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オープンソースソフトウェア(OSS)の 法的リスクの現状とその対策 IPA/OSSセンター リーガルTG 主査 江端 俊昭

オープンソースソフトウェア(OSS)の 法的リスク …...• OSS利用の必要性 • GPLv3の現状課題と動向 • OSSに関わる法的リスク • OSSに関わる紛争解決に向けて

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Page 1: オープンソースソフトウェア(OSS)の 法的リスク …...• OSS利用の必要性 • GPLv3の現状課題と動向 • OSSに関わる法的リスク • OSSに関わる紛争解決に向けて

オープンソースソフトウェア(OSS)の

法的リスクの現状とその対策

IPA/OSSセンター リーガルTG主査 江端 俊昭

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• OSS利用の必要性

• GPLv3の現状課題と動向

• OSSに関わる法的リスク

• OSSに関わる紛争解決に向けて

• IPA/OSSセンター リーガルTG

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リスクの算定と評価

• 対象とすべきリスクの抽出– Risk

• 対応を全く想定しない状態のリスク

– Control • リスクを減少させるための対

– Exposure • リスク対策を講じた後の企業

が直面している残留リスク

– R-C=E

出典:リスク新時代の内部統制平成15年6月 リスク管理・内部統制に関する研究会

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リスク対策の選択

• 保有:– 対策をとらず、リスクをそのまま受け入れる。

• (例)個人使用、自社内システムの構築に活用

• 回避:– 経営資源を発生の可能性のあるリスクに関係させない。

• (例)OSSを利用する開発について着手しないか、継続しない。

• 低減:– リスクの影響度又は発生可能性を低減させる。

• (例)チェック体制、バックアップ体制を構築するなど、コントロールを強化する。

• 移転:– リスクを他へ転嫁したり、分担させる。

• (例)訴訟費用を含む保険をかけたり、契約によりリスクをとらないようにする。

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10月3日から7日にかけて開催された「CEATEC JAPAN 2006」。その最大の話題の一つがBlu-ray Discであったことは間違いないだろう。では,そのBlu-ray DiscプレーヤーはOSに何を使っているのだろうか。会場の説明員に尋ねたところ,ソニーのBlu-rayレコーダー,松下電器のブルーレイDIGA,ともに答えは「Linux」だった。

ではCEATECでひときわ目を引く,ブースを埋めつくすほどに並んだ薄型テレビはどうだろうか。ソニーのBRAVIA,松下のVIERA,どちらも「OSはLinux」とのことだ。気がつけば数百万台規模のLinux

ではHDDレコーダーは? 松下のDIGAもLinux,ソニーのスゴ録もハイビジョン対応のものはLinuxを採用している。松下のデジタル家電向け統合プラットフォームである「Uniphier」も標準OSはLinuxであり,現在Uniphierを採用している家電には原則Linuxが搭載されているという。「家電にもネットワーク機能が欠かせなくなってきている。そうなるとLinuxの豊富なネットワーク関連ライブラリとアプリケーションは大きな魅力」と松下の担当者は語る。確かに,

今やインターネット接続機能は家電にあって当たり前の機能であり,家電は今やネットワーク機器になったと言える。それにしても,薄型テレビやHDDレコーダーのトップメーカーが標準採用しているということは,いつの間にか年間数十万,数百万台の単位でLinux搭載家電が出荷されていると

いうことになる。携帯電話でも,NTTドコモだけで2005年度に出荷されたLinux搭載機種は1000万台規模という。

企業の枠を越えた共同開発が進化させた無論,汎用OSであるLinuxには家電向けではない部分も多々ある。しかし,組み込み向けLinuxの推進団体であるCE Linux Forumなどを見ると,起動時間の短縮やリアルタイム

性の向上,メモリー・サイズやパワーマネジメントなど活発な改良が行われていることが分かる。CE Linux Forumに参加しているのは主に企業の技術者であり,多くの技術者が企業の枠を越えてLinuxを進化させている。

2006年6月にはNTTドコモ,Vodafone,NEC,松下,Motorolaなどの6社が,Linuxベースの携帯電話向け基盤ソフトを共同で開発することを発表した。ACCESS 副社長の鎌田富久氏も指摘するように,OSが何であるかは最終ユーザーである消費者にとっては関心事ではない。差別化ポイントではないOSのレイヤーでは協力し

合うことで,互いに開発コストを削減できる。いわば産業レベル,社会レベルでの開発投資コスト削減と言えるかもしれない。

[日経BP社 ITpro] Blu-ray,薄型テレビ---CEATECのここにもあそこにもLinux

ソニーがCEATEC2006で展

示したBlu-rayレコーダ

松下がCEATEC2006で展示したブルーレイDIGA

ソニーのブースに並ぶ

BRAVIA

松下のブースに並んだViera

ソニーが展示した

ハイビジョン対応スゴ録

松下のワンセグ携帯P901iTVなど,デジタル家電統合プラットフォームUniphier

採用製品

組込みLinux搭載製品 関連記事

日経BP社 ITpro [記者のつぶやき](2006年10月11日付)出典

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開発における実態の変化

社員パート 派遣 受託

企業

・複数の著作権者・複数のライセンス規定

InternetOSS-a

OSS-dOSS-cOSS-b

成果物・権利

第三者受託

成果物・権利

共同開発

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• OSS利用の背景

• GPLv3の現状課題と動向

• OSSに関わる法的リスク

• OSSに関わる紛争解決に向けて

• IPA/OSSセンター リーガルTG

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• §3 No Denying Users' Rights through Technical Measures.– 前段

• Regardless of any other provision of this License, no permission is given for modes of conveying that deny users that run covered works the full exercise of the legal rights granted by this License.

– 適用著作物について許諾された法的権利すべての行使を是認

• 台湾FIC、プログラム可能なLinux携帯電話を発表– TrolltechがLinuxベースの携帯電話「Qtopia Greenphone」を開発者コミュニティに向

けて発表してからわずか数カ月後、プログラム可能でオープンなLinuxを採用した携帯電話の2機種目が登場した。

– オランダのアムステルダムで現地時間11月7日から8日にかけて開催されたカンファレンス「Open Source in Mobile」の中で、台湾のハードウェアメーカーFirst International Computer(FIC)のSean Moss-Pultz氏は、「OpenMoko」というLinuxベースの環境を実行するスマートフォン「Neo1973」を紹介した。

ZDNet JAPANより2006/11/10

DRM(デジタル著作権管理)

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同一環境上での実行の許諾とメーカー保証

製品機器メーカ

製品利用者

ソースコード

バイナリコード

インターネット

改変プログラム

更新プログラム

アクセス制御

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DRM(デジタル著作権管理)

• §3 No Denying Users' Rights through Technical Measures.– 後段

• No covered work constitutes part of an effective technological "protection" measure under section 1201 of Title 17 of the United States Code. When you convey a covered work, you waive any legal power to forbid circumvention of technical measures that include use of the covered work, and you disclaim any intention to limit operation or modification of the work as a means of enforcing the legal rights of third parties against the work's users.

– 適用著作物がUSC§1201タイトル17に技術的保護を構成していることの禁止

– 技術的手段の回避を禁ずることに対する権限の放棄» DRM機能の実装と共存

– 著作物のユーザに対して第三者の法的権利を実施する手段として著作物の使用や変更を制限することへの放棄

» DRM機能を除去できない

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USC§1201タイトル17

• (a)著作物へのアクセスを効果的にコントロールする技術手段(アクセスコントロール)の回避行為及び回避装置等の保護– 効果的にコントロール

• 著作物への通常のアクセスを行うには、著作権者の許諾を得て情報を入力し又は手続き若しくは処理を行うことを必要とするための手段-(a)(3)(B)

• (a)(1)アクセスコントロールを回避行為自体を禁止– 回避

• 著作権者の許諾無く、技術的手段の回避、迂回、除去、無効、破損する行為(a)(3)(A)

– スクランブルの解除– 暗号化の解除

• (a)(2)回避装置等の禁止– 対象:技術、製品、サービス、装置又はそれらの一部分

• 主としてアクセスコントロールの回避を目的として設計又は製造される• アクセスコントロールの回避以外に商業的目的又は用法をもたない• 製造、輸入、公衆への提供、供給又はその他の取引

– アクセスコントロールの回避に使用されることを知って販売されたもの

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USC§1201タイトル17

• (b)コピーコントロールする回避装置等の禁止– コピーコントロールへの回避行為は著作権侵害として扱う– (b)(1)対象:技術、製品、サービス、装置又はそれらの一部分

• 主としてコピーコントロールの回避を目的として設計又は製造される• コピーコントロールの回避以外に商業的目的又は用法をもたない• 製造、輸入、公衆への提供、供給又はその他の取引

– コピーコントロールの回避に使用されることを知って販売されたもの

• 許容行為とされるもの(抜粋)– (c)フェアユース– (d)非営利施設(図書館・文書資料館・教育機関)の利用– (f)リバースエンジニアリング

• 自己プログラムとの互換性の達成に必要な要素の特定・解析

– (g)暗号化研究• 暗号化技術分野における知識進歩又は製品開発支援の場合において技術の欠点・弱

点を特定・解析

– (i)個人識別情報の保護• 識別情報の収集・流布する機能からの回避

– (j)セキュリティ検査

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DRM制約の対象

コンテンツリポジトリ

製品情報

権利

暗号キー 識別情報

コンテンツサーバ

ライセンスサーバ

クライアント

コンテンツパッケージ

レンダリングアプリケーション

•コンテンツ

•メタデータ

キー

権利

ライセンス

暗号化

暗号化

識別情報

課金・精算

DRMライセンス

ジェネレータ

DRMコントローラ

DRMパッケージャ

出典:デジタル著作権管理 ネクサスインターコム

制御迂回

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特許非係争に関する条項

• §11 You receive the Program with a covenant from each author and conveyor of the Program, and of any material, conveyed under this License, on which the Program is based, that the covenanting party will not assert (or cause others to assert) any of the party's essential patent claims in the material that the party conveyed, against you, arising from your exercise of rights under this License. If you convey a covered work, you similarly covenant to all recipients, including recipients of works based on the covered work, not to assert any of your essential patent claims in the covered work.

– 要件• ライセンスの基づく適用著作物の提供

– 適用著作物、依拠する著作物に対して特許請求を主張しない

• If you convey a covered work, knowingly relying on a non-sublicensable patent license that is not generally available to all, you must either (1) act to shield downstream users against the possible patent infringement claims from which your license protects you, or (2) ensure that anyone can copy the Corresponding Source of the covered work, free of charge and under the terms of this License, through a publicly available network server or other readily accessible means.

– 要件• 適用著作物に含まれる、知り得ているパテントの提供

– 特許侵害請求の可能性に対する下流のユーザの保護– 公開されたネットワークサーバまたは他のアクセス可能な方法通して無償で適用著作

物に対応するソースコードの複製が可能

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特許非係争条項の対象について

pg

A B Cpb

pa pa papb

D E

GPLを選択

pa pa

pd

pd

F Gpg

pa pa

case1

case2

case3

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ライセンス適用対象と提供対応ソース

Y.c

Z.c

GPL適用対象(Covered Work)

X.exe

対応ソース(Corresponding Source)System Librariesgeneral-purpose toolsgenerally available free programs

X.c

X1.c

shared librariesdynamically linked subprograms(complex data communication, control flow)

GenerateInstall, etc

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• OSS利用の背景

• GPLv3の現状課題と動向

• OSSに関わる法的リスク

• OSSに関わる紛争解決に向けて

• IPA/OSSセンター リーガルTG

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GPL違反に対するFSFのアプローチ

• ボランティアからの報告– [email protected]

• 対象ソフトウェアの入手

– ダウンロード

– 購入

• 検証

– 著作権表示

– コードリファレンス

• 著作権者の確定と協力要請

• 違反者への書面による通知

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実例に見るライセンス違反の考察

libesmod.so(Closed Source& Proprietary)

Image Scan(Open Source& Proprietary)

libintl(part of GNU gettext)

As a whole has a license that is

incompatible with the GPL. This code that

you are using was released to you under the GNU GPL.

A violation of the GNU GPL.

incorporates

linked against

Parts of GNU C Library

work based on the library

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重要なのはライセンシング!ソースコードの内容や形態ではない!

libesmod.so(Closed Source& Proprietary)

Image Scan(Open Source&Proprietary)

linking with

linked against

An old version of libintl(part of GNU gettext)

under the Lesser or Library General Public license.

Parts of old version of GNU C Library

We suggest that you upgrade to newer version and

include copies of LGPL with the software.

work that uses the library

A new version of libintl(part of GNU gettext)

New version ofGNU C Library

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何が問題だったのか?

• 開発者は使用したライブラリのライセンスを知っていたか?

• 開発者はGPLの内容を理解していたのか?

• 開発管理者は上記ライブラリが使用されることを把握していたか?

• 開発管理者はOSSに関する管理スキルを有していたか?

• 企業/事業部門としてOSSへの対応を考慮していたのか?

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OSSコンプライアンスへの

ベストプラクティス• 実態の把握

– 開発担当者への現状確認• OSSコンポーネントの存在の明確化

• OSSライセンスの知識取得– 趣旨の理解に基づく本質の解釈– 取扱いポリシー、規定の策定

• OSSコンポーネントの使用に対する承認プロセスの確立– 安易な導入に対するチェック機能の確立– 外部開発委託時におけるリスク逓減、移転の考慮

• GPLと他のOSSあるいは固有ソフトの組合せに関する検証– ライセンス内容を認識、理解したエンジニアの育成– GPLの対象範囲の認識

• 実装の検討と対策– 本質的な機密保持部分の特定– コンポーネントの共有化

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• OSS利用の背景

• GPLv3の現状課題と動向

• OSSに関わる法的リスク

• OSSに関わる紛争解決に向けて

• IPA/OSSセンターリーガルTG

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著作権法違反に対する規定

• 第112条– 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格

権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができ

– 2 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によって作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。

• 第114条(前略)

– 2 著作権者、出版権者又は著作隣接権者が故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、当該著作権者、出版権者又は著作隣接権者が受けた損害の額と推定する。

– 3 著作権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。

– 4 前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、著作権又は著作隣接権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

• 第119条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

– 一 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作者人格権、著作権、実演家人格権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行った者を除く。)

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著作権者に対する責務違反

• 改変の告知しなかったことによる名誉侵害– 前文(抜粋)

• For both users' and authors' sake, the GPL requires that modified versions be marked as changed, so that their problems will not be associated erroneously with the original version.

– 不法行為責任• (侵害とみなす行為)

– 著作権法113条6 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。

• (財産以外の損害の賠償)– 民法第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又

は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

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ライセンシに対する責務違反

• 必要なソースコードを提供しなかった場合• GPLが適用されていることを告知しなかった場合

– 不法行為責任• (不法行為による損害賠償)

– 民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

– 債務不履行責任(不実の告知、不利益事実の不告知)• (履行の強制)

– 第414条 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

• (債務不履行による損害賠償)– 第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、

債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

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国際間における根拠法の差異

ライセンサ(A国)

ライセンシ(B国)

AX法AY法

BX法BY法BZ法

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GPL違反に対するFSFの

解決へのプロセス

• 問題点の推定

– ライセンス条件の履行に対するミス

– ライセンス内容に対する誤解

• コンプライアンスに対する要請

– 解決案の検討、支援

• 交渉

– 解決案に対する実施要求

• 解決に向けての当事者相互の協力

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新しい紛争解決の考察

• 裁判によらない紛争解決– ADR

• Alternative (代替的な)• Dispute (紛争)• Resolution (解決)

• ADRの種類– 仲裁

• 第三者が仲裁判断

– あっせん• 第三者が解決を促進する

– 調停• 第三者の仲介によって相互に話し合い

– 仲裁、斡旋、調停については実態に着目して表面上の「言葉」で判断しない

• 訴訟手続によらず民事上の紛争を解決しようとする紛争の当事者のため,公正な第三者が関与して,その解決を図る手続

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ADRの特徴

• 手続きが迅速・非公開– 3~6ヶ月程度で終了– 秘密保持が可能

• 利害関係人等の参加も可能• 実定法だけにとらわれない

– 解決方法の自由性

• 開催は当事者双方の合意に基づく– 一方が申し立てても相手方の応答義務なし

• 結果についての執行力はない– 結果に対する提訴の余地

• 費用は裁判に比較して廉価– 手続費用と弁護士費用の節減

参考:NPO法人JMC

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ADR議論の発端

• 司法制度改革審議会意見書 ‘01.6.12

– 「ADRの拡充・活性化」

– 「ADRに関する関係機関等の連携強化」

– 「ADRに関する共通的な制度基盤の整備」

• 隣接法律専門職者(弁護士及び弁護士法人以外の者であって、法律により他人の法律事務を取り扱うことを業とすることができる者)の活用

– 司法書士・司法書士法人、弁理士・特許業務法人、行政書士・行政書士法人、社会保険労務士・社会保険労務士法人、土地家屋調査士・土地家屋調査士法人、税理士・税理士法人、公認会計士、外国法事務弁護士

• 紛争事案に関する識者、民間の専門家の活用

– 弁護士法72条の見直しの一環

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ADR基本法の成立

• 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(H16.12.1)

• 法務大臣の認証制度

– 弁護士関与による72条の排除

– 民間紛争解決主宰機関の開設

• 平成19年4月1日施行

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これは何でしょう?

ルビンの盃

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「紛争」に対する考え方

• ある事実が起こった• その事実の見方・感じ方が違う

– 丸く見えている人に、四角だ!と言っても納得しない• ライセンスの有効性• 著作物性• ライセンス適用対象の解釈

• 裁判– 第三者が過去の事実を認定する

• 要件事実論⇒ゼロ・サム

– 事実と真実は異なる• 弁論主義

• ADR– 紛争は未来に向けて解決するべきではないか?

• 当事者関係の継続維持• Win-Win• 特にMediation(調停)という考え方 参考:NPO法人JMC

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参考:NPO法人JMC

Mediationによる紛争解決の基本

• 裁判所の「調停」との違い

– 評価的⇔対話の促進

– 調停委員が主導権⇔紛争当事者が主役

– 別席調停⇔同席調停

• 当事者同士が話し合いで自主的解決する

• 調停人は話し合いの促進に努め、解決案を提供しない

– 解決案を見出すのは当事者である

• 調停人は、事実を認定・判断・助言はしない

• 調停人はトレーニングを受ける

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参考:NPO法人JMC

Win-Winとは何か

• オレンジの紛争

– 姉も妹もオレンジが欲しい

– 姉も妹も丸ごと1つが欲しい

– でもオレンジは1つしかない

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参考:NPO法人JMC

裁判をするとどうなるか?

• 所有権の移転事実の認定

– オレンジは姉が果物店から購入した

– 妹は姉から贈与された

– 姉は贈与を取り消した

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姉はオレンジの中身をジュースにしたい

参考:NPO法人JMC

話をよく聴いてみたら・・・

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妹はオレンジの皮が欲しい

参考:NPO法人JMC

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紛争解決実現のアプローチ

• 紛争を最もよく知り、紛争の解決を最も強く望むのは当事者である– 本当の解決は当事者が見出す– ライセンスは当事者の合意に基づき契約であって法律ではない

• ひとりひとりの人間は多様かつ個性的な問題解決能力を持っていることを信じる。– OSSは開発者(ライセンサ)と利用者(ライセンシ)の相互参画により

発展– コンプライアンスの理解と実践により自由な利用が可能

• その能力を最大限に引出すお手伝いをすることが調停者の役割である– 調停は紛争問題の専門家と法律の専門家によるコラボレーション

• 技術専門家による問題解決• 和解手続に対する法律専門家のアドバイス

• OSSを熟知した紛争解決に関する第三者機関– 皆さんの理解と協力が不可欠

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• OSS利用の背景

• GPLv3の現状課題と動向

• OSSに関わる法的リスク

• OSSに関わる紛争解決に向けて

• IPA/OSSセンター リーガルTG

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リーガルTG活動概要

• 日本におけるOSS関係者に対し– 1) OSSライセンシング面に関する理解と意識の向上を図る– 2) 実践向け情報の集約・発信機能を担う

• 理解の向上– OSSライセンスの日本語版について法律専門家レビューを加える– 法律専門家とOSS実務者(複眼視点)の協業によるOSSライセンスの実務的解説

» OSSライセンスと著作権法の基本的メカニズム» 開発者にとってのOSS、利用者にとってのOSS

– GPL v3ドラフト改訂検討作業への参加

• 意識の向上– OSSの本質を理解することによる、基本的意識の向上

– 著作権ライセンスに対するコンプライアンス意識の向上

• 効果的な推進活動– 魅力的な広宣イベントを実施

» ドラフト対訳と解説を発行、日本法との整合検討» キーマンによる講演会

– 3)実務における問題解決機能について検討し、然るべき提案を行う• リスク調査・分析• 紛争解決手段

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今後の構想

• 実務における問題解決機能の構築について調査– 参考:Software Freedom Law Center (SFLC)ミッション

• FOSSの保護と発展を図るため、訴訟代理その他の法的サービスを提供– Asset Stewardship– Licensing– License Defense and Litigation Support– Legal Consulting and Lawyer Training

– SFLCとのアライアンス

• 日本の事情を考慮したOSS開発者、利用者支援の展開– 共通資産の保護と管理

• Patent pool– GPL等OSSライセンスのグローバライゼーション

• 日本語、日本法に立脚したOSSライセンスに関する情報提供– ライセンス翻訳、解説、FAQ等

– コミュニティの育成と企業利害を考慮した法的支援策の検討• 裁判外紛争処理(認証ADR機関)のあり方

– 民間による紛争処理手続きの法制化( 2007年4月施行)– 当事者による自主解決の支援– あっせん、調整、仲裁等

– 広い範囲でのOSS実務家の育成• 法律専門職• OSS開発者

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質疑応答

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オープンソースソフトウェア(OSS)の

法的リスクの現状とその対策

長時間にわたり、

ご静聴ありがとうございました!