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第2版(2012 年 2 月 20 ) のリフレッシュ工法技術資料 平成2 平成2 平成2 平成24年2月 ライト工業株式会社 ライト工業株式会社 ライト工業株式会社 ライト工業株式会社

のリフレッシュ工法技術資料- 1 - 第1章 総 則 1-1 目 的 【解説】 斋設モルタル吹付け面の老朽化・劣化は経年変化だけでなく、その構造形状や材敘性質、

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第2版(2012 年 2月 20 日)

のリフレッシュ工法技術資料

平成2平成2平成2平成24444年年年年2222月月月月

ライト工業株式会社ライト工業株式会社ライト工業株式会社ライト工業株式会社

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第2版(2012 年 2月 20 日)

目 次

第 1 章 総 則 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1~13

1-1 目 的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

1-2 適用範囲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

1-3 工法概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

1-4 用語の定義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

第 2 章 既設モルタル吹付け面の調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

2-1 調査一般 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

第 3 章 設 計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15~30

3-1 一 般 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

3-2 安定計算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

3-3 増厚工の設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

3-4 カップルボルトの設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

3-5 注入工の設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

3-6 対策工の選定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

3-7 構造細目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

3-7-1 カップルボルトの構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

3-7-2 アンカーボルトの構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

3-7-3 グラウチングボルトの構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

3-7-4 自穿孔グラウチングボルトの構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

3-7-5 2重管自穿孔ロックボルトの構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

3-7-6 吹付け厚さとのり肩の構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

第 4 章 施 工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31~60

4-1 施工計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

4-2 施工機械 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

4-3 タイプ1・タイプ2の施工手順 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

4-3-1 のり面水洗清掃工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

4-3-2 ラス張工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36

4-3-3 アンカーボルト工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36

4-3-4 ボルト注入工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

4-3-5 カップルボルト工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

4-3-6 注入孔穿孔工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38

4-3-7 水抜きパイプ設置工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39

4-3-8 増 厚 工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40

4-3-9 空隙充填工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

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第2版(2012 年 2月 20 日)

4-4 タイプ3の施工手順 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

4-4-1 グラウチングボルト工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45

4-4-2 空隙充填・地盤注入工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48

4-5 タイプ4の施工手順 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

4-5-1 自穿孔グラウチングボルト削孔工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51

4-5-2 自穿孔ボルト注入工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53

4-5-3 空隙充填・地盤注入工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54

4-6 タイプ5の施工手順 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56

4-6-1 2重管自穿孔削孔工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57

4-6-2 ボルト加圧注入工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59

4-6-3 頭部処理工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60

第 5 章 施工管理項目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61

第 6 章 維持管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62~64

6-1 維持管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62

6-2 点検などの項目および方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63

6-3 点検などの期間と頻度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64

6-4 点検記録と保存 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64

引用・参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65

巻末資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66

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第 1章 総 則

1-1 目 的

【解説】

既設モルタル吹付け面の老朽化・劣化は経年変化だけでなく、その構造形状や材料性質、

施工方法、立地条件などに起因することが一般的に知られている(表1-1参照)。

本工法は、斜面に施工されている既設モルタル吹付け面のうちモルタルの劣化、あるいは

構造や性質、施工、立地などに起因する老朽化が発生している斜面全体の安定確保を目的と

する。

表 1-1 既設モルタル面の老朽化の要因

変状の種類 現 象 原 因

地山を含む 崩壊

はらみ出し せり出し

座屈

地震 背面地盤への水の供給

滑落 (スライド)

法肩部の沈下による亀裂 目地部のずれ

モルタルと地山の付着力不足 背面地盤への水の供給

クラック ヘアークラック 規則性のない開口クラック(複数分布)

遊離石灰を伴うクラック

吹付モルタルの施工特性 乾燥収縮

局所的な品質不良 地山からの湧水

剥離 剥離落下 打継目の剥離

浮き上がり

施工方法(層吹、打継、厚さ) 気象条件

配合

空洞化 水抜きからの土砂流出 吹付面の陥没 法肩部の沈下

モルタルと地山の付着力不足 背面地盤への水の供給

本工法は、斜面に施工されている老朽化した既設モルタル吹付け面を含む、表層地盤の

安定を確保することを目的とする。

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1-2 適 用 範 囲

【解説】

(1)既設モルタル吹付け面を取り壊さずに背面地山の風化の状態を面的に捉えることはむ

ずかしい。そのためボーリング調査や物理探査等を実施し、その結果判明した風化層

の厚さと勾配によって適用タイプを決定する。本資料は図 1-1 のAグループを対象

とする。

図 1-1 のり面補修・補強工法一次選定フロー図

本工法は、岩盤斜面に施工されている既設モルタル吹付け面を対象とする。ただし、湛

水部に施工された吹付け面は適用範囲から除く。

(1)風化層厚が 2.0m 程度までの表層すべりに適用する。

(2)モルタルの圧送距離は 100m(直高で 45m)以内を標準とする。

(3)表面処理をモルタル吹付けとする場合の勾配は 1:0.3 以上の緩いのり面を標準

とする。

補修・補強工+緑化工

老朽化モルタルの

剥取り・撤去

Yes

No

安定勾配で

切土可能か

切土+のり面保護工

Yes

スタート

No

緑化の必要

があるか

補修・補強工+モルタル吹付工

老朽のり面調査

Aグループ Bグループ Cグループ

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図 1-2 Aグループ工法二次選定フロー図

Yes No

空 隙 お よ び

風化層厚は

50cm 以下か

Yes

スタート

No

背面に空隙

があるか

地山が風化

しているか

No

Yes

タイプ1 タイプ2 タイプ3 タイプ5

地山が自立

するか

タイプ4

No

2重管自穿孔

ロックボルト

仕様

自穿孔

グラウチング

ボルト仕様

グラウチング

ボルト仕様

アンカー

ボルト仕様

+空隙充填

アンカー

ボルト

仕様

Yes

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タイプ1

標準断面図 S=1/10

アンカーボルト(D19×1000mm)

打設ピッチ3.0m×1.5m

カップルボルト

2個/m2

既設吹付モルタル

水抜きパイプ(VP50)

1箇所/2~4m2

増厚工 t=70mm

(短繊維混入モルタル吹付)

カップルプレート(A)

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タイプ2

アンカーボルト(D19×1000mm)

打設ピッチ3.0m×1.5m

空隙充填孔(VP-30)

1箇所/4.5m2

カップルボルト

2個/m2

既設吹付モルタル

背面空隙

水抜きパイプ(VP50)

1箇所/2~4m2

増厚工 t=70mm

(短繊維混入モルタル吹付)

間詰モルタル

カップルプレート(A)

標準断面図 S=1/10

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タイプ3

標準断面図 S=1/15

既設吹付モルタル

背面空隙

増厚工 t=70mm

(短繊維混入モルタル吹付)

グラウチングボルト

φ34.0×3.2×750

水抜きパイプ(VP50)

1箇所/2~4m2

カップルボルト

2個/m2

間詰モルタル

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タイプ4

カップルプレート(B)

標準断面図 S=1/10

増厚工 t=70mm

(短繊維混入モルタル吹付)

SP32

自穿孔グラウチングボルト L=1000mm

打設ピッチ3.0m×1.5m

カップルボルト

2個/m2

既設吹付モルタル

背面空隙

水抜きパイプ(VP50)

1箇所/2~4m2

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タイプ5

間詰モルタル

標準断面図 S=1/15

既設吹付モルタル

背面空隙

増厚工 t=70mm

(短繊維混入モルタル吹付)

2重管自穿孔ロックボルト

水抜きパイプ(VP50)

1箇所/2~4m2

カップルボルト

2個/m2

空隙充填孔(VP-30)

1箇所/4.5m2

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(2)モルタルを空気圧送方式による湿式吹付けで施工する場合は、原則として圧送距離で

100m(直高で 45m)1)以内を適用範囲とする。しかし、供用中の道路に面した既設

モルタル吹付け面では、この適用範囲内にプラントヤード等を確保することが困難な

場合がある。この場合、高性能のり面用吹付けコンクリート(高強度・高じん性)の

造成が可能なポンプ併用空気圧送方式による施工とするが、詳細については「ユニラッ

プ工法技術資料」(平成 19 年 7 月)によるものとする。

(3)本工法は補強後の表面仕上げが、モルタルだけでなく図 1-1「法面補修・補強工法一

次選定フロー図 B グループ」の長繊維混入補強土による全面緑化も可能である。そ

の場合は、植生導入限界勾配を勘案し、のり面勾配を 1:0.5 よりも緩い斜面とするが、

詳細については「建設技術審査証明(砂防技術)報告書 ロービングウォール工法(財)

砂防・地すべり技術センター 」(平成 20 年 9 月)によるものとする。

2重管自穿孔ロックボルト仕様の場合は 2.0m 程度の風化層まで対応が可能

図 1-3 適用範囲

風化層深さ

(t=0.2~0.5m)

既設モルタル吹付け

圧送距離100m(直高45m)

これを越える場合は

長距離・高揚程材料圧送工法を採用する

 

1:0.3よ

対象地盤:岩盤

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1-3 工法概要

【解説】

(1)増厚工は、既設モルタル吹付け面を撤去せずに施工することが可能で、従来、打換工

で発生していた廃棄物(コンクリート殻)を大幅に抑制し、機能を回復させる工法である。

のリフレッシュ工法の増厚工は短繊維混入モルタル吹付を標準とする。既設モルタル

吹付面と新設モルタル吹付面を一体化させる目的でカップルボルトを使用する。

(2)空隙充填工は、既設モルタル吹付け面と背面地盤の空洞部にセメント系固化材を充填

することで、密着性を回復させる工法である。

(3)地盤注入工は、脆弱化した風化層に対し、グラウチングボルトおよび自穿孔グラウチ

ングボルトを用いてセメント系固化材を注入することで、地盤を強化させる工法であ

る。ボーリング調査の結果、比較的深い表層すべりが懸念される場合は、2重管自穿

孔ロックボルト仕様を使用する。

図 1-5 イメージ図(タイプ3仕様)

本工法は、以下の3工種の複合効果により斜面を安定させる工法である。

(1)既設モルタル吹付け面の補強や景観の向上を目的とした増厚工

(2)地盤とモルタル吹付け背面の密着性を高めることを目的とした空隙充填工

(3)地盤の強化を目的とした地盤注入工

図 1-4 本工法の構成

既設モルタル吹付

空 隙 充 填

増厚工 t=70

風化層

地盤注入工

グラウチングボルト

既設モルタル面の補強

や景観の向上

増 厚 工 空隙充填工 地盤注入工

地盤の補強

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1-4 用語の定義

本技術資料で使用する用語は次のように定義する。

(1)老朽モルタル吹付け面

岩盤斜面に施工されているモルタル吹付け面において、本体の構造、モルタルの性

質、施工、立地などに起因した劣化が進行しているモルタル吹付け構造物をいう。

なお、モルタル吹付け面にはコンクリート吹付け面も含む。

(2)補 強

補強とは、モルタル吹付け面を含んだ斜面全体の安全性(耐荷性)を回復させるこ

とを目的としたもので、具体的な対策工には、増厚、地盤の強化などがある。

(3)増 厚 工

老朽モルタル吹付け面を撤去せずに増吹きすることをいう。増厚工には、じん性の

向上を目指した短繊維混入モルタル吹付、耐荷性の向上を目指した長距離・高揚程

材料圧送工法のほか、周辺景観の調和に配慮した繊維補強土工がある。

(4)短繊維混入モルタル

従来のモルタル配合に短繊維を混入することで、じん性の向上・剥落抑制・耐凍害

性を高めたモルタルをいう。

(5)空隙充填

既設モルタル面と背面地盤の空洞部にセメント系固化材を充填することをいう。

(6)地盤注入

脆弱化した風化層に対し、グラウチングボルトや自穿孔グラウチングボルトを用い

てセメント系固化材を注入することをいう。

(7)カップルボルト

増厚工を施工する前に、既設モルタル吹付け面上に打設するボルトで、新旧のモル

タル吹付けを一体化させる機能を持つ。

(8)アンカーボルト

背面地山に既設モルタル吹付けを固定するために打設する。

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(9)カップルプレート(A)

新旧のモルタル吹付けを一体化するために、アンカーボルト頭部にロックナット2

個にて固定する。

(10)グラウチングボルト

先端支圧型アンカー。グラウチングボルトは比較的健全な地盤に先端部を拡径固

定する。新旧モルタル吹付けと地山との一体化のためおよび地盤注入の注入管と

して用いる。

(11)自穿孔グラウチングボルト

崩壊性地山においてグラウチングボルトの代用として用いる自穿孔ボルト。

注入は削孔時の注入と、空隙充填・地盤注入の2工程となる。

(12)カップルプレート(B)

新旧のモルタル吹付けを一体化するために、自穿孔グラウチングボルト頭部にロッ

クナット2個にて固定する。

(13)2重管自穿孔ロックボルト

2m 程度までの表層すべりの抑止効果をもたせたロックボルト。部分二重管方式に

よる二方向加圧注入効果を行うことを特徴とする。

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第 2章 既設モルタル吹付け面の調査

2-1 調査一般

【解説】

設計時には予備調査として広域調査を行い、モルタルの劣化度合いなどを面的に捉える調

査を行い、設計に必要な数値を得るだけでなく、施工に必要な数量も把握しなければならな

い。既往の点検記録や被災の履歴、近隣斜面の調査資料なども参考にする。設計時の調査は、

優先順位の決定、対策工を選定することを主な目的としていること、調査対象地域で交通規

制や第三者被害防止対策が十分に行えない場合が多いことなどから、調査項目や調査の頻度

が十分でない場合がある。そこで、施工時(施工前)に詳細調査を行うこと2)を原則とした。

施工時の調査は、予備調査の精度を上げるために行うものである。空洞の範囲と正確な注入

量を把握することを目的とした打音調査や穴あけ調査、既設モルタル吹付け面から直接コア

を抜き取り、モルタルの劣化度を判定する各種物理試験などがある。それらのなかから必要

に応じて適宜行わなければならない。

表 2-1 予備調査(例)

目 的 手 法

空洞範囲の把握 熱赤外線撮影

すべり面の把握 ボーリング調査

岩級の判別 弾性波探査

施工対象面の状況、数量 デジタル写真測量

地表形状の把握 レーザー測量(3D測量)

表 2-2 詳細調査(例)

目 的 手 法

空洞範囲の把握 打音調査

貫入調査

風化層の状態把握

はぎ取り調査

貫入調査

土壌硬度試験

コア抜き取り調査

健全度調査

ひび割れ調査

打音調査

圧縮強度試験

既既設モルタル吹付け面の調査は、設計時の予備調査、施工前の詳細調査にて行うこと

を原則とする。

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第 3章 設 計

3-1 一 般

【解説】

(1)本来吹付けモルタルは、風化、浸食を防止することや防水、付着機能が要求される。

しかし、経年による吹付けモルタル自体の劣化や、打継ぎ目の不良箇所からの地表水

の浸入、地下水などの影響による風化・空洞化から発生する崩壊,モルタルの剥離、

落下などにより第三者に被害を与える恐れがある。

求められる機能に応じて対策工のレベルを設定し、設計を行う。対策工の設定にあたっ

ては図 1-1、図 1-2 に従い対策工の設計を行うことが重要である。

(2)表層すべりが予想される斜面に対しては、地盤条件を適切に設定し、極限平衡法など

の安定計算から求められる抑止力に対して鉄筋挿入工の設計を行う。なお、鉄筋挿入

工の設計は、「切土補強土工法設計・施工要領」(NEXCO 中央研究所発行)などの

基準書を参考にして設計する。

(3)周辺の景観や環境との調和が求められる場合、植物によるのり保護工を検討する。背

面からの水分供給がない吹付けモルタル上に植生を行うことは、乾燥害による植物の

生育不良となりやすい。また、十分な厚さの基盤が確保されないと根系の伸長が阻害

され、永続的な植生は困難である。このため、植生による表面保護工を実施する場合

は、繊維混入補強土により十分な生育基盤を造成し、植物を導入することが望ましい。

なお、繊維補強土工の設計は、「建設技術審査証明(砂防技術)報告書 ロービング

ウォール工法(財)砂防・地すべり技術センター 平成 20 年 9 月」を参考にして設

計を行う。

(1)既設吹付け面が老朽化し剥離、剥落する恐れのある箇所、背面の地山が風化により

空洞化し、不安定化しているのり面に適用する。

(2)表層すべりが発生すると予想されるのり面は、鉄筋挿入工を併用した設計をおこな

わなければならない。

(3)設計の際は、周辺環境の調和にも配慮する。

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3-2 安定計算

【解説】

(1)グラウチングボルトやアンカーボルトの設計は、風化領域のすべり土塊、既設モルタ

ル、増厚工および空隙充填工の重量の組み合わせにより安定計算を行う。

本工法での風化層の厚さは 0.2~0.5m を想定しており、物理探査結果などから風化層

の厚さが設定できる場合は、その値を用いて安定計算を行う。モルタル吹付けが施工

されている斜面は岩盤斜面が多いことからすべり形状は直線とし、すべり力の 20%が

グラウチングボルトやアンカーボルトに引張力として作用すると考え、計算を行うこ

ととした(図 3-1)。

(2)吹付け面にすべり力が作用して変状をきたしていることが目視で確認できる場合や、

ボーリング調査などによりすべり面が確認されている場合は、土質定数を設定し円弧

すべりや直線すべりなどを想定して安定計算を行う。

〔グラウチングボルトの検討例〕

グラウチングボルトの検討は、「切土補強土工法設計・施工要領」の考え方を参考に計算

し、補強材の引張り力の低減係数λを 0.7 とした。

図 3-1 地盤モデルと計算条件

項 目 ・ 記 号 数 値

吹付モルタル重量γc γc 21kN/m3

風化層重量γd γd 19kN/m3

空隙充填重量γd γcp 19kN/m3

のり面勾配 α 73.3°

1 本のグラウチングボルトが受け持つ面積 A 4.5 ㎡

風化幅(背面空隙含む) B 0.3m

既設吹付モルタル厚 t1 0.1m

増厚工 t2 0.07m

内部摩擦角 φ 35°

低減係数 λ 0.7

すべり面となす角 β 90°

(1)地山表層が風化により不安定化している場合は、風化領域をすべり土塊と仮定し安

定計算を行う。

(2)表層すべりに対する安定計算は、すべり形状を想定して極限平衡法で行う。

既設モルタル吹付

L=100

増厚工

L=100

L=500

Q

S

W

α

特殊アンカー

θ

α

L=70

L=300

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①すべり力(Q)の算出

グラウチングボルト 1 本が受け持つ吹付けモルタル重量(W1)は、

W1=γ c×A×(t 1+t 2)=21×4.5×0.17= 16.1kN

風化領域土塊重量(W2)は、

W2=γd×A ×B =19×4.5 ×0.3= 25.7kN

総重量(W)は、

W=W1+W2= 41.8kN

よって、すべり力(Q)は、

Q=W×Sinα = 40.0kN となる。

②必要抑止力(Pr)の算出

必要抑止力(Pr)は、

Pr=Q×20%= 40.0×0.2=8.0kN

③グラウチングボルトに作用する設計引張力(P)の算出

設計引張力(P)は、

P =Pr/(λ・ (cosβ+sinβ・tanφ ))

=8.0/ (0.7・ (cos90°+sin90°・tan35°)

=16.3kN となる。

④グラウチングボルトの許容引張荷重(Tsa)

Tsa=Tu・As/ 2.0=290・ 309/ 2.0/ 1000=44.8kN

Tsa≧P を満足する。

Tu:引張強さ (N/mm2)

As:公称断面積 (mm2)

⑤地盤からの引抜力

巻末資料 参考資料 1 に実現場における引張試験結果を記載した。地盤により極限引抜

力(Tug)の値は異なるが、グラウチングボルトの極限引抜き力は、試験結果より 38~

90kN 程度で、設計引張力に対して十分安全な値(P×2=32.6≦Tug)が得られている。

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〔のリフレッシュ工法のタイプと法面勾配および空隙・風化厚の関係〕

以下の条件で安定計算を行い、のリフレッシュ工法のタイプ別に各のり面勾配(1:0.0~1:

0.5)おける対応可能な空洞・風化厚を算出した。条件を表 3-1、算出結果を表 3-2 に示す。

表 3-1 算出条件

項 目 ・ 記 号 数 値

吹付モルタル重量γc γc

21kN/m3

風化層重量γd γd

19kN/m3

空隙充填重量γd γcp

19kN/m3

1 本のボルトが受け持つ面積 A 4.5m2

既設吹付モルタル厚 t1

0.1m

増厚工 t2

0.07m

内部摩擦角 φ 35°

低減係数 λ 0.7

極限周面摩擦抵抗(風化岩) τ 0.48N/mm2

表 3-2 算出結果

アンカーボルト

(タイプ1、2)

グラウチングボルト

(タイプ3)

自穿孔グラウチングボルト

(タイプ4)

のり面勾配 空洞+風化厚 のり面勾配 空洞+風化厚 のり面勾配 空洞+風化厚

1:0.8 0.35 1:0.8 0.50 1:0.8 0.35

1:0.7 0.35 1:0.7 0.50 1:0.7 0.35

1:0.6 0.30 1:0.6 0.40 1:0.6 0.35

1:0.5 0.30 1:0.5 0.40 1:0.5 0.35

1:0.4 0.30 1:0.4 0.35 1:0.4 0.30

1:0.3 0.30 1:0.3 0.35 1:0.3 0.30

1:0.2 0.30 1:0.2 0.35 1:0.2 0.30

1:0.1 0.25 1:0.1 0.25 1:0.1 0.25

1:0.0 0.20 1:0.0 0.15 1:0.0 0.20

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3-3 増厚工の設計

【解説】

(1)「吹付けコンクリート指針(案)〔のり面編〕 土木学会」では従来行われている吹付

けモルタルに対して、圧縮強度やじん性などの力学的特性、圧送距離や圧送性などが

大幅に改善された吹付けモルタルを新しく高性能のり面用吹付けコンクリートとして

位置づけた。老朽化した既設モルタル面の補修補強工においても従来より耐久性のあ

る構造物を構築する観点から、高性能のり面用吹付けコンクリートを使用することが

望ましい。そこで、本工法では、じん性の向上を目的として短繊維(のりファイバー)

を混入したモルタル吹付を標準としている。

本工法では、設計基準強度f'ck=18N/mm2を標準としているが、より耐久性の高い

高強度吹付けモルタルを使用する場合の設計基準強度は、f'ck=24N/mm2とする

(2)短繊維(のりファイバー)を混入したモルタル吹付けコンクリートは、曲げじん性お

よびクラック後の曲げ強度が向上する。菱形金網を設置したモルタル吹付と繊維混入

モルタル吹付で採取した供試体について実施した曲げタフネス試験の結果より、のり

ファイバーを 0.75Vol%以上混入することでラス金網を省略し、さらに、吹付厚さを 7

㎝にすることができることが確認されている(巻末資料 参考資料 2 参照)。

また、のり面勾配が 1:0.3 を超える急な場合は、施工時に吹付けモルタルのはく離や

落下が生じる恐れがあるため、ラス張工を併用する。

(1)増厚工は、短繊維(のりファイバー)を混入したモルタル吹付けを標準とする。そ

の場合の設計基準強度は、f'ck=18N/mm

2

とする。

(2)増厚工の厚みは、7㎝を標準とする。

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3-4 カップルボルトの設計

【解説】

カップルボルトは、増厚モルタルをカップルボルトのせん断力により、既設吹付モルタル

と一体化を図ることを目的に 1m2当たり2個設置する。

本工法は繊維混入吹付によりラス張工を行わないことを標準としている。カップルボルト

を設置することにより、その縫付け効果で増厚モルタルの密着性を高め、吹付時のダレを防

止する効果もあり、本工法では 1m2当たり2個設置することを標準とした。

〔カップルボルトの照査〕

カップルボルト径 D=12mm

許容せん断応力度 τsa=80N/mm2

増 厚 工 t=7cm

吹付モルタルの単位体積重量 γc=21kN/m3

1m2当たりのカップルボルトの許容せん断力Sは、

S=D2/ 4×π×τ sa×2= 122

/ 4×π×80×2= 18,086N= 18.1kN

1m2当たりの増厚モルタルの重量Wは、

W=γ c×1×0.07= 1.47kN

S>Wであることから、せん断力によって増厚モルタルを保持可能である。

カップルボルトは、新旧モルタル吹付けを一体化させることを目的に 1m

2

当たり2本打

設する。

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3-5 注入工の設計

【解説】

(1)ボルト削孔充填量は孔自体の容積にロックボルトの標準割増係数、2.5 を乗じたもの

とする。

〔注入量の計算例〕

1KLπD

1V ×××=4

2

(2)空隙充填注入は、既設モルタル吹付け面と地山の間の空隙を充填することを目的に実

施する。原則として、無圧注入により充填が可能な 10mm 以上の空隙に対して適用す

る。設計注入量は穴開け調査などにより決定するが、調査の頻度により数量が正確に

把握できないと判断される場合は、施工時に流量計を用いて注入量を測定し、設計数

量とする。

〔注入量の計算例〕

空洞充填量=n×V2

n :充填箇所数

V2:充填箇所 1 箇所当たり注入量

V2=A×H×K2

A :1 箇所当たりの充填範囲

(A=3.0m×1.5m)

H :平均空洞深さ(0.01m)

K2:空隙充填注入割増係数(1.1)

V1 :注入量

D2

:削孔径 (φ40mm)

L :削孔長 ( 940mm)

K1 :ボルト注入割増係数(2.5)

注入は空隙部の充填と風化層の強化を目的として行う。

(1)ボルト削孔充填の割増係数は2.5を標準とする。

(2)空隙充填注入の割増係数は1.1を標準とする。

(3)グラウチングボルト、自穿孔グラウチングボルトを使用した場合の空隙充填・地盤

注入工の割増係数は1.5を標準とする。

(4)2重管自穿孔ロックボルトを使用した場合の注入量は加圧注入の割増係数3.2を標

準とする。

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(3)地盤注入工は鉄筋挿入工のグラウト注入と異なり、パッカー注入により風化層の強化

を主な目的として実施されるが、補助的な効果としてグラウチングボルトの拘束力向

上にも寄与することが自社の試験結果より確認されている。地盤注入はセメント系グ

ラウトを使用し、風化岩盤の亀裂の荒詰めを目的として施工され、地盤への浸透効果

は低い。地盤注入においては、注入量はこれまでの実績から、空隙充填の容積量に 1.5

の割増係数を乗じたものとした。

〔注入量の計算例〕

V3 =A×H×K3

V3 :グラウチングボルト・自穿孔グラウチングボルト

1本当たり空隙充填注入量

A :1 箇所当たりの充填範囲 (A=3.0m×1.5m)

H :平均空洞深さ(0.01m)

K3 :空隙充填・地盤注入の割増係数(1.5)

(4)2重管自穿孔ロックボルトを使用する場合は、ロックボルト周辺地盤の拘束力を強化

する目的で上下2方向から加圧注入を行う。そこで、注入量の割増率は加圧注入の時

の値 3.2 倍を用いることとする。

〔注入量の計算例〕

4KL4

D ×××= π2

V4

V4 :注入量

D :削孔径 (φ65mm)

L :削孔長(設計長)

K4 :ボルト注入割増係数(3.2)

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3-6 対策工の選定

【解説】

既設モルタル吹付け面の老朽化の要因は 1 つではなく、いくつかの要因が積み重なり現象

として現れる。そこで、対策工は老朽化の原因を排除・抑制できる機能をもつ工法を組み合

わせて選定しなければならない。ただし、比較的深い表層すべりが発生すると予想される場

合は、タイプ5に示す抑止工を併用する。

のリフレッシュ工法での対策工の組み合せを表 3-3 に示す。

表 3-3 対策工の目的と組合せ

工法

タイプ

条 件 対策工の目的と組合せ

性能回復のレベル

要求される性能

のり面工の新旧一体化による

剛性向上

地山との一体化

剥落・

すべり抑止

風化

抑制

タイプ1

背面空隙無

増厚工

※1、2

(短繊維混入モルタル吹付工

カップルボルト工)

カップルボルト工+

アンカーボルト工

アンカー

ボルト工

モルタル背面と地山との付着は現

状のままであるが、のり面工の剛

性、のり面安定度は初期のレベルと

同等程度まで回復できる。

モルタル劣化・

剥離・剥落防止

タイプ2

背面空隙有

風化層0.3m程度まで 空隙充填工+

カップルボルト工+

アンカーボルト工

アンカー

ボルト工

モルタル背面と地山との付着を改

善し、のり面工の剛性およびのり面

安定度も初期のレベルと同等程度

まで回復できる。

モルタル劣化・

剥離・剥落防止

地山との一体化

タイプ3

タイプ4

背面空洞有

風化層0.5m程度まで

風化層の緩み

空隙充填工+

カップルボルト工+

グラウチングボルト工

(自穿孔グラウチング

ボルト工)

グラウチング

ボルト工

(自穿孔グラウチン

グボルト工)

モルタル背面と地山との付着およ

び地山の緩みも改善され、のり面工

から内部の風化層までの一体化に

よるのり面の剛性が向上する。初期

のレベルより同等以上まで回復で

きる。

モルタル劣化・剥離・

剥落防止

地山との一体化

表層すべり抑止

タイプ5

背面空洞有

0.5mを超える風化層 空隙充填工+

カップルボルト工+

2重管自穿孔

ロックボルト工

2重管自穿孔

ロックボルト工

タイプ1~4はのり面工に分類さ

れ、タイプ5は抑止工に分類され

る。モルタル背面地山との付着が改

善され、のり面工の剛性も向上す

る。抑止工によるのり面の安定対策

工法であるため、安定度は高く、初

期のレベル以上に回復できる。

モルタル劣化・

剥離・剥落防止

地山との一体化

表層すべり抑止

※1 景観が要求される場合の増厚工は、長繊維混入補強土工を選定する。

※2 長距離・高揚程圧送吹付けが要求される場合の増厚工は、ポンプ併用空気圧送方式による吹付け方法を選定する。

対策工は、必要とされる機能と補修・補強の回復のレベルに応じて選定することが重要で

ある。各工法の特徴と期待できる効果を示す。

対策工はその機能(効果)、耐久性、施工性、安全性、経済性などを考慮し、最適な組

み合わせを選定しなければならない。

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(1)増 厚 工

モルタル自体の劣化が著しい場合や、すでに崩壊している斜面に対して部分的あるい

は全面的に吹付け面を撤去し打換える工法があるが、供用中の道路に面した斜面など

では施工時の安全性の確保が難しい場合も多い。

増厚工は、老朽化した吹付けモルタルを撤去せずにその上から増し吹きする工法で、

短繊維混入モルタル吹付工を用いる。老朽化した吹付けモルタルの撤去費用、産廃処

理費用が軽減でき経済性、安全性に優れている。また、既設吹付けモルタルと一体化

することにより、のり面工自体の剛性を向上させることができる。

短繊維混入モルタル吹付工は、菱形金網を用いたモルタル吹付工と比較してじん性が

高く、モルタルの剥離・剥落を抑制することが可能である。吹付けモルタルの剥落は

第三者災害につながる恐れが高いため、本工法では、短繊維混入モルタル吹付工を標

準で使用することとした。

(2)空隙充填工・地盤注入工

老朽化したモルタル吹付けの背面に空隙がある場合に実施する。空隙充填工は、既設

モルタル吹付け面の背面への水の侵入を抑制し、地山の風化の進行を防止する効果と

既設モルタル背面と地山の付着を回復させる効果がある。また、地盤注入工には、風

化領域の亀裂充填を行い、強風化領域の地盤を強化する風化抑制効果がある。

タイプ2の工法では、注入パイプを立て込み無圧で空隙注入を行う。タイプ3、4の

工法では、グラウチングボルト、自穿孔グラウチングボルト内へパッカーを挿入した

加圧注入により、風化領域の地盤注入工と背面の空隙充填工を同時に行う。

(3)カップルボルト工

増厚工施工時に新旧モルタル面の付着性能を高め一体化する目的で打設する。

(4)グラウチングボルト工

グラウチングボルト工は、風化層厚が 0.5m 程度までの場合に適用する。風化した背

面地山を貫通させ良好な定着地盤に先端支圧方式で定着し、のり面の不安定な部分を

安定地盤に縫い付けて一体化する工種である。

グラウチングボルトは、セメントペースト注入時には既に先端が定着されているため、

吹付け面の浮き上がりを防止できるところに特徴がある。

(5)2重管自穿孔ロックボルト工

風化層厚が 2.0m 程度までの場合に適用する。2重管自穿孔ロックボルト工を使用す

ることで、表層すべりの抑止、ロックボルト周囲の風化地盤に加圧注入を行うことが

できる。

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3-7 構造細目

3-7-1 カップルボルトの構造

【解説】

カップルボルト工は新設モルタル吹付けと、既設モルタル吹付けを一体化することを目的

とする。カップルボルトは増し厚部分に埋め込むのでモルタルとの付着が高まるようφ70mm

の円形プレートにφ20mm の穴あけをした構造となっている。1m2当たり 2 本打設する。

(mm)

A B C D E F

70 80 12 17 φ20 φ13

図3-2 カップルボルトの構造

カップルボルトは先端支圧型の構造で、既設モルタル吹付面に打設し新旧のモルタル吹

付けを一体化させる機能を持つ。頭部はモルタルとの付着性を考慮し、円形プレートに穴

あけした構造となっている。

F

C

埋め込み部分

鋼材SWCH18R-12

鋼材SPCC-SD 1.6t

A

E

AD

B

(既設構造物)

増し厚部分

(新設構造物)

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3-7-2 アンカーボルトの構造

【解説】

背面地山に既設モルタル吹付けを固定するために打設する。径 42mmで削孔しアンカーボ

ルトを挿入したのちセメントペーストで固定する。アンカーボルトの頭部は、カップルプレー

ト(A)をとりつけ、ロックナット2個にて挟み込み固定する。

表 3-4 アンカ-ボルトの諸元

使用部材 鋼材長 単位重量 公称断面積 引張荷重 降伏荷重

AS345 メッキボルト

D19 1,000mm 2.25kg/m 286.5mm2 140kN 以上 98kN 以上

図3-3 アンカーボルトの構造

鋼材 鋼材SPCC-SD 1.6t

図3-4 カップルプレート(A)の構造

アンカーボルトは AS345 メッキボルト D19(L=1,000mm)を標準とする。

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3-7-3 グラウチングボルトの構造

【解説】

(1)グラウチングボルトは、先端に取付けたテーパーコーンを引抜く事で地盤に支圧力を

与え定着させる構造となっている。増厚工、既設モルタル吹付けおよび風化層を一体

化することを主な目的とする。注入の際、注入圧力によるモルタル面の浮き上がりを

防止する効果もある。

パイプは、注入材の注入圧力に耐える構造を有し、地盤からの引き抜き力発生時に変

形、破損しない構造とする。諸元を表 3-5 に示す。

最大 50cm の風化層厚に本工法を適用することから、既設モルタル吹付けの厚さなど

を考慮しパイプ長は 75cm とした。構造を図 3-5 に示す。

表 3-5 グラウチングボルトの諸元

パイプ 規格

パイプ長 mm

外径 mm

肉厚 mm

単位 質量 kg/m

標準 削孔径

mm

引張強さ

N/mm2

降伏点 又は耐力

N/mm2

水圧試験 圧力 MPa

SGP25A 750 34.0 3.2 2.43 40.0 290 以上 - 2.5 以上

図 3-5 グラウチングボルトの仕様

グラウチングボルトは先端支圧型の構造とし、グラウチングパイプ、テーパーコーンな

どから構成される。頭部は羽根形状の平板を有し、新設モルタル内に埋め込む構造とする。

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3-7-4 自穿孔グラウチングボルトの構造

【解説】

(1)自穿孔グラウチングボルトは、φ45mm のチップ付きビットを装着して削孔する。増

厚後にボルト口元より空隙充填をおこなうため、ボルト上部に上部注入工を有す。

頭部にカップルプレート(B)をロックナット2個にてはさみ取り付けることにより、

新設モルタル吹付け、既設モルタル吹付けおよび風化層を一体化する。背面地山に

既設モルタル吹付けを固定するために打設する。

背面地山に既設モルタル吹付けを固定するために打設する背面地山に既設モルタル吹付け

を固定するために打設する。

表 3-6 自穿孔グラウチングボルトの諸元

呼称 鋼材長 中空内径 公称断面積 引張荷重 降伏荷重

SP32 中空ボルトφ31.4 1,000mm 17.0mm 350mm2 198k 以上 158kN 以上

図 3-6 自穿孔グラウチングボルトの構造

鋼材 SPCC-SD 1.6t

図 3-7 カップルプレート(B)の構造

自穿孔グラウチングボルトは崩壊性地山において使用され、先端ビットを装着して削

孔、および挿入を同時に行う構造である。頭部はカップルプレート(B)をロックナット

2個にてはさみ、新設モルタル内に埋め込む構造とする。

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3-7-5 2重管自穿孔ロックボルトの構造

【解説】

2重管自穿孔ロックボルトは、部分二重管方式で削孔を行う。部分二重管方式とは、崩壊

しやすい表層 1.5m 程度を二重管で削孔する方式で専用の先導外管を使用する。削孔終了後

に中空ボルト頭部にアダプターを取り付け、ビット先端と先導外管の2方向から加圧注入を

行うことができる。中空ボルトの諸元を表 3-7 に示す。

表 3-7 中空ボルトの諸元

呼 称 外径 中空径 断面積 降伏荷重 保証破断荷重 単位重量

SP29 28.5mm 13mm 435mm2 204kN 255kN 3.3 kg/m

図 3-8 削孔時

図 3-9 注入時

2重管自穿孔ロックボルトは、全面定着方式の構造で、φ29mm の中空ボルト、先導外

管、φ65mm の先端ビット、スクリューセントライザー、カップラーなどで構成される。

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図 3-10 2重管自穿孔ロックボルト構造図

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3-7-6 吹付け厚さとのり肩の構造

【解説】

(1)増厚工に用いる吹付け材料は、既設のモルタル吹付け面に対して吹付けを行うため、

跳ね返りによる品質への影響を考え、モルタルで施工することを原則とした。短繊維

を混入する場合の吹付け厚さは、引張強度や曲げ強度が普通コンクリートと比べて

1.3~1.8 倍程度の値を示すことから吹付けモルタル(t=10cm)の 70%程度の吹付け

厚さ3)を標準とした。

(2)モルタル吹付け面における老朽化要因の 1 つとして、地山の洗掘があげられる。これ

は①地下水(湧水)によるもの、②クラックからの雨水浸入、③のり面上方からの流

下水などが原因とされている。このうち③は施工時の処理不足に起因することが既往

の文献2)にも挙げられている。このため、のり肩部が土砂化している場合は、のり肩

排水を設置するか、地山へ巻き込むように吹付けを実施するなど、適切な排水処理を

行わなければならない。

図 3-11 のり肩の構造例(増厚工を短繊維混入モルタル吹付で行う場合)

増厚工に使用する吹付材料は、短繊維混入モルタルとすることを原則とした。

(1)厚 さ

吹付け厚さは 7cm を標準とする。

(2)のり肩の構造

のり肩部は、のり面上方からの流下水が吹付背面に流入しないように、のり肩排水

を設置するか、地山への巻き込みを実施しなければならない。

20~30cm

20~30cm

50~

100cm

20~

30cm

50~

100cm

10~15cm

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第 4章 施 工

4-1 施工計画

【解説】

本工法は、既設モルタル吹付け面を対象とするため、供用中の道路や施設に面しているこ

とが多い。このため、安全かつ円滑に施工できるよう適切な施工計画を立案しなければなら

ない。

施工計画を立案する上で特に留意する点を以下に示す。

(1)施工ヤード(プラント)の位置

(2)プラント位置から施工面までの距離

(3)吹付方法

(4)施工手順

(5)第三者災害の防止対策

(6)排水処理方法

施工に先立ち、円滑かつ安全に施工できるよう施工計画を立案しなければならない。

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4-2 施工機械

使用機械の組み合わせ例を表 4-1 から表 4-7 に示す。

表 4-1 のり面水洗清掃工に使用する機械

名 称 規 格 台数 摘 要

工事用高圧洗浄機 4.9Mpa 30ℓ /min 2

表 4-2 ラス張工に使用する機械

名 称 規 格 台数 摘 要

電動ドリル 018kw 2

発電機 10kVA 1

表 4-3 カップルボルト工に使用する機械

名 称 規 格 台数 摘 要

電動ドリル 0.8kw 2

発電機 10kVA 1

表 4-4 グラウチングボルト工に使用する機械

名 称 規 格 台数 摘 要

削岩機 レッグハンマ 15kg 級 2

ジャッキ センターホール 1

空気圧縮機 10.5~11.0m3/min 105PS 1

表 4-5 増厚工(繊維混入モルタル吹付)使用機械

名 称 規 格 台数 摘 要

吹付機 湿式 0.8~1.2m3/h 1

空気圧縮機 10.5-11.0m3/min 105PS 1

発動発電機 35Kva 1

計量器搭載ミキサー 累下式 0~300kg 1

ベルトコンベア 7m 1.1kW 2

トラクタショベル 0.34m3 1

給水ポンプ 小型渦巻ポンプφ50mm 1

施工に際し、適切な施工機械を選定しなければならない。

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表 4-6 注入工(空隙充填工・地盤注入工)に使用する機械

名 称 規 格 台数 摘 要

グラウトミキサ 縦型 2 槽 200L×2 2kW 1

グラウト注入機 スクイズインバーター付 1

電磁流量計 0~120L/min 5.9MPa 1

吸水ポンプ 小型渦巻ポンプφ50mm 1

発電機 35kVA 1

水槽 5m3 1

表 4-7 2重管自穿孔ロックボルト削孔工に使用する機械

名 称 規 格 台数 摘 要

クレーン式ドリル 現場状況による 1

ボーリングマシン 軽量削孔機 1

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4-3 タイプ1・タイプ2仕様の施工手順

標準的な施工フローを下図に示す。

【解説】

現場条件などにより標準的な手順で施工ができないと判断される場合は、施工計画の変更を

行い適切な手順で施工を行わなければならない。タイプ1は背面に空洞がない場合、タイプ2

は空隙充填注入を実施する場合である。着工前にのり面調査を行い、のり面勾配 1:0.3 以下

の急なのり面ではラス張りを併用する。

ラス張工

アンカーボルト工

ボルト注入工

注入孔穿孔工

水抜きパイプ設置工

増厚工

空隙充填工

完成

カップルボルト工

(タイプ2)

アンカーボルト(D19×1000mm)

打設ピッチ3.0m×1.5m

空隙充填孔(VP-30)

1箇所/4.5m2

カップルボルト

2個/m2

既設吹付モルタル

背面空隙

水抜きパイプ(VP50)

1箇所/2~4m2

増厚工 t=70mm

(短繊維混入モルタル吹付)

間詰モルタル

カップルプレート(A)

標準断面図 S=1/10

のり面水洗清掃工

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4-3-1 のり面水洗清掃工

【解説】

既設の吹付けモルタル面では、経年変化とともにその表面に低木や草本、苔類等が侵入・

発達したり、土砂が付着していることが多い。清掃を行わずに施工すると、新設部と既設モ

ルタル吹付け面との付着に悪影響を及ぼし、場合によっては増厚工が剥離する恐れがある。

そこで、既設モルタル吹付け面は、高圧水を利用して清掃しなければならない。

写真 4-1 法面清掃状況

写真 4-2 ハイウオッシャー水洗い状況

増厚工と既設モルタル吹付との付着が低下しないように土砂などの異物を除去・清掃し

なければならない。

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4-3-2 ラス張工

【解説】

のり面調査により勾配 1:0.3 以下の急なのり面を特定しラス張りを行う。ラス張工に使用

する菱形金網は、φ2.0×50×50mm 目を標準とする。菱形金網はのり面になじみよく設置し、

固定する主アンカーピン(φ16×400mm)は 3 本/10m2、補助アンカーピン(φ9×200mm)

は 15 本/10m2を標準とする。

4-3-3 アンカーボルト工

【解説】

既設モルタル吹付けと地山を一体化する目的でアンカーボルトを打設する。打設ピッチは

1.5m×3.0m の千鳥配置とする。φ42mm で削孔、アンカーボルトを挿入し、セメントペー

ストを注入、固定する。アンカーボルトは D19×1000mm、削孔長は 940mm を標準とする。

アンカーボルトの頭部は、カップルプレート(A)をロックナット2個にて取り付ける。諸

元については、3-7-2 アンカーボルトの構造 を参照。

図 4-1 アンカーボルト配置図

既設モルタル吹付けと地山を一体化する目的でアンカーボルトを4.5m

2

に1本打設する。

着工後の調査によりのり面勾配 1:0.3 以下の急なのり面では、ラス張りを併用し、吹

付け材料のダレ落下を防ぎ、品質を確保する。

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4-3-4 ボルト注入工

【解説】

アンカーボルトの注入は注入ホースを使って孔底よりおこない、そののちに鋼棒を建てこ

む。オーバーフローを確認して注入完了とする。注入材の配合例を表 4-8 に示す。1本当

たり注入量が少なく時間を要するため、ホースの閉塞防止に混和剤には遅延材(ACK-1)を

使用する。

表 4-8 注入材の配合例

普通ポルトランドセメント W/C 混和剤(ACK-1)

1,255kg 48% C×1.0%

4-3-5 カップルボルト工

【解説】

カップルボルト工は新旧モルタル吹付けを一体化することを目的とする。カップルボルト

は増厚部分に埋め込むのでモルタルとの付着が高まるようφ70mm の円形プレートにφ20mm

の穴あけをした構造となっている。ドリルで既設モルタル吹付面に穴を開け打ち込むことに

より固定する。構造については、3-7-1 カップルボルトの構造 を参照。

図 4-2 カップルボルト設置概要図 写真 4-3 カップルボルト設置状況

既設モルタル吹付と新設モルタルの付着を高めることを目的として、1m

2

当たり 2 本打

設する。

アンカーボルトの注入は孔底よりおこなう。

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4-3-6 注入孔穿孔工

【解説】

増厚工施工前に注入孔を穿孔(φ40mm)し、硬質塩化ビニール管(VP30mm)を 1.5m

×3.0m の千鳥配置にて取付ける。パイプ口元はフタでふさぎ、吹付面より 1cm 程度下がっ

た状態にになるように設置する。吹付直後に上部のモルタルを取り除き、注入パッカーが挿

入できるようにしておく。注入完了後は、吹付け面と平らになるように硬練りモルタルにて

間詰めをおこなう。

図 4-3 注入孔配置図

空隙充填注入パイプ取り付けのための穿孔は増厚工施工前におこなう。穿孔ピッチは

4.5m

2

に 1カ所とする。

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4-3-7 水抜きパイプ設置工

【解説】

(1) 水抜パイプは硬質塩化ビニル管(VP50mm)を標準とする。設置は 2~4m2に 1 箇

所を標準とするが、発注機関ごとの仕様書を優先する。

(2) 設置にあたって既設モルタル吹付をφ65mm にてあらかじめ穿孔する。吹付時に地

山側をテープ等にて塞いだパイプを設置する。空洞充填完了後にパイプ奥のテープを

取り除きながら水抜きの清掃を行う。

図 4-4 水抜きパイプ設置概要図

(1)水抜きパイプは 2~4m

2

に 1箇所設置することを標準とする。

(2)水抜きパイプは増厚工施工前に設置する。

増厚モルタル吹付

新設水抜きパイプ

既設モルタル吹付

地山側キャッピング

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4-3-8 増 厚 工

【解説】

増厚工は試験によって所定の品質を有していることを確認しなくてはならない。吹付厚さ

については、3-7-6 吹付け厚さとのり肩の構造 を参照。

以下に短繊維混入モルタルの配合比を示す。

(1)現場または工場で練り上げられたモルタルに短繊維(のりファイバー)を混合し、圧

縮空気により圧送し吹付ける。吹付けは湿式吹付け方式を標準とする。

表 4-9 短繊維混入モルタル吹付工の標準配合比

セメント 細骨材 W/C 短繊維 Vol%

1 4 60%以下 0.75

写真 4-4 増厚工の施工(短繊維混入モルタル吹付状況)

増厚工の材料は、短繊維混入モルタルを標準とする。

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4-3-9 空隙充填工

【解説】

増厚工施工後、注入パイプにパッカーを接続し、セメント系固化材を注入する。概要を図

4-5 に示す。

図 4-5 空隙充填工概要図

既設モルタル面と地山の間の空隙を充填する目的で施工をおこなう。

(1)注入材はセメント系固化材を標準として使用する。

(2)注入は無加圧で行うことを原則とする。

(3)注入は、のり面下部から上部方向へ、また、のり面端部から中央部方向へ行うこと

を原則とする。

(4)空隙充填完了後、注入孔は硬練りモルタルにて埋め戻す。

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(1)注入材の配合例を表 4-10 に示す。注入速度が遅いため、ホースの閉塞防止に混和剤

には遅延材(ACK-1)を使用する。

表 4-10 注入材の配合例

普通ポルトランドセメント W/C 混和剤(ACK-1)

1,255kg 48% C×1.0%

(2)セメント系固化材は圧力を加え過ぎると、吹付け面の浮き上がりや注入材の脱水によ

るホースの閉塞のような悪影響が懸念されるため無加圧で注入する。標準注入速度は

10ℓ /min とし、注入圧力の上昇が見られた場合や、他孔からのセメントペーストの流

出が見られた場合に注入の完了とする。

(3)注入の順序は下部から上部方向、端部から中央方向に行なう。各注入孔には孔番を付

け注入順序などを記録する。注入順序(例)を図 4-6 に示す。

(4)注入完了後注入工は増厚モルタル面と平滑となるよう硬練りモルタルにより仕上げる。

図 4-6 注入順序(例)

水平方向

3-0m

1.5m

注入孔

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図 4-7 注入機構(例)

記録紙

電磁流量

グラウト流量計グラウト流量計グラウト流量計グラウト流量計

圧力計 注入パッカー

グラウトミキサ グラウトポンプ

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4-4 タイプ3の施工手順

標準的な施工フローを下図に示す。

【解説】

現場条件などにより標準的な手順で施工が行えないと判断される場合は、施工計画の変更

を行い適切な手順で施工を行わなければならない。

のり面調査結果をもとにのり面勾配 1:0.3 以下の急なのり面ではラス張りを併用する。の

り面水洗清掃工、ラス張工、カップルボルト孔、水抜き工、増厚工の施工は、タイプ1、タ

イプ2の仕様と同じであり、4-3 章を参照。

のり面水洗清掃工

ラス張工

グラウチングボルト

拡径工

カップルボルト工

水抜き工

増厚工

完成

4-3-1と同様

4-3-2と同様

4-3-5と同様

4-3-8と同様

4-3-7と同様

標準断面図 S=1/15

既設吹付モルタル

背面空隙

増厚工 t=70mm

(短繊維混入モルタル吹付)

グラウチングボルト

φ34.0×3.2×750

水抜きパイプ(VP50)

1箇所/2~4m2

カップルボルト

2個/m2

間詰モルタル

空隙充填・地盤注入工

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4-4-1 グラウチングボルト工

【解説】

(1)グラウチングボルトは比較的健全な地盤に先端部を拡径固定する。新旧モルタル吹付

けと地山との一体化を図ることを目的に、4.5m2/本(縦方向 1.5m×横方向 3.0m の千

鳥配列)の打設を標準とする。グラウチングボルトを打設する位置は、事前の調査によ

り決定する。

諸元については、3-7-3 グラウチングボルトの構造 を参照。

図 4-8 グラウチングボルトの配置図

(1)打設ピッチ

グラウチングボルトの打設ピッチは、4.5m

2

に 1本とする。

(2)削 孔 径

グラウチングボルトの削孔は削岩機による削孔を標準とする。削孔径はφ40mm を

標準とする。

(3)拡 径 工

グラウチングボルトは、センターホールジャッキによりテーパーコーンを引抜き、

先端部を拡径し定着を行う。引抜き量は4cm程度とする。

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(2)グラウチングボルトの削孔はロープ足場による削岩機削孔を標準とした。グラウチン

グパイプが拡径により十分な支持力を発揮できるよう径 40mm にて削孔する。削孔長

は既設モルタル面からのグラウチングボルトの突出長(60mm)を考慮し、720mm

とする。

図 4-9 グラウチングボルトの削孔長

937 5

720

グラウチングボルト

φ34.0×3.2×750

690

間詰モルタル

60

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(3)グラウチングパイプの定着は、パイプ先端にセットされたテーパーコーンを引抜くこ

とで先端を拡径し、引抜き抵抗を得る方式を標準とする。削孔完了後グラウチングパ

イプを孔内に挿入し、センターホールジャッキによる引抜きを実施する。引抜き量は、

テーパーコーンの底部がパイプの先端まで引上げられる長さ4cm程度を標準とする。

図 4-10 に拡径の概要を示す。

写真 4-5センターホールジャッキによる定着試験

図 4-10 拡径工概要図

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4-4-2 空隙充填・地盤注入工

【解説】

空隙充填工は、既設モルタル面と地山との空隙を充填することを目的として施工する。地

盤注入工は、グラウチングボルトにより亀裂充填をおこない風化層を強化することを目的と

するが、拡径後の定着部と地山との支圧効果向上にも寄与する。

(1)注入パッカーをグラウチングボルト内に挿入し、機械式ゴムパッカーを膨張させ、セ

メント系固化材による注入を実施する。注入材の配合例を表 4-11 に示し、図 4-11

に注入概要図を示す。

表 4-11 注入材の配合例

普通ポルトランドセメント W/C 混和剤(ACK-1)

1,255kg 48% C×1.0%

(2)セメント系固化材は、圧力を加え過ぎると吹付け面の浮き上がりや注入材の脱水によ

るホース閉塞などが懸念されるため注入に際しては、標準注入速度を 10L/min とした。

充填完了は、他の注入孔からの流出か、パッカーに取り付けた圧力計で 0.3MPa を上

限に管理する。

(3)注入の順序は下部から上部方向、端部から中央方向に行ない、圧力はモルタル吹付け

面に変状が出ない程度とする。各注入孔には孔番を付け注入順序などを記録する。注

入順序(例)を図 4-12 に示す。

(4)グラウチングボルトの頭部は硬練りモルタルで被覆することを標準とする。頭部処理

は、注入工に残留した雨水やブリージング水等を除去し、増厚モルタル面と同一とな

るよう間詰モルタルによる仕上げを行う。

グラウチングボルトによる注入は、空隙充填と地盤注入を同じボルト口元から、1工程

によりおこなう。

(1)注入材はセメント系固化材を標準として使用する。

(2)注入速度は 10L/min を標準とする。

(3)注入は、のり面下部から上部方向へ、また、のり面端部から中央部方向へ行うこと

を原則とする。

(4)注入完了後、グラウチングボルトの頭部は硬練りモルタルで間詰めする。

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図 4-11 空洞充填・地盤注入工

図 4-12 注入順序(例)

水平方向

2.0m

1.5m

注入孔

地盤注入

既設モルタル

増厚工

グラウト材

空隙充填注入

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4-5 タイプ4施工手順

標準的な施工フローを下図に示す。

【解説】

現場条件などにより標準的な手順で施工が行えないと判断される場合は、施工計画の変更

を行い適切な手順で施工を行わなければならない。のり面調査結果をもとにのり面勾配 1:

0.3 以下の急なのり面ではラス張りを併用する。なお、のり面水洗清掃工、ラス張工、カッ

プルボルト工、水抜き工、増厚工の施工は、タイプ2の施工と同じであり、4-3 章を参照。

のり面水洗清掃工

ラス張工

自穿孔グラウチングボルト削孔工

自穿孔ボルト注入工

カップルボルト工

水抜き工

増厚工

空隙充填・地盤注入工

4-3-1と同様

4-3-2と同様

4-3-8と同様

完成

4-3-5と同様

4-3-7と同様

カップルプレート(B)

標準断面図 S=1/10

増厚工 t=70mm

(短繊維混入モルタル吹付)

SP32

自穿孔グラウチングボルト L=1000mm

打設ピッチ3.0m×1.5m

カップルボルト

2個/m2

既設吹付モルタル

背面空隙

水抜きパイプ(VP50)

1箇所/2~4m2

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4-5-1 自穿孔グラウチングボルト削孔工

【解説】

(1)自穿孔グラウチングボルトは崩壊性地山で削孔後孔壁が保持できない場合に用いる。

モルタル吹付けと地山との一体化を高めることを目的に、4.5m2/本(縦方向 1.5m×

横方向 3.0m の千鳥配列)の打設を標準とする。自穿孔グラウチングボルトを打設する

位置は、事前の調査により決定する。諸元については、3-7-4 自穿孔グラウチン

グボルトの構造 を参照。

図 4-13 自穿孔グラウチングボルトの配置図

(1)打設ピッチ

自穿孔グラウチングボルトの打設ピッチは、4.5m

2

に 1本とする。

(2)削 孔 径

グラウチングボルトの削孔は削岩機による削孔を標準とする。削孔径はφ45mm を

標準とする。

(3)アンカーボルトの頭部には、カップルプレート(B)をロックナット2個にて取り

付ける。

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(2)自穿孔グラウチングボルトは、削孔時にチップ付きの捨てビットを装着し径 45mm に

て削孔する。削孔長は既設モルタル面からの自穿孔グラウチングボルトの突出長

(60mm)を考慮し、960mm(1020-60)とする。削孔時はドリル側ロッド内にカ

ラースリーブを装着し、上部注入孔からのエアー漏れを防止して穿孔する

図 4-14 自穿孔グラウチングボルト工の削孔状況

(3)自穿孔グラウチングボルト頭部は、増厚工との付着力増強のためにカップルプレート

(B)をロックナット 2 個にて取り付ける

鋼材 SPCC-SD 1.6t

図 4-14 自穿孔グラウチングボルト工の

削孔状況 図 4-15カップルボルト(B)

取付け状況

上部注入孔

カラ-付スリ-ブ

レッグアダプタ

2分割リング

ロッ

ドビ

ット 1020

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4-5-2 自穿孔ボルト注入工

【解説】

自穿孔グラウチングボルトの注入は打設したロッドの中空部を利用して孔底よりおこな

う。パッカーをロッド中空内で膨らませて上部注入孔をふさぎ注入を開始する。ロッド外周

を伝わって孔底から上がってきたセメントペーストが、削孔口元からオーバーフローしたこ

とを確認して注入の完了とする。自穿孔グラウチングボルトにおいては、増厚後の空隙充填・

地盤注入時も、同じロッド中空を利用して注入するため、ボルト注入後上部注入孔の清掃を

行う。注入材の配合例を表 4-12 に示す。

表 4-12 注入材の配合例

普通ポルトランドセメント W/C 混和剤(ACK-1)

1,255kg 48% C×1.0%

図 4-16 自穿孔ボルト注入状況

自穿孔ボルトの注入は孔底よりおこなう。

上部注入孔

パッカーにて閉鎖

注入材

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4-5-3 空隙充填・地盤注入工

【解説】

空隙充填工は、既設モルタルと地山との空隙を充填することを目的として施工する。地盤

注入工は、自穿孔グラウチングボルトにより亀裂充填をおこない風化層を強化することを目

的とする。

(1)注入パッカーを自穿孔グラウチングボルト内に挿入し、機械式ゴムパッカーを膨張さ

せ、セメント系固化材による注入を実施する。注入材の配合例は表 4-13 に示し、図

4-17 に注入概要図を示す。

表 4-13 注入材の配合例

普通ポルトランドセメント W/C 混和剤(ACK-1)

1,255kg 48% C×1.0%

図 4-17 空隙充填・地盤注入状況

自穿孔グラウチングボルトによる注入は、空隙充填工と地盤注入工を同じボルト中空か

ら、1工程により施工をおこなう。

(1)注入材はセメント系固化材を標準として使用する。

(2)充填速度は 10L/min を標準とする。

(3)注入は、のり面下部から上部方向へ、また、のり面端部から中央部方向へ行うこと

を原則とする。

(4)注入完了後、グラウチングボルトの頭部はモルタルで間詰めする。

注入材

パッカーにより閉鎖

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(2)セメント系固化材は、圧力を加え過ぎると吹付け面浮き上がりや注入材の脱水による

ホース閉塞などが懸念されるため、注入に際しては標準注入速度を 10L/min とした。

充填完了は、他の注入孔からの流出か、パッカーに取り付けた圧力計で 0.3MPa を上

限に管理する。

(3)空隙充填・地盤注入工は注入材の流れ方向の閉塞を行いつつ、空隙の確実な注入を行

う。注入の順序は下部から上部方向、端部から中央方向に行ない、圧力は地山に変状

が出ない程度とする。充填完了は、他の注入孔からの流出か、パッカーに取り付けた

圧力計で 0.3MPa を上限に管理する。各注入孔には孔番を付け注入順序などを記録す

る。

(4)自穿孔グラウチングボルトの頭部は硬練りモルタルで被覆することを標準とする。頭

部処理は、注入工に残留した雨水やブリージング水等を除去し、増厚モルタル面と同

一となるよう間詰もルタルによる仕上げを行う。

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4-6 タイプ5施工手順

標準的な施工フローを下図に示す。

完成

頭部処理工

のり面水洗清掃工

ラス張工

2重管自穿孔削孔工

ボルト加圧注入工

カップルボルト工

注入孔穿孔工

水抜きパイプ設置工

増厚工

空隙充填注入工

4-3-1と同様

4-3-2と同様

4-3-7と同様

4-3-5と同様

4-3-8と同様

4-3-9と同様

4-3-6と同様

間詰モルタル

標準断面図 S=1/15

既設吹付モルタル

背面空隙

増厚工 t=70mm

(短繊維混入モルタル吹付)

2重管自穿孔ロックボルト

水抜きパイプ(VP50)

1箇所/2~4m2

カップルボルト

2個/m2

空隙充填孔(VP-30)

1箇所/4.5m2

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【解説】

2重管自穿孔ロックボルトの削孔は,クレーン式ドリルまたは単管足場を架設しての軽量

型ボーリングマシンにより行うことを標準とする。

現場条件などにより標準的な手順で施工が行えないと判断される場合は、施工計画の変更

を行い適切な手順で施工を行わなければならない。のり面調査結果をもとにのり面勾配 1:

0.3 以下の急なのり面ではラス張りを併用する。なお、のり面水洗清掃工、ラス張工、カッ

プルボルト工、注入工穿孔工、水抜きパイプ設置工、増厚工、空隙充填工の施工は、タイプ

2と同じであり、4-3 章を参照すること。

4-6-1 2重管自穿孔削孔工

【解説】

崩壊しやすい表層 1.5m 程度は先導外管を併用して削孔を行い、その先は所定の深さまで

ボルトを追い打ちする。ロックボルト材の諸元については、3-7-5 2重管自穿孔ロック

ボルトの構造 を参照。

(1)先導外管を併用した削孔

SP29 ボルトに先導外管を沿わせて打設する。ロストビット径はφ65 とし、先導外管

は表 4-13 のサイズを標準として使用する。

表 4-13 先導外管仕様

図 4-18 先導外管併用削孔

形状寸法 全長 材質

φ63.5×5.0t 1,500mm STKM13A

2重管自穿孔ロックボルトの削孔は、先導外管を併用し部分二重管削孔方式で施工を行う。

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(2)ボルト追打ち

1.5m まで打設したのち、削孔機のクランプで先導外管を固定し、逆回転させてスイ

ベルを外管から外す。ドリフターを後退させて SP29 ボルトに後続ボルトをカップ

ラーで接続し所定の深度まで削孔を行い孔内洗浄を実施する。

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4-6-2 ボルト加圧注入工

【解説】

(1)注入材の配合例を表 4-14 に示す。

表 4-14 注入材の配合例

普通ポルトランドセメント W/C 混和剤(ACK-1)

1,255kg 48% 1.0%

(2)ロッド注入工は、ビット先端と先導外管先端の二方向から加圧注入を行う。

①注入用アダプターをボルトに取り付けセメントミルクを注入し、外管口元からオー

バーフローを確認する。

②オーバーフローバルブを閉じて P1(ロッド先端)より加圧注入を行う。

③切替バルブを操作し、P2(先導外管先端)より加圧注入を行う。

④注入終了後先導外管を引き抜く。

図 4-19 注入工概要図

ボルト加圧注入工はロックボルト周辺の地山を強化する目的で行う。

(1)注入材はセメント系固化材を標準として使用する。

(2)加圧注入工は、二方向加圧注入により所定の量を注入する。

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4-6-3 頭部処理工

【解説】

2重管自穿孔ロックボルトの頭部は、増厚工完了後通常のロックボルトと同様にヘッド

キャップを取り付け防錆油で充填する。

図 4-20 2重管自穿孔ロックボルトの頭部処理

2重管自穿孔ロックボルトの頭部は、防錆油を充填したヘッドキャップで処理すること

を標準とする。

防錆剤

Oリング

ヘッドキャップ

プレート

(既設吹付け)(新設吹付け)

?65mm,SPビット

セントライザー

カップラー SPソイルネイル

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第 5章 施工管理項目

出来形および品質管理項目の例を表5-1および表5-2に示す。

表5-1 出来形管理(例)

工 種 出 来 形 管 理 基 準

適 用 項 目 基 準

グラウチング

ボルト工

削孔長 設計長以上 全本数

削孔角度 ±2.5° 全本数

グラウチングボルト打設間隔 ±100mm 200 ㎡/1 箇所

テーパーコーン引抜き長 40mm以上 全本数

増厚工

厚さ 標準仕様書に準拠

施工延長 標準仕様書に準拠

のり長 標準仕様書に準拠

注入工 空隙充填・地盤注入量 実 績 流量計使用

表5-2 品質管理(例)

工 種 項 目 管理方法 規格値 備 考

材 料 規格・寸法 品質証明書

増厚工

細骨材 砂の表面水率 JIS A 1111

モルタル

圧縮強度試験 JIS A 1107

JIS A1108

設計基準強度

18N/mm2

塩化物

含有量試験

コンクリート中の

塩化物総量規制 実施要領

0.3㎏/m3以下

注入工 グラウト 圧縮強度試験

土木学会基準

(F-11)

設計基準強度

24N/mm2

フロー試験 JIS R 5201 試験値±3 秒

施工管理項目は、出来形管理および品質管理を実施する。

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第 6章 維持管理

6-1 維持管理

【解説】

豪雨などの異常気象あるいは地震が発生した場合に点検を行う目的は、施工された対象法

面が供用期間中その機能を十分に果たしているかどうかを確認し、必要な処置について検討

することにある。以下にその流れを示す。施工直後および供用中の、のり面の状態変化を把

握することが重要である。

図 6-1 維持管理の流れ

補修・補強されたモルタル吹付け面および周辺の地盤は、責任技術者が定期的に点検を

行うことが必要である。豪雨などの異常気象あるいは地震が発生した場合は、必要に応じ

速やかに点検を行う。

日常点検 臨時点検 定期点検

詳細調査の必要性

点検事項点検事項点検事項点検事項

・モルタル吹付面の変位・変状

・周辺地盤の変位・変状

・湧水

・その他

Yes

対策工の必要性

詳細調査

対策工

No

Yes

No

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6-2 点検などの項目および方法

【解説】

補修・補強された吹付けモルタル面の点検方法は、主として目視による点検によるが、異

常が認められた場合、必要に応じ計測などを併用することが望ましい。構造物の目視による

定期点検の項目及び手法を表 6-1 に示す。

表 6-1 モルタル吹付け面における点検の項目および手法

対 象 点検項目 点検手法 点検頻度

日 常 定 期

モルタル面

ひびわれ、剥離 目視、測量 ○ ○

せり出し 目視 ○ ○

空 洞 目視、寸法計測 ○

洗 掘 目視 ○ ○

周辺地盤 変形、沈下 目視、測量 ○

亀裂、ひび割れ 目視、寸法計測 ○

その他

排水、洗掘 目視 ○ ○

湧 水 目視 ○

周辺構造物 目視、測量 ○

日常点検 … 車両等から視認可能な範囲を目視で点検するもので、変状の早期発見を目的とした

ものである。

定期点検 … 徒歩にてのり面・構造物に可能な限り接近して、できる限り細部にわたり点検する もの。

(1)モルタル吹付け面

一般的なモルタル吹付け面において発生する現象とその要因は、1-1 目的 で述べ

たとおり複数の要因からなるため、その原因の特定は難しいのが現状である。モルタ

ル吹付け面における保護工自体の変位・変状については一般に部分的であったり、放

置してもさしあたりは安定している場合が多い。このような場合には、対象のり面の

重要性や規模に応じ、点検頻度を別途定めることが望ましい。

(2)周辺地盤

モルタル吹付け面自体の変状に対し、周辺地盤の変位・変状はのり面自体の崩壊につ

ながる恐れがあることが多いため、十分に調査を行うことが必要である。

(3)その他

のり面あるいはのり面構造物の破壊は表面水及び地下水の処理不良に起因することが

多い。このため日常的に排水施設を良好な状態に維持しなければならない。

補修・補強された吹付けモルタル面に必要な点検項目や方法は、責任技術者が適宜定める。

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6-3 点検などの期間と頻度

【解説】

一般的にモルタル吹付面は、気候などの影響を受けることが多く、供用期間中は継続して

行う事が望ましい。頻度については以下の条件を検討し、責任技術者がこれを定めるものと

する。

(1)家屋、道路、鉄道など保全対象物の有無とその重要性

(2)地下水の有無

6-4 点検記録と保存

【解説】

(1)施工方法、作業工程、作業内容、地盤の条件、試験結果などの工事記録は、施工され

た法面において維持管理のための重要な資料となる。

(2)点検等の維持管理記録の項目については 2-1 調査一般 に解説されている内容を

参考にして整理、保存するものとする。点検記録に関しては責任技術者が供用期間中

保存する。

(1)維持管理においては、施工方法、地盤の状況、試験結果などを把握し記録しておく。

(2)点検・観測・計測および補修などの維持管理記録は、責任技術者が供用期間中保存

するのが望ましい。

維持管理に必要な点検は、供用期間中継続して行うことが望ましい。その頻度は補修・

補強の目的、周辺の状況、環境条件などを考慮し、責任技術者がこれを定める。

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引用・参考文献

1)社団法人 全国特定法面保護協会

のり枠工の設計・施工指針(改定版) 平成 18 年 11 月改定 2)日本道路公団 試験研究所

切土のり面コンクリート吹付の点検・補修に関する技術資料 平成 6 年 3 月 3)社団法人 鋼材倶楽部 SFRC 構造設計施工研究会 4)社団法人 鋼材倶楽部 SFRC 構造設計施工研究会 編

鋼繊維コンクリート設計施工マニュアル(法面保護工編) 5)財団法人 砂防・地すべり技術センター

建設技術審査証明(砂防技術)報告書「ロービングウォール工法」平成 20 年 9 月 6)社団法人 日本道路協会

道路土工 のり面工・斜面安定工指針 平成 21 年 3 月 7)社団法人 土木学会

2007 制定 コンクリート標準示方書 8)社団法人 地盤工学会

グラウンドアンカー設計・施工基準,同解説(JGS4101-2000) 9)ユニラップ工法研究会

ユニラップ工法技術資料 平成 19 年 7 月 10)財団法人 建設物価調査会

国土交通省 土木工事積算基準 平成 22 年度版 11)財団法人 建設物価調査会

土木工事積算基準マニュアル 平成 22 年度版

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巻 末 資 料

参考資料1 グラウチングボルトの引張試験結果

1.特殊アンカーの効果

特殊アンカーは、アンカーの拡径支圧効果とグラウトと地盤の付着力による複合効果に

より定着する。

2.試験方法

3現場で試験を行い、拡径支圧効果のみによる引抜力とグラウトを併用した場合の引抜

力を比較した。

3.試験結果

現場 地質 状 況 経過 年数 (年)

厚さ (㎝)

施工 面積

設計 注入量

実施 注入量 注入

圧力 (Mpa)

極限引抜力

㎡ 当たり

合計 合計 注入前 注入後

鹿

シラス

約2万2千年前

に噴出した入戸

火砕流で、いわゆ

る一次シラスで

ある。比較的硬質

なシラス。

20 7 180 15.0 2700 707.0 0.1 ~

0.26

25 30

21 48

17 36

分 風化 粘板岩

中生代四万十層

郡の粘板岩。粘板

岩は弱い変成作

用を受けて、片理

の発達した片岩

状をなしている。

岩盤は比較的硬

質であるが、割れ

目が発達して剥

がれやすい。

25 7 356 46.7 16625 16680.0 0.1 ~

0.15

30 55

25 40

25 35

未風化 流紋岩

新第三期に噴出

した流紋岩。岩盤

は比較的堅硬で、

割れ目も少ない。

勾配は 1:0.5。

7 1000 25.0 25000 0.1 ~

0.15

90 90

風化 流紋岩

68 90

強風化 流紋岩

57 90

注入後の極限引抜力は地盤により異なるが、38~90kN 程度であることが試験により確認

できた。

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参考資料2 増厚工に用いるモルタルへの繊維混入による性能向上について

○曲げ靱性試験による強度特性の確認

のリフレッシュ工法の増厚工では、吹付厚さの低減やラス金網の省略を目的としてモルタ

ルに繊維を混入している。繊維を混入することによって、曲げ靱性が向上することがこれま

で明らかになっているが、モルタル吹付機で実際に吹き付けた供試体で試験した事例がほと

んどない。そこで、ポリプロピレン繊維(のりファイバー)およびビニロン繊維を混入した

モルタル供試体を現場で作成し、曲げ靱性試験(JSCE-G 552-1999)を実施した。

写真 1 供試体作成状況 写真 2 曲げ靱性試験状況

○試験結果

図 1 に試験結果の一例を示す。繊維を混入するとクラック前の曲げ強度には変化がないが、

クラック後の曲げ強度は向上している。また、曲げ靱性係数は、たわみ 2mm までの荷重と

の面積で求められるが、繊維を混入することによって曲げ靱性が大幅に向上している。表 1

に試験結果を取りまとめたが、繊維混入量が多いものほどクラック後の曲げ強度および曲げ

靱性が向上していることが分かる。

0

5

10

15

20

0 0.5 1 1.5 2

1 試験結果の一例

0

5

10

15

20

0 0.5 1 1.5 2

たわみ(mm)

荷重(kN)

たわみ(mm)

荷重(kN)

クラック前の曲げ荷重

クラック後の曲げ荷重

繊維無し(ラス金網)

ポリプロピレン繊維1%/Vol

ビニロン繊維 0-75%/Vol

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○必要吹付厚さの算出

土木学会編「鋼繊維補強コンクリート設計施工指針(案)」より、許容曲げ応力度は以下

の式1)により算出し、値の小さい方を許容曲げ応力度として採用する。

ただし、コンクリートの曲げ強度は、クラック前の最大値ではなく、ラス金網の効果が発

揮されているクラック後の最大値より求めた。

σba=σbk/4 または、σba=σb/4 … 1)

σba:コンクリートの許容曲げ応力度

σbk:コンクリートの曲げ強度

σb :コンクリートの曲げ靱性係数

吹付厚さ t における許容最大曲げモーメントは以下の式2)により求める。

M=σba・Z=σba・bt2/6 … 2)

M :許容最大曲げモーメント

σba:コンクリートの許容曲げ応力度

Z :断面係数(Z = bt2/6)

繊維混入無し(ラス金網含む)の試験から得られた許容曲げ応力度を用い、モルタル吹付

厚 10cm とした場合に求められる許容曲げモーメントを満足する繊維混入吹付の厚みを算出

した(表 1)。

試験結果から、のリフレシュ工法の増厚工に用いる繊維混入モルタル吹付では、ポリプロ

ピレン繊維(のりファイバー)、ビニロン繊維ともに 0.75%以上混入することより、ラス金

網を省略し、さらに、吹付厚さを 7cm にすることができる。

また、ポリプロピレン繊維の比重は、ビニロン繊維の比重より小さいことから単位セメン

ト量に対する混入量が小さいポリプロピレン繊維(のりファイバー)を本工法の標準とした。

σb

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表 1 曲げ靱性試験結果および必要吹付厚さ

試験器の示す

最大荷重(N)

曲げ強度

(N/mm2)

曲げじん性係数

(N/mm2)

曲げ強度/4

(N/mm2)

曲げじん性/2

(N/mm2)

許容曲げ応力度

(N/mm2)

許容最大モーメント

(N・m)

必要吹付厚さ

(mm)

2812.2 0.84 1.26 0.21 0.63

3204.6 0.96 1.29 0.24 0.64

10594.8 3.18 2.97 0.79 1.48

11183.4 3.36 3.19 0.84 1.60

11445 3.43 3.22 0.86 1.61

7586.4 2.28 2.27 0.57 1.14

7455.6 2.24 2.31 0.56 1.15

7978.8 2.39 2.46 0.60 1.23

7324.8 2.20 2.11 0.55 1.05

7651.8 2.30 2.04 0.57 1.02

5755.2 1.73 2.01 0.43 1.00

9156 2.75 1.81 0.69 0.90

8436.6 2.53 1.86 0.63 0.93

8502 2.55 2.02 0.64 1.01

4251 1.28 1.01 0.32 0.50

4643.4 1.39 1.21 0.35 0.60

6016.8 1.81 1.19 0.45 0.59

3270 0.98 1.22 0.25 0.61

2027.4 0.61 1.13 0.15 0.56

1635 0.49 1.21 0.12 0.60

ブランク(ラス金網含む)

ポリプロピ

レン繊維

1.00%

0.75%

0.50%

ビニロン繊維

0.75%

0.50%

58.8

77.8

114.10.25%

-

0.65

0.37

0.17

-

-

-

37605 100

- 52.1

-

クラック後

0.23

0.83

0.58

0.52

62.6

66.0

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参考資料3 対策事例