長崎県対馬島におけるガ口アムシの一種(Galloisiana sp.)

の確認記録

誌名 EdaphologiaISSN 03891445著者名 石井,克彦発行元 日本土壌動物研究会巻/号 87号掲載ページ p. 57-59発行年月 2010年10月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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Edaphologia， No. 87: 57-59， October 30， 20 I 0 57

短報

長崎県対馬島におけるガ口アムシの一種 (GalloisianaSp.) の

確認記録

石井克彦

埼五県立川の博物館 干 369-12げ埼玉県大里郡寄居町小園 39

Received: 28 July 2010; Acc巴pted:4 October 2010

Abstract Collecting records of Gal/oisiana sp. in Tsushil11a island， Nagasaki Prefecture. Katsuhiko Ishii (Saital11a

Museul11 of Rivers， 39 Kozono， Yorii-l11achi， Oosato-gun， Saital11a 369-1217， Japan).

Galloisiana sp. in Tsushil11a island， Nagasaki Prefecture， which had only been recorded for larvae is reported

Geographically separated two groups were recognized. The southern group had eyes， while the nOlthern group had no

eyes

Key words: Galloisiana sp， blind， collecting records， Tsushil11a island

ガロアムシ Galloisiω1Qnipponensis (Caudell et King， 1924)は

1915年に E.H. Galloisが本邦で初めて現在の栃木県日光市

中禅寺訪日湖畔で採集し その標本に基づき 1924年， K別G

とCAUDELLによって記載された. ガロアムシ~~は本:):/1 で

は沖縄県と千葉県を除く全都道府県で生息が{il自立されてお

り.本極を含め 6種類が記録されている(長島， 1998)ー

今回，関荒地とした長崎県対馬島においてガロアムシ属

は朝比奈 (1970)， 日浦 (1976) による採集記録はあるも

ののいずれも採集個体が幼体であったため訴の同定にい

たっていない 著者は今回の調査でこれまで生息記録のな

いよ島， 4地点で新たにi昭/l良の:i;JJイ木としてガロアムシ属の

生息を雌認するとともにド島で、成虫 2♀を硲認すること

ができたので¥その形態的特徴並びに分布特性について報

告する.

対馬島は， 九州の北西約 132kl11， 朝鮮半島のT将来約

49.5 kl11に位置する 南北に 82kl11，東西に 18kl11，間積

は約 700krrlで.ほほ対馬島を南北 2つに分けるようにリ

アス式海岸が発達する 人為的な海峡で、はあるが、 1672

年に美津島111]大船越瀬戸が， 1900年に美津島111]万関瀬戸

が人工的に開削され.北部の」二島.南部の下島に隔てられ

ているー

対応向におけるガロアムシ属の記録は朝比奈(1970)

が厳原IIIJ成相渓.成相抗にて 1iifiの幼虫.厳!原IIIT有明111に

て3iiflの幼虫の報告をしその後， EI訓i(1976) が美津

鳥IIIT上見坂において幼虫 l個体の報告をしている 1976

年以降、採集記録がなかったが， 2009年 5月 10日，対jjb

T!i厳原町ド原で 34年ぶりに限りなく成虫に近いitlil体の生

忠、が佐官、された(長崎新聞 2009il'-5月 151:1)目

対応を含む長崎県においてガロアムシ属はこれまでにイ

シイムシ G.(Isiana) notabilis Silvestri， 1927 の生息が存在

認されている(長l崎T!J' 2000). しかし対 .l，!~i誌の地迎!的特

性から考え長111奇県に属しているが.イシイムシとの関係は

少ないものと考えられる.

今回，筆者は 2009ir:. 10月と 2010年 4月に 21mの調査

を災施し対応島の 6地点([;gll，地点 1から 6) におい

て成虫 2♀，幼虫 32il!!1イ本を係集した保集したガロアム

シGσ//oisianasp目は 70%エタノールで同定した後， 99.5%

エタノールで保存 している.

南部の n詰2地点(図 l地点、 1，2)で採集した. ガロア

ムシ Ga//oisianasp. (j;gl 2-A) は本州産のもの (Ga//oisiana

nipponensis (Caudell et King， 1924) )と同じく複|取が認め

られるが.北部 4地点 (Ijgll， 地点 3人5，6) で採集した

ガロアムシ Ga//oisianasp. ( /jgl 2-8， 匡13)は外見|二、 4地

点で採集したすべての個体に色素と表面楠造において複H艮

を認めることができなかった 以上のことから対，山北部に

位置する上島の個体鮮は何らかの隔離のため綾眼が無い

か、発達が極めて悪い個体群と考えられる.

対H&島の生物群と系統的に結びつきの深いと考えられる

is月鮮半島では無|恨の Namkungiabhyogensis Nal11kung， 1974，

Ga!/oisiαna kousuensis Nal11kung， 1974の 2種，と有 11艮

の Gal/oisianamagnlls Nal11kungヲ 1986，Ga!loisiana sofiae

Szeptycki， 1987 の 2 粒，合計 4 種の生息、がこれまでTífI~認さ

れている.八r.bh);ogensis， G. kousuensisの2種は洞窟で採

集されていることからli'il有種である可能性が高く.無線と

58 石井克彦

④ 1Okm

.4

!~I I.

いう点で、の共通性は低いように考えられる ただし無11良

または有11良といった外見 卜今の特徴だけで、はなく♂成虫を)I:J

いた比!肢は今後の課題である.

今回の調査でこれまで、生息記録のなかったJ'.!誌で新たに

ガロアムシ属の生息カ¥{iflifi2，されたことに力Ilえ.その主l三，白、伯i

体群が下島 とは異なり無限であることがI~i らかとなった.

今回の生息の隊認されたJ牛島の1!!f，1I艮個体群と下島の有11則lijl

体群との進化的な結びつき. また朝鮮半島産の有IIlH主と今

回採集ーされた対馬島産の個体群との|共j係性についての系統

を比較・検討し 大陸.対馬島そして円本本土におけるガ

ロアムシ目の種分化についてさらなる研究が必要である.

採集地点ならびに採集標本数(全個体筆者保;集)

.1 長崎県対馬市厳原町|ごJJj( (下島)標高 80m. 1♀

幼虫 10exs 13-19. IV. 2010， ・2 長"1奇県対馬市厳原IIIJ下原(トー烏)標高 100m. 1♀

幼虫 12exs 13. IV. 2010，

03 長崎県対応市ヒ県町飼所(上j急)標高 110m.

幼虫 2exs 15. IV. 2010，

1~12.

l羽3

'・4 、''・

~.、

ノ

，包ア

長崎県対馬島にお付るガロアムシの一種 59

04 長崎県対馬市IIJ~ j1IJ 官旧 (上島)標高 85m，

幼虫 2exs 18， N. 2010，

05 長崎県対馬市上県町飼所 しl二島)標高 30m，

幼虫 4巴xs 17.N.2010，

06 長崎県対応市上県町イλ護(上島)標高 110m.

幼虫 2exs 18. N. 2010

謝辞

対馬での調査にご援助いただいた圏分英俊氏.ならびに

SEMの操作，線影にご協力いただいた猫協医科大学小作

明則氏に謝意を表す

引用文献

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