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1 ミトコンドリア標的型分子送達技術 (薬物・タンパク質・核酸)の開発 北海道大学 大学院薬学研究院 助教 山田 勇磨 北海道大学 大学院薬学研究院 教授 原島 秀吉

ミトコンドリア標的型分子送達技術 薬物・タンパク …...5 新技術の特徴・従来技術との比較 ・MITO-Porterは膜融合を介して ミトコンドリア内へ送達分子を導

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ミトコンドリア標的型分子送達技術(薬物・タンパク質・核酸)の開発

北海道大学 大学院薬学研究院

助教 山田 勇磨

北海道大学 大学院薬学研究院

教授 原島 秀吉

Page 2: ミトコンドリア標的型分子送達技術 薬物・タンパク …...5 新技術の特徴・従来技術との比較 ・MITO-Porterは膜融合を介して ミトコンドリア内へ送達分子を導

2Yamada Y. et al., Mitochondrion, 7, 63-71 (2007).

多彩な機能を有するミトコンドリアと様々な疾患との関連

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従来技術とその問題点

・送達分子サイズの制限

(高分子送達不可)

・送達分子種の制限

(疎水性分子不可)

・細胞導入能の欠如

・機能素子付加が必要

(煩雑)

・送達分子失活の恐れ

ミトコンドリアDDSの報告例はあったが、種々の問題点のため疾患治療を実現するレベルには達していない(次頁で具体例)。

山田勇磨他, 遺伝子医学MOOK別冊(田畑泰彦編),メディカルドゥ: 131-139 (2007)

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Mt移行性ペプチド(MTS)は、低分子のMt送達おいて有用性が示されているが、送達分子の物性やサイズを制限するため、治療用タンパク質や核酸などの高次構造分子の送達は不可能だった 。

Yamada Y. et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 60: 1439-1462 (2008)

MTSによる薬物送達の有用性と限界

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新技術の特徴・従来技術との比較

・ MITO-Porterは膜融合を介して

ミトコンドリア内へ送達分子を導

入するナノカプセル(リポソーム)である。

・ リポソームに内封するため、送達薬物のサイズや種類を制限し

ない。また、送達分子に機能素子の修飾を必要としない(操作が

簡便かつ送達分子の失活回避)。

・ 臓器特異性・細胞選択性を付加する事が可能なため、様々な目

的部位への送達が可能。

・ウイルスを用いるような毒性・抗原性・癌化等の懸念がない。

薬物キャリアとして注目されているリポソーム(脂質二重膜小胞)

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6Yamada, Y. et al., Biochimica et Biophysica Acta. 1778, p423-432 (2008).

MITO-Porterを用いたミトコンドリアへの分子送達戦略図

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ミトコンドリア融合性リポソームの探索

研究成果1: MITO-Porterの構築および疾患治療戦略の検証

Yamada, Y. et al., Biochimica et Biophysica Acta. 1778, p423-432 (2008).

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共焦点レーザースキャン顕微鏡による細胞内動態観察

Yamada, Y. et al., Biochimica et Biophysica Acta. 1778, p423-432 (2008).

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電子顕微鏡観察

Yamada, Y. et al., Biochimica et Biophysica Acta. 1778, p423-432 (2008).

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多重型パッケージング法を利用したDual Function (DF)-MITO-Porterの構築

Yamada Y. et al. Mol. Ther. 19: 1449-1456 (2011)

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ミトコンドリアにおけるエネルギー産生、アポトーシス誘導制御、融合・分裂 、活性酸素シグナリング、カルシウム貯留などの異常が主な原因!!

1. ミトコンドリアへの抗酸化剤の送達→ 適応症の例: 癌・神経変性疾患・老化 など

実施例

2. ミトコンドリアへの抗アポトーシス薬の送達→ 適応症の例: 虚血性疾患・神経変性疾患・糖尿病 など

Mitochondrial Medicineの創製を目指した研究

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SOD搭載MITO-Porterの構築・抗酸化評価

Furukawa R., Yamada Y. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 404 p796-801 (2011)

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抗アポトーシス作動薬のミトコンドリア送達・機能評価

Yamada Y. et al. J. Pharm. Sci. 102:1008-1015 (2013)

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研究成果2: ミトコンドリアを標的とした遺伝子治療戦略の検証

ミトコンドリア遺伝子病とその治療戦略

Yamada Y. et al., Adv. Drug Deliv. Rev. (2008). Kyriakouli D.S. et al., Gene Ther., 15, 1017-1023(2008)

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MENDを利用した高分子ナノ粒子パッケージング

Kogure K. et al., J. Control. Release (2004).Nakamura T, Akita H, Yamada Y. et al., ACCOUNTS 45: 1113-1121 (2012).

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mtDNAを標的としたMt最内部送達の検証

Yamada Y. et al. Mol. Ther. 19: 1449-1456 (2011) Yamada Y. et al., Biomaterials. 33: 1589-1595 (2012).

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DNase I タンパク質搭載多重型MITO-Porterの構築

Yamada Y. et al. Mol. Ther. 19: 1449-1456 (2011)

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Method

Yamada Y. et al., Biomaterials. 33: 1589-1595 (2012).

DNase I送達後のミトコンドリア活性評価

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19Yamada Y. et al., Mol. Ther. 19: 1449-1456 (2011). Yamada Y. et al., Biomaterials. 33: 1589-1595 (2012).

DNase I送達後のmtDNA分解の検証

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想定される用途

• ミトコンドリア治療用ナノカプセル (例:神経変性疾患、がん、糖尿病)

• ミトコンドリア用核酸・遺伝子導入薬 (疾患モデル細胞・動物構築に利用)

• アンチエイジング・メタボリックシンドローム予防・治療の薬・サプリメント剤

⇒世界に先駆けて医薬品開発が可能となる!!

⇒基盤技術として世界中から注目されている!!(試薬のニーズがある)

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実用化に向けた課題

• 研究室レベルで、疾患モデル細胞および小動物(未提示)

のミトコンドリアを標的とした疾患治療のPOCを示したが、大動物での検討が必要である。

• 実用化を視野に入れた際に、製剤化(大量製造、安定性、無菌状態)の検討が必要である(発表者の所属する研究室で検討可能)。

• 医薬品・試薬として実用化するために、企業と連携し、特許戦略を含め実験データを取得する事が必要である。

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企業への期待

・ミトコンドリアに作用する薬物(候補分子)を開発中の

企業には本技術の導入が有効と思われる。

・ミトコンドリアを標的とした分子探索・機能評価にも本技術

は有効と思われる。

・ミトコンドリアへの薬物・タンパク質・核酸の導入試薬として

の技術提供も可能(共同研究希望)。

私たちが開発したナノカプセルは目的分子をミトコンドリアに送達する事が可能なため、疾患の治療・診断(治療分子送達)、美容・健康の維持(老化・肥満抑制因子送達)に応用可能である。また、核酸・遺伝子の送達にも適応しているので、遺伝子治療・ライフサイエンスの発展への貢献が期待される。産学連携により、本ナノカプセルを実用化したいと考えている(医薬品、試薬、他)。

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称:物質をミトコンドリア内に送達可能な脂質膜構造体

• 出願番号: 特願2007-507194

• 出願人: 北海道大学

• 登録番号:特許第5067733号

• 発明者:山田勇磨、秋田英万、小暮健太朗、紙谷浩之、原島秀吉、菊池寛、小林英夫

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お問い合わせ先

北海道大学

助教 山田 勇磨

TEL 011-706 - 3734

FAX 011-706 - 3734

e-mail u-ma@pharm.hokudai.ac.jp