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【第1回 舗装 工 学講 演 会 講 演 論 文 集1996年12月 アスファル ト舗装のテクスチャーの特性と すべり摩擦への影響について 七五三野 正会員 工修 日本道路公団試験研究所 舗装試験研究室長(〒194東 京都町田市忠生1-4-1) テ クスチ ャー(粗 さ)の うち、ミクロ及び マク ロテ クスチ ャーはすべ り摩擦 と密接 な関係があ る といわれている。 しか し、従 来 の測定方 法ではテ クスチ ャー の間接 的な評価 や平均的 な大 き さがわか るのみで、テ クスチャーそ の もの の詳細 な内容 は把握で きなかった。そ こで、 レーザ ー方 式の定置式 変位計 によ りプロフ ァイル を詳細 に測定 ・分析 を 行 う ことによ り、プ ロファイル の特性 やすべ り摩擦 との関係 を調 べた。プ ロファイ ルの分析方 法は、各 プ ロフ ァイル の波形 の振幅 のヒス トグ ラム によ るものを採 用した。そ の結果 、この方法 によ り混合物 ごとのプロフ ァイルの特徴 を よ く把 握で きる ことが確認 され た。また、 このヒス トグ ラム よ り算 出 され た指標(PDDは 、高速 域 にお けるす べ り摩 擦 係数 との相関が大変 高い ことが明 らか となった。 Key Words : Texture, Skid Resistance, Microtexture, Macrotexture, Laser Profilometer, MeanProfileDepth, ProfileDepth Index 1.は じめに 路 面 のテ クス チ ャー は 、す べ り摩 擦 や 騒 音 と関係 が あ る と い わ れ て い る。 テ ク ス チ ャ ー に つ い て は 、 PIARC(Permanent International Association of Road Congresses)の 定 義 に よ り波 長 の 大 き さ で 種 類 が 分 け ら れ て お り1)、 そ の う ち 、 ミ ク ロ テ ク ス チ ャ ー とマ ク ロテ ク ス チ ャー が す べ り摩 擦 と密 接 な 関 係 を 持 っ て い る とい わ れ て い る 。2) 一般 、湿 潤 な路 面 で は速 度 の 上昇 に伴 っ て急 激 に す べ り摩 擦 が 低 下 す る こ とが 知 られ て お り、 そ の す べ り摩 擦 の 低 下割 合 は ミク ロ及 び マ ク ロテ ク ス チ ャ ー と 密 接 な 関 係 が あ る こ と が 知 られ て い る 。3) 英国では、事故との関係からテクスチャーの重要 性 が 認 識 され 、テ ク ス チ ャ ー に よ る 路 面 管 理 が 実 用 化 され てい る。4)ま た 、高 速 道 路 の よ うに 高 速 で 走 行 す る 路 面 に お い て は 、 よ り高 く 安 定 した す べ り摩 擦 を 確 保 す る こ と が 重 要 で あ り、 日本 道 路 公 団(以 下 、JHと い う)で は テ ク ス チ ャ ー と す べ り摩 擦 の 関 係 に 着 目 し て 、ギ ャ ッ プ 粒 度 混 合 物 の 施 工 面 積 が 増 大 して い る。 しか し、従 来 の一 般 的 な測 定 方 法 で は ミク ロテ ク ス チ ャ ー を 詳 細 に 把 握 す る こ と は 困 難 で あ り、 ミ ク ロ テ ク ス チ ャ ー そ の も の や す べ り摩 擦 へ の 影 響 が 必ずしも明確ではなかった。また、マクロテクスチ ヤーについても、従来は容積法であるサンドパチン グによる平均的なテクスチャーの深さにより評価 を して い た た め、テ クス チ ャー そ の も の の特 性 や す べ り摩 擦 へ の影 響 が 十 分 に把 握 で きな か った 。 このような状況にあって、最近では、レーザー方 式 の プ ロ フ ァイ ル 測 定装 置 や プ ロ トタ イ プ の 変 位 計 が 比 較 的容 易 に使 用 で き る よ うに な り、従 来 の3 次元的なテクスチャーの評価 とは異なるが、相関性 を保 ち な が らよ り詳 細 な テ ク ス チ ャー の測 定 や 評 価が可能となってきた。 そ こで 、本 研 究 で は高 速 道 路 にお い て 一般 的 に使 用 され て い るア ス フ ァル ト混 合 物 につ い て 、レー ザ ー方式のプロファイル測定装置を用いてテクスチ ャー の測 定 を行 い 、テ クス チ ャー の 特性 を調 べ る と とも に 、高 速 域 にお け るす べ り摩 擦 へ の 影 響 につ い て 明 らか に しよ うとす る もの で あ る。 2.テ クスチャー及びすべり摩擦の測定方法 (1)テ ク ス チ ャー の 測 定 テ ク ス チ ャ ー の うち 、 波 長 が0.5mm以 下のもの を ミ ク ロ テ ク ス チ ャ ー と して 分 類 して い る 。 ミ ク ロ テクスチャーを肉眼で観察することは大変難しく、 過 去 の 研 究 で は 顕 微 鏡 な ど に よ る 観 察 を とお し て そ の 形 状 の 把 握 に つ と め た 例 も 見 られ る が 、5)実 用 ―143―

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【第1回 舗装工 学講演会講演論文集1996年12月 】

アスファル ト舗装のテクスチャーの特性 と

すべ り摩擦への影響について

七五三野 茂

正会員 工修 日本道路公団試験研究所 舗装試験研究室長(〒194東 京都町田市忠生1-4-1)

テクスチャー(粗 さ)の うち、ミクロ及びマクロテクスチャーはすべり摩擦と密接な関係があるといわれている。

しかし、従来の測定方法ではテクスチャーの間接的な評価や平均的な大きさがわかるのみで、テクスチャーそ のもの

の詳細な内容は把握できなかった。そこで、レーザー方式の定置式変位計によりプロファイルを詳細に測定 ・分析を

行うことにより、プロファイルの特性やすべり摩擦との関係を調べた。プロファイルの分析方法は、各プロファイル

の波形の振幅のヒストグラムによるものを採用した。その結果、この方法により混合物ごとのプロファイルの特徴を

よく把握できることが確認された。また、このヒストグラムより算出された指標(PDDは 、高速域におけるすべり摩

擦係数との相関が大変高いことが明らかとなった。

Key Words : Texture, Skid Resistance, Microtexture, Macrotexture, Laser Profilometer,

Mean Profile Depth, Profile Depth Index

1.は じめ に

路面 のテ クスチ ャー は、すべ り摩擦や騒音 と関係

が ある といわれ てい る。テ クスチ ャー につい ては、

PIARC(Permanent International Association of

Road Congresses)の 定義 によ り波長 の大 き さで種

類 が分 け られてお り1)、 その うち、 ミクロテ クスチ

ャー とマ ク ロテ クス チ ャー がすべ り摩擦 と密 接 な

関係 を持ってい る といわれてい る。2)一般

、湿潤 な路面 では速度 の上昇 に伴 って急激 に

す べ り摩擦が低下す るこ とが知 られてお り、そのす

べ り摩 擦 の低 下割 合 は ミク ロ及 びマ ク ロテ クスチ

ャー と密接 な関係が ある ことが知 られてい る。3)

英 国では、事故 との関係 か らテ クスチャーの重要

性 が認 識 され 、テクスチ ャーに よる路面管理が実用

化 され てい る。4)ま た、高速道路の よ うに高速で走

行す る路面 におい ては、よ り高 く安定 したすべ り摩

擦 を確保す ることが重 要であ り、 日本道路公団(以

下、JHと い う)で はテ クスチ ャー とすべ り摩擦 の

関係 に着 目して、ギ ャ ップ粒度混合物 の施 工面積 が

増大 してい る。

しか し、従来 の一般的 な測定方法 では ミクロテ ク

スチャー を詳細に把 握す ることは困難で あ り、ミク

ロテ クスチ ャーその ものやすべ り摩擦への影響が

必ず しも明確では なか った。また、マクロテ クスチ

ヤーについても、従来は容積法であるサン ドパチン

グによる平均的なテクスチャーの深さにより評価

をしていたため、テクスチャーそのものの特性やす

べ り摩擦への影響が十分に把握できなかった。

このような状況にあって、最近では、レーザー方

式のプロファイル測定装置や プロ トタイプの変位

計が比較的容易に使用できるようになり、従来の3

次元的なテクスチャーの評価 とは異なるが、相関性

を保ちなが らよ り詳細なテクスチャー の測定や評

価が可能となってきた。

そこで、本研究では高速道路において一般的に使

用されているアスファル ト混合物について、レーザー方式のプロファイル測定装置を用いてテクスチ

ャーの測定を行い、テクスチャーの特性 を調べると

ともに、高速域におけるすべ り摩擦への影響につい

て明らかにしよ うとするものである。

2.テ クスチャー及 びすべ り摩擦の測定方法

(1)テ クスチャー の測定

テクスチ ャーの うち、波長が0.5mm以 下の もの

を ミクロテ クスチ ャー と して分類 してい る。ミク ロ

テ クスチ ャーを 肉眼で観 察す ることは大変難 しく、

過 去 の研 究で は顕 微鏡 な どによる観察 を とお して

その形状の把握 につ とめた例 も見 られ るが 、5)実 用

―143―

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的な方法 とはい えない。そのため、一般 的 には英国

式ポ ー タブル スキ ッ ドレジス タ ンステス ター に よ

り測 定 されたBPNやPSV(Polishing

Stone Value)と いわれ る骨 材 の研磨抵

抗性 に よ り間接 的な評価 を して い るのが実情 で あ

る。6)7)本 研究では、新 しい測定法 と同時 にBPN

によ りミク ロテ クスチャーの評価 を行 う。8)

マク ロテ クス チャー につい ては、従来 、容積法 で

あるサ ン ドパ ッチ ングな どに よ り測 定 され てい た

が、個 人差 に よる測定結果のバ ラツ キな どの理 由に

よ り、よ り簡 単で再現性 の よい レーザー プロファイ

ラー による測定 方法の標 準化 がISOに おいて検討

され てい る。9)JHで は、MTM(Mini Texture

Meter)と 呼 ばれ る英 国製 の レーザー プ ロ ファイ ラ

ーを2台 所有 してお り、供用前 の路線 においてすべ

り摩擦 と同時 にテ クスチ ャー の測定 を行 ってい る。

したがって、MTMに よ り測定 されたSMTD(Sensor

Measured Texture Depth)に よ りマ ク ロテクス チ

ャー を評価す る。SMTDは 、仮定 された回帰 曲線か

らの各 ピークのバ ラツ キの程度 を示 し、RMS(Root

Mean Square)と して計算 され る。 計算 は30cmご

とに行われ 、10mご との平均値 が表示 され る。

さ らに、プ ロファイル の形状をは じめ とす るよ り

詳細 な情報 を得 るため、レーザー方式 の定置式変位

計 に よ りプ ロファイル を測定 した。1個 所 での測 定

延長 は50cmで 、水平方 向に0.1mmピ ッチ、鉛 直

方 向には0.01mmの 精度 で測 定が可能 で あるた め、

1箇 所 の測定 で5000点 のX,Y変 位デー タ として記

録 され る。なお 、レーザーセ ンサー の性能 は測定範

囲±10mm、 応 答周波 数4kHzで ある。

(2)すべ り摩擦の測定

すべ り摩擦 は、JH所 有 の大型すべ り測 定車に よ

り測定 した。車輪 ロックによる縦すべ り摩擦係数 を

測定す る方式 であ る。2)

す べ り摩 擦 係 数 は 、速 度40km/h、60km/h、

80km/hで 測定 され 、測 定頻 度は、200m毎 に1回

で、1回 当た りの測 定輪 の ロ ック時間 は3秒 間で あ

る。

3.テ クスチ ャーとすべ り摩擦

ここでは、レーザー方式の定置式変位計によるプ

ロファイル の評価やすべ り摩擦への影響 を調べる

ことが主 目的であるが、はじめに、BPN及 びMTM

により測定されたSMTDに よりテクスチャーとす

べ り摩擦の関係 を整理する。

図-1BPNと 測定速度別すべ り摩擦係数

(1)ミ クロテ クスチ ャー とすべ り摩擦

ここでは、ミクロテクスチャーが速度別のすべ り

摩擦係数にどのような影響 を与えるかを見るため

に、ほぼ使用骨材の性状が同一の状態 と思われる舗

装路面での測定データを分析 した。

図-1は 、供用前の高速道路におけるBPNと 測

定速度別のすべ り摩擦係数の関係を示 したもので

ある。混合物の種類は皿 で一般的に使用 されてい

る密粒度及びギャップ粒度混合物である。10)1箇

所当た りの測定延長は1kmで あり、BPN及 びす

べ り摩擦係数は1km当 た りの平均値である。

測定速度が60km/h(μ(60))と80km/h(μ(80))

の場合、BPNと すべ り摩擦係数の相関は高 く、 ミ

クロテ クスチャーがすべ り摩擦に与える影響が認

められ る。特に、高速域 となる測定速度が80km/h

の場合にも表面付近のミクロテクスチャーの影響

があることが伺える。測定速度が40km/h(μ(40))

の場合には相関が低 く、明確な関係ではないものの、

やは りミクロテクスチャーの影響があることが伺

える。

ただし、供用後数年経過 した一般有料道路では

図-1の 関係 と異な り、BPNの 大きさがすべ り摩

擦係数に影響を及ぼさない例も見 られたことから、

データ数を増や して ミクロテクスチャーの与える

影響を検証するとともに、路面の摩耗にともな うミ

クロテクスチャーの影響の変化 についても把握す

る必要がある。

―144―

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図-2SMTDと 速度別すべ り摩擦係数

(2)マク ロテクスチャー とすべ り摩擦

マ クロテ クスチ ャー がす べ り摩 擦 に与 え る影響 を

調べ るために、MTMに よって測定 されたSMTDに

よ りマ クロテ クスチ ャーの大 き さを評 価 す る こと

に よ り、す べ り摩 擦係 数 との 関係 を分 析 した。

SMTDに つい ては、サ ン ドパ ッチ ングによる平均テ

キスチャー深 さとの相 関が高 く、混合物のテ クスチ

ャー の特徴 を よ く表 す指 標 とな り うる ことが報 告

され てい る。11)

図-2は 、図-1の デ ータを使 用 してSMTDと 測

定速度別 のす べ り摩 擦係 数 の関係 にま とめた もの

であ る。 低速域の場合(μ(40)、 μ(40)')は 、デー

タが分散 し、ふたつの グル ープ に分かれてい る。 こ

れ は、図-1に 見 られ るよ うに、 ミクロテ クスチ ャー の影響 を受 けたものであ り

、 μ(40)はBPNの 大

きいグル ープであ り、 μ(40)'はBPNの 小 さな グル

ー プであ る。中速域 にお いて も低速域 と同様 にBPN

の大き さによるグルー プ別(BPN大-μ(60)、BPN

小-μ(60)')に 分かれ る傾 向を示す。高速域(μ(80))

では、BPNの 大 き さに よる影 響が ほ とん ど見 られ

ない。

デー タ数 が限 られ 、相関係 数 も低いため更 に検証

が必要 であるが、SMTDと すべ り摩擦係 数の関係 に

つい ては、低速域 の場 合(μ(40))、BPNの 大きい

グルー プでは負 の傾 きを示 してい る。BPNが 大 き

い グルー プでは、SMTDが 大き くな るに従って路面

表面付近 の ピー クが分散 し、す べ り摩擦 の低下に結

びつ くことが推定 され る。

中速域(μ(60))で は、相関が低いもののBPN

の大きなグループは低速域 に近い傾向を示 し、BPN

の大きなグループは高速域 と同 じような傾向を示

している。

高速域(μ(80))で は、SMTDが 小さい場合、す

べ り摩擦への影響が大きいが、SMTDが 大きくなる

につれてその影響はかな り小 さくなるような傾向

を示している。マクロテクスチャーがすべ り摩擦に

与える影響が見られ るが、相関係数が低いため明確

な関係が得 られていない。高速域では、低 ・中速域

に見られるように、BPNの 大きさによるグループ

の形成は見られない。これは、同じようにミクロテ

クスチャーの影響を受けながらも、高速域になる程、

マクロテクスチャーの影響が卓越することを示 し

ている。

MTMに よって算出されたSMTDは 、仮定 され

た回帰曲線か らのピークのバ ラツキの程度を示 し

ているため、平均テクスチャー深 さとの相関は認め

られるものの、すべ り摩擦との関係を明確に説明し

きれないことを示 している。

(3)プ ロファイルの特徴 とすべ り摩擦

以上、BPNとSMTDに よりミクロ及びマクロテ

クスチャーがすべ り摩擦に与える影響を調べたが、

ある程度の傾向は見 られるものの明確な関係は得

られなかった。このことか ら、BPN及 びSMTDに

よるすべ り摩擦に対する定量的な影響の把握には

限界があることを示 している。

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表-1定 置式変位計による測定内容

図-3密 粒度混合物路面のプロファイルの例

そこで、プロファイルの特性がすべ り摩擦に与え

る影響を把握するため、レーザー方式の定置式変位

計を用いてプロファイルの詳細な測定及び分析 を

行った。プロファイルの測定内容は表-1の とお り

である。

現地でプロファイルが測定され、1箇 所 当た り

5000点 のX,Y変 位データとして記録 され る。 この

変位データは室内において統計処理用プログラム

により、プロファイルに近似 させた波形が再現 され

最小自乗法による直線回帰線が求められる。12)

ここまでは、一般的に行われるデータの処理方法

であるが、これ以降の分析方法については、スペク

トル解析や フラクラル解析など色々な方法が試み

られているが、すべて検討途上であり、すべ り摩擦

との関係 な どが 明確 に され てい ない のが実情 で あ

る。13)14)

図-3は 、2種 類 の密粒度混合物 のプロファイル

の波形 を表 した ものだが、すべ り摩擦係数 の大 きい

タイプAの プ ロファイル 方がタイプBよ りも波形

の振幅 の変化 が大 きい。 この ことか ら、プロファイ

ル の波形 の特徴 を把 握す るこ とに よ りす べ り摩 擦

との関係 を 明 らか にす る こ とがで き るもの と思わ

れ る。

そ こで、新 しいプ ロファイル の分析法 を検討 し、

プロ ファイル の状 態 を よ り定量 的 に表現す るた め

波形 の を形 成す る微 小 な ピー クにつ いて ヒス トグ

ラム を求 めた。これ は、直線 回帰線 を波 形の ピー ク

に合わせて基準線 と し、この基準線 か ら深 さ方向 に

0.5mm間 隔 に頻 度 を算 出す る もので あ る。 この

0.5mm間 隔 のスペ ースは視覚 的にプ ロファイル の

形状 を よく表現でき ることと、ミクロテクスチャー

の最 大振 幅であ ることか ら決定 された。

図-4は 、ギャップ粒度混合物 のプロファイル及

び波形 を形成 す る微 小 な ピー ク の ヒス トグラム の

例を示 した ものであ る。 この ヒス トグラムが 、最 も

ピー クの多 く出現す る深 さや プ ロ ファイル の振幅

の状 況 な どの プロ ファイ ル の特徴 を よ く現 してい

る ことがわかる。

表-2は 、以上の よ うに して求 めた各 プロファイ

ル の頻度分布 につい て、路線別 に混合物 ごとの平均

値 を示 したものである。表 中、TypeGは ギ ャ ップ粒

度混合物 、TypeA,Bは 密粒度混 合物 を表 し、( )

内の数字 は、2.36mmふ るい通過量 を表 してい る。

表-2の プ ロフ ァイル の波 形 の微 小 な ピー ク の

分布 よ り、 最 も頻 度 の高 い 深 さは 各 混 合 物 と も

0.5mm~1.0mmで 同 じで あるが、分布 につ いては

混合物 ごとの特徴が見 られ る。即 ち、ギャ ップ粒 度

混合物の場合、1.0~1.5mmで も頻 度が高 く、2.0

か ら2.5mmま で広範 囲に分布 してい る。 また、反

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図-4プ ロファイルの波形 とヒス トグラムの例

表-2混 合物種別ごとのプロファイル振幅の分布状況

対 に、0.5mmま で の表面付近 の頻 度は比較 的小 さ

い こ とが分 か る。 密粒 度 混 合物 の場 合 は 、0.5~

1.0mmの 頻度 が特 に高 く、0.5mmま での表面付近

の頻度 も比較 的高い。頻度分布 について は、1.5mm

までの比較 的狭 い範 囲に集 中す る傾 向が見 られ る。

以 上 の よ うな 特 徴 は 、 同 じ混 合 物 の 種 別 で は

2.36mmふ るい通過量 による影響 も見 られ る。

図-5は 、プ ロファイル の波形 の ヒス トグラムの

うち、0~1.0mmの 頻度の合計 とBPNの 関係 を示

した もので ある。相 関は高 く、表面付近 の ピー ク数

が多い ほどBPNが 大き くなる ことを意 味 している。

また、図-6は0~1.0mmの 頻度の合計 とSMTD

の関係 を示 した ものである。負 の傾 きを示 してい る

が、大変 高い相 関が得 られ てい る。 これ よ り、図-

2の 低速 域 と中速域 で見 られ た ミク ロ及 びマ ク ロ

テ クス チ ャー とすべ り摩擦 係数 の関係 に関す る推

定 を説 明す ることが できる。即 ち、BPNが 大きい

場合 は、表面付近 にピー クが集 中 してお り、低速域

でのすべ り摩擦へ の影 響が見 られ るが、SMTDが 大

き くな るに したがって、表面付近 のピー クの数が減

少 し、すべ り摩擦が小さくなることが明 らかである。

また、BPNが 小 さい場合は、表面付近のピーク分

布が少ないことも明らかである。

表-2に 見られるように、混合物の種類によるプ

ロファイルの特徴が見 られることか ら、すべ り摩擦

との関係について検討する。

高速道路のように高速走行する場合には、ヒステ

リシスロスによる摩擦力が主とな り、凝着せん断に

よる摩擦力がこれを補足することにより、すべ り摩

擦の大きさを決定するといわれている。3)このヒス

テ リシス ロスによる摩擦力はマクロテ クスチャー

により影響をうけることが指摘 されている。15)

また、ヒステ リシスロスによる摩擦力に関係する主

な要因として、テクスチャーを構成するピークの単

位面積当たりの数、ピークの高さ、ピークの波長な

どがあげられている。5)

以上のことから、プロファイルの波形の振幅の分

布状態が高速域におけるすべ り摩擦 と密接 な関係

があることから、プロファイルの ヒス トグラムを利

用 してすべ り摩擦を定量的に表す指数を検討 した。

―147―

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テクスチャー深 さ方 向 分 布(Σ ~1.0mm)(%)

図-5BPNと 表面付近のピークの分布

この結 果、0.5mm間 隔 のプロ ファイル の ヒス

トグラムか ら(1)式 に よ り、プロファイル深 さの

荷重平均 を算 出す る ことを考案 した。 これ は、各深

さにお ける ピー クの数 を凝 着せ ん 断 によ る摩擦 力

と見 な し、平均 のプ ロファイル深 さを求 めた もので

あ る。

(1)

PDI : Profile Depth Index

aj:0.5mm間 隔 の基準線 か らj番 目の深 さに

お け る頻度分布

hj:基 準線 か らの深 さ(0.5*j)

ここで計算 され た値 は、一種 の平均プ ロファイル

深 さ(Mean profile Depth)で あるが、プ ロファイ

ル の分布 状 態 を表 す指 標 と して、 こ こで はPDI

(Profile Depth Index)と 呼ぶ こ ととした。

PDIの 計算 にあたっては、n番 目の深 さを どこに

す るかが 問題 である。タイヤ と路面 の接触 につい て

は、テクスチャー とタイヤの空気圧 の関係 をシ ミュ

レー シ ョン した結果、タイヤの貫入範 囲がテ クス チ

ャーの ピークか ら1.5mm程 度 で あることを示 した

研 究が見 られ る。16)そ こで、実 際の路面 とタイ

ヤ の接触 を想 定 した場合、表-3に 見 られ るよ うに

頻度分布 の最頻値 が見 られ る0.5~1.0mm付 近 と考

え られ るが、ギ ャップ粒度混合物 の よ うにプ ロファ

イル の分布幅が広 い場合 は、1.0~1.5mmと す る方

がすべ り摩擦 との相 関が よい こ とがわか った。17)

ただ し、密粒度混 合物で0~1.0mmの 頻度分布が特

テクスチャー深 さ方 向 分 布(Σ ~1.0mm)(%)

図-6SMTDと 表面付近のピークの分布

に高い場合には、最頻値が現れ る深 さまで とした方

がすべ り摩擦との相関がよいこともわかった。

測定 されたプロファイルについては、50cmの 区

間の状態を示す ものであり、混合物 ごとの全延長の

状態を示す ものではない。そのため、個々のPDI

とすべ り摩擦係数の相関はそれほ ど高いもの とは

ならない。そこで、混合物ごとのプロファイルの状

態が反映できるよ うにPDIの 平均値を算出し、すべ

り摩擦係数の平均値 との関係を求めた。すべ り摩擦

の測定に合わせたPDIの 平均値(3個/100m)と す

ることが望ましいが、測定区間全体の平均値(2~

4箇 所/600m)と してもすべ り摩擦係数との相関は

それほど変わらないことが確認 された。また、横断

方向のプロファイルの測定位置は外側わだち部 中

央であるが、一般的なタイヤの接触範囲と見なされ

る15cm離 れた箇所 におけるPDIの 値がほぼ同じで

あることから、わだち部で測定 されたプロファイル

で代表 されることが確認 された。17)

以上のような仮定に基づき、計算されたPDIと す

べ り摩擦係数(80km/h)の 関係を示 したものが図-

7で ある。図-7で は、PDIが0 .9~1.1の間ですべ

り摩擦への影響が鋭敏であり、1.1を 越 えると鈍く

なっている。しか し、全体としてPDIと すべ り摩擦

係数の相関が大変高いことが明 らかである。この結

果、図-7のPDIと すべ り摩擦係数の関係から(2)

式が得 られた。

(2)

μ(80):測 定速度80km/hの すべ り摩擦係数

PDI : Profile Depth Index

―148―

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図-7PDIと すべ り摩擦係数

このように、プロファイルの波形を形成する微小

なピークの分布状態から導き出されたPDIは 、すべ

り摩擦係数との相関が大変高く、タイヤと路面の接

触状態 を反映 してすべ り摩擦の発生メカニズムと

よく合致 していることが確認 された。ただ し、PDI

が1.1を 境にPDIの 増加がすべ り摩擦に及ぼす影響

が大変小さくなっている。表-2に 見 られるように、

ギャップ粒度混合物では1.5mmに おける頻度が約

30%と 大きく、ほぼ同程度である。 このため、タ

イヤの路面への貫入深さがほぼ同程度であるため、

摩擦力に対する影響がほぼ同 じとなることが推定

される。また、PDIが 小 さい領域においても同様な

傾向が表れることが推定 されるが、今後の検証が必

要である。

以上のことから、今回考案 されたPDIと い う指

数により高速域 におけるすべ り摩擦を精度 よく推

定することが可能であり、PDIは 舗装路面の管理指

標のひ とつ となりうるものと思われる。

4.結 論

以上のように、高速道路等で測定されたテクスチ

ャーやプロファイルの分析結果から、テクスチャー

の特性やすべ り摩擦への影響などについて以下の

内容が明らか となった。

(1)ミ クロテクスチャー(BPN)の すべ り摩擦への

影響については、新設路面など摩耗の影響が少ない

場合には、特に顕著であり、低 ・中速域においては

もちろんのこと、高速域においてもその影響が見 ら

れた。

(2)マ クロテ クスチャー(SMTD)と すべ り摩擦 の

関係において高速域の場合、低 ・中速域で見られた

ような ミクロテクスチャーの影響が見 られない。高

速域になる程、マクロテクスチャーの影響が卓越 し、

すべ り摩擦係数に与える影響が大きくなる傾 向に

あるが、相関は低 く明確な関係は得 られなかった。

(3)レ ーザー方式の定置式変位計により測定 され

たプロファイルについて、波形の微小なピークの分

布状況 を表す ヒス トグラムによる分析 を行った結

果、混合物によるプロファイルの特徴をよく表す。

また、表面付近のピークの分布状況を直接把握する

ことが可能であり、従来の測定方法では得られなか

った詳細な情報を得ることができる。

(4)プ ロファイルの波形の分布状況を表す ヒス ト

グラムより荷重平均 して得 られた、プロファイル深

さを示す指標であるPDIは 、高速域のすべ り摩擦係

数との相関が大変高いことが確認 された。このこと

か ら、PDIに よりすべ り摩擦を推定することが可能

であり、路面管理のひとつの指標 として使用できる

可能性がある。

5.お わ りに

本研究では、 レーザー方式の定置式変位計を用い

てプロファイルの詳細な測定 と分析を行い、混合物

ごとのプロファイルの特徴が明 らかになるととも

に、波形のヒス トグラムより得られた指数により高

速域のすべ り摩擦を推定できることが明らか とな

った。ただ し、今後は更に測定及び分析 を進 め、す

べ り摩擦の範囲を広げて本推定方法の検証を行 う

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必要がある。また、従来の評価方法との関係に注意

しなが らミクロテクスチャーの性状や役割な どに

ついて、更に検討する必要があるものと思われ る。

最後に、本論文をまとめるにあた り、データ整理

等で協力いただいた、舗装試験研究室の川村 和将

君に感謝する次第である。

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(1996.10.14受 け 付)

Characteristics of Texture on Asphalt Pavement and Its Influence to the Skid Resistance

Shigeru SHIMENO

The microtexture and macrotexture are said to have close relation to the skid resistance. Traditional

measurement method gives indirect information and approximate value of texture. Therefore, prototype

stationary laser profilometer was used to measure and analyze profile. To analyze the profile, frequency of

amplitude was applied and the way shows the characteristics of profile on each asphalt mixture type very well.

The index called PDI that is weighted arithmetic mean depth of amplitude has high correlation with skid

resistance at high speed range.

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