74
スウェーデン I-23-1 スウェーデン 1 原子力事情・原子力政策動向 1.1 エネルギー政策と原子力政策の状況と動向 <エネルギー政策と原子力の位置づけ> 欧州連合(EU)では、再生可能エネルギー促進指令(2009/28/EC)のもと、最終エネルギー 消費量に占める再生可能エネルギーの比率を、 EU 全体で 2020 年までに 20%に高めることとし ており、スウェーデンに対しては目標値として最終エネルギー消費量における再生可能エネル ギーの比率を 49%と定めている。それに対してスウェーデンは独自でさらに高い目標を設定し ており、2020 年までに少なくとも最終エネルギー消費量における再生可能エネルギーの比率を 50%まで高めることを目指している。なお、再生可能エネルギーの比率に関しては、2012 年時 点ですでに目標値の 50%を超えており、2017 年には 55%を達成している。2016 6 月に、ス ウェーデン議会は 2040 年に再生可能エネルギーからの電力供給を 100%とする目標で合意した。 スウェーデンの電力供給の柱となるのは水力発電と原子力発電であり、今後はバイオマス、風力 発電の開発に力を入れる方針である。 スウェーデンにおける原子力の位置づけは、1980 年に実施された原子力発電に関する国民投 票の結果に従い、“段階的に撤退する政策”がとられ、4 か所の原子力発電所(12 基の原子炉) の内の 2 基が営業運転を停止した。しかしその後、地球温暖化問題への対応を主な理由として、 脱原子力政策は撤回されることとなった。そして、2010 6 月に法律が改正され、既設炉の建 て替えに限った原子炉の新設(リプレース)を認めることとなった。 環境・エネルギー省(当時)(2019 1 21 日より環境省へ改称)は、2019 1 17 日に 「包括的国家エネルギー気候計画(Sweden’s draft integrated national energy and climate plan)」の素案を発表した。EU 規則(2018/1999/EU)(Regulation (EU) 2018/1999 of the European Parliament and of the Council on the Governance of the Energy Union and Climate Action)に基づき策定されたこの計画は、スウェーデンの気候変動対策およびエネルギー政策が 盛り込まれている。同計画の素案では、2040 年にスウェーデンにおける発電の 100%を再生可 能エネルギーでまかなうべきとしているが、2040 年というのは目標であって原子力発電を廃止 する期限ではないこと、および政治的な決断により原子力発電を閉鎖する意味ではないことが 記されている。同計画は国内で正式に承認された後に、2019 年末までに欧州委員会(EC)に提 出しなければならない。 原子力関連の動向 2015 10 22 日、政府がスウェーデン放射線安全機関(SSMSwedish Radiation Safety Authority)に対して、電離放射線を含む活動に適用する緊急時防災計画区域(EPZ)等の見直 しを依頼した。2017 11 1 日には新しい EPZ および緊急事態計画距離に関する報告書を

スウェーデン - 文部科学省ホームページ...2019/06/25  · スウェーデン I-23-2 SSM が政府に提出した。この報告書では、原子力発電所の周囲からの距離について、予防的防

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

  • スウェーデン

    I-23-1

    スウェーデン

    1 原子力事情・原子力政策動向

    1.1 エネルギー政策と原子力政策の状況と動向

    <エネルギー政策と原子力の位置づけ>

    欧州連合(EU)では、再生可能エネルギー促進指令(2009/28/EC)のもと、最終エネルギー

    消費量に占める再生可能エネルギーの比率を、EU 全体で 2020年までに 20%に高めることとし

    ており、スウェーデンに対しては目標値として最終エネルギー消費量における再生可能エネル

    ギーの比率を 49%と定めている。それに対してスウェーデンは独自でさらに高い目標を設定し

    ており、2020 年までに少なくとも最終エネルギー消費量における再生可能エネルギーの比率を

    50%まで高めることを目指している。なお、再生可能エネルギーの比率に関しては、2012 年時

    点ですでに目標値の 50%を超えており、2017 年には 55%を達成している。2016 年 6 月に、ス

    ウェーデン議会は 2040 年に再生可能エネルギーからの電力供給を 100%とする目標で合意した。

    スウェーデンの電力供給の柱となるのは水力発電と原子力発電であり、今後はバイオマス、風力

    発電の開発に力を入れる方針である。

    スウェーデンにおける原子力の位置づけは、1980 年に実施された原子力発電に関する国民投

    票の結果に従い、“段階的に撤退する政策”がとられ、4 か所の原子力発電所(12 基の原子炉)

    の内の 2基が営業運転を停止した。しかしその後、地球温暖化問題への対応を主な理由として、

    脱原子力政策は撤回されることとなった。そして、2010年 6月に法律が改正され、既設炉の建

    て替えに限った原子炉の新設(リプレース)を認めることとなった。

    環境・エネルギー省(当時)(2019年 1月 21日より環境省へ改称)は、2019年 1月 17日に

    「包括的国家エネルギー気候計画(Sweden’s draft integrated national energy and climate

    plan)」の素案を発表した。EU 規則(2018/1999/EU)(Regulation (EU) 2018/1999 of the

    European Parliament and of the Council on the Governance of the Energy Union and Climate

    Action)に基づき策定されたこの計画は、スウェーデンの気候変動対策およびエネルギー政策が

    盛り込まれている。同計画の素案では、2040 年にスウェーデンにおける発電の 100%を再生可

    能エネルギーでまかなうべきとしているが、2040 年というのは目標であって原子力発電を廃止

    する期限ではないこと、および政治的な決断により原子力発電を閉鎖する意味ではないことが

    記されている。同計画は国内で正式に承認された後に、2019年末までに欧州委員会(EC)に提

    出しなければならない。

    原子力関連の動向

    2015年 10月 22日、政府がスウェーデン放射線安全機関(SSM:Swedish Radiation Safety

    Authority)に対して、電離放射線を含む活動に適用する緊急時防災計画区域(EPZ)等の見直

    しを依頼した。2017 年 11 月 1 日には新しい EPZ および緊急事態計画距離に関する報告書を

  • スウェーデン

    I-23-2

    SSM が政府に提出した。この報告書では、原子力発電所の周囲からの距離について、予防的防

    護措置区域(PAZ:Precautionary Action Zone)は約 5km、早期防護措置対策区域(UPZ:Urgent

    Protective action planning Zone)は 25kmとし、さらに追加で 100kmの拡大計画距離(EPD:

    Extended Planning Distance)を設定するとしている。

    2016年 6月 10日に、議会は原子力発電の課税廃止に関する枠組み合意に達した*。この合意

    に基づいて、今後 2 年かけて原子力発電の設備容量に対する課税を廃止していくことが決まっ

    た。また、閉鎖する既存炉の建て替えとして、最大 10基の原子炉を既存サイトに建設する道が

    開かれることになった。

    * スウェーデンの大手電力バッテンフォール社は、原子力発電に対する課税の廃止がない限り運転

    している 7基すべてを 2020年までに停止すると発表していた。

    SSMは EU 指令に基づき、2018年 1月に報告書(National Assessment Report)*を欧州原

    子力安全規制者グループ(ENSREG:European Nuclear Safety Regulator Group)に対して提

    出した。EU 加盟国は、EU 指令第 2014/87/Euratom 号の第 8 条の規定により、事前に定めら

    れた原子力安全に関するトピックについて評価を行い(トピカル・ピアレビュー)、報告書を EU

    に対して提出することになっている。トピカル・ピアレビューは、少なくとも 6年ごとに実施す

    ることが求められており、2017年については、「経年管理」がトピックとなっている。スウェー

    デンではフォルスマルク原子力発電所とリングハルス原子力発電所が対象となり、各発電所の

    所有者による自己評価報告書が SSM へ提出され、その報告書に SSM がレビューと評価を行っ

    たものがスウェーデンの報告書として ENSREG へ提出された。

    * この報告書によると、フォルスマルク原子力発電所とリングハルス原子力発電所は SSMの要求に

    沿った包括的な経年管理プログラムを有しており、また OKG 社は必要なプログラムの整備を行

    ったとのことである。

    1.2 原子力関連予算の状況と動向

    関連する公開情報は無し。

    1.3 原子力発電所の建設・運転状況

    (1)既設炉

    2019 年 3 月現在、8 基の商業炉が運転している。1980 年に行った国民投票の結果を受けて、

    議会は新規原子力発電所の建設を禁止し、原子力の代替となる新エネルギー源が見つかった場

    合には、2010年までに国内 12基の原子炉を全て廃止することを決定したが、2010年、既存の

    原子炉の置き換えとしてのみではあるが、新規の原子炉の建設を許可することとした。

    2013年 5月、バッテンフォール社は、リングハルス原子力発電所とフォルスマルク原子力発

    電所における運転延長計画を発表した。同社は原子炉の長期運転に関する条件評価において、リ

    ングハルス原子力発電所 1、2号機については 50年間、リングハルス原子力発電所 3、4号機と

    フォルスマルク原子力発電所 1~3 号機については 60 年間運転できる技術的・経済的条件が整

    っているとし、60年間運転を行うために必要な投資について調査を行うこととした。

    なお 2014年 1月にバッテンフォール社は、リングハルス原子力発電所およびフォルスマルク

  • スウェーデン

    I-23-3

    原子力発電所で現在運転中の原子炉が恒久

    停止された後の置き換え電源となる、新規原

    子炉の建設に関する協議を公式に開始した

    ことを明らかにした。この協議は、10 年程

    度の期間をかけて行われることが想定され

    ている。

    オスカーシャム原子力発電所

    オスカーシャム原子力発電所 1 号機は

    1972 年に、2 号機は 1974 年に、3 号機は

    1985 年にそれぞれ運転を開始した(同発電

    所 1 号機は 2017 年 6 月、2 号機は 2016 年

    12月に恒久停止している)。

    2015 年 6 月に、同発電所の筆頭株主であ

    るドイツの E.ON 社が同発電所 1、2号機の

    早期閉鎖を勧告した。この方針を受け、同発

    電所の運転者である OKG社は同発電所 1、

    2号機を恒久停止すると 2015年 10月 14日

    に発表した。同発電所 1号機は廃止措置*の準備ができた段階で停止が決定され、また発表時点

    で停止中であった 2 号機は再稼働されないこととなった。両機の廃止の理由として OKG 社は、

    電力価格の低迷や原子力発電設備に対する課税、安全要求項目の追加にともなう巨額の投資を

    挙げている。なお、出力の大きい同発電所 3号機については設計寿命である 2045年まで運転が

    継続されることとなった。2016 年 2 月 16 日には、同発電所 1 号機を 2017 年 6 月末に閉鎖す

    ることが OKG 社の取締役会により決定していた。しかし、同 1 号機が 2017 年 6 月 17 日に運

    転上の障害により自動停止したことをうけ、OKG社は再稼動せずにそのまま恒久停止させるこ

    とを 2017年 6月 19日に決定した。

    * 2015年 6月に OKG社が、将来的な閉鎖に向けて、同発電所 1号機の廃止措置について許可申請

    書を国土環境裁判所(Land and Environmental Court)(環境問題や地方における土地利用計画

    と建設許可を管轄する裁判所)に提出していた。

    廃止措置関係については、2016年 12月 19日に GE日立ニュークリア・エナジー(GEH)社

    が、同発電所 1、2 号機の解体作業に関する契約(3 年間)を OKG 社と結んだ。この契約は同

    発電所 1、2号機の原子炉圧力容器の内部構造物の解体作業に関するものであり、原子炉内部の

    切断や搬出作業も含まれている。契約時のスケジュールによると、2号機の解体作業は 2018年

    1 月から、1 号機は 2019 年からを予定しており、一連の解体作業は 2020 年初めまでに完了す

    る見通しである。そして同発電所 2号機*1において 2018年 5月 14日に、原子炉圧力容器の内

    部構造物の解体作業が正式に開始され、2019年 1月 22日に作業が完了された。GEH社との契

    約とは別であるが、2 基の原子炉圧力容器の解体も必要であり、2020 年頃に工事が着手される

    見込みである。また、株主であるユニパー(Uniper)社*2の計画によると、2基の解体作業につ

  • スウェーデン

    I-23-4

    いて、バーセベック原子力発電所の解体作業との共同プロジェクトで行っており、両発電所 4基

    の放射線廃棄物は 2020~2028 年の間に全て除去される予定であるという(予想される総費用

    は 100億スウェーデンクローナ)。

    *1 OKG 社は 2017 年 12 月に安全解析書(SAR)を SSM に提出、その後、SSM の求めに応じて

    2018年 2月に改定版 SARを、同年 3月に廃止措置工程報告書を提出していた。2018年 5月 4

    日には、SSMが改定版 SARを承認している。

    *2 ユニパー社は E.ON社から分離独立により設立された会社。

    なお、廃止措置における解体作業について SSM は、同発電所 1、2 号機の解体に関する報告

    書*をスウェーデン政府に対して提出したことを 2017 年 5 月 12 日に明らかにした。この報告

    書によると、同発電所 1、2号機の解体によるスウェーデンおよびその他のユーラトム加盟国へ

    影響を与える可能性はないとのことである。

    * この報告書は、「ユーラトム加盟国は原子炉の解体に際して欧州委員会(EC)に対して情報提供を

    行う必要がある」としたユーラトム条約の第 37条の規定に従い、スウェーデン政府が ECに提出

    するための報告書として作成されたものである。

    同発電所 3号機に関しては、OKG 社の取締役会が、同発電所 3号機に独立した炉心冷却シス

    テム(independent core cooling system)を設置するための投資を行うことを 2017年 8月 24

    日に決定した*。この炉心冷却システムは 2020 年に設置が完了する予定であり、総費用は 8 億

    6,500万スウェーデンクローナがかかるという。

    * スウェーデンでは、2020 年 12 月 31 日から国内の原子炉に対して安全要件が強化される見込み

    であり、将来も継続して発電を行うために国内の電力事業者は、すべての安全システムが作動し

    ない場合でも炉心を冷却することができるシステムへの投資が必要となっている。

    また、2017 年 11 月 28 日~12 月 6 日の 9 日間に亘って、3 号機における IAEA の長期運転

    の安全的側面(SALTO:Safety Aspects of Long Term Operation)に関するレビューが実施さ

    れた。このレビューにおいて IAEA 原子力安全の専門家チームは、経年化管理と安全な長期運

    転への準備は進んでいると結論付けた。その一方で、安全な長期運転への準備を証明できるよう

    な明確で一貫性のあるプロセスの提示等を改善するよう勧告した。

    フォルスマルク原子力発電所

    フォルスマルク原子力発電所 1号機は 1980年に、2号機は 1981年に、3号機は 1985年にそ

    れぞれ運転を開始した。

    2014年、同発電所 3号機の高圧タービンの交換が行われ、出力が 17万 kWe 増強された。

    また、2016 年 6 月 15 日に、同発電所の運転者であるバッテンフォール社は、同発電所にあ

    る 3 基の原子炉に独立した炉心冷却システムを導入し、1、2 号機の出力増強もあわせて行うこ

    ととし、そのための投資を同社の取締役会が決定したと発表した*。炉心冷却システムの設置に

    は数年かかる予定であるが、発電への影響がないよう行われる予定であるという。この改良によ

    り、3基の原子炉は 2040年代までの運転が可能になる。

    * 同発電所が 2020年以降も継続運転を行うためには、安全上の改造工事を行うことが SSM からの

    条件であった。

    リングハルス原子力発電所

    リングハルス原子力発電所 1 号機は 1976 年に、2 号機は 1975 年に、3号機は 1981 年に、4

    号機は 1983年にそれぞれ運転を開始した。

  • スウェーデン

    I-23-5

    同発電所 1、2号機について、バッテンフォール社が 1号機を 2020年に、2号機を 2019年に

    閉鎖すると 2015年 10月 15日に発表した。両機は 2025年まで運転する予定であったが、電力

    価格の低迷や政権交代後の原子力政策(原子力課税の引き上げ)等を考慮して閉鎖を決定したと

    いう。なお、3、4号機の運転計画については変更しないとしている。

    同発電所 3号機については、2018年 2月 27日~3月 8日にかけて、IAEAの原子力安全の専

    門家チームによる長期運転の安全的側面(SALTO:Safety Aspects of Long Term Operation)

    に関するレビューが実施された。このレビューにおいて IAEA の専門家は、同発電所における

    経年化管理と安全な長期運転への準備は進んでいると結論付けた。その一方で同発電所に対し

    て、経年変化の評価のために集めた全ての情報について、適切な方法で使用し記録することなど

    が勧告された。

    同発電所 4 号機については、2007 年に低圧タービンの交換により 3 万 kWe の出力が増強さ

    れた。2015年 2月 2日には SSMが 17.5万 kWe の出力増強での試運転を承認した。

    2017年 11月 17日には、バッテンフォール社及びリングハルス電力の両理事会は、同発電所

    3、4号機への炉心冷却システムの設置による出力増強計画を決定した。これにより、2040年代

    までの運転が可能になるという。

    バーセベック原子力発電所

    バーセベック原子力発電所は、1 号機が 1999 年、2 号機が 2005 年に恒久停止している(運

    転開始は、1号機は 1975年、2号機は 1977年)。

    2015年 11月に、ウェスチングハウス(WH)社が、同発電所の解体作業に関する契約を運転

    者であるバーセベック・クラフト社(Barsebäck Kraft AB)から受注した。解体作業は、同発

    電所にある圧力容器に関するものであり、WH 社は、遠隔操作による機械的水中切断法

    (underwater mechanical cutting)を用いて内部構造物の解体等を行うとしている。2018年 6

    月時点で、原子炉内構造物の切断・撤去作業を行っているとのことである。

    (2)建設・計画中の原子炉

    現在、建設・計画中の原子炉はない。

    No. 発電所名 型式 状況 所在地 設備容量

    (万kW)

    営業運転 開始日

    1 FORSMARK-1(フォルスマルク) BWR 運転中 UPPSALA 101.6 1980.12.10

    2 FORSMARK-2(フォルスマルク) BWR 運転中 UPPSALA 102.8 1981.07.07

    3 FORSMARK-3(フォルスマルク) BWR 運転中 UPPSALA 121.2 1985.09.01

    4 OSKARSHAMN-3(オスカーシャム) BWR 運転中 KALMAR LAN 120.5 1985.08.15

    5 RINGHALS-1(リングハルス) BWR 運転中 HALLAND 89.7 1976.01

    6 RINGHALS-2(リングハルス) PWR 運転中 HALLAND 91.0 1975.05

    7 RINGHALS-3(リングハルス) PWR 運転中 HALLAND 103.4 1981.09.09

    8 RINGHALS-4(リングハルス) PWR 運転中 HALLAND 117.0 1983.11.21

    9 ÅGESTA(オゲスタ) PHWR 恒久停止 SÖDERMANLAND 1.2 1964.03

    10 BARSEBÄCK-1(バーセベック) BWR 恒久停止 SKÅNE 61.5 1975.07

    11 BARSEBÄCK-2(バーセベック) BWR 恒久停止 SKÅNE 61.5 1977.09

  • スウェーデン

    I-23-6

    12 OSKARSHAMN-1(オスカーシャム) BWR 恒久停止 KALMAR LAN 48.7 1972.02.06

    13 OSKARSHAMN-2(オスカーシャム) BWR 恒久停止 KALMAR LAN 63.0 1974.11

    2 国際協力動向

    2.1 二国間原子力協力関係

    相手国 協定 日付

    ウクライナ 原子力安全及び放射線防護分野における

    協力協定

    2014年 11月 18日署名

    カナダ 両国間で移転される核物質・設備・機器及

    び情報の利用に関する協定

    1991年 11月締結

    原子力規制情報交換に関する覚書 2014年 9月署名(SSMとカナダ原子

    力安全委員会(CNSC))

    スイス 原子力平和利用に関する協力協定 1968年 11月 30日署名

    1969年 1月 16日発効

    1968 年の原子力平和利用に関する協力協

    定の追加議定書

    1990年 4月 25日署名、同日発効

    デンマーク 北欧 4 か国の国境地域にある原子力施設

    に関する原子力安全条件についての協力

    指針

    フィンランド/ノルウェーと共に 1976

    年 11月 15日締結

    原子力事故の早期通報と原子力施設の情

    報交換に関する協定

    1986年 10月 21日締結、同日発効

    ドイツ 原子力事故の早期通報に関する情報交換

    協定

    1990年 9月 25日署名

    1990年 12月 5日発効

    ノルウェー 北欧 4 か国の国境地域にある原子力施設

    に関する原子力安全条件についての協力

    指針

    デンマーク/フィンランドと共に 1976

    年 11月 15日締結

    原子力事故の早期通報と原子力施設の情

    報交換に関する協定

    1986年 10月 21日署名

    1987年 7月 22日発効

    フィンランド 北欧 4 か国の国境地域にある原子力施設

    に関する原子力安全条件についての協力

    指針

    デンマーク/ノルウェーと共に 1976年

    11月 15日に締結

    核物質、技術および設備の輸出に係る指針

    に関する協定

    1983年 3月 4日署名、同日発効

    原子力事故の早期通報と原子力施設の情

    報交換に関する協定

    1987年 2月 25日署名

    同年 5月 23日発効

    米国 米国 NRC配管健全性研究グループヘの参

    加に関する合意

    1987年 2月 2日と 3月 3日署名

    同年 3月 3日発効。

    原子力安全問題における技術情報交換お

    よび協力に関する取決め

    2016年 9月 27日署名(SSMとNRC)

    リトアニア 原子力安全分野における協力の枠組み合

    2000年 1月 27日締結(イグナリナ原

    子力発電所、リトアニア経済省とスウ

    ェーデン国際原子力安全プロジェク

    ト(SIP))

    ロシア 原子力事故の早期通報と原子力施設の情

    報交換に関する協定

    1988年 1月 13日署名

    同年 4月 3日発効(ソ連時代、ロシア

    に継承)

    フィンランド、 放射線安全機関との情報交換等の協力に 2016 年 10 月 4 日署名(期間は 5 年

  • スウェーデン

    I-23-7

    ノルウェー、ベ

    ラルーシ

    関する了解覚書 間)(フィンランド、ノルウェー、ベラ

    ルーシの放射線安全機関と)

    2.2 国際的取組への参加状況

    (1) 協力全般

    ・IAEA:1957年 4月 5日加盟、また 1957年 7月 29日までに批准し IAEA憲章を発効さ

    せた原加盟国(18か国)の一つ

    ・経済協力開発機構(OECD)原子力機関(NEA)

    (2) 核不拡散

    ・核兵器不拡散条約(NPT):1970年 1月 9日発効

    ・IAEA保障措置協定:1995年 6月 1日発効

    ・IAEA保障措置追加議定書:1998年 9月 22日署名、2004年 4月 30日発効

    ・包括的核実験禁止条約(CTBT):1996年 9月 24日署名、1998 年 12月 2日批准

    ・ザンガー委員会(NPT 加盟の原子力輸出国が NPT第Ⅲ条 2項を遵守するための自発的グ

    ループ)

    ・原子力供給国グループ(NSG:ロンドン・ガイドライン輸出管理グループ)

    (3) 原子力安全

    ・北欧の放射線事故に関連した緊急時相互支援協定:デンマーク/フィンランド/ノルウェー

    と IAEAが 1963年 10月 17日署名

    ・原子力事故の早期通報に関する条約:1986年 9月 26日署名、1987年 3月 30日発効

    ・原子力事故援助条約:1986年 9月 26日署名、1992年 7月 25日発効

    ・原子力分野での第三者損害賠償に関するパリ条約およびブリュッセル補足条約

    ・ウィーン条約・パリ条約の適用に関する合同議定書:1988年 9月 21日署名、1992年 4

    月 27日発効

    ・原子力安全条約:1994年 9月 20日に署名し、1996年 10月 24日発効

    ・使用済み燃料と放射性廃棄物の安全管理に関する合同条約:1997年 9月 29日署名、2001

    年 6月 18日発効

    ・パリ条約:1968年 4月 1日批准

    (4) その他協力

    ・核物質防護条約:1980年 7月 2日署名、1987年 2月 8日発効

    ・北欧 4か国の環境保護に関する条約:デンマーク、ノルウェー、フィンランドと共に 1974年

    2月 19日締結

    ・廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約:1975年 8月 30日発効

    ・国連欧州経済委員会(UNECE)越境環境影響評価に関するエスポ条約:1992 年 1 月 24 日

    発効

    ・国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC)(2010年 6月に、国際原子力パート

    ナーシップ(GNEP)より改組):オブザーバー国

  • スウェーデン

    I-23-8

    2.3 人材育成に関する協力の状況

    関連する公開情報は無し。

    3 原子力研究開発推進・規制体制

    3.1 原子力関連行政・規制機関の役割

    (1)原子力行政機関

    スウェーデンのエネルギー政策はインフラ省が担っている。インフラ省は、以前は産業・イノ

    ベーション省の管轄だったインフラ整備分野および、以前は環境・エネルギー省の管轄だったエ

    ネルギー分野が統合され、2019 年 1 月 21 日の新内閣発足にともない新たにインフラ省として

    創設された組織である。

    (2)原子力規制機関

    スウェーデンでは、スウェーデン放射線安全機関(SSM:The Swedish Radiation Safety

    Authority)が放射線防護、原子炉安全、放射性廃棄物の安全規制に取り組んでいる。環境省に

    設置された組織であり、予算の決定と所長の任命は政府により行われるが、個別の判断や決定は

    独立した立場で実施している。

    SSMの活動内容は以下の通りである。

    ・規則の制定およびその遵守状況の監視

    ・放射線関連の活動に対する許認可の発給

    ・放射線関連の活動に対する検査・査察、有害活動の停止

    ・国内外における放射線関連の事故や放射性物質の意図的拡散に対する 24 時間の緊急対応

    ・一般公衆および放射線従事者に対する許容放射線量の設定

    ・環境放射線の計測・監視

    ・放射性物質の排出による影響の調査・評価

    ・あらゆる原子力技術を伴う活動の監視(放射性物質の製造、所有、加工、輸送、原子力

    技術を用いた施設の操業、放射性廃棄物の最終処分)

    ・国内的に、および国際的に、原子力技術を用いた施設における安全な作業を確保するた

    めの活動

    ・研究の実施、援助、評価

    ・情報提供、訓練、助言、勧告による放射線及び放射線防護に関する知識の拡大

    ・国際協力への参加

  • スウェーデン

    I-23-9

    3.2 規制体制図(組織、法令)

    3.3 原子力研究開発機関と研究内容

    関連する公開情報は無し。

    3.4 研究炉を含む原子力研究開発施設の計画、建設、運転、保守、廃止、共用等に関する動向

    スウェーデンでは、かつて 5基の研究炉が稼働していたが、3基は廃炉となっており、残りの

    2基では廃止措置が進められている。この 2基は、スタズビック(Studsvik)社が保有していた

    熱出力 1,000kW の「R2−0 炉」と 5 万 kW の「R2炉」であり、2005 年に閉鎖された後、解体

    作業が進んでいる。

    環境省http://www.government.se/government-of-sweden/ministry-of-the-environment/

    評議会

    政府

    スウェーデン

    原子力廃棄物評議会環境省

    スウェーデン

    放射線安全機関

    (SSM)

    スウェーデン放射線安全機関(SSM)

    環境評価

    医療被ばく

    緊急時事前対

    策・対応

    職業訓練・

    就労活動

    放射線測定

    通信

    法務

    研究

    長官

    開発部原子力発電所

    安全部放射線防護部核物質部

    Man-Technology-

    Organization

    原子力発電所運転

    施設放射線防護

    原子炉技術・解析

    構造的完全性・

    事象分析

    システム評価

    放射性廃棄物の

    資金調達

    原子力施設の運転

    と廃止措置

    輸送・廃棄物

    核不拡散

    原子力安全

    使用済燃料・放射

    性廃棄物の処分

    組織サービス部

    人事

    財務

    申請・登録

    管理システム制御

    IT

  • スウェーデン

    I-23-10

    3.5 原子力分野の研究開発に関する公募制度

    関連する公開情報は無し。

  • フィンランド

    I-24-1

    フィンランド

    1 原子力事情・原子力政策動向

    1.1 エネルギー政策と原子力政策の状況と動向

    <エネルギー政策と原子力の位置づけ>

    フィンランドは産業構造と気候条件から、欧州の中でもエネルギーの消費量が多い国家であ

    るが、水力以外にエネルギー資源がないため、国内の総発電量の約半分は他国由来の発電源に依

    存している。エネルギーセキュリティの確立と温室効果ガス削減を目標とする欧州連合(EU)

    の一加盟国として、フィンランドは現在、積極的に原子力及び再生可能エネルギーの開発に取り

    組んでいる。

    2001 年に「国家気候変動・エネルギー戦略(National Energy and Climate Strategy)」が策

    定された後、随時改訂されている。2013 年 3 月には「国家気候変動・エネルギー戦略 2013」が

    策定された。この戦略の中で、2005 年と比較して、2020 年に温室効果ガス排出量を 21%削減、

    最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を 38%に拡大といった目標と、2050 年

    へ向けた長期的なロードマップ策定が示された。

    また、2016 年 11 月に政府は「2030 年までの国家気候変動・エネルギー戦略(Government

    report on the National Energy and Climate Strategy for 2030)」を承認した。この戦略では、

    2020 年代には再生可能エネルギーの割合が 50%を超えることなどが示されている。

    原子力政策については、フィンランドは 1970 年代に発生したオイルショックに鑑みて、エネ

    ルギーの安定供給の観点を重視し、原子力発電所の建設に着手した。1977 年にロビーサ原子力

    発電所を運転開始した後、合計 4 基の原子炉が建設されている。

    1.2 原子力関連予算の状況と動向

    関連する公開情報は無し。

    1.3 原子力発電所の建設・運転状況

    (1)既設炉

    現在、4 基の原子炉が運転中である。

    ロビーサ原子力発電所

    フォータム社が運転しているロビーサ原子力発電所 1、2 号機 (VVER-440)は、1 号機が

    1977 年、2 号機が 1981 年に運転を開始した。2007 年に 1 号機でロシア型 PWR の公式運転期

  • フィンランド

    I-24-2

    間である 30 年が経過した際、放射線・原子力安

    全センター(STUK)は、両炉についてそれぞれ

    2027 年と 2030 年までの(各 20 年間の)継続

    運転を承認した。その条件として、10 年毎に定

    期的な安全評価を実施することが義務付けられ

    た。フォータム社は、第 1 回目となる安全評価

    の書類を 2015 年末に STUK に提出した。フォ

    ータム社による同発電所 1、2 号機への定期安

    全評価レビューを受け、2017 年 2 月 7 日に、

    STUK は同発電所 1、2 号機が安全に運転する

    ための要件を満たしていると結論付けた。安全

    に関する包括的評価では、経年劣化の影響など

    原子炉の状態が確認され、また継続的な安全運

    転を保証する能力も評価された。

    また、フォータム社は 2018 年 10 月 25 日に、

    同発電所 1、2 号機における安全システム等の

    改修工事および出力増強が完了したことを明らかにした。3 段階からなる改修工事は、ロールス

    ロイス(Rolls-Royce)社が 2014 年 5 月の契約に基づき、2016~2018 年にかけて毎年実施され

    ている定期検査の際に実施した。また、出力増強により、1 基あたりの発電容量は 42 万 kWe か

    ら 50.2 万 kWe へ出力増強されている。同発電所 1 号機は 2018 年 10 月 18 日、2 号機は 9 月

    21 日に運転を再開している。

    オルキルオト原子力発電所

    TVO(Teollisuuden Voima Oyj)社が運転しているオルキルオト原子力発電所 1、2 号機(各

    88 万 kWe)は、それぞれ 1979 年と 1982 年に運転を開始した(当初の運転認可は 20 年)。

    この 2 基の安全性改善のための改修工事に関して、2016 年 9 月 30 日に欧州投資銀行(EIB)

    が、TVO 社に対し 1 億ユーロを融資することを明らかにした。この改修工事では、非常用ディ

    ーゼル発電機の交換や再循環ポンプと周波数変換器の取替え、新しい冷却材注入装置の設置な

    どが行われた。これにより原子炉の安全性や信頼性、および運転効率向上につながるという。

    また、2018 年 12 月 17 日には、2 基の安全システムの設備改修のため、6,500 万ユーロの融

    資契約(10 年間)*を TVO 社とノルディック投資銀行が締結した。この改修では、40 年近く稼

    働し続けている 8 台の非常用ディーゼル発電機を最新機種の 9 台に交換するほか、外部電源に

    依存しない蒸気駆動式の原子炉冷却材注入装置の設置等が行われるという。

    * 同発電所の設備更新計画は 2 億ユーロ規模であるという。

    なお、同発電所 1 号機の運転認可は 2018 年末で失効することとなっていた。そこで、TVO 社

    は 2017 年 1 月 26 日、同発電所 1、2 号機の 2038 年までの運転認可更新申請書を雇用経済省

    (TEM:Ministry of Economic Affairs and Employment)へ提出し、あわせて 10 年ごとに実

    施される定期安全評価レビューを STUK に提出した。その結果 STUK は、運転認可更新申請に

  • フィンランド

    I-24-3

    ついて、2 基の原子炉が安全かつ法的な要件を満たしており、TVO 社による放射性廃棄物管理

    も適切であると評価したうえで、2018 年 5 月 31 日、同申請について支持する意見書を TEM に

    対して提出した。その一方で、STUK は TVO 社に対して、運転延長に際し適切な経年管理*お

    よび安全文化の更なる醸成の必要性も指摘した。

    * 当初の計画では同 1、2 号機の運転期間は 40 年が設定されており、さらなる 20 年間の運転期間

    延長は経年管理(計画)に基づくものであるため、TVO 社は、適切な経年管理を実施しなければ

    ならない。原子炉圧力容器の加圧試験を 8 年ごとに実施する必要があり、最初の試験は 2019 年お

    よび 2020 年を予定しているという。

    そして 2018 年 9 月 20 日にフィンランド政府は、同原子力発電所 1、2 号機について、2038

    年までの 20 年間の運転認可延長を承認した。また、運転認可の延長と併せて、同発電所 1、2 号

    機の継続運転により発生する使用済み燃料等放射性廃棄物を現行のオンサイト貯蔵施設に引き

    続き中間貯蔵する許可を TVO 社に発給した。

    (2)建設・計画中の原子炉

    オルキルオト原子力発電所 3 号機(建設中)

    2002 年 5 月に新規原子炉の建設が承認され、2003 年 10 月に、オルキルオト原子力発電所 3

    号機の建設が決定された。同年 12 月には炉型に EPR が採用され、その後 2005 年 8 月に認可

    を受けて同月に着工された。当初、2009 年に運転開始を目指していたが、コスト高騰などを原

    因として、TVO 社から数回にわたって運転開始日の遅延が発表されてきた。2019 年 3 月時点に

    おける最新のスケジュール(2018 年 11 月 29 日発表)は、燃料装荷が 2019 年 6 月、送電網へ

    の接続が同年 10 月、商業運転の開始が 2020 年 1 月となっているが、さらに遅れる模様である。

    ・3 号機の運転に向けた動き

    TVO 社は、2016 年 1 月 12 日、同発電所 3 号機の計装制御(I&C)システム試験を開始し、

    2016 年 4 月 14 日には同機の運転許可申請書を TEM に提出したと発表した。13 万ページにわ

    たる申請書は、最初の 20 年間(2018~2038 年)の運転許可と、この運転期間中に発生する使

    用済み燃料を含む放射性廃棄物を保管するために、既存のサイト内中間貯蔵施設を使用する許

    可を求めている。その後 2019 年 2 月 25 日には、STUK が TEM に対して、安全に運転するこ

    とが可能であるとの意見書を提出した。

    その結果、TEM は、2019 年 3 月 7 日に同発電所 3 号機の運転許可を発給した。この運転許

    可は、2038 年末までの期間を限定したものである。また、燃料装荷および発電開始には別の許

    認可が必要である。TVO 社はさらに、2028 年末までに最初の定期安全評価を実施してその結果

    を STUK に提出しなければならない。

    なお、同発電所 3 号機は商業運転に向けて、IAEA による運転前の運転安全評価チーム(Pre-

    OSART)ミッションを受けている。同ミッションは 2017 年 3 月 5~22 日の 18 日間にわたっ

    て実施され、チームはいくつかの優れた点を見つけるとともに、いくつかの改善勧告を示した。

    ・係争問題

    同発電所 3 号機の建設遅延による損害を巡り TVO 社とアレバ社は、国際商業会議所(ICC)

    仲裁裁判所において係争中であった。損害額について TVO 社は 2015 年 7 月に、2018 年末時点

    で 26 億ユーロになると算定した一方、アレバ社とシーメンス社からなるコンソーシアムは、

  • フィンランド

    I-24-4

    2016 年 2 月、建設遅延による損害額について合計約 35 億 2,000 万ユーロと算定していた。

    この係争について TVO 社は、コンソーシアムとの間で包括的な和解合意(comprehensive

    settlement agreement)に署名したことを 2018 年 3 月 11 日に明らかにし、同 28 日にはこの

    和解合意が有効となったことを発表した。この和解合意では、同発電所 3 号機について、2019

    年 5 月に発電を開始するというコンソーシアム側による最新のスケジュールも記載されていた。

    TVO は、最初の支払いとしてコンソーシアムから 3 億 2,800 万ユーロを 2018 年 3 月中に受け

    取り、同建設プロジェクトの完成時、遅くとも 2019 年末までには、第 2 回目の支払いとして 1

    億 2,200 万ユーロを受け取ることとなる。

    ・フランスのフラマンビル 3 号機の影響

    STUK は、フランスのフラマンビル原子力発電所 3 号機(EPR)で 2015 年 4 月に原子炉容

    器の鋼材組成に問題が見つかったことを受けて、同じ EPR である同発電所 3 号機について調査

    報告書の提出を TVO 社に対して要請した。これを受けて TVO 社は 3 号機の原子炉容器の鋼材

    や加圧器について調査し、フラマンビル原子力発電所で発覚したものと同様の問題はないとし

    た報告書を 2015 年 6 月に STUK に提出した。これに対し STUK は、2015 年 12 月 8 日付の

    TVO 社宛て書簡において、同報告書を承認することを表明した。

    計画中の原子炉

    2010 年 7 月に 2 基の新規原子炉建設が決定された。1 基は、新規参入のフェンノボイマ

    (Fennovoima)社によるもので、建設サイトは北フィンランドのピュハヨキ(ハンヒキビ原子

    力発電所)に決定された。もう 1 基は TVO 社が進めるオルキルオト原子力発電所 4 号機である

    が、この建設計画は中止された。

    ・ハンヒキビ原子力発電所(ピュハヨキ)

    ピュハヨキ(Pyhäjoki)は福島事故後、世界で初めて選定された原子力発電所建設サイトであ

    る。2007 年に新規原子力発電所建設計画が発表され、建設サイト候補地には 40 か所の地域が

    応募し、許認可申請の段階で最終候補地として残ったのはシモ(Simo)とピュハヨキであった。

    建設に係る許認可申請は 2009 年 1 月にフィンランド政府へ提出され、2010 年 5 月に建設に関

    する原則決定(DIP)*が下された。最終的にピュハヨキが選定された理由として、岩盤が良質

    かつ堀削が容易であること、冷却水引込みトンネルがシモを建設サイトにするよりも 1km 短い

    こと、人口が少ないこと、地震の発生頻度が低いことが挙げられた。

    * 原則決定(DIP)の手続き:フィンランド特有の手続きで、原子力施設(原子力発電所や放射性廃

    棄物処分場施設)は、建設許可申請の前の段階において、政府が「その施設の建設が、フィンラン

    ドの社会全体の利益に合致する」ことを決定した上で国会が承認することが必要とされている。

    DIP は、1987 年に原子力法が改訂された際に導入された。

    ハンヒキビ原子力発電所建設計画は、フェンノボイマ社の株式を 34%所有していた E.ON 社

    が 2012 年 10 月に撤退を表明したことにより、一時は計画の存続が危ぶまれ、フェンノボイマ

    社の P.オッタバイネン会長(当時)は 2013 年 10 月までに建設の可否に関する決定を行うと述

    べたが、2013 年 11 月には、ボイマオサケイティエ SF(Voimaosakeyhtiö SF)社*が E.ON 社

    の所有分株式を引き受けた事で存続し、その後 2014 年 3 月 27 日には、ロスアトム社が株式の

    34%を取得することで決着した。

  • フィンランド

    I-24-5

    * フェンノボイマ社を有するコンソーシアムであり、60 社の株主で構成される。

    2012 年 1 月、東芝(EU-ABWR)とアレバ(EPR)が正式に応札し、フェンノボイマ社は評

    価の末、2013 年 2 月 25 日に東芝に優先交渉権を与えたが、2013 年 3 月にはロスアトム社との

    交渉を開始したことを明らかにした(提案された炉型は AES-2006)。2013 年 7 月 3 日にはフェ

    ンノボイマ社は、建設プロジェクトをロスアトム社の子会社であるルスアトム・オーバーシーズ

    社と開発していくことに合意し、同年 12 月 21 日に建設契約を締結した。

    また 2013 年 12 月にはハンヒキビ原子力発電所 1 号機の環境影響評価(EIA)の実施を TEM

    が許可し、2014 年 2 月にはその結果を TEM へ提出した。また同年 3 月には、2010 年に承認さ

    れた原則決定について、導入する原子炉をロシア製の AES-2006(出力 120 万 kW)に変更する

    修正案を政府に対して申請した。2014 年 9 月にフィンランド政府は、建設プロジェクトにおけ

    るフィンランド資本の比率が 60%以上であることを条件(フェンノボイマ社は、条件を満たし

    たことを 2015 年 8 月 5 日に発表)として、原則決定への修正を承認し、同年 12 月 5 日にフィ

    ンランド議会も、同建設プロジェクトの原則決定について、ロシア製の AES-2006 を採用する

    とした改訂(修正案)を承認した。

    一方、ロシア連邦内閣は 2014 年 12 月 30 日に、同建設プロジェクトについて、ロシアのソブ

    リン・ウェルス・ファンド(sovereign wealth fund)*から最大で 1,500 億ルーブル(23 億ド

    ル)を融資することを承認した。

    * ソブリン・ウェルス・ファンド:政府が出資する投資機関が運営するファンドのことであり、「政

    府系ファンド」などとも呼ばれる。

    同じく 2014 年 12 月、フィンランド内閣は、同発電所近隣の民間私有地(100 ヘクタール以

    上)について、フェンノボイマ社による(強制)買い取りを承認した。

    また、フェンノボイマ社は、2015 年 4 月 30 日に同発電所 1 号機の主建設業者として TITAN2

    社*を選定したことを発表した。これにより TITAN2 社は、同発電所 1 号機におけるサイト準

    備、インフラ整備作業、原子炉建屋とタービン建屋の建設、機器の設置作業、資材・機器・計装

    制御機器等に責任を持つこととなる。

    * 2014 年末にルスアトム・オーバーシーズ社は、ハンヒキビ原子力発電所建設計画について、

    TITAN2 社、アトムエネルゴマッシュ社、およびギドロプレス社の各社との間で締結した契約に

    関する概要を発表していた。

    続いて 2015 年 6 月 30 日、フェンノボイマ社は、同発電所 1 号機の建設許認可申請書を TEM

    に提出*1し、同年 8 月 5 日、建設許認可発行のための条件(EU 企業または欧州自由貿易連合加

    盟国の企業による 60%以上の所有)がクリアされた*2ことから、TEM は同 1 号機の建設認可申

    請書の審査を進めることを明らかにした。また、2016 年 10 月 31 日には、同社は同 1 号機の建

    設許可申請に係る書類を STUK に提出している。この申請書類は安全設計の原則と作業工程が

    記載されているものである。

    *1 2016 年 5 月 3 日、TEM は、同発電所 1 号機の建設計画への許認可発給について、スウェーデ

    ン放射線安全機関(SSM)からの反対意見が無かったことを明らかにしている。これは、フィ

    ンランド政府が北欧 4 か国における協定に基づき、同発電所 1 号機に関してスウェーデンに対

    して意見を求めており、それに SSM が回答したものである。

    *2 同日にフェンノボイマ社が、国内 3 社(フォータム社、SRV 社、Outokumpu 社)がハンヒキ

    ビ 1 号機の建設計画に参加したことにより、同計画の所有権の 65%以上を確保できたことを発

  • フィンランド

    I-24-6

    表(フォータム社が 6.6%、SRV 社が 1.8%の株式を取得し、Outokumpu 社は現状の 12.3%か

    ら 14.1%に増やすことで合意)。

    同建設計画の予定について、2018 年 8 月 29 日の報道では、2019 年の建設許可取得および

    2020 年の建設開始をフェンノボイマ社が目指しており、また、STUK への設計関連資料の提出

    が未だ完了していないとされた。その後同年 12 月 21 日に、建設計画についてフェンノボイマ

    社は、目標とする建設許可取得および建設開始の時期が 2021 年となり、それに伴い商業運転開

    始時期も 2028 年に遅れることを発表した*1。これは、同発電所 1 号機の事業者である RAOS

    Project*2 から提出された新しいスケジュールによるものであり、この情報に基づきフェンノボ

    イマ社は、RAOS Project とすべてのプロジェクトスケジュールの作成作業を開始したという。

    このプロセスは、2019 年第一四半期までに完了する見通しであるという。また、発電所の初期

    コスト、資金調達や廃棄物管理コストも含んだ、建設等費用総額については、2018 年 8 月 29 日

    の報道によると、2014 年春に決定された 6 億 5,000 万~7 億ユーロから変更はないという。

    *1 当初の予定では 2018 年に着工、2024 年に商業運転開始を予想していた。フェンノボイマ社は、

    2017 年 9 月に申請文書の審査に当初の想定より時間がかかるため、2019 年まで許可を受けら

    れないと発表していた。

    *2 ロスアトム社の子会社。同発電所の事業者で、設計、建設、設置、運営の責任を持つ。

    ・オルキルオト原子力発電所 4 号機(計画中止)

    2008 年に TVO 社が申請を行い、2010 年 5 月に建設が許可された。TVO 社は、2012 年 3 月

    26 日にアレバ社、GE 日立、三菱、東芝、韓国水力原子力発電会社(KHNP)の 5 企業に対し

    て入札を呼びかけ、2013 年 1 月に上記 5 社が応じた。入札で提案された原子炉はそれぞれ、

    EPR(アレバ社)、ESBWR(GE 日立)、EU-APWR(三菱)、EU-ABWR(東芝)、APR-1400

    (KHNP)である。当初、TVO 社は 2013 年内に業者を決定し、2015 年 7 月には建設許可を申

    請し、2020 年には運転開始することを予定していた。TVO 社は 2014 年 5 月に、同原子炉建設

    に関する原則決定の有効期限について、建設計画の遅れを理由に 5 年間の延長を求める申請書

    を TEM に提出した。しかし、フィンランド内閣は 2014 年 9 月に TVO 社の申請を否決した。

    その後 2015 年 6 月 24 日に TVO 社は、6 月 30 日に期限を迎える同発電所 4 号機の建設許認可

    について、再申請を行わないことを決定した。この決定について TVO 社は、同発電所 3 号機の

    運転開始が遅延していることを理由に同社の株主が決定したものであると述べている。これに

    より 2010 年の原則決定は 2015 年 6 月末に失効した。

    No. 発電所名 型式 状況 設備容量(万 kW) 営業運転

    開始日 ネット グロス

    1 LOVIISA-1(ロビーサ) VVER 運転中 50.2 52.6 1977.05.09

    2 LOVIISA-2(ロビーサ) VVER 運転中 50.2 52.6 1981.01.05

    3 OLKILUOTO-1(オルキルオト) BWR 運転中 88.0 91.0 1979.10.10

    4 OLKILUOTO-2(オルキルオト) BWR 運転中 88.0 91.0 1982.07.01

    5 OLKILUOTO-3(オルキルオト) EPR 建設中 160.0 172.0 -

    6 HANHIKIVI(ハンヒキビ) VVER 計画中 - 120.0 -

    7 OLKILUOTO-4(オルキルオト) - 計画中止 - - -

  • フィンランド

    I-24-7

    2 国際協力動向

    2.1 二国間原子力協力関係

    相手国 協定 日付

    インド 原子力平和利用に関する協力協定 2014 年 10 月 15 日署名

    ウクライナ 原子力事故の早期通報ならびに原子力安

    全と放射線防護に関する情報交換協定

    1996 年 2 月 8 日署名

    1997 年 9 月 7 日発効

    エストニア 原子力事故または放射線緊急事態の早期

    通報および原子力安全・放射線防護分野の

    情報・経験の交換に関する協定

    原子力事故の早期通報に関する条約

    (1986 年)の履行を目的として、両

    国政府が 1999 年(1 月 25 日、6 月

    11 日、6 月 21 日)に署名、同年 7 月

    10 日に発効。

    カナダ 核物質、原子力機器、施設および科学情報

    の交換に関する協力協定

    1976 年 3 月 5 日署名

    1976 年 8 月 15 日発効

    韓国 原子力平和利用に関する協力協定 2013 年 10 月 24 日署名

    サウジアラビア サウジアラビアにおける独立した放射線

    安全機関の設立を目的とした協力合意

    2017 年 7 月署名

    スウェーデン 北欧 4か国の国境地域にある原子力施設に

    関する原子力安全条件についての協力指

    デンマーク/ノルウェーと共に 1976

    年 11 月 15 日に発効

    核物質、技術および設備の輸出に係る指針

    に関する協定

    1983 年 3 月 4 日締結、同日発効

    原子力事故の早期通報と原子力施設の情

    報交換に関する協定

    1987 年 2 月 25 日署名

    同年 5 月 23 日発効

    デンマーク 北欧 4か国の国境地域にある原子力施設に

    関する原子力安全条件についての協力指

    ノルウェー/スウェーデンと共に 1976

    年 11 月 15 日に発効

    原子力事故の早期通報と原子力施設の情

    報交換に関する協定

    1987 年 2 月 25 日署名

    同年 5 月 4 日発効

    ドイツ 原子力事故の早期通報ならびに原子力安

    全と放射線防護に関する情報交換協定

    1992 年 12 月 21 日署名

    1993 年 5 月 28 日発効

    ノルウェー 北欧 4か国の国境地域にある原子力施設に

    関する原子力安全条件についての協力指

    デンマーク/スウェーデンと共に 1976

    年 11 月 15 日に発効

    原子力事故の早期通報と原子力施設の情

    報交換に関する協定

    1987 年 2 月 25 日署名

    同年 8 月 20 日発効

    ポーランド 原子力安全と核セキュリティの分野にお

    ける協力と技術情報の交換に関する了解

    覚書

    2017 年 9 月 19 日署名(STUK とポ

    ーランド原子力庁)

    ロシア 原子力平和利用に関する協力協定 ソ連時代の 1969年 5月 14日に署名、

    同年 9 月 28 日に発効、その後 1999

    年 9 月 27 日に失効し、2014 年 2 月

    25 日に新たに締結

    原子力事故の早期通報と原子力施設の情

    報交換に関する協定

    1995 年 1 月 11 日署名

    1996 年 6 月 6 日発効

    スウェーデン、

    ノルウェー、ベ

    ラルーシ

    放射線安全機関との情報交換等の協力に

    関する了解覚書

    スウェーデン、ノルウェー、ベラルー

    シの放射線安全機関と 2016 年 10 月

    4 日に署名(期間は 5 年間)

  • フィンランド

    I-24-8

    2.2 国際的取組への参加状況

    (1) 協力全般

    ・IAEA:1958 年 1 月 7 日加盟

    ・経済協力開発機構(OECD)原子力機関(NEA):1976 年加盟

    (2) 核不拡散

    ・核兵器不拡散条約(NPT):1968 年 7 月 1 日に署名、1970 年 3 月 5 日発効

    ・IAEA 保障措置協定:1995 年 12 月 1 日発効

    ・IAEA 保障措置追加議定書:1998 年 9 月 22 日署名、2004 年 4 月 30 日発効

    ・包括的核実験禁止条約(CTBT):1996 年 9 月 24 日署名、1999 年 1 月 15 日批准

    ・IAEA 保障措置追加議定書:1998 年 9 月 22 日署名、2004 年 4 月 30 日発効

    ・ザンガー委員会(NPT 加盟の原子力輸出国が NPT 第Ⅲ条 2 項を遵守するための自発的グ

    ループ)

    ・原子力供給国グループ(NSG:ロンドン・ガイドライン輸出管理グループ)

    (3) 原子力安全

    ・北欧の放射線事故に関連した緊急時相互支援協定:デンマーク/スウェーデン/ノルウェー

    と IAEA が 1963 年 10 月 17 日署名、1965 年 6 月 23 日発効

    ・原子力事故の早期通報に関する条約:1986 年 9 月 26 日署名、1987 年 1 月 11 日発効

    ・原子力事故援助条約:1986 年 9 月 26 日署名、1990 年 12 月 28 日発効

    ・原子力分野での第三者損害賠償に関するパリ条約(1972 年 6 月 16 日発効)およびブリュ

    ッセル補足条約(1977 年 4 月 14 日発効)

    ・ウィーン条約・パリ条約の適用に関する合同議定書:1988 年 9 月 21 日署名、1995 年 1

    月 3 日発効

    ・原子力安全条約:1994 年 9 月 20 日署名、1996 年 10 月 24 日発効

    ・使用済み燃料と放射性廃棄物の安全管理に関する合同条約:1997 年 10 月 2 日署名、2001

    年 6 月 18 日発効

    (4) その他協力

    ・核物質防護条約:1981 年 6 月 25 日署名、1989 年 10 月 22 日発効

    ・北欧四か国の環境保護に関する条約:スウェーデン/ノルウェー/デンマークと共に

    1974 年 2 月 19 日締結

    ・廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約:1979 年 6 月 2 日発効

    ・国連欧州経済委員会(UNECE)越境環境影響評価に関するエスポー条約:1995 年 8 月

    10 日発効

    ・国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC)(2010 年 6 月に、国際原子力パート

    ナーシップ(GNEP)より改組):オブザーバー国

  • フィンランド

    I-24-9

    2.3 人材育成に関する協力の状況

    2016 年 1 月 27 日、STUK の開催する年会において、参加していたロシアの連邦環境・技術・

    原子力監督庁(Rostechnadzor)と原子力規制に関する情報交換を行った。両機関は 2016 年内

    に実施する協力プログラムについても合意に達し、ロシア製の原子炉が使用されるハンヒキビ

    原子力発電所建設計画についても議論したという。

    3 原子力研究開発推進・規制体制

    3.1 原子力関連行政・規制機関の役割

    (1)原子力関連行政

    フィンランドのエネルギー政策は雇用経済省(TEM:Ministry of Economic Affairs and

    Employment)が所管しており、事業の計画・建設・操業全般の管理・監督を担っている。

    (2)原子力規制機関

    フィンランドの規制機関は、政府、雇用経済省(TEM)、放射線・原子力安全センター(STUK)

    の三者である。

    政府は、一般安全規則の策定と許認可の権限を有している。TEM は、原子力エネルギー政策

    を担当し、原子力発電所、使用済み燃料関連施設、放射性廃棄物施設やその他の原子力関連施設

    の許認可手続きや管理を実施している。また、STUK は、詳細安全規則を定める権限を有し、安

    全規制を実施している。

    STUK には原子力発電所の建設・運転に関する許認可の発給の権限はないが、安全規制の細

    目を定める権限を有しており、STUK の安全規制を満足しない限り、政府は許認可を発給する

    ことができない仕組みになっている。2015 年 5 月に原子力及び放射線法が改正され、STUK の

    安全規制に関する権限がより強化された。

    3.2 規制体制図(組織、法令)

  • フィンランド

    I-24-10

    3.3 原子力研究開発機関と研究内容

    <研究機関一覧・主な研究内容等>

    機関名、ホームページ 主な研究内容等

    フィンランド技術研究センター

    ( VTT Technical Reserch Centre of

    Finland)

    http://www.vttresearch.com

    ・ TEM の管轄下にある機関である。複合科学技術を応用した

    研究機関では北欧最大規模の研究機関である。同研究センタ

    ーの活動内容は、国の原子力研究プログラムの管理・運営や、

    原子炉の研究、安全及び環境への影響の研究、原子力発電所

    の運転・維持、核融合技術の研究、放射性廃棄物の管理・処

    分、先進的核分裂技術の研究などを行っている。

    フィンランド地学研究所

    (GTK:Geologian tutkimuskeskus)

    http://en.gtk.fi

    ・ TEM の管轄下にある機関である。放射性廃棄物処分に関す

    る研究や、岩盤工学研究、地下水研究等を行っている。

    3.4 研究炉を含む原子力研究開発施設の計画、建設、運転、保守、廃止、共用等に関する動向

    VTT が 1962 年に 250kW の TRIGA Mark II 研究炉である FiR 1(Finnish Reactor 1)の運

    転を開始したが、同研究炉は 2015 年 6 月 30 日に恒久停止した。

    2018 年 12 月 3 日に、VTT とフォータム社は、FiR 1 の廃止措置における協力に関する基本

    合意書に署名をした。VTT は 2017 年に FiR 1 の廃止措置申請を提出しており、早ければ 2021

    年に解体作業に入ることになるという。また、両者は原子力発電所構造素材研究所(nuclear

    power plant structural materials research laboratory)の廃止措置にも協力する予定で、同研

    究所では 2019 年から解体作業が開始される予定である。

    3.5 原子力分野の研究開発に関する公募制度

    関連する公開情報は無し。

  • スイス

    I-25-1

    スイス

    1 原子力事情・原子力政策動向

    1.1 エネルギー政策と原子力政策の状況と動向

    <エネルギー政策と原子力の位置づけ>

    連邦参事会(内閣)はエネルギー構造改革に向けた法案(改正エネルギー法(エネルギー戦略

    2050/Energy Strategy 2050))を、2013年 9月に連邦議会へ提出し、同法案は 2016年 9月

    に連邦議会で採択された。2017 年 5 月 21 日には、この改正エネルギー法の是非を問う国民投

    票が実施され、58.2%の賛成票により改正が承認された(投票率は 42.3%)。この法案は、連邦

    税法に関する部分を除き 2018 年 1 月 1 日に発効した。2011 年の福島事故後から年月をかけて

    慎重に検討し策定されたこの改正エネルギー法は、原子炉の新設を禁止し、風力や太陽光、水力

    などの再生可能エネルギーを推進し、その法的枠組を改善していくことが盛り込まれている。ま

    た、2035 年までに太陽光や風力の発電量を 2017 年比で 4 倍に引き上げることなどを目指して

    いる。

    原子力の位置づけ

    スイスでは、1946 年に連邦議会が原子力推進の決議を承認したことにより、原子力平和利用

    に向けた研究開発が始まった。1957年には憲法に原子力利用を規定する条文が明記され、1959

    年 12月 23日に連邦内閣が原子力法を承認し、商業用原子力発電の導入体制が整った。

    1960 年代に入り、電力需要の長期見通しの検討が行われた結果、豊富にあると考えられてい

    た水力発電の供給能力だけでは増加する需要を賄えないことが判明し、電力会社は石炭火力発電

    所と石油火力発電所を建設することを提案した。しかし、それまでの水力発電によるクリーンエ

    ネルギーが損なわれるとして環境団体等が反対したため、化石燃料発電の大規模導入はできず、

    炭素排出量の少ない原子力発電に目が向けられることとなった。

    内閣は、2004 年から気候変動対策と新規原子力発電所建設を含む長期エネルギー政策の検討

    に着手し、2007年 2月に長期エネルギー見通しに基づく「エネルギー基本政策」を発表し、こ

    の政策実施に向けて、「エネルギー効率と再生可能エネルギーに関する行動計画」(Action Plan

    on Renewable Energy)が 2008年 2月 20日に連邦内閣によって承認された。政策の中では、

    炭素排出量を削減しエネルギーの独立性を高めていく手段として原子力は重要であるとされ、

    2034年までに運転寿命を迎える 5基の原子力発電所に対する対応策の検討が行われていた。

    しかし、福島事故以降、スイスは脱原子力へと方針を転換した。2011 年 5 月 25 日、内閣は

    2011 年 2 月の国民投票で承認されていた既設炉の建て替えを行わないと決定した。その後、内

    閣が提出した新規原子力発電所の建設を全面的に禁止する「新エネルギー戦略」は、2011 年 6

    月にスイス国民議会(下院)を通過し上院に提出された。2011年 9月 7日に開催された全州会

    議(上院)のエネルギー環境委員会では、原子炉建設全面禁止ではなく、現在運転されているよ

  • スイス

    I-25-2

    うな旧型の建設のみを禁じ、最新型の原子炉の建設は禁止しないという条項が付け加えられたが、

    最終的にはその条項は削除され、下院に再提出され承認を受けた。その後、2011 年 9 月 28 日

    に再び上院で投票が行われた結果、賛成多数で可決され、2034 年までにスイス国内全ての原子

    力発電所を段階的に閉鎖し、再生可能エネルギー対策を強化することが決定した。運転中の原子

    炉については、運転寿命まで運転した後に閉鎖することとなった。

    一方、原子力研究の全面禁止案に対しては、国民党や急進党など産業界寄りの右派から強い反

    対が出たため差し戻された。その後、みどりの党は法制化を目指して活動を行い、2012 年 11

    月には国民投票の実施に必要な署名数を獲得したと発表した。

    原子炉の運転寿命については、2016年 3月 2日に、同国の原子力発電所について運転寿命に

    上限を設ける法案が下院で否決された*。これにより、スイス国内の原子力発電所は技術的限界

    まで運転を行うことが可能となった。なお、原子力発電所の事業者に対して高経年の原子炉に関

    する長期安全計画(廃止措置に係る計画をも含む)の提出を求めた ENSI の勧告も、同様に否

    決された。

    * 2015年 9月、上院は、原子力発電所の運転寿命に上限を設けないことを決定している。また下院

    のエネルギー委員会は、2016年 1月、新規原子炉の建設禁止法案を覆す決定を行うとともに、ベ

    ツナウ原子力発電所に対して運転寿命を設定する案を否決している。

    早期運転停止については、スイス国内の原子力発電所の早期運転停止*を問う国民投票が 2016

    年 11月 27日に実施され、54.2%の反対多数により否決された。投票率は 45%であった。

    * 元々スイスは 2034年までに原子力発電所の全廃を決めていたが、これを 5年前倒しして 2029年

    までに全廃することが提案されていた。

    1.2 原子力関連予算の状況と動向

    関連する公開情報は無し。

    1.3 原子力発電所の建設・運転状況

    (1)既設炉

    2019年3月現在、5基の原子炉が運転中である。内陸国であるため、原子力発電所は河川を冷

    却水に使用しており、全ての原子

    力発電所がライン川の支流アー

    レ川沿いに位置している。

    1969年、ベツナウ原子力発電所

    1号機(ウェスチングハウス(WH)

    社製PWR)が、スイス国内初の商

    業炉として稼働を開始した。続い

    て、同発電所2号機(WH社製PWR)

    とミューレベルク原子力発電所

    (GE製BWR)が1972年、ゲスゲ

    ン原子力発電所(シーメンス製

  • スイス

    I-25-3

    PWR)が1979年、ライプシュタット原子力発電所(GE製BWR)が1984年にそれぞれ商業運転

    を開始した。

    スイスでは、原子炉の運転寿命を 50年とし*、2007 年の「エネルギー政策」が発表された後、

    原子力産業界はこの政策に従い既設炉を新しい原子炉に置き換えるための準備を開始した。

    * 現実には「寿命 50 年」と定めた法律は存在せず、(原子力発電の安全や核廃棄物の保存・安全を

    監視する)ENSIが安全であると判断した場合は、その後も運転できる。

    まず、2008年 6月 9日に、ゲスゲン原子力発電所の 40%の資本を所有する Atel AG の子会社

    である Kernkraftwerk Niederamt AG 社が、スイス連邦エネルギー庁(BFE)に対し、出力 110

    万~160万 kWの新規炉建設に関する概要許可申請を行った。建設サイトは、ゲスゲン原子力発

    電所の近くのゾロトゥルン州ニーダーアムト(Niederamt)であった。

    続いて2008年12月4日、ベツナウ原子力発電所を所有するAXPO社の子会社Kernkraftwerk

    Beznau AG とミューレベルク原子力発電所を所有する BKW(BKW FMB Energie AG)社の子

    会社 Kernkraftwerk Mühleberg AG が、BFEに対してそれぞれ出力 110万~160万 kWの原子

    炉 1 基ずつの建設に関する概要許可申請を行った。建設サイトはともに既設の原子力発電所サ

    イト内である。

    以上の 3 つの許可申請に対して、2010 年 11 月 15 日、ENSI は、3 つの新規炉の安全性は計

    画を進めるのに十分であり、建設サイト選定のための国際基準を技術的に完全に満足していると

    の報告書を発表した。

    2011 年 2 月 13 日に、ベルン州でミューレベルク原子力発電所の置き換えとなる新規炉の建

    設を巡る住民投票が実施され、投票者の 51%が建設を支持し小差ではあったが賛成票が上回る

    結果となった。しかし、福島事故後に政府が脱原子力の決定を行ったため、原子炉建設計画は全

    て凍結された。その後、2016年 10月 12日に、AXPO 社、BKWおよび Alpiq社は、2008年に

    提出していた原子力発電所建設に関する申請を取り下げたことを共同声明で発表した。

    また、運転中の 5基の原子炉に関しては、ベツナウ原子力発電所 1号機が 2019年、同発電所

    2号機が 2021年、ミューレベルク原子力発電所が 2019年 12月、ゲスゲン原子力発電所が 2029

    年、ライプシュタット原子力発電所が 2034年と順次、運転寿命を迎えた時点で停止されること

    となった。

    ミューレベルク原子力発電所

    ミューレベルク原子力発電所は当初 2022 年に停止予定であったが、2012 年 3 月 1 日に連邦

    行政裁判所(FAC)が 2013 年 6 月 28 日までに停止するよう判決を下した(反対派住民が提訴

    していた)。しかし、同 13 日、同発電所の所有者である BKW 社は、最高裁判所へ上告、それ

    に伴い同年 12月 19日に、2013年に予定していた同発電所の改修工事の延期を決定した。2013

    年 3月 6日、ベルン州政府は、同発電所について「2022年までの間に、可能な限り速やかに閉

    鎖する」との対案を提示し、また、3月 28日に最高裁判所は FACの判決を破棄し、同発電所に

    無期限の運転許可を認めた。これを受けて BKW社は、同発電所を 2026年まで稼働する予定で

    あったが、2013年 10月 30日に、今後の経済や規制、政治などの情勢の不確実性を考慮した結

    果、同発電所を 2019年に閉鎖すると発表した。なお、市民グループが同発電所の即時閉鎖を要

  • スイス

    I-25-4

    求したため 2014 年 5 月に住民投票が行われたが、投票者の 3 分の 2近くが即時閉鎖に反対し、

    予定通り 2019 年まで運転されることとなった。BKW 社は、2016 年 3 月 2 日に、同発電所を

    2019年 12月 20日に恒久停止すると発表した。2018年 6月 21日には、連邦環境・運輸・エネ

    ルギー・通信省(UVEK)から同発電所の廃止措置命令*を受領している。BKW 社によると、

    同発電所の廃止措置は 2020年 9月の開始を予定している。

    * この命令は、BKW社が 2015年に提出した廃止措置計画に基づいて廃止措置を実施するよう命じ

    たものである。なお BKW社の計画については、2017年秋に ENSIおよび連邦原子力安全委員会

    (NSC)が高い評価を与えていた。

    その他

    安全性検査のために 2015年から停止しているベツナウ原子力発電所 1号機*について、ENSI

    は 2018 年 3 月 6 日に、同発電所を所有する AXPO 社が提出していた補足的なセーフティケー

    ス(supplementary safety case)を承認した。この承認を受けて同発電所 1号機は、2018年 3

    月に再稼働した。なお AXPO 社が提出していたセーフティケースは、同発電所 1 号機が 60 年

    間の運転を行うにあたり、技術的な安全要件をすべて満たしているとの内容であった。

    * ベツナウ原子力発電所 1号機は、2012年にベルギーのドール原子力発電所 3号機の圧力容器(RPV)

    でひび割れが見つかったことを受けて、ドール原子力発電所 3号機と同じ工場で製造された RPV

    の安全性についての検査を求められ、2015年から停止していた。なお、スイスでは原子力発電所

    の運転寿命に法定年限が定められていないため、10年ごとの定期安全評価(PSR)が必要とされ

    ており、その評価によって追加で 10年間の運転延長がその都度認められている。

    一方、欧州委員会(EC)は 2014年に、福島事故後に実施された EU ストレステストを受け、

    原子力発電所において 2017年よりトピカル・ピアレビューを実施することを決定した。このト

    ピカル・ピアレビューについて、2017 年 4 月 28 日に ENSI は、スイスの原子力発電所の参加

    を決定した。トピカル・ピアレビューの 1回目の議題は原子炉の経年化管理*であり、ENSI は、

    他の EU 諸国の原子力発電所における経年化管理での経験に学ぶことができるとしている。

    * EU Topical Peer Review 2017 on “Ageing Management of Nuclear Power Plants”.

    そして、ENSIは 2017年末に、原子炉の経年管理をテーマとしたトピカル・ピアレビューに

    関する報告書(National Assessment Report)を、欧州原子力安全規制者グループ(ENSREG)

    に対して提出した*。この報告書において ENSIは、スイスにおいて、組織的に経年管理を行う

    にあたり、ガイドライン、法律、および機関等の適切な規制枠組みが整備されていると結論付け

    るとともに、経年管理に関連し IAEA と西欧原子力規制者会議(WENRA)の定める要件が実

    施されていると結論付けている。またこの報告書において ENSI は、スイス国内の原子力発電

    所の経年管理について、許認可事業者の年次報告によるとスイス国内の規制に則って実施される

    等しているとの見解を示すとともに、良好事例についても言及している。

    * ENSREGは、2018年 10月 4日にスイスを含む原子力発電所および研究炉の経年管理に関する初

    のトピカル・ピアレビュー報告書(The first topical peer review‘Ageing management’)を承

    認している。同ピアレビューには EU加盟 16か国および非加盟 3か国(ノルウェー、スイス、ウ

    クライナ)が参加した。経年管理は、福島事故関連ストレステストの実施以降、最も重要な安全

    関連課題であるという。

    (2)建設・計画中の原子炉

    現在、建設・計画中の原子炉はない。

  • スイス

    I-25-5

    No. 発電所名 型式 状況 設備容量(万 kW) 営業運転

    開始日 ネット グロス

    1 BEZNAU-1(ベツナウ) PWR 運転中 36.5 38.0 1969.12.09

    2 BEZNAU-2(ベツナウ) PWR 運転中 36.5 38.0 1972.03.04

    3 GÖSGEN(ゲスゲン) PWR 運転中 101.0 106.0 1979.11.01

    4 LEIBSTADT(ライプシュタット) BWR 運転中 122.0 127.5 1984.12.15

    5 MÜHLEBERG(ミューレベルク) BWR 運転中 37.3 39.0 1972.11.06

    2 国際協力動向

    2.1 二国間原子力協力関係

    相手国 協定 日付

    オーストラリア 原子力平和利用に関する協力協定 1986年 1月 28日署名

    1988年 7月 27日発効

    カナダ 原子力平和利用に関する協力協定 1987年 12月 22日署名

    1989年 6月 13日発効

    原子力平和利用に関する協力協定第 V1 条の

    濃縮・再処理に関する規定履行を促進するプロ

    セスを設置するための書簡交換

    1987年 12月 22日署名

    1989年 6月 13日発効

    ユーラトム核融合プロジェクトでの利用にカ

    ナダから直接・間接にスイスヘ移転されるトリ

    チウムとトリチウム関連機器、及びそうした装

    置で生産され、または保持されるトリチウムに

    適用される保障措置についての合意

    1995年 3月 8日署名、同日発効

    スウェーデン 原子力平和利用に関する協力協定 1968年 11月 30日合意

    1990年 4月 25日追加議定書に署名、

    同日発効

    1968 年の原子力平和利用に関する協力協定の

    追加議定書

    1990 年 4 月 25 日署名、同日付の書

    簡交換により発効

    中国 原子力平和利用に関する協力協定 1986年 11月 12日署名

    ドイツ 緊急時の放射線防護に関する協定 1978年 5月 31日署名

    1980年 2月 15日発効

    国境地域の原子力施設に関する情報交換協定 1982年 8月 10日署名

    1983年 9月 19日発効

    災害または重大事故発生時の相互支援協定 1984年 11月 28日署名

    1988年 12月 1日発効

    フランス 原子力平和利用に関する協力協定 1970 年 5 月 14 日署名、1971 年 9

    月 27日批准書を交換(期限は 10年)

    1970 年 5 月 14 日の旧協定に代わる

    ものとして、両国政府が 1988 年 12

    月 5日署名、1990年 12月 1日発効

    北ライン地域国境での隣国問題に関する三国

    委員会

    1975年 10月 22日締結(ドイツと共

    に)環境、エネルギー、産業立地問

    題、緊急時相互支援を扱う。

    災害および重大事故時の相互支援に関する協

    1987年 1月 14日署名

    1989年 4月 1日発効

    放射線影響をもたらす事象・事故発生時の情報 1989年 11月 30日署名

  • スイス

    I-25-6

    交換に関する協定 1990年 1月 18日発効

    米国 米国 NRC 配管健全性研究グループヘの参加

    に関する合意

    1987年 2月 3日と 3月 3日署名

    同年 3月 3日発効。

    原子力平和利用に関する協力協定 1997年 10月 31日署名

    1998年 6月 23日発効

    原子力安全を対象とした技術情報交換と協力

    に関する協定

    1974 年 12 月 9 日署名(初回、5 年

    毎に更新)(ENSIと NRC)

    2017年 9月 27日更新

    2.2 国際的取組への参加状況

    (1) 協力全般

    ・IAEA:1957年 4月 5日加盟

    (2) 核不拡散

    ・核兵器不拡散条約(NPT):1969年 11月 27日署名

    ・包括的核実験禁止条約(CTBT):1999年 10月 1日批准

    (3) 原子力安全

    ・原子力早期通知条約:1988年 5月 31日年批准、1988年 7月 1日発効

    ・原子力事故援助条約:1988年 5月 31日年批准、1988年 7月 1日発効

    ・共同議定書:1988年 9月 21日署名

    ・原子力安全条約:1996年 12月 11日批准、発効

    ・放射性廃棄物等安全条約:2000年 4月 5日批准、2001年 6月 18日発効

    ・パリ条約:2009年 3月 9日批准

    (4) その他協力

    ・核物質防護条約:1987年 1月 9日署名、1987年 2月 8日発効

    ・国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC)(2010年 6月に、国際原子力パート

    ナーシップ(GNEP)より改組):オブザーバー国

    2.3 人材育成に関する協力の状況

    関連する公開情報は無し。

    3 原子力研究開発推進・規制体制

    3.1 原子力関連行政・規制機関の役割

    機 関 主な役割・権限・活動等

    連邦評議会(内閣) ・ 原子力施設を新設する際の概要承認(計画全体の大枠に対する承認)を発給

    連邦環境・運輸・エネル

    ギー・通信省(UVEK)

    ・ エネルギー問題を扱う連邦機関・原子力施設の建設・運転許認可を発給

    連邦エネルギー庁(BFE) ・ UVEKの下部官庁(エネルギー行政を所轄)

    ・ 使用済み燃料・放射性廃棄物輸送の許可を発給

  • スイス

    I-25-7

    ・ 原子力施設の一連の許認可手続を管理

    ・ 原子力関連法規の制定準備

    ・ 特別計画「深地層処分場」に則った放射性廃棄物処分場選定手続の実施

    ・ 核物質の管理、インベントリ作成など

    連邦原子力安全検査局

    (ENSI)

    ・原子力施設の安全管理、規制・監督の実施・原子力施設の許認可手続におい

    て連邦評議会に専門的な意見書や評価報告書を提出

    原子力安全委員会(KNS) ・原子力安全に関するあらゆる問題について、連邦評議会および UVEKに助

    言する諮問機関

    ・2008年 1月 1日に旧連邦原子力施設安全委員会(KSA)を改組、規模縮小

    して発足

    地層処分場専門家グルー

    プ(EGT)

    ・UVEKの諮問委員会であった放射性廃棄物管理委員会(KNE)の後継組織

    地層処分場に関する地球科学的問題及び建設技術的な問題で ENSIを支援

    ・2012年に設置された

    放射性廃棄物管理ワーキ

    ンググループ

    (AGNEB)

    ・放射性廃棄物管理プロジェクトの調整機関

    ・連邦政府と電気事業者のバックエンド活動のモニタリング・放射性廃棄物問

    題に関する連邦評議会の決定の準備

    (1)原子力関連行政

    環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)下にある連邦エネルギー庁(BFE)が、スイス

    のエネルギー政策を担っている。原子力施設の建設、操業許可はUVEKにより発給され、これ

    ら原子力施設の許認可手続全般の管理や原子力関連法規の準備等にあたるのがUVEKの下部組

    織でエネルギー政策を担当するBFEである。

    同庁は、使用済み燃料、放射性廃棄物の輸送許可の発給も行っている。また、BFEの水力・

    廃棄物法務サービス部(RWE)内の放射性廃棄物処分課(EA)は都市計画法上の特別計画「深

    地層処分場」の実施にあたり、放射性廃棄物の地層処分場選定プロセスを主導している。地層処

    分の施設立地の選定や建設は、電力会社などの放射性廃棄物発生者によって設立されたスイス放

    射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)が行っている。

    (2)原子力規制機関

    スイスの原子力安全規制の中心を担っているのが、連邦原子力安全検査局(ENSI)である。

    ENSIは、ENSI評議会、組織運営部門、監査部門からなり、連邦評議会により選任された専門

    家5~6名の評議員によって構成されている。

    かつてはBFE傘下の1982年に設立された原子力施設安全本部(HSK:Swiss Federal Nuclear

    Safety Inspectorate)が原子力施設における安全防護と放射線防護の監督、規制を行っていた。

    しかし、スイスの原子力法が、原子力部門の監督・規制機関の独立を規定しているのに対し、

    HSKは組織上、許認可発給機関であるUVEKが所轄するBFEの一部であり、推進部門からの独

    立性が保たれていなかったため、独立した機関とするための立法制定に向けて検討が進められた。

    2007年6月22日、HSKをENSIに改組することを目的とした「連邦原子力安全検査局(ENSI)

    に関する連邦政府の法律」(ENSI法)の法案が、連邦議会で可決され、HSKは連邦原子力安全

    検査局(ENSI)に改組された。HSKからの移行は2008年1月に開始、2009年1月1日に完了した。

    また、2017年8月31日にENSIは、ENSIの組織規則の改訂版*を公表した。ENSIの理事会は、

  • スイス

    I-25-8

    ENSIに関する連邦法により、組織規則を策定し発行するよう求められている。なおENSIの組

    織規則は�