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ヒト遺伝子改変細胞の 簡便迅速作製法の開発と応用
公立大学法人 横浜市立大学
生命ナノシステム科学研究科
先端医科学研究センター
教授 足立 典隆
Construction and application of genetically modified human cell lines
2
新技術の概要
ヒト細胞の遺伝子を高効率で改変できる技術を開発した。この技術は、遺伝子機能解析に有用なだけでなく、さまざまな疾患モデルヒト細胞を利用した創薬や副作用検討など広範囲の適用が期待される。
遺伝子ターゲティング(ジーンターゲティング)
3
2007年 ノーベル医学生理学賞 遺伝子ターゲティング (KOマウス) マリオ・カペッキ博士
(米・ユタ大教授)
オリバー・スミシーズ博士
(米・ノースカロライナ大教授)
マーティン・エバンス博士
(英・カーディフ大教授)
遺伝子ターゲティング:2007年のノーベル賞
4
・相同組換えを利用してゲノム上の目的の遺伝子を改変する技術や現象
目的の遺伝子
選択マーカー遺伝子
選択マーカー遺伝子
ターゲティング ベクター
改変された ゲノムDNA
5’ アーム
細胞のゲノムDNA
3’ アーム
遺伝子ターゲティング法を利用して遺伝子を完全破壊することを遺伝子ノックアウト
という。また、こうして作製された細胞のことを遺伝子ノックアウト細胞という。
遺伝子ターゲティングとは
5
Gene
Gene
LIG4
Gene
Puror
LIG4
LIG4
Puror
Hygr
First targeting
Second targeting
Chimeric mice
Heterozygotes
Homozygotes ノックアウト細胞
ノックアウトマウス
Gene
Gene
+/+
LIG4
Gene
Puror
−/−
LIG4
LIG4
Puror
Hygr
+/−
+/−
−/−
遺伝子ノックアウト細胞の作製手順
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遺伝子ターゲティング ベクター
変異細胞 正常細胞
遺伝子異常を修正できる
正常細胞 変異細胞
遺伝子を破壊できる 導入
ノックアウト細胞の作製
遺伝子機能解析 疾患モデル細胞の作製
遺伝子修正ベクター
問題点: ① ターゲティング効率がとても低い. ② ベクター構築に時間と手間がかかる.
目的の遺伝子以外に傷をつけない 理想的な遺伝子治療法
遺伝子ターゲティング:応用と問題点
7
動物細胞の遺伝子ターゲティングはなぜ難しい?
遺伝子ターゲティング ランダムインテグレーション
ターゲティング ベクター
相同組換え 非相同組換え
< <
neor
頻度: 〜頻度: 〜
ターゲティング効率 = 遺伝子ターゲティング頻度 ÷
(遺伝子ターゲティング頻度+ランダムインテグレーション頻度)
8
研究背景
遺伝子ターゲティング技術の簡素化と効率化
を目指した研究
再生医療・創薬分野への応用
(特に標的遺伝子治療・細胞治療)
汎用化
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新技術の基となる研究成果・技術
(1) MultiSite Gateway技術を利用した
遺伝子ターゲティングベクターの構築法
Adachi et al., Simple one-week method to construct gene-targeting
vectors: application to production of human knockout cell lines.
BioTechniques, 41: 311-316, 2006.
(2) ヒトNalm-6細胞を用いたノックアウト細胞作製法
Adachi et al., The human pre-B cell line Nalm-6 is highly proficient in
gene targeting by homologous recombination.
DNA Cell Biol., 25: 19-24, 2006.
Adachi et al., Highly proficient gene targeting by homologous
recombination in the human pre-B cell line Nalm-6.
Methods Mol. Biol., 435: 17-29, 2008.
ヒト遺伝子 ターゲティングベクター構築のノウハウと実績
高効率遺伝子 破壊法を確立
10
5’-arm attL4 attR1
3’-arm
Kmr
attL1 attL2 Hygr
attR2 attL3
Ampr
DT-A
attR4 attR3
Hygr 5’-arm DT-A
Ampr
attB4 attB1 attB2 attB3
3’-arm
ターゲティングベクター
I-SceI
Kmr
Kmr
loxP
Puror
Hisr
Neor
loxP
Biotechniques, 41:311, 2006.
(1) MultiSite Gateway技術を利用した遺伝子ターゲティングベクター構築法
Genomic PCR Genomic PCR
誰でも簡単に 一週間以内に ターゲティング ベクターを複数 作製できる
ライゲーション 反応不要
マッピング不要
11
Nalm-6 細胞
・倍加時間は約20時間
・核型が安定(2n=46)
・p53を正常に発現
・寒天培地で約80%のコロニー形成率
・球状の浮遊細胞
・ヒトBリンパ球細胞
・高効率で遺伝子ターゲティングが可能 (平均効率=約5%)
46, XY, t(5;12)(q33;p12)
(2) ヒト Nalm-6 細胞を用いたノックアウト細胞作製法
Step 1: Genomic PCR &
Vector Construction
Step 2: 1st Gene Targeting
Step 3: 2nd Gene Targeting
Step 4 (optional):
Marker Excision
with Cre
〜 1 week
5’ arm 3’ arm Hygr DT-A
5’ arm 3’ arm
Hygr
Hygr
Puror
Puror
+/–
–/–
Δ/Δ
5’ arm 3’ arm Hygr DT-A Puror
3〜5 weeks
>3 weeks
3〜4 weeks
ノックアウトの手順
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これまでに作製した主なヒト遺伝子改変細胞
日経産業新聞 2011. 9. 2. (金) に掲載
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従来技術とその問題点
ヒト細胞を使った遺伝子改変技術はかなり進歩してきた。しかし、系統的なヒト遺伝子機能解析のためには、遺伝子ターゲティングのさらなる高効率化と汎用化が必要。特に医療創薬への応用に向けてはこれが不可欠。また、安全面への配慮も必要。
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基礎研究
モデル細胞・動物
• ノックアウト
• ノックイン
バイオテクノロジー
遺伝子組換え作物
タンパク質産生
医療・創薬
遺伝子治療・創薬
• 標的遺伝子破壊
• 標的遺伝子修正
特定の遺伝子を破壊した細胞や動物を使った遺伝子機能解析
遺伝子ターゲティングの利用
乾燥に強い作物の創出、 有用タンパク質の大量産生
先天性単一遺伝子疾患の治療、 薬効や副作用の検定
遺伝子ターゲティングの高効率化が不可欠!
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新技術の概要
ヒト細胞の遺伝子を高効率で改変できる技術を開発した。この技術は、遺伝子機能解析に有用なだけでなく、さまざまな疾患モデルヒト細胞を利用した創薬や副作用検討など広範囲の適用が期待される。
ヒトNalm-6細胞における遺伝子ターゲティングの 高効率化に成功! また、これに必要なベクターを 簡便かつ迅速に作製できるシステムを開発した。
超
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■エクソントラップ型 ターゲティングベクター (HPRT遺伝子を標的)
ATG stop
5’相同領域 3’相同領域
poly A付加 シグナル
SA(スプライスアクセプター)配列 +
IRES または 2A配列
ターゲティングベクター 解析したクローン数 正しくターゲティング されたクローンの数
ターゲティング効率(%)
実験1 HPRT-IRES-Puro 17 13 76
実験2 HPRT-IRES-Puro 17 10 59
実験3 HPRT-IRES-Puro 28 17 61
実験4 HPRT-2A-Puro 5 5 100
実験5 HPRT-2A-Puro 6 5 83
以上の結果の通り、エクソントラップ型のターゲティングベクターを使用すると
ヒトNalm-6細胞において従来よりも圧倒的に高い効率で遺伝子ターゲティングを行えることがわかった。
■Nalm-6細胞におけるHPRT遺伝子ターゲティングの結果
特願2011-118564
ヒト Nalm-6 細胞における超高効率遺伝子ターゲティング
Puror
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5’-arm attL4 attR1
3’-arm
Kmr
attL1 attL2
attR2 attL3
Ampr
attR4 attR3
5’-arm
Ampr
attB4 attB1 attB2 attB3
3’-arm
エクソントラップ型ターゲティングベクター
I-SceI
Kmr
Kmr
Genomic PCR Genomic PCR
誰でも簡単に 一週間以内に ターゲティング ベクターを複数 作製できる
ライゲーション 反応不要
マッピング不要
特願2011-118564
IRES Puror
IRES2
2A
Hygr
βgeor
pA
pA
pA
IRES pA
SA
SA
エクソントラップ型ターゲティングベクターの簡便迅速構築法の確立
Puror
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Nalm-6 細胞
・倍加時間は約20時間
・核型が安定(2n=46)
・p53を正常に発現
・寒天培地で約80%のコロニー形成率
・球状の浮遊細胞
・ヒトBリンパ球細胞
・高効率で遺伝子ターゲティングが可能 (平均約5%)
・エクソントラップ法により 高効率で遺伝子ターゲティングが可能 (25〜100%)
ヒト遺伝子ノックアウト細胞作製法の新技術
Step 1: Genomic PCR &
Vector Construction
Step 2: 1st Gene Targeting
Step 3: 2nd Gene Targeting
Step 4 (optional):
Marker Excision
with Cre
〜 1 week
5’ arm 3’ arm Hygr DT-A
5’ arm 3’ arm
Hygr
Hygr
Puror
Puror
+/–
–/–
Δ/Δ
5’ arm 3’ arm Hygr DT-A Puror
3〜5 weeks
>3 weeks
3〜4 weeks
ノックアウトの手順
特願2011-118564
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新技術の特徴
・ 遺伝子改変のためのエクソントラップ型ベクターを
1週間以内で簡単に構築できる。
→ マウスなど、ゲノム解読が完了している全ての
生物種に適用可能。
・ ヒトなどの動物細胞において迅速かつ効率的に
遺伝子ノックアウト/ノックインを行うことができる。
→ iPS細胞等の幹細胞や初代細胞への適用も可能
→ 薬効・毒性評価を種差を考慮せずに行うことが可能
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新技術の特徴・従来技術との比較
ヒト細胞を使った遺伝子改変技術の 簡素化と効率化に成功した。
・従来よりも一桁以上高いターゲティング効率 を達成した。
・エクソントラップ型の遺伝子ターゲティング ベクターを簡便かつ迅速に作製できる手法 を確立した。
任意のヒト体細胞への応用の道が拓けた。
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従来技術・競合技術との比較
・エクソントラップ型のプラスミドベクター を使って、ノックアウト・ノックイン 細胞を効率良く作製できる。
・人工制限酵素やウイルスベクターを用いて いないため、安全面・汎用面において 優れている。
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想定される用途
・ 基礎生物学分野
・ 医療創薬分野
・ 診断薬分野
・ バイオテクノロジー分野
・ 農畜産分野
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :
遺伝子ターゲティングベクター、
その作製方法及び利用方法
• 出願番号 : 特願2011-118564
• 出願人 : 横浜市立大学
• 発明者 : 足立 典隆