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Topics2IDAJ数値解析アカデミー Solution Seminar Vol.70「セーフティクリティカルな産業分野向けプロセス構築セミナー」開催のご報告■はじめに━
本稿では,愛知県名古屋市で7月16日に開催した「セーフクリ
ティカルな産業分野向けプロセス構築セミナー」についてご紹介
します.
本セミナーは,Automotive SPICE(以下,A-SPICE)や機能安
全認証規格を中心にプロセス改善のコンサルティングやアセス
メントを行っているビジネスキューブ・アンド・パートナーズ株式
会社様(以下,Biz3社様)との共同開催となりました.Biz3社様か
らは標準プロセスとしてA-SPICEやMechanical SPICEの活用方
法や活用事例を中心にご紹介いただき,弊社からは,A-SPICEと
機能安全認証規格に準拠したプロセスの構築を支援するツール
やSimulation Process and Data Management(SPDM)という
プロセスの中でMBD(Model Based Development)ツールやシ
ミュレーション結果を活用する考え方についてご紹介しました.
プログラムは以下の通りです.
1. セーフティクリティカルドメインへのAutomotive SPICEの
適用例紹介とMBD適用の勘所 (Biz3社)
2. 認証取得済みツールの適用によるソフトウェア設計開発プ
ロセスの効率化とソフトウェア品質の向上(弊社)
3. Mechanical SPICE活用のすすめ(Biz3社)
4. PLM・SPDMによる設計開発プロセスの標準化(弊社)
図1 会場の様子
■講演概要━
●セーフティクリティカルドメインへのAutomotive SPICEの適用例紹介とMBD適用の勘所
Biz3社 様
Automotive SPICEは,国際標準ISO/IEC 15504(SPICE)の一
種で,その名の通り,車載システム開発向けの標準プロセスで
す.近年,自動車も機能安全認証規格(ISO26262)への準拠が
求められるようになり,A-SPCIEはプロセスの改善や定着化に対
して活用されるようになってきました.
本講演では,はじめに,A-SPICEの考え方やアプローチを民間
航空機のソフトウェア開発で要求されるDO-178Cを例に,他の
産業分野に適用する利点や重要なポイントを,その後,モデル
ベース開発を適用する際に,アセッサー視点から見た要点をご説
明いただきました.
モデルベース開発を用いたプロセスを構築する場合,どのプロ
セス領域にモデルを導入するのかを検討する必要があります.モデ
ルで何を表現するのかが重要であるということを再認識しました.
●認証取得済みツールの適用によるソフトウェア設計開発プロセスの効率化とソフトウェア品質の向上
弊社
弊社からは,自動車(ISO26262)と民間航空機(ARP-4754A,
ARP4761,DO-178C/DO-331)で求められる機能安全認証規格
の比較から共通点を示した後,安全分析・信頼性分析では
ANSYS medini ana lyzeを,ソフトウェア開発ではANSYS
SCADEを中心にプロセスの中で活用するツール・ソリューション
をご紹介しました.
図2 安全分析・信頼性分析ツールANSYS medini analyzeのご紹介
IDAJ news vol.97 / 2019 Sep.
ANSYS SCADE®は,ANSYS, Inc. により開発されました.ANSYS および他のすべてのANSYS, Inc. の製品名およびサービス名は,ANSYS, Inc. ,または、米国および他の国にあるANSYS, Inc. の子会社の登録商標です.その他のすべての商標または登録商標は,各所有者の財産です.
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Topics2ANSYS medini analyzeは各機能安全認証規格で求められる
安全要件の定義や安全分析(FTA,FMEA),また故障率を算出す
ることができます.ISO26262(自動車)ではPart3とPart4・5・6
の一部を,ARP4754A/4761(航空機)ではFHA,PSSA,SSAの各
活動をサポートします.
ANSYS SCADEは,認証取得済みのコード生成機能により,
コードレベルの検証を省略することができる,ソフトウェア開発
の工数短縮や品質向上を可能とするツールです.
図3 組込みソフトウェア向けのMBDツールANSYS SCADE
ここでは,単純なツール紹介ではなく,プロセスの中でツール
を活用する際に重要な機能安全認証規格で求められる活動や,
A- SP ICEと各ツールの関係(図4),標準アーキテクチャ
(AUTOSAR,FACE,ARIN661)との関係について解説しました.
図4 A-SPICEと各ツールの関係
●Mechanical SPICE活用のすすめBiz3社 様
A-SPICEは車載システム開発向けの標準プロセスで,主として
ソフトウェア開発向けのものとなります.しかし近年は,SPICEの
考え方をメカ設計やハードウェア(エレキ)設計に適用する活動
が盛んになっており,これはA-SPICE 3.0から導入された「プラグ
インコンセプト」という形でサポートされています.2019年7月時
点で,intacs より「Process Assessment Model SPICE for Me-
chanical Engineering ver. 1.5」 が発行されており,ハードウェ
ア・エンジニアリングに関しても,2019年末にintacsから発行さ
れる予定です.
本講演では,Mechanical SPICEの概要と活用事例をご紹介
いただきました.「要件の構造化」や「運用環境の考慮」,「アーキ
テクチャ設計」,「トレーサビリティ」と,とても実用的な観点から
Mechanical SPICEの基本プラクティス(BP)と実際の設計業務
での活動について解説していただき,活用事例では,MBSE
(Model Based Systems Engineering)の観点にあわせて,「要
件定義」→「アーキテクチャ設計」→「トレーサビリティ」→「構成
管理」という一連の流れをご紹介いただきました.
●PLM・SPDMによる設計開発プロセスの標準化弊社
本講演では,現在加速している単純なCAEからMBSEやMBD
への移行についての背景をご紹介したのち,Mechanical SPICE
で要求されるエンジニアリングプロセスとMBDツールの活用,
データ管理についてご紹介しました.
弊社は,長年CAEの分野で多くのお客様をサポートする機会
をいただいてきましたが,CAEでないと見えないものがあるとい
う解析の観点からの活用から,設計の高度化や一層の効率化が
求められるようになるにつれ,単なる解析としての用途ではなく,
CAEツール内のデータをモデルとし,プロセスの中で活用するこ
とが強く求められるようになってきたことを実感しています.
図5 CAEからMBSE・MBDへ
プロセスの中でモデルを活用することを考えた場合, Me-
chanical SPICEが要求するエンジニアリングプロセスを元にす
ると,大変わかりやすいかと思います.図6は,各プロセスで求め
られる活動とモデル活用の対照表です.
IDAJ news vol.97 / 2019 Sep.
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Topics2
図6 Mechanical SPICEが要求するエンジニアリングプロセス
プロセスの中でモデルを活用するには,プロセス管理,モデル
管理(データ管理),トレーサビリティの確保が重要です.それら
を支援するのがエンタープライズMBDプラットフォーム「Aras
Innovator」です.Aras Innovatorを用いたISO26262活動の支
援例とあわせて,モデルとその作成プロセスを管理することで実
現する,SPDMについてご紹介しました.
図7 Aras Innovatorによる機能安全認証の支援例
図8 SPDMのイメージ
■おわりに━
本セミナーには,おかげさまで多くのお客様にご来場いただく
ことができました.この場をお借りして,ご来場いただきました皆
様へ厚く御礼申し上げます.
本セミナーの内容で気になる点やご不明な点がございました
ら,お気軽に,弊社営業担当([email protected])までご連絡くださ
い.また,配布可能なセミナー資料がありますので,あわせて弊
社までお問い合わせください.
今後も,単なるツールの情報だけではなく,設計開発プロセス
を意識した技術情報がご提供できるように,今回のようなセミ
ナーを企画したいと考えておりますので,お客様からもご興味が
ある分野やトピックスがございましたら,ご意見をお寄せいただ
けると幸甚です.
(文責:解析技術2部 岩倉 淳)
IDAJ news vol.97 / 2019 Sep.
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