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17 1.はじめに 平成 2 年に当時の建設省において、総合技術開発プロジ ェクト「建設事業における施工新技術の開発」が立ち上げ られた。その開発の一環として、建設省土木研究所、(財) 先端建設技術センター、民間会社による「橋梁基礎の施工 における自動化技術の開発に関する研究」が共同研究とし て実施され、その開発成果が「自動化オープンケーソン工 法(SOCS:Super Open Caisson System)」である。 本工法は実大規模の実証施工実験工事を経て平成 8 年に 霞ヶ浦導水事業の立坑工事に初めて採用されて以来、施工 事例も確実に増え、近年では更なる大口径・大深度工事へ の挑戦が行われている。 2.自動化オープンケーソン工法の概要 本工法には、施工機械別に橋型タイプと分離タイプ(図 1) があり、次の 3 つのシステムから構成されている。 ・自動掘削・揚土システム ・自動沈下管理システム ・プレキャスト躯体システム ここでは、自動掘削・揚土システム、自動沈下管理シス テムについて紹介する。 図1 施工機械イメージ 2.1 自動掘削・揚土システム 自動掘削・揚土システムは掘削システムと揚土システム とに分けられ、ケーソン内壁に取り付けられた走行レール 上を移動しながらケーソン刃先部下地盤を自動掘削する自 動水中掘削機と、この掘削機で掘削した土砂の揚土および ケーソン中央部の掘削・揚土を行う揚土機から構成されて いる。 両システムにはコンピュータによる自動制御が組み込ま れており、大幅な機械化と省力化・効率化が図られている。 図 2 に本工法の施工フローを示す。 オープンケーソン工法での大深度・硬質地盤への挑戦 ~自動化オープンケーソン工法~ Construction of Vertical Shafts in Depth and Hard Ground with Automatic System for Open Caisson Method 要旨 自動化オープンケーソン工法は、平成 8 年に実工事に初めて採用されて以来、施工事例も増え、硬質地盤での大 深度・大口径オープンケーソンの適用範囲を大きく広げてきた。この中には、ケーソンによる立坑として、深度・径 が我が国最大級の事例も含まれている。本報告では、これまでの施工で得られた結果と課題をまとめて示す。 キーワード:オープンケーソン 大深度 大口径 硬質地盤 自動水中掘削機 SOCS 秋田 満留 *1 山内 佳樹 *2 Mitsuru Akita Yoshiki Yamauchi 西村 敦 *3 大島 徳行 *4 Atsushi Nishimura Noriyuki Oshima *1 東京本店 土木技術部 *2 東京本店 土木部 *3 大阪本店 土木部 *4 東京本店 機材センター 橋型タイプ 分離タイプ

オープンケーソン工法での大深度・硬質地盤への挑 …...2.1.1 掘削システム 1)自動水中掘削機 自動水中掘削機(写真1)は0.55m3級のバックホウ能力

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― 17 ―

1.はじめに

平成 2 年に当時の建設省において、総合技術開発プロジ

ェクト「建設事業における施工新技術の開発」が立ち上げ

られた。その開発の一環として、建設省土木研究所、(財)

先端建設技術センター、民間会社による「橋梁基礎の施工

における自動化技術の開発に関する研究」が共同研究とし

て実施され、その開発成果が「自動化オープンケーソン工

法(SOCS:Super Open Caisson System)」である。

本工法は実大規模の実証施工実験工事を経て平成 8 年に

霞ヶ浦導水事業の立坑工事に初めて採用されて以来、施工

事例も確実に増え、近年では更なる大口径・大深度工事へ

の挑戦が行われている。

2.自動化オープンケーソン工法の概要

本工法には、施工機械別に橋型タイプと分離タイプ(図 1)

があり、次の 3 つのシステムから構成されている。

・自動掘削・揚土システム

・自動沈下管理システム

・プレキャスト躯体システム

ここでは、自動掘削・揚土システム、自動沈下管理シス

テムについて紹介する。

図1 施工機械イメージ

2.1 自動掘削・揚土システム

自動掘削・揚土システムは掘削システムと揚土システム

とに分けられ、ケーソン内壁に取り付けられた走行レール

上を移動しながらケーソン刃先部下地盤を自動掘削する自

動水中掘削機と、この掘削機で掘削した土砂の揚土および

ケーソン中央部の掘削・揚土を行う揚土機から構成されて

いる。

両システムにはコンピュータによる自動制御が組み込ま

れており、大幅な機械化と省力化・効率化が図られている。

図 2 に本工法の施工フローを示す。

オープンケーソン工法での大深度・硬質地盤への挑戦

~自動化オープンケーソン工法~

Construction of Vertical Shafts in Depth and Hard Ground with Automatic System for Open Caisson Method

要旨

自動化オープンケーソン工法は、平成 8 年に実工事に初めて採用されて以来、施工事例も増え、硬質地盤での大

深度・大口径オープンケーソンの適用範囲を大きく広げてきた。この中には、ケーソンによる立坑として、深度・径

が我が国最大級の事例も含まれている。本報告では、これまでの施工で得られた結果と課題をまとめて示す。

キーワード:オープンケーソン 大深度 大口径 硬質地盤 自動水中掘削機 SOCS

秋田 満留*1 山内 佳樹*2

Mitsuru Akita Yoshiki Yamauchi 西村 敦*3 大島 徳行*4 Atsushi Nishimura Noriyuki Oshima

*1 東京本店 土木技術部 *2 東京本店 土木部 *3 大阪本店 土木部 *4 東京本店 機材センター

橋型タイプ 分離タイプ

鴻池組技術研究報告 2009

― 18 ―

図 2 施工フロー

2.1.1 掘削システム

1)自動水中掘削機

自動水中掘削機(写真 1)は 0.55m3級のバックホウ能力

を有しており、各部に制御用センサーが組み込まれている。

油圧ホースや制御用配線等は 1.0MPa の水圧に耐え得るよ

うに設計されている。この機械は、ケーソン内壁に取り付

けられた走行レール上を円周方向に移動し、これを把持す

ることで掘削反力を確保してケーソン刃先下地盤を確実に

掘削することができる。

掘削プログラムには、種々の地盤条件に対してケーソン

のスムーズな沈設が行えるように掘削パターンが予め組み

込まれている。図 3 に掘削平面・断面パターンを示す。

写真1 自動水中掘削機

図 3 掘削平面・断面パターン

平面的には、円周方向に順次掘削する連続掘削パターン

と、千鳥状に掘削するパターンが選択できるようになって

いる。一方、断面的にはケーソンの刃先形状に合わせ、鉛

直方向に約30cm毎に9つの掘削断面パターンが用意されて

いる。実施工では、軟弱~硬質の地盤やケーソン本体の傾

斜に応じてこの掘削平面・断面パターンを組み合わせ、ケ

ーソンの傾斜を修正しながら、1 回当りの圧入作業で 30cm

程度の沈下量を確保できるよう掘削方法の検討を行う。

掘削用バケットは幅50㎝、75㎝、100㎝の3種類があり、

地盤の硬さによって使い分ける。さらに、バケットによる

掘削が困難になったときのためにリッパーも用意してある

(写真 2)。なお、自動水中掘削機は高水圧・泥水下での掘

削作業を行うため、1 日 1 回の頻度でグリスアップと目視

点検を行う。

No

Yes

準  備  工

圧入反力用アンカー工

刃口金物据付工

1ロット躯体構築工

自動水中掘削機レール工

躯体構築完了

圧入設備設置・調整

バケット選択(広幅バケット,狭幅バケット,他)

自動水中掘削機据付(仮置架台→ケーソン天端部)

自動水中掘削機保守点検

掘削機吊下移動(ケーソン天端部→刃先部)

掘削パターンの設定

自動掘削工(掘削機) 掘削揚土工(揚土機)

掘削完了

圧    入

作業終了

掘削機吊上移動(ケーソン刃先部→天端部)

ロット沈設完了

自動水中掘削機仮置(ケーソン天端部→仮置架台)

圧入設備撤去・メンテナンス

次ロット構築

スライム処理工,SOCS機械解体・搬出

底盤水中コンクリート工

濁 水 処 理 工

本 体 底 版 工

復  旧  工

自動掘削揚土システム組立工

自動沈下管理システム組立工

掘削揚土・圧入工

Yes

Yes

No

No

No

Yes

千鳥状に掘削

平面図

連続的に掘削

平面図

掘削範囲 3.5m

掘削バケット幅

掘削平面パターン壁厚 2mの場合

ケーソン側壁

自動水中掘削機

刃先テーパー部

④ ⑤⑥

②①

⑦⑨

3,500

50~

700

2,050

(○数字はプログラムされた掘削軌跡番号)

1,3

18

1,450

2,3

00

掘削断面パターン

オープンケーソン工法での大深度・硬質地盤への挑戦

~自動化オープンケーソン工法~

― 19 ―

写真 2 リッパー装着状況

2)掘削管理

自動水中掘削機の姿勢は、掘削機本体からバケット刃先

の相対位置を駆動部分の各油圧シリンダに内蔵したストロ

ークセンサーにより検知し、掘削機本体の円周上の位置は

走行レール上の磁石センサーにより検知する。

自動掘削作業は、掘削時に各シリンダに発生する油圧か

ら掘削抵抗力を算出し、予め設定したバケット通過軌跡(掘

削断面パターン)を目標に、最も効率的に掘削できるブー

ム、アームおよびバケットの一連の動作を自動判定しなが

ら行われる。

オペレータ室には自動水中掘削機の位置・姿勢や油圧な

どの稼働状況がリアルタイムで表示され、的確な管理と施

工が行えるようになっている。写真 3 は運転操作盤で、こ

こから遠隔操作を行う。

写真3 運転操作盤

2.1.2 揚土システム

1)揚土システム

①橋型タイプ

橋型タイプは、門型クレーンの様な形状の自動揚土機(写

真 4)がケーソンをまたぐ形で地上部に配置される。ケー

ソン周囲を旋回しながら作業を行うため、用地に余裕のあ

る場合に適用される。この自動揚土機は、掘削・揚土作業

の自動制御機能と自動水中掘削機を函内へ上げ・下げする

機能を有する完全自動化の施工機械である。

写真 4 自動揚土機

自動揚土機には電動油圧グラブ(写真 5)が装備されて

いる。硬質地盤の場合、地山の掘削を円滑に行うため、小

刻みな開閉動作の繰り返しによる地山への爪の貫入や、グ

ラブを少しずつ巻上げながらの閉じ動作の繰り返し、浮力

を考慮した重量確認後の引上げ等の動作を自動制御で行う

ようになっている。

写真 5 電動油圧グラブ

②分離タイプ

分離タイプは自動揚土機の有する機能を、汎用性・機動

鴻池組技術研究報告 2009

― 20 ―

写真 6 水中掘削支援機

性の優れた 2 台のクローラクレーン(水中掘削支援機と掘

削・揚土クレーン)に分割している。狭隘な用地やケーソ

ンの計画位置が施工ヤードの端に偏っている場合でも本工

法の適用が可能であり、橋型タイプに比べて都市型の施工

に適したものとなっている(図 4)。

水中掘削支援機(写真 6)は、自動揚土機が有する自動

水中掘削機への電力供給、制御信号の伝達および本体の引

上下げ機能を有する機械で、汎用の 100t クローラクレーン

をベースマシンとしている。

掘削・揚土クレーンは、ケーソン規模や土質に応じて重

量型クラムシェルや電動油圧グラブを用いて掘削・揚土作

写真7 掘削支援システム

業を行うクローラクレーンである。電動油圧グラブを使用

する場合は、ベースマシンに専用装置を搭載する。

なお、分離タイプでは掘削・揚土クレーンをオペレータ

が操作するため、橋型タイプの完全自動化施工に対し半自

動化施工となっている。

2)分離タイプの掘削・揚土管理

一般的な水中掘削で課題となっている掘削作業中のグラ

ブの平面位置、掘削深度および掘削土掴み量(吊り荷重)

を掘削支援システムで管理している。このシステムは、ク

ローラクレーンの旋回角度・起伏角度やワイヤ繰り出し量、

荷重等を検出し、コンピュータでバケットの位置や掴み量

を演算し表示するものである。

これらの情報は自動水中掘削機と同様にオペレータ室に

リアルタイムで表示(写真 7)され、機械同士の衝突がな

いように管理しながら施工が行えるシステムになっている。

なお、橋型タイプも上記システムと同様なシステムが採用

されている。

図 4 施工ヤード事例

外型枠

置場

外足場置場

詰所 受変電設備内型枠置場

倉庫

土砂ピット

圧入

管理室

60 m

30 m

水中掘削支援機

掘削揚土クレーン

80t・ドレッジャーバケット

出入口

10,500

φ13,500

整備架台

内外型枠置場

足場置場 圧入管理室機械倉庫

掘削残土ストックヤード

インフォメーションセンター

足場置場

構築用クレーン

見学者用通路・ステージ

走行路自動揚土機

給電塔

約 110 m

約 5

0 m

約 5,200 m2

約 1,800 m2

揚土機走行レール

15,000

φ19,000

橋型タイプ 施工ヤード事例

立坑外周+10 m の用地が必要

分離タイプ 施工ヤード事例

足場置場

出入口

オープンケーソン工法での大深度・硬質地盤への挑戦

~自動化オープンケーソン工法~

― 21 ―

3)機械回収方法

自動水中掘削機が故障した場合に備え、水中からの緊急

離脱を行うシステムを有している。このシステムは、自動

水中掘削機を走行レールから強制的に解放(離脱)させる

機構で、電気信号(電気式)、油圧制御(油圧式)および掘

削機本体回収装置のドッキング(機械式)の 3 系統が選択

できる。

2.2 自動沈下管理システム

自動沈下管理システムの概要図を図 5 に示す。本システ

ムはケーソン本体の計測から圧入までをシステム化し、従

来手動操作によって行われていたケーソン沈設における圧

入・姿勢制御を自動化し、迅速かつ高精度な沈設管理を実

現したものである。

図 5 システム概要図

2.2.1 計測による情報の収集

近年のケーソン工法では様々な計測と情報化施工が行わ

れている。表1に一般的な計測項目を示す。主な計測内容

は、ケーソン本体の挙動と沈下抵抗力の 2 つに大別できる。

1)ケーソン本体の挙動計測

ケーソン本体の挙動計測は、工事にあたっては必要不可

欠なものであり、ケーソン工法が世に出た当初から程度の

差こそあれ何らかの形で実施されてきた。

主な計測項目は傾斜量と沈下量で、それぞれ傾斜計、沈

下計で計測されている。傾斜はケーソン全体の施工精度に

関わるとともに、沈下抵抗力に大きく影響を与えるため、

特に重要な計測項目である。

表1 計測項目

2)沈下抵抗力の計測

沈下抵抗力については数多くの文献で発表され、指針等

にもその知見および推奨値が記載されているが、実測値が

推奨値を大幅に逸脱することも珍しくない。実施工では、

沈下抵抗力を計測することで周面摩擦力度や刃先反力度の

変動傾向を知ることができ、施工の進め方や補助工法の使

用を判断する上で極めて重要である。

本工法では、周面摩擦計や刃先反力計などの計測情報を

自動的に収集・表示する自動沈下管理システムが採用され

ており、掘削方針の決定や傾斜量を制御しながらの自動圧

入など施工に反映されている。

3)圧入仮設

本工法を含む圧入式オープンケーソン工法では、ケーソ

ン周囲に打設した鉛直アンカー(圧入反力用アンカー)の

引抜抵抗力を利用して油圧ジャッキの圧入反力を取り、圧

入桁と称するH鋼材を介してケーソン本体に圧入力を伝達

している。

写真 8 の事例では 3MN(3,000kN)の油圧ジャッキ 8 台を

配置する計画で、井桁構造を採用している。ケーソン本体

鉛直鉄筋の重ね継手長を考慮して圧入桁(支圧盤)を高く

している。

4)圧入作業

圧入中は、各種計測機器(図 5)からの情報を 1 秒ごとに

本システムに取り込み、計測結果に応じて載荷するジャッ

キ台数、圧入力を自動制御する。

本工法では、自動掘削システムによる非常に精度の高い

ケーソン刃先下地盤の掘削管理と、自動沈下管理システム

との相乗効果により、自動的に効率よく傾斜を制御しなが

項 目 計測方法 計測頻度(例)

傾斜量 傾斜計 測量

作業中は 1 秒毎 に自動計測

沈下量 沈下計 測量

測量は圧入作業 後に実施

回転量 測量 各ロット沈下 完了後に実施

偏心量 測量 -〃-

周面摩擦力度 周面摩擦計 作業中は 1 秒毎 に自動計測

刃先反力度 刃先反力計 -〃-

水 圧 水圧計 -〃-

坑内水位 測量 作業前、作業後 に実施

地中変位 挿入式傾斜計 層別沈下計

各ロット沈下 完了後に実施

地下水位 観測井戸 1 日 1 回 検尺/自動計測

鴻池組技術研究報告 2009

― 22 ―

ら圧入作業を行うことができる。図 6 に自動圧入作業のフ

ローを示す。

写真 8 圧入桁の施工事例

図 6 自動圧入作業のフロー

3.施工事例

現在まで施工された 8 件の施工実績から 2 件の工事概要

を紹介する。

3.1 首都圏外郭放水路事業 大落おおおとし

古利根川ふ る と ね が わ

連絡トンネル

新設工事

3.1.1 工事概要

本事業は、中川、倉松川、大落古利根川の洪水時その一

部を江戸川に放流し流域の浸水被害を解消または軽減する

目的で、国道 16 号線下 50m 付近に各河川間を結ぶ地下河川

を建設するものである。

本工事は大落古利根川からの洪水流を取り込む施設で、

流入立坑および本坑との連絡トンネルを築造するものであ

る。立坑構造図を図7に示す。

施工場所:埼玉県春日部市小渕

立坑形状:内径φ15.0m、外径φ19.0m

躯体長 74.52m、深さ 73.52m

構 造:鉄筋コンクリート

施工機械:橋型タイプ

トンネル:内径 φ6.5m、外径 φ7.1m

延長 380m、土被り約 54m

図 7 大落古利根川連絡トンネル立坑構造

3.1.2 地盤概要

土質は大別して地表面から約 20m 区間は軟弱な沖積層、

40m までが洪積粘性土層と砂層との互層、それ以深は砂質

土層となっている。特に深部の砂質土層については換算 N

値が 100 以上であり、従来のオープンケーソン工法では立

坑深度を考慮すると施工が困難な硬質地盤である。地下水

位は GL-5m 付近にある。

3.1.3 施工状況(写真 9)

橋型タイプの作業サイクルの特徴は、自動水中掘削機に

よる掘削と自動揚土機の電動油圧グラブによる掘削・揚土

挿入式傾斜計

45°+φ

/2

層別沈下計

周面摩擦計

刃先反力計

油圧ホース・圧入設備へ

沈下量・傾斜量・刃先抵抗力(刃先反力)・周面摩擦・水圧を表示/記録と圧入ジャッキ操作

油圧ユニット計装盤

圧入管理室

計装信号A/D変換現場盤

周面摩擦計

沈下計

計測ケーブル

傾斜計

制御コンピュータ

周面摩擦計

挿入式傾斜計

沈 下 計

名  称

刃先反力計

傾 斜 計

規  格 数  量 記号

層別沈下計

水圧計水 圧 計

No.9(そ

の23

)H7.1

1

AP+8.13

m Dep

=69.4

5m

40 5020100 30

N値AP+8.500水

レキ混り

細砂

細砂

レキ混り

粗砂

細砂

砂混りシルト

細砂

凝灰質

シルト

シルト質

微細砂

細砂

シルト

砂混り

シルト

シルト

細砂有機質シルト凝灰質シルト

砂混り

固結シルト

細砂

砂混り

硬質シルト

砂混りシルト

シルト質

細砂

砂質シルト

柱状図土質

区分

埋土

砂混り

粘土細砂

細砂

粘土

粘土質シルト

混りシルト

GL-3.50

50403020100

N 値

2,000 15,000 2,000

19,000

1,0

00

AP-47.713

φ6,5

00

AP-55.020

2,050

7,0

00

2,050 15,000

φ19,100

2,800②

3,0

00

③5,8

2010

@ 6

,270 =

62,

700

74,

520

3,2

00

高低

差最

大6.9

m

2,000

地盤改良範囲

(深層混合処理)

70

65

60

55

50

45

35

40

30

25

20

15

10

5

75

オープンケーソン工法での大深度・硬質地盤への挑戦

~自動化オープンケーソン工法~

― 23 ―

が並行して実施できる点である。しかし、自動揚土機が自

動水中掘削機の支援機能を兼ねていることや、ケーソンの

沈下をスムーズに実施する上で、片方の作業を大幅に先行

して実施することはできない。掘削作業時間は自動水中掘

削機と自動揚土機の双方の作業時間の長い方で決定される

ため、深度 50m 付近でバランスするように計画した。実施

工では、ほぼその通りとなったことが確認された。

また、工事工程を短縮するために 1 ロットの標準的な高

さを 6.27m とし、それにともなって足場・型枠などの仮設

を大判化することで構築回数や仮設架払い回数を減らすな

どの工夫も行われた。

写真 9 施工状況

大深度における周面摩擦力の計測結果と施工管理事例を、

深度 GL-53m 付近におけるデータで示す。周面摩擦力度の計

測データ(図 8)をみると、第 1 ロットの周面摩擦力度の

計測値は設計値の約 5 倍の 150kN/m2を示す一方、第 5 ロッ

トでは設計値に対して約 1/5 の 5kN/m2で、計測値から求ま

る全体の周面摩擦力は、設計値の約 50%であった。

当初の計画では当該地盤での施工は、ケーソン刃先部を

地山に 80cm 程度貫入させた状態で荷重バランスをとりな

がら行う予定であったが、周面摩擦力が設計値より小さい

状態であったので、刃先部の掘削管理によりケーソンの安

定を図りながら施工を進めた。加えて、ケーソンに生じて

いる約 38mm の傾斜を修正するため、図 9 に示すような掘削

方法を選定し、刃先反力(抵抗力)に差をつけた。

このように刃先掘削を平面・深さ方向とも任意に選定す

ることができる自動水中掘削機の特徴を活かし、1 日当り

の沈下量約 56cm を確保しつつ傾斜を 33mm まで修正した。

上記のような施工管理を日々繰り返し、オープンケーソン

工法としては日本で最大級の深度となる GL-73.52m まで沈

設した。

図 8 周面摩擦力度の計測データ

図 9 掘削方法

3.2 床上浸水対策特別緊急事業 淀川水系寺て ら

畑は た

前ま え

川か わ

調節

池整備工事

3.2.1 工事概要

寺畑前川はその河道断面が小さい典型的な都市の中小河

川であり、近年の都市型集中豪雨で、周辺では浸水被害が

頻繁に発生している。最近でも、床上・床下浸水被害が約

260 戸発生するなど、早急な対策が求められていた。本工

事は、周辺環境から十分な河道断面を確保することが困難

であるため、雨水を一時的に貯留する調節池(約 19,400m3)

を築造するものである。調節池構造図を図 10 に示す。

0 120 240 360 480 600 720 840 960

50100150200

0 120 240 360 480 600 720 840 960

1020304050

0 120 240 360 480 600 720 840 960

500100015002000

0 120 240 360 480 600 720 840 960

5000100001500020000

0 120 240 360 480 600 720 840 960−54.0

−53.5

−53.0

−52.5

303234363840

第1ロット(刃先部)の周面摩擦力度 (平均値)

(min)

設計値=30kN/m2

設計値=24kN/m2第5ロット(刃先+23m)の周面摩擦力度 (平均値)

設計値=点線、実測値 =実線

設計値=点線、実測値 =実線

刃先反力計 (4方向4台)の実測値=点線、4方向の平均値 =実線

(kN)

(kN

/m2)

(kN

/m2)

(kN

/m2)

圧入

自動水中掘削機で計測器近くの刃先地盤を掘削

周面摩擦力度 (第1ロット)

周面摩擦力度 (第5ロット)

刃先反力度

圧入力

刃先深度 (沈下量)

沈下量 合計約56cm沈下

傾斜量 約5mm修正

(mm

)

(m)

傾斜量

A

A最下点

最下点

掘削断面パターン

傾斜量 37.8mm

3,5003,500 12,100

②⑥

⑦ 800掘削パターン②で掘削

掘削パターン⑥⑦で千鳥状に掘削

1,018

150

中央部は刃先-800mmで掘削

傾斜量37.8mm

平面図 A-A断面図

3,500

鴻池組技術研究報告 2009

― 24 ―

施工場所:兵庫県川西市南花屋敷

立坑形状:内径φ30.0m、外径φ35.0m

躯体長 42.583m(頂版除く)

深さ 47.223m

構 造:鉄筋コンクリート

施工機械:分離タイプ

図 10 寺畑前川調節池構造

3.2.2 地盤概要

土質は、大別して地表面から約 25m 区間は軟弱な沖積粘

性土層と砂層との互層、約 35m までが N 値 10~20 の泥炭・

腐植土層、それ以深は硬質な礫質土層となっている。当地

はもともと地層が傾斜しており、ケーソン平面内の狭い範

囲でも最大約 8m の高低差が生じている。GL-30m 以深の礫

質土層の地下水位は被圧状態(GL+3.6m)であった。

3.2.3 施工状況(写真 10)

地層が大きく傾斜し、通常は補助工法を併用して刃先地

盤を均一にしないと施工が難しい現場条件であったが、自

動水中掘削機で傾斜方向にあわせた刃先反力の確実な管理

を行うと共に、自動沈下管理システムで傾斜を修正しなが

らの圧入作業を行うことで高精度かつ高品質な施工が行わ

れた。図 11 に深度 20m を超えてからの傾斜管理図を示す。

従来のオープンケーソン工法ではケーソンの深度が深くな

ると掘削管理が難しくなり傾斜の修正が困難になるが、本

工法ではケーソンの深度が深くなっても綿密な傾斜管理が

行われている様子がわかる。

ケーソン中央部の掘削・揚土は電動油圧グラブを装備し

たクローラクレーン 2 台で行われた。地山を直接目視でき

ない水中掘削作業下においても掘削状況・掘削土量の確実

な管理を可能とする掘削支援システム(写真 7)を導入す

ることで、掘削土量の管理が確実に行えたと共に機械の衝

突防止も図ることができた。

写真 10 施工状況

図 11 傾斜管理図

4.周面摩擦力の低減工法

大深度オープンケーソン工法では沈下抵抗力の 1 つであ

る周面摩擦力の影響が非常に大きくなり、これを如何に低

減できるかが工事の成否や経済的かつ合理的な圧入計画を

する上でのポイントとなる。

本工法で現在までに施工した全ての工事は、NF シート工

法とエアージェット工法を併用した周面摩擦低減を採用し

ている。NF シート工法は摩擦低減効果に優れているが、シ

ートがケーソン周囲に残置されて回収が不可能であるため、

現状では橋梁基礎への適用はできない。今後、新しいシー

ト材料の研究・開発に期待するとともに、滑材注入工法な

どの信頼性および施工の確実性を高めていくことが重要で

TP+26.000(将来計画)

7,0

005,

000

2,8

006 @

6,0

00 =

36,

000

42,5

83

3,78

3

46,

223

3,6

40

地盤改良範囲

(深層混合処理)

TP+25.000

TP-9.223

2,5502,550 30,000

φ35,100

2,500 30,000 2,500

35,000

30,5

83

位柱状図

設計

土層 50403020100

N 値

盛土

粘性土Auc~Aus

礫混り

砂Ausg

砂質

粘性土Als~Alcs

泥炭・

腐植土Tlpt

シルト質

シルト混

り砂礫

粘性土

シルト混

り砂礫

砂礫

既H13

.No.1

T.P.+24.7

0m D

ep=7

5.00m

TP+28.600

-26.0

-22.0

-12.6

-10.6

-6.8

-4.5

+12.2

+4.9

+19.7

 +24.3

-17.5

-12.8-11.3

-0.7

+3.0

+6.3

+9.1

+24.0

+15.0

+18.5

+22.6

位柱状図

設計

土層 50403020100

N 値

盛土

既H12

.No.1

T.P.+25.6

4m D

ep=4

5.90m

砂質

粘性土

砂礫

礫混りシルト

質砂

砂質シルト

泥炭・

腐植土Tlpt

砂礫

砂質シルト

−300 −200 −100 0 100 200 300

−45

−40

−35

−30

−25

−20−300 −200 −100 0 100 200 300

1/200

6ロット

7ロット

沈下完了

(+)0~(−)180°方向=実線

(m)

(mm)

(+)90~(−)270°方向=点線

1/200

オープンケーソン工法での大深度・硬質地盤への挑戦

~自動化オープンケーソン工法~

― 25 ―

あると考える。

5.軟弱地盤対策

先に紹介した施工事例では、ケーソン工事に先立ち地表

面近くの軟弱地盤に対して浅層改良工法による地盤改良が

行われた。これはコンクリート躯体を構築する際、打ち足

すコンクリート重量に対して地盤支持力を十分に確保する

のが難しいためである。

6.施工精度

施工実績では概ね 1/500~1/2000 程度の施工精度が確保

され、従来のオープンケーソン工法に比べて精度が大幅に

向上している。本工法が大口径・大深度地下構造物の構築

や近接施工に対して問題のないことが明らかである。

7.周辺環境への影響調査

建設工事で周辺環境に対する影響として考慮しなければ

ならない項目としては、大気・水質・土壌汚染・臭気、騒

音・振動・地盤沈下のほか、日照阻害・飛砂・塵芥など多

くの環境項目にわたっている。

ケーソン工法としては、これらのうち周辺地盤への影響

(地盤沈下など)が最も大きな問題である。また、本工法

では機械施工が中心となることから、騒音・振動について

も十分に配慮しなければならない。以下に本工法の環境へ

の影響を測定した事例を記す。

7.1 地表面沈下、地中水平変位

7.1.1 影響遮断壁がない場合

調査現場:玉里立坑(外径φ22.0m、壁厚 2.0m、深度 53.5m)

1)地表面沈下

図12に地表面沈下の測定結果(ケーソン外壁面から5m、

10m、15m、20m の位置)を示す。測定結果を見ると、ケー

ソン最終沈設時において、ケーソン外壁面から 5m 離れた地

点で 1.5cm~2.0cm、10m で 1.0cm~1.5cm の地表面沈下が発

生している。15m 以上離れた地点ではケーソン沈設の影響

はほとんど見られない。ケーソン外壁面から 5~10m は作業

用重機の通路となっており、この影響も含まれているもの

と考えられる。

図 12 地表面沈下(影響遮断壁なし)

2)地中水平変位

図 13 に、地中水平変位の測定結果(ケーソン外壁面から

3m、13m の位置)を示す。測定結果を見ると、ケーソン外

壁面から3m地点、GL-0.5mの位置でケーソン側へ最大4.5cm、

同じく 13m の地点で約 1cm 水平変位が生じている。変位は

比較的緩い地盤の GL-5m までに限られており、それ以深で

は掘削の影響は認められない。

7.1.2 影響遮断壁を設けた場合

調査現場:本山立坑(外径φ13.5m、壁厚 1.5m、深度 55.4m)

1)地表面沈下

図 14 に地表面沈下の測定結果を示す。ケーソン外壁面か

ら 1.2m の位置に地下水汚濁防止のための柱列式ソイルセ

玉里立坑

外径φ22.0m

壁厚2.0m

深度53.5m10m測点20m測点

B方向

15m測点

5,0

00

3,000

13,0

00

5m測点

地表面沈下

測定位置

5,0

005,0

00

5,0

00

10,

000

地中水平変

位測定位置

A方向

–80

–60

–40

–20

0

20

沈下量(mm)

2/16 4/17 6/16 8/15 10/14 11/13

凡例 ○:5m測点 □:10m測点 ◇:15m測点 △:20m測点

A方向測定値

–80

–60

–40

–20

0

20

沈下量(mm)

2/16 4/17 6/16 8/15 10/14 11/13

凡例 ○:5m測点 □:10m測点 ◇:15m測点 △:20m測点

B方向測定値

鴻池組技術研究報告 2009

― 26 ―

メント工法による壁体(影響遮断壁 L=17.8m)を設置した

ことで、フリクションカット(幅 5cm)による地表面の引き

ずり込みが壁内側のみに抑えられ、ケーソン最終沈設時に

おいて地表面沈下量は 0~1mm の測定誤差範囲であった。

図 13 地中水平変位(影響遮断壁なし)

図 14 地表面沈下(影響遮断壁あり)

2)地中水平変位

図 15 に地中水平変位の測定結果(ケーソン外壁面から

3m の位置)を示す。測定結果を見ると、ケーソン外壁面か

ら 3m の地点(影響遮断壁の外側)でケーソン側へ最大 8mm

の水平変位に収まっており、掘削による周辺地盤への影響

はほとんど認められない。

図 15 地中水平変位(影響遮断壁あり)

7.2 騒音・振動

7.2.1 橋型タイプ

図 16 に騒音(立坑中心から 50m の位置)・振動(20m の

位置)の測定結果を示す。

自動揚土機グラブウインチの駆動(負荷)状況による騒

音で、巻上げ時に約 62dB の音が発生している。

地盤の振動(図 17)は、自動水中掘削機の掘削作業に合

わせて微動しているが、その値は 40dB 以下でほとんど体感

できない。

図 16 騒音測定結果(橋型タイプ)

+:隆起 -:沈下

最終沈設時 工事完了時

測点 A +1mm ±0mm

測点 B -1mm +1mm

測点 B ±0mm +1mm

測点 D ±0mm ±0mm

–60

–55

–50

–45

–40

–35

–30

–25

–20

–15

–10

–5

0–60 –40 –20 0 20

水平変位量(mm)深

度(m)

ケーソン外壁面から13m地点

ケーソン沈下完了時

←ケーソン外壁面側–60

–55

–50

–45

–40

–35

–30

–25

–20

–15

–10

–5

0–60 –40 –20 0 20

水平変位量(mm)

深度(m)

ケーソン外壁面から3m地点

ケーソン沈下完了時

←ケーソン外壁面側

本山立坑

外径φ13.5m

壁厚1.5m

深度55.4m

影響遮断壁L=17.8m

7,5

50

4,8

00

2,7

50

地表面沈下

測定位置

3,0

00

測点A

測点D

測点B 測点C

車道

歩道用地境界

地中水平変

位測定位置

–60

–55

–50

–45

–40

–35

–30

–25

–20

–15

–10

–5

0–60 –40 –20 0 20

水平変位量(mm)

深度(m)

ケーソン外壁面から3m地点

ケーソン沈下完了時

←ケーソン外壁面側

40

50

60

70

80

放土巻下

掘削

巻上

dB 橋型タイプ揚土機 騒音測定結果

巻下

横行

電動油圧グラブの稼働状況

オープンケーソン工法での大深度・硬質地盤への挑戦

~自動化オープンケーソン工法~

― 27 ―

図 17 振動測定結果(橋型タイプ)

7.2.2 分離タイプ

図 18 に騒音(立坑中心から 50m の位置)の測定結果を示

す。掘削・揚土クレーンのグラブ巻上げ、巻下げ時に約 55

~57dB の音が発生している。地盤の振動は、橋型タイプの

場合と同じであった。

図 18 騒音測定結果(分離タイプ)

本工法の周辺地盤変状、騒音・振動測定結果について以

下にまとめる。

・周辺地盤の地表面沈下に対しては大口径・大深度オープ

ンケーソン工法であるにも関わらず、影響は僅かである。

・地盤変状の発生は地表面近くに限られ、ケーソン外壁面

から 3m 以上離れた地点では沈設の影響がほとんど見ら

れない。

・揚土時の騒音として、揚土用グラブの巻き上げ、巻き下

げ時のウィンチによる音が発生し、その値は施工タイプ

により異なっているが一般建設工事現場で発生する程度

の音で基準値内に収まっており問題はない。

・自動水中掘削機の騒音は、電動モーターを使用している

こと、水中作業となることから地上まで音が伝播せず問

題はない。

・自動水中掘削機の振動は、掘削動作により微振動が発生

しているがその値は体感振動を下回っておりとくに問題

はなく、夜間施工への対応も容易である。

8.施工実績と適用範囲

図 19 に圧入式オープンケーソン工法、補助工法併用の圧

入式オープンケーソン工法および本工法それぞれの実績を

深度と平面規模で整理し、併せて各工法の適用範囲を示す。

本工法の施工実績のほとんどが深度 50m におよぶものと

なっており、オープンケーソンとしては日本で最大径(φ

35m)と最大深度(GL-73.5m)の実績を含んでいる(特殊な

例を除く)。

図 19 施工実績と適用範囲

9.今後の展開

本工法はオープンケーソンの大口径・大深度硬質地盤掘

削を目的に研究開発された工法であるが、橋梁基礎として

の適用を考えた時、小口径および中軟岩程度の地盤掘削へ

の対応が 1 つのポイントとなる。

現在、本システムではケーソン最小径は内径φ5.6m、掘

削地盤として硬質の砂質土地盤から粘性土地盤までは対応

可能である。しかしながら、橋梁基礎への適用をさらに幅

広く展開していくためには中軟岩程度の地盤掘削が不可欠

である。そこで、自動水中掘削機のバケットに代えてトン

ネル工事で用いられるツインヘッダーを装着した掘削実証

実験(写真 11)を実施した。今後は実用化に向けて、更な

る検討と改良を加えて行く所存である。

また、本工法で構築される大深度立坑は、地下空間の利

用という観点から様々な用途が考えられ、基礎としてはも

ちろんのこと、器としての機能として雨水貯留・調整施設

(図 20)、地下駐車場(図 21)、ポンプ施設、最終処分場、

などの適用が考えられる。

20

30

40

50

60dB

40

50

60

70

80

放土 巻下

掘削

巻上放土

dB 分離タイプ揚土機(クローラクレーン) 騒音測定結果

-100

0

-10

-20

-40

-50

-30

-60

-70

-80

-90

100 200 300 400 500

φ25φ23φ20φ17φ8

600 断面積(m2)

立坑外径(m)

深度

(m)

茨城立坑

本山立坑

φ 35

玉里立坑上飯沼立坑

大落古利根川連絡トンネル立坑

1000

美野里立坑 堅倉立坑

圧入式オープンケーソン工法適用範囲

圧入式オープンケーソン工法適用範囲(先行削孔併用)

自動化オープンケーソン工法適用範囲(橋型、分離型)

国土交通省(建設省)(橋型タイプで施工)

地方自治体(分離タイプで施工)

国土交通省(建設省)(分離タイプで施工)

圧入式オープンケーソン工法適用範囲

圧入式オープンケーソン工法適用範囲(先行削孔併用)

自動化オープンケーソン工法適用範囲(橋型、分離型)

圧入式オープンケーソン工法適用範囲

圧入式オープンケーソン工法適用範囲(先行削孔併用)

自動化オープンケーソン工法適用範囲(橋型、分離型)

国土交通省(建設省)(橋型タイプで施工)

地方自治体(分離タイプで施工)

国土交通省(建設省)(分離タイプで施工)

寺畑前川調節池

鴻池組技術研究報告 2009

― 28 ―

写真 11 ツインヘッダー掘削実証実験

10.おわりに

実証施工実験以来 10 年以上が経ち、従来ではオープンケ

ーソン工法の適用が見送られていた硬質地盤で本工法の特

徴がいかんなく発揮され、8 件の施工実績を数えるまでに

なった。いずれの工事でも高い品質と確実な施工が得られ、

システムが有効にかつ的確に機能していることが実証され

た。

図 20 縦型の雨水貯留施設

図 21 地下駐車場

本工法は、今後橋梁基礎への展開をはじめとして、さら

にオープンケーソン工法の適用領域を大幅に拡大するもの

と期待している。

参考文献

1)中野正則、岡原美知夫、福井次郎、高木繁、田坂幹雄:

オープンケーソン自動化技術の開発、土木技術資料、

1994.1

2)高木繁、伊佐秀、谷善友:自動化オープンケーソン工法

(SOCS)自動水中掘削・揚土システムの開発、土木学会第

49 回年次学術講演会概要集第 6 部、1994.9(Ⅳ-26)

3)谷村大三郎、植田純一、谷善友:自動化オープンケーソ

ン工法による大規模立坑の掘削-石岡第5立坑新設工事、

建設の機械化、1998.7

4)谷善友、植田純一、藤井由之:自動化オープンケーソン

工法による大深度立坑の施工、最新の施工技術(Vol.12)、

1998.11

5)徳山武、坂下良一、宮嶋均、植田純一:自動化オープン

ケーソン工法(分離型)による本山立坑の施工、平成 11

年度施工技術報告会・地盤工学会関西支部・土木学会関

西支部・日本建設機械化協会関西支部、1999