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1 インターネットを利用した映像配信技術とシステム 三浦朝子 [email protected] 麗澤大学国際経済学部国際経済学科 概要 ネットワークの普及とその発展には目覚しいものがある。インターネットに繋がったパ ソコンがあれば誰でも世界中にアクセスすることができるということが常識として考えら れるようになった。こうした技術を駆使して気軽に売買をしたり、個人でホームページを 開設したりして情報の輪を世界中へ広げることができるようになっており、その利用者は 年々増加の一途をたどる。そうした中でストリーミングというサービスは発展してきた。 ストリーミング技術を利用することで、現在では、一般の人々でも比較的簡単に映像配 信を行うことが可能になっている。本論では、ストリーミングにより映像・音声配信を行 うために必要となる技術的背景についてまとめるとともに、実際に映像配信を行うための システムについて RealSystem を中心として検討した。 キーワード:ストリーミング、RealPlayerRealProducerRealServer、動画配信 The System and the Transmitting Technique of Image Distribution Using the Internet Asako MIURA Reitaku University Abstract There is a remarkable thing in spread and its development of a network. When there was a personal computer connected with the Internet, it came to be considered as common sense that anyone can access all over the world. Since it could sell and buy freely, or a homepage can be established individually and an informational ring can be extended now all over the world, making full use of such technology, an increase of the user is enhanced every year. Service called streaming has developed under these circumstances. It also enables the general public to perform image distribution comparatively simply by using streaming technology now. Then, in the main subject, while summarizing the technical background which is needed in order to perform image distribution, the outline was carried out the center [ RealSystem ] about the system for actually performing image distribution. Keywords:streaming, RealPlayer, RealProducer, RealServer, VOD

インターネットを利用した映像配信技術とシステム · 2002. 4. 22. · の基礎知識と必要機器、コンテンツを配信 するまでのステップ、さらに実際にライブ

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1

インターネットを利用した映像配信技術とシステム

三浦朝子

[email protected] 麗澤大学国際経済学部国際経済学科

概要

ネットワークの普及とその発展には目覚しいものがある。インターネットに繋がったパ

ソコンがあれば誰でも世界中にアクセスすることができるということが常識として考えら

れるようになった。こうした技術を駆使して気軽に売買をしたり、個人でホームページを

開設したりして情報の輪を世界中へ広げることができるようになっており、その利用者は

年々増加の一途をたどる。そうした中でストリーミングというサービスは発展してきた。

ストリーミング技術を利用することで、現在では、一般の人々でも比較的簡単に映像配

信を行うことが可能になっている。本論では、ストリーミングにより映像・音声配信を行

うために必要となる技術的背景についてまとめるとともに、実際に映像配信を行うための

システムについて RealSystem を中心として検討した。 キーワード:ストリーミング、RealPlayer、RealProducer、RealServer、動画配信 The System and the Transmitting Technique of Image Distribution

Using the Internet

Asako MIURA Reitaku University

Abstract

There is a remarkable thing in spread and its development of a network. When

there was a personal computer connected with the Internet, it came to be considered as

common sense that anyone can access all over the world. Since it could sell and buy freely,

or a homepage can be established individually and an informational ring can be extended

now all over the world, making full use of such technology, an increase of the user is

enhanced every year. Service called streaming has developed under these circumstances.

It also enables the general public to perform image distribution comparatively

simply by using streaming technology now. Then, in the main subject, while

summarizing the technical background which is needed in order to perform image

distribution, the outline was carried out the center [ RealSystem ] about the system for

actually performing image distribution.

Keywords:streaming, RealPlayer, RealProducer, RealServer, VOD

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1.はじめに

ネットワークの普及と高性能化に伴い、

今までの文字と静止画だけのコンテンツに

さらに動画と音声が加わり、より表現力の

あるコンテンツを作成することができるよ

うになった。こうした中で最近発達してき

た映像・音声配信技術に「ストリーミング」

がある。インターネットストリーミングと

はアイディアとしてはラジオやテレビと同

じで、コンテンツを視聴者に向けて配信す

る技術のことであるが、違いはインターネ

ットを介して放送するサービスであるとい

うことである。しかし、従来の通信手段と

違いストリーミングは、団体だろうと個人

だろうと簡単に運用することができ、又、

インターネットを介することで、作成した

コンテンツを全世界へ向けて配信すること

も可能である。

こうしたサービスを有効に活用するため

に、本論では、実際に映像配信を行うため

の基礎知識と必要機器、コンテンツを配信

するまでのステップ、さらに実際にライブ

中継を行うためのシステムについて検討す

る。

2.映像配信技術の基礎

一言で映像配信技術といっても配信や受

信の仕方によって複数の種類に分けること

ができる。本章では、まず、映像配信に関

係する技術的な基礎知識についてまとめた

[1][2]。

2-1.ストリーミングとは

ストリーミング(streaming)とは、日本語

で「流れる」という意味を持つが、その言

葉のとおり、IP ネットワーク上で音声や映

像などのマルチメディアコンテンツを一方

が送信し、同時にもう一方が少しずつ流れ

るようにデータの受信をしながらその都度

再生を行うことができる技術のことである。

つまり、リクエストした全てのデータが

クライアント側の PC に保存される前にコ

ンテンツの再生が始まる。

ストリーミングが登場する以前はダウン

ロード方式という技術が主であった。ダウ

ンロード方式の場合は、一方がコンテンツ

を送信し、もう一方に全てのコンテンツを

保存したあと再生を始める。従ってこの場

合だとクライアントはダウンロードが終わ

るまで待つ必要がある。

ストリーミング方式の場合は最初にコン

テンツを少しだけ受信し、そのデータをバ

ッファに蓄えつつ再生を始めるため、デー

タを完全にダウンロードし終わるまで待つ

必要はない。バッファに必要な数秒の時間

を待つだけで再生が自動的に始まり、受信

速度が再生速度を上回れば、再生が途中で

止まることなくスムーズに視聴することが

できる。

2-2.ライブ方式と VOD 方式 ストリーミング方式を使っての配信方法

には 2 つの種類がある。一つはライブ配信

方式といい、例としてテレビ放送のライブ

中継と同様のことを、インターネットを介

して行うことができる。撮影された映像や

音声を保存せずにリアルタイムでインター

ネット上に公開する。そのため配信される

時間帯が決められているのでクライアント

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はあらかじめその時間帯を知り、時間に合

わせてアクセスすることでコンテンツを視

聴することができる。しかしライブとはい

っても実際にサーバからコンテンツを配信

してからクライアント側で再生されるまで

のあいだ、10~20 秒、又は 1 分~2 分程度

の遅れが生じる。

もう一つのサービスとして VOD(Video

On Demand)方式がある。これはライブ配

信方式と違い、撮影された映像や音声を一

度サーバに保存する。クライアントは都合

のいいときにそれらのコンテンツを視聴す

ることができ、サーバは要求に答えて保存

してあるコンテンツを配信する。VOD 方

式だとクライアント側で巻き戻し、一時停

止などの操作が可能であるが、ライブ配信

方式ではそれらの操作はできず、放送が始

まった状態でアクセスすると放送の途中か

らしか視聴することはできない。

これら二つのサービスの違いはデータを

保存するか、しないかだけで、ストリーミ

ングの仕組みそのものにはほとんど違いは

ない。本論では主にライブ配信方式を中心

として話を進めることにする。

2-3.ストリーミングの仕組み

ストリーミングは次の用件で実現される。

それはビデオで撮影した映像をテレビで見

るのと同じ要領であるが、ただしストリー

ミングはインターネットを介して行われる。

まず、音声や映像のソースがある。ソース

は人の声だったり会場などの風景だったり、

要するに音声や映像そのもののことである。

ソースはビデオカメラなどからパソコンに

読み込まれた時点で「.wav1」や「.avi2」

といった形式にデジタル化される。デジタ

ル化されたままのデータは非常に大きく、

このままではネットワークに負担がかかる

ため、さらに圧縮される。

この圧縮されたデータのことをストリー

ミングデータといい、MPEG や Real 形式

などがこれにあたる。圧縮されたデータは

ネットワークを介して各クライアントに配

信される。クライアント側のパソコンに受

信されるとデータは圧縮前の状態に復元さ

れる。これをデコードという。そしてその

パソコン上でアナログ化して再生されるの

である。これが各家庭のテレビに相当する。

さきほども述べたように再生し終わった

データは次々に消去され、クライアント側

のパソコンにデータは一切残らない。

2-4.プロトコル

では実際どういったプロトコルを用いて

一覧の処理を行っているのだろうか。マル

チメディアに関する代表的なプロトコルは

三つある[3]。

それぞれの機能と役割をおおまかに説明

すると、

・ RTSP:主にストリーミング配信を行う

際にその管理や制御を行うプロトコル。

・ STP2:RTP を使ってデータの送受信

を行う際にネットワーク上で必要な帯

域を予約するプロトコル。

・ RTP:リアルタイムにデータを送受信

する際に用いられるプロトコル。

が使われている。以下にそれぞれの機能と

1. Windows 標準の音声ファイルの形式。 2. Windows で音声付動画を扱うための形式。

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プロトコルの概要について述べる。

2-4-1. RTSP

RTSP(Real Time Streaming Protocol)

はリアルネットワークス社が開発したマル

チメディアプレゼンテーション制御プロト

コルであり、1998 年に RFC2326 として規

格化された。

RTSP はストリーム伝送制御プロトコル

であり、オーディオ・ビデオファイルをオ

ンデマンドで伝送、制御を行っている。つ

まり停止、早送り、指定した位置からの再

生といった制御機能を提供する。対象とな

るコンテンツは VOD 方式とストリーミン

グ方式の両方を含み、同時に複数のデータ

伝送を制御することができる。又、UDP

やTCPなどの伝送チャンネルを選択し、IP

ネットワーク上でマルチメディアを効率よ

く配信することを目的として設計されてい

る。しかし、概念として RTSP 自体がデー

タを伝送しているのではなく、データの送

出を遠隔から制御する、リモートコントロ

ールのような役目を持っている。

2-4-2. ST2

ST2 とは Internet Stream Protocol

Ver.2 の略であり、IP と同じレイヤで動作

するコネクション型のネットワーク相互接

続プロトコルである。現在、RFC1819 に

定められている。

ST2はストリーミングコンテンツを一箇

所以上の送信先に効率よく伝送することを

目的に開発された、リアルタイムデータ伝

送用プロトコルである。用途として、イン

ターネット上でのオーディオビデオのデー

タ送信、遠隔シミュレーション、ゲームな

どマルチメディアデータのリアルタイム伝

送がある。他に、ライブ配信を行う際に必

要となる帯域予約も行っている。

2-4-3. RTP

RTP とは Real-time Transport Protocol

の略であり、RFC1889、1890 で定められ

ている。RTP は対話型双方向通信を行うと

きのようなリアルタイム性が要求されると

きに使われるトランスポートプロトコルで

あり、送信ホストと受信ホスト両端間を規

定しているプロトコルのデータ部分に使用

されていて、RTP 単独では動作しない。多

くのシステムでRTSPと一緒に使用されて

いる。RTP 自体では例えばシーケンス番号

の付与、時刻印の付与、伝送監視の機能な

どを行っている。

RTP は確実なデータの伝送を保証した

り、パケット到着順序を管理するものでも

なく、固定パケット間隔を保証するもので

もない。ただデータの再生時には送信元で

付与されたシーケンス番号、時刻印を参照

することによってパケットをもとどおりに

並べることができる。

3.代表的なソフトウェア

上述したように、ストリーミングを視聴

するためには、クライアント側はテレビに

相当するものを用意しなければならない。

それに相当するものとしてプレーヤーとい

うものがある。再生するためのプレーヤー

には代表的なものとして RealPlayer、

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Windows Media Player、QuickTime など

があげられる。

3-1.RealPlayer

リアルネットワークス社が発売する再生

ソフトであり、1995 年に最初のモデルが発

売された。現在は RealPlayer8 が最新版で

ある(図 3-1)。現在の RealPlayer ユーザ

登録者数は世界中で一億四千万人以上であ

り、毎日二十万人以上が新規に登録してい

ると言われている[4]。

RealPlayer8 で新しく付加された機能と

してストリーミング MP3 に対応している

ことがあげられる。他に、従来どおりの

Real 形式のファイルも再生可能であるが、

有償版ではさらに音質が向上し、よりスム

ーズに再生を行なうことができる。さらに

音楽を再生する場合、音楽に合わせたビジ

ュアルエフェクトが表示される。

RealPlayer8 には無償版と有償版が発売

されているが、有償版は$30.00 で、いずれ

もリアルネットワークス社の URL からダ

ウンロードすることができる[4]。

RealPlayer8 の動作環境を表 3-1、表 3-2

にまとめた。

3-2.Windows Media Player

マイクロソフト社が提供するオーディオ

ビデオ再生ソフトである。現在最新のバー

ジョンは Windows Media Player 7.1(図

3-2)となっていて、Windows XP を購入

するとあらかじめ組み込まれている。

Media Player 7.1 ではジュークボックス

機能がついているので、ストリーミング再

生が行えるほかに、CD の再生、コピーも

行うことができる。また、Media Guide を

図 3-1:RealPlayer 図 3-2:Windows Media Player

Windows MachintoshOS 95, 98, ME, 2000, XP, NT4.0 MacOS 8.5RAM 32MB以上 64MB以上接続形態 56Kbpsモデム以上 56Kbpsモデム以上CPU Intel Pentium 200MHz以上 G3 233 PowerPC以上

Sound Card

Video Cardブラウザ IE4.0.1, Netscape4.0以上 IE4.0.1, Netscape4.05その他 仮想メモリ128MBに設定

Full Dupulex Sound Card, Speaker

65,000色以上

表 3-1:RealPlayer8 動作環境 1

OS Sun Solaris 2.6, 2.7 RedHat (Linux 6.0) SCO Unix WareRAM接続形態 56Kbpsモデム以上 28.8Kbpsモデム以上 56Kbpsモデム以上CPU UltraSPARC 250MHz以上 Intel Pentium 200MHz以上Intel Pentium 200MHz以上Sound CardVideo Card 16bit Video 65,000色以上

64MB以上

16bit Sound Card, Speaker

表 3-2:RealPlayer8 動作環境 2

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使用してオーディオ、ビデオのコンテンツ

を検索し、Windows Media フォーマット

を使っているインターネットラジオ局にア

クセスすることができる。

再生できるファイル形式は MPEG1、

MPEG2、WAV、AVI、MIDI、VOD、MP3、

QUICKTIME である。また、新しく

Windows Media Audio 8 のエンコーディ

ングおよびデコーディングを行うことがで

きるようになり、MP3 の半分のファイルサ

イズで音楽データを収められるようになっ

た。そして取り込んだオーディオクリップ

を簡単にポータブルデバイスに転送するよ

う修正された。

サポートされているデバイスにはポケッ

ト PC、パームサイズ PC、スマートメディ

ア、Iomega Jaz、Zip ドライバ、コンパク

トフラッシュカードがある。

概観もデザイン性が高く、シンプルに構

成され、音楽に合わせてイメージ画像が動

くようになっている。イメージ画像は画面

一杯に表示することもできるので BGM と

して音楽を流すときもディスプレイを楽し

むことができる。

Windows Media Player 7.1 はマイク

ロソフト社の URL からダウンロードす

ることができる[5]。表 3-3、表 3-4 は

Windows Media Player 7.1 が動作する

環境である。

ここで注目してほしいのが Windows

Media Player 7.1 は Windows95、NT4.0

には対応していないことである。これら

の OS で Windows Media Player を利用

したい場合は、Windows Media Player

6.4 を利用せざるをえない。

3-3.QuickTime

Quick Time Player は、アップルコンピ

ュータの URL からダウンロードがきる[6]。

Quick Time はマルチメディアデータの

標準的なファイル形式の一つであり、他に

さまざまなファイル形式に対応している。

対応形式は AIFF、AVI、MacromediaFlash、

MIDI 、 MPEG1 、 MP3 、 QuickTime 、

QuickTimeVR、WAV などである。ダウン

ロード方式と、ストリーム方式の両方の再

生にも対応している。

4.ストリーミングシステムの構築

再生ソフトの普及とシステムの低価格化

により、最近では個人でストリーミングサ

ーバを構築し、作成したコンテンツを配信

する例も珍しくなくなった。システムの操

作や管理の面、又、経済的な面においても

初心者にとって扱いやすい構成になってい

る。こうした背景の中、インターネットを

介したライブ配信は、本学の卒業式や柏イ

Windows OS Windows98,98SE,2000,ME,XP CPU Pentium (or) Athon K6 266 MHz RAM 64 MB video card 24bit True Color sound card 16bit サウンドカード 接続形態 56Kbps モデム

表 3-3:Media Player7.1 動作環境 1

Macintosh OS MacOS 8.6 CPU PowerPC 603e 180MHz RAM 32MB HD 10MB monitor 256 色カラー深度モニタ

ブラウザ IE5、Netscape4.x、America Online for Macintosh4.0

表 3-4:Media Player7.1 動作環境 2

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ンターネットユニオン3(以下 KIU)のフォ

ーラム等でも数回にわたって行われている。

本章では、これまでライブ中継を行う際

に発生した問題点をまとめ、ストリーミン

グシステムを構築する際の改良点について

検討する。そしてストリーミング配信を行

うために、実際にシステム構築した事例に

ついて述べる。

4-1.これまでの問題点

筆者はこれまで、KIU フォーラム等での

ライブ中継に何度か携わったことがあるが、

ライブ中継時にはエンコーダ専用機として

デ ス ク ト ッ プ 型 の 機 器 ( Compaq

DESKPRO)を使用していた。これは主に、

エンコーダの性能上の問題4であった。エン

コーディングを行う上では問題ないスペッ

クであったが、デスクトップ型パソコンの

ため運搬時は複数の人数を集めて移動する

必要があった。

ライブ配信をするためにその準備を始め

ると、撮影用のビデオカメラの設営や、ビ

デオカメラからエンコーダ機への結線、音

声の確保など、映像配信の準備段階に最も

時間を要した。エンコーダ自身の設定より

も、それに至るまでの準備に時間がかかる

のが現状だったわけである。

映像配信に関する過去の研究[7]を参考

にしてみても、実験内容で最も苦慮した点

は、映像配信そのものというよりもむしろ、

会場設営の準備段階にあった。この実験は、

ライブ中継ではなく、テレビ会議システム

3 http://www.kiu.ad.jp/ 4 エンコーダの性能的にWindows NTの動作するシステムのほうが安定していた。

を応用した遠隔での双方向授業実験であっ

たが、エンコーダやビデオカメラなどを組

み合わせて映像系・音声系の分配を行う点

で、ストリーム配信システムと似通った点

もある。ここで、運用面での人的コストの

負担が重いということが示唆されている。

この視点から、ストリーミングシステム

そのものの扱いやすさももちろんだが、実

際にライブ中継を行う会場での機材のセッ

トアップ等もシンプルに行えることが、今

後ライブ配信技術が普及する上で欠くこと

のできない課題の一つであると考えられる。

4-2.構築の目的

以下の点を目的として映像配信システム

の構築を行った。

・ 運用面を考慮して機器の接続や運搬の

扱いやすさを優先した機材選びをする。

・ 市場 85%のシェアを誇る RealSystem

の運用方法を理解するため、Real サー

バを立ち上げる。

・ 専門の知識を持っていない人にも理解

できるようなシステムの構築手順を記

述する。

4-3.使用する機器

今回ストリーミングシステムを構築する

にあたって RealSystem G2 を導入した。

今回は以下の機器を用いてシステムを構成

した。

① エンコーダ機として使用する PC

タイプ 1:

IBM ThinkPad A30

CPU:PentiumⅢ 1GHz

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RAM:128MB

HDD:30GB

OS:Windows2000

タイプ 2:

SHARP MEBIUS PC-PJ1-M2

CPU:Pentium

RAM:64MB

HDD:4GB

OS:Windows98

② エンコーダソフト

RealProducer Plus 8.5

③ オーディオ・ビデオキャプチャカード

IO Data USB-CAP2

④ ビデオカメラ

SONY DCR-TRV30

⑤ Real サーバ

RealSystemServer 8.0

CPU:PentiumⅢ 1.5GHz

RAM:256MB

OS:FreeBSD 4.3 Release

⑥ それぞれの機器を接続するためのオー

ディオ・ビデオケーブル

図 4-1 にシステム構成の概要を図示した。

以上の機器を用いて、第 16 回 KIU イン

ターネット教育研究フォーラム・第 6 回

TRAIN 協会講演会5にて実際にライブ中継

を行った(図 4-2)。その模様を、本論の最

後に、付録資料として添付した。

5.RealSystem G2 について

本章では、四章で述べたシステムで採用

した RealSystem の詳細についてまとめた。

RealSystem G2 は 、 RealVideo や

RealAudioなどのデータタイプの作成や配

信を行うためのリアルネットワークス社が

開発したストリーミングメディアシステム

のことである。世界中に点在するインター

ネットを利用したテレビ、ラジオの放送局

の 85%以上はこの製品を使っていると言

われている[8]。

そのシステムは画像や音声をストリーミ

ングに適した RealMedia と呼ばれるデジ

タルメディアクリップに変換を行うエンコ

ーダ、配信や管理を行うサーバ、クライア

ント側で再生するためのプレイヤーという

三つの要素に分かれて成り立っている(図

5-1)。エンコーダで生成したコンテンツを

サーバに格納させてクライアントからの要

求に応じて効率よく配信する。

5 2002 年 1 月 26 日(土)開催。 http://www.kiu.ad.jp/forum/16/

ミキサー 音声

映像

スピーカー

エンコーダ

ストリーミングサーバ

図 4-1:システム構成

図 4-2:ライブ中継時の模様

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9

5-1.RealSystem G2 の機能

リアルネットワークス社が現在リリース

している商品が RealSystem G2 である。

RealSystem G2 を使って VOD 配信やライ

ブ配信が可能であるが、このバージョンよ

り新たに加わった機能がある。

5-1-1.Sure Stream

ストリーミング配信をする際、ネットワ

ーク上での帯域の変化はつきものである。

Sure Stream とは、帯域の変化にあわせて

ストリーミング時のデータレートを変更す

ることができる技術のことである。

ネットワークの混雑によって高速接続が

できなくなるとコンテンツが途切れる可能

性があるが、Sure Stream 技術を使うこと

によってエンコーダ側で自動的に低帯域幅

のエンコーディングに切り替え、途切れを

最小限にする。接続状況が良くなるとまた

高帯域幅のエンコーディングに切り替える。

5-1-2.SMIL

SMIL とは Synchronized Multimedia

Integration Language のことであり、スマ

イルと発音する。SMIL とは動画、画像、

静止画などの複数のコンテンツを組み合わ

せ時間軸にそって編集し、クライアント側

に表示させる機能のことである。つまり、

さまざまなメディアデータを、同期をとり

ながら再生する技術である。

SMIL を使ってのコンテンツ作成の手順

としてはまず組み合わせたいそれぞれのコ

ンテントを個々に作成する。SMIL スクリ

プトは HTML によく似たマークアップ言

語となっている(図 5-2)。SMIL ファイルで

はコンテンツ全体の再生サイズを記入し、

各コンテンツの再生順やレイアウトを指定

する。

5-2.RealSystemProducer について

RealSystemProduer はデジタル化され

た映像、音声などのソースデータ(ビデオキ

ャプチャデバイスから入力されたデータや

AVI 形式のファイルなど)をストリーミン

グデータに変換するためのエンコードソフ

トである。RealProducer によってエンコ

<smil><head><layout>

<root-layout height=”320” width=”320”

background-color=”black”/>

<region id=”images”left=”40” top=”40

height=”240” width=”240”/>

</layout></head>

<body><seq><par>

<img src=”Africa.rp”>region=”images”/>

<audio

src=”Africa_ss.rm”clip-end=”2.25min”/>

</par></seq></body></smil>

図 5-2:SMIL スクリプト例

RealServer

RealProducer

RealPlayer .wav,.aviファイル

.rm,.ra,.rp として格納

要求に応じて配信

図 5-1:コンテンツを再生するまでの流れ

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ードされたコンテンツは RealMedia6とい

う形式に変換される。拡張子は.rm 又は.ra

である。

2002 年 1 月の時点では RealProducer

8.5 が最新であり、有償版とともに無償版

も配布されている。両方とも以下の機能を

利用することができる。

・ 保存された音声、画像ファイルを

RealMedia ファイルに変換する。

・ ビデオカメラやマイクなどの機器を介

して映像、音声を取り込み、それらを

RealMedia ファイルとして保存する。

・ 音声、画像ファイルを読み込み、

RealServerを通じてインターネット上

でライブ配信する。

他に、有償版では画像のサイズ編集機能、

複数のコンテンツを編集して一つのコンテ

ンツを作成するための編集機能などがつい

ている。無償版についてはリアルネットワ

ークス社の URL からダウンロードするこ

とができるが、有償版は URL 上で注文を

すると、後日 CD-ROM が送付される。

6 RealAudio や RealVideo などのファイルタイプの総称。

5-2-1.RealSystemProducer のイ

ンストール

まず、ソフトウェアのダウンロードを行

う。リアルネットワークス社の URL

( http://www.jp.realnetworks.com/produ

cts/producer/index.html)より各ソフトへ

のリンクが張られている。このページより

無償版、有償版のうちどちらかを選ぶこと

ができる(図 5-3)。RealSystem Producer

の無償版は RealProcucer Basic といい、有

償版は RealProducer Plus という。有償版

は定価で 36,000 円である。それぞれ

Windows 版、Linux 版、Macintosh 版が

あるので必要な OS にあわせて選ぶことが

できる。Windows で利用する場合に必要

なスペックは、表 5-1 のとおりである。い

ずれも推奨値である。

表には RealMedia クリップをファイル

から作成した場合と、ライブ配信をした場

合の二通りが記載されている。 Sure

Stream というのがライブ配信のことであ

る。

有償版を注文すると CD とともにユーザ

図5-3:リアルネットワークス社 HP

Recording from files

SureStream (Single Rate)

OS 95,98,NT4.0,2000

CPU Pentium 166 PentiumⅡ400 (Pentium 200)

RAM 32 MB 64 MB HD space 1 GB

Color display 24-bit (true color)

Sound card 16-bit sound card

Video capture card

Video For Windows互換カード

表 5-1:RealProducer 動作環境

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ーズガイドが送付される。インストールは

ウィザードに従って進めれば問題ない。無

償版のインストールについては Real

Server のインストールを参照する。

5-2-2.RealSystem Producer の設

インストールが完了すると自動的にエン

コーディングの設定画面になる(図 5-4)。

デ ス ク ト ッ プ 上 の ア イ コ ン よ り

RealProducer Plus 8.5 を起動するか、又

は同ソフトが立ち上がった状態でメニュー

バーから「ファイル」→「new connection」

と操作しても同様のウインドウが立ち上が

る。このレコーディングウィザードを使っ

てエンコーディングの設定を行っていく。

ライブ配信をする場合は設定を行う前に、

使用するエンコーダ機が RealServer にア

クセスできる状態になっていること、ビデ

オカメラなどのハードウェアが、使用する

エンコーダ機に接続されていうことを確認

する。

図 5-4 では RealProducer を使ってこれ

からエンコードする元データの種類を選択

する。選択肢は三つである。

・ 保存された音声、画像ファイルを

RealMedia ファイルに変換する。

・ ビデオカメラやマイクなどの機器を介

して映像、音声を取り込み、それらを

RealMedia ファイルとして保存する。

・ 音声、画像ファイルを読み込み、

RealServerを通じてインターネット上

でライブ配信する。

以上三択の中から”Live Broadcast”、つ

まりライブ配信の手順を追っていく。”Live

Broadcast”を選択したらOK をクリックす

る(図 5-5)。

次にソースの種類を選択する。音声のみ

か、映像のみか、それとも両方キャプチャ

するのかの三択である。チェックを入れた

ら使用するサウンドレコーダ、ビデオキャ

プチャカードを指定し、次へをクリックす

る(図 5-6)。

このページではコンテンツの再生時にク

ライアント側の RealPlayer 上で表示した

いタイトル、作者名などを記入する。

図 5-4:RealProducer 設定図1 図 5-5:RealProducer 設定図2

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Keywords とは、クライアントがこのスト

リーミングコンテンツを検索エンジンから

検索したときに連想すると思われる文字列

のことである。ストリーミングコンテンツ

を検索する場合、クリップにはウェブペー

ジのようなタイトルに相当する文字列が提

示されないのでクライアントは Keywords

で指定された文字列のみを頼りに検索する。

従って、キーワードは三つないし四つ挙げ、

次へ進む(図 5-7)。

ここでコンテンツを Sure Stream とし

て作成するか、Single Rate かの選択を行

う。

ライブストリーミングの場合は配信した

コンテンツはサーバに保存されないのでデ

ィスク容量に関してはほとんど気にしなく

て良い。Sure Stream を選択して次へ進む

(図 5-8)。

Sure Stream で作成すると、このページ

でクライアントの接続形態を想定してそれ

に見合ったデータレートを複数指定するこ

とができる。Single Rate で作成すると一

つの接続形態しか指定することができない。

要するに、Single Rate において 256K

DSL/Cable Modem を選択してライブ配信

すると 28K Modem で視聴しているクライ

アントにとって、それは重いデータとなる。

Sure Stream にして 28K Modem と 256K

DSL/Cable Modem の両方を指定すればそ

れぞれがそれぞれに見合ったデータレート

図 5-6:RealProducer の設定図3

図 5-7:RealProducer 設定図4

図 5-8:RealProducer 設定図5

図 5-9:RealProducer 設定図6

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で無理なく視聴することができる。選択肢

すべてにチェックを入れる必要はなく、想

定される帯域にあわせて、二択ほど用意す

れば良い。次へ進む(図 5-9)。

このページは音声品質の選択である。選

択肢が下にいくほど重くなり、音質も良く

なる。ライブ配信する内容にもよるが、例

えば会議や演説などの話し合いを中継する

場合は Voice Only で十分である。コンサー

トなど周囲の音が重要な場合は Stereo

Music が望ましい。

次ページ(図 5-10)では、今度は映像品質

の選択を行う。前ページ同様、下の選択肢

ほどエンコーダに負担がかかる。通常は

Normal Motion Video で良い。

次ページ(図 5-11)では介する Real サー

バの指定や、ポート番号、コンテンツその

ものに名前をつける。名前のあとには必ず

拡張子として.rm をつける。ここで設定し

た名前はクライアント側で、

rtsp://157.17.42.4/encoder/ファイル名

として参照される。

利用する Real サーバ欄にはサーバの IP

アドレス、又はサーバ名を記入する。ポー

ト番号はデフォルトで 4040 である。

Username や Passwords はサーバ側で必

要でないかぎり入力する必要はない。

Archive Broadcast to File にチェックを入

図 5-10:RealProducer 設定図7

図 5-11:RealProducer 設定図8

図 5-12:RealProducer 設定図9

図 5-13:RealProducer のメイン画面

① ② ③④

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れるとコンテンツを保存することができる

が通常はチェックを入れない。次へ進む(図

5-12)。

ここで最終チェックを行う。変更する個

所がある場合は戻って修正する。完了をク

リックすると RealProducer のメイン画面

になる(図 5-13)。

メイン画面の操作方法を以下に記述する。

① RealProducer に入力される映像。ライ

ブ配信する場合は、ビデオカメラでと

らえた実際の映像。

② 音声レベル。音が大きくなるとこのラ

インに色がつき、あかくなると音声が

割れるのでボリュームコントロールで

調整する。

③ RealMedia クリップの映像。この映像

が Real サーバを介して視聴される。

④ 今まで設定してきた内容を一部変更す

ることができる。

⑤ スタートボタン。クリックすることで

エンコーディングが始まる。途中で止

めたいときはとなりにストップボタン

があるのでクリックする。

クリップが終わればエンコードも自動的

に終了する。

5-3. RealSystem Server について

次にエンコードされたコンテンツを格納

したり、ライブ配信を実現するのに必要な

Real サーバについて記述する。

RealSystemServer は RealProducer よ

りエンコードされた RealMedia ファイル

を、格納しクライアントの要求に応じてそ

れらを配信する役割をしている。

ところで、RealMedia ファイルは Real

サーバにかぎらず www サーバにも格納す

ることができる。しかし、その場合にはコ

ンテンツのストリーミング再生は行うこと

はできない。この再生を行うときには rtsp

プロトコルを使うので rtsp プロトコルに

対応していない www サーバではストリー

ミング再生は行うことができないのである。

RealSystemServer は用途の規模に応じ

て大きく分けて三つの種類に分けられてい

る。Plus、Intranet、Professional の三つ

である。Plusの無償版としてBasicもある。

2000 年 1 月現在において最新版はそれぞ

れ RealSystemServer 8.0 となっている。

Professional は大規模な商用のストリー

ミング配信サービスを提供するものである。

それは企業の情報や製品の告知、遠隔教育

などを行う場合に適している。Intranet は

社内イントラネットや学内ネットワーク内

を対象としてストリーミング配信を提供す

るためのものであり、特定ユーザーに対し

て配信することができる。それ以外の用途、

例えば個人的にストリーミング環境を構築

する場合には Plus が適している。Plus は

小規模な配信、具体的にいうと同時にスト

リーミングできる接続数が 60 以下の規模

の場合には十分な選択といえる。

Basic の場合だと一年間という期限つき

だが無償での利用が可能である。ただし、

同時接続数は 25クライアントまでとなる。

表5-2はRealSystemServer8.0が対応する

プロセッサと OS の対応表である。

表 5-3 は必要なメモリである。これは最

低値であり、メモリを増やすことによって

同時接続数を増やすことができる。参考と

して、1000 ほどのクライアントが同時接続

可能なサイトを構築する場合には最低でも

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768MB 以上必要である[9]。

続いて必要なディスク容量であるが、

RealSystemServer 本体は 14MB ほどでイ

ンストール可能である。しかし作成したコ

ンテンツをサーバに格納する場合には新た

にそれ用のディスク容量が必要となる。一

つのコンテンツに必要なディスク容量の目

安となる計算方法は以下のとおりである。

datarate(kbps)× コンテンツ長(min) / 8

ただし、Sure Stream としてエンコーデ

ィングした場合、一つのコンテンツに複数

のデータレートが組み込まれているので、

データレートごとに上記式を適応する。フ

ァイルのデータレートは RealSystem

Producer の view メニューの statics で確

認することができる。

コンテンツを配信するのに必要な帯域幅

の計算式は、以下の通りである。代表的な

データレートについて表 5-4 にまとめた。

datarate(kbps) × 最大の同時接続数

データレートが 20kbps で、最大同時接

続数が 60 の場合、必要な帯域幅は

1,200kbps(1.2Mbps)である。従ってこ

の場合は 1.5Mbps(T1)レベルの帯域を持つ

ネットワーク環境がこれに該当している。

最後に注意する点として、Real サーバを

立ち上げるときは web サーバとの互換性

を考慮しなければならない。RealMedia フ

ァイルを Real サーバに格納する場合でも、

クライアントは web サーバを介して Real

サーバとアクセスするのでその存在は無視

できない。

以下のリストは RealSystemServer 8.0

との互換性が認められている web サーバ

一覧である。

• Apache 1.1.1

• CERN HTTPD version 3.0

• EMWC HTTPS version 0.96

• HTTPD4 Mac

• Mac HTTP

• Microsoft Internet Information

Server

• NCSA HTTPD versions 1.3 or 1.4

• Netscape Netsite and Netscape

Enterprise Server

• O’Reilly Website NT

表 5-4:データレート計算例

data rate

size of audience

bandwidth Type

20kbps 60 1200kbps or 1.2Mbps

T1

80kbps 100 8000kbps or 8Mbps

T3

20kbps 200 40000kbps or 40Mbps

T3

Processor OS

Intel Pentium

Windows NT 4.0, 2000 Workstation or Server, Linux 2.2.x, Free BSD 3.0

Sun SPARC Solaris 2.6,2.7,2.8 IBM RS/6000 PowerPC

AIX 4.3

HP PA-RISC 2.0 HP-UX 11.x R4000 running MIPS3 intruction set

IRIX 6.5

表 5-2:RealSystemServer の動作環境

Plus,Intranet Professional RAM 256 MB 512 MB

表 5-3:RealServer 必須メモリ

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• Spinner version 1.0b12 through

1.0b15

• Webstar and Webstar PS

以上の MIME タイプ7をサポートする

web サーバに互換性を持っている。

5-3-1. RealSystemServer のイン

ストール

RealSystemServer も Producer 同様リ

アルネットワークス社のから注文し、Basic

に限っては、そのままダウンロードするこ

とができる。

7 multipurpose internet mail extensions、データを送るための IETF が策定した拡張機能。ファイルのエンコード、デコードの変換方法を定める。

実際に RealServer Basic のインストー

ルの様子を概説する。

図 5-14 よりリンクをたどると、図 5-15

のようなページになる。このページでは、

これから Real サーバを使って構築するサ

イトの規模が Basic で補えるかどうかを確

認している。ページの一番下にリンクが張

ってあるので、そのまま進むと図 5-16 のよ

うになる。ここでは注文をする際の個人情

報の入力を行う。内容は主に利用者の名前、

住所、電話番号、Eメールアドレスなどで

ある。必要な OS もここで選択する。

今回は FreeBSD 版を入手した。すべて

入力し終わったらページの下にある

図 5-16:RealServer インストール図 2

図 5-17:RealServer インストール図 3

図 5-15:RealServer インストール図 1

図 5-14:リアルネットワークス社 HP

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NEXT ボタンからリンクをたどって次ペ

ージへ進む。すると、図 5-17 のようになる。

このページではアンケート調査を行って

いるので、すべてのアンケートに答える必

要がある。主に Real サーバの用途や接続

形態などを聞かれる。一通り答えると次の

ページに進むことができる(図 5-18)。

この表からダウンロードするのに一番近

いアクセスポイントを選択する。日本国内

では大阪に限られる。筆者がダウンロード

した際には、1.5Mbps での接続環境で 5 分

程度であった。

RealSystem Server Basic のライセンス

キーはEメールに添付して送られてくるの

で、ダウンロードが終了したら E メールを

チェックする。メールが届いていれば添付

ファイルをディスクに保存する。このファ

イル自体がライセンスキーファイルで、フ

ァイル名がライセンスキーになっている。

メール本文にはライセンスキーに関する事

柄が載っているので一度目を通しておくと

良い。

ここから先は FreeBSD がすでに立ち上

がっていると仮定し、RealSystem Server

を FreeBSD にインストールする手順の記

述となる。今回は OS に FreeBSD 4.3

Release を使用した。

ダウンロードしたファイルをサーバに

ftp する。このとき/usr/local 以下に real

ディレクトリを作成し、その下に保存する。

Real ディレクトリにて上記のように入力

し、ファイルを実行する。

FreeBSD にインストールした場合、ファ

イル名は、

rs-8-01-freebsd-3.bin

のようになっている。

ファイルの展開が始まり、対話式で作業

を進めるようになる。

メールで添付して送られてきたライセン

スキーファイルのファイル名を入力する。

しかし入力せずに次に進むこともできる。

ここではインストール先を聞いてきてい

るので絶対パスで記入する。先ほどと同じ

ように real ディレクトリでよい。

ここでユーザ名とパスワードを入力する

が、システムのアカウントと同じにする必

要はない。ここで使うユーザ名は後に Real

サーバの管理ツールを操作するときに使う。

続いて各ポート番号について聞かれる。

デフォルトだとそれぞれ、

HTTP・・・8080

図 5-18:RealServer インストール図 4

License Key File:

You must specify the full pathname of the directory and have write privileges to the chosen directory:/user/local/real

User name: Password: Confirm Password:

These connections have URLs that begin with “http://” : (Default: 8080)

:

./ファイル名

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PNA・・・7070

RTSP・・・554

Admin・・・312738

となっているので必要であれば変更し、そ

のままでよければEnterキーで次へすすむ。

質問が終わると最後に今までの設定事項

が表示されるので、Admin Port の番号に

注目する。この番号は後の作業に必要とな

る。確認ができたら、Enter キーを押すと

インストールが始まる。

インストールが終了すると Real サーバ

を起動するか聞かれるが、起動する前にラ

イセンスキーファイルをサーバに保存しな

くてはいけないので「no」を入力して終了

す る 。 ラ イ セ ン ス キ ー フ ァ イ ル を

/usr/local/real/License に保存する。保存し

終わったら real ディレクトリにて、

と入力する。途中ライセンスキーファイル

の保存場所を聞かれるので絶対パスで入力

する。この後さまざまなプラグインのメッ

セージが表示され、このプロセスが 24 個

起動する。これでサーバでのインストール、

および基本設定は終了である。

5-2-2.RealSystemServer の設定

Real サーバでは、細かい設定は起動後に

他PC からwebブラウザを使って行うこと

ができる。この状態でブラウザより

/Admin/index.html にアクセスして管理ツ

8 Admin ポートはインストール時毎に異なる。

ールより設定を行う。アドレスは以下の例

にならって入力する。

ホスト名は Real サーバの DNS 名か IP

アドレスのどちらでもよい。ポート番号は

Admin Port の番号を入力する。するとユ

ーザ名とパスワードを要求されるので

Real サーバをインストールしたときに設

定した ID を入力する。認証されると図

5-19 のようになる。これが Real サーバの

管理ツールである。

このページでRealサーバに対する他PC

からのアクセスコントロールや、サーバへ

のアクセス状況、設定の変更などの操作を

行うことができる。要するに Real サーバ

に対する設定はすべてここから行う。

ライブ配信を行うときは Realサーバに、

使用するエンコーダ機のアクセス許可をだ

さなくてはいけない。それは管理ツールか

ら「Security」、「Access Control」で行う。

ここからエンコーダ機に対して HTTP、

PNA、RTSP、encoder のポートを許可す

る。

Enter [F]inish to begin copying files, or [P]revious to go back to the previous prompts:

# ./Bin/rmserver rmserver.cfg &

http://ホスト名:ポート番号/admin/index.html

図 5-19:管理ツール画面

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6.まとめ

以上のように、Real システムを用いての

映像配信自体はそれほど難しい技術ではな

く、初心者でも比較的簡単にシステムを構

築することができることがわかった。むし

ろ、使いやすさをさらに追求するならば、

設営における面倒な配線作業等を簡略化す

る必要があるであろう。その第一歩として、

本研究では、エンコーダ機にノート型パソ

コンを選択することで、移動やシステム設

置に関する煩雑さを回避することができた。

今回のシステム構築で問題だった点とし

て、エンコーダソフトとビデオキャプチャ

カードとの相性があげられる。エンコーダ

機にはタイプ1(Windows2000)とタイプ

2(Windows98 SE)を用意し、両方に同

じ USB タイプのビデオキャプチャカード

を使用した。ここで、タイプ 1 ではエンコ

ーダソフトウェアからキャプチャカードを

認識することができず、動作しなかった。

一方、タイプ 2 では、エンコーダは問題な

く動作した。エンコーダソフトもビデオキ

ャプチャカードも、単体ではどちらも

Windows2000 に対応しているものであっ

たが、組み合わせての使用では問題が発生

した。過去のライブ中継の経験から、シス

テムの安定性を求めて Windows2000 を採

用したが、複数の機器、ソフトウェアを組

み合わせて使用する場合には注意が必要で

ある。

結論として、RealProducer Plus 8.5 を

使用する場合、OS は Windows98 を用いた

方が利用できるキャプチャカードの幅が広

がる。特にノート型パソコンを使用する場

合は、使用できるキャプチャカードの種類

が少なくなるため、OS よりも対応するキ

ャプチャカード(USB、PCMCIA カード)

を優先して考慮した方が無難であろう。今

回使用したタイプ2においても、エンコー

ド中にシステムが停止するなどの問題は特

に発生せず、実用可能であった。

ただし、タイプ2クラスの PC の場合、

エンコードする帯域によっては速度の低下

が認められた。タイプ2程度のスペックの

場合、エンコード可能な帯域は、せいぜい

56.6Kbps 程度までであり、それ以上

(CATV クラス)を選択すると、エンコー

ダの速度が著しく低下した。もう少し高性

能な機器のほうがよい。

ところで、ライブ配信を行うためには会

場内には必ずネットワークに接続するため

の情報コンセントが必要である。しかし、

カメラの設置場所に必ずしも情報コンセン

トが設置されている保証はない。そこで無

線 LAN を導入すれば、エンコーダ自体の

設置場所に自由度が高まるのではなかろう

か。また、カメラのみをエンコーダから離

れた場所に設置するためには、市販のビデ

オ・音声トランスミッタを利用する方法も

ある。今回は使用しなかったが、複数のカ

メラとスイッチャを利用することによって、

角度を変えての撮影も可能になる9。

さらに、Real Presenter といった他のリ

アルネットワークス社の製品を利用するこ

とによって、PowerPoint と講演者を同時

に、別々のウィンドウに出力させて、より

効果的なコンテンツ配信することも可能で

ある。

9 ただし、この場合には、配信すべきカメラの画像を事前に確認するためのモニターシステムも必要と考えられる。

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今後、ライブ中継や映像配信をさらに充

実させるために、システムに上記のような

仕組みを導入することで、コンテンツ自体

の効果を上げ、さらに運用面でも扱いやす

いシステムを構築することができると考え

られる。さらに検討したい。

7. 参考文献

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トストリーミング,株式会社翔泳社

(2000).

[2] 田口美帆:図解でわかるインターネッ

トテクノロジー,日本実業出版社

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究会編:ポイント図解式インターネッ

トRFC事典,株式会社アスキー(1998).

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http://www.jp.real.com/player/

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http://www.microsoft.com/japan/

windows/mediaplayer/

[6] Quick Time Player HP.

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[7] 牧野晋・大塚秀治・窪田浩実・郷貢・

高辻秀興・高橋三雄:専用線 IP 接続に

よる遠隔双方向授業実験,情報処理学

会研究報告 98-DSM-11,Vol.98,No.88,

pp.13-18(1998).

[8] 大澤光:インターネットストリーミン

グ-技術・利用事例・2005 年への期待

-,共立出版株式会社(2000).

[9] リアルネットワークス社 HP.

http://www.jp.realnetworks.com/