16
ヒトの胃での消化について 福島県立医科大学医学部1年 グループ1 131003 猪狩翔吾 <背景・目的> 体内でおこる最も身近な化学現象の ひとつである消化について、今回は胃 で起こる消化現象を試験管内で再現す ることによって胃の主要な消化酵素で あるペプシンの作用を確認する。 <実験方法> ・原理 胃の中(37℃、pH 2.0)にできるだ け近い状態で食肉(ツナの水煮)をブ タペプシンと混合させる。タンパク質 中のペプチド結合は酸性溶液中で分解 されるとペプチド 1 つにつき 1 つの H が消費され、pH が上昇するので、塩酸 を使い元の pH に戻すのに要する酸の 量からペプチド結合の分解量を測るこ とができる。 これにより滴定に要した HCl 量が多いも のほど、ペプシンの消化が進んでいるも のと考えられる。 また、ツナの固形成分の乾燥重量の 減少からペプシンによる消化作用を確 認する ・手順 1.タンパク質を多く含むツナを咀嚼物 に近づけるため、ミキサーで細かく する 2. 細かくしたツナを 20 g ずつビーカ ーに取り、撹拌しやすいように水を 10 ml ずつ加える。 3. 5 M 塩酸を用いてツナの試料の pH を調整する(pH=1.0, 2.0, 3.0,無調整 4 種類)4. ビーカーに入ったツナにペプシン 液を加える(ペプシン量=0 mg, 25 mg, 50 mg 3 種類)。 5. シェイカー(37℃、150 回転/)胃の動きを再現する。 6. 80℃まで加熱する 1 7. 30 分後に pHを測定し、0.1 M HCl でペプシンを加える前の pH で滴定し、H 消費量を求める。 8. 2 種類のツナ(ペプシン量 0 mg 50 mg を加えた)を減圧濾過し、 乾燥後濾過したツナの重量を測定 する。 <結果> ペプシン 25mg 50mg を入れたツナ の消化速度はペプシンの量が多いほど 速いということが分かった(図 10 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 0 25 50 図1ペプシン量の変化に伴うペプチド 結合の分解量(mmol) の変化 初期 pH の変えての滴定では、図2 より pH=1,2,3 のうちでは pH=2 が最適 pH であることが分かった。また pH=2 より酸性が強いときはあまり消化能力 は変わらないが、pH 2 より大きくな ると極端に消化能力が失われるという ことが結果にあらわれた。 1 加熱することでペプシンの消化作 用を止めることができる。

ヒトの胃での消化についてヒトの胃での消化について 福島県立医科大学医学部1年 グループ1 131003 猪狩翔吾 <背景・目的> 体内でおこる最も身近な化学現象の

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Page 1: ヒトの胃での消化についてヒトの胃での消化について 福島県立医科大学医学部1年 グループ1 131003 猪狩翔吾 <背景・目的> 体内でおこる最も身近な化学現象の

ヒトの胃での消化について 福島県立医科大学医学部1年 グループ1

131003 猪狩翔吾 <背景・目的> 体内でおこる最も身近な化学現象の

ひとつである消化について、今回は胃

で起こる消化現象を試験管内で再現す

ることによって胃の主要な消化酵素で

あるペプシンの作用を確認する。 <実験方法> ・原理 胃の中(37℃、pH 2.0)にできるだけ近い状態で食肉(ツナの水煮)をブ

タペプシンと混合させる。タンパク質

中のペプチド結合は酸性溶液中で分解

されるとペプチド 1つにつき 1つの H+

が消費され、pHが上昇するので、塩酸を使い元の pHに戻すのに要する酸の量からペプチド結合の分解量を測るこ

とができる。

これにより滴定に要した HCl 量が多いも

のほど、ペプシンの消化が進んでいるも

のと考えられる。 また、ツナの固形成分の乾燥重量の

減少からペプシンによる消化作用を確

認する ・手順 1.タンパク質を多く含むツナを咀嚼物 に近づけるため、ミキサーで細かく する 。 2. 細かくしたツナを 20 gずつビーカ ーに取り、撹拌しやすいように水を 10 mlずつ加える。

3. 5 M塩酸を用いてツナの試料の pH を調整する(pH=1.0, 2.0, 3.0,無調整 の 4種類)。 4. ビーカーに入ったツナにペプシン 液を加える(ペプシン量=0 mg, 25 mg, 50 mgの 3種類)。

5. シェイカー(37℃、150回転/分)で 胃の動きを再現する。 6. 約 80℃まで加熱する1。 7. 30分後に pHを測定し、0.1 Mの HClでペプシンを加える前の pHま

で滴定し、H+消費量を求める。 8. 2種類のツナ(ペプシン量 0 mgと

50 mgを加えた)を減圧濾過し、 乾燥後濾過したツナの重量を測定 する。

<結果> ペプシン 25mgと 50mgを入れたツナの消化速度はペプシンの量が多いほど

速いということが分かった(図 1)

00.20.40.60.8

11.21.4

0 25 50 図1ペプシン量の変化に伴うペプチド

結合の分解量(mmol) の変化 初期 pH の変えての滴定では、図2

より pH=1,2,3 のうちでは pH=2 が最適pH であることが分かった。また pH=2より酸性が強いときはあまり消化能力

は変わらないが、pH が 2 より大きくなると極端に消化能力が失われるという

ことが結果にあらわれた。

1 加熱することでペプシンの消化作用を止めることができる。

Page 2: ヒトの胃での消化についてヒトの胃での消化について 福島県立医科大学医学部1年 グループ1 131003 猪狩翔吾 <背景・目的> 体内でおこる最も身近な化学現象の

図2 ペプシン作用とpH pH=2.0、ペプシン 50 mg のツナと

pH=5.7(未調整)、ペプシン無しのツナの乾燥重量の測定により、30 分という短い消化時間ではあったが重量にして

1.79 g、約 72%のツナが消化されたことが確認された。 <考察・まとめ> 今回の消化実験から消化は消化酵素

が多いほど速く作用し効果も大きいこ

とが分かった。 はじめは、30 分という短い時間では

消化作用はあまり確かめられないので

はないかと考えたが、結果に出たよう

に pH=2、ペプシン 50 mgでは約 72%ものツナ消化が起こっていたので、消

化は予想以上にはやく行われていると

いうことが分かった。 また、結果から分かったペプシンの

最適 pH=2は胃の中の pHと一致した。このことから胃の中では常にペプシン

の消化が起きやすいような環境が保た

れているということも分かった。 さらに、ペプシンによる消化後の乾

燥重量変化から次の3つのことが分か

る。 1、消化されたタンパク質の質量(1.79 g)÷アミノ酸の平均分子量(115) =溶けたアミノ酸の物質量(16 mmol) 2、消化されたタンパク質の質量(1.79 g)÷HClの滴定量(1.16 g) =1 つの分解あたりの平均的なアミノ酸の数(約 14個) 3、消化されたタンパク質の質量(1.79 g)

÷使用したペプシンの質量(0.05 g) =重量比は 35,8倍 4.分解されたペプチド結合の量(1.16 mmol)÷使用したペプシンの物質量(1.43×106 mmol) =1つのペプシンあたりのペプチド結合分解数(811回) この結果から1つのペプシンは 811回も触媒として作用するという特性が

分かった。 様々な工夫をしてヒトの胃の中の状

態を再現し実験を行った。温度の調節

など少し難しい点はあったものの目的

として挙げた胃の中でのペプシンの消

化作用を確かめることには成功したの

ではないかと考える。 <参考文献> ・「消化・吸収/基礎と臨床」(細谷憲政 監修 ,武藤泰敏 編著 ,第一出版,2002年 ・「ハーバー・生化学」(上代淑人

監訳),丸善,2001年

1.07 1.16

0.52

0

0.5

1

1.5

1 2 3

HCl

(mm

ol)

pH

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Ⅰ.実験の ペプシ

(pH、量ンがどの

いるのか

としなが

Ⅱ.実験方ⅰ.50 mlをとり

料とし

ⅱ. 5 Mの (pH 1.ⅲ.ペプシⅳ.胃の内

37℃のーショ

ⅴ. すべを失活

上昇し

ⅵ.無処理てイン

減圧装

して集

※滴定す

の目的 シンの消化

量)で再現すのように摂

かなどを調

がら考察し

方法 のビーカー

、水 10mlした。 のHClを用0、2.0、3シンを加え

内部の動き

のもと、毎分

ョン。 てのビーカ

活させ、冷

した pHを理の試料とペ

ンキュベー

装置を使い

集め、その

する意義

H+

化作用を様々

することによ

摂取物の消化

調べ、知見の

し、理解を深

ーに均質化

lを加えて

用いて pH.0) る。 を再現する

分 150回転

カーを加熱

冷却後、0.1 元に戻るま

ペプシン 5とした試料

ながら固形

後乾燥重量

⇘↓⇙H

プシン

福島県立医

13102

々な条件 より、ペプ

化に関与し

の結果を参

深める。

化したツナ 2タンパク質

を調整。

るために、

でインキュ

してペプシ

Mの HClまで滴定す

50 mgを加料について

形成分をろ

量を測定す

H2O

ンの消

医科大学医学

20 大槻紀

プシ

して

参考

20g質材

ュベ

シン

lでる。 加え

て、

ろ過

する。

てペ

で加

に対

たが

ため

ド結

Ⅲ.

ド結

部の

2ででき

消化実

学部 1年 1紀亜良

上図のよう

ペプチド結

加水分解さ

対してプロ

り、H+が消

がって、消

めに加えた

結合の分解

.実験結果と

上図から、

結合の分解

の pHの値であるとい

きる。

実験

1班

うにタンパク

結合が pH 3されると、生

ロトン1個が

消費されて

消化過程で上

た HClの物解量を知るこ

と考察

pHが 2の解が起こって

値、ペプシン

いう知見と一

ク質の分解

3以下の酸生じたアミ

が結合する

pHが上昇上昇した p物質量によ

ことができ

のときに最

ているため

ンの最適 p一致するこ

解によっ

酸性条件下

ノ基 1個る。これに

昇する。し

pHを戻すりペプチ

きる。

最もペプチ

め、胃の内

pHの値がことが確認

Page 4: ヒトの胃での消化についてヒトの胃での消化について 福島県立医科大学医学部1年 グループ1 131003 猪狩翔吾 <背景・目的> 体内でおこる最も身近な化学現象の

上図から

ペプチド結

分かる。ま

加熱処理し

では、ペプ

こらないこ

固形成分

無処理ビー

シンを入れ

gとなった紙を通過で

タンパク

つながって

が 115 g/m

つまり 1.プチドが可

プシンを入

が 1.16 mたポリペプ

15.0/1.16いると考え

っぱな分解

の消化器官

う知見と一

ら、ペプシン

結合の分解

また、イン

してペプシ

プチド結合

ことが確認

分の乾燥重

ーカーの内

れたビーカ

た。つまり

できる)したク質内でペ

ている下記

mol

.78/115≒1可溶化して

入れたビー

mmolだったプチド1つ

≒13個のアえることが

解がおこな

官でより細

一致するこ

ン量の増加

解量が増加す

ンキュベーシ

シンを失活

合の分解がほ

認できた。

重量の計測に

内容物が 2.5カーの内容物

、1.75 gがたことにな

ペプチド結合

記の構造は平

15.0 mmolていることに

ーカーのペプ

たことから

つあたりには

アミノ酸が

が出来る。胃

なわれ、続

細かく消化

ことが確かめ

加とともに、

することが

ション前に

させた試料

ほとんど起

については

50 g、ペプ物が 0.719が可溶化(ろなる。 合によって

平均残基量

のポリペになる。ペ

プチド結合

、可溶化し

は が含まれて

胃では大ざ

く膵臓など

されるとい

められた。

は、

9 ろ

また

×104

50mg

となる

mmolmolの

1のペプ

これに

れ自身

酵素と

Ⅳ.参考 New

た、ペプシ4 g/molでgなので、

50/(3.5×1る。この物

lのペプチのペプシン

1.16/(1.4×プチド結合

により、ペ

身は変化せ

としての特

考文献 w PHOTO

シンの分子量

、用いたペ

107)≒1.4×物質量のペプ

ド結合を切

ンあたり 10-3)≒8.3

合を分解した

ペプシンの、

せず何度も反

特徴を確認で

O GRAPHI

量はおよそ

ペプシン量

×10-3mmoプシンで 1切断したの

3×102 molた計算にな

、触媒とし

反応に関与

できた。

IC生物図説

そ 3.5量は

ol .16 で、1

l なる。

してそ

与する

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タンパク質消化実験 福島県立医科大学医学部1年 1班

131037 窪田真明

<実験目的> 胃における消化を試験管内で再現し、胃

の消化酵素であるペプシンが胃の中でどの

ような働きをしていて、どのような状況下

で最もよく働くかを調べる。そもそも胃に

おける消化にペプシンが必要かどうかを調

べる。 →具体的には、最適pH、加熱への耐性、

ペプシンの量による消化力の違いを調

べる。

<実験方法> 実験手順は次のとおり ① ツナと水をミキサーにかけてホモジュ

ネートを作製した。それを20gずつ9

個のビーカーに分ける。 ② それぞれに塩酸を加え、所定の pHを調 節する。

③ ペプシンを入れ、そのうちの1つをレン

ジで加熱する。 ④ 37度設定で、30分間インキュベーシ

ョン(運動を加えながら放置)する。 ⑤ 全てを加熱した後、冷却する。 ⑥ pHを測定し、もとの pHの値になるまで塩酸で滴定する。

⑦ 上澄み液を取り除いたものをろ過して

乾燥重量を測定する。

<実験の原理>

ペプシンによりタンパク質中のペプチ 3ド結合は加水分解される。 酸性溶液中のため、分解の結果生じるア

ミノ基は完全に解離し、カルボシキル基

の解離はほぼ完全に抑制される。 →その結果分解されたペプチド1つに

つき1つの H+が消費されている。 滴定に要した HCl 量からペプシンによるペプチド結合の分解量を測定できる。

<結果と考察>

考察① ~ペプシン同一量におけるpH の違いによ

Page 6: ヒトの胃での消化についてヒトの胃での消化について 福島県立医科大学医学部1年 グループ1 131003 猪狩翔吾 <背景・目的> 体内でおこる最も身近な化学現象の

る消化

pHの→最適

考察②

~pH有無に

→実験

に全て

に計

のを防

考察③

~ペプ

らわか

消化

ノ酸の

→溶け

溶け

の滴定

→1つ

数(約

化力の違い~

の違いにより

適pHは約

② H 同一値にによる消化力

加熱するこ

とがわかる。

験の中で、イ

てを加熱した

る過程で、ペ

防ぐためであ

上のグラフで

pH 上昇がンキュベーシ

の電離だと考

インキュベー

合、ペプシン

んでいる。

③ プシンによ

かること~

されたタンパ

の平均分子量

けたアミノ酸

たアミノ酸

定量(1.16mmつの分解あた

約 14個)

り、塩酸の滴

2.0であるこ

おけるペプシ

力の違い~ とでペプシン

。 インキュベー

たのはpHペプシンによ

ある。 でペプシン量

見られたが、

ション後の加

考えられる。

ーション前に

ンの量が多い

る消化後の乾

パク質の質量

量(115) 酸の物質量(の物質量(16mol) たりの平均的

滴定量が異な

ことがわかる

シン量や加熱

ンは失活する

ーションした

を1つずつ順

よる消化が進

量が0のもの

、その原因は

加熱による H に加熱しない

いほど消化が

乾燥重量変化

量(1.79g)÷ア

16mmol) 6mmol)÷H

的なアミノ酸

なる。 る。

熱の

るこ

た後

順番

進む

のに

はイ

HCl

い場

が進

化か

アミ

Cl

酸の

消化

した

→重

消化

使用

の分

→使

moHCンの

→1

解数

化されたタン

たペプシンの

重量比(使用化されたタン

用したペプシ

分子量(3.5×使用したペプ

ol) Clの滴定量(の物質量(1.41つのペプシ

数(811回)

まとめ>

ペプシンは

働き、ペプ

ば多いほど

り失活する

1つの分解

の数が約 1ンはタンパ

では溶かさ

酵素の特性

量のタンパ

っきりと示

<参考

「消化・吸

監修,武藤

年 「ハーパー

丸善,200

ンパク質の質

の質量(0.05g用したペプシ

ンパク質の量

シンの質量(0×104g) プシンの物質

1.16mmol)÷43×10-6molシンあたりの

> はpH 約 2.0プシンそのも

ど消化力が高

ることがわか

解あたりの平

14個であるパク質をアミ

さないことが

性として少量

パク質を消化

示された。

考文献> 吸収─基礎と

藤泰敏 編著)

ー・生化学」(

01年

質量(1.79g)÷g) シンの量に対

量の割合)は

0.05g)÷ペプ

質量(1.43×1

÷使用したペ

l) のペプシド結

0 のとき最もものの量が多

高いが、加熱

かった。 平均的なアミ

ことから、ペ

ミノ酸レベル

がわかった。

量のペプシン

化できること

と臨床」(細谷

,第一出版,

(上代淑人 監

÷使用

対する

35.8

プシン

10-6

ペプシ

結合分

もよく

多けれ

熱によ

ミノ酸

ペプシ

ルにま

ンで多

とがは

谷憲政 2002

監訳),

Page 7: ヒトの胃での消化についてヒトの胃での消化について 福島県立医科大学医学部1年 グループ1 131003 猪狩翔吾 <背景・目的> 体内でおこる最も身近な化学現象の

ペプシンによる食肉の溶解

福島県立医科大学1年 1斑 学籍番号 131054 佐々木彩

・実験目的、背景

食肉をペプシンとある一定の温度、条件

で、保存して置くことにより、胃における

消化作用が再現できるかを検討する。 胃に届くまでに食肉がどうなっているか、

胃の中で、食肉がどのように消化されてい

くのかを考え、以下の実験を行った。 ・実験原理および方法 ⅰ ツナの水煮(75g×4 缶)と水 110mlをミキサーにかける。 ⅱ ビーカーに 20gずつ分ける。 ⅲ マグネティックスターラーで混ぜなが

ら、5M HClで pH調整する。(1.0,2.0,3.0のものをつくる) ⅳ 0,25,50,100mgのペプシンを加える。 ⅴスピード 150回転/分 37℃で 30分恒温振とう機にかける(インキュベーション) ⅶ 取り出し、電子レンジで加熱(80℃まであがったら中止する)(ペプシンを失活さ

せる) ⅷ 0.1M HClで滴定する。(ⅲで設定したpHに再調整する) ・実験結果 食肉にペプシン 50mgを加え、pHを 2.0に調整した試験管における乾燥重量:0.72g ペプシンを加えず、pH調整しなかった試験管における乾燥重量:2.50g

グラフ 1

グラフ2

・考察 □より、有形成分が減少し、1.78gが可溶化したことが分かる。 グラフ1は、ペプシンの最適 pH が 2.0であることに一致する。

の化学式より、インキュベーション後、ペ

00.20.40.60.8

11.21.4

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

H+ (

mm

ol)

pH(初期値)

pHの違いによるH+滴定量

H+

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

0 20 40 60

H+ (

m m

ol)

ペプシン(mg)

ペプシン量の違いによるH+滴定量

H+

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プシンを加える前と同じ pH に再調整するために要したHClの物質量を測定することで、たんぱく質中のペプチド結合が何割加

水分解されたか分かる。X%分解されたとして、アミノ酸残基の平均mol質量を 115とすると、

たんぱく質の乾燥重量(g)/115(g/mol) ×x/100 = 滴定に要した HCl(mol)×1価 = 加水分解に使われた H+(mol)

となる。 グラフ2の赤い点は、pH2.0に調整しペプシン 100mgを加えた直後に、電子レンジで 80℃になるまで加熱した試験管である。ペプシンが失活したと考えられ、ペプシン

の最適温度が 37℃であることに一致する。 以上より、有形成分の減少(高分子の可溶化)とペプチド結合の分解(高分子の低分

子化)が確認できた。よって、試験管の中

で胃における消化作用が再現できたといえ

る。

Page 9: ヒトの胃での消化についてヒトの胃での消化について 福島県立医科大学医学部1年 グループ1 131003 猪狩翔吾 <背景・目的> 体内でおこる最も身近な化学現象の

ヒトの体内でどのように消

化がおこるのか

福島県立医科大学医学部1年 グループ1

121071 鈴木 丈夫

<背景・目的> ヒトの胃の中で起こる消化現象について

理解を深めるために、タンパク質の分解

を試験管内で再現し、ペプシンの消化酵

素としての働きを検証することにした。 <実験方法> 食肉(ツナの水煮)をブタペプシンと混

合することで胃における消化作用を再現

した。分解に伴う H+の消費と固体重量の

減少の 2種類の結果を元にペプシンの働きを調べる。

H+の消費:酸性条件下でペプチド結合が

分解されるとプロトンを一つ奪う反応が

起こりpHが上昇する。そのため消化後に元のpHを元の値まで戻すために必要なHCl量を測定することで何molのペプチド結合が分解されたかを知ることがで

きる。

固体重量の減少:分解によって可溶化し

た量を求めるため。 <操作> 1、 タンパク質を多く含むツナを咀嚼物

に近づけるため、ミキサーで砕く

2、 砕いたツナを 20gずつビーカーに

取り、所定のpHに調整する。

3、 ペプシン溶液を加える。(37℃、

150rpm で反応)

4、30 分後に加熱して反応を止め、pH

測定と 0.1M のHClで滴定

5、減圧濾過により溶け残ったツナを取

り出し、乾燥後消化されたツナの量を測

定する

6、滴定量から分解されたペプチド結合

の量を求める。

<結果> 図1 ペプシン量の変化に伴う

ペプチド結合の分解量(mmol)の変化

00.20.40.60.8

11.21.4

25mg 50mg

HCl

(mm

ol)

ペプシン量

図 2 pHと分解量の関係

00.20.40.60.8

11.21.4

1.00 2.00 3.00

HCl

(mm

ol)

pH

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・酵素を入れたことにより消化が進んだ

ことは、色の違いや目で見える残留物の

量の違いからでも十分に理解できた。そ

して、図 1 よりこの条件化では、酵素量が多いほどツナ中のペプチド結合が多く

分解されていることがわかる。 ・実験前はpH が小さくなるほど分解能

力が上がると予想していたのだが、そう

ではなく、図2より、pH=2のときに最もタンパク質を分解しているという結果が

得られたためpH=2 が酵素(ペプシン)の最適pH であることが分かった。 表 1 酵素(有) 酵素(無)

乾燥重量 0.71g 2.50g

・反応後ろ過して集めたのツナの固形物

を乾燥させ、乾燥重量を測定した結果か

ら、酵素(無)の方に比べてpH=2、酵素量 50mgで実験した酵素(有)の方は、1.79g のタンパク質が分解されていることが分かった。 <検討・考察> 予想していたとおりに酵素量が多いほ

ど消化速度が速く、酵素がなければ消化

が進まなかった。このことから消化は、

酵素ペプシンによる働きによって進むと

いうことが確認された。 今回の実験ではpH の変化のみの8パ

ターンの条件下でツナの消化実験を行っ

たが分かった事はペプシンが酵素として

働いているということと、ペプシンの最

適 pHがpH=2であることであり、実際に消化が行われている胃内の pHは、常に一定というわけではなく、食事や時間によ

ってその酸性度が変化する。食前の空腹時

には pH1~1.5 という食酢よりも強い酸性度を示しす。食事をとると pHは 4~5になるが、次第に pHは低くなり、食後 2~3時間でまた空腹時程度の pH に戻る。また、食物を消化するのに必要な時間は平均で

3 時間かかるといわれており、今回の 30分よりもはるかに長い。私たちの行った

実験では消化時間が短すぎたため本来胃

内で行われるはずだった反応が起こらな

かった可能性がある。胃内での消化環境

を再現するためには消化に時間をかける

べきだったという反省点が挙げられる。

しかし、目的として挙げたペプチド結合

の分解を再現しペプシンが胃の中で行わ

れる消化活動の消化酵素として働くを確

かめることには成功したと言える。

<参考文献> ・「消化・吸収─基礎と臨床」(細谷憲政 監修,

武藤泰敏 編著),第一出版,2002年

・「ハーパー・生化学」(上代淑人 監訳),丸

善,2001年

・病気ガイド

http://www.astellas.com/jp/health/healthcar

e/ulser/preliminary02.html

Page 11: ヒトの胃での消化についてヒトの胃での消化について 福島県立医科大学医学部1年 グループ1 131003 猪狩翔吾 <背景・目的> 体内でおこる最も身近な化学現象の

実験

一般

消化酵

てペ

塩酸や

消化

にお

する

実験原

な反応

ロト

が行

され

ペプ

消化後

方法

[ペプⅠ.ミ加え

20 gⅡ.マスタ

き混ぜ

1.0 MMの3.0の

目的、背景

般に、タン

酵素のペプ

プチドにな

やペプシン

の再現実験

けるペプシ

ことを目的

原理および方

の酸性条件

応が行われ

のときペプ

ンを 1 molわれるほど

ることにな

こで、この水

チド結合の

後の不溶性

は以下の通

プチド結合分

キサーにツ

、攪拌後、5をとり、水

マグネチック

ーラーでか

ぜながら、

Mおよび 5.0の塩酸を加え

のいずれかに

ンパク質は、

プシンのため

ることが知

ンを用いて、

験を行うこと

シンや塩酸の

的とした。

方法 件下において

れる[1]。

プチド結合 1消費する。

ど、水素イオ

る。 水素イオンの

分解を測定

性成分の重量

通りである。

分解量の測定

ツナ 200 gと50 mlビーカ水 10 mlを加ク

0 え、溶液の pHに調整する。

ペプシン

福島県立

1310

胃に入ると

めに、消化さ

知られている

胃での食肉

で、胃の消

の重要性を確

て、下図のよ

molにつきつまり、消

オンが多く消

の消費を利用

定した。また

量も測定した

定] と水 100 mlカーに、攪拌

加える。

Hを 1.0、2。

ンによる食

立医科大学 1088 浪岡

と、

され

る[1]。 肉の

消化

確認

よう

きプ

消化

消費

用し、

た、

た。

拌物

2.0、

Ⅲ.100を

Ⅳ.37間振

Ⅴ.活さ

かき

シン

滴定

[不ペプ

なか

ため

物を

て上

流し

[2]を

みを

後、

行い

った

肉の溶解

1年 1班靖弘

ペプシンを

0 mg/mlのペ0.50 ml(5ビーカーを

℃で、1分振盪する。

電子レンジ

させた後、マ

き混ぜなが

ン添加前の

定量を記録す

溶性成分量

プシン処理を

かった試料に

(沈殿などの

めに、沈殿を

を沈殿させた

上澄みだけを

し去る操作)

を行い、上澄

を取り去った

、減圧濾過を

い、溶液の水

た固体を乾燥

、10 mMのペプシン溶

0 mgの場合シェイカー

間に 150 回

ジで加熱して

マグネチッ

ら、0.10 MpHになるまする。 量の測定] を行わなか

について、デ

の固形物を液

を含む液体

たのち、容器

水分をなくす

燥し、重量

の塩酸に溶

溶液を作り、

合)加える。

ーに入れて、

回の速度で 3

て、ペプシン

クスターラ

Mの塩酸を、まで加え、

った試料と

デカンテー

液体と分離

を放置して

器を静かに

す。その後

を測定した。

かし、

それ

30 分

ンを失

ーで

ペプ

その

行わ

ショ

離する

固形

傾け

、残

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結果

結果

※(

pHンは

1.2 mこと

さく

り大

分か

ほど

件で

に電子

し、ペ

べた。

加熱

0.29 の一

は、p0.72 ない状

、考察 は以下の表

)内は、

Hと塩酸の滴、pHが 2.0

mmolのペプがわかった

ても、ペプ

きいと、十

った。 プシンの量

、塩酸の滴

た、pH 2.0、ペプシン

子レンジで

ペプシンを変

。 した場合は

mmolであ部が変性し

た、ろ過後

pH 2.0、ペプg、pH 5.8状態)ペプシ

表のようにな

塩酸滴定前

滴定量の関係

0のときに最プチド結合の

た。また、pHシンは機能

十分に働かな

量については

滴定量は増え

0、ペプシンをビーカー

80 ℃以上に変性させた場

は、ペプチド

あり、80 ℃付したことがわ

後、残った固

プシン 50 mg(はじめに塩

シン 0 mgの

なった。

前の pHの値

係から、ペプ

最もよく働

の分解が起き

Hが 2.0よりするが、2.0なくなること

は、量を増や

えた。 ン 100 mgのに投入後、す

になるまで加

場合についても

ド結合の分解

付近でペプシ

わかった。

固体の乾燥重

gの条件では塩酸を加えて

の条件では、

プシ

働き、

きた

り小

0よとが

やす

の条

すぐ

加熱

も調

解は

シン

重量

は、

てい

2.5

gで質の

ペプ

たが

あり

115こ

ク質

二つ

のた

ゴペ

えら

ドの

g/量

mであ

(1.2ペプ

よっ

シン

わか

参考

[1]碩

貞男

[2]w(htt

E3%8

であり、その

の消化率は、

また、pH 2プチド結合の

が、可溶化

り、これをア

5 g/molで割このとき、も

質の端から

つの物質量は

ため、タンパ

ペプチド鎖に

られる。この

の平均残基数

また、ペプシ

/molであり量は、(5×10mol ある。よって

2*10-3)/(1.4プチド結合

って、ペプチ

ンの作用が大

かる。

考文献 生物学ハン

・山口武雄

男・有賀祐勝

wikipedia-デtp://ja.wikipedia.org/

83%86%E3%83%BC

の差は、1.8、71 %であ

2.0ペプシンの分解は、1したタンパ

アミノ酸残基

割ると、16 mもし、アミ

一つずつ分

は一致する

パク質は、い

に分解して、

のとき、そ

数は、14でシンの分子量

、50 mgの0-2)/(3.5×1

て、ペプシ

4*10-6)=860を分解して

チド結合の分

大きく関わ

ドブック(

・菊山榮・石

勝、1997 年デカンテー

/wiki/%E3%83%87%

C%E3%82%B7%E3%

8 gで、タンあった。 ン 50 mgの1.2 mmolでク質は、1.8基の平均分

mmolとなノ酸が、タ

分解されるな

はずである

いくつかの

、溶解した

のオリゴペ

である。 量は、3.5×のペプシンの

104)=1.4×1

ンは、 0 より、86ていることに

分解には、

っているこ

(太田次郎・

石原勝敏・

年、朝倉書店

ション

%E3%82%AB%E3%8

%83%A7%E3%83%B

ンパク

とき、

であっ

8 gで分子量

る。 ンパ

ならば、

。そ

オリ

と考

ペプチ

×103 の物質

0-6

60 回になる。

ペプ

とが

清水

石和

店)

83%B3%

B3)

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人間の体内で起きている消化現象

福島県立医科大学医学部1年 グループ1 131105 藤巻 光

[はじめに] 消化とは、口→胃→小腸→大腸→肛門

の順番で各器官が消化酵素によって食物

を化学的分解するものである(咀嚼などによる機械的分解も含まれる)。 特に今回の実験では、胃で行われる消

化、つまり、胃液中の消化酵素ペプシン

のタンパク質分解(ペプチド結合分解)に注目し、食肉(ツナの水煮)をブタペプ

シンと混合することで、実際に胃の中で

起こる消化現象をビーカーの中で再現し、

ペプシンの消化における役割を確認する。 [実験の方法]

2種類の実験を行った。 ① ペプチド結合分解量の測定 ② 固形成分量の測定 ---〈実験の原理〉-------------------------------

消化酵素ペプシンによりタンパク質中

のペプチド結合は加水分解される。酸性

溶液中では上図のように、加水分解後の

アミノ基に H+が付加する。つまり、ペプ

チド結合ひとつが分解されるたびに H+

ひとつが消費され、pHが上昇する。 上昇したpHを元のpHに戻すのに要する酸の量からペプチド結合の分解量を測定

することができる。 -------------------------------------------------------

{実験操作①} 1. タンパク質を多く含むツナを咀嚼物に近づけるため、ミキサーで砕く。

2. 砕いたツナを 20 gずつビーカーに取り、水を 10 mlずつ加える。

3. それぞれのビーカーに塩酸を加え、pH=1.00 pH=2.00 pH=3.00 としたものを作る。

4. pH 調整した試料にペプシン溶液を

加える(25 mgあるいは 50 mg)。 5. シェイカーに入れて 37℃に保ち、毎分 150回で振動させる(30分間)。

6. ビーカーをすべてを加熱し、冷却する(*)。

7. pHを測定して、0.1 M塩酸で元の pHになるまで滴定する。

{実験操作②} 1. ペプシン処理有りと無しの試料について、蒸留水を加えて、しばらく放置

してから、上澄み液を除去という作業

(デカンテーション)を数回ほど行う(**)。 2. 減圧ろ過を行い乾燥重量を測定し、比べる。

(*)・・・加熱してペプシンによる消化の進行を防ぐための作業 (**)・・・次の ろ過操作おいて、ろ紙の根づまりを防ぐための作業

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[実験の結果・考察] 消化酵素ペプシンはpHは2.0のとき最

もよく働いたため、最適 pHは 2.0であると予想される(図 1)。

図 1 pHと塩酸滴定量

ペプシンを投入する量が多ければ多い

ほどペプチド結合の分解量が多かったの

で、ペプシン量に消化速度は比例するこ

とがわかった(図 2)。

図 2 ペプシン量と塩酸滴定量 酵素ありのツナ(pH=2.0、ペプシン 50

mg)では、1.8 gのツナが消化されていることが分かる(表 1)。 表 1 ろ過後のツナの乾燥重量の測定結果

酵素ありのツナ酵素なしのツナ

乾燥重量(g) 0.7 2.5

ここで、消化されたツナ (アミノ酸)1.8 gは、アミノ酸の平均残基量を 115 g/molとすると、15 mmol(値 a)で、ペプチドの分解量は 1.16 mmol(値 b)であるので、

=13 は分解後のオリゴペプチド 1

つに含まれるアミノ酸の平均的個数を表し

ている。これより、前述の通り、胃液中の

ペプシンでの消化というのは、消化にお

いて初期の段階であるため、すべてのペ

プチド結合が分解されるわけではないと

いうことを示している。 また、ペプシン 50 mgは、ペプシンの

分子量を 3.5×104g/molとすると、1.4×10-6 mol(値 c)であるので、

=829 はペプシン 1分子が、ペプチ

ド結合をいくつ分解したかを表している。

これより、ペプシンは 酵素、つまり、生体”触媒”としての役割を果たしていることがはっきりとわかる。 ---〈まとめ〉------------------------------------- 人間の胃の中を再現するべく、様々な

工夫をして実験を行った。ペプシンが胃

の中でのタンパク質消化に重要な役割を

果たしていることを確認することができ

た。 ---〈参考文献〉---------------------------------- http://ja.scribd.com/doc/58386294/%E7%94%9F%E7%89%A9-%E6%B6%88%E5%8C%96%E3%81%A8%E5%90%B8%E5%8F%8E -------------------------------------------------------

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ペプシンを用いた

タンパク質の消化実験

福島県立医科大学 医学部

131120 安田祐季

目的 この実験を通して、外部からは観察が簡単でない

胃での消化の過程が、実験室内の簡単な装置で再

現可能であるかを検討する。また、ペプシンが消化

においてどのような役割を果たしているのかを確認

し、その作用を定量的に調べる。

実験器具・試料 はごろもフーズ 素材そのままシーチキン®水煮 L

フレーク、 精製水、 塩酸(5M, 0.1M, 10mM)、

ブタペプシン、 マグネティックスターラー、 恒温振

盪機、 ビーカー、 薬匙、 ミキサー、 電子天秤、

ピペット、 電子レンジ

実験操作 【実験 1】マグロ水煮 300g と水 100mLをホモジェ

ナイズし、それをビーカーに 20.0g とり水 10.0mL と

混合した後、5M塩酸を加えて pHを調整した。ペプ

シン 0.60gを 10mM塩酸 6.0mLに溶解させ、ペプシ

ン液を調製した。試料にペプシン液を加え十分に攪

拌した後、恒温振盪機で 37.0℃に温度を保ち

150rpmで30分攪拌した。反応後の試料は電子レン

ジで加熱した後、冷却した。試料を攪拌しながら pH

を測定し、ペプシン液を加える前の pHになるまで塩

酸を加えた。

【実験 2】実験 1で作った試料のみを入れたビーカ

ーと、pH2.0にした試料を 50mgのペプシンで消化し

たビーカーを、それぞれ 1個ずつ用意した。この 2つ

のビーカーに水を加えて少しかき混ぜ静置し、濁っ

た液体部分だけを捨てた。この操作を 3回繰り返し、

残った水分を含む沈殿物を吸引濾過して沈殿物の

みを取り出し乾燥させ、その質量を測定した。

理論 酸性条件下では、タンパク質の加水分解により生

じたポリペプチドのアミノ基 -NH2 は-NH3+ となるが、

カルボキシル基 -COOH のほとんどは解離しない[1]ため、溶液中の水素イオンは分解されたペプチド

結合と同じ物質量だけ消費される。このことから、分

解されたペプチド結合の数を求めることができる。

図 1 酸性条件下におけるペプチド結合の加水分解

結果と考察 胃液による消化は低い pHで行われる。そこで、pH

を 1,2,3に変えてペプシンによる消化実験を行った。

図 2 ペプチド結合の分解と pHの関係

この実験により、pHが 2に近い時ペプシンの活性

が最も高いことがわかった。また、加熱によりその活

性が低下することも確認された。若干起こった分解

は試料が不均一であり、失活していないペプシンが

残った可能性を示している。この実験をもとに、pH

が 2のときのペプシンの量を変えて分解の様子を調

べた。

図 3 ペプシンと分解されたペプチド結合の量的関係

ペプシン 50mg

■ 加熱した試料

pH 2.0

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この実験から、ペプシンの量とペプチド結合の分

解の速さには正の相関があると推測できる。ペプシ

ンペプシンの量が異なる場合については、時間の制

約があり十分な実験を行うことができなかった。

また、50mg のペプシンで分解されたペプチド結合

の数は 1.2×10-3mol である。一方、ペプシンの分子

量は約 3.5×104Da である[2]から、50mg のペプシン

は物質量にして 1.4×10-6mol である。このことから、

ペプシン 1分子は 1.2×103個のペプチド結合に作用

したと考えられる。これは反応前後で酵素そのもの

が変化しないことを示している。

実験2において 50mgのペプシンで消化を行うと、

分解前は 2.50g だった試料の不溶性成分が 0.71g

に減少した。このことから、アミノ酸の平均残基量を

115 として計算すると、試料中のアミノ酸残基 2.2×

10-2mol のうち分解により水に可溶となったアミノ酸

残基は 1.6×10-2molである。

実験 1,2 から、消化産物はアミノ酸ではなくオリゴ

ペプチドであると考えられる。分解により生じたオリ

ゴペプチドは平均して約 13 個のアミノ酸からなると

推定される。

総括 この実験において、酵素の作用に関する事実の

再確認を行うことができ、また胃での消化をある程度

再現することができたといえる。しかし、さらに正確な

再現をするために改良ができる点もある。例えば、

胃では塩酸を含む胃液が分泌されるため、通常であ

れば pHが極端に変化することはないと考えられる。

ところが、この実験では塩酸を途中で加える操作を

行っていないため、ペプチド結合の分解に伴って pH

が変化する。この問題は、自動滴定装置を用いて試

料の pH を一定に保つことで解決することができる。

この装置を用いれば、滴下した塩酸の体積から反応

速度の正確な測定も可能になるため、さらなる考察

が可能になるであろう。

参考文献

[1] Raymond Chang (2006) 『生命科学系のた

めの物理化学』 東京化学同人 pp.174-176

[2] 「ロシュ アプライド サイエンス オンラインカタ

ログ」

http://roche-biochem.jp/catalog/index.php/pro

duct_3.1.3.1.10.1/category_33116.html

(2013年 7月 10日 閲覧)