

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4 地域独自の取り組み・成果など

<近畿地域>

様々な支援体制を備えた推進組織の実現に向けた検討

関西地域のITベンダ活性化方策として新たなSaaS等アプリケーション構築の具体化

− 実現には「ビジネス化のための課題」と「技術的な課題」解決の必要性が明らかとなった。

− 課題解決のため、ITベンダや関係機関などが連携し、各分野別勉強会に取り組むことが必要。

様々な支援体制を備えた推進組織の必要性

− ユーザーニーズに応じたSaaSソリューションの開発・提供と、ソリューションの利活用に向けた支援体制を整える。

− SaaS間連携を推進するための組織化の検討を進め地域活性化を推進していくこと。

<中国地域>

先進的なゲスト発表者を招きオブザーバ参加を促進する研究会運営

ゲストとして先進事例発表者を招き、回ごとに別の業態などからブッキング

− 固定委員の議論に厚みを持たせ、より多くのオブザーバ参加者の興味共感を得られるようにした。

− 研究会の組み立てを、技術論に陥ってしまわないよう、個別事例研究によるビジネスモデルの解明に力を入れた。

閉じられた研究会ではなく、興味を持った者のオブザーブ参加を認め委員と同じ場を共有

− ネットワーク会員のオブザーブ参加を促すため、研究会の一部を取り上げてデモンストレーションを実施。

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5 5つの視点から見た現状の課題

(1) IT・クラウド利活用の現状(ベンダ・ユーザそれぞれの進展状況)

IT・クラウドに対する知識が十分でなく、違いや効果が分からない中小ユーザ企業(北海道地域・中部地域)

(IT・クラウド知識に加えてユーザ側の業務や経営マネジメントにも詳しいコーディネータが必要)

クラウドでのSNS活用、BtoCでは成功事例もあるがBtoBはこれから(中国地域)

(2) ITを活用した中小企業の経営基盤強化策の進展状況などについて

中小企業の経営基盤強化策は継続的な支援施策が肝要(関東地域)

動き始めた地域金融機関と連携した取り組み(近畿地域)

(3) 中小企業のクラウド利活用推進のためのコミュニティの活動

ユーザ企業とITベンダがお互いのニーズ、シーズを知りあうことが重要(北海道地域)

(コーディネート機能を担う人材の育成・確保が不可欠)

(4) 受託開発型の多重下請構造からの脱却に係る現状

直接ユーザ企業へ提案するクラウドビジネスが一つの方向(中部地域、中国地域)

(既存ビジネスとのバランスの適正化が重要)

大手のベンダではできていないことを地域の中小ベンダが実現する可能性(中部地域)

(地域に根差した「顔の見えるクラウド」、かゆい所に手が届くサービスの提供)

(5) 新ビジネスの展開状況(ユーザとベンダの協業等)

ユーザとITベンダの相互理解と支援機関・専門家のサポートが重要(北海道地域・中部地域)

マッチングを通じて新たなクラウド商品・サービスを創出(中部地域)

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6 今後の方向性

(1) 中小ITベンダとITユーザ双方にとって有効で持続的かつ自立的なネットワーク形成について

産業団体同士で、まず、お互いが「知り合い、理解し合う」(北海道地域・中国地域)

− 緩やかな連携から始め、SNS等も活用して徐々にネットワークを強化していく

連携のコーディネート機能を担う人材の育成・確保が重要(北海道・関東・近畿・中部・中国各地域)

− ユーザの経営実態を踏まえたIT利活用の提案ができるITコーディネータなど専門家の役割は大きい

支援関係者が他地域の活動を「見て、知り合う」ことでエリア横断的な連携が加速する(関東地域)

− 連携をサポートする支援機関や専門家同士の情報共有がネットワークの拡大を促進する

(2) 事業化に向けた自立型ビジネスモデルの構築について

地域ITベンダ間等でクラウドビジネス拡大に向けた協業の検討が進む(中部地域・近畿地域)

− クラウド商品・サービスの品揃えを始め、開発、導入、運用までのビジネスプラン

地域に根差した「顔の見えるクラウド」の提供(中部地域)

− 地域ITベンダとITコーディネータが連携し中小企業ユーザに「対面サービス」で相談に乗る

クラウドビジネスは「マーケティング」や「売り方」が勝負(関東地域)

− 技術力や企画力などの開発支援よりも地域を越えて売るためのマーケティング面の支援が重要

クラウドビジネスは売上が急速には伸びないため既存事業とのバランスが課題(関東地域・中国地域)

− ITベンダ内部の業容転換、人材育成、資金繰り等の課題への対応が求められる

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6 今後の方向性

(3) ITコーディネータ等と連携した中小ITベンダ・ITユーザのマッチングについて

「お互いを知る」第一歩としてマッチング会開催は有効(北海道地域)

− 支援機関等の第三者的機関が主催するほうがビジネス色が薄まりユーザが参加しやすい

ITベンダとITコーディネータとの協業により中小企業の経営課題を解決するサービスの提供(中部地域)

− 知名度向上、様々なアプローチとユーザへの的確なサービス提供により実績を重ねることが重要

支援機関やITコーディネータにはビジネスコーディネータとしての役割が求められる(関東地域)

− 紹介だけにとどまらず、ユーザニーズを製品開発に展開するような一歩踏み込んだコーディネートが必要

(4) 地域金融機関と連携したITユーザの発掘とクラウドサービスの活用について

地元中小企業の課題やニーズを把握している地域金融機関との連携は有効(近畿地域)

− 課題がITで解決できるかどうか判断できるITコーディネータ等専門家との連携は金融機関にも有意義

ITユーザ向け「IT経営ガイドブック」の活用(近畿地域)

− 金融機関法人営業担当者が企業訪問時にユーザに説明しITニーズを発掘

活動に参加する金融機関の拡大と専門家派遣制度の適用拡大(近畿地域)

− 専門家の派遣を必要とする中小企業のニーズに適応した支援制度との連携スキーム構築が必要

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7 まとめ

(1) 本事業の成果

本事業におけるITベンダやユーザ企業とのマッチングが新たなビジネス機会を創出

業界団体、ユーザ企業やITベンダがネットワークとして機能し、市場形成向けた活動を推進

ビジネスシーズを把握・発見し、対応する地域ごとのビジネスモデル構築の取り組みが進展

(2) ステージ・アップに向けた具体的な取り組み

農業生産者、食品生産者とITベンダとのマッチング事業 − 農商工連携を展開する組織などとの情報共有・連携による、市場発掘や事業化に向けた取り組み展開が効果的。

中小企業との接点が多い金融機関が参加しているネットワーク − 中小企業の課題発見、クラウドによる解決策提案と案件に関わるIT投資融資とを関連づけることでwin-winの関係が構築される。

導入効果が理解される段階のクラウド型EDI事業 − 広く実用化のために、販売士、中小企業診断士など市場接点の強い人材をネットワークに巻き込むことが成果拡大につながる。

(3) 地域における自立的なネットワーク形成

より付加価値の高いサービスを提供できるITベンダが必要

柔軟かつ多様な対応力やコーディネート能力を持った支援機関やITコーディネータが必要

ITベンダとユーザ企業双方がwin-winの状態を醸成させる

ネットワークに、さらに多くの意欲ある多様な有識者、関連団体などの参加を促す

シーズ発見・把握、企画、開発から、さらに進んで事業化、産業化に着実に結びつける

本事業の成果を、今後の各地域における取り組みに生かしていくことが重要