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141201PN-D-6 高強度ネット斜面安定工 パワーネット工法 設計・施工マニュアル 平成2612

パワーネット工法141201PN-D-6 - 3 - 2. 用語の説明 2.1 パワーネット工法の材料用語 (1) 高強度ネット 高強度ネットとは,高強度の硬鋼線を母材とする耐久性に優れたネット材のことをいう。

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141201PN-D-6

高強度ネット斜面安定工

パワーネット工法

設計・施工マニュアル

平成26年12月

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目 次

1. 工法概要 ··································································································· 1 2. 用語の説明 ································································································ 3

2.1 パワーネット工法の材料用語 ···································································· 3 2.2 設計の用語 ··························································································· 5

3. 本工法の適用範囲 ······················································································· 6 4. 構造および部材 ·························································································· 7

4.1 標準構造例 ··························································································· 7 4.2 主要部材 ······························································································ 8 4.3 防食 ···································································································· 13

5. パワーネット工法の設計 ·············································································· 14

5.1 設計の基本事項 ····················································································· 14 5.1.1 設計フロー ······················································································ 14 5.1.2 高強度ネットの設計値 ······································································· 16 5.1.3 ネイルの最小長さ ············································································· 16

5.2 設計方法 ······························································································ 17 5.2.1 斜面の安定計算 ················································································ 17 5.2.2 必要抑止力の算定 ············································································· 17 5.2.3 ネイル間隔の設定 ············································································· 18 5.2.4 ネイル打設角度の設定 ······································································· 18 5.2.5 すべり土塊に対する検討 ···································································· 19 5.2.6 ネイル間の中抜け(局部的な)崩壊に対する検討 ···································· 22 5.2.7 ネイル長さ・ネイル材の検討 ······························································ 28 5.2.8 対策後のすべり面安定照査 ································································· 32 5.2.9 設計の適合性判断 ············································································· 33 5.2.10 ネイルを含む外的な安定性の検討 ························································ 33

6. パワーネット工法の施工 ·············································································· 34

6.1 パワーネット工法専用部材の諸元 ······························································ 34 6.1.1 高強度ネット ··················································································· 34 6.1.2 接続金具 ························································································· 38 6.1.3 支圧プレート(スパイクプレート) ····················································· 39 6.1.4 ワイヤロープアンカー ······································································· 40

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6.2 ネイルおよび関連部材の諸元 ···································································· 41 6.3 パワーネット工法の施工手順 ···································································· 42

6.3.1 標準施工フロー ················································································ 42 6.3.2 施工手順 ························································································· 43 6.3.3 立木周辺処理例 ················································································ 45 6.3.4 引抜き試験(受入れ試験) ································································· 46

6.4 パワーネット工法の施工に関する管理基準 ·················································· 48 6.4.1 パワーネット工法の出来形管理基準 ····················································· 48 6.4.2 パワーネット工法の品質管理基準 ························································ 49 6.4.3 パワーネット工法の写真管理基準 ························································ 52

参考資料① ネイルのせん断抵抗力を考慮したすべり土塊の安定性照査 ······················ 53 参考資料② 設計計算例 ···················································································· 57

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1. 工法概要

パワーネット工法は,高強度の素線を編んだTECCOネット,または,SPIDERネット(以

下,これら2種類のネットを総称して高強度ネットとよぶ),全ねじ異形棒鋼のネイル(以

下ネイルとよぶ),スパイクプレートなどを連結・組み合わせた柔構造を特長とし,表層

崩壊や落石に対して有効な工法である。

図-1.1 パワーネット工法の基本構造

本工法の基本技術は,次の通りである。

① ネイル頭部のナットによりスパイクプレートに締付け力を付加することで,ネイルと

その周辺部の高強度ネットから不安定な表層へ押し付ける力(以下「押し付け力」)

を与える。 ② 上記の押し付け力により,表層の緩みの進展が抑制され表層の安定性が向上する。 ③ 多数のネイルによって,すべり土塊は不動地山へ固定される。 ④ ネイル間における土砂の中抜け現象を高強度ネットの引張り抵抗により防止し,地山

全体の安定度を確保する。

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本工法では、図―1.2に示すように、斜面表層全体が一体となってすべり出すいわゆる全体

すべりのモード(左)と,ネイル間の小さい範囲に生じる土砂の中抜けに相当する局部的

な崩壊モード(右)のそれぞれについて安全性を照査する設計手法を採用している。

図-1.2 表層のすべり土塊(左)と局部的崩壊(右)に対するモデル化と防護工

また,図-1.3に本工法による斜面安定化の考え方を示す。 締付け力Vは,ネイルを反力体としてプレート,ネットによりすべり土塊の表面を押し

つける力として作用し,高強度ネットを介してすべり土塊全体を拘束する。 拘束されたすべり土塊は,すべり面を支圧する効果を発生させ,多数のネイルによっ

て不動地山へ固定される。

δV

θ

α

締付け力すべり面

高強度ネット

すべり層

ネイル

締付け力による

すべり土塊の拘束

支圧力の効果

W・sinα W・cosα

V・cos(δ+α)+V・sin(δ+α)・tanφ

すべりに対する抵抗力

地山の抵抗力

すべり土塊の重量:W

図-1.3 パワーネット工法による斜面安定の考え方

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2. 用語の説明 2.1 パワーネット工法の材料用語 (1) 高強度ネット 高強度ネットとは,高強度の硬鋼線を母材とする耐久性に優れたネット材のことをいう。 これには,ひし型金網(TECCOネット)タイプと,より線ひし型網(SPIDERネット)

タイプとがある。これら2種類のネットを本書では総称して高強度ネットとよぶ。 (2) ネイル

ネイルとは不動地山に鋼棒を埋設・定着させ,高強度ネットを頭部付近で固定する部材

である。補強土でいう芯材に相当する。一般的な補強材と識別するために本工法では「ネ

イル」とよぶ。また,ネイルに使用する全ネジ異形棒鋼等を「ネイル材」とよぶ。 (3) ヘッドナット ヘッドナットとは,ネイル頭部に取り付けて締付け,スパイクプレートを介して高強度

ネットを地表面に押しつけ,押し込み,固定する部品をいう。ネイルの締付け力はヘッド

ナットを締め込むことで作用させる。 (4) スパイクプレート スパイクプレートとは,ネイルに高強度ネットを押し込み,固定する鉄製板状部品のこ

とをいう。高強度ネットに作用する引張り力やプレートの押し抜きによるせん断力に対し

抵抗できる強度をもつとともに,高強度ネット固定を確実なものにするためプレート両端

がスパイク(つめ形状のものが付いている)形となっている。 (5) グラウンドマット グラウンドマットとは,ネイルの削孔に伴い緩められた周辺地山の侵食防止を目的に敷

設する被覆材をいう。スパイクプレートの下部に敷き,孔口のキャッピング機能を併せも

つ。地表面の侵食防止が目的なので,岩盤斜面ではほとんどの場合に不要である。 (6) スペーサ スペーサとは,ネイルと孔壁の間に,グラウトを充填する空間を確保し,ネイルが孔壁

と接しないようにネイル材に取り付ける部材のことをいう。 (7) グラウト グラウトとは,ネイルを不動地山に定着させるセメントミルクのことをいう。 (8) T3クリップ T3クリップとは,,TECCOネット用の接続専用金具のことをいう。 (9) シャックル

シャックルとは,SPIDERネット相互の接続に用いられる部材をいう。通常の接続では,

7/16"のものが用いられる。 (10) 周縁補強ロープ

周縁補強ロープとは,高強度ネットを斜面に配置するときに敷設部分の周辺に必要によ

り設けられるワイヤロープのことをいう。 斜面の凹凸が著しい場合等に高強度ネットが斜面表面から浮いたり離れたりすること

により,ネットの拘束効果が消失することを防ぐことを目的として設けるものである。

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(11) ワイヤロープアンカー ワイヤロープアンカーとは,ワイヤロープをUターン状に折り曲げた構造からなるアン

カー部材をいう。主に,岩の露頭があり,斜面に凹凸がある場合等に用いられるSPIDERネットの周縁補強ロープの取付け用として打設される。

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2.2 設計の用語 (1) すべり面

すべり面とは,すべろうとする土塊や岩塊と不動地山との境界面をいう。設計計算の中

では,二次元表示断面における単位幅を考え安定検討を行う。 (2) すべり土塊 すべり土塊とは,すべり面より上部にあり,崩壊あるいは移動しうる土のブロック(塊)

をいう。 (3) 不動地山 不動地山とは,すべり面より下方のすべりが生じても動かない地山部分をいう。 (4) 斜面の安全率 斜面の安全率とは,斜面のすべり崩壊に対する安定性の程度を示す尺度をいう。 一般には、「安全率=すべり抵抗力/滑動力」で表される。 (5) 計画安全率 計画安全率とは、斜面の安定を高めるためのすべり安全率に対する定量的な目標値をい

う。 (6) 締付け力

締付け力とは,ネイル頭部付近において高強度ネットと地山の一体化を図るために,ネ

イル頭部のナット(ヘッドナット)によりスパイクプレートを予め締付ける力をいう。 (7) ピット

ピットとは,スパイクプレート設置位置周囲の地山において人為的に形成する凹み(く

ぼみ)をいう。斜面の地形変化によって,ネットに極端なゆるみ発生が懸念される場合等

に形成する。 標準施工フローに示す「ピット掘削」とは,人為的に凹みを形成する工程をいう。

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3. 本工法の適用範囲 本工法は,斜面崩壊対策に用いる場合と斜面の急勾配掘削に伴う安定化対策に用いる場

合,不安定岩塊の安定化対策に用いる場合がある。本工法を用いる場合の適用地盤として

は,土砂(砂,砂礫,砂質土)軟岩(風化岩,土丹)硬岩(亀裂性岩盤)があり,斜面安

定化対策に用いる場合は,崩壊長さが30m以下の小~中規模表層崩壊の発生が想定される場

合への適用を標準とする。

また,締付け力による支圧効果が確実に得られる崩壊深さを考慮し,本工法における崩

壊深さの適用範囲は1.5m以下を標準とする。(図-3.1参照)。 なお,不動地山が硬質な岩層等であり,すべり土塊または岩塊がブロック化しているよ

うな条件下においては,ネイルがせん断抵抗部材として機能することになる。この場合の

ネイルせん断抵抗力を考慮した照査法を,巻末に参考資料として付記するが,一般的な斜

面には,この照査を実施する必要はない。

図-3.1 崩壊深さ

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4. 構造および部材 4.1 標準構造例 パワーネット工法の標準構造例を図-4.1に示す。 ここでは,使用する2種類の高強度ネットのうち,TECCOネットで設計した場合の構造

を示す。

図-4.1 パワーネット工法の標準構造図例 (TECCOネットを高強度ネット部材とした場合の図面)

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4.2 主要部材 ここでは,高強度ネットのネット形状,関連部材,およびネット接続方法の例を示す。

(1) TECCOネット (a) ネット形状

図-4.2にTECCOネットの形状を示す。 143

30000

3500

83

3

15

9

ねじり加工

図-4.2 TECCOネットの形状

(b) ネットの接続方法例(T3クリップで隣接ネットを接続) TECCOネット縦・横の接続はネット接続金具を用いる。縦方向は、ネットをラップさせ

ずに交点同士を接続し,横方向はネットを1メッシュ以上ラップさせるものとする。

図-4.3 T3クリップの形状 図-4.4 TECCOネットの接続例

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(c) スパイクプレート TECCOネットの敷設に使用するスパイクプレートは,スパイク部分の長さが異なる2種

類のプレートがある。 P33/40S スパイク長:28mm P33/40R スパイク長:15mm

土砂地盤,砂礫地盤に敷設する場合は,標準としてP33/40Sを選択する。但し,敷設位

置が硬質地盤等の場合には,P33/40Rも選択可能である。 なお,スパイクプレートの敷設地盤が岩盤の場合には,P33/40S,P33/40Rの双方が選

択可能であるが,平滑な岩盤の場合には,P33/40Rを選択する。 図-4.5にスパイクプレートの形状を示す。

図-4.5 スパイクプレートの形状

(2) SPIDERネット (a) ネット形状

SPIDERネットは,必要強度,及び安定化させたい岩塊形状,斜面形状等に応じて3つの

ネットを選定することができる。 SPIDER S3-130(標準タイプ:公称引張強度 220kN/m) SPIDER S4-130(高強度タイプ:公称引張強度 360kN/m) SPIDER S4-230(準標準タイプ:公称引張強度 220kN/m) ※平成27年度より,標準タイプはSPIDER S3-130に統一する予定。 図-4.6にSPIDERネットの形状を示す。 なお、各ネットの諸元については,後に示す「6. パワーネットの施工」に詳細を記す。

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500

292

8.6

20000

3500

図-4.6.1 SPIDER S4-230ネットの形状および線材近影

S4-130:素線φ4mm×3

S3-130:素線φ3mm×3

図-4.6.2 SPIDER S4-130ネットおよびS3-130ネットの形状

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(b) ネットの接続方法(シャックルで隣接ネットを接続)

( )寸法はS3

図-4.7 SPIDER S3,S4ネット接続の例

(c) スパイクプレート SPIDER S3,S4ネットの敷設に使用するスパイクプレートは,P33/40Sを用いる。 (d) ネット端部における取付けの例 図―4.8に, ,端部の取付けとして, 周縁補強ロープとSPIDER S3,S4ネットとの接続例を

示す。

( )寸法はS3

図-4.8 SPIDER S3,S4ネット端部の例(参考図)

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(3) 高強度ネット(TECCO, SPIDER S3,S4ネット)の敷設例

図―4.9に, 斜面に敷設する際のネット接続例を示す。

図-4.9 高強度ネットの敷設例(参考図)

ロール状に巻かれたネットを展開,広げた後,隣接するネット相互の接続は,ネット接続

具(TECCOネットの場合はT3クリップ,SPIDERネットの場合はシャックル)により行う。 ネット面外周部には,必要により周縁補強ロープを配置する。周縁補強ロープを用いる

場合,周縁補強ロープの交差するネット端にはワイヤロープアンカー等,当該ロープを固

定する部材が必要となる。

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4.3 防食 TECCOネットは,亜鉛アルミ合金めっきと飽和ポリエステル(PET)による二重防食,

SPIDERネットは亜鉛アルミ合金めっきによる高い防錆処理が施され,防食性をより高め

た部材である。 以下に、防食構造を示す。

図-4.10 TECCOネットの二重防食構造(めっき量60g/㎡以上)

図-4.11 SPIDERネットの防食構造(めっき量150g/㎡以上)

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5. パワーネット工法の設計 5.1 設計の基本事項 5.1.1 設計フロー

図-5.1(1) 設計フローチャート

YES

NO

5.2.6 ネイル間の中抜け崩壊に対する検討

5.2.1 斜面の安定計算

5.2.2 必要抑止力の算定

終 了

5.2.8 対策後のすべり面安定照査

5.2.3 ネイル間隔の設定

適合性判断

5.2.7 ネイル長さの検討

5.2.5 すべり土塊に対する検討

開 始

PⅡセクション (次頁参照)

PⅠセクション (次頁参照)

5.2.4 使用ネイルおよび打設角度の設定

ネイルを含む外的な安定性の検討

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図-5.1(2) 設計フローチャート(PⅠセクション詳細)

図-5.1(3) 設計フローチャート(PⅡセクション詳細)

PⅡセクション詳細

(1) 斜面平行に作用するネット引張力の設定

ネットの押し抜き力の算定

(2) 局部的崩壊モデルA (3) 局部的崩壊モデルB

最大押し抜き力の確定

(4) 局部的崩壊によるネット下部の押し抜きせ

ん断に対する安全性照査

PⅠセクション詳細

※せん断照査は,ネイルせん断抵抗を考

慮する地盤条件の場合を除き,一般的

には実施しない。

すべりに対するネイルせ

ん断力照査

b) ネットの安全性照査

(3) 不動地山へのネイル

定着荷重(設計荷重)の

確定

a) ブロックの安定条件

b) 複合荷重に対してのネ

イル断面の安全性照査

不動地山へのネイル定着

荷重(設計荷重)の確定

a) 土ブロックの安定条件

(2) すべりに対する高強

度ネットの抵抗力照査

(1) 締付け力の設定

ネイルせん断抵抗

の照査が必要か? YES(巻末資料参照)

NO

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5.1.2 高強度ネットの設計値

パワーネット工法に用いる高強度ネットの強度物性値(DR,PR,および,ZR)は,下記

のとおりとする。なお、当設計値は,スパイクプレート1箇所当たりの値となる。また,

強度試験は、ドイツの建設資材の公的な試験機関(LGA)により行われたものであり,そ

の結果を表-5.1に示す。

DR: 高強度ネットの押し抜きせん断抵抗力 180(kN) PR: 高強度ネット下部の押し抜きせん断抵抗力 90(kN)

(中抜け崩壊の検討に使うブロックの下部ネイル近傍のスパイクプレートの高

強度ネット押し抜きせん断抵抗は 上記 DRの1/2の値を採用する) ZR: 高強度ネット平行引張抵抗力 30(kN)

(中抜け崩壊の検討に使う高強度ネットのブロック上段のネイルにかかる斜面

平行の引張抵抗) 表-5.1 LGA試験結果とネット強度設定値

LGA試験結果 ネット強度設定値

DR 306 (kN) 180(kN)

ZR 48.3(kN) 30(kN)

なお, 上記の設定値は,TECCOネットに対する試験値から設定されたものであり、 SPIDER S4ネットの場合は,単位幅当りの単純引張強度(ネットメッシュの長軸方向) は,下記の(参考)に示すようにTECCOネットのそれより大きい。

しかしSPIDER S4ネットについても、現段階では安全側に、上記の強度値共通の設計値

として用いることとする。 (参考) ※単純引張強度 TECCOネット 150kN/m,SPIDERネット220kN/m (1.47倍) 単純引張強度とは,ネット面に対し平行方向に,概ね均等に引張力を作用させる破壊試

験により得られた強度をいう。

5.1.3 ネイルの最小長さ ネイルの最小長さは, 以下を標準とする。 1) 不動地山に対するネイルの定着長の最小長さを1.0mとする。 2) ネイル長は0.5m単位で設定し,全長の最小長さを2.0mとする。

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5.2 設計方法 パワーネット工法の設計では,想定するすべり崩壊のモデルについて,

① 斜面表層全体のすべり, ② ネイル間の局部的な中抜けの崩壊,

のそれぞれについて安全性の検討を行い,最適なネイル間隔および仕様を決めることとし,

これらを配置した対策後の斜面全体の安定計算を行い,計画安全率を確保できるようにす

る。 5.2.1 斜面の安定計算 斜面の安全率は,式(5.1)で算定される。

ii

iiiii

WCW

φα

sin)tancos(

(5.1)

ここに,F:斜面のすべり安全率 Wi:すべり土塊の重量 α i:すべり面の角度 φ i:すべり面の内部摩擦角 Ci:すべり面の粘着力 i:すべり面の長さ

5.2.2 必要抑止力の算定 必要抑止力は,式(5.2)で算定される。 ・単位幅当り

iiiiiiiS CtancosWsinWFP φα (5.2)

・単位面積当り

sr

PP (5.3)

ここに,Fs:計画安全率 Wi:すべり土塊の重量 α i:すべり面の角度 φ i:すべり面の内部摩擦角 Ci:すべり面の粘着力 i:すべり面の長さ s:斜面長

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5.2.3 ネイル間隔の設定 ネイル配置は,図-5.2に示すように千鳥配置を標準とする。ただし,のり面形状,その

他の制約により格子点配置にすることもある。 また,ネイル間隔は次図a,b の長さを1.0~2.5mとする。この数値は、過去の実績から

定めたものであり,地盤条件,モデル設定などについて,より詳細な調査や検討が行われ

る場合には,この限りでない。 a

図-5.2 ネイル間隔および配置

5.2.4 ネイル打設角度の設定 ネイルの設計打設角度δは,想定するすべり線に対して直交するように計画することを

基本とする。 自然斜面ではすべりのモデル化が困難なことから、下図のような平行すべりを仮定し,

斜面に対して直角に計画されることが多い。実務的には,直交から+15゚(伏角が浅くな

る方向)の範囲で計画するとよい。

tb

δ

θ

α この角度は

直角~+15°

が望ましい

90゚

図-5.3 ネイル打設角度の条件

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5.2.5 すべり土塊に対する検討 a

図-5.4 すべり土塊に対する検討範囲

(1) 締付け力の設定 締付け力(V)は,ネイル頭部付近において高強度ネットと地山との一体化を図るため,

ネイル頭部のヘッドナットによりスパイクプレートを予め締め付ける力をいう。 締付け力(V)の作用は,図-5.4に示すすべり土塊をa×bの範囲(以下ブロックとよぶ)

で影響するものと考えるが,実効締付け力は不確実性要素などを考慮し,表5-2の目安値に

低減係数 γVdを乗じた値を用いる。

Vdd VV γ (5.4)

ここに,Vd:実効締付け力(kN) V:締付け力(kN) γVd:締付け力低減係数(0.7)

なお,表層地盤の性状が詳細な調査により評価できる場合は,締付け力の値を別途に設

定することもできる。 ※上記低減係数0.7は,本工法に適用するスパイクプレート型式に対する設計値として使

用する。

表-5.2 締付け力の目安値

斜面表層部の地盤性状または状態 締付け力(V)の目安値

① 斜面表層が軟弱な地盤の場合 5kN

② N値50回以上の地盤または岩盤斜面の場合 30kN

③ ① ②に該当しない場合 15kN

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(2) すべりに対する高強度ネットの抵抗力照査 a) 土ブロックの安定条件

図-5.5において,すべりに対して高強度ネットの抵抗力(S)により,当該土塊ブロッ

クを安定化させる状態を考える。この場合,高強度ネットと地山が一体化した状態になっ

ていなければならない。 スパイクプレートを中心に周辺の高強度ネットから伝達される設計上の合力の大きさ

をTRdとする。土塊の微少移動に伴い受動的に作用する力は,前出の5.2.5(1)での扱いに準

じて,土塊には上記TRdに低減係数をかけた大きさのものが作用するものとする。

t

b

δ

θ

α

T Rd

S

すべり面

T Rd

すべり面に発生する抵抗力

・sin(δ+α

)・tanφ

・cos(δ+α

)

・sin(α

+δ)

Rd

Rd

すべりの引止め効果

Rd

(100%

すべり面に作用する場合)

図-5.5 ネット余耐力の作用方向とすべり抑止効果

① すべりに対する抵抗力(ブロック当り)の算定 低減係数を用いて算定したすべりに対する抵抗力は,次のとおりである。

φδ+αγδ+αγ tan)sin()cos( RdRdRdRd TTS (5.5)

ここに,TRd:高強度ネットおよびスパイクプレートから地山に伝達される荷重 (1ブロック当たり)

γRd:伝達荷重低減係数(=0.7) ② 必要抑止力の得られる条件

baPS r≧ (5.6)

③ 必要抑止力を得られるTRdの最小値は,式(5.5),(5.6)を考慮し次のようになる。

φδ+αδ+α・

γ tan)sin()cos(1 baPT r

RdRd (5.71)

これは、ブロック底面ですべりに対する抵抗力(S)を生じさせる高強度ネット等から

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土ブロックに作用する,ネイル1本あたりの力TRdの関係式である。 また、式(5.71)は、式(5.72)とすることができる。

n

aPTRd

Rd1

tan)sin()cos(1

・φ+αδ+αδ

・γ iiii

(5.72)

ここに,P:単位幅当たりの必要抑止力(kN/m)

a:ネイル間隔(横方向)(m) n:ネイル設置段数 δ+α:ネイルとすべり面の挟角 (°) φ:すべり面の内部摩擦角 (°) γRd:伝達荷重低減係数 (=0.7)

b) ネットの安全性照査 支圧力(TRd)と高強度ネット設計値との照査を行い,安全性を確認する。

R

RRde

DTγ

≦γ (5.8)

ここに,DR:高強度ネット押し抜きせん断抵抗力(=180kN) γe:支圧力安全係数(=1.5) γR:高強度ネット抵抗安全係数(=1.5)

式(5.8)は,ネットの押し抜きせん断抵抗力によりTRdの最大値が制限されることを示

しており,式(5.8)を満足しない場合はネイル間隔(a,b)を変更しなければならない。 (3) ネイル設計荷重 前節の取り扱いにおいて,土塊のすべりを計画安全率に保持するに必要となる高強度ネ

ット等から地山に伝達される荷重の大きさはTRdである。 ネイルの効果は地山の変形に伴って出現するもので,均等に発揮されるとは限らないた

め低減した設計荷重を用いて抵抗を算定している。よって,不動地山に伝達される力,す

なわちネイル設計荷重(T0)は、

RdTT0 (5.9)

とする。 ただし,高強度ネットおよびスパイクプレートから地山に伝達される荷重(TRd)が実効

締付け力(Vd)より小さな値となる場合には,T0=Vdとする。 式(5.15)では斜面に局部的な崩壊が生じる場合の,崩壊ブロックネット下部のネット押

し抜き抵抗の大きさPmaxについて言及している。多くの場合,Pmaxは式(5.9)のTRdよりも小

さい。したがって,式(5.9)のみで設計荷重T0を求めるようにしたが,安全を期す意味から,

この条件が成り立つことを確認しておくこととする。

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5.2.6 ネイル間の中抜け(局部的な)崩壊に対する検討 a

図-5.6 局部的な崩壊に対する検討範囲

局部的な崩壊は,図-5.6に示す横方向ネイル間の幅(a),縦方向ネイル間の長さ(2・b)の範囲で検討する。この部分を覆う高強度ネットに発生する応力度により安全性を

照査する。 高強度ネットは,ネイル頭部における締付け力(V)によりプレートを介して地山に強

く押し付けられるので,表層から深さ(t)までの範囲の地山は支圧力により拘束されてい

ると考える。地盤に伝達する作用力は円錐台状(断面では台形状)に分布し,その分布角

度はδ1で,下底の幅が広くなると考える(図-5.7)。

t

aredD

高強度ネット

δ

VV

1 1δ

図-5.7 表土の拘束領域と局部的な崩壊に対する検討範囲

安全な設計を行うため,締付け力(V)による土の拘束範囲は,プレート幅(D)の部分

とする。局部的な崩壊が発生する可能性のある幅(ared)は安全側にみて,式(5.10)で表さ

れる。

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Dtaared1tanδ (5.10)

ここで,ared:中抜け崩壊の範囲(m) a:ネイルの横方向間隔(m) t:すべり土塊の厚さ(m) δ1:台形状拘束領域の角度(°) D:スパイクプレートの幅(m)

以上より,検討の対象となる中抜け崩壊の土塊は,幅:ared,長さ:2・b の範囲となる。

この土塊が図-5.8のように,すべりの角度(β)で中抜け現象が発生した場合を考え,こ

のときの最大押し抜き力(P)と高強度ネットのネット下部の押し抜き抵抗(PR)とを照

査する。 中抜け崩壊の土塊の形態は土質によって異なるが,計算の簡略化と設計を合理的に行う

ため,ここではくさび型の崩壊に近似させる。ここで,局部すべり線のすべり角度(β)

が斜面角度(θ)から0まで変化させると,2つの崩壊形態が想定される。 ひとつは単一のくさび型すべりであり,もうひとつは台形とくさびの複合すべりとなる。

この二つの崩壊形態についてそれぞれ照査することで,最大となる押し抜き力(P)を決

定する。

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(1) 斜面平行に作用するネット引張力の設定

d

β

ネット引張力

2・b

θ

t

図-5.8 局部的な崩壊とネット引張力との関係

斜面平行方向に作用するネット引張力は,人為的に与えられるものではなく,ネイル間

の局部的な崩壊により,土塊がネットを引張ることで作用する。 このため,斜面の土質によってもその影響が異なることから、設計では,試験の値を基

に設定されたネット平行引張抵抗力(ZR)に,さらに低減係数(γZd)を乗じた値をネッ

ト設計平行引張力(Zd)として用いる。

ZdRd ZZ γ (5.11)

ここに,Zd:高強度ネット設計平行引張抵抗力(=15kN) ZR:高強度ネット平行引張抵抗力(=30kN) γZd:高強度ネット平行引張抵抗力低減係数(=0.5)

上図5-8は,斜面に生じる部分破壊ブロックに対して,高強度ネット面に垂直にP,斜面

平行にZdの2タイプの力が作用することを示している。 力の釣合式中では,ひとつの釣合式に力の変数が2つ含まれるので,一方が決まれば他

方が決定できる。 そこで,2つの力のうちの1つであるZdを先に決め,Pは簡単に確定できるようにする。 中抜けのモデルには,中抜け土塊の断面を三角形としたモデルA(図-5.9),表層土厚

さtの位置を考慮した四角形のモデルB(図-5.10)の二つを考える。

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(2) 局部的崩壊モデルA

δ

δ

θ

2・b

t

β

α(=θ)

PA

図-5.9 局部的崩壊モデルA

φδβδβ

φβθβθφββ

tan)sin()cos(tan)sin()cos()tancos(sin ACZWP d

A

(5.12) ここに,PA:ネットの押し抜き力(kN)

W:すべり土塊の重量(kN) A:すべり土塊の底面積(m2) Zd:ネット引張力(設計値) (kN) θ:斜面勾配(°) β:局部崩壊すべり面の角度(°) δ:ネイルの打設角度(°) C:すべり面の粘着力(kN/m2) φ:すべり面の内部摩擦角(°)

α:すべり面角度(°)(=θ)

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(3) 局部的崩壊モデルB

t2・b

β

δ

δ

θ

2

ブロック2

ブロック1

1

1

2

2

X1

2

W1

2

PB

α(=θ)

図-5.10 局部的崩壊モデルB

11 )tancos(sin φαα ACWX (5.13)

φδβδβ

φβθβθφββ

tan)sin()cos(tan)sin()cos()()tancos(sin 22 ACXZWP d

B

(5.14) ここに,PB:ネットの押し抜き力(kN)

W1:すべりブロック1の重量(kN) W2:すべりブロック2の重量(kN) A1:すべりブロック1の面積(m2) A2:すべりブロック2の面積(m2) Zd:ネット引張力(設計値) (kN) X:すべり土塊1の滑動力(kN) θ:斜面勾配(°) β:局部崩壊すべり面の角度(°) δ:ネイルの打設角度(°) C:すべり面の粘着力(kN/m2) φ:すべり面の内部摩擦角(°)

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α:すべり面角度(°)(=θ)

崩壊モデルA・Bの比較による高強度ネットの最大押し抜き力の確定

BA PPP ,max max    (5.15)

ここに,Pmax:局部崩壊下端付近に生じる高強度ネットの最大押し抜き力(kN) (4) 局部的崩壊による高強度ネット下部の押し抜きせん断に対する安全性照査

図-5.8に,局部的な崩壊のモデルを例示しているが,当該ブロックのすべりに対し,二

つの力P,Zdが安定に関係する。このうち,高強度ネット上端側の安全性照査をしなくて

も十分なくらいに小さい値を仮定できれば,一方の高強度ネット下部押し抜き力を安全側

に高めに推定することになる。 さて,部材の強度(試験値)をもとに,これに補正係数を適用し高強度ネット引張力(Zd)

を設定すると,一般には,

R

Rd

ZZγ

≦ (5.16)

ここに,ZR:高強度ネット平行引張抵抗力(=30kN) γR:高強度ネット抵抗安全係数(=1.5) Zd:高強度ネット設計平行引張抵抗力(kN)

となる。 ネット下端で高強度ネットを押し抜く荷重(Pmax)を求め,その最大値について安全性

を照査する。計算方法は,次のとおりである。

R

RPPγ

≦max (5.17)

ここに,PR:高強度ネット下部押し抜きせん断抵抗力(=90kN) γR:高強度ネット抵抗安全係数(=1.5) Pmax:局部崩壊下端付近に生じる最大押し抜き力(kN)

式(5.17)を満足するPmaxの荷重条件であれば,高強度ネットは破断せず,局部崩壊も発

生しないことになる。

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5.2.7 ネイル長さ・ネイル材の検討

設計ネイル長(Ld)は,以下のとおり設定する。

210 LLLLd (5.18)

ここに,L0:締めしろ(=0.1m) L1:移動土塊部分のネイル長(m) L2:不動地山(すべり線以深の部分)の必要定着長(m)

式(5.18)に対し,基本として次の条件を付す。 ① 不動地山の必要定着長(L2)の設計最小長さは1.0mとする。 ② ネイル材の長さ(L)は,設計ネイル長(Ld)を基に0.5m単位で設定し,最小長は

2.0mとする。 ※②の条件は,対象となる斜面のすべり層厚が極めて薄いか,あるいは明瞭になく,当

該箇所の斜面の崩壊が小規模な場合等には適用しない。 ただし,この場合も不動地山の必要定着長(L2)は,最小1mを確保する。

L1およびL2は下記により設定する。

(1) 移動土塊部におけるネイル長(L1)の設定 移動土塊中におけるネイル長(L1)は,設計図書をもとにネイルの計画位置と現地の地

形を勘案しつつ,求める。 (2) ネイル設計荷重の確定と不動地山の必要定着長(L2)の算定

① 必要定着長の算定式 L2は下式により算定する。

atTL 0

2 (5.19)

ここに,T0:ネイル設計荷重(kN/本)(p.18~19参照) ta:ネイル材の地山に対する単位定着長さ当りの引抜き抵抗力(kN/m)

② ネイルの地山に対する単位定着長さ当たりの引抜き抵抗力(ta)の設定

taは,後述するa),b)より,地山とグラウトの許容付着力とネイル材とグラウトの許容

付着力の小なる値であり,

ca paa tt mint ,   (5.20)

ここに,tpa:地山とグラウトの許容付着力(kN/m) tca:ネイル材とグラウトの許容付着力(kN/m)

として示される。

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a) 地山とグラウトの許容付着力(tpa)の算定 tpaは下式により算定する。

sapa F

Dt πτ (5.21)

ここに,D :削孔径 Fsa:引き抜きに対する安全率 (Fsa=2.0 とする) τ:定着地盤の極限周面摩擦抵抗値 (N/mm2)

「道路土工 切土工・斜面安定工指針」(H21.6日本道路協会P.299)より極限周面摩擦

抵抗の推定値を表-5.2に示す。

表-5.3 極限周面摩擦抵抗の推定値

地盤の種類 極限周面摩擦抵抗

(N/mm2)

岩 盤

硬 岩 1.20

軟 岩 0.80

風 化 岩 0.48

土 丹 0.48

砂 礫

10 0.08

20 0.14

30 0.20

40 0.28 50 0.36

砂 N

10 0.08

20 0.14

30 0.18

40 0.23

50 0.24

粘 性 土 0.8×c

(cは粘着力)

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b) ネイル材とグラウトの許容付着力(tca) tcaは下式により算定する。

dt bca πτ (5.22)

ここに,d :ネイル材の径(mm)(表-5.5参照) τb:ネイル材とグラウトの許容付着応力(N/mm2)

「道路土工 切土工・斜面安定工指針」(H21.6日本道路協会P.300)より注入材と異形

鉄筋の許容付着応力を表-5.4から引用する。

表-5.4 注入材と異形鉄筋の許容付着応力度(N/mm2)

注入材の設計

基準強度

鉄筋の種類 18 24 30 40以上

異形鉄筋 1.4 1.6 1.8 2.0

(3) 許容ネイル力の算定

ネイルの引抜き抵抗力は,不動層に位置するネイルの引張力でこれを代表するものと考

える。この値とネイル材強度のうち小さい値が,許容ネイル力となる。 すなわち,下記のA,Bのうち,小さい値を許容ネイル力とする。

A.不動地山から受ける引抜き抵抗力 (Tpa) B.ネイル材の許容引張力 (Tsa) 許容ネイル力(Ta)は下式のとおり求められる。

sapaa TTT ,min (5.23)

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① 不動地山から受ける引抜き抵抗力(Tpa) Tpaは下式により算定する。

aApa tLT (5.24)

ここに,LA:不動地山内のネイル長(=L-L0-L1) L:ネイル長(m) L0:ネイル締めしろ(=0.1m) L1:移動土塊内のネイル長(m) ta:異形棒鋼の地山に対する単位定着長さ当たりの引抜き抵抗力(kN/m)

② ネイル材の許容引張力(Tsa) ネイル材の許容引張力は,表-5.5を参考に設定する。

表-5.5 ネイル材の諸元(参考)

項 目 単位 呼び名

D19 D22 D25 D29 D32

公称直径:d mm 19.1 22.2 25.4 28.6 31.8

公称周長:π・d mm 60 70 80 90 100

公称断面積:A=π・d2/4 mm2 286.5 387.1 506.7 642.4 794.2

有効直径:ds=d-1 ※腐食しろ1mm考慮

mm 18.1 21.2 24.4 27.6 30.8

有効断面積:As=π・ds2/4 mm2 257.3 353.0 467.6 598.3 745.1

許容引張応力度:σsa N/mm2 200

許容引張力:Tsa=As・σsa kN 51.5 70.6 93.5 119.7 149.0

なお,上表はSD345の物性値を示したもので,使用材料が異なる場合には,同様の検討

を行う。

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5.2.8 対策後のすべり面安定照査 パワーネット工法による対策後のすべり面安定照査は,斜面のすべり安全率(Fsd)が計

画安全率を満足するかを照査する。 対策後の斜面のすべり安全率は下式で求められる。

QSS

QSFsd

21

(5.25)

ここに,Fsd:斜面のすべり安全率 S1:単位幅当たりの地山滑動抵抗力 (kN/m) S2:単位幅あたりのネイル抵抗力 (kN/m) Q:単位幅当たりの地山滑動力 (kN/m)

・単位幅当たりの地山滑動抵抗力(S1)

)tancos(1 iiii cWS φα (5.26)

ここに,Wi:すべり土塊の重量 (kN) α i:すべり面の角度 (°) φ i:すべり面の内部摩擦角 (°) ci:すべり面の粘着力 (kN/m2) i:すべり面の長さ (m)

・単位幅あたりのネイルによる抵抗力(S2)

aT

S di φαδαδ tan)sin()cos(2 (5.27)

ここに,Tdi:ネイル1本当たりの設計引張力(kN) a:横方向のネイル間隔(m) α:すべり面の角度(°) δ:ネイルの設置角度(°)

また,ネイル1本当たり設計引張力(Tdi)は次式により求められる。

sapaidi TTT ,minλ (5.28)

ここに,λ:低減係数(=0.7) Tpai:ネイル定着部が不動地山から受ける引抜き抵抗力(kN) Tsa:ネイル材の許容引張力(kN)

・単位幅当たりの地山滑動力(Q)

αsiniWQ (5.29)

ここに,α:すべり面の角度(°)

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5.2.9 設計の適合性判断 設計の適合性判断は,対策後の斜面のすべり安全率(Fsd)が計画安全率(Fs)以上にな

っているかを確認する。すなわち,安全率が得られていない場合には,計画全般を見直し,

ssd FF ≧ (5.30)

となるよう調整する。 そのほか,設計部材,配置,施工の可否等を総合的に判断して設計の適合性を確認し,

完了する。 5.2.10 ネイルを含む外的な安定性の検討 不安定な土塊や岩塊をネットとネイルで不動地山に固定するのが,この工法の特徴であ

る。この時,ネイルと一体化した地山全体の安定度を照査する必要があるかどうかを検討

する。必要であると判断された場合には,ネイルと一体化した地山ブロックの安定度を照

査し所定の安全率以上であることを確認しなければならない。

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6. パワーネット工法の施工 6.1 パワーネット工法専用部材の諸元 パワーネット工法専用部材の諸元を示す。なお,これらは変更する場合があるので,最

新の製品試験報告書等を参照のこと。 6.1.1 高強度ネット (1) TECCOネット

表-6.1 TECCOネットの諸元

一般名称 高強度ネット

形状および寸法

素線公称径 3.0mm

金網の形状 ひし形

金網の大きさ(内寸) 83 mm(77mm)×143mm(137mm)

標準出荷荷姿 ロール

標準出荷単位当りの寸法 3.5m(ロール幅)×30m(長さ)

単位当り重量 1.77kg/m2

防食構造

第1層 防食

亜鉛アルミ合金めっき

(GEOBRUGG SUPERCOATING)

めっき量 60g/m2以上

第2層 防食 PET

(飽和ポリエステル樹脂)

性 質 公称素線引張強度 1,770N/mm2

図-6.1 TECCOネットの形状

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(2) SPIDERネット ①SPIDER S4-230

表-6.2.1 SPIDER S4-230ネットの諸元

一般名称 高強度ネット

形状および寸法

素線公称径 4.0mm

ストランド径 8.6mm(構成:1×3)

形 状 ひし形

金網の大きさ(内寸) 292mm(274mm)×500mm(482mm)

標準出荷荷姿 ロール

標準出荷単位当りの寸法 3.5m(ロール幅)×20m(長さ)

単位当り重量 2.7kg/m2

防食構造 防食

亜鉛アルミ合金めっき

(GEOBRUGG SUPERCOATING)

めっき量 150g/m2以上

性 質 公称素線引張強度 1,770N/mm2

公称引張強度 220kN/m

図-6.2.1 SPIDER S4-230ネットの形状

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②SPIDER S4-130

表-6.2.2 SPIDER S4-130ネットの諸元

一般名称 高強度ネット

形状および寸法

素線公称径 4.0mm

ストランド径 8.6mm(構成:1×3)

形 状 ひし形

金網の大きさ(内寸) 180mm(162mm)×300mm(282mm)

標準出荷荷姿 ロール

標準出荷単位当りの寸法 3.5m(ロール幅)×20m(長さ)

単位当り重量 5.0kg/m2

防食構造 防食

亜鉛アルミ合金めっき

(GEOBRUGG SUPERCOATING)

めっき量 150g/m2以上

性 質 公称素線引張強度 1,770N/mm2

公称引張強度 360kN/m

図-6.2.2 SPIDER S4-130ネットの形状

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③ SPIDER S3-130

表-6.2.3 SPIDER S3-130ネットの諸元

一般名称 高強度ネット

形状および寸法

素線公称径 3.0mm

ストランド径 6.5mm(構成:1×3)

形 状 ひし形

金網の大きさ(内寸) 180mm(162mm)×300mm(282mm)

標準出荷荷姿 ロール

標準出荷単位当りの寸法 3.5m(ロール幅)×20m(長さ)

単位当り重量 2.60kg/m2

防食構造 防食

亜鉛アルミ合金めっき

(GEOBRUGG SUPERCOATING)

めっき量 150g/m2以上

性 質 公称素線引張強度 1,770N/mm2

公称引張強度 220kN/m

図-6.2.3 SPIDER S3-130ネットの形状

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6.1.2 接続金具 (1) TECCOネット接続金具(T3クリップ)

表-6.3 TECCOネット接続金具の諸元

一般名称 高強度ネット接続金具

形状および寸法

素線公称径 4.0mm

サイズ 21mm×60mm

単位当り重量 0.0157kg/個

防食構造 防食

亜鉛アルミ合金めっき

(GEOBRUGG SUPERCOATING)

めっき量 150g/m2以上

性 質 公称素線引張強度 1,770N/mm2

図-6.3 T3クリップの形状

(2) SPIDERネット接続金具

表-6.4 SPIDERネット接続金具の諸元

一般名称 高強度ネット連結金具

形状および寸法

形 状 US TYPE SHACKLE SCREW PIN G-209

バウ型(おたふく型)

サイズ 7/16"

単位当り重量 0.22 kg/個

防食構造 防食 電気亜鉛めっき

めっき量 300g/m2以上

図-6.4 シャックルの形状

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6.1.3 支圧プレート(スパイクプレート) TECCOネットの敷設に使用するスパイクプレートは,P33/40Sを標準とする。

岩盤斜面等に敷設する場合には,スパイク部が短いP33/40Rを使用することもできる。

表-6.5 スパイクプレートの諸元

一般名称 支圧プレート

呼称 スパイクプレート P33/40S・P33/40R

形状および寸法

形 状 三次元両サイド曲げ加工,3穴,2溝

サイズ 330mm×190mm

厚 さ 10mm

単位当り重量 2.8kg/個

防食構造 防食 溶融亜鉛めっき

めっき量 550g/m2以上

図-6.5 スパイクプレートの形状

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6.1.4 ワイヤロープアンカー

表-6.6 ワイヤロープアンカーの諸元

型式 許容荷重

ロープ径 最小削孔径

(mm) アンカー頭部

質量 (kg) 1m 追加 質量 (kg) kN

Ⅰ 104 10.5mm×2 本 38 1.8 1.1

Ⅱ 195 14.5mm×2 本 40 3.7 2.0

Ⅲ 318 18.5mm×2 本 50 6.8 3.4

Ⅳ 470 22.5mm×2 本 64 10.5 5.0

備考

追加長1.0m

アンカー頭部

外側被覆管

(オレンジテープ)

注入上端位置マーク

内側被覆管

A

アンカー長

B

図-6.6 ワイヤロープアンカーの形状と寸法

型式 A(mm) B(mm) C(mm)

Ⅰ 10.5 14 21.3

Ⅱ 14.5 20 26.9

Ⅲ 18.5 25 33.7

Ⅳ 22.5 32 42.4

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6.2 ネイルおよび関連部材の諸元 ネイルの諸元を表-6.6に示す。なお,これらは標準的なものを示しており,実用におい

ては同等品以上でよい。 また,グラウンドマットの諸元を表-6.7に示す。 なお,グラウンドマットは,侵食を受ける恐れのない斜面では,設置の必要はない。

表-6.6 ネイルの諸元

一般名称 全ねじ異形棒鋼

形状および寸法 形 状 鉄筋コンクリート用棒鋼(JIS G3112)

サイズ D19~D32

防食構造 防食 溶融亜鉛めっき

めっき量 550g/m2以上(JIS H8641 HDZ55 )

性 質

材 質 SD345

降伏点 345~440N/mm2

引張強さ 490 N/mm2以上

表-6.7 グラウンドマットの諸元

一般名称 保護マット

形状および寸法 形状寸法 500mm×500mm

厚さ 10mm

性 質 材 質 ヤシ繊維

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6.3 パワーネット工法の施工手順 6.3.1 標準施工フロー パワーネット工法の標準施工フローチャートを図-6.6に示す。

図-6.6 施工フローチャート

ネイル設置工

資機材搬入

斜面(のり面)清掃

ピット掘削 (必要性に応じて実施)

仮設備工(足場)

引抜き試験 (受入れ試験)

グラウンドマット設置工 (侵食を受ける恐れのない斜

面では設置の必要はない)

高強度ネット張工

スパイクプレート取り付け

ヘッドナット取り付け

締付け

完 了

鋼棒にスペーサ取付け

削孔機械据付

削孔工

ネイル挿入工

グラウト注入工

削孔機械撤去 ネット敷設

周縁補強ロープ設置

周縁補強ロープ固定

固定用アンカー工

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6.3.2 施工手順 孔壁が自立する場合の標準的な施工手順を示す。

① のり面または斜面清掃工 斜面(のり面)上の不安定な浮石や株などを取り除く

② 高強度ネット資材持上工 高強度ネットや必要な資材をのり肩などに持上げる。現場ごとに条件は異なる。

③ ピット掘削工 ※ネットに極端なゆるみ発生が懸念される場合等に形成する。

④ ネイル設置工 所定の径で,所定の深さまで削孔する。

ネイルを孔内に挿入する。

グラウトを注入する。(養生)

引抜き試験(受入れ試験) ネイルが所定の性能品質を有しているかを確認

図-6.7 グラウト注入状況

⑤ グラウンドマット設置工 空隙充填後,グラウンドマットを敷設する。

⑥ 高強度ネット張工 高強度ネットを敷設する。 スパイクプレートをヘッドナットで固定する。 高強度ネットの連結はT3クリップを用いて行う。

図-6.8 高強度ネット張完了

空隙充填

高強度ネット

(TECCO,SPIDER S4)

グラウンドマット

グラウト

スペーサ

ネイル

グラウトホース

すべり面

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⑦ 締付け工 トルクレンチを用いて,ナットを所定の 締付け力まで荷重をかける。 これにより,スパイクプレートが高強度 ネットを強く地山へ押し付け,地山が支 圧される。

図-6.9 締付け完了

完 了

締付け力

スパイクプレート

ヘッドナット

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6.3.3 立木周辺処理例 敷設斜面内に立木が存在し,高強度ネット内に開口部を設ける場合には,立木周辺の地

盤状況,立木の根系の状態を十分に検討し,開口方法を決定する必要がある。

開口方法としては,以下の処理例がある。

① 開口端部をワイヤロープで補強する方法

立木の地表面付近での根が張り出して凹凸が大きい状態にあり,開口部を比較的大

きく確保したい場合に適用する。ネット開口端においてワイヤロープによりネット

張力の伝達性能を確保することができる。

② 立木の根元付近までネットを敷設する方法

立木の地表面付近での根の張り出しが少なく,また,立木の根系がしっかりとした

状態で,抵抗力もある程度期待できる場合に適用できる。根系による周辺の地山の

安定度が期待できない場合には, ①と同様にワイヤロープ等で補強する。

写真-6.1 開口端部をワイヤロープで補強する方法 写真-6.2 高強度ネットを立木の根元にかぶせて密着させる方法

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6.3.4 引抜き試験(受入れ試験) 本編においては,引抜き試験のうち受入れ試験について以下に示す。

受入れ試験は,公益社団法人地盤工学会「地山補強土工法 設計・施工マニュアル」に

準じて実施する。 【試験方法】

受入れ試験の試験方法は,表-6.8による。(試験概要は図-6.10参照) 計画最大試験荷重は,設計引張り力,もしくは設計許容周面摩擦抵抗力に相当する引張

り力とする。設計引張り力とは,安定解析の結果から得られるネイルに作用する最大引張

り力のことであり,また,設計許容周面摩擦抵抗力とは,設計時に設定した極限周面摩擦

抵抗力を引抜きに対する安全率で除した値である。 従って,計画最大試験荷重は,ネイル設計荷重To,ネイル1本あたりの設計引張力Tdi,

および高強度ネットの最大押し抜き力Pmaxを比較して,最大の値とする。

図-6.10 受入れ試験の方法

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表-6.8 受入れ試験の試験方法

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6.4 パワーネット工法の施工に関する管理基準 6.4.1 パワーネット工法の出来形管理基準 パワーネット工法の標準的な出来形管理基準(案)を表-6.9に示す。

表-6.9 パワーネット工法の出来形管理基準(案)

種 別 測定項目 規格値 測定方法または測定基準

ネイル工

削孔深さ 設計深さ以上 ロッド長・テープ等

削孔径(ビット径) 設計値以上 テープ等

ピッチ長 設計値+10%以下 テープ等

削孔角度 ±2.5° スラントルール等

本数 全数 目視

高 強 度

ネット工

横方向重ね合わせ 1マス以上 200m2につき1箇所, 200m2以下

は2箇所

横方向1マス当たりの

接続クリップ(シャックル)数1個以上

200m2につき1箇所, 200m2以下

は2箇所

1箇所当り測定長さ2.0m

縦方向重ね合わせ 0マス以上 200m2につき1箇所, 200m2以下

は2箇所

縦方向1マス当たりの

接続クリップ(シャックル)数1個以上

200m2につき1箇所, 200m2以下

は2箇所

1箇所当り測定長さ2.0m

のり長

3m未満 -50mm 施工延長40mにつき1箇所,40m

以下のものは1施工箇所につき2

箇所(国土交通省土木工事施工管

理基準(案)の吹付工を引用) 3m以上 -100mm

延長 -200mm

1施工箇所毎(国土交通省土木工

事施工管理基準(案)の吹付工を

引用)

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6.4.2 パワーネット工法の品質管理基準 パワーネット工法の標準的な品質管理基準(案)を表-6.10に示す。

表-6.10 パワーネット工法の品質管理基準(案)

種 別 試験項目 試験方法 規格値等 基準または頻度

品質管理

耐力確認 引抜き試験

(受入れ試験)

油圧ジャッキによる荷

重保持時間は計画最大

荷重時では5分間 , そ

れ以外では1分間

最大試験荷重は設

計荷重とする

初期荷重5.0kN

増加荷重のきざみ

10.0kN

任意抽出で全本

数の3%以上

かつ最低試験本

数3本以上

締付け 締付け力 トルクレンチ 設定した締付け力

以上 全本数

グラウト

圧縮強度試験 JSCE G505 σ28=24N/mm2

以上

1回/週

供試体3本

フロー値試験 JSCE F521 試験基準値±3秒

かつP漏斗9~22秒

注入日毎

注入開始前1回

〔ナット締付けの管理〕

本工法はナットを締付け,スパイクプレートおよび近傍高強度ネット面から締付け力を

斜面表面に与えることを特徴としている。導入する力として施工管理にも適用できるよう にするためには,ナット締付けトルクと鋼棒軸力との関係が明確でなければならない。本

節では同工法の実物のスパイクプレートを用い,ナット締付けトルクと鋼棒軸力との関係

を検定した実例を示す。 なお,これはあくまで一例であり,適切な試験方法で上述の支圧力が確認できるのであ

れば,本工法の規定のスパイクプレートを使用する限り,ナットおよびネイル鋼棒の種類

は一般的なものでよい。 図-6.11に,ネイル頭部部材の組み立て順序を示す。

ヘッドナット

スパイクプレート

高強度ネット

グラウンドマット

ネイル

図-6.11 ネイル頭部部材の組み立て順序

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一例として,岡部株式会社製のヘッドナット(品名:ASメッキコマナット,メッキ六角

ナット,OSDPナット,PVB樹脂キャップ付ナット)を,当該スパイクプレートに適用し

た場合の鋼棒軸力とナット締付けトルクとの関係を表-6.11,表-6.12に示す。また,エ

スティーエンジニアリング株式会社製ヘッドナット(品名:球面六角ナット)を,当該ス

パイクプレートに適用した場合の鋼棒軸力とナット締付けトルクとの関係を表-6.13,表

-6.14に示す。

表-6.11 鋼棒軸力に対するナットの締付けトルク(岡部株式会社)

鋼棒軸力(kN)

サイズ 5.0 15.0 30.0

D19 30N・m 125N・m 310N・m

D22 45N・m 170N・m 395N・m

D25 50N・m 165N・m 355N・m

OSDP 100N・m 280N・m 550N・m

D19N-P 70N・m 180N・m 345N・m

D22N-P 65N・m 205N・m 360N・m

D25N-P 75N・m 200N・m 385N・m

※2 上表のD19N-P,D22N-P,D25N-PはPVB樹脂キャップ付ナットサイズを示す。

表-6.12 鋼棒軸力に対するナットの締付けトルク(岡部株式会社)

鋼棒軸力(kN)

サイズ 10.0 25.0 50.0

D29N 120N・m 350N・m 750N・m

D29NT 90N・m 320N・m 700N・m

D32 150N・m 400N・m 815N・m

D32NT 150N・m 400N・m 825N・m

※1 上表のD29N,D29NTはASメッキコマナットサイズを示す。

※2 上表のD32,D32NTはメッキ六角ナットサイズを示す。

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表-6.13 鋼棒軸力に対するナットの締付けトルク(エスティーエンジニアリング株式会社)

鋼棒軸力(kN)

サイズ 5.0 15.0 30.0

D19 40N・m 175N・m 380N・m

D22 40N・m 215N・m 480N・m

D25 65N・m 240N・m 495N・m

SP29 75N・m 265N・m 550N・m

SP32 90N・m 290N・m 585N・m

※1 上表のD19,D22,D25はSTロックボルト用球面六角ナットサイズを示す。

※2 上表のSP29,SP32は,SPボルト用球面六角ナットサイズを示す。

表-6.14 鋼棒軸力に対するナットの締付けトルク(エスティーエンジニアリング株式会社)

鋼棒軸力(kN)

サイズ 10.0 25.0 50.0

D29 160N・m 430N・m 885N・m

※ 上表のD29は,STロックボルト球面六角ナットサイズを示す。

ネイルに導入する締付け力は,ネイル自体がグラウンドアンカーのように自由長を持た

ないため,地盤の性状によっては,地山のクリープ等により減少することもある。また,

ネイルの効果は地山の変形によって出現するものであり,仮に締付け力が無くなったとし

ても,すべりに対する安全性はネイルおよび高強度ネットによって確保されている。冒頭

にも記したように,締付け力は,表層の緩みの進展を抑制し,表層の安定性を向上させる

ためのものである。したがって,ネイル設置後に1回の締付け作業を行うだけでよい。 なお,上表に示したナットとスパイクプレートの関係を満足しない部材を用いる場合に

は試験により締付トルク値と鋼棒軸力の関係を求め施工管理値とする。

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6.4.3 パワーネット工法の写真管理基準 パワーネット工法の標準的な写真管理基準(案)を表-6.13に示す。

表-6.15 パワーネット工法の写真管理基準(案)

区 分 種 別 撮影項目 撮影時期 撮影頻度

着手前お

よび完成

着手前(全景または代表部分) 着手前 着手前1回

完成後(全景または代表部分) 完成後 完成後1回

使 用

材 料 使用材料

形状寸法,数量 検収時 各品目毎に1回

検収実施状況 検収時 検収時毎

施工状況 工事施工中

工事進捗状況 (全景または代

表部分) 月末 月1回

施工状況(工種,種別毎) 施工中 工種,種別毎に適宜

図面との不一致 図面と現地との不一致 発生時 必要に応じて

安全管理 安全管理

各種標識類の設置状況 設置後 各種類毎に1回

各種保安施設の設置状況 設置後 各種類毎に1回

監視員交通整理状況 実施中 実施中に適宜

安全訓練等の実施状況 実施中 実施毎に1回

品質管理

ネイル工 引抜き試験(受入れ試験) 試験実施中 実施する耐荷試験の全数

グラウト材 圧縮強度試験

試験実施中 工期中1回以上 フロー値試験

出来形

管 理 ネイル工

削孔深さ 削孔後 1施工箇所毎に1回以上

配置状況 施工後

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参考資料①

ネイルのせん断抵抗力を考慮したすべり土塊の安定照査

(本文p.14 図5.1(2)の点線部説明)

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1. すべりに対するネイルせん断力照査

a) ブロックの安定条件 ここでは,ブロック安定に必要となる力の一端を,ネイルのせん断耐力で負担させる安

定モデルについて述べる。冒頭に述べたように,すべり層境界面が明瞭で,経験的にもネ

イルがせん断部材として機能する条件(不動地山が硬質な岩層等)の場合,この境界条件

が成立する。 だだし,この境界条件が成立しない場合は,当モデルの検討を適用しない。 モデル検討の図としては,前出の図-5.5と同様である。 ここで,ネイルに必要となるせん断抵抗力(Sd)の値の計算式は式(参.1)による。

φαα tancosWAcsinWFS Sd (参.1)

ここに,Sd:ネイルの必要せん断抵抗力(kN) FS:計画安全率 W:すべり土塊の重量(kN) A:すべり土塊の底面積(m2) α:すべり面の角度(°) δ:ネイルの斜面設置角度(°) φ:すべり面の内部摩擦角(°)

b) 複合荷重に対してのネイル断面の安全性照査 ―初期導入力による引張力とすべり土塊の作用による複合荷重による安全性評価― 下記の算定式で,すべり面近傍でネイルに作用する複合荷重による安全性を照査する。

Rad SS ≦ (参.2)

ここに,Sd:ネイルの必要せん断抵抗力(kN) SRa:ネイルの許容せん断抵抗力(kN)

0122

.≦γ

Ra

d

sa

e

SS

TV

(参.3)

ここに,V:締付け力(kN) Tsa:ネイルの許容引張力(kN) Sd:ネイルの必要せん断抵抗力(kN) SRa:ネイルの許容せん断抵抗力(kN) γe:締付け力に対する安全係数(1.5を適用)

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2. 不動地山へのネイル定着荷重(設計荷重)の確定

せん断力が作用する方向は斜面平行方向であり,ネイルのせん断抵抗力によって土塊ブ

ロックの安定が斜面上で保たれる。なお,ネイル軸線方向に,締付け力以外の大きな荷重

は作用しない。 よって,この場合のネイル設計荷重T0は,下記のとおりとする。

VT0 (参.4)

すなわち,締付け力の大きさが,設計荷重となり,この結果,不動地山に対するネイル定

着最小長さは,制限長さ(5.2.7参照)となる場合が多くなる。 3. 斜面全体の安定計算(ネイルせん断力による安定化を考慮)

補強後斜面のすべり安全率は下式で求められる。

QSS

QSF

21

sd

(参.5)

ここに,S1:単位幅当たりの地山滑動抵抗力 S2:単位幅当たりのネイルによるせん断力 Q: 単位幅当たりの地山滑動力

・単位幅当たりの地山滑動抵抗力(S1)

)tancos(1 iiii cWS φα (参.6)

・単位幅当たりのネイルによるせん断力(S2)

aS

S di2 (参.7)

ここに,Sdi:ネイル必要せん断力(個別すべりブロック毎に算定する) a:ネイル間隔(横方向;前出の図-5.2参照)

・単位幅当たりの地山滑動力(Q)

αsiniWQ (参.8)

ここに,α:すべり面の角度

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参考資料②

設計計算例

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141201PN-D-6 - 59 -

参考資料② 設計計算例 目次

はじめに ······································································································· 61 1. 検討モデル ······························································································· 62 2. 粘着力の算定 ···························································································· 63 3. 必要抑止力の算定 ······················································································ 63 4. ネイル間隔および打設角度の設定 ································································· 64 5. すべり土塊部に対する検討 ·········································································· 65 6. 対策後のすべり面安定照査 ·········································································· 71 7. 局部的な崩壊に対する中抜けの照査 ······························································ 72

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mα2 63α1 44

すべり層厚

 内部摩擦角

20.0

°°

設 計 条 件

α1=(θ+φ)/2

はじめに

F

°

単位

°

記号

θ

Fs

25kN/m3γ

 本書は,以下の設計条件に基づきパワーネット工法の仕様検討を行うものである。

現況安全率

計画安全率

斜面勾配 63

φ

 なお,パワーネット工法の仕様検討は,「パワーネット工法 設計・施工マニュアル 平成23年4月エコパワーネット工法会」(以下,「設計・施工マニュアル」と呼ぶ)に基づき行う。

項目

 単位体積重量

1.21.0

移動土塊の土質定数

備 考

すべり面勾配

1:0.5

t 1.0

141201PN-D-6 - 61 -

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・移動土塊の重量

① × = (kN/m)② × = (kN/m)③ × = (kN/m)

合計 (kN/m)

・地山滑動力

① ° = (kN/m)② ° = (kN/m)③ ° = (kN/m)

合計 (kN/m)

・摩擦による地山滑動抵抗力

① ° = (kN/m)② ° = (kN/m)③ ° = (kN/m)

合計 (kN/m)

・すべり面の長さ :L= L1+L2+L3 = + + = m

× sin× sin× sin

1.検討モデル

3.04 6.31

検討断面図

20.0 6.32

126.4

25.0 5.363× cos 25° × tan48.5

 検討モデルは,下記の通りである。

Q=ΣWi・sinαi= 48.8 33.9

126.420.0

ΣWi=γ・Ai= 20.0 2.44 48.8

200.2

44

1.25 25.0

63 112.663

168.8

S1'=ΣWi・cosαi・tanφ= 48.8 44× cos 25° × tan

25.0 22.3

16.4126.4 26.863× cos 25° × tan

2.50 11.85

141201PN-D-6 - 62 -

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(kN/m2)

ここで, 現況安全率 ( = )Q: 地山滑動力 ( = kN/m)

S1': 摩擦による地山滑動抵抗力 ( = kN/m)すべり面の長さ ( = m)

P= Fs・ΣWi・sinαi-Σ(Wi・cosαi・tanφ+C・Li)

= Fs・Q-(S1'+C・Li)= 1.2 × 168.8-(48.5+10.2×11.85)= (kN/m)ここで, 計画安全率 ( = )

Q: 地山滑動力 ( = kN/m)S1': 摩擦による地山滑動抵抗力 ( = kN/m)

粘着力 ( = kN/m2)すべり面の長さ ( = m)

 本検討における粘着力(C)は,現況安全率(F)より逆算法にて以下の通り算出する。

2.粘着力の算定

F=

48.5

168.8

C= 10.2

=S1'+C・Li

Q

1.0=48.5+C×11.85

168.8

ΣWi・cosαi・tanφ+C・Li

ΣWi・sinαi

F: 1.0

L: 11.85

168.8

C:

48.5

10.2L: 11.85

3.必要抑止力の算定

・単位幅当りの必要抑止力

33.2Fs: 1.2

141201PN-D-6 - 63 -

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・ ネイル間隔 :a= (m) :横方向

:b= (m) :縦方向

・ ネイル設置段数 :n= (段)・ ネイル打設角度(δ)およびネイルとすべり面との挟角(α+δ)

上段

下段

90

δ α+δ

2.5

1 段目

段目 27 71

2.5

各段におけるネイルとすべり面との関係

段目

段数

90

(°)

4.ネイル間隔および打設角度の設定

2723

(°)

4

※ネイル打設角度(δ)は斜面直交方向を基本とする。

5

27

ネイルとすべり面の挟角

段目

段目 27902790

5

141201PN-D-6 - 64 -

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TECCOネットの強度物性

・ (kN)・ (kN)

・ (kN)

※「設計・施工マニュアル」P.16参照

・ 締付け力 :V= (kN)

※「設計・施工マニュアル」P.19参照

ここで, 単位幅当りの必要抑止力 ( = kN/m)a: ネイル間隔(横方向) ( = m)n: ネイル設置段数 ( = 段)

α+δ: ネイルとすべり面の挟角

φ: すべり面の内部摩擦角 ( = °)γRd: 低減係数 ( = )

 高強度ネットおよびスパイクプレートから地山に伝達される荷重(TRd)は,下式より求める。

締付け力の目安値

90

30

※現地斜面状況によっては,締付け力の変更を行う場合がある。

30kN

斜面表層部の地盤性状または状態

DR:ネットのせん断押し抜き抵抗

5.1 締付け力の設定

5.移動土塊部に対する検討

180PR:ネット下部の押し抜き抵抗

 (中抜け崩壊の検討に使用するブロック下部ネイル近傍のネット押し抜きせん断抵抗は上記DR

   の1/2の値を採用する。)

kN①,②に該当しない場合

 (中抜け崩壊の検討に使用するネットのブロック上部のネイルにかかる斜面平行の引張抵抗)

5締付け力(V)の目安値

30

ZR:ネット平行引張抵抗

N値50回以上の地盤または岩盤斜面の場合

kN

 締付け力は,下表から以下の通り設定する。

15

斜面表層が軟弱な地盤の場合

TRd=1

・P・a/n

γRd cos(αi+δi)+sin(αi+δi)・tanφP:

2.5

250.7

5

5.2 高強度ネットおよびスパイクプレートから地山に伝達される荷重(TRd)

33.2

141201PN-D-6 - 65 -

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・ 1 ~ 4 段目

T0= max(Vd , TRd)= , )= (kN)

・ 5 段目

T0= max(Vd , TRd)= , )= (kN)

≦ ・・・・・・・【OK】

Ld≧ L=L0+L1+L2

ここで,Ld : ネイル長(m)L : ネイル必要長(m)L0: 締めしろ(= m)

L1: 移動土塊部分のネイル長(m)L2: 不動地山部分(すべり線以深の部分)の必要ネイル長(m)

達される荷重(TRd)とを比較し,大きい値を採用する。

支圧力算出結果一覧表

(kN)

 ネイル設計荷重(T0)は,実効締付け力(Vd)と高強度ネットおよびスパイクプレートから地山に伝

DR

max(

5.3 ネイル設計荷重(T0)

段目

90

30.8max(

33.2 2.5

1

120

0.1

1.5 ×

(kN)

5.5 ネイル長の検討

≦180

21

21

5.4 ネイル設計荷重(T0)に対するネットの安全性照査

50.9

0.7

30.8

γR

715

2

段数

5

(°)

4

1.5

3 段目

γe・T0max

50.9

段目

50.9

 ネイル設計荷重(T0)に対するネットの安全性照査は,下式により行う。

25

30.8

76.4

50.9

(°)

50.9

 ネイル長は,以下の通り設定する。

50.9

γRdα+δ

90

90

(段) (kN)(kN/m) (m)

9050.9

段目

段目

a n TRdφP

141201PN-D-6 - 66 -

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・ ネイル仕様 :全ねじ異形棒鋼 DT0max= (kN) Tsa= (kN)

・ 有効ネイル直径 :d= (mm)= (m)

・ 削孔径 :D= (mm)= (m)

・ 引抜きに対する安全率 :Fsa=

・注入材と異形鉄筋の許容付着応力度 :τb= (N/mm2)= (kN/m2)

・ 不動地山の極限周面摩擦抵抗値 :τ= (N/mm2)= (kN/m2)

kNN/mm2許容引張り応力度 :σsa

基準強度

注入材の設計

注入材と異形棒鋼の許容付着応力度

0.48

2.00.065

0.0212

mm2

24.4

506.7387.1

公称直径 : d

有効直径 : ds=d-1

21.2

m

51.5

5.5.1 検討条件

70.6

異形鉄筋

許容引張り力 : Tsa=As・σsa

※腐食しろ1mm考慮

1.4

mm

1.8

mm

93.5200

21.2

※「道路土工 切土工・斜面安定工指針」(H21.6 日本道路協会)

P.300参照

65

1.6

1600

有効断面積 : As=π・ds2/4

1.6

18

467.6

公称周長 :π・d 60

40以上

353.0

18.1

257.3

70.6

mm2

70

480

24 30

2.0

全ねじ異形棒鋼の諸元

22【OK】・・・

25.480

公称断面積 : A=π・d2/4

単位項  目D19

286.5

50.9

 不動地山部分の必要ネイル長(L2)を算出する際の検討条件は,以下の通りである。

D22 D25呼び名

22.219.1

鉄筋の種類

※ネイル仕様は,後述する『7.4 局部的崩壊時におけるネイ ル照査』により,局部崩壊下端付近に生じるネットの最大 押し抜き力(Pmax)を満足する鋼材径を選定する。

141201PN-D-6 - 67 -

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ここで,T0: ネイル設計荷重(kN)ta: 引抜き抵抗力(kN/m)

ta= min(tpa,tca)

・地山とグラウトの許容付着力(tpa)tpa= τ・π・D/Fsa

= /

= (kN/m)

・鋼材とグラウトの許容付着力(tca)tca= τb・π・d

= (kN/m)× π × 0.0212

0.8×C

5.5.2 不動地山部分の必要ネイル長(L2)の算定

106.6

(Cは粘着力)

地盤の種類

0.065× π × 2.0

1600

49.0

 不動地山部分の必要ネイル長(L2)は,下式により算出する。

L2=T0

ta

岩 盤 0.48

480

50

硬  岩

土  丹

0.0820

0.3650

0.14

0.14

粘性土

0.200.28

10

(N/mm2)

0.240.23

極限周面摩擦抵抗

N値 0.18

1.200.80

30

0.08

軟  岩

40

0.48

N値 30

極限周面摩擦抵抗値の推定値

砂 礫

40

風 化 岩

10

※「道路土工 切土工・斜面安定工指針」(H21.6 日本道路協会)P.299参照

20

141201PN-D-6 - 68 -

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1

 ネイル長(L)は,締めしろ(L0),移動土塊部のネイル長(L1)および前項で算出した不動地山部の必要ネ

イル長(L2)を考慮し,下表の通り設定する。

不動地山から受ける引抜き抵抗力(Tpa)の算出

49.04

段目

1.0

1.0段目 0.2段目

1.0段目

0.13 段目

2.0 1.751.1 68.6

2 1.1

tca

49.0 1.04(kN) (kN/m)

106.6

50.94

不動地山部分の必要ネイル長(L2)の算出結果

50.9

段目

3

段目

49.01.41.0

1.0

49.0

(m)

49.0 83.31.31.4

68.6

49.049.0段目

段目

1

段数

49.0

L1

tpa ta

2.51.12.2

設定値

L2

1.1

T0

49.0

(m)

(kN/m) 算定値

ta(m)2.2

Tpa

49.0

必要長:L

2.2

2.5(m)

採用長:Ld

(kN/m)

106.6

49.0 1.04

LA

1.4

2.2

1.0449.0

1.0

L0

2

(kN)

※1) 不動地山部に対するネイル必要長の最小長さは,1.0mとする。

                (「設計・施工マニュアル」P.13参照)

※2) ネイル長は0.5m単位で設定し,全長の最小長さを2.0mとする。

                (「設計・施工マニュアル」P.13参照)

※3) 移動土塊部部のネイル長(L1)は,次図を参照する。

1.149.0

1.04

68.6

5.5.3 ネイル長の設定(L)

5

(kN/m)

段目

L2

2.5

段数

1.1

(m)

106.630.8 0.63

2.5

49.0

(m)

106.6

50.9

50.9

1.1

1.1

106.6

49.0 68.61.4

141201PN-D-6 - 69 -

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・不動地山から受ける引抜き抵抗力 (Tpa)Tpa= LA・taここで, LA: 不動地山部のネイル長(m)(=Ld-L0-L1)

ta: 引抜き抵抗力(kN/m)

移動土塊部分のネイル長(L1)

141201PN-D-6 - 70 -

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= Fs= ・・・・・・・【OK】ここで,S1: 単位幅あたりの地山滑動抵抗力 (kN/m)

S2: 単位幅あたりのネイルによる抵抗力 (kN/m)Q: 単位幅あたりの地山滑動力 (kN/m)

・単位幅あたりの地山滑動抵抗力(S1)

S1= ∑(W・cosα・tanφ+C・L)=

= (kN/m)・単位幅あたりのネイルによる抵抗力(S2)

ここで,Tdi: ネイル1本あたりの設計引張力 (kN)Tdi= λ・min{Tpa,Tsa}

Tpa: 不動地山から受ける引抜き抵抗力 (kN)Tsa: 鋼材の許容引張り力 (kN)

a: 横方向のネイル間隔 (m)α: すべり面の角度 (°)

δ: ネイル打設角度 (°)

λ: 低減係数(=0.7)φ: すべり面の内部摩擦角(°)

・単位幅あたりの地山滑動力(Q)

Q= ∑(W・sinα)

= (kN/m)

合計 

4

51.1

9049.4

0.7

70.6 2.50.783.3 15.2171 25

2.52.568.6

48.0段目

8.9690 258.96

段目 70.625

Fsd=

Tsa

 パワーネット工法による対策後のすべり面安定照査は,対策後の斜面の安全率(Fsd)が計画安全

率(Fs)を満足するかを照査する。

48.5

1.2

169.4+51.1168.8

Q

段目

(kN/m)

S2=

2.548.0

a

2.5

×

∑Tdi・{cos(δ+α)+sin(δ+α)・tanφ}

1 8.96

169.4

32

ネイルとネットの押さえ効果による抵抗力:S2(kN)

68.6

10.2

1.31

8.9648.0

段数α+δ

90

φ

(°)2525

a

70.6 0.7

(°)S2

68.6

S

(kN)0.7

Tdi

Q

6.対策後のすべり面安定照査

S1+S2

Tpa

(kN)

168.8

λ

5

段目

段目

68.6

(kN)

11.85

48.0

70.6 90(m)

70.6 0.7

141201PN-D-6 - 71 -

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ared= a-t/tanδ1-D= 2.5-1.0/tan90゚-0.33= (m)

ここで,ared: ( m )a : ネイル横方向間隔 ( m )t : すべり層厚 ( m )

δ1: 台形状拘束領域の角度 ( ゚ )D : スパイクプレートの幅 ( m )0.33

表土の拘束領域と局部的な崩壊に対する検討範囲

901.0

2.2

中抜け崩壊範囲

2.5

7. 局部的な崩壊に対する中抜けの照査

7.1 局部的崩壊範囲

t

aredD

高強度ネット

δ

VV

1 1δ

141201PN-D-6 - 72 -

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(1) 局部的崩壊モデルA

ここで, PA: ネットの押し抜き力(モデルA) ( kN )W: 移動土塊の重量 ( kN )A: 移動土塊の底面積 ( )

Zd: ネット引張力(設計値) ( kN) ※Zd=ZR×0.5θ: 斜面勾配 ( °)β: 局部崩壊のすべり面の角度 ( ゚ )δ: ネイル打設角度 ( °)γ: 移動土塊の単位体積重量 ( kN/m3)C': すべり面の粘着力 ( kN/m2)φ': すべり面の内部摩擦角 ( °)

W・(sinβ-cosβ・tanφ')-Zd・{cos(θ-β)-sin(θ-β)・tanφ'}-C'・A

m2

※安全性を考慮しφ/2と設定する。

20.0

12.5

PA=

 ネットの押し抜き力は,局部崩壊の崩壊角度(β)を斜面勾配(θ)~0°まで変化させ計算した値の最大値とする。

※安全性を考慮しC/2と設定する。

15

局部的崩壊モデルA

27

5.1

cos(β+δ)+sin(β+δ)・tanφ'

63

7.2 ネットの押し抜き力

δ

δ

θ

2・b

t

β

α(=θ)

PA

141201PN-D-6 - 73 -

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(2) 局部的崩壊モデルBW1・(sinα-cosα・tanφ')-C'・A1

ここで, PB: ネットの押し抜き力(モデルB) ( kN )W1: 崩壊ブロック1の重量 ( kN )W2: 崩壊ブロック2の重量 ( kN )A1: 崩壊ブロック1の面積 ( )A2: 崩壊ブロック2の面積 ( )Zd: 実効ネット平行引張り力 ( kN)X : 崩壊ブロック1の滑動力 ( kN )θ: 斜面勾配 ( °)β: 局部崩壊の崩壊面の角度 ( ° )δ: ネイル打設角度 ( °)γ: 移動土塊の単位体積重量 ( kN/m3)C': すべり面の粘着力 ( kN/m2)φ': すべり面の内部摩擦角 ( °)

52 11.207 5.094 106.918 0.000

27

15

96.977 0.000

PA

モデルAにおけるネットの押し抜き力:PA

S

5.077

5.028

(m2)β

0.000

0.0000.000

5.062

67.5385.038

87.10677.295

X=

11.06256 11.084

12.5

28.8250.000

A W

20.05.10

0.000

9.601

11.015

11.002

11.169

PB=

63

5455

11.04257

53

6160

5859

0.00011.108

19.20611.007

57.813

5.049

W2・(sinβ-cosβ・tanφ')-(Zd-X)・[cos(θ-β)-sin(θ-β)・tanφ']-C'・A2

cos(β+δ)+sin(β+δ)・tanφ'

m2

m2

(m)(゚)

62

0.000

(kN)

0.0005.000

(kN)0.000

5.019

11.136

0.00011.026

0.000

38.4585.01248.118

5.003

635.001

5.007

11.000

141201PN-D-6 - 74 -

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133.645

PB

71.549

X

12.996

57.733

23.20015.74688.237

55.79045.776

129.787

29.415

69.484

32.804

7.119

0.669

6.757

6.139

23.3044.1344.445

1.9221.729

66.554

92.21584.58276.082

116.342 51.829

10.581(m)

4.611

(m2)

8.500

3536

W1

4.229

1.471

3.328

43.526

A2

(m2)

4.8465.019

38

415.817 5.630

34 4.538

6.957(kN)

376.282

5.409

75.2847.031

0.650

40.732

59.475

4.810

6.489

6.059

モデルBにおけるネットの押し抜き力:PB

39

(kN) (kN)

局部的崩壊モデルB

S1 S2A1

58.89659.185

0.295 10.680

W2

(m)

40

6.862

45

1.513 35.629 76.72329.870

(kN)

6.682

3.196

2.950

105.376

4.686

2.096

2.6445.555

7.525

5.269 2.3955.873

7.9823.420

1.2680.989

44

46

4243

3.804

4.95658.3202.79058.95654.4522.669

57.231

103.502

63.89367.70971.959

53.248

51(゚)

3.628

45.28250.048

82.1053.8644748

β

9.780

2.7892.176 9.09449

50

40.165

95.292

99.111 60.44555.585

2.559111.096

57.312

59.23062.285

2.924

2.754

2.525

3.037

2.253

2.459

2.203

49.3673.236

5.206 67.264

6.4323.072

53.05856.413

2.36664.870

3.119

49.413

2.281

2.130

121.174

73.479 41.376

2.855

140.622 39.689

47.179

2.063137.248

45.107125.642

55.991

58.40043.177

56.925

t

2・b

β

δ

δ

θ

2

ブロック2

ブロック1

11

2

2

1

2

W1

2

PB

α(=θ)

141201PN-D-6 - 75 -

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197.581 11.210 8.273105.777

12.659

0 9.879 2.469 4.490 1.122

7 9.516 2.654 4.325

9.218

14.11615.57917.039

194.597

13.747

18.496

21.245

11.1989.7341 9.830 2.492 4.468 1.133 105.256 196.605 11.698

12.7022 9.781 2.515 4.446 1.143 104.719 195.610 12.1953 9.730 2.540 4.423 1.155 104.179

4 9.678 2.567 4.399 1.167 103.626 193.562 13.2195 9.625 2.594 4.375 1.179 103.061 192.506

6 9.571 2.623 4.351 1.192 102.483 191.426 14.2871.206 101.891 190.322 14.8391.221 101.2838 9.460 2.686 4.300 189.191 15.405

27.27413 9.154 2.872 4.161 1.305 98.014 183.080 18.46014 9.088 2.915 4.131 1.325 97.300 181.751 19.124 28.73915 9.019 2.960 4.100 1.346 96.570 180.382 19.809 30.20916 8.948 3.008 4.067 1.367 95.815 178.969 20.515 31.67517 8.875 3.058 4.034 95.034 177.5101.390 33.142

2.831 4.190 1.287 98.707 25.810184.370 17.8151211 9.281 2.792 4.219 1.269 99.376 185.623 17.188

1.252 100.030 186.844

9.402 2.719

24.34516.57810 9.342 2.755 4.24615.984188.0329 21.421

22.8814.273 1.236 100.663

21222324

33(゚)

28

26

(m2)

29

8.184

7.972

4.400

8.378 3.423

8.081

32

7.738

8.557

27

β

7.189

3130

181920

19.956

(kN) (kN)W1

(kN)76.982 143.790 38.105 54.966

3.400 1.8877.339 4.272 78.574 146.772 36.6143.336 1.942 53.8487.479 4.152 80.083 149.585 35.207 52.6727.612 4.039 81.508 152.246 33.877 51.4443.460 1.836

3.268 2.000

7.858 3.836 84.138 157.161 31.41932.616 50.162

30.2801.662

48.8363.743

3.6733.624 1.701

3.656 86.51785.357

28.159161.610 29.195 46.105

47.486

3.934 3.517 1.788 82.8583.572 1.743

154.767

159.439

8.283 3.496 88.692 165.665 27.168 43.2963.765 1.5893.720 1.624 163.68387.630 44.714

26.219 41.8641.5563.808 89.707 167.563

8.469 3.353 90.682 169.3843.850 1.52424.433 38.976

8.641 3.226 92.518 172.8163.928 23.592 37.5238.722 3.167 93.386 174.437 22.782 36.065

94.223 176.000 22.000 34.604

25

8.800 3.111

3.288 91.616 171.133

1.466

4.000

3.889

L1 L2A2

3.573

(m2) (m)

1.4143.964 1.440

A1

1.49425.308 40.429

(kN)(m)W2 PBX

141201PN-D-6 - 76 -

Page 81: パワーネット工法141201PN-D-6 - 3 - 2. 用語の説明 2.1 パワーネット工法の材料用語 (1) 高強度ネット 高強度ネットとは,高強度の硬鋼線を母材とする耐久性に優れたネット材のことをいう。

(3) ネットの最大押し抜き力

Pmax= max[PA,PB]= max[0.000,59.230]= (kN)

ここで, Pmax: 局部崩壊下端付近に生じる最大ネット押し抜き力(kN)

ここで,PR : ネット下部の押し抜き抵抗 (kN)γR : 抵抗値補正係数 (1.5)

≦ (kN) ・・・・・・・【OK】

≦ min[Tpa,Tsa]

ここで, Tpa: 不動地山から受ける引抜き抵抗力 (kN)Tsa: ネイルの許容引張力 (kN)

≦ (kN) ・・・・・・・【OK】59.3 68.6

7.4 局部的崩壊時におけるネイル照査

Pmax

γR

59.3

59.3 601.5

7.3 局部的崩壊によるネット下部の押し抜きせん断に対する安全性照査

PRPmax

59.390

141201PN-D-6 - 77 -

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141201PN-D-6

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編 集 技術委員会(委員名はアイウエオ順)

沓澤 武 日本基礎技術株式会社 清水 明彦 株式会社TMS柔構

下条 和史 東亜グラウト工業株式会社 中村 貴之 岡部株式会社 新田 祥之 株式会社飛鳥 濱田 誠 東興ジオテック株式会社 三上 登 日特建設株式会社

平成20年 7月 1日 初版 平成20年 8月 8日 第2版 平成23年 4月 1日 第3版 平成25年 7月 1日 第4版 平成26年 12月 1日 第5版

エコ・パワーネット工法会 〒160-0004 東京都新宿区四谷2丁目10番地3 TEL: 03-5366-9838 FAX: 03-3355-1532