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オープンイノベーションの時代に 大学はいかにあるべきか 科学技術・学術審議会 産業連携・地域支援部会 産学官連携推進委員会(第10回) 201272日(月) 京都大学産官学連携本部長 牧野圭祐 1 資料3 科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会 産学官連携推進委員会(第10回) H24.7.2

オープンイノベーションの時代に 大学はいかにあるべきか€¦ · オープンイノベーションに存在する問題点:シーズの枯渇 原因(知財による開発に関して言えば):

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Page 1: オープンイノベーションの時代に 大学はいかにあるべきか€¦ · オープンイノベーションに存在する問題点:シーズの枯渇 原因(知財による開発に関して言えば):

オープンイノベーションの時代に大学はいかにあるべきか

科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会

産学官連携推進委員会(第10回)2012年7月2日(月)

京都大学産官学連携本部長牧野圭祐

1

資料3科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会

産学官連携推進委員会(第10回)H24.7.2

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産官学連携の重要性1.簡単に発掘・応用開発できるシーズは掘り尽くされた。

家電、自動車、物質、エネルギー、農業、食料2.これらの産業に必要な技術は確立されており、模倣が可能。3.既存産業は発展途上国(低賃金の国)へ移動。

雇用と税収の縮小

1.残った狭い領域の中に新しいシーズを見つけ、新産業を興すことが重要。

2.これには多数の研究者と巨大な開発資金が必要。企業の基礎研究が激減(論文数の減少は顕著)。

3.狭い領域で、新しいシーズを発掘し、深く掘り下げることのできるのは、基礎研究を行っている研究者。(ランダムな方向性も重要。)

産官学連携

1.大学研究の市場経済への組み込みは必須。2.各国における大学研究への巨大な投資および大学の自助努力

(米国、欧州)。

我が国の出遅れ対策?(本日のテーマ)

予算縮小の英国における大学の対応

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100 

150 

200 

250 

300 

350 

400 

450 

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

米国 英国

日本 ドイツ

中国 フランス

韓国

論文分析結果:科学技術政策研究所調査資料204科学研究のベンチマーキング2011

各国論文数の推移

我が国は学問的には優位か(ワールドランキング上位の大学は存在するが)

論文分析結果:科学技術政策研究所科学研究のベンチマーキング2010

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Page 4: オープンイノベーションの時代に 大学はいかにあるべきか€¦ · オープンイノベーションに存在する問題点:シーズの枯渇 原因(知財による開発に関して言えば):

○産学官連携に関する大学一般の意識・取組がどのような段階にきており、

今後どのような方向に向かうべきか。

○自立化促進プログラム等により、これまでに整備された機能。

○更なる産学官連携活動の促進に向け、足らない機能、課題。

○新たな活動形態・システムに関する提案およびそれに対する国の支援のあり方

○海外の参考事例。

○5~10年後に新たな事業・市場を創出するために有効な産学官連携システムをどのように構築すればよいか。(シーズとニーズのマッチングのみならず、今後は新たなニーズを産学で創出し、その実現に向けて対応していくことが必要ではないか。)○産業界とより長期で大規模な連携を行うシステムとしてどのようなものが考えられるか。○その他産学連携本部に関して強化するべき機能はあるか?

例えば、知財戦略立案機能や人材育成・移転機能等は?

本日の課題

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産学官連携に関する大学一般の意識・取組がどのような段階にきており、今後どのような方向に向かうべきか

オープンイノベーション:避けて通れない課題。成功例多し(例:P&G)。

メリット:研究員数2ケタ増が可能・・・開発の高速化(貴重なシーズの応用競争で勝利する)参加者:企業、ベンチャー、大学、研究機関、その他

オープンイノベーションに存在する問題点:シーズの枯渇原因(知財による開発に関して言えば):

1.簡単に発掘・応用開発できるシーズは掘り尽くされてきた。2.シーズ発掘に参画する有能な研究者の減少

80年頃のベンチャーには有能な研究者・経営者がこぞって参画大学の貢献は必須

シーズ枯渇への国際的対応・国家による戦略的取り組み

フィンランド、スエーデン等の北欧諸国(教育レベルの向上とベンチャーインキュベーション(メディコンバレー))シンガポール、その他

問題点:シーズソースの絶対数の欠如(小国の問題点)

我が国の立場は?・一億以上の人口を抱える大国。・教育レベルは高い。・開発能力は高い

何が妨げになっているのか。・急激な経済の変化(国内における減速)・・・・研究投資の減少・・・・不景気感による方向性の失墜・既存産業の海外移転による国内産業の縮小・・・・産業形態の変化・・・・投資方向の欠落・戦略性の欠如・・・・我が国の持つ潜在能力の埋没

どうすればよいか?? 5

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ライフサイエンス分野知財の戦略的かつ国際的出願

基本特許の国際ライセンス化国際共同研究の促進

国際オープンイノベーションへの参画・新産業創成

京都大学における 近の改革

改革の効果従来の改革1.国際ネットワークの充実

大学間、対国際機関・企業等

2.産官学組織の改革業務内容の合目化人員配置の合理化TLOの組み込み

3.法務体制の充実国際ネットワークの充実邦文・英文契約書類等の

完備人材の確保と育成

4.保有知財の整理

京大単独出願特許の取り扱い・重要発明の米国仮出願、PCT出願・特に、ライフサイエンス知財の米国仮出願、PCT出願

・学内知財の分類・整理・マップ作製

共同研究契約書の見直し(共同出願特許取り扱いの簡略化)

・出願費用の企業負担・知財の取扱いは、譲渡、独占的ライセンス、非独的ライセンス・非独占的ライセンスの場合、本学および企業は独自にライセンス権を行使する

ライフサイエンス分野知財に関する学内調整

・臨床関連以外は産連本部+関西TLOでライセン

ス活動

PCT出願も企業負担

海外基本特許のポートフォリオの充実・特にライフサイエンス分野

ベンチャー起業・育成

技術移転の充実・特許ライセンスの増加・国内外共同研究増加

自立化促進プログラム等により、これまでに整備された機能(京都大学の例)

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更なる産学官連携活動の促進に向け、足らない機能、課題

産官学連携事業に関わる人材育成とシステムの強化(更なる熟成)・研究人材の育成と勧誘(選択と集中)

選択と集中が必須(選ばれた大学への研究者の集中と投資の集中)教員人事の改革(海外留学経験の必須化)

・若手研究人材の育成(大学による強い指導)研究環境の充実(研究費からの大学院生への給与支払い)基礎科目、リベラル・アーツ、産連関連授業の充実と厳しい教育

・産官学連携事業関係者の能力およびシステムの向上コーディネーター等産官学連携事業に携わる人材の教育・育成(アメリカ:PhD+MBA+企業経験10年程度)とステータス向上契約書等の完備と対企業対応法の取得、さらには法務の強化産官学連携事業に関する大学間ネットワーク強化、全体のレベルアップ非正規研究員の5年任期制に対する改革(産学連携・技術移転の継続性改良)

・大学知財の整理と強化共同出願特許に関する取り扱いの明確化(ほとんどライセンス収入の見込めない特許の取り扱い)基本特許の発掘と国際出願(米国仮出願、PCT出願)(JSTによるPCT出願選別法の改良)、戦略的ポートフォリオ化

国際ライセンス技術の向上(小ブースにおける30分程度の短時間での英語での交渉能は必須)・ベンチャー育成法およびシステムの向上

ベンチャー起業に関する教育システムの強化大学発基本特許を基盤とするベンチャーの起業・育成のためのシーズファンドの準備ベンチャーファンドの充実、アントレプレナーの発掘、ハンズオン育成システムの育成

・グローバリゼーションへの対応技術移転・産学連携に関する国際動向の把握、海外先端大学・政府機関・研究所・企業等との強力なネットワークの構築アンカーとなる提携先の確保・契約国際言語を駆使する人材の確保・育成

シーズ活性化に関する新しい取り組み(国際的戦略傾向へのキャッチアップ)・Academia Research Organization (ARO)やテーマ集中型サイエンスパークに関する情報収集と分析そして参画

オープンイノベーション参画のための産官学連携機能の国際化・産官学連携事業(技術移転事業)本部のレベルアップ・産官学連携本部間の国際的リンクとオープンイノベーション化

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新たな活動形態・システムに関する提案およびそれに対する国の支援のあり方

新産業創出による国力の強化には国際的オープンイノベーションへの参画は必至であり、これに対応すべく、我が国における以下の産官学連携機能強化のための国家的支援が必要と考える。

1.「教育の徹底化による研究開発力の強化」への支援・科学教育等の徹底による、心の強い若い研究者の育成、選ぶ側の「目」の育成・研究の重点化と基本特許を見逃さないシステムの構築・技術移転事業を専門とする人材の育成・能力向上と国際化(PhD+MBA+企業経験のある若手の育成とステータスの確立)

2.「知財創出・ライセンス化の国際化への対応」への支援・大学発(単願)基本特許の強化と国際化の徹底(国際基本特許取得)・人材の国際化による国際特許のポートフォリオ化の徹底・国際的知財移転技術の向上

3.「新産業創出を目指した選択と集中の徹底」への支援・イノベーション追求型と地域振興型の明確な区別(ベンチャー育成による新産業創出と地方産業の開発とを明確に分離)・先進型による遅行型のレベルアップ(ネットワーク化による国内・地域全体のレベルアップ)・これまでの国際化の成果を生かした徹底したベンチャー育成に関する概念・システム構築と実施(5‐10年後を見据えた対策)、

特に、大学の産学連携・技術移転をビジネスとしてとらえた事業推進が必要(法律上の足枷の多い国立大学法人への欧米並みの制約緩和)

4.「戦略と評価システムの徹底」への支援・国際連携を通した国際基準に適応できる産官学連携技術移転事業体制の構築・戦略的産官学連携技術移転事業開発(フィンランド(ディコンバレー)やシンガポールなどの小国が例)・人口1億以上の大国としての我が国の利点(シーズ創生の起点が多い)を生かした戦略と実施

5.「国家予算等と民間資本の融合」への支援・海外で行われており我が国が遅れている、産官学連携事業への民間資本の投入を実現

6.「新規新産業創生システムへの対応」への支援・ライフサイエンスにおけるARO構築(我が国単独では困難か?国際的事業として欧米との連携?)

・サイエンスパーク構築(大学主導。地方自治体は周辺のインフラ整備を行い、民間資本の投入で開発。国は全体のバックアップ。)・国際オープンイノベーションに参画する総合力の開発(国際産官学連携による国際人材の獲得・育成、集中と選択) 8

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付録:ARO ・サイエンスパーク

「研究者の人口密度=研究アクティビティー」は古くからのアメリカの基本的概念であり、今でも基本である。(左図:1980年頃のNIH)

シーズ活性化のための国際的戦略傾向ARO(Academia Research Organization)

・ライフサイエンス分野におけるシーズ枯渇に対する取り組み(有能な研究者を集め、Genentech時代の再来を)。

・インセンティブ:シーズから生産の一貫した研究環境によりし、学内では不可能な高密度な研究とハイレベル論文の創出を実現・シーズと生産の中間に位置するProof of concept部の強化(TRや動物実験施設等をもち、シーズから臨床データまでを網羅)

・海外関連機関とのネットワーク構築によるオープンイノベーション化サイエンスパーク

・シーズ開発に有能な研究者を集める(インセンティブ:高度な論文の創出可能な環境、国際特許のポートフォリオ化)

・テーマごとに設置し、1キロメートル四方に、アドミニストレーション、アカデミア、ベンチャーインキュベーション、生産ライン等を高密度

に設置(高度集積高人口密度施設:米国における例やフランスMINATECにおけるICT)

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創薬におけるARO (Academia Research Organization)

およびScience Park (Venture Incubation)

2003年以降、薬剤候補のライセンスが活発化しているが、一方ではリスク回避傾向が高く、治験データ・概念実証データ

が無い薬剤候補に対しては、関心が低い。このため、トランスレーショナル・リサーチ研究所等を設立する大学ができたが、最近では、これらがARO(Academic

Research Organization)に変貌する傾向もある。AROとは、大学の有する多くの専門性や特徴を活用し、治験などを収益事業として行う組織である。世界最大のAROであるノースカロライナ州のデューク大学が運営するDuke Clinical Research Institute(DCRI)では、小児疾患、高齢者疾患、ゲノミクス・プロテオミクス、プライマリー・ケア分野での多国臨床試験(臨床試験フェーズI~IV)が可能であり、760件以上の臨床試験フェーズI~IVを実施した。DCRIの従業員は1100人で、このうち220人がデューク大学の教員である。

多くの大学では、細胞でのインビトロ・動物でのインビボデータを基に大学発バイオベンチャーをスピンアウトまたはバイオベンチャーにライセンスを図っている。バイオベンチャーが成長するにはVC投資家、弁護士・弁理士、大手製薬・バイオ企業、CROや大学が集結している場所が有利であり、米国では産業クラスター化が進んでいる。クラスターで重要なのが、

インキュベーション施設やサイエンスパークである。米国東海岸ではペンシルベニア州フィラデルフィアのサイエンスセンター(1963年)、マサチューセッツ州ケンブリッジのケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)(1999年)、ニューヨーク市のインキュベーション施設East River Science Parkがある(2010年)。

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創薬市場の状況• 世界の処方薬市場:年間8,800億ドル

出所: IMS Health 11

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処方薬売上上位100位の地域的割合

出所: IMS Health World Review Analyst

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大手製薬の主力製品の特許切れ状況(パテントクリフ)

医薬品名 適用疾患 製薬企業名 米国売上げ (2009年) 特許切れ期限

Aricept アルツハイマー病 エーザイ 13億ドル 2010年

Cozaar 高血圧 Merck 7億ドル 2010年

Taxotere ガン(抗がん剤) Sanofi-Aventis ~12億ドル 2010年

Protonix 胃酸の逆流 Wyeth(現Pfizer) 5億ドル 2010年

Levaquin 感染症 (抗生物質) Johnson & Johnson 14億ドル 2010年

Seroquel 統合失調症・双極性I型障害 AstraZeneca 31億ドル 2011年

Advair 喘息・慢性閉塞性肺疾患 GSK 37億ドル 2011年

Zyprexa 統合失調症・双極性障害 Eli Lilly 19億ドル 2011年

Plavix 血液凝固抑制(冠動脈疾患) BMS・ Sanofi-Aventis 42億ドル 2011年

Lipitor 高コレステロール Pfizer 54億ドル 2011年

Actos 2型糖尿病 武田薬品工業 25億ドル 2011年

Singulair 喘息・季節性アレルギー Merck 30億ドル 2012年

Nexium 胃食道逆流性疾患 AstraZeneca 50億ドル 2014年

出所:Burrill & Co., drugs.com製薬産業の背景:大手製薬は2010年~2013年、パテントクリフの影響により、年間5,000 億ドルに及ぶ売上を失う危機に陥っている。

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パテントクリフの大手製薬への影響

出所:タフツ大学医薬品開発研究センター14

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ARODuke Clinical Research Institute(DCRI)

• DCRIは、世界 大のARO

• 小児疾患、高齢者疾患、ゲノミクス・プロテオミクス、プライマリー・ケア分野での臨床試験フェーズI~IVが可能

• 既に760件以上の臨床試験I~IVを実施

• DCRIの従業員は1100人、このうち220人がデューク大学の教員

出所:Duke University Health System15

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Cambridge Innovation Center(CIC)

• ボストン地域では 大のインキュベーション施設

• 1999年設立、500社が入居しており、このうち150社がベンチャー企業

• MITに隣接、ハーバード大学までは2駅

出所:JETRO16

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Science Center(Philadelphia)

• 1963年創設

• 現在。約35社のベンチャーが入居

• これまでに受け入れた企業の数は350以上

• 病院、大学、CROとのネットワークが豊富

• 卒業企業の雇用者数合計は15,000人、売上合計は年間89億ドル以上

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East River Science Park

• 2010年創業、マンハッタンのミッドタウン

• 大手製薬がアンカーテナント、その他は医療機器メーカや中堅バイオが入居

• ニューヨーク大学医学病院が隣接

• 将来的には合計3棟のビル(現在1棟)

出所:New York Economic Development  Corporation18

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概要 CIC Science Center East River Science Park

創業 1999年 1963年 2010年

所在地 One broadway, Kendall Square, Cambridge, MA 02142 (MIT近辺)3711 Market Street, Philadelphia, PA 19104

(ペンシルベニア大学近辺)504 1st Avenue, New York, NY 10016 (NYU附属病院

近辺)

敷地面積 100,000平方フィート(ビルの11階から16階) 17エーカー(15施設のうちビル3施設がインキュベーションセンター) 16階建、300,000立方フィート

入居スペース 1人部屋から(公衆電話ボックスの2倍のサイズ)、共有スペースもある。共有スペースは1人から、個室は2人から 2人部屋から。共有ペースはない。

CEO

Timothy Rowe創業者兼CEO。Timothy Rowe氏の経歴:CICの創設者の一人で現CEO。MITスローン(大学院)卒業後、日本の三菱総合研究所に入社。日本語堪能。MITスローン校では講師の経験もあり、MIT、ハーバード大学に強いコネクションを持っている。また、同氏はDFJ New England FundというVCのパートナーでもあり、アーリーステージのベンチャー企業への投資も行っている。大学はAmhert College (MA州)、在学中同志社に留学。

Dr. Stephen S. Tang氏の経歴:Tang博士は、サイエンスセンターの会長兼CEOに任命される前、オリンパス・アメリカの副社長をしており、10億ドルにも及ぶオリンパス・アメリカのライフサイエンス事業を任せられていた。オリンパス・アメリカの前は、水素燃料電池などのエネルギー技術を開発しているMillennium Cell社の会長兼CEOをしており、2000年上場を果たしている。その他、Tang博士は、ヘルスケア・コンサルタント企業のA.T. Kearney社の副社長兼担当責任者および化学・環境コンサルタント企業のGemini Consulting社の副社長兼担当責任者でもあった。このように、Tang博士は、ライフサイエンスおよびエネルギー分野での豊富な経験を有している。

Joel Marcus会長兼社長。Marcus氏の経歴:1997年からAlexandria Real Estate Equities社の社長である。Alexandria Real Estate Equitiesは1994年創業し、Marcus氏は創業メンバーでもある。1986年から1994年からは弁護士事務所Brobeck, Phleger & Harrison LLPの共同経営者であり、さらに1984年から1994年までは、キリン・アムジェンのジョイントベンチャーの法務顧問でもあった。

サービス内容個室、会議室、キッチンネット、郵便サービスを提供。コンサルなどソフトサービスは主に外部委託

ウェットラボ、個室、会議室、キッチンネット、郵便サービスを提供。コンサルなどソフトサービスは主に外部委託。定期的にベンチャー支援セミナーを開催

ウェットラボ、個室、会議室を提供。

入居費(2人部屋)

月:約2000ドル(1人当たり1000ドル)+400ドル共有費(1人当たり200ドル)(2009年)

月:約1800ドル (2009年)(1人当たり900ドルの計算)。ウェットラボは月2000ドルから

月:不明(個室は~3,500ドル)

現在の入居状況居住率8割~9割前後(約150社ベンチャー企業が入居)。IT(6割)およびバイオ企業(4割)が入居 (MIT発ベンチャー5割)。

居住率7割~8割前後(約35社のベンチャー入居)。殆ど(約8割)がバイオ・医療機器系のベンチャー・中小企業。

ほぼ満室(居住率96%)(ベンチャーは短期的入居)

入居企業の例Novozyme社やSkye Pharma等欧米上場企業なども入居(米国拠点として活用)、さらにAmbient DevicesなどITベンチャーも数多く入居している。

Avid Radiopharmaceuticals (Eli Lillyの子会社:Eli Lillyが2010年に3億ドルで買収)やイスラエルのRosetta Genomics 社など中堅バイオ以外に多くのバイオベンチャーが入居

Pfizer、Eli Lilly

成功例Coatue Corp (AMD社が2003年買収(買収価格未公開))、Systinet社(Mercury Interactive(現Hewlett-Packard)が2006年に1億500万ドルで買収)

Centocor社:1979年設立、抗体治療薬を開発。1999年にJ&Jに約50億ドルで買収。Morphotek社:2000年設立、抗体治療薬を開発。2007年にエーザイ社に約3億2500万ドルで買収等、卒業企業(成長・買収)は350社に及ぶ

-

近辺の状況

IT、バイオのベンチャー企業が集積しているボストンで 大のインキュベーション施設。MIT、ハーバード大学にも近く、大学、ボストンの起業家、VCとのネットワークも確立。また多くの欧州製薬(Novartis、Shire)のR&D拠点でもあり、大手バイオのGenzyme社やBiogen Idec社が所在する。さらに、同ビルの3階~6階はGoogleが入居している。

ニュージャージー州およびペンシルベニア州は大手製薬企業(J&JやMerck)の集積地にあり、製薬企業、ペンシルバニア大学、医療機関とのネットワークが確立。FDA、NIHにも近く臨床試験等に関する知見を有した人材が近辺に多くいる。

金融(VC・PE・ヘッジファンド)や大手製薬(PfizerやBMS本社)に囲まれた環境には大きなメリットがある。また、NYUやロックフェラー大学、コロンビア大学、メモリアル・スローン・ケタリング、アルバート・アインシュタイン大学など有名な医学大学が付近に多くある。

利点・欠点

入居企業は2001年から総額8億2,500万ドルに及ぶ投資をベンチャーキャピタルから受けており、投資なしで成功する企業も少なくない。しかし、ウエットラブが無いため、必要な場合、近辺で借りる必要がある。2015年頃にはAlexandria Real Estate Equities社のインキュベーション施設が隣に出来るため、インキュベーションビジネスの競争が激化する見込み

全米 古かつ都心部 大のサイエンスパークであり、多くの成功例を輩出している。しかし、ニューヨークに比べ立地的に不便である。また、サイエンスセンターは以前は独自のファンドや専門家を備えていたが、大幅なリストラによりファンドや専門家が全て無くなった。エンジェル投資家やVC投資家は近辺にいるが、ボストンやニューヨークに比べ、少ないと思われる。

インキュベーション施設と言うより、企業用ホテルである。一流シェフを構えたレストラン、大型イベントやセミナーの開催が可能な会場、さらに短期入居者用のスペースは、テナント・ホテルと呼んでいる。ロビーのディスプレイ・家具も一流デザイナーによるもの。また、ミーティングルーム・会議室も多くあり、キチネットもある。入居費が比較的割高。そのため、大手・中堅製薬・バイオ企業向けの施設である。 19

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創薬以外の分野における

Science Park

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・教育・研究・民間企業の三つの主要な活動を行う機関を、すべてを1~2kmの範囲 (自転車で10分)に集積された欧州 高峰のユニークな知の集積とその発展・展開拠点である。・イノベーション・創成とその社会還元を効率化・加速化するために、知の集積、 Center of Excellence (100kmの範囲内)から、さらにその応用能と展開能を高める Network of Excellenceへの試みがなされてきた。・研究所と民間企業と大学が参画した地方単位のクラスターが形成され(50 kmの範囲)、それがさらに存在域を小さくして、テクノパークと言う形で高度な技術施設を協同活用するこがおこなわれる(10kmの範囲)。・Innovationで欠かすことができない要素は、異なる背景を持つ関連の人々がいかに集まり・交流できるかである。MINATECは、その技術活動域を「Micro Electronics」の一領域に特化して、1~2kmの小さな範囲に、諸基礎研究所と大学を招聘し、教育・基礎研究を行い、20kmの範囲内の近距離にある企業からの人的な参画を得て、さらに契約・知財・技術移転活動面から補佐する機関を加えた。・活動を開始して10年 1,300億円の投資をしつつ、数々のイノベーションとその実用化に実績をあげ、地方自治体と連携しその雇用に貢献しつつある。パリ首都圏に次ぐフランス 大の公的研究拠点ひとつの成功モデルであると思われる。

構成①CEA (フランス原子力代替エネルギー庁)の産学連携責任者、②グルノーブル工科大学々長、③企業: ST Microelctronics社、④地方自治体(グルノーブル市、グルノーブル市近隣を含む二つの県)

活動規模・Grenoble市の市街地に位置し、 MINATECとのブランドのもと、・13ヘクタール(2012年)の敷地内に、 [(2000年=2ヘクタール、2006年= 7ヘクタール))・研究開発分野をMicroelectronics分野にかぎり 、● 1km~2kmの範囲内に 10,000㎡のクリーンルーム等 先端のインフラを整備・4,000名の関係者・研究者:2,400名 (うち、PhD 150名、ポスドク400名)、(学生:1,200名、産業人:600名(左記の研究者中)、技術移転関係者:150名)・特許出願 :300件・ベンチャー創生: 5件・学術ペーパー:1,600件、・産学共同プロジェクト 20件 (いずれも、2010年前後の各年)・年間予算: 3.5億ユーロ(350億円)(1/3 :政府・公的資金(基礎研究と教育へ)、1/3:競争的資金 (プロジェクトへ)、

1/3 産業界より(応用研究へ)・MINATECが運営委員会のもとに統括し、総括的な戦略を誘導し、予算は研究、大学、企業プロジェクトがそれぞれ独自にもつ。

MINATECMicroelectronics Nanotechnology Innovation Center)

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Page 22: オープンイノベーションの時代に 大学はいかにあるべきか€¦ · オープンイノベーションに存在する問題点:シーズの枯渇 原因(知財による開発に関して言えば):

Mr J‐C Guibert, Presen at Kyoto Univ.  01.03.2012

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Mr J‐C Guibert Presen at Kyoto Univ.   01.03.201223

Page 24: オープンイノベーションの時代に 大学はいかにあるべきか€¦ · オープンイノベーションに存在する問題点:シーズの枯渇 原因(知財による開発に関して言えば):

・新産業創生のためには、産官学連携技術移転事業は必須である。ベンチャー起業・育成のための、教育、ファンド形成、育成システム等の更なる強化が必要。

・我が国における産官学連携に供する大学内のシステムは熟成の時期を迎えている。選択と集中が重要な段階になっている。イノベーション追求型と地域振興型の明確な区別が必要。先進型による遅行型のレベルアップが必要。全体のレベルアップを行う。国際的に活躍できる産官学事業推進人材の育成を行う。

・更なる向上のためには、自立化促進プログラムによる「国際化」で得られた成果を生かすべき。国際ネットワークを活用し、人材の国際化や国際動向の正確な把握とこれに対処できる産官学連携システムを構築する。

・国全体の産官学連携事業においては、戦略をもつことが重要である。フィンランド(メディコンバレー)やシンガポールなどの小国が例であり戦略的であるが、小国の弱点は人口が少ないためにシーズが乏しいことである。我が国は、人口1億以上の大国としての利点(シーズ創出の起点が多い)を生かすべきであり、同時に、今までの蓄積された実績を生かすべき。戦略をもって知恵を集中することが重要である。

・ベンチャー起業・育成による新産業振興、それによる雇用創出と税収への貢献は 大の目標であり、国際オープンイノベーションに参画できる体制を作ることが重要である。

研究者が高密度で研究を展開するシステムが必要。海外で行われており我が国が遅れている、民間資本の投入が必要。AROの我が国単独での構築は困難か?国際的事業として欧米との連携が重要。

サイエンスパーク構築に関しては、大学、地方自治体、民間、国が協働する。

まとめ

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Page 25: オープンイノベーションの時代に 大学はいかにあるべきか€¦ · オープンイノベーションに存在する問題点:シーズの枯渇 原因(知財による開発に関して言えば):

基本的条件の完備我が国の産官学連携は熟成の時期を迎えており、以下の基本的条件の整理・強化は必須

自立化促進プログラムの「国際化」で得られた成果の活用による一層の機能強化・学内全体機能の更なるレベルアップ・学内意識の更なる改善・国際ネットワークの更なる強化・国際的産連人材の育成・起業人材・アントレプレナーの育成・開発

人口1億以上の大国としての利点を生かした国際オープンイノベーションに対応できる体制の充実(シーズ開発型体制の創出)と中長期大型プロジェクトの実施による実現・研究者が高密度で研究を展開する総合システム(シーズ創出部、Proof of Concept部、生産部)の導入(ARO、サイエンスパーク)ARO:国際的事業として展開サイエンスパーク:大学、地方自治体、民間、国の協働で展開・重点課題の設定:開発課題ごとのオープンイノベーション大型民間資本の投入・徹底したシーズ部への有能な研究者の誘導

産連機能・法務体制の充実・保有知財の整理・知財戦略の徹底(基本特許重視)・全研究領域知財の掌握

産連組織・産官学組織の改革

(合目性重視)・国際ネットワーク充実・アウトソーシング導入

(TLO、VC)

教育・産連事業の理解と重要性の徹底・起業人材の育成

新産業創出

オープンイノベーションの時代に産官学連携のあるべき姿(基本的概念:雇用改善と税収増加のための新産業創出に産官学連携事業は必須)

企業

大学

選択と集中による支援・イノベーション追求型と地域振興型の明確な区別・先進型による遅行型のレベルアップ策・寄附に対する税制の改善(特区導入)

文科省

産連への積極参加・産連の重要性の一層の理解と積極的参画

大型資金投入

オープンイノベーションへの迅速な対応

選択と集中

積極展開

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