12
アモルファス したナノ アモルファス したナノ アモルファス したナノ アモルファス したナノ アモルファス したナノ アトムプローブによる アトムプローブによる アトムプローブによる アトムプローブによる アトムプローブによる Three-dimensional Atom Probe Studies on the Microstructural Evolution Processes of Nanocrystalline Soft and Hard Magnetic Materials つく (〒 K. Hono National Research Institute for Metals, 1-2-1 Sengen, Tsukuba, 305-0047 This paper reviews our recent atom probe studies on the microstructural evolution of nanocrystalline soft and hard magnetic materials processed by crystallization of melt-spun amorphous ribbons. Since the magnetic prop- erties of these materials change sensitively depending on the microstructure, subnanoscale microstructural char- acterizations using a three-dimensional atom probe (3DAP) have revealed various useful information on the microstructure and properties. Key Words: nanocrystalline soft magnetic materials, nanocomposite magnets, exchange spring magnet, mi- crostructure, atom probe, transmission electron micros- copy 1. 1. 1. 1. 1. じめに じめに じめに じめに じめに いられている intrinsic より、多く するこ により引き されるextrinsic いている。こ ように 感に変 する 、 れた する するために するこ ある。 よう する めざましいナノ 1) ナノコンポジット 2) あり、これ ナノスケール よって大きく変 する。モデル により るため おおよそ するこ きるが、 して づけるために 、多く より プロセス けれ い。ナノ 、ナノコンポジット にアモルファス 帯を するこ により られるナノ いている。一 ナノコン ポジット 液体 されるナノコン ポジット えて するこ により ている。これら により大きくナノ が変 するが、 くナノ るため 液体 また アモルファス から めて ある。またナノ ナノコンポジット により キネティクス が大きく変 し、これにより するこ きるこ られているが、 する われてい いために、こ れら に影 をおよぼすメカニ ズム されてい ある。そ ためにナノ をサブナノスケール する があるが、 いて ナノ 、 にボ ロン する い。 これま にアトムプローブ いう いて、 サブナノ うこ により し、 ナノ して きた。 から いられてきた1 アトムプロー ブによる ナノ について

アモルファスの結晶化を利用したナノ結晶磁性材料の微細組 …FIM tip Ion + + start signal stop signal HV HV pulser 8ch timer Charge ADC Interface Personal Computer

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  • アモルファスの結晶化を利用したナノ結晶磁性材料の微細組織制御アモルファスの結晶化を利用したナノ結晶磁性材料の微細組織制御アモルファスの結晶化を利用したナノ結晶磁性材料の微細組織制御アモルファスの結晶化を利用したナノ結晶磁性材料の微細組織制御アモルファスの結晶化を利用したナノ結晶磁性材料の微細組織制御:::::3次元アトムプローブによる研究3次元アトムプローブによる研究3次元アトムプローブによる研究3次元アトムプローブによる研究3次元アトムプローブによる研究

    Three-dimensional Atom Probe Studies on the Microstructural Evolution Processes of NanocrystallineSoft and Hard Magnetic Materials

    宝野和博金属材料技術研究所 つくば市千現1-2-1(〒305-0047)

    K. HonoNational Research Institute for Metals, 1-2-1 Sengen, Tsukuba, 305-0047

    This paper reviews our recent atom probe studies on

    the microstructural evolution of nanocrystalline soft and

    hard magnetic materials processed by crystallization of

    melt-spun amorphous ribbons. Since the magnetic prop-

    erties of these materials change sensitively depending on

    the microstructure, subnanoscale microstructural char-

    acterizations using a three-dimensional atom probe

    (3DAP) have revealed various useful information on the

    microstructure and properties.

    Key Words: nanocrystalline soft magnetic materials,

    nanocomposite magnets, exchange spring magnet, mi-

    crostructure, atom probe, transmission electron micros-

    copy

    1.1.1.1.1.はじめにはじめにはじめにはじめにはじめに

     実用的に用いられている磁性材料では、物質に特有な intrinsicな物性はもとより、多くの場合微細構造を制御することにより引き出されるextrinsicな磁気特性を用いている。このように磁気特性は微細構造に敏感に変化するので、優れた磁気特性を有する材料を開発するためには微細構造と磁気特性の因果関係を解明することが重要である。本稿で取り上げようとする材料は近年発展のめざましいナノ結晶軟磁性材料 1)とナノコンポジット磁石 2)であり、これらの磁気特性は合金のナノスケールの微細組織によって大きく変化する。モデル計算により最適な磁気特性を得るための微細組織はおおよそ予測することができるが、合金の自己組織化を利用して理想的

    な微細組織に近づけるためには、多くの試行錯誤により合金組成やプロセス条件を探索しなければならない。ナノ結晶軟磁性材料、ナノコンポジット磁石ともにアモルファス薄帯を結晶化することにより得られるナノ結晶組織を用いている。一部のナノコンポジット磁石では液体急冷中に形成されるナノコンポジット組織に熱処理を加えて組織を最適化することにより特性を得ている。これらの磁性材料では合金組成、微量添加元素、熱処理により大きくナノ結晶組織が変化するが、再現良くナノ組織を得るためには液体急冷時またはアモルファス相からの結晶化反応の制御が極めて重要である。またナノ結晶軟磁性材料でもナノコンポジット磁石でも微量元素添加により結晶化のキネティクスや形成相が大きく変化し、これにより磁気特性を改善することができることは実験的に良く知られているが、微細組織形成に関する基礎研究が十分に行われていないために、これらの添加元素が組織形成に影響をおよぼすメカニズムは十分に理解されていないのが現状である。そのためにナノ結晶組織をサブナノスケールの空間分解能で評価する必要があるが、最新の電子顕微鏡を用いてもナノ結晶組織中の合金元素の分配、特にボロンなどの軽元素の挙動を解明するのは容易ではない。 我々はこれまでにアトムプローブという手法を用いて、合金中のサブナノ領域の組成の局所分析を行うことにより磁性材料の微細組織を定量的に解析し、磁気特性と合金ナノ組織の因果関係を解明してきた。従来から用いられてきた1次元アトムプローブによる磁性材料のナノ組織の研究については

  • 1994年に本誌に掲載された拙稿で概説されている3)。それ以降ここ数年で3次元アトムプローブという新しい手法が飛躍的に発展し、3次元実空間で合金中の元素の分布をほぼ原子レベルの空間分解能で可視化することができるようになってきた 4-6)。この新しい手法を用いることによりナノ結晶軟磁性材料、ナノコンポジット磁石材料のナノ組織形成メカニズムの研究がここ数年間で飛躍的に進展したので、本稿において再度この分野の研究動向を概説する。

    2.2.2.2.2.3次元アトムプローブ3次元アトムプローブ3次元アトムプローブ3次元アトムプローブ3次元アトムプローブ

     3次元アトムプローブはFig. 1 に示されるように、先端の直径が100 nm程度の先鋭な針状試料表面から電界蒸発する個々の原子の位置と質量を同時に検出することにより元素マップを得る局所分析手法である。試料に高電圧を印加すると針状試料の表面には5×1010 V/m程度の高電界が生じ、これによって試料表面の原子が電界蒸発し、それらのイオンは検出器に飛行する。このときの飛行時間を測定して質量を決定するが、同時に検出器上での座標を位置敏感型検出器によって求める。この時点では個々の原子の(x,y)座標が求まるだけで、2次元のマッピングしか表示できないが、原子の電界蒸発は試料の最上表面で起こるために、連続的に原子を収集し、集積された個数に比例するz座標を与えれば、個々の原子のおおよその3次元座標を決定することができる。特に低指数面での原子の蒸発は、原子面のレッジ (ledge) から比較的規則的に起こるので、原子が検出される順番に比例したz軸の座標を与えると、原子面を分解することができる。このように、3次元アトムプローブは単一原子の原子種と位置を検出できるのが特徴であり、現存の分析手法の中では最も高い空間分解能を有している。また飛行時間測定により質量分析を行うので、検出効率に質量依存性がなく、磁性材料で重要な役割を果たすBなどの軽元素の定量的な分析が可能である。このような特徴から、3次元アトムプローブは母相中に分散したナノスケールの粒子の局所濃度解析、つまりナノコンポジット金属組織の解析に適している。

    3.3.3.3.3.アモルファスのナノ結晶化と軟磁性材料アモルファスのナノ結晶化と軟磁性材料アモルファスのナノ結晶化と軟磁性材料アモルファスのナノ結晶化と軟磁性材料アモルファスのナノ結晶化と軟磁性材料

     ナノ結晶軟磁性材料の研究は1988年に吉沢らがCu と Nb を添加した Fe-Si-B アモルファス合金(FINEMET)で結晶化により α-Feのナノ結晶粒がアモルファス母相でランダムに分散された組織が得られ、それが優れた軟磁気特性を発現することを見いだしたことに端を発している7,8)。合金化により結晶磁気異方性定数、磁歪定数ゼロの組成を探索する従来の軟磁性材料と異なり、結晶粒のナノスケールへの微細化を開発原理としているので、組織制御が材料開発の中心的課題となった。結晶粒微細化により結晶磁気異方性を平均化させるので、α-Feのナノ粒子をランダムに分散させて結晶磁気異方性を低減すれば、従来の軟磁性材料では得られなかったような高い飽和磁束密度を達成することができる。 Fe73.5Si13.5B9Nb3Cu1合金ではNbとCuを複合添加しなければナノ結晶組織が形成されないので、これらの添加元素によるナノ結晶化のメカニズム解明のために多くの研究がなされた。なかでも、アトムプローブによる結晶化初期のCu原子クラスター形成の直接観察とナノ結晶と残存アモルファス相間での溶質原子の分配挙動の直接測定によって、ほぼナノ

    (x1,y1)

    (x2,y2)

    (x3,y3)

    FIM tip

    Ion+

    +

    start signal stop signal

    HV HV pulser 8ch timer Charge ADC

    Interface

    Personal Computer

    Position sensitive detector

    Fig. 1 Principle of a three-dimensional atom probe (3DAP).

  • 結晶化のメカニズムは概ね解明されていた9)。しかし、当時の1次元アトムプローブによる研究ではCuクラスターと初晶として析出するα-Fe間の空間的な相関を観察することが出来なかったために、結晶化初期にCuクラスターと独立にα-Feナノ結晶が析出すると結論されていた。 最近、3次元アトムプローブでFe73.5Si13.5B9Nb3Cu1アモルファス合金の結晶化過程が再度研究され、結晶化初期におけるCuクラスターとα-Feの相関が明らかになってきた10)。Fig. 2は液体急冷直後のアモルファスとそれを400°Cで60 minまでアニールしたときのFe73.5Si13.5B9Nb3Cu1 アモルファス合金中の10 × 10 × 40 nm3の分析領域でのCu原子の分布を示した3次元アトムプローブによるデーターである。焼き入れ直後のアモルファス相と400°Cで 60 minアニールされた試料の高分解能電子顕微鏡像も同時に示されている。高分解能電子顕微鏡像から明らかなようにこのような熱処理を受けても、アモルファス構造自体には電子顕微鏡で検出できる程度の構造変化は観察されないが、3次元アトムプローブによ

    るCu原子のマッピングでは、400°Cでわずか5 min後にCu原子がクラスターを形成し、60 min後にはこのクラスターが成長し密度が減少している様子が明瞭に観察される。このような結晶化以前に起こるCu原子のクラスター形成はアトムプローブによる解析により初めて実験的に観察された。このようなCu原子のクラスターは成長とともにfcc-Cuに変化していくが、これが α-Fe初晶の核生成サイトとして作用するために α-Feが高密度で核生成することが明らかとなった。実際にCu粒子がα-Feの初晶と接触して形成されている様子をとらえた3次元アトムプローブのデーターがFig. 3に示されている。このようにCu原子クラスターがα-Feの不均一核生成サイトとして作用するのは、Cu原子クラスターがfcc-Cuに成長して、fcc-Cuの{111}面がα-Feの{011}面に整合な界面を与えるためであると解釈されている。Cu 添加は Fe -Z r -B 系ナノ結晶軟磁性材料(NANOPERM)でもα-Fe粒子を微細化する効果があることが知られており11)、Fe-Zr-B-Cu合金でも同様に結晶化に先立ってCu原子のクラスターが形成す

    2 nm

    ASQ

    2 nm

    60 min@400¡C

    ASQ

    5 min@400¡C

    ~ 40 nm

    ~ 10

    nm

    ~ 1

    0 nm

    60 min@400¡C

    Fig. 2 HREM images and 3DAP Cu mappings of Fe73.5Si13.5B9Nb3Cu1 amorphous alloy specimens as-quenched and annealedfor 5 and 60 min at 400°C. Although there is no structural change at this temperature, Cu form clusters in the amorphous state.

  • る事もアトムプローブで証明されている12)。 ナノ結晶軟磁性材料は初晶である α-Feが残存アモルファス母相に分散された組織を持つために、電子線ナノビームによるEDS分析では十分な精度で溶質原子の濃度を決定することが困難である。3次元アトムプローブでは合金中の原子の座標を決定した後に、任意の領域内の原子を数えることにより局所濃度を決定するので、母相に囲まれたナノ粒子中の溶質濃度もかなりの精度で測定することが可能である。ナノ結晶軟磁性材料においてナノ結晶とアモ

    ルファス母相の溶質濃度を決定することは磁気特性を理解する上でも極めて有用である。アトムプローブによる局所分析結果からFINEMET中のα-Feに分配するSi濃度や残存アモルファス中のNb, B濃度も定量的に解析され、それらは熱処理による磁気特性変化から予想される結果によく一致している9,10)。ところが磁歪に大きな影響を与えるSiは常に α-Fe相に分配するのではなく、合金組成によってはアモルファス中にも分配することが分かってきた13, 16)。一例としてFe-Si-B-Nb-CuとFe-Zr-Si-B合金の飽和磁歪のSi濃度依存性がFig. 4に示されている13)。Fe-Si-B-Nb-Cu系ナノ結晶軟磁性材料では合金のSi濃度が増加するに従い飽和磁歪が正から負に変化するのに対して、Fe-Zr-Si-B合金では磁歪のSi濃度依存性は逆の傾向を示す。これはFe-Si-B-Nb-Cu合金ではSiが α-Fe中に分配し、DO3相を形成するのに対して、Fe-Zr-Si-B合金では逆にSiがZrとともに残存アモルファス相に分配するためである。このようにSiの挙動は合金濃度にも大きく影響を受けるので、α-Fe に分配すると仮定して合金設計を行っても予想通りの結果が得られない可能性がある。このようにナノ結晶軟磁性材料の磁気特性を最適化するためには、溶質原子の各相への分配挙動に関する情

    0.8

    0.6

    0.4

    0.2

    01614121086420

    0

    0.4

    0.2

    1614121086420

    Fe

    Si

    Nb

    Cu

    B

    Ato

    mic

    frac

    tion

    Depth (nm)

    Ato

    mic

    frac

    tion

    (b)

    (a)

    16 nm

    3 nm

    B

    Cu

    Nb

    Si 3 n

    m

    amorphousα-Fe

    Cu clusteramorphousα-Fe

    Fig. 3 3DAP elemental mappings and concentration depth pro-file of Fe73.5Si13.5B9Nb3Cu1 alloy annealed for 10 min at 500°C.

    0 2 1210864 1614 18

    0

    -5

    5

    15

    25

    30

    20

    10

    Fe90-xZr7SixB3 amorphous

    Fe90-xZr7SixB3 annealed

    Fe73.5SixB23.5-xNb3Cu1 amorphous

    Fe73.5SixB23.5-xNb3Cu1 annealed

    Si concentration (at.%)

    λ s (

    10

    -6)

    40

    35

    Fig. 4 Magnetostriction constant of Fe90-x

    Zr7Si

    xB

    3 and

    Fe73.5

    SixB

    23.5-xNb

    3Cu

    1 alloys as a function of Si content. Open

    circles show the magnetostriction of as-quenched FeZrSiBamorpous alloy, and closed circles show the magnetostrictionof FeZrSiB alloy annealed at 873 K for 60 min (after Inoue etal.)14). Open squares show the magnetostriction of as-quenchedFeSiBNbCu amorphous alloy, and closed squares show the mag-netostriction of FeSiBNbCu alloy annealed at 813 K (afterHerzer)15). The figure is adapted from reference 13.

  • 報を定量的に得ることが重要であるが、そのためにはアトムプローブは極めて有効な手法である。

    4.4.4.4.4.Cu+NbCu+NbCu+NbCu+NbCu+Nb添加による添加による添加による添加による添加によるFeF eF eF eF e33333B/NdB/NdB/NdB/NdB/Nd22222F eF eF eF eF e141 41 41 41 4BBBBB 系ナノ系ナノ系ナノ系ナノ系ナノコンポジット磁石の組織制御コンポジット磁石の組織制御コンポジット磁石の組織制御コンポジット磁石の組織制御コンポジット磁石の組織制御

     ナノ結晶軟磁性材料ではアモルファスの初晶結晶化反応を利用して、アモルファス相を母相として残存させる熱処理を行うので、組織制御は比較的簡単である。しかし、ナノコンポジット磁石ではアモルファス相を完全に結晶化し、α-FeまたはFe3Bなどの軟磁性相とNd2Fe14Bの硬質磁性相の2相を理想的な複合組織にしなければならないので、組織制御ははるかに困難である。ナノコンポジット磁石の特性向上の指導原理は粒間の交換相互作用を高めるために結晶粒のサイズをNd2Fe14Bの磁壁幅以下に微細化することで、そのサイズはおよそ20 nm程度である。ところが結晶粒サイズがあまりに微細化されると、ナノ結晶軟磁性材料で観察されたのと同様に結晶磁気異方性の平均化が進行し、保磁力が減少することも予測されている17)。現実のナノコンポジット磁石で20 nm程度に結晶粒を微細化することは容易ではなく、このためにNd-Fe-B合金に様々な合金添加が試みられている。 我々はナノ結晶軟磁性材料でFeと高い負の混合エンタルピーを持つCuが結晶化初期にクラスターを形成して、これが初晶の核として作用することから、同様の現象がFe-Nd-B系アモルファス合金でも期待されるのではないかと考え、Fe3B/Nd2Fe14B系ナノコンポジット磁石の代表組成であるNd4.5Fe77B18.5合金とα-Fe/Nd2Fe14B系ナノコンポジット磁石の代表組成であるNd8Fe87B5合金の結晶化または液体急冷中のナノコンポジット組織形成と磁気特性に及ぼすCuとNbの影響を詳細に調べた。その結果、Fe-Nd-B系合金においてもCu原子は結晶化の前駆段階でクラスターを形成するが、Fe 3B /Nd2Fe14B系合金ではそのCu原子クラスターがFe3Bの不均一核生成を促進するのに反して18, 19)、α-Fe/Nd2Fe14B系合金ではCu原子クラスターはナノコンポジット組織の微細化には有効に作用しない20)という興味深い結果を得た。この原因を解明するために、結晶化初期とナノコンポジット組織でのCuな

    らびにNb原子の分布状態を3次元アトムプローブで詳細に研究した。 Fig. 5 (a)はCuとNbを添加したNd4.5Fe77B18.5合金の液体急冷アモルファスリボンを660°Cで 10 minアニールしたときのナノコンポジット組織のTEM像であり、Fig. 5 (b)はそれらの合金から得られる磁気特性の熱処理温度依存性を示している。3元合金のナノコンポジットの平均粒径は約30 nmであるが、Cuをわずか0.2 at.%添加した4元合金では平均粒径が17 nmに、さらに0.2Cu+1Nbを複合添加した5元合金では平均粒径は12 nmまで微細化されている。ところが1Nbの単独添加では結晶粒は逆に43nmというように粗大化している。このようにCuの

    50 nm

    +0.2Cu

    +0.2Cu+1Nb +1Nb

    (a)

    300

    150

    200

    250

    0

    50

    100

    660 680 700600 620 640Temperature (°C)

    (BH

    )max

    / kJ

    m-3

    , H

    cJ /

    kAm

    -1 HcJBr (BH)max1.5

    2

    0.5

    1

    0

    Br

    / T

    NdFeBNdFeBCuNdFeBCuNb

    (b)

    Fig. 5 (a) TEM bright field micrographs of Nd4.5

    Fe77

    B18.5

    ,N d

    4 . 5F e

    7 6 . 8B

    1 8 . 5C u

    0 . 2, N d

    4 . 5F e

    7 5 . 8B

    1 8 . 5N b

    1C u

    0 . 2 a n d

    Nd4.5

    Fe76

    B18.5

    Nb1 alloys annealed at 660°C for 10 min. (b) H

    cJ,

    Br and (BH)

    max of these alloys. The data indicated by arrows

    were obtained by annealing the Nd4.5

    Fe75.8

    B18.5

    Nb1Cu

    0.2 alloy

    for 6 min at 660°C.

  • 微量添加が結晶粒微細化に著しい効果を及ぼすことが分かった。それに伴い磁気特性も大きな変化を示し、Cu添加合金の保磁力HcJとエネルギー積(BH)maxは何れも3元系に比べると著しく向上している。0.2Cuに1Nbを複合添加した場合の磁気特性も顕著ではないが僅かに向上している。示差走査熱量計(DSC)による比熱測定の結果によると、この合金系の結晶化は2段階で進行し、1段階目でアモルファス相からFe3B相が晶出し、2段階目で残存アモルファス相がNd2Fe14B相に結晶化する。この1段階目の結晶化温度は、Nbを添加した場合には20°C程度上昇しアモルファス相が安定になる。ところがCuを添加すると結晶化温度が20°C程度低下し、このことからCu添加が結晶化反応のキネティクスを促進していることが分かる。このCu添加による結晶化反応の促進効果はCu添加合金にNbを添加しても維持される。 ではCu添加によりなぜナノコンポジット組織の微細化が実現されるのであろうか?Fig. 6 (a)に Cuを微量添加したNd4.5Fe76.8B18.5Cu0.2合金を530°Cで30min熱処理した試料の3次元アトムプローブによる元素マップが示されている。この元素マップでは17 × 17 × 56 nmの領域内でのNbとCu原子の存在位置が各々小さい点と大きい点で表示されている。この熱処理条件ではアモルファス相からFe3Bナノ結晶が析出した段階で、Nd2Fe14B相はまだ形成されていない。Nd原子はFe3B相に固溶せずに、Fe3B初晶が核生成するとその部分から排除されるために、Fe3B相は元素マップでNd原子の密度が低い中空状の空間として観察される。大きい黒い点が集まっている部分がCu原子の集合体(クラスター)であり、注意して観察すると個々のCu原子クラスターに接触してFe3Bのナノ結晶が観察されている。このことからCuクラスターがFe3B結晶粒の不均一核生成サイトとして作用すると結論される。より詳細な解析によると、CuクラスターのCu濃度は高々6 at.%程度であり、そこにNd原子も6 at.%程度に濃化していることも分かっている。Cu のクラスター形成によりCuと親和力の強いNd原子がクラスターに濃化しCu-Nd濃度の高い領域が形成されると、この界面ではNdが欠乏する。Nd4.5Fe77B18.5合金の平均組

    56 nm

    17

    nm

    17 n

    m

    Fe3B

    Fe3B

    Fe3B

    Fe3B

    Fe3B

    Fig. 6 3DAP elemental mapping of Cu and Nd atoms. Cu andNd atoms are represented by large and small black dots, re-spectively.

    0.8

    0.6

    0.4

    0.2

    0

    0 2 4 6 8 10 12

    0 2 4 6 8 10 12

    0.14

    0.12

    0.10

    0.08

    0.06

    0.04

    0.02

    0

    Ato

    mic

    frac

    tion

    Ato

    mic

    frac

    tion

    (b)

    Fe

    B

    Nb

    Nd

    Fe3B Nd2Fe14B Fe23B6

    0 2 4 6 8 10 12

    0.02

    0.01

    0

    Depth (nm)

    Cu

    Fe23B6

    Fe3B

    Nd

    (a)

    12 n

    m

    43 nm

    Fig. 7 3DAP anaysis results for Fe23

    B6/Nd

    2Fe

    14B/Fe

    3B

    nanocomposite produced from Nd4.5

    Fe75.8

    B18.5

    Nb1Cu

    0.2 amor-

    phous alloy annealed for 10 min at 660°C.

  • から測定した濃度プロファイルがFig. 7 (b)である。各領域の濃度からこの選択領域の中には Fe 3B /Nd2Fe14B/Fe23B6 の3相が含まれていることがわかる。NbはこのうちFe23B6相にのみ分配していること、さらに0.2Cu+1Nb添加合金でだけFe23B6相が検出されたことから、NbはFe23B6相を安定化させる元素であると結論づけられる。Fe23B6相はFe3Bよりも若干磁化の高いソフト相であるので(Nbが分配により磁化は低下していると考えられる)、この相が生成することによる磁気特性への影響はそれほど大きいとは考えられない。しかし残存アモルファスからNd2Fe14B相が形成される2段階目の結晶化反応で2相以上が形成されることがナノコンポジット組織の微細化に寄与していると考えられる。 Fig. 8にFINEMETとCu添加Fe3B/Nd2Fe14B、Cu+Nb添加Fe3B/Nd2Fe14Bナノコンポジットのアモルファス結晶化による組織形成過程が模式的に示されてい

    成でNdをBに置換するとFe3Bに近い組成が得られるので、Ndが欠乏した領域でFe3Bに近い局所的組成が実現され、この部分からFe3B相が核生成すると考えるとCu原子クラスターが不均一核生成サイトとして作用する理由を説明することができる。 NbとCuを複合添加するとFig. 5 (a) にみられるようにナノコンポジット組織はさらに微細化される。Fig. 7に0.2Cu+1Nb添加合金の最適熱処理を与えられたナノコンポジット組織の3次元アトムプローブによる分析結果を示す。Nd原子マップでNd原子の密度の高い部分がNd2Fe14B相に相当するが、Nd2Fe14B相は孤立した粒子ではなく、3次元的に繋がっている。これはFe3B/Nd2Fe14BナノコンポジットではNd2Fe14B相がFe3B初晶が現れた後の、残存アモルファス相が結晶化することにより形成されるためである。この分析領域中でNd2Fe14B相を垂直に横切るように解析領域を直方体でさだめ、その部分

    Amorphous Cu & Nd cluster

    Clustering of Cu & Nd

    Heterogeneous nucleation of Fe3B

    Fe3BCu & Nd cluster

    Polymorphous

    Nd2Fe14B+CuFe3B

    AmorphousFe3B

    Primary

    (c) Fe-4.5Nd-18.5B-1Nb-0.2Cu

    (b) Fe-4.5Nd-18.5B-0.2Cu

    (a) Fe-13.5Si-9B-3Nb-1Cu (FINEMET)

    amorphous

    Cu cluster

    Heterogeneous nucleation of α-FeClustering of Cu

    fcc-Cuα-Fe

    Nb & B enriched amorphous

    fcc-Curesidual amorphous

    amorphous

    Fe-Si

    Primary

    Amorphous Cu & Nd cluster

    Clustering of Cu & Nd

    Heterogeneous nucleation of Fe3B

    Fe3BCu & Nd cluster Nd2Fe14B

    Fe3B

    Primary

    AmorphousFe3B

    Fe23B6

    Eutectoid

    Fig. 8 Schematic illustrations of the microstructural evolution processes of (a) Fe73.5

    Si13.5

    B9Nb

    3Cu

    1 (b) Nd

    4.5Fe

    76.8B

    18.5Cu

    0.2 and (c)

    Nd4.5

    Fe75.8

    B18.5

    Nb1Cu

    0.2 amorphous alloys.

  • る。FINEMETでは結晶化の前にアモルファス中でCu原子クラスターが形成し、これがfcc-Cuとして成長する。微細に分散されたfcc-Cuは α-Feの不均一核生成サイトとして作用し、結晶化に際して1024

    m-3 程度の密度の α-Feを生成される。合金中のNbとBはα-Feから残存アモルファス相に排除され、一方Siはα-Feに分配する。NbとB濃度の高くなったアモルファス相により α-Feの結晶成長が阻害されてナノ結晶組織が保たれる。一方、Cu添加されたFe-Nd-B合金でも結晶化以前にCuクラスターが形成される。ところがCuとNdは親和力が強いためにCuクラスターにNdも濃化する。つまりCuとNd原子の濃度の高い領域が形成される。この界面ではFe3Bの局所的な組成が実現されるために、Fe3B初晶がCu-Ndクラスターを不均一核生成サイトとして晶出する。その密度はFINEMET中のα-Feとほぼ同程度である。FINMETではFe-Si DO3相がアモルファス相中に分散された状態が用いられるが、ナノコンポジット磁石ではFe3B 初晶が結晶化した後、残存アモルファス相をさらにNd2Fe14B相に結晶化させてFe3B/Nd2Fe14Bナノコンポジット組織を形成させる。このためNd2Fe14B相は3次元的に繋がっている。この2段階目の結晶化は相の濃度変化を伴わないpolymorpohous な結晶化反応によって進行す

    る。最終のナノコンポジット組織はFe3B相の分散状態に影響を受けるので、結晶化前にFe3Bの不均一核生成サイトとして作用するCuクラスターの形成が微細化に寄与する。ただしCuはNd2Fe14B相に固溶するので、fcc-Cuに成長することなく、最終組織ではCuクラスターは消失する。Cu+Nb複合添加材においては第1段階の結晶化はCu添加Nd-Fe-B合金と全く同じであるが、残存アモルファス相からNd2Fe14B相とFe23B6相の2相が形成されるので、結果としてナノコンポジット組織はCu単独添加材よりも微細化されることになる。このようにNd-Fe-B合金の結晶化におけるCuとNbの効果はFINEMETの場合に似てはいるものの、細部のメカニズムでは大きく異なっている。

    5.5.5.5.5.NbNbNbNbNb添加による添加による添加による添加による添加による a-Fe/Nda-Fe/Nda-Fe/Nda-Fe/Nda-Fe/Nd22222F eF eF eF eF e141 41 41 41 4BBBBB 系ナノコン系ナノコン系ナノコン系ナノコン系ナノコンポポポポポジット組織の微細化ジット組織の微細化ジット組織の微細化ジット組織の微細化ジット組織の微細化

     α-Fe/Nd2Fe14B系ナノコンポジットを形成する組成の合金は共晶組成から大きくずれた組成で液体急冷中にα-Fe相の液相線を切りガラス形成能が低い。このため通常の液体急冷によってはアモルファス単相組織は形成されない。したがって α-Fe/Nd2Fe14B系合金は液体急冷中に部分的に結晶化され、さらにそれに最適化熱処理を加えてナノコンポジット組織と磁気特性の最適化が計られている。Fig. 9は浜野ら21)により報告されたNd8Fe76.5Co8B6Nb1Cu0.5合金の液体急冷直後の保磁力とそれを最適化熱処理した後の最大保磁力を液体急冷の銅ロール周速度(冷却速度に比例)に対してプロットしたものである。冷却速度が最適化されれば、薄帯の保磁力は急冷直後でも400 kA/m程度に達するが、最適化熱処理により最大450 kA/m程度の保磁力が得られる。ところが最適化熱処理を施して最大保磁力が得られるロール周速度と急冷直後で最大保磁力の得られるロール周速度は異なり、このことからも α-Fe/Nd2Fe14Bナノコンポジットで優れた磁気特性を得るための熱処理の最適化は複雑であると言える。 この合金においてもNbとCuが複合添加されているが、それらの効果についても3次元アトムプローブで検討した。Fig. 10 は同様に浜野ら21)がNd8Fe78-xCo8B6NbxならびにNd8Fe77.5-xCo8B6NbxCu0.5合

    HcJ (

    kA

    /m)

    Heat-treated 180 s@740-780°C

    500

    400

    300

    200

    100

    0

    500

    400

    300

    200

    100

    0

    0 302010

    Vsurf. (m/ s)

    As melt-spun

    HcJ (

    kA

    /m)

    Fig. 9 Coercivities of as-melt-spun and heat treatedNd

    8Fe

    76.5Co

    8B

    6Nb

    1Cu

    0.5 ribbon as functions of the wheel sur-

    face velocity of the melt-spinning process. After Hamano etal.21)

  • 金について最適熱処理状態で得た保磁力であるが、Nbが3 at.%まで増加すると保磁力は単調に増加しているが、Cu添加の効果は殆ど現れていない。つまりα-Fe/Nd2Fe14B系ナノコンポジット磁石ではCu添加は磁気特性を向上させる効果はない。3次元アトムプローブでナノコンポジット組織の解析を行った結果、CuはNd2Fe14B相に固溶しており、Cuクラスターの形成や異相界面への偏析は観察されなかった22)。これはキュリー点を上昇させるためにFeと置換されているCoがCuの固溶限を広げるためであることが分かってきた。このことよりCu添加はCoを含有するα-Fe/Nd2Fe14Bナノコンポジットの組織形成にはなんら影響を与えないことが分かった。一方で、この合金系ではFig. 10に見られるようにNb添加の影響は顕著である。Fig. 11に最適化熱処理後のNd8Fe76.5Co8B6Nb1Cu0.5 合金の α-Fe/Nd2Fe14B合金の2種類の界面の高分解能電子顕微鏡像が示されている。Fig. 10 (a)では740°Cで3 minアニールされたにもかかわらず、α-FeとNd2Fe14B相の界面にアモルファス相が存在している。勿論Fig. 10 (b)にみられるようなシャープな α-Fe/Nd2Fe14B相の界面も存在している。このように740°Cという高温で熱処理された後でもアモルファス相が安定に存在する理由はFig. 12に見られる3次元アトムプローブのデーターから理解される。NbはNd2Fe14B相にもα-Fe相にも固溶しないので、結晶化が進行するとNbは残存アモルファスに濃縮される。また過剰なBもアモルファス相で濃縮されて、Fig. 11に見られるようにNbとB濃度の高い安定なアモルファス相がα-FeとNd2Fe14B相間に残存する。近年、このようなソフト相とハード相間の交換結合を弱める第3相の存在が保磁力とエネルギー積を増加させるのに有効であることがモデル計算により予測されており23)、残存アモルファス相を含むナノコンポジット磁石は興味ある研究対象である。 Fig. 9に示されるようにα-Fe/Nd2Fe14Bナノコンポジット磁石の磁気特性は急冷速度に敏感に依存し、再現性良く磁気特性を得ることが困難である。安定にアモルファス相を得て、それを熱処理することにより組織と磁気特性が最適化できれば、製造プロセスの熱管理が著しく簡便化されると期待される。こ

    Cu=0

    Cu=0.5

    500

    200

    300

    400

    0 321

    HcJ

    (kA

    / m

    )

    Nb content (at%)

    Fig. 10 Coercivities measured as functions of the Cu and Nbcontents of Nd

    8Fe

    78-xCo

    8B

    6Nb

    x and Nd

    8Fe

    77.5-xCo

    8B

    6Nb

    xCu

    0.5

    alloys with optimized heat treatment. After Hamano et al.21)

    5 nm

    Nd2Fe14B

    amo

    α-Fe(a)

    50 nm

    (b)

    α-Fe

    Nd2Fe14B

    F i g . 11 B r i g h t f i e l d a n d H R E M i m a g e s o fNd

    8Fe

    76.5Co

    8B

    6Nb

    1Cu

    0.5 melt-spun ribbon annealed at 740°C

    for 3 min.22)

  • のためNb を添加してガラス形成能を向上させたNd8Fe86B5Nb1合金とNd8Fe85B5Nb1Cu1 合金を液体急冷しアモルファス単相を得た後、それらを結晶化させてα-Fe/Nd2Fe14Bナノコンポジット組織を作成した。Fig. 13にこれらの合金を760°Cで2 min熱処理して得られたナノコンポジット組織をNd8Fe87B5合金から液体急冷により得られた組織とを比較して示している。いずれもアモルファス合金から結晶化させた組織は液体急冷により直接作成されたNd8Fe87B5 3元合金の組織よりも粗大で、この場合もCuの添加は全く微細化に効果がない。このため磁気特性も3元合金よりも劣っている。このようにアモルファスから結晶化させた場合、結晶粒が液体急冷で作成されたものよりも著しく大きくなるのはα-Fe/Nd2Fe14B系ナノコンポジット組織で共通して観察される。このようにナノコンポジット組織は熱処理条件に極めて敏感に変化するので再現性良くナノコンポジット組織の得られる合金組成ならびにプロセスの探索が必要である。 Cu添加がα-Fe/Nd2Fe14Bナノコンポジット組織の微細化に全く効果がないにもかかわらず、Cu原子のクラスターが結晶化初期に形成されるのは興味深い。Fig. 14は上述のNd8Fe85B5Nb1Cu1アモルファス合金を495°Cで 30 minアニールした試料(アモルファス状態)中のCuの分布である。このように高密度のCu原子クラスターが形成されるにも関わらず、これらのクラスターは α-Feの結晶核として作用しない。これはCuクラスターにNd原子が濃化し

    (a)

    Nd

    B

    Co

    Cu

    Nb

    20 nm

    4 n

    m4

    nm

    amo Nd2Fe14B α-FeNd2Fe14B

    (b)

    Cu

    0.4

    0.3

    0.2

    0.1

    0.0

    15105

    0.2

    0.1

    0.015105

    Co

    0.8

    0.6

    0.4

    0.2

    0.0

    15105

    0.8

    0.6

    0.4

    0.2

    0.015105

    Fe

    Nd

    0.4

    0.3

    0.2

    0.1

    0.0

    15105

    0.4

    0.3

    0.2

    0.1

    0.015105

    B

    Nb

    Depth (nm)

    Ato

    mic

    fra

    ctio

    n

    amo Nd2Fe14B α-FeNd2Fe14B

    Fig. 12 3DAP results for the Nd8Fe

    76.5Co

    8B

    6Nb

    1Cu

    0.5 alloy an-

    nealed at 740°C for 3 min, showing two types of interfaces:remaining amorphous (amo) as intergranular phase and a sharpinterface.

    100 nm

    (a)

    100 nm

    (b)

    100 nm

    (c)

    Fig. 12 3DAP results for the Nd8Fe

    76.5Co

    8B

    6Nb

    1Cu

    0.5 alloy annealed at 740°C for 3 min, showing two types of interfaces: remain-

    ing amorphous (amo) as intergranular phase and a sharp interface.

  • Cu

    40 nm

    18 nm

    18 n

    m

    (a)

    (b)

    1.0

    0.8

    0.6

    0.4

    0.2

    0.0

    15105

    0.2

    0.015105

    BNb

    1.0

    0.8

    0.6

    0.4

    0.2

    0.0

    15105

    1.0

    0.8

    0.6

    0.4

    0.2

    0.015105

    Depth (nm)

    Ato

    m f

    ract

    ion

    Fe

    NdCu

    アモルファス構造が保たれ、これらのクラスターがfcc-Cuに発展しなためであると考えられる。前節で述べられたような理由でこのようなクラスターはFe3B相の核生成サイトとして作用するが、α-Feの核生成には全く効果がない。 Nd-Fe-B系ナノコンポジット磁石では、この他にも多くの添加元素が磁気特性に影響を及ぼすことが知られている。たとえばFe3B/Nd2Fe14Bナノコンポジットに添加されるCrは磁化を低下させるが、保磁力を高める効果がある24)。アトムプローブ分析結果からCrがFe3B相に分配することは知られているが、これが保磁力を向上させるメカニズムは必ずしも明らかにはなっていない。またGa 添加によりFe3B/Nd2Fe14Bナノコンポジットの(BH)maxが改善されることも知られているが、アトムプローブ分析によりGaはNd2Fe14B相に分配し、粒界偏析することも分かっているが25)、これが(BH)maxの改善をもたらすメカニズムも分かっていない。α-Fe/Nd2Fe14B系

    ではFeと全率固溶するVの添加が磁石特性の向上に効果があることが知られているが、Vは微細組織には殆ど影響を与えず、微細組織以外の効果により磁気特性が向上している可能性も指摘され始めている26)。このように、多彩な添加元素の役割が解明が進めば、合金設計のための有効な指針となると期待される。

    6.6.6.6.6.終わりに終わりに終わりに終わりに終わりに

     磁性材料に限らず、金属系材料では合金化により特性が改善されることが多い。ナノコンポジット磁石やナノ結晶軟磁性材料、さらに合金系薄膜記録媒体ではこれまで多くの種類の合金元素が試行錯誤的に添加され、偶々特性の向上が見いだされた試料が実用化されてきた。ところがこのような元素が磁気特性を改善するメカニズムは、未解決の問題として大部分取り残されている。それは磁性材料が実用に近い材料であるので、研究の全勢力がプロセスと製品開発に向けられ、メカニズム解明のための基礎研究にまで余力が至らなかったためであろう。3次元アトムプローブは金属材料の合金元素の分布状態をサブナノスケールで可視化することのできる究極的な分析法で、この手法を用いることにより合金元素の挙動を直接観察することが可能であり、今後本稿で紹介したような実用金属材料の微細組織形成メカニズムに多くの貢献をなすことができると期待される。 3次元アトムプローブ法の欠点は分析のための試料が先端の直径が100 nm程度の先鋭な針でなければならないことで、このために最近まで薄膜の解析に応用されることは少なかった。著者らはFe-Ta-C軟磁性薄膜を初め、Co-Cr-Ta薄膜などからリソグラフィーを用いてFIM用試料を作成し、それらをアトムプローブで分析することに成功したが27, 28, 29)、最近ではOxford大学のグループがfocused ion beamを用いて多層膜からFIM試料を作成し30)、スピンバルブの深さ方向に原子レベルの分解能で3次元アトムプローブ分析を成功させた例も報告されており31)、アトムプローブ法も磁性材料解析により広く用いられるようになってきた。磁気特性はナノヘテロ構造に敏感に変化するので、ナノヘテロ組織を原子

    Fig. 14 3DAP analysis results for the Nd8Fe

    85B

    5Cu

    1Nb

    1 al-

    loy annealed at 515∞C for 15 min. (a) Cu elemental mappingin a detected volume of 18 × 18 × 40 nm3 and (b) the concen-tration depth profiles of the solute elements in the selected vol-ume.

  • レベルに評価し、構造と特性の因果関係を解明することは極めて重要である。

    謝辞 本稿はD. H. Ping, Y. Q. Wuならびに住友特殊金属の広沢哲氏、戸田工業浜野正昭氏らとの共同研究の成果をまとめたものである。

    文文文文文 献献献献献

    1) 例えばM. E. McHenry, M. A. Willard and D. E.Laughlin, Prog. Mater. Sci. 44, 291 (1999).

    2) 例えば 福永博俊:日本応用磁気学会誌 19, 791(1995).

    3) 宝野和博、桜井利夫:日本応用磁気学会誌 18, 15(1994).

    4) 宝野和博、岡野竜、桜井利夫:まてりあ 34, 578(1995).

    5) 宝野和博:まてりあ 35, 267 (1996).6) K. Hono, Acta mater. 47, 3127 (1999).7) Y. Yoshizawa, S. Oguma and K. Yamauchi, J. Appl. Phys.

    64, 6040 (1988).8) Y. Yoshizawa, K. Yamauchi, Mater. Trans. JIM, 31, 307

    (1990).9) K. Hono, K. Hiraga, Q. Wang, T. Sakurai and A. Inoue,

    Acta Metall. Mater. 40, 2137 (1992).10) K. Hono, D. H. Ping, M. Ohnuma and H. Onodera, Acta

    mater. 47, 997 (1999).11) K. Suzuki, A. Makino, N. Kataoka, A. Inoue and T.

    Masumoto, Mater. Trans. JIM, 32, 93 (1991).12) Y. Zhang, K. Hono, A. Inoue and T. Sakurai, Scripta Mater.

    34, 1705 (1996).13) Y. Zhang, K. Hono, A. Inoue and T. Sakurai, Appl. Phys.

    Lett. 69, 2128 (1996).14) A. Inoue, Y. Miyauchi, A. Makino and T. Masumoto,

    Mater. Trans. JIM 37, 78 (1996).15) G. Herzer, International Symposium 3-d Transition Semi-

    Metal Thin films, Magnetism and Processing, March 5-8, 1991, Sendai, Japan.

    16) K. Hono and D. H. Ping, Matererials Characterization,44, 203 (2000).

    17) T. Schrefl, J. Fidler and H. Kronmüller, Phys. Rev. B 49,6100 (1994).

    18) D. H. Ping, K. Hono, H. Kanekiyo and S. Hirosawa, J.Appl. Phys. 85, 2448 (1999).

    19) D. H. Ping, K. Hono, H. Kanekiyo and S. Hirosawa, Actamater. 47, 4641 (1999).

    20) D. H. Ping, Y. Q. Wu, H. Kanekiyo, S. Hirosawa and K.Hono, Proc. 16th Inter. Workshop Rare Earth Magnetsand their Applications, September 10 - 13, 2000, Sendai,Japan.

    21) M. Hamano, M. Yamasaki, H. Mizuguchi, H. Yamamotoand A. Inoue, Proc. 5th International Workshop on Rare-Earth Magnets and their Applications, edited by L. Schultzand K. -H. Müller, Werkstoff-Informationsgesellschaft,Dresden, Germany, 1998, Vol. 1, pp. 199.

    22) Y. Q. Wu, D. H. Ping, K. Hono, M. Hamano and A. Inoue,J. Appl. Phys. 87, 8658 (2000).

    23) H. Fukunaga, J. Kuma and Y. Kanai, Digests ofINTERMAG99, Kyongju, Korea, 1999, FA-03.

    24) N. Sano, T. Tomida, S. Hirosawa, M. Uehara and H.Kanekiyo, Mater. Sci. Eng. A, A250, 146 (1998).

    25) D. H. Ping, K. Hono and S. Hirosawa, J. Appl. Phys. 83,7769 (1998).

    26) Y. Q. Wu, H. Yamamoto and K. Hono, 日本応用磁気学会 2000年学術講演大会発表予定

    27) N. Hasegawa, K. Hono, R. Okano, H. Fujimori and T.Sakurai, Appl. Surf. Sci. 67, 407 (1993).

    28) K. Hono, N. Hasegawa, S. S. Babu, H. Fujimori and T.Sakurai, Appl. Surf. Sci. 67, 391 (1993).

    29) J. Nishimaki, K. Hono, N. Hasegawa and T. Sakurai, Appl.Phys. Lett., 69, 3095 (1996).

    30) D. J. Larson, D. T. Foord, A. K. Petford-Long, H. Liew,M. G. Blamire, A. Cerezo, G. D. W. Smith, Ultramicros-copy, 79, 287 (1999).

    31) D. J. Larson, A. Cerezo, R. L. Martens, P. H. Clifton, T.F. Kelly, A. K. Petford-Long and N. Tabat, Appl. Phys.

    Lett. 77 (2000) in press.