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ジェトロハノイメールマガジン Vol.85
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ハノイは曇り日が続いていますが、最近は青空が見える時間も少しずつ増えています。しばらくすると天
然サウナと言われる高温・多湿度の季節に入りますが、その前の過ごしやすい一時のようです。オフィスで
は小中高生をもつお母さん達が、夏季休暇中に子供達を塾に通わせるか、稽古に行かすか、家族旅行を計画
するかそれぞれの試行錯誤を昼時に話題にしています。ベトナムは国民の祝日が少ないため(注)、ことさら
夏季休暇を心待ちにするのかもしれません。
4月からジェトロハノイ事務所に新しく 3名の駐在員が着任しました。2017年度、弊所は所長・2名の
次長、以下計 10名の駐在員と 16名のスタッフ、総計 26名で運営しております。日本企業のベトナムへの
関心は右肩上がりが続いており、2016年度にハノイ事務所が対応した相談件数は 1,000件以上になりまし
た。ジェトロは世界 55カ国 74カ所に事務所を構えますが、当所がご対応する個別相談件数は世界で 3指
に入ります。ホーチミンの事務所も同様なので、今ベトナムに対する期待がどれだけ高いかがわかります。
日本を含む外資受け入れにベトナム全体が向かっているのも日々の生活で感じます。ここ数ヵ月でハノイ
のあらゆるところで工事現場が増えているのが目につきます。ジェトロの事務所や旧市街地のあるホアンキ
エム区では、昼夜・週末・休日問わずショベルカーやランマーの音が響いています。騒音がうるさいという
のではなく、急ピッチでインフラ整備が進んでいる様子はエネルギッシュなベトナムそのものです。ここ数
年でベトナムは大きく発展したといわれています。先数年でさらに大きく変革するのは手に取るようにわか
ります。日本でご愛読いただいている皆様には変わる前のベトナムをご覧にいただければ、そしてその際に
はハノイ事務所へご来所いただければと、事務所一同お待ちしております。
(注)2017年ベトナムは国民の祝日:新年(1/1)、旧正月(1/26-30)、雄王記念日(4/6)、南部解放記念日(4/30)、メーデー
(5/1)、建国記念日(9/2) ※但し 2017年の旧正月・南部解放記念日・建国記念日は週末なので振替休日が発生(出典ジェ
トロ)
(笹井 かこ)
ジェトロハノイメールマガジン
2017年 4月号 / Vol.85 発行:日本貿易振興機構(ジェトロ)ハノイ事務所
<目次> 1.ジェトロハノイ事務所よりご挨拶 2.ジェトロからのご案内 3.ベトナム経済コラム <ベトナムは TPPをあきらめてないのか? 下 >
4. ベトナム法務相談室 <ベトナムの法制度の特徴その1- 土地と建物の法律関係>
5. ベトナム会計・税務Q&A <移転価格に関する新 Decreeについて>
6. ベトナム労務の基礎知識 <労働許可書の免除について>
7.法改正レポート(2017年 3 月) 8.投資関連資料 9.ベトナム展示会情報
健康長寿広報展 inハノイ(2017年 3月 4日~5日)
※写真撮影:ジェトロ
ジェトロハノイメールマガジン Vol.85
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(1)調査資料のご案内
以下の調査資料をジェトロウェブサイトに掲載しています。ぜひご覧ください。
①ベトナムにおける On the Spot Export/Import制度(2017年 3月)
ベトナムから最終的に輸出される商品の製造あるいは加工を手掛けている企業が、外国の取
引先からの指示に基づき、ベトナムの企業から当該商品の材料をベトナム国内で調達する On
the Spot Import / Export制度について、その仕組みや関係する税制、よくある質問等につい
て解説。
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2017/02/a3ebead4573f1dba.html
②ダナンスタイル(2017年 3月)
ベトナム中部の社会経済の中心都市ダナン市は、ホーチミン、ハノイに次ぐ第 3の都市であり、
人口は 100 万人を超え、一人当たりの GDP は 3,059ドル(2016年推計)と、耐久消費財などの普
及が進むとされる 3,000ドルを突破しました。本レポートでは、刻々と変化するダナンの消費市場
を「衣・食・住」の各シーンに分け、写真、統計データ、消費者アンケート調査、専門家インタビ
ュー、さらには現地で展開している日系企業へのヒアリング内容などを盛り込み紹介。
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2017/02/32acf5c646e9de17.html
③ベトナム電力調査 2016(2017年 3月) ベトナム電力供給は、これまでと比べ改善され安定した状況にあります。本調査レポートは、これ
までに調査した(1)電力状況、(2)電源開発進捗状況、(3)電力需要見通しに加え、改定
PDP7や注目される再生可能エネルギーの現状と課題を分析。
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2017/02/401bfd604d232c7d.html
④ベトナム北中部日系製造業・関連商社サプライヤーダイレクトリー(2017年 4月)
在ベトナム日系企業の現地調達のうち多くを占めるのが、日系企業からの調達です。依然として、
ベトナムにおいても日系企業間の取引が重要であることから、ジェトロハノイ事務所では 2014年 7
月以降、在ベトナム(北中部)の日系サプライヤー調査を実施しています。本版はその最新版とな
ります。
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2017/02/3aee396785702369.html
********************************************************************************************
(2)TV番組「世界は今 -JETRO Global Eye」のご案内
ジェトロでは、国際ビジネス情報番組「世界は今 -JETRO Global Eye」を放送中です。世界の経
済・産業の最新動向や貿易・投資などの国際ビジネスに役立つ情報をテレビやインターネットを通じ、
皆様にお届けしています。
今般、ベトナムをテーマに、新たに注目されている地域とユニークなレンタル工場を紹介する特集
が放映されました。ぜひご覧ください(視聴無料)。
◆ベトナムに新たな拠点を探す -ものづくり企業の海外進出-(2017年 3月 22日)
https://www.jetro.go.jp/tv/internet/2017/03/2059c30105909a00.html
ジェトロハノイメールマガジン Vol.85
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(3)「ベトナム北中部 日系製造業・関連商社サプライヤーダイレクトリー」の掲載希望
企業募集
ジェトロハノイ事務所は、製造分野における当地進出日系企業の調達ニーズ、および供給ニーズに応えるため、「ベトナム北中部 日系製造業・関連商社サプライヤーダイレクトリー」を作成、公開しており
ます。新規掲載および更新依頼は随時受け付けておりますので、掲載・更新をご希望の方は以下の通り、
担当者までご連絡ください。
○新規掲載
以下専用ウェブサイトにアクセスの上、所定の送付先まで情報をお送りください。
URL:http://www.jetro.go.jp/jetro/overseas/vn_hanoi/supplier.html
※レイアウトは変更できません。写真は別シートに貼り付けてお送りください。
○更新(修正)希望
[email protected]まで更新内容をお送りください。
【お問い合わせ】ジェトロハノイ事務所 担当:三原
TEL:+84-4-3825-0630/Email:[email protected]
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(4)ジェトロハノイ事務所 無料法務・税務・労務相談のお知らせ
ジェトロハノイ事務所では、在ベトナム日系企業の皆様からの、法務・税務・労務に関する無料法律相談を承っております。日頃の業務で生じる問題に対し、専門家の意見を交えて回答いたします。
下記までご相談をお寄せください。
【受付窓口】
ジェトロハノイ事務所(担当:三原)
TEL:04-3825-0630/Email:[email protected]
【ご利用にあたってのご注意】
ご相談は在ベトナム日系企業の方に限ります。日本にある企業様はジェトロの「貿易投資相談サ
ービス(http://www.jetro.go.jp/services/advice/)」等をご利用ください。
また、ご相談内容によってはお受けできない場合がございますので、ご了承ください。
‐ベトナムは TPPをあきらめてないのか? 下‐
ベトナムの有識者による米国 TPP離脱の見方に関しての 2回目。今回は、TPPと ASEAN10ヵ国と日・
中・韓・インド・オーストラリア・ニュージーランドが交渉に参加している東アジア地域包括的経済連携
(RCEP)に関して、ベトナムの有識者と研究者の見解を伝えます。
<TPPはベトナム経済構造改革に必要な外圧>
研究者の中では、ベトナムにとって TPP は自国の経済構造改革をするために必要な協定と評価する意
見があります。具体的には、ベトナムは、国有企業改革、労働、知的財産権などをはじめてとして、独自で
経済構造改革はできないものの、TPP は、協定書が 21 分野・30 章と多岐にわたり、約束実施に強制力が
あるため、この外圧を使って経済構造改革ができるのでは、という見方です。また、別の研究者は、TPP
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は、締結済の他の FTA と比べ今後ベトナムが目指さなければならない経済構造や国際スタンダードが示さ
れているため、メリットがあると分析しています。
<RCEPは中国や韓国との生産ネットワークに優位なのか>
次に、RCEP に関しては、有識者と研究者の見解は大きく二つに分かれています。一つは、生産ネット
ワークから見た場合、中国や韓国が参加しているので優位と見る意見です。ある有識者は、RCEP が発効
され、原産地規則、特に付加価値基準を適用する場合、ベトナムは中国や韓国から多くの原材料と部品を輸
入しているため有利となり、生産ネットワークを構築できると期待しています。
もう一つは、RCEP が発効されても、産業構造上、有益ではないと言う意見です。ある研究者は、これ
まで通り、中国や韓国から原材料や部材の輸入に依存することは、ベトナムでは組み立てのみの、付加価値
が低い製品しか生産できないことになり、有益ではないのではと分析しています。上記の RCEP の議論は、
前者が企業の視点から、後者が現在の経済構造の視点から述べた意見といえます。
<米国が TPP交渉にもう一度参加するとの見方が大きい>
TPP と RCEP の議論において、有識者や研究者の間では、TPP はベトナムの経済構造改革のためにも必
要であると見る向きが多く聞かれます。
このような中で、米国を除く TPP 参加国 11 カ国(TPP-11)は、5 月下旬にハノイで開催される APEC
貿易相会合に合わせて TPP 関係閣僚会合を行うことになりました。ある研究者からは、米国もこの TPP-
11に、いずれ関心を示すのではないかと期待を示す意見も聞かれます。
(佐藤 進)
ベトナムの法制度の特徴その1- 土地と建物の法律関係
ベトナムの法令は、社会主義国の法令であるために、根本的な考え方が異なっていて、日本人には非常に
理解しがたい点がいくつかあります。その典型例が、下記に述べる土地と建物の法律関係です。
1.土地と建物の二層の関係
ベトナムでは、不動産は、土地とその上の定着物に分かれ、後者の代表は住宅やその他の建物です。
土地は全国民の所有に属し、国家がこれを統一的に管理しています。個人や企業は、国家から割り当てら
れ、または賃貸された土地の使用権を持つのみです。
しかし、土地の上に所在する住宅や、オフィスビルや工場や倉庫などの建物は、個人や企業が所有するこ
とができます。
よく、ベトナムで、「土地を買う」という表現が使われることがありますが、これは正確ではなく、第三
者から土地の使用権を譲り受けることを意味します。また、その土地上に建物があれば、多くの場合、建物
の所有権も合わせて譲り受けることが予定されています。
なお、土地法上、外国法人は 土地使用権をいかなる形でも取得することはできないものとされています。
しかし、外国資本が入ったベトナム企業(外国投資企業)については、土地使用権を(国家等から賃借して)
取得し、その上の建物を所有することが可能です。
外国投資企業の場合、土地法上、第三者から土地使用権の譲渡を受けることはできないと解釈されている
ため、外国投資企業がベトナムの「土地を買う」ということは本来できないはずですが、実務上は、工場が
建っている「土地を買った」と言われることが多くあります。このような場合、実際には、旧土地使用者が、
土地使用権をいったん国家に返却した上で、外国投資企業である新土地使用者が、国家から同じ土地使用権
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を賃借するとともに、上物の工場の所有権を、旧土地使用者から買い受けるという法的な形式をとっている
ものと考えられます。
2.土地使用権の目的や期限 - 土地使用権であり、土地所有権ではない意味
ベトナムでは、およそ土地の使用権は、住宅、農地、事業用地など、国家が認めた目的にのみ、また、土
地法で定められた期間内のみ(ベトナム人の住宅用地は、例外的に使用期限がありませんが)、使用するこ
とが認められ、それ以外の目的で利用することはできず、また、使用期間が終われば、国家に返却する必要
があります。
他方、日本の土地所有権は、期限なく所有し続けることができ、農地等のように法律上の用途制限がある
場合を除いて、所有している土地をどのような目的にでも利用することができます。日本の土地所有権とベ
トナムの土地使用権との違いを認識しておく必要があります。
ベトナムでは、外国投資企業が保有できる土地使用権は、投資登録証明書上認められた投資の目的のため
にのみ使用することが認められ、かつ、原則として最長 50 年の範囲で認められる投資期間中しかその保有
が認められません。
よく、市内の表通りに面した相当広い土地が空地になっていて、ベトナムの不動産会社が、日本人にこの
土地を買わないかと持ち掛けてくることがあります。
この種の土地には、その土地の元の使用者が、オフィスビルを建設するため、国家からその土地使用権を
賃借したが、資金ショートのため、コンクリートの基礎のみ作って、その土地の開発を何年も放置している
ような事情があるのが典型的です。このような場合、元の土地使用者によるその土地への投資の許可・登録
が当局によって取り消され、土地使用権は国家によって没収される可能性があるので、不動産会社の勧誘を
鵜呑みにして「土地」代金を元の使用者に払ってしまわないように注意すべきです。
【質 問】:移転価格に関する新Decreeについて教えてください。
【回 答】:
1. はじめに
移転価格税制とは、関連者間という特殊な関係を背景とする歪められた取引価格のために、本来
であれば、一方の国に所在する法人において計上されるべきであった利益が他方の国に所在する国
外関連者において計上され、一方の国で当該利益に相応する課税所得が減少してしまうことを防止
するための税制です。
ベトナム政府から税制改革を委任されている財政省は、上記の様にベトナム国外に所在する関連
者との取引を通じて、本来ベトナム法人において計上されるべきであった利益が他国に移転するこ
とを防止し、適正な国際課税の実現を図ることを目的として、2017年 2月 24日付で移転価格税制
に関する Decree No.20/2017/ND-CP(以下、Decree 20)を発行しました。
今回は、Decree 20にて作成が要求される移転価格文書の概要を中心に解説を行います。
【筆者紹介】
武藤司郎(弁護士) 日本国及びニューヨーク州弁護士登録。ベトナム外国弁護士登録。
1996年から2000年まで国際協力事業団の長期専門家としてベトナム司法省に勤務。2015年以降、ベトナム
日本商工会の法務小委員会の委員長を務め、ベトナム各種法案に対するアドバイス等に従事。2013年より西
村あさひハノイオフィスにてハノイ駐在。
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2. 移転価格文書の構成
Decree 20は OECD(経済開発協力機構)による「税源侵食と利益移転」(BEPS: Base Erosion
and Profit Shifting)に関する行動計画 13 の文書化要求事項を、ベトナム政府が自国の税制に組
み込んだ政令です。Decree 20では移転価格文書として以下の 3つの文書の対応を求めています。
1) Form 02: ローカルファイル(Local File)
ベトナム法人の個々の関連者取引における詳細な情報を記載し、税務当局が個々の関連者取
引における独立企業間原則の遵守状況を確認するために有用な情報を提供する書類。
2) Form 03: マスターファイル(Master File)
多国籍企業グループの組織構造、事業の概要、財務状況等に関する情報(グループの活動の
全体像に関する情報)を記載し、税務当局が重要な移転価格リスクを特定する際に有用な情
報を提供する書類。
3) Form04: 国別報告書(CbC Report: Country by Country Report)
多国籍企業グループの事業が行われる国ごとの収入金額、税引前当期利益の金額、納付税額
等に関する情報(国別の活動状況に関する情報)を記載し、税務当局が概括的な移転価格リ
スク評価を実施する際に有用な情報を提供する書類。
最終親会社がマスターファイルおよび国別報告書を作成している場合、マスターファイルについ
ては最終親会社が作成したマスターファイルを参照して作成することができ、また国別報告書につ
いても最終親会社が作成した国別報告書のコピーを提出することが認められているため、ベトナム
法人における作成負担は従来と比較して大きく変わらないと思われます。
なお、最終親会社がマスターファイルおよび国別報告書を作成していない場合の取り扱いが
Decree20 において明記されていませんが、OECD によるガイダンスにおいて、ローカルファイル
およびマスターファイルについては現地の税制に沿って導入され、当該国の求めに従って提出すべ
きとされていることから、マスターファイルについてはベトナム法人側で新たに作成する必要があ
る可能性があります。
3. 移転価格文書の作成期限および提出期限
移転価格文書は、毎年の法人税の確定申告書の提出時までにベトナム語で作成することが求めら
れており、税務調査の際に当局から書面にて提出の要求を受けた場合、15 営業日以内に移転価格
文書を提出することが求められています。
但し、税務調査以外で当局から書面にて提出の要請を受けた場合には 30 営業日以内に提出すれ
ば良いとされており、また合理的な理由がある場合には、15 営業日を上限として 1 度だけ延期す
ることも認められています。
4. 移転価格文書の免除規定
以下のいずれかの条件を満たしている場合、移転価格文書の作成が免除されます。
1) ベトナム法人の年間売上高が 500億 VND(約 2.2M USD)未満であり、かつ関連者取引総
額が 300億 VND(約 1.3M USD)未満の場合
2) 事前確認制度(APA: Advanced Price Agreement)による当局との合意をしており、かつ
APA規定に従って APA年次報告書を提出している場合
3) ベトナム法人の年間売上高が 2,000億 VND(約 8.8M USD)未満、かつ無形資産の開発や
使用による収益の計上や費用の発生がない“単純な機能のみ有する会社”であり、純売上高に
対する利息費用および税金費用控除前の営業利益の割合(営業利益率)が以下の一定率以
上の場合
・販売業: 5%
・製造業: 10%
・加工業: 15%
ジェトロハノイメールマガジン Vol.85
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但し、企業が将来年度における国外関連者との取引価格の算定方法について税務当局から事前に合
意を得る事前確認制度は、申請に時間および費用を要することから未だ一般的に利用されている制
度ではありません。また Decree 20 において、“単純な機能のみを有する会社”の定義が明記されて
いない点については、注意を要します。
※次号でも引続き、Decree 20発行に伴う主な変更点について解説します。
– 労働許可書の免除について –
2017年度の第1回におけるテーマは、労働許可書の免除です。昨年公布された政令
No.11/2016/ND-CP(以降は政令 11と表記)、労働傷病兵社会事業省の通達No.40/2016/TT-
BLDTBXH(以降は通達 40と表記)による、実務への影響なども含めて解説します。
●免除の対象者
労働許可書免除の条件は 15以上ありますが、日系企業や在留邦人に関係する主要なものを記載しま
す。
(1)有限会社の出資者(2)株式会社の役員会のメンバー(3)国際組織・非政府組織のベトナム
駐在員事務所・プロジェクトの代表者(4)販売活動のため 3ヶ月未満滞在する者(5)生産経営に
影響を与える等の事故、技術上の不測の事態に対応するため 3ヶ月未満滞在する者(6)弁護士の許
可書を得た者(7)ベトナムが加盟した国際条約の規定に基づく者(8)ベトナムで就学中の学生・
生徒で就労する者(労働法第 172 条)(9)経営、情報・通信、建設、流通、教育、環境、金融、医療、観光、文化・娯楽、運輸の 11のサービス分野の企業に、12ヶ月以上の勤務後に社内異動する者(10)
ODA案件を支援する技術者、専門家(11)ボランティア(12)ジャーナリスト(政令 11の第 7条)
●発給の対象外
出張者などについては、下記の条件を満たす場合、労働許可書の発給対象外となります (政令 11
の第 7条 2項 e)。ここでも職位などが条件となりますが、出入国時に確認を要求される事もなく、
実務上の問題は発生していないようです。
・専門家、経営者、CEO、あるいは技術を持つ外国人で、連続で30日未満、年間合計で90日を超えな
い期間就労する者
●免除の申請
1.概要
就労する外国人の勤務開始日から遅くとも 7 営業日前までに、雇用者は地域の労働傷病兵社会局に、
労働許可書が不要であることの承認申請書を、提出する必要があります(政令 No.11 の第 8 条 2 項)。
また、申請に必要な書類は以下の通りです(政令 11 の第 8 条 3 項、通達 No.40 の付録フォーム 12)。
(1)承認申請書(2)発行が不要であることを証明する書類(3)顔写真(3 ㎝x4 ㎝)(4)人民
【筆者紹介】
村田昌平 (KPMG ベトナム 公認会計士) 2011年2月にKPMG有限責任あずさ監査法人に入所。日本国内において主に電機メーカー、専門商社等の会計監査
業務に従事。2015年8月にKPMGハノイ事務所に入所し、現地の日系企業に対する投資、会計・税務、法務、人事等の
アドバイスを提供している。
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委員会の委員長が発給した外国人就労の承認書
必要書類に(4)が追加となったのは、政令 No.11 の第 4 条 b に基づきます。同政令の施行日は
2016 年 4 月 1 日でしたが、実際に当局が要求するようになったのは、2017 年1月以降です。承認書
の取得には、地域により多少の差はありますが、申請から 2~3 週間はかかりますので、駐在員の赴任
前に取得しておく必要があります。なお、申請書類の提出より、3 営業日以内に労働許可書の免除を承
認する文書を取得できます(政令 No.11の第 8条 4項)。
2.11のサービス分野における申請
日系企業の駐在員の場合、これが最も多い事例と考えます。この場合、上記の必要書類の(2)に該
当するものとして、投資登録証明書、投資証明書の公証版などを提出します。(通達 No.35/2016/TT-
BCT 第 4 条 dd)。これらの証書に記載された事業コードの No.が、同通達の付録に記載された事業コ
ード(CPC コード)と、一致していることが条件です。事業内容が免除対象と同様であっても、この
CPCコードが証書に記載されていない場合には、申請が困難になります。
その他、免除の申請での注意事項は、下記の通りです。
(1)労働許可書の発給の手数料は、新規発給では 600,000VND、再発給では 450,000VND を超えな
いとされていましたが(根拠法:通達 No.02/2014/TT-BTC の第 2 条)、同通達は 2017 年 1 月 1
日で既に失効しています。ただし、当局は現時点でも費用を徴収しており、ハノイ市の場合には
新規 400,000VND、再発給 300,000VNDです。
一方で免除申請の場合には、手数料が生じません。
(2)免除承認の期間は、最長でも 2年間を超えません(政令 No.11/2016/ND-CP第 8条 2項)
2017年 3月に公布された主要な法令
Ⅰ.特別消費税(SCT)の控除に関する規定を改正する財政省の通達
2017 年 3 月 6 日、財政省は通達 No.195/2015/BTC に基づく、国内における販売特別消費税を確定す
る際の、納付済みの輸入特別消費税の控除に関する規定を改正する通達 No.20/2017/TT-BTCを公布しま
した。その概要は以下の通りです。
• いかなる理由であれ控除されていない全て特別消費税は、損金算入が認められる。
• これまで控除されなかった客観的原因、不可抗力に起因する特別消費税について、損金算入が認め
られる。
本通達は、2017年 4月 20日より施行されます。
【筆者紹介】
斉藤雄久 (AIC VIETNAM Co., Ltd. 代表) 1962年東京都葛飾区出身、1985年早稲田大学社会科学部卒業、日本での会社勤務を経て、1994年12月よりベトナム在住。
日系工業団地勤務、日系コンサルティング会社代表を経て現職。日系企業の進出前のご相談から会社の設立、進出後の経
営管理まで、一貫したサポートを行う。
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①日本産海外有望農林水産品目 発掘調査研究事業 水産品分野調査報告書(2017 年 3 月)
日本の農林水産物・食品のベトナムへの輸出拡大を図るため、ベトナムで日本産水産物を取扱うレ
ストラン、輸入事業者、販売店への聞き取り調査を通じて、「ブリ、サバ、サケフレーク」の 3品
目のべトナム市場でのニーズ、嗜好、販売促進施策、輸出入実績を取り纏めた報告書。
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2017/02/076da6b60b71122a.html
②ベトナム・ホーチミン市近郊工業団地データ集(2017年 3月) 投資先を決定する上で重要な、ベトナム南部地域の工業団地の情報を、投資を検討される際の参
考資料となるべく纏めたデータ集。
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2017/02/d0a549798f8a62a6.html
③ベトナム・ホーチミン市近郊レンタル工場リスト(2017年 3月)
ベトナム南部地域への投資を検討する際の参考となる、レンタル工場の情報をまとめたデータ集。
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2017/02/09830a741683331c.html
ジェトロでは、ベトナムに関連のある調査資料を下記ウェブサイトで公開しています。
ベトナム・調査レポート: https://www.jetro.go.jp/reportstop/asia/vn/reports/
※展示会情報は開催直前に変更することがございます。出展をお申込みされる前に主催者には再度
ご確認をお願いします。
<北部・中部>
展示会名 Vietnam International Trade Fair for Construction (Contech Vietnam)
開催場所 National Exhibition Construction Center
1st, Do Duc Duc Street, Me Tri, Tu Liem, Ha Noi
出展物 建設機械&設備、輸送インフラ(機械、設備、自動車&パーツ等)、テクノロジー&サービス、建材
開催日程 2017年 4月 25日~28日
出展申込み
Hanoi Advertising & International Fair JSC (HADIFA)
Address: R1001, 10F, 71 Nguyen Chi Thanh, Dong Da, Ha Noi
Tel: (+84-4) 62752588 Ext.105 Fax: (84-4) 62752686 Email: [email protected]
主催 Hanoi Advertising & International Fair JSC (HADIFA)
WEBサイト http://contechvietnam.com/en/
展示会名 Industrial Component & Subcontracting Vietnam 2017
開催場所 ICE International Center for Exhibition
91 Tran Hung Dao Street, Hoan Kiem, Ha Noi
出展物 自動車部品、エレクトロニクス&電気部品、エンジン部品、機械部品、金属部品、材料/半製品、プラスチック/ゴム/複合部品、包装材料
開催日程 2017年 4月 26日~28日
ジェトロハノイメールマガジン Vol.85
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出展申込み
Reed Tradex Co., Ltd
Address: 32nd fl., Sathorn Nakorn Tower, 100/68-69 North Sathon Road Silom,
Bangrak, Bangkok 10500 Thailand
Tel. +66 2686-7299 Fax: +66 2686-7288
In Vietnam: Tel. +84 8 3520 7756/57 Fax: +84 8 3520 7604
Email: [email protected]
主催 Reed Tradex Co.,Ltd
WEBサイト http://www.icsvexpo.com/en/index.html
展示会名 Vietnam Medi-pharm 2017
開催場所 ICE International Center for Exhibition
91 Tran Hung Dao Street, Hoan Kiem, Ha Noi
出展物 医薬、サプリメント、医療設備、病院・クリニック、医療旅行、健康気配り商品、化成品/分析・実験設備、ビューティ商品
開催日程 2017年 5月 10日~13日
出展申込み
VIETNAM ADVERTISEMENT & FAIR EXHIBITION JSC - VIETFAIR
Address: Bien Phong Newspaper Bldg., 40A Hang Bai St., Hoan Kiem Dist., Hanoi,
Vietnam
Tel. +84 4 3936 5566 /57 Fax: +84 4 3936 5568 Email: [email protected]
主催 VIETNAM ADVERTISEMENT & FAIR EXHIBITION JSC - VIETFAIR
WEBサイト http://vietnammedipharm.vn/Default.aspx?language=en-US
展示会名 VIETNAM AUTOEXPO 2017
開催場所 ICE International Center for Exhibition
91 Tran Hung Dao Street, Hoan Kiem, Ha Noi
出展物 交通手段、裾野産業、他の関連分野
開催日程 2017年 6月 7日~10日
出展申込み
C.I.S Vietnam Advertising & Exhibition Joint Stock Company
Address: 112 – A3 Dam Trau, Hai Ba Trung District, Hanoi, Vietnam
Tel. +84 4 39844104 Fax: +84 4 39844108
Email: [email protected]
主催 C.I.S Vietnam Advertising & Exhibition Joint Stock Company
WEBサイト http://www.vietnam-autoexpo.com/
<南部>
展示会名 Eco-Products International Fair 2017
開催場所 Saigon Exhibition and Convention Center-SECC
799 Nguyen Van Linh, Dist 7, HCM City
出展物
エネルギー、再資源化、家電、事務機器/情報通信機器、文具/事務用品、自動車・運輸・輸送用機器・部品、住宅/住宅設備、建築・建材、エコマテリアル、容品・包装、流通/物流、衣料/日用品
開催日程 2017年 5月 11日~13日
出展申込み
GLOBAL EXPO & EVENT JSC Address: 2nd Floor, No. A24D7 Cau Giay New Urban Area, Dich Vong Ward, Cau Giay Dist., Hanoi, Viet Nam Tel: (+84-4) 3755 3414 Fax: (+84-4) 3755 3415 Email: [email protected]
主催
Asian Productivity Organization Vietnam National Productivity Institute (VNPI) Vietnam Environment Administration(VEA) Vietnam Chamber of Commerce and Industry (VCCI)
WEBサイト http://epif2017.jp/
ジェトロハノイメールマガジン Vol.85
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展示会名 International Jewelry and Watch Vietnam 2017
開催場所 Saigon Exhibition and Convention Center-SECC
799 Nguyen Van Linh, Dist 7, HCM City
出展物
ダイヤモンドゴールドジュエリー、プラチナジュエリー、パール、ダイヤモンド・半完成宝石、ウェディングジュエリー、宝石をちりばめた時計・ブランド時計、ジュエリーツール&機器
開催日程 2017年 5月 18日~21日
出展申込み
World Trade Fair (International) Limited Address: Unit 1309, Shing Yip Industrial Building, No. 19-21 Shing Yip Street, Kwun Tong, Kolwoon, Hong Kong SAR
Tel: +852 2365-8119 (Mr. Larry Chan) / +852 2365-3839 (Ms. Marvis Chan) Fax: +852 3165-8447 Email: [email protected]
主催 World Trade Fair (International) Limited
WEBサイト http://www.jewelrytradefair.com/vietnam/index.html
展示会名 Saigon International Autotech & Accessories Show 2017
開催場所 Saigon Exhibition and Convention Center-SECC
799 Nguyen Van Linh, Dist 7, HCM City
開催日程 2017年 5月 25日~28日
出展申込み
Asia Trade Fair and Business Promotion (Holding) - ATFA Address: 88 Pham Ngoc Thach Street, Dong Da District, Hanoi, Vietnam Tel: (+84-4) 3573 6728 Email: [email protected]
主催 Asia Trade Fair and Business Promotion (Holding) - ATFA
WEBサイト http://saigonautotech.com.vn/defaultautotechel.aspx
展示会名 Coffee Expo Vietnam 2017
開催場所 Saigon Exhibition and Convention Center-SECC
799 Nguyen Van Linh, Dist 7, HCM City
出展物 プレミアムコーヒー&紅茶、食材、コーヒー&ティー関連製品、器械・設備、デザート、教育・コンサルティング
開催日程 2017年 6月 1日~3日
出展申込み
Coex Vietnam Office Address: 20 Ly Thuong Kiet, Hoan Kiem, Ha Noi
Tel: (+84-8) 2221 7628 Email: [email protected]
主催 Coex & VICOFA (Vietnam Coffee and Cocoa Association)
WEBサイト http://vietcoffeefair.com/
展示会名 The 9th Vietnam International Retail + Franchise Show
開催場所 Saigon Exhibition and Convention Center-SECC
799 Nguyen Van Linh, Dist 7, HCM City
出展物
<小売>小売商品、小売店インテリア、小売技術、専門小売サービス、小売業アイテム
<フランチャイズ>食品・食料、美容・健康、小売業、卸売業、コンサルティングサービス、教育・トレーニング、その他の専門小売店
開催日程 2017年 6月 1日~3日
出展申込み Coex Vietnam Office Tel: +84-9345-11953 Email: [email protected]
主催 Coex
WEBサイト http://vietrf.com/
ジェトロハノイメールマガジン Vol.85
12
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