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北海道教育委員会 (平成27年6月) 学校力の向上を目指して ~学校が一体となって進める 包括的な学校改善~ 学校力向上に関する総合実践事業

~学校が一体となって進める 包括的な学校改善~ · 北海道教育委員会 (平成27年6月) 学校力の向上を目指して ~学校が一体となって進める

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Page 1: ~学校が一体となって進める 包括的な学校改善~ · 北海道教育委員会 (平成27年6月) 学校力の向上を目指して ~学校が一体となって進める

北海道教育委員会 (平成27年6月)

学校力の向上を目指して ~学校が一体となって進める

包括的な学校改善~

学校力向上に関する総合実践事業

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目 次

1 本報告書について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2 事業の目的及び概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

3 取組の成果

(1)学校改善

北広島市立大曲小学校・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

石狩市立花川小学校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

大樹町立大樹小学校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

(2)各領域の実践

(教育課程・指導方法等)

岩見沢市立南小学校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

江差町立南が丘小学校・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

(地域・家庭との連携)

小樽市立稲穂小学校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

網走市立網走小学校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

(人材育成)

登別市立幌別小学校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

旭川市立大有小学校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

(学校マネジメントその他)

函館市立八幡小学校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

別海町立別海中央小学校・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

4 教育現場の声

(1) 学校力事業を実践する校長先生の声・・・・・・・・・・・・ 20

(2) 学校力事業を実践する学校の初任者の声・・・・・・・・・・ 24

5 道内外アドバイザーへのインタビュー

(1) 野中 信行 氏( 元横浜市初任者アドバイザー )・・・・・ 25

(2) 藤原 文雄 氏( 国立教育政策研究所総括研究官 )・・・・ 26

(3) 村山 紀昭 氏( 北海道教育大学前学長 )・・・・・・・・ 27

(4) 境 智洋 氏( 北海道教育大学准教授 )・・・・・・・・ 28

6 今後の方向性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

(1) 成果と課題

(2) 今後の取組

資料 ・平成 26 年度学校力向上に関する総合実践事業実施要綱 ・・ 30

・平成 26 年度実践指定校等一覧 ・・・・・・・・・・・・・ 34

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1

1 本報告書について

(1)趣旨

各種調査の結果により明らかになった本道の子供たちの学力や体力、生活習慣の状況は、依然

として危機的な状態にある。

北海道教育委員会では、平成 26 年度の全国学力調査までに全道で全国平均を、平成29年度

までに全管内で全国平均を目指すとの明確な目標を掲げ、取組を進めてきた。

結果として、平成 26年度の調査では、1教科を除き、全ての教科で全国平均以上にはならず、

目標を達成することはできなかった。しかし、全国平均との差は着実に縮まっており、道内の教

育関係者の取組の成果は着実に実を結びつつあり、その継続した改善状況は道外の教育関係者の

目にも留まりつつある。

一連の取組のなかで、全道の教育をリードする役割を果たしてきた一群の学校がある。これら

の学校は、「学校力向上に関する総合実践事業」(以下、「学校力事業」とする。)において実践指

定校となった学校である。

この報告書においては、事業開始から3年目を迎えた学校の取組を振り返り、成果及び課題を

確認し、一層の改善に向けた方向性を示していきたい。

(2)構成

この報告書の構成は以下のとおり。

取組の成果

(1)学校改善 実践指定校における3年間の取組の経過、組織的な取組のため

のポイント、成果等を紹介

(2)各領域の実践 本事業で取り組まれている実践について実践指定校の取組、成

果、成功の秘訣を紹介

教育現場の声

(1)校長の声 本事業の実践指定校、近隣実践校、特別連携校の校長先生が感

じた校長の役割、大切にする価値、北海道教育の構想などの声

を紹介

(2)初任者の声 実践指定校に配置された初任者からみた本事業の意義、先輩先

生から得たものなどの声を紹介

道内外アドバイザーへのインタビュー

実践指定校への訪問・助言などを行ってきたアドバイザーの北

海道の教育の印象、本事業の意義、今後の方向性について紹介

今後の方向性

(1)成果と課題 事業開始から3年を経過し、見えてきた実践指定校の課題、事

業の実施体制の課題

(2)今後の取組 課題を踏まえた今後の方策、事業の実施体制の改善についてこ

れからの方向性の提示

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2

2 事業の目的及び概要

(1)目的

学校力事業の目的は、次の2つに集約される。

・管理職のリーダーシップの下で一つのチームとなった包括的な学校改善のモデル提示

・将来のスクールリーダーの輩出

(2)概要

この目的を実現するため、以下の措置を講じた。

ⅰ)小学校の指定(詳細は「学校力向上に関する総合実践事業実践指定校等一覧」を参照。)

分類 校数 位置付け

実践指定校 19 ⅱ)に記載する本事業の取組を実施する学校

近隣実践校 61 実践指定校の周辺にあって、実践指定校との合同研修等

を通じ、その成果を自校の改善に生かしていく学校

特別連携校 11 実践指定校と同一管内の他の市町村にあって、実践指定

校との合同研修等を通じ、その成果を自校の改善に生か

していく学校

実践指定校については、指導力のある管理職等(校長、教頭、教務主任)を配置するよう取

り扱うとともに、重点的に教職員を加配し、優先的・継続的に初任者を配置した。

ⅱ)取組のメニュー化

実践指定校での取組として参考とすべきものを定めた。

重要なのは、地域や目の前の子供たちの課題を踏まえて、次の①~④について包括的かつ継

続的な学校改善を実践し、その成果を他校に普及できる人材の育成である。

(詳細は、学校力向上に関する総合実践事業実施要綱第2を参照。)

① 教育課程・指導方法等(全学級における学習規律・生活規律の統一及び徹底等)

② 地域・家庭との連携(コミュニティ・スクール導入の積極的検討等)

③ 人材育成(日常授業の改善に直結する校内研究・研修の重点化等)

④ 学校マネジメント(学校の改善サイクルの実質化・迅速化等)

ⅲ)北海道教育大学との連携

北海道教育大学キャンパス近郊の学校を「特別連携校」として位置付け、同大教職大学院に

派遣された現職教員が週に数回、「実践指定校」を訪問し、具体的な学校改善に関与しながら、

継続して大学でのアカデミックな知見と往還する研究を進めている。

ⅳ)アドバイザーの委嘱

学校力事業の推進に際し、道内外の有識者をアドバイザーに委嘱し、実践指定校で開催され

る公開授業での指導、実践指定校の関係者が一堂に会して情報共有を図る全道協議会での助言

を得ている。

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3

(3)取組状況 平成25年度までの実践指定校に、学校力事業の取組状況を調査した結果は以下のとおり。

A:とても進んでいる B:進みつつある C:あまり進んでいない D:進んでいない

総じて言えば、「地域・家庭との連携」の領域については、他の領域と比較して取組の遅れが

あるものの、その他の領域は取組が進んできたと評価できる。

しかしながら、指導主事等の学校訪問の結果を集約すると、実践指定校の間でも取組の差が見

られており、今後、実践指定校での取組の深化・徹底が求められる。

領域 A B C D

ア 8 6

イ 10 4

ウ 10 4

エ 5 9

オ 6 8

カ 4 9 1

キ 3 9 2

ア 4 8 1

イ 1 7 3 3

ウ 2 4 4 4

エ 8 5 1

オ 2 10 2

カ 5 7 2

キ 10 2 2

ア 12 2

イ 11 3

ウ 10 2 2

エ 9 5

オ 5 7 1 1

カ 8 5 1

ア 8 5 1

イ 10 4

ウ 3 9 1 1

エ 12 2

オ 9 5

カ 7 6 1

教育課程・指導方法等

学年ごとの最低限の到達目標の設定(学力、体力、生活リズム等)

「総合的な学習の時間」と各教科との関連重視

発達の段階を踏まえた全学級における学習規律・生活規律の統一及び徹底

各学年の基礎学力を保障する教育課程・指導方法

体力向上のための取組

特別な支援を要する児童生徒へのきめ細かな指導

学校間連携

人材育成

若手教員や将来のスクールリーダーの計画的な育成を目指した総合的な取組

初任者研修等を自校で実施

地域・家庭との連携

学校支援地域本部の設置及び活動の促進

コミュニティ・スクール導入の積極的検討

地域と連携した土曜日の活用の在り方の見直し

児童生徒が勉強と向き合う時間の確保

学校マネジメント他

学校の改善サイクルの実質化・迅速化

外部からの継続的な指導助言及びそれを踏まえた教育課程・指導方法等の不断の見直し

必要に応じ、道立教育研究所、北海道教育大学教職大学院等との連携

実践指定校の取組を普する市町村単位の研修の実施

放課後のテーマ別研修への近隣実践校教員参加の積極的受入れ

日常の授業改善に直結する校内研究・校内研修の重点化

取組項目

必要に応じ、特別支援学校のセンター的機能を活用した研修の実施

社会教育との積極的な連携・社会教育プログラムの活用

課題や危機意識の共有及び協働関係の構築

休日や長期休業中等の補充的学習サポートの実施と学校サポーターの積極的活用

成果や課題の積極的発信

教職員が児童生徒と向き合うための時間の確保

発達障害の児童生徒を含む全ての児童生徒がより学習に集中できるようにするための学校環境、教室環境の整備

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また、学校力事業に対し、実践指定校を設置する教育委員会の認識は以下のとおり。

教育委員会から見た実践指定校の「学校改善」の具体的な状況

項 目 改善の状況

学校組織体制

の整備、教職員

の意識変化

・学校が一つのチームとして足並みを揃えて教育活動を展開し、教

育活動の質の向上を図る必要性が職員全体に浸透

・教務主任を中心とした校内の組織体制が確立し、教員の経営参画

意識が向上

授業改善等 ・授業改善の基盤となる学習規律の確立が図られ、学習意欲・学習

効果が向上

・児童の実態に基づいて授業改善を図る校内研修が進められ、学力

が着実に向上

人材育成 ・巡回指導やミニ研修が活発に実施されるなど、若手教師を育てる

ための計画的な研修による若手教員の成長

マネジメント

の改善

・学校行事の時間や内容の見直し、会議の削減など学校運営に係る

システムが改善され、児童と向き合う時間を確保

・実践の成果が可視化されることにより、次のステップへとより質

の高い取組に発展

家庭との連携 ・学校からの情報発信の充実により、保護者が学校の取組に対して

の理解を深め、学校に対してより協力的に

全ての教育委員会が様々な側面から学校が変わってきたと前向きに評価しており、特に、「校

長のリーダーシップやミドルリーダーの働きかけなどにより、各職層が学力・体力の向上や人材

育成に係る役割と責任を自覚し、不断に教育活動の工夫改善を図っている」という回答に代表さ

れるように、全ての教育委員会が教職員の意識変化や学校の組織体制の向上に言及している。

今後、単一の市町村での成果の普及はもとより、管内の各学校への成果の普及が課題であり、

そのための環境整備を進めていく必要がある。

加えて、実践指定校のPTA代表に対し、学校が行っている取組の認識やその効果をどう感じ

るかを尋ねた結果は、次頁のとおりである。保護者は、学校が学校力の向上に向けた取組を行っ

ていることをよく理解しておりその効果を肯定的に捉えている。中でも、学校全体での学習規律

の統一や基礎学力定着の取組には、全ての保護者が効果を感じている。

また、改善が進んでいること、改善を望むことについては、学校通信やホームページの充実を

評価する一方、保護者との情報共有やより多くの家庭の協力を得られる工夫、さらには、地域と

の連携について改善を望む声が聞かれた。

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5

保護者から見た学校の取組状況

保護者から見た改善が進んでいること・改善を望むこと

改善が進んでいること

目標の明確化・組織的

な取組

基礎学力の定着・向上や体力の強化、生活習慣の改善に向けた目標が明

確となり、学校全体で組織的な取組がなされている。

子供の意欲の向上 学習に取り組む姿勢に変化が見られる。また、少人数指導による学習意

欲の向上が感じられる。

家庭学習についての

意識向上

子供たちと保護者に、家庭学習の大切さや取組への意欲が感じられるよ

うになってきた。

情報発信の充実 学校・学年・学級各通信が子供たちの様子を伝えるうえで充実しており、

ホームページも毎日更新されている。

PTAとの連携強化 学校の敷居が以前よりも低くなり、PTAとの連携協力体制が強化され

た。

改善を望むこと

地域との連携 地域との連携については、PTAも含めどう取り組んでいくべきか課題

である。

家庭との連携 全家庭の協力を得ることは難しいが、より多くの家庭が協力してくれる

仕掛けを作ることが必要である。

保護者との情報共有 情報共有が不十分。学校だよりやホームページなど情報発信は確かに増

えたが、「伝わったか」を確認することが必要である。

知っている 知らない とても感じる まあ感じる あまり感じない

授業中のよい姿勢や鉛筆の正しい持ち方の指導、学習用具の全校や学級での統一などの指導

13 10 3

少人数指導やTT、宿題や放課後学習等を通じた基礎・基本が身につく指導

13 11 2

外遊びや運動する楽しさを子ども達に味わわせる等の体力向上に向けた指導

12 1 8 3 2

学習等の目安の時間の設定、生活リズムチェックシートの活用、朝の読書活動などによる生活習慣の改善

13 8 4 1

地域に開かれた学校づくり 13 11 1 1

学校の取組や子ども達の状況についての保護者への情報提供や課題の共有、協力関係の構築

13 9 3 1

学習規律・生活規律の確立

基礎学力保障の取組

体力向上の取組

生活習慣改善の取組

地域・家庭との連携

課題の共有・連携

取組を行っていることを 効果を

取  組

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6

3 取組の成果 (1)学校改善

北広島市立大曲小学校(http://www.school.city.kitahiroshima.hokkaido.jp/oomas/)

児 童 数

学 級 数

455人

17(3) ( )は特別支援学級

校 長 名

職 員 数

横 藤 雅 人

29人

Keyword 校内研修の改善

○ 取組の概要

・本校は、全国学力・学習状況調査の実施以降、算数ABの平均正答率が全道平均を下

回っていた。

・本事業の実践指定校を受けてから、「校内研究」の方法を見直し、基礎学力を保障する

日常授業に直結する「校内研修」を推進してきた。

【1年目 研究から研修へ】

○ 前年までは研究テーマを「算数科における問題解決的な学習の在り方」とし、課

題提示や学習過程の工夫について研究してきたが、十分な成果が得られなかった。

○ 校長は、本事業の指定を契機に、授業づくりを「研究」するスタイルから、日常

授業の改善に直結する効果的な指導方法を「研修」するスタイルに方向転換するこ

とを研究部に働き掛け、研究部から提案した。

○ 一部には、これまでの理論を研究するスタイルから脱却できず反対する声もあっ

たが、複数の教員に先進校を視察させ、成果を還元させたり、アンケート調査を実

施し、8割以上の教員が日常の指導方法に悩んでいる結果を示したりして、全ての

教員が納得して研修に取り組めるよう配慮した。

○ 可能な限り一人一人の声を生かすために、これまでの研究部のメンバーに加え、

各学年ブロック代表1名を加えて「研修部」を新たに組織した。

【2年目 外部講師の効果的な活用】

○ 全員1回以上の授業公開を実施し、板書やノート指導などはもとより、「習得型」

の学習の効果的な指導方法について研修することとした。

○ 研修では、これまでの研究スタイルから脱却できない教員の主体性を発揮するこ

とができるようにワークショップ型の協議方法を取り入れた。その結果、多くの教

員が意見を述べ合い、主体的に研修に参加するようになった。

○ 8月には玉川大学教職大学院の堀田龍也教授を招聘し、学習環境や学習規律の徹

底、ICTの効果的な活用に全校が一体となって取り組むことについて指導してい

ただいた。講師には事前に本校のこれまでの取組の要点を伝え、当日は、本校の研

修の取組は効果的であることを価値付けていただいた。その結果、全教員が、自分

たちの取組のよさへの認識を深め、新しい形の校内研修について納得し、共通理解

を図ることができた。

3 年 間 の 取 組

Page 9: ~学校が一体となって進める 包括的な学校改善~ · 北海道教育委員会 (平成27年6月) 学校力の向上を目指して ~学校が一体となって進める

7

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

「研修の充実が図られていますか。」の質問

に対する教職員の回答の平均値

【3年目 ミニ研修の充実】

○ 教員の共通理解が深まったことから、校長は研修内容及び進め方について、ミド

ルリーダーを中心にアイデアを出させ、研修内容に反映するなど、教員がこれまで

以上に主体的に取組を進めた。

○ 日常授業の改善に直結した校内研修が軌道に乗り、教員の研修への意欲が高まっ

てきたため、校長は、研修部にこれまでの研修内容に加え、特に、若手教員に必要

な学級通信の書き方や清掃指導の在り方など 20 分程度の「テーマ別ミニ研修」の

実施を働き掛けた。ねらいは、①教員の特技を他の教員に伝授すること、②研修内

容以外の授業実践の悩みを解決することとした。講師は、教員に得意分野を担当さ

せ、自己有用感や達成感を実感できるようにした。

○ こうした日常の実践に直結した取組により、全国学力・学習状況調査の児童質問

紙調査では「算数の授業の内容はよく分かる」と回答した児童が約8割に達するな

ど指導力の向上が図られている。

○ 本事業についての保護者の声

・子供が、「授業が分かりやすくなった」と言ってい

ます。ノートもきれいに書けるようになってきま

した。

・今後もこうした指導が、いつでもどの学級でも見

られるようになって継続してほしいです。

【今後の課題】

○ 学習規律や生活規律の徹底については、子供の定着が進んでも、指導方法や規

律の内容は、不断に検証・改善を行っていきたい。

○ 本校は初任者が2名ずつ3年間配置され、学校全体が若返っている。このため、

メンターチームを組織し、若手教員が自主的に悩みを相談し合ったり、切磋琢磨

したりする機会をつくりたい。

・ミドルリーダーについて役

割を明確にしたり、ミニ研

修で講師として活躍の場面

を位置付けたりする。

・「共通」、「徹底」、「一貫」、「継

続」のキャッチフレーズを

繰り返し教職員に伝える。

・一人一人の教員が目標を定

め、実現するなどの日常授

業の改善に直結する校内研

修を工夫する。

3 年 間 の 取 組 の 成 果 等

組織的な取組のための

ポイント

【学校評価の結果の推移】

4当てはまる 3やや当てはまる 2やや当てはまらない 1当てはまらない

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8

石狩市立花川小学校(http://www.fureai-cloud.jp/ikc_hanakawa)

児 童 数

学 級 数

294人

14(2) ( )は特別支援学級

校 長 名

職 員 数

武 田 淳(H24.25)

亀 浦 正 幸(H26)

29人

Keyword 基礎学力を保障する日常授業の改善

○ 取組の概要

・本校は、全国学力・学習状況調査の実施以降、平成 24 年まで国語、算数の平均正答率

が全道平均を下回っていた。

・本事業の実践指定校を受けてから、算数科における「教えて考えさせる授業」の展開

や国語科における「話合い活動の充実」を中心に、基礎学力を保障する日常授業の改

善にかかわる取組を推進してきた。

3 年 間 の 取 組

【1年目 個に応じた指導の充実と授業改善の取組】

○ 校長は、学力の状況の分析から、「基礎学力の保障」という課題を明確に示すと

ともに、教員の役割分担を明確にした上で、TTによる指導の工夫や習熟度別少

人数指導の時数の増加など、個に応じた指導の充実により、基礎的・基本的な知

識・技能の確実な定着に重点的に取り組んだ。

○ 朝の「スキルタイム」で全校一斉に計算練習を行う繰り返し学習や、給食時間

前や放課後、長期休業中で行う補充的な学習に取り組み、下位層の児童の基礎学

力保障に努めるようになったが、家庭学習の量的・質的な向上に課題がみられた。

○ 国語科・算数科を窓口に、分かる授業づくりに全教員が取り組むよう、すべて

の教員が年間に2回授業を公開し、発問や板書、ノート指導など明確な視点をも

って教員相互に授業評価を行い、指導力の向上を図るようにした。

【2年目 算数科における「教えて考えさせる授業」の展開】

○ 校長は、算数科において、「教えて説明させる」、「教えて解かせる」、「教えて考

えさせる」学習過程を構築し、基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着を図ると

ともに、活用する力を高める授業づくりを行うよう、全ての教員に指示した。

○ 授業の効果的な展開を支えるため、音読、漢字、計算の学年ごとの到達目標であ

る「学年別最低保障学力」を整理し、評価テストにより定着率を確認する取組や、

学習規律の徹底、実物投影機を全学級に備えるなどのICTの効果的な活用を全教

員で統一した。

○ 校長は、各教室を巡回し、統一した指導の状況を把握するとともに、必要に応じ

て、教員に対して個別に指導助言を行った。

○ 8月には玉川大学教職大学院の堀田龍也教授を招聘し、本校の研修の取組や一人

一人の教員の指導について助言をいただき、取組が効果的であることを価値付けて

いただいた。その結果、教員が自分たちの取組に自信をもつようになった。

Page 11: ~学校が一体となって進める 包括的な学校改善~ · 北海道教育委員会 (平成27年6月) 学校力の向上を目指して ~学校が一体となって進める

9

80.0

90.0

100.0

110.0

3年 4年 5年 6年

CRT(国語)の正答率の全国比

H24 H25 H26

【3年目 実践の広がり】

○ CRT調査等から、国語科の一部の領域に課題があったため、平成 26 年度から

は国語科の学習指導の工夫を研究主題とし、文章や資料を的確に読み取り、与えら

れた条件に従って表現する力を育成する研究を進めた。

○ 若手教員が増加してきたことから、校長は、今後を担う若手教員を中心に「メン

ターチーム」を組織するよう研修部に指示した。メンターチームの研修は、授業研

究などを通じて指導力を高めることを目的に、年複数回実施した。また、①より多

くの教員の交流を通して教育の質を高めること、②本校の成果を他校に普及させる

ことを目的に、近隣実践校と合同でテーマ別研修及びミニ研修を実施した。

○ こうした取組により、全国学力・学習状況調査をはじめ、CRT(数研式標準学

力検査)において、全国の平均正答率を上回るなどの成果が見られた。

○ 本事業についての保護者の声

・授業を参観すると、子供が真剣に学習に取り組

む姿が見られるようになりました。

・私たちも学校の取組に協力したいので、熱心に

取り組まれている研修の様子や成果などをも

っとPRしてほしいです。

【今後の課題】

○ 各学年の学力の状況をきめ細かく把握して学力向上の取組を継続するととも

に、国語科と算数科における指導方法を確立し、他の教科や領域においても効果

的な指導を行うことができるよう、実践的な研修を推進していきたい。

○ 外部講師の指導助言や来校者の声などを踏まえ、本校の取組を検証するととも

に、取組の成果を近隣実践校だけではなく、石狩市内の学校や石狩管内をはじめ、

全道に普及し、地域の学校力向上に貢献していきたい。

・校内研修の目的や推進方法

について、全教職員が納得するよう説明を継続し、必要感を伝える。

・ミドルリーダーを若手教員の指導者として活用したり、校務分掌に具体的なミッションを与えたりして意図的に人材を育成する。

・子供の実態を可能な限り客

観的な数値で表し、成果と課題を共有し、教職員全員で改善方策について協議する。

3 年 間 の 取 組 の 成 果 等

組織的な取組のための

ポイント

【CRTの正答率の推移】

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10

大樹町立大樹小学校(http://www.taiki.ed.jp/̃taikisho/)

児 童 数

学 級 数

279人

11(6) ( )は特別支援学級

校 長 名

職 員 数

板 谷 裕 康

28人

Keyword 学び続ける教員集団づくりを目指した取組

○ 取組の概要

・本校は、全国学力・学習状況調査において、算数に課題がみられたことから、算数の

基本的な学習過程「大樹モデル」を作成し、「教えること」と「考えること」とのバ

ランスのよい授業展開を中心に分かる喜びのある授業づくりに取り組んできた。

・教員の資質向上を目指し、若手教員を育てるメンターチームの取組を推進してきた。

【1年目 全員で子供の学習状況を分析し、共通理解を図った取組の推進】

○ これまで客観的なデータに基づいて、校内研修を行うことは少なかった。その

ため、校長は、全国学力・学習状況調査の結果等を踏まえ、算数の授業改善を対

象とした校内研修に取り組むよう働き掛けた。

○ 若手教員が多く、算数の基本的な学習過程や指導方法の理解が十分ではなかっ

たことから、複数の教員が先進校を視察し、校内研修で先進事例をもとに、日常

の授業改善に取り組んだ。

○ また、これまで、ノート指導や学習規律を学校全体で共通、一貫した指導をするこ

とについて、教員の共通理解を図るまで時間がかかった。そのため、学習規律の徹底

等に関する校務分掌上の担当者の役割(事務職員を含む)を明確にした。

○ 校長が各教員と面談し、個々の特性に応じた係に配置するなど組織的な授業改善に

向けた校内組織の見直しを図った。

【2年目 全員で取り組む授業改善の推進】

○ 各教員との面談なども踏まえ、校内でこれまでの授業づくりの課題を洗い出し、

「基本的な学習過程の明確化」「ノート指導の徹底」「ICTの活用」の3点を重点

とし、授業改善を進めることとした。

○ また、子供一人一人に学ぶ構えをつくる必要があることから、「学習のやくそく

大樹っ子7つのめあて」や「家庭学習のすすめ方」を作成した。

○ 「当たり前のことを習慣になるまで学校全体がチームとなって徹底する」ことを

大切に、全員1回以上の授業公開を実施した。

○ 玉川大学教職大学院の堀田龍也教授を招聘し、教科書などを大きく写して、子供

の興味・関心を引きつけたり、分かりやすく説明したりするなど、ICTの効果的

な活用方法について指導助言を受けた。その結果、実物投影機を活用する時間が大

幅に増え、子供たちが授業に集中するようになってきた。

○ 校長は、授業改善の状況を写真で紹介するなどして取組の成果を視覚化し、教員

の変容を評価し、成就感や達成感を実感できるようにした。

3 年 間 の 取 組

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11

60.0

70.0

80.0

90.0

「算数の授業の内容はよく分かりますか」の

質問に対して「当てはまる」、「どちらかと

いえば当てはまる」と回答した児童の割合

【3年目 メンターチームの取組】

○ 毎年、初任者が学校に配置され、初任段階の教員が増加するとともに指導方法や

教材研究等に不安を抱える若手教員が多いことから、若手教員を支え育てる新たな

取組としてメンターチームを立ち上げ、定期的な研修やメンターによる「メンター

チーム便り」の発行を行った。

○ メンターチームでは、運動会や学習発表会の指導の在り方、通知票の書き方、給

食指導の在り方など、若手教員の率直な悩みや疑問を中心に取り上げ、先輩教員の

経験談を交えて話し合う場とした。

○ これら3年間の取組の結果、「授業がよく分かる」と回答する子供の割合が増加

するなど、授業改善の成果が見られた。

○ 本事業についての保護者の声

・毎日、ホームページに学校便りがアップされるので、

子供の様子や学校の考えなどを知ることができて、

とても楽しみにしています。

・家でも、子供が意欲的に学習や読書に取り組むよう

になってきて、親として安心しています。

・大樹小は自分の子供を通わせたい学校です。

【今後の課題】

○ 算数を中心に全教員で共通、一貫して取り組んできた成果を生かし、他の教科

でも、習得を中心とした授業における指導の改善を図っていきたい。

○ 小学校で取り組んだことが中学校でも継続されるよう、小・中学校で合同の研

修会を開催するなど、小中連携を更に強化したい。

・管理職が、一人一人の教員のよさを認め、役割を決めて、その特性を生かす場を意図的に設定する。

・全員が自校の課題と成果を

共有できるよう、学校便りやホームページに写真を豊富に掲載して情報の発信に努める。

・学校の課題解決の方法を考

える際に、アイデアや手法を出し合うだけでなく、子供の変容を中心に話し合う場をつくる。

3 年 間 の 取 組 の 成 果 等

【全国学力・学習状況調査 児童質問紙調査結果の推移】

組織的な取組のための

ポイント %

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12

(2)各領域の実践

領 域:教育課程・指導方法等

取組項目:発達の段階を踏まえた学習規律・生活規律の統一及び徹底

学校名

【実践内容】

本校では、児童が学習規律を自律的に守り校内外

での規範意識を高めることをとおして、確かな学力

の定着を下支えできるよう、学習に向かう心構えと

して、児童の実態や発達の段階を踏まえた「学習の

ための10の約束」(以下、「約束」という。)を低・

中・高学年別に作成した。

この「約束」を、全学級で掲示し、日常の授業で児

童と教員が共に“学びの土台”として大切にしている。

教員は、「気持ちのそろった教師集団」を合い言

葉に、学校全体で一貫した指導を徹底している。

また、児童の規範意識を高めるとともに、「約束」

の定着状況を把握し指導の改善に生かすため、全児

童による学期ごとの自己評価を実施している。

【成果】

・学校全体で一貫した指導を徹底したことにより、

定着するまでに時間を要しなくなった。

・学習規律の徹底が図られたことにより、授業時間

に余裕が生まれ、終末の時間を十分に確保するこ

とができるようになった。

【成功の秘訣】

○ 学習規律(約束)の定着度合いを定期的にアンケートで把握し、その結果をミニ研修で取り

上げて、改善方策を話し合い、すぐに指導に生かすこと。

○ 学期ごとに児童による自己評価の結果を取りまとめ、教員、保護者、児童に示し、取組の成

果を共有すること。

○ 学習規律の徹底だけではなく、日頃から全教員で共通に取り組めることを確認し合う学校風

土を醸成すること。

児童の自己評価カード

学習のための10の約束

日常の授業の様子

・みんなが自分を見て話を聞いてくれるので、

意見が言いやすくなりました。(児童)

・どの先生が担任になっても「約束」が変わら

ないので、子供も親も安心して新学期を迎え

ることができます。(保護者)

児童・保護者の声

岩見沢市立南小学校

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学校名

領 域:教育課程・指導方法等

取組項目:各学年の基礎学力を保障する教育課程・指導方法

【実践内容】

本校では、東京大学の市川伸一

にして、習得の学習で教えることを明確にし、深め

合う場を設定した算数科の授業

授業)づくりに取り組んだ。

「教えて考えさせる授業」の展開は、

説明」段階における教師の説明時間を

すること、②「理解確認」段階

理解度を「理解確認問題」を使って確認し、

説明し合う活動などを短時間でテンポ良く

れること、③「理解深化」の段階では、発展的な課

題(理解深化問題)を用意し、小グループで

に問題解決する場面を位置付ける

価」では、「質問カード」で疑問の提出

児童が学びを実感できるように

実際の授業では、教えるべきことを明確にして、

教材や算数的活動を工夫し、ICTを効果的に活用

し、展開している。

【成果】

「教えて考えさせる授業」を

次のような感想があった。

・指導すべき内容が明確になり、

えるようになった。

・「教えて考えさせる授業」は全体を

ない流れだと感じた。

【成功の秘訣】

○ 全国学力・学習状況調査の

目指すという課題解決のために

○ 模擬授業や提案授業を行うなどして、

すること。

○ 外部講師から直接指導を受ける

して、実践のベースとなる基礎的な

・時間に無駄がなく、子供がテキパキ

たり書いたりしていました

・授業が分かりやすく楽しくなった

ています。

保護者の声

江差町立南が丘

13

域:教育課程・指導方法等

取組項目:各学年の基礎学力を保障する教育課程・指導方法の確立

伸一教授の理論を参考

教えることを明確にし、深め

合う場を設定した算数科の授業(教えて考えさせる

考えさせる授業」の展開は、①「教師の

おける教師の説明時間を 15 分以内と

」段階では、教師の説明の

理解度を「理解確認問題」を使って確認し、互いに

を短時間でテンポ良く取り入

」の段階では、発展的な課

題(理解深化問題)を用意し、小グループで協働的

付けること、④「自己評

で疑問の提出を促すなど

できるようにすることである。

教えるべきことを明確にして、

教材や算数的活動を工夫し、ICTを効果的に活用

を実践した教員からは

なり、効率的に時間を使

は全体を通して無駄の

の結果などから見られる学校の課題を踏まえ、知識

のために「教えて考えさせる授業」の授業づくりに取り組むこと。

行うなどして、本校における教えて考えさせる授業のイメージを

直接指導を受ける前に、全教員で書籍を読み合わせたり、

基礎的な知識を身に付けておくこと。

「教える」段階における

子供がテキパキと反応し

たり書いたりしていました。

授業が分かりやすく楽しくなったと子供が言っ

教える

考えさせる

教 師

理 解

理 解

自 己

本校における教えて考えさせる授業のイメージ

「考えさせる」段階

南が丘小学校

を踏まえ、知識・技能の習得を

に取り組むこと。

授業のイメージを共有

読み合わせたり、先進校を視察したり

におけるICTの活用

の 説 明

解 確 認

解 深 化

己 評 価

本校における 教えて考えさせる授業のイメージ

段階における教え合い活動

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学校名

領 域:地域・家庭との連携

取組項目:児童生徒の勉強時間の確保(

【実践内容】

本校では、児童が家庭での生活状況を記入する

「生活リズムチェックシート」を活用し、勉強時間

の確保に取り組んでいる。

この取組は、起床・就寝時刻をはじめとして、「朝

食の摂取」「学習の時間」「テレビ・ゲームの時間」

「読書の時間」の項目で3日間の様子を記入するこ

とにより、児童の生活状況が可視化され、児童・保

護者ともに生活習慣を見直す機会となっている。

平成 26 年7月に行った結果から、本校の児童は

「テレビ・ゲームの時間がやや長い」、「家庭での読

書を全くしない児童が多い」という実態が明らかに

なった。

このため、10 月から「0のつく日は『

NO ゲーム DAY』」を主唱し、学級活動において

た。少しでもテレビやゲームにかける時間を短くし、

読書や家庭学習にかける時間を増やすよう、

き掛けている。

また、プリントを全戸に配布するほか

通じた調査結果などを示しながら、

に働き掛けるなど、周知徹底を図った

【成果】

・「NO テレビ・NOゲーム DAY」に取り組んだことに

より、11 月の「生活リズムチェックシート」で

は7月に比べて「テレビ・ゲームの時間が1時間

未満」・「1時間以上読書をする」児童が少しずつ

増加するなど、生活習慣の改善が

【成功の秘訣】

○ 「生活リズムチェックシート」の結果を分析し、児童の生活の様子を可視化することに

より、保護者と課題を共有し、学校と家庭が連携して取組を行うこと。

〇 「NO テレビ・NO ゲーム

校便りの「フッター」に毎回

保護者・児童の意識化を図ること。

・子供が本を読むようになりました。

くれたのは「「NO テレビ・NOゲーム

・「NO テレビ・NO ゲーム DAY」の

が、その分、読書量が増えるなどいいことも

さんあります。

小樽市立稲穂小学校

保護者の声

14

地域・家庭との連携

時間の確保(「生活リズムチェックシート」

本校では、児童が家庭での生活状況を記入する

「生活リズムチェックシート」を活用し、勉強時間

この取組は、起床・就寝時刻をはじめとして、「朝

食の摂取」「学習の時間」「テレビ・ゲームの時間」

「読書の時間」の項目で3日間の様子を記入するこ

とにより、児童の生活状況が可視化され、児童・保

護者ともに生活習慣を見直す機会となっている。

行った結果から、本校の児童は

「テレビ・ゲームの時間がやや長い」、「家庭での読

書を全くしない児童が多い」という実態が明らかに

月から「0のつく日は『NO テレビ・

』」を主唱し、学級活動において指導し

少しでもテレビやゲームにかける時間を短くし、

読書や家庭学習にかける時間を増やすよう、児童に働

するほか、保護者会を

調査結果などを示しながら、参観日等に保護者

周知徹底を図った。

」に取り組んだことに

月の「生活リズムチェックシート」で

は7月に比べて「テレビ・ゲームの時間が1時間

未満」・「1時間以上読書をする」児童が少しずつ

改善が見られた。

「生活リズムチェックシート」の結果を分析し、児童の生活の様子を可視化することに

より、保護者と課題を共有し、学校と家庭が連携して取組を行うこと。

ゲーム DAY」の日には、児童会の放送委員会が全校に呼びかけたり、学

毎回掲載したり、参観日で説明したりなどを繰り返すことにより、

保護者・児童の意識化を図ること。

読書時間

49% 44%

56% 61%

△1時間未満TV・ゲーム時間

▼30分未満

・読書時間の増加、TV・ゲーム時間の減少が見られる。一方で、2時間

以上TV・ゲームする児童もわずかに増え、2極化している。

   〇7月・11月の結果比較より(太字が11月)

「生活リズムチェックシート

「生活リズムチェックシート

NO テレビ・NO

学校だよりによる「NO テレビ・

本を読むようになりました。きっかけを作って

ゲームDAY」です。

の実践は難しいです

が、その分、読書量が増えるなどいいこともたく

小学校

」の活用)

「生活リズムチェックシート」の結果を分析し、児童の生活の様子を可視化することに

児童会の放送委員会が全校に呼びかけたり、学

などを繰り返すことにより、

44% 7% 11%

61% 22% 29%

▼2時間以上△1時間未満

▼30分未満 △1時間以上

・読書時間の増加、TV・ゲーム時間の減少が見られる。一方で、2時間

以上TV・ゲームする児童もわずかに増え、2極化している。

   〇7月・11月の結果比較より(太字が11月)

チェックシート」の結果

リズムチェックシート」

NO ゲーム DAY

・NO ゲーム DAY」の周知

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15

領 域:地域・家庭との連携

取組項目:補充的学習サポートでの学生サポーターの積極的活用

学校名

【実践内容】

本校では、長期休業中に積極的に学習を進めようと

する児童や、個別の指導を要する児童に適切な学習の

機会を提供するため、補充的な学習の充実を図ること

を目的として、学生サポーターを活用した「学習サポ

ートデイ」を実施している。今年度は、夏季11日、冬季

5日の計16日間実施した。(長期休業中の平日の約6割)

内容は、個別の学習指導を中心としているが、学習

の途中には 20分間の「リフレッシュタイム」を設け、

屋外や体育館で体を動かすことをとおして、体力向上

に取り組んだ。夏季の学習サポートデイ実施直後に活

動の反省を行い、冬季の計画を立てた。

冬季では、夏季の反省を生かして指導体制を見直

し、本校教員に加え5名の学生サポーター(大学生)

を講師として活用した。その結果、児童一人一人への

きめ細かい指導が可能となった。また、学生サポータ

ーとの関わりにより児童の学習意欲の向上が見られ

たことから、今後も継続して学生サポーターを活用し

ていきたい。

【成果】

・平成 26 年度第2回ほっかいどうチャレンジテスト

において、第6学年国語及び算数の平均正答率が全

道平均を 10 ポイント以上上回るなど、全学年全教

科において全道の平均正答率を上回った。

積極的に児童に関わる学生サポーター

【成功の秘訣】

○ 学校経営説明会や保護者向け文書、参観日の学級懇談等で「学習サポートデイ」の実施を周

知すること。

○ 長期休業前に学習や生活を振り返る「二者面談」(第3~6学年で実施)を実施し、担任が

児童に学習サポートデイの積極的な活用を呼び掛けること。

○ 学習サポートデイ終了後、児童の感想等をもとに速やかに反省を行い、成果と課題を明確に

し、次回の内容の改善に生かすこと。

○ 学生サポーターとの打合せを十分に行い、児童への積極的な関わりを促すこと。

・自分の苦手なところに集中して取り組むこと

ができました。 ・リフレッシュタイムがあったので、後半もが んばることができました。

体育館で行うリフレッシュタイム

児童向け案内チラシ

網走市立網走小学校

児童の声

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16

学校名

領 域:人材育成

取組項目:初任者研修等の自校実施

【実践内容】

本校では、宿泊研修以外の初任段階研修を全て自

校で実施している。

授業力向上を最重要課題と捉え、初任者が必要な

資質能力を高めることができるよう、指導教員によ

る指導はもとより、校長による日常的な授業参観、

授業後の直接指導の場の設定により、授業改善への

意欲を高めている。

また、実践指定校として日々の学校運営を題材と

しながら、指導教員からは組織の一員としての心構

えを重視した指導を行っている。

放課後や長期休業中には、近隣実践校の初任者も

対象に、教科指導や生徒指導、学級経営などをテー

マに理論研修や実践交流を行うミニ研修やテーマ

別研修を実施している。

【成果】

・初任1年目の教員の学級における単元テストの集

計から、児童の学力が向上してきていることが分

かった。

・初任者が担当する高学年を対象とした授業評価に

おいて、「学校の勉強はよく分かる」と回答した

児童の割合が 96%となった。

【成功の秘訣】

○ 校長との面談をはじめ、職員打合せでの好事例の紹介などを通じて、全教員が若手教員の育

成に積極的に関わっていくことの必要性や意義について共通理解を図ること。

○ 初任者はもとより、先輩教員も資質能力の向上を図ることができるよう、先輩教員がミニ研

修等の講師になるなど、OJT を観点にミドルリーダー育成のための仕掛けをすること。

○ 管理職による日常的な直接指導を通して、若手教員の授業力の向上に努めること。

・全ての先生方に計画的に御指導いただき、感

謝の気持ちでいっぱいです。

・同じ学校の先輩教員から日常の取組について

指導を受けることができ、日常の実践にすぐ

に取り入れることができました。

初任者の声

校長による直接指導の様子

ミニ研修の様子

日常の授業の様子

登別市立幌別小学校

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学校名

領 域:人材育成

取組項目:若手教員や中堅教員

【実践内容】

本校では、若手教員と中堅教員の計画的な育成を

重点とし、次の研修を実施し

その他、初任者が特定の教員に

学ぶ「シャドーイング」や授業づくりに

改善研修、今日的な教育課題等に対応する放課後テー

マ別研修、アドバイザーを招聘した研修を行ってい

【成果】

・教職員の自己評価では、「校内での研修は個人のスキル

アップに向けて効果的であった」の項目で、

階で3または4の肯定的な評価をした。

・児童アンケートでは、90%が「授業が分かりやすい」と

回答した。

【成功の秘訣】 ○ 若手、中堅、ベテランの年代層ごと

行うなどして、経験年数に応じた教員の資質能力の向上を図ること○ 若手、中堅、ベテランなどが混合して編成する

うなどして、教員の課題解決能力の向上を図ること。◯ 外部講師を活用し、他都府県すること。

○ これまでの校内研究を生かし、内容を

・自校の優れた先生による年間のOJT研修

より、自己の成長を実感しました。・若手教員への指導を通して、自分の

り返り、改善する機会となりました。(

若手教員・中堅教員の声

中 堅 教 員若 手 教 員 育 成

○若手教員を対象とし、基礎となる

るメンター研修

中堅教員が講師となり、若手教員が抱える指導上の

課題や悩みを共有、解決を目指す研修

○中堅教員を対象とし、マネジメント能力等の向上を図

るBB(バックボーン)研修

中堅教員が互いに講師となり、学校運営や若手教員

の育成などをテーマに演習や協議を行い

ダーとしての資質能力の向上を図るための研修

○全教員を対象とし、チームによる課題把握能力

を図るプロジェクト研修

年代層の異なる教員で構成し、学校運営や学習指導

など学校改善に関わる課題の方策を検討する研修

学 校 力 の 向 上

チーム貢献力

旭川市立大有

17

教員の計画的な育成を目指した総合的な取組

と中堅教員の計画的な育成を

研修を実施している。

教員に付いて指導方法等を

授業づくりに特化した授業

改善研修、今日的な教育課題等に対応する放課後テー

招聘した研修を行っている。

「校内での研修は個人のスキル

アップに向けて効果的であった」の項目で、95%が4段

3または4の肯定的な評価をした。

%が「授業が分かりやすい」と

ベテランの年代層ごとに編成する「よこ」のつながりによる年代層別の研修を行うなどして、経験年数に応じた教員の資質能力の向上を図ること。

若手、中堅、ベテランなどが混合して編成する「たて」のつながりによる課題別のうなどして、教員の課題解決能力の向上を図ること。

都府県の先進事例について理解を深め、校内で説明したり実践したり

を生かし、内容を精選し、日常授業の改善に直結する研修を行うこと。

による年間のOJT研修により、自己の成長を実感しました。(若手教員)

指導を通して、自分の取組を振改善する機会となりました。(中堅教員)

メンター

プロジェクト

中 堅 教 員 育 成

基礎となる指導力等の向上を図

中堅教員が講師となり、若手教員が抱える指導上の

課題や悩みを共有、解決を目指す研修

対象とし、マネジメント能力等の向上を図

中堅教員が互いに講師となり、学校運営や若手教員

演習や協議を行い、ミドルリー

ダーとしての資質能力の向上を図るための研修

チームによる課題把握能力の向上

年代層の異なる教員で構成し、学校運営や学習指導

など学校改善に関わる課題の方策を検討する研修

学 校 力 の 向 上

BB(バックボーンチーム貢献力育成

市立大有小学校

な育成を目指した総合的な取組

による年代層別の研修を

による課題別の研修を行

校内で説明したり実践したり

に直結する研修を行うこと。

メンター研修

プロジェクト研修の構成表

バックボーン)研修

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学校名

領 域:学校マネジメントその他

取組項目:外部からの継続的な指導助言及びそれを踏まえた教育課程・指導方法等の不断の見直し

【成果】

・小・中合同研修会など、事後のフォローアップ

を確実に行うことにより、講師の助言を学校改

善に直結させることができた。

・教職員一人一人が学校運営に参画しようとする

意識や、学習指導、学級経営に関する指導力が

高まった。

【成功の秘訣】

○ 年度当初から、公開研究会の機会を活用したアドバイザーの訪問を予定に組み込んで周知

し、アドバイザーによる検証の重要性や期待感などを醸成すること。

○ アドバイザーによる学校改善の事例をもとに、その成果や課題を全教員に納得させること。

○ アドバイザーや指導主事等に学校経営の方針や学校の課題を事前に情報提供し、目的を明確

にして具体的な指導助言を得ること。

・アドバイザー等の指導助言から、実践の成果

や新たな課題を明らかにできました。

・「授業を開く」ことを意識しながら実践を

進めたことにより、教師としての自信と

指導力を高め続けることができました。

教師の声

函館市立八幡小学校

アドバイザーの授業参観の様子

アドバイザーからの指導助言

【実践内容】

本校では、道内外のアドバイザーや指導主事等を招聘し、指導助言を得て、それを踏まえて不断に学校改善を図った。 1 東京大学教授 市川 伸一 氏 (平成 25年 10 月 17 日(木)実施)

<事前> ・校内で講師の著書をもとに授業の在り方を検討

<当日> ・全学級の授業と第4学年の算数科の習熟度別学

習を公開 <助言> ・学び方は身に付いているので、子供がやりがい

を感じる学習課題や授業の流れを工夫すべき <事後> ・講師の助言を「研修便り」等で全員が共有し、日常の授業で実践・検証

2 京都産業大学教授 西川 信廣 氏 (平成 26年 11 月 28 日(金)実施)

<事前> ・中学校区での学習規律を含む学習指導のこれま

での取組について、管理職等間で改めて確認 <当日> ・全学級の授業参観

<助言> ・小中連携は、15 歳の目指す子供像を共有すること

・小中連携は、学年の縦軸だけではなく、教科間等の横軸にも目を向けること

<事後> ・小・中合同研修会を実施し、その後の改善状況

を交流

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学校名

領 域:学校マネジメントその他

取組項目:成果・課題の積極的発信

【実践内容】

本校では、1回限りのイベント的な公開研究会に

替えて、日常の授業を公開する「月例公開研究会」

を毎月実施し、授業改善の方策について協議を深め

た。この研究会で明らかになった成果や課題は、日

常の教育活動の様子とともに、学校のホームページ

に掲載するなど、積極的に発信し、保護者や地域、

他校への普及啓発に努めた。

また、保護者ボランティアの協力を得た放課後学

習の様子など、家庭や地域と連携した取組もホーム

ページを通じて積極的に情報提供を行った。

【成果】

・保護者を対象としたアンケート調査では、9割以

上の保護者が、学校からの情報発信に満足してい

る状況が見られた。

・特に、ホームページに掲載されている内容が、ほ

ぼ毎日更新されていることに対して評価されて

いる。また、「遠くに住んでいる祖父母も楽しみ

にしている。」など、情報通信機器による発信な

らではの評価も見られた。

【成功の秘訣】

○ 校長が、事例を挙げたり、自分の経験を踏まえたりしながら、相手意識を大切にした情報発

信の在り方を指導し、学校の教育活動の情報発信の重要性や効果などについて、教員の理解を

得ること。

○ 年に1回の公開研究会ではなく、日常の授業を公開する公開研究会を実施すること。

○ 加配事務職員が中心となり、ホームページによる情報発信を行うなど、それぞれの役割を明

確にしながら、教職員の業務の効率化を図ること。

ホームページによる情報発信(研究会の様子)

月例公開研究会の案内

・日常の授業改善に向けた組織的な取組がとても参

考になりました。自校でもできることからすぐに

取り入れたいです。(他校の教員)

・学校の様子がホームページ等で紹介されていて、

また頻繁に更新されているので、放課後学習など

のお手伝いに協力しやすいです。(保護者)

ホームページによる情報発信(放課後学習の様子)

他校の教員・保護者の声

別海町立別海中央小学校

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20

4 教育現場の声

(1)学校力事業を実践する校長先生の声 道教委では、学校力事業の実践指定校、近隣実践校及び特別連携校の校長先生に対し、平成

26 年 12 月に「校長のライフヒストリー」として、校長の役割及び必要な資質、大切にする価値、

本事業で学んだことなどについてアンケートを実施しました。

その結果から、本事業に関連するものは以下のとおり。

① 校長の役割及び必要な資質

○ 見通しをもった組織マネジメントをすること。職員をコマとして動かすのではなく、指し手

として育成する。そして、職場をチームにすること。次の職場で「みんなでやろう」という人

材を育てること。

○ 高圧的であったり、権威的なリーダーシップでは信頼感は生まれない。個々の職員の特性を

把握しコーチングを行うなど、技術的・精神的な支援・働きかけの中で発揮されるサーバント・

リーダーシップが大切。

○ 校長・教頭・教務主任の三本の矢が、同じベクトルを向いていることが、経営にとって不可

欠である。校長・教頭・教務主任で、情報を共有化し、イノベーションの実践化を図り続ける

ことが、職場の風土の適正化につながる。

○ 「綸言汗のごとし」を肝に銘じ、職員と対峙していく気構えが必要。これが職員会議を補助

機関として、効率的に活用していく第一歩と確信している。

○ 職員と面談しその働きを評価して職員個々の意欲を高めることや、課題を一緒に考えること

で解決の方向に向かわせることも必要だが、職員が自分から解決に向かうような雰囲気づくり

が一番難しく、また一番必要なことだと思う。

○ 校長への期待と役割も大きく変わってきている。教育者という姿から経営力をもった教育専

門家というように、経営力が問われるようになってきた。

○ 自分の足で歩いて課題を見つけること。校長室からは何も見えない。

○ 子供たちに質の高い教育、質の高い授業を提供し、学力を保障することだと考えている。授

業の充実こそ最重要課題であると捉えている。そのために必要な校長の資質・能力は「学校組

織を動かす力」と考えている。

○ 校長の役割の一つは、「ファシリテーター」であり、どのように教職員の行動を「勇気づけ

るか」であると考える。

○ 教育理念を語ること。よりシンプルに、言葉を精選していく過程で本質が見えてくる。永六

輔氏の「むずかしいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを面白く」の境地にたど

り着くまでの飽くなき追求が必要である。

○ 保護者や地域住民の負託に応え、学校の変容を子供の成長・発達の姿で示せる教育課程の編

成・実施・改善を進めていくこと。

○ 可能な限りトップダウンはしないと決めている。それは、教職員に「やらされ感」しか残ら

ないから。あくまで自分の意思で、自分たちが決めることを大切にしている。

○ 特に大事にしたいのが人材育成である。「教育は人なり」、「学校づくりは教師づくりから始

まる」と言われるほど「教師の意欲を喚起し、教師の資質・能力をいかに引き出す」かが校長

の大きな役割である。

○ Less is More という考え方に共感し、教職員に短い言葉で理念を示すことに努めてきた。

○ 経営者として優れていること、優秀な人材を育成できること、教育者としての高い識見が最

低限必要。

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○ 校長は、縦軸と横軸で物事を考えなければならない。縦軸とは教育を歴史的に考えることで

ある。横軸とは世界各国でどのような教育が行われているか、我が国と比較し学ぶところは取

り入れていく心の広さである。

○ 「学び続ける力」。他の校長と語り合う、違う分野の人と対話することなどもまた必要。広

く学び続けることが校長として力量を高める。

○ 職員を安心させる態度(校長が不安な顔や不平を見せない)。

○ 北海道の教育は大変革期を迎えている。校長としての強いリーダーシップを発揮して、教職

員の意識を変え、一般社会の常識の上に立った「子供の将来に責任をもつ教育」を推し進める

学校をつくらなければならない。今、校長に必要な資質能力はと問われたら、迷わず校長のマ

ネジメント能力と答える。

○ 「子は親の鏡である」が如く、教職員の姿は校長の姿そのものであるとの認識に立ち、日常

的な校長職にあたることが大事。

○ つい最近まで「校長は、最後の砦である」として業務の一切を教頭に任せきりにしていた校

長が存在していた時期があった。しかし、現在は校長自らが課題意識をもち、学校改善を進め

る提案型の運営、いわゆる「率先垂範」の姿勢を教職員に示すことの大切さが求められる。

② 大切にする価値

○ 学級王国から学年王国へ、そして今、求められていることは「学校力」の構築である。

○ 子供たちに「当たり前のことを当たり前に」できるようにすることが私たちの努め。特別な

ことではない『当たり前のこと』を何度も何度もくり返して取り組むことにより、その先にあ

る少し高いことを成し遂げていくことのできる子供を育てることが理想的。

○ 「踏襲は後退、挑戦が前進」という言葉があるが、課題を的確に把握し、その解決のための

具体的方策を考え、職員と共に知恵を絞り汗を流すというスタンスで動いている。

○ いくら知識があっても受け売りを職員に伝えるだけではそう響くものではないと実感して

いる。自分の言葉で再生することで、言葉に力が宿る。日々、言葉の力を磨くことを心がけて

いる。

○ PDCA サイクルが一年に一回では成果は期待できない。できるだけ短いサイクルでやること

が大切。

○ 子供の様子を校長としてじかに把握し、課題を見つけ、年度途中であっても学校経営や教育

活動の改善を図ること。毎日の授業参観を行いながら、子供一人一人の生活や学習の状態をつ

かみ、子供の様子について全職員と課題を共有し、改善の方策を考えること。

○ 「孤掌難鳴」(こしょうなりがたし)。「片方の手のひらだけでは音は出しにくい。1人では

出来ないことも、人と協力することで出来るようにする」、つまり「チームワーク」を大切す

るということ。

○ 学校は勉強するところ、学力を育てるところ、という不易な価値を、情報の洪水の中で見付

けることに、多くの時間を要した。また、本事業に取り組むことで、それを再確認・確信した。

○ 世の中の情勢を見極め、学校に何が求められているのかを考え、それを学校経営に生かす目

が必要であり、大切にしている。これを見極める力をつけるため、特に教員以外の人との対話

やコミュニケーションを意識している。

○ 授業で一番大切なものは、「その子の考える力を伸ばすこと」だと思っていた。もちろん、

今でも大事だが、もっと大事にすべきことは「その子に確かな力を付けること」、つまり、結

果としての学力の定着なのではと考えるようになってきた。

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○ 「ベターを目指してベストを尽くす」。一歩前進を目指してそのことにエネルギーを注いで

いくこと、日常の授業づくりで意識して取り組んでいくこと、またそのことを継続していくこ

とが指導力の向上に欠かせない。

○ 学校の大切な役割は社会と子供をつなぐこと。子供たち一人一人の大切な人生の原風景とし

て残る6年間に寄り添う私たちは、「つなぎ手」としての役割を重く受け止めたい。現実社会

は厳しい。いくつものライフイベント、大きな困難が待ち受けているからこそ、必要な「生き

抜く力」を育まなくてはならない。

○ 責任転嫁しない。「良くならないのは、子供や保護者に問題があるから」で済むなら、教師

を辞めるべき。

○ 授業の成否は、指導案を作る際に、受け持ちの子供一人ひとりの顔や、発言や反応を思い浮

かべられることができるかどうかである。

○ 私が教頭のとき、ある学級が荒れていた。校長先生はいつも気にかかる児童の横に座ってい

た。結局、その学級は担任を交代せずに学年末まで頑張れた。私は、校長が校長室にこもらな

いことが学校を正常化する原点だと気が付いた。

○ 担任している子供は、教師の文字の書き方、話し方、仕草まで似通ってくることがある。「学

ぶ教師がいるところに学ぶ子供が育つ」と言われる。教師の生き方そのものが身近で最大の教

材となる。

○ 教員にとっては何回か繰り返す授業でも、子供にとって今日の授業は一生に一度しかない、

繰り返すことのできない一時間の授業であること。

③ 学校力事業で学んだこと、苦労したこと

○ これまでは優れた実践を見聞きし、その実践を持ち帰って追試実践をするのがよくある姿で

あったが、この取組では、研修に参加した者がその場で実践的な力を身に付けられるように仕

組まれている。その研修に参加する中で、自校の研修もより参加型の研修へと改善することが

できた。

○ たくさんのアドバイザーの方から学ぶ機会ができ、学校に新しい風を吹き込むことができて

いる。また、本事業の指定校が集まる「推進協議会」においては、道内各地の実践指定校との

交流を通して、自校の実践を振り返る機会になっている。

○ 本事業が「学び続ける学校」のモデル提示とする中、校長も常に「学び続ける校長」であり

たいと考えるようになった。

○ 「凡事徹底」の大切さ、特定の職員の頑張りではなく全職員が一体となって取り組むことの

大切さ。

○ 苦労したことといえば、本校が本事業に取り組むこととなったことを職員に周知し、同じ方

向に向かって動き出すまでの時が一番大変だった。校長一人でできることは少なく、組織が一

丸となってこそ、力は発揮できる。

○ 本事業の取組について、教職員に組織としての取組であり共通理解・共通認識に立つことを

言い続けた。教職員一人一人が組織の一員であるという自覚を強くもち、自分の考える方針や

重点に向かって同じベクトルで教育活動を推進していけば、自分の目指す学校づくりに近付く

ことを学んだ。

○ 職場に「同僚性」や「協働意識」を醸成するために何が必要か。やはり目的の共有が重要で

あり、その目的が明確で納得できるものであればあるほど、「組織力」は倍増していくこと。

○ 限られた時間内に、的確に理解し適切に表現することは、今求められている力である。無駄

な時間をなくし、適度な緊張感をもちつつ心地よいテンポで授業が展開されることが必要であ

ること。

○ 校長による若手教員へのミニ研修会を年間 10 回程度実施することができ、校内で「校長に

よるミニ研修」を定着することができた。

○ 教師は教育内容を指導するということの原点に立ち返ることができた。教師は授業で勝負を

することが第一義と考えている。

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○ 説明・説得できる確かな情報や裏付けと具体的な方策・方向性を示せば主体的で効率よく教

職員・学校は動くことができるということ。

○ 本事業が、多岐にわたる視点から学校教育の質を向上させようとする取組であることを、改

めて理解し納得している。ただ、学校の創立期から変わらぬ、学校教育の根幹とも言える重要

な使命は「学習指導」であり、学校力向上の延長線上に「学力向上」を見据えておくことは不

可欠。

○ 研修から帰った教員が、学んだことを他教員に話したり学級に生かすにはどうしたらいいの

かを悩んでいる姿に教員としての成長を感じています。

○ まず一歩を踏み出すことだと考えます。そして、スタッフに行動するきっかけや勇気を生み

出すことも校長の役割だと改めて感じました。行動に移すためには、理念だけではなく感情に

響いた時であり、教育における価値の共有をすることが大事。

○ 「学校力」を高めることの重要性を再認識した。教職員個々の力を有効に活用し、よさを生

かし苦手を補い合う教職員集団を形成することが重要である。

○ 「学習規律」だけでも共通理解を図るのが大変だった。持ち味を生かす範疇と統一したほう

が教師の指導においても有効であると納得するまで時間がかかるが一致点を見つけることに

価値があった。

○ 少なくとも本当の取組が、児童・保護者・地域住民によい影響と効果を与えているのは事実。

根室管内の多くの学校(校長)が、本事業の趣旨を理解し、「使えるものは使う。できること

から始める」ように啓発活動に取り組んでいる。私が本校から異動しても、次の学校で同じよ

うな経営を行う。

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(2)学校力事業を実践する学校の初任者の声

道教委では、初任段階教員研修の対象の教員にアンケートを実施した。その結果から、本事業

の実践指定校に配置された初任者の声を紹介する。

○ アンケート結果

実践指定校に配置されている全ての初任者が「学校内で尊敬できる先輩と出会うことができ

た。」と回答している。実践指定校では、「メンターチーム」によるミニ研修など、全教員の参画

による若手教員を支援する校内体制が構築されており、初任者は、こうした機会を通じて、先輩

教員から指導上の悩みや課題を解決する糸口や方策を見出しているため、全ての初任者が学校内

で尊敬できる先輩と出会うことができたと回答したと考えられる。

○ 実践指定校の初任者の声

・指導してくださる先生のシャドーイングでは、指導の意図などを考えず、初めはただ真似をする

だけだったが、繰り返しアドバイスをいただいたことで理解が深まり、今では、子供の状況を把

握した上で、先輩の次の動きを考えながらシャドーイングすることができるようになった。

・学習指導や児童理解だけでなく、学級事務の処理の仕方まで、きめ細かく指導をしていただき、

大変ありがたいと思っている。自分を追い込みすぎて疲れた顔をしていた時には、「メリハリを

付けて仕事をすること。健康管理にも気を付けて」など、温かい言葉もいただいた。

・ミニ研修では、指導してくださる先生が、指導上の悩みや課題を共有してくれるので、とても心

強い。明日からの実践の改善に直結する方策も必ず見つけることができた。

・一斉の協議形式の研修では、自分の意見に自信がないので、なかなか発言することができないが、

ワークショップ型の研修は、全ての教員が同じように意見を出すことができるので、気楽に考え

を言うことができ、主体的に参加する姿勢が身に付いた。

○ 実践指定校の先生方の声

・実践指定校を受けてから、改めて初任段階研修について考えることができ、初任者本人だけでな

く、私たちにとってもこれまでの実践を確かめるよい機会なのだと思うようになった。

・初任者への指導は、同時に自分自身の実践の省察の場ともなっていて勉強になる。

・初任者の学びを見て、改めて学び続けることの大切さを実感している。

100.0%

そう思う

ややそう思う

あまり思わない

思わない

81.6%

17.5%

0.0% 0.9%

そう思う

ややそう思う

あまり思わな

思わない

設問 学校内で尊敬できる先輩と出会うことができましたか。

<実践指定校に配置された初任者> <実践指定校以外に配置された初任者>

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5 道内外アドバイザーへのインタビュー

(1)野 中 信 行 氏(元横浜市初任者指導アドバイザー)

北海道の先生たちの印象は?

北海道の先生たちは元気。特に、若い先生たちは、向上

したくて「飢えている」という印象すら受ける。また、子

供たちも非常に素直。本州の先生方が学級崩壊などでボロ

ボロになっているのとは比較にならない。少々、授業が下

手だとか、甘いというのは関係ない。本州の先生方は目の

前のことに対処するので精一杯で、何か新しいものを生み

出すというところは全くなさそうだが、北海道の教育から

は何か生まれてくるかもしれないと期待している。

学校力事業の実践指定校を訪問した印象は?

先日、網走市立網走小学校を訪問したが、1年前に訪問した時とは全く違っていた。これまで北海道

で 500 人近くの先生方の授業を見てきたと思うが、そのなかでも有数の授業者が何人もいた。さらに、

それに続く先生方も。また、教育長や校長先生の意識も非常に高い。

また、岩見沢市立南小学校では、分からない子供たちに徹底的にこだわり、成果を上げている。フィ

ンランド・メソッドなどと言われるものがもてはやされているが、実際にフィンランドがやっているの

は、分からない子供への徹底的なこだわり。岩見沢市立南小学校の実践と同じもの。

このほか、北広島市立大曲小学校の公開「研修」会に参加した。「研究」ではなく、「研修」。日頃や

れないような授業を「研究」しても意味はない。250 名くらいの参加者を集め、実践の普及に努められ

ていたが、行われていたのは、あくまで日常授業。しかも、国語の授業の冒頭で本時のゴールを示すな

ど、秋田県の実践にヒントを得た新しい授業スタイルが生まれつつあった。

一方、事業が 3年目となり、ひと通りやるべきことを終えたと感じて方向性を失っているように感じ

られた学校があったのも事実。

学校力の向上が重要であることは全国共通であり、この事業は非常に先見性があった。ここに正しい

実践を積み重ねていけば、必ず新しい何かが北海道から生まれてくると思う。

北海道の先生の授業についてアドバイスを。

北海道の先生の授業の大きな課題は、「定着不足授業」。授業の導入は、丁寧に、ある意味、ダラダラ

と思えるほどにやっていることも多いように感じる。しかし、子供たちが学力を付けるのは、算数の場

合では練習問題。この「定着」の部分を徹底することが疎かになっているのではないか。その点、先ほ

どの岩見沢市立南小学校は「練習問題の自力解決」といって、そこをはっきり分かっている。アウトプ

ットをちゃんとやらないと学力はつかず、インプットだけに力をいれても仕方ない。さっきも話したが、

フィンランドでは、教科書で簡単に教えた後、ペアやグループで問題を解かせ、その後に個人で練習問

題をさせる。そこでつまずいている子を見つけ、徹底的にこだわる。南小も同じことをしている。

学校力事業の今後の方向については?

網走小学校を訪問した時にも伝えたが、自分たちの学校だけで満足してはいけない。周りの学校にも

実践を広げていくことが重要であろう。また、「あの学校だからできたんだ」と言われるようになって

はいけない。どの学校の、どの先生でも、日常授業の改善のために、この事業の実践指定校の取組が役

立つようにしなければならないだろう。今後の3年間は、それに向けた取組を充実させるべきだろう。

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(2)藤 原 文 雄 氏(国立教育政策研究所総括研究官)

北海道の先生の印象は?

北海道の先生方は地域とのつながりが強く、地域の力を生

かして頑張ってきた。子供たちのために2週間かけてスケー

トリンクを作ったり、教頭先生が地域の町内会の会計をされ

たりしている。そのような学校は本州にはないだろう。

一方で、学校行事にエネルギーをかけ過ぎているというの

はあるかもしれない。学校行事をしっかり教育課程に落とし

込むのが大事。卒業時に子供たちが力を付けているのか、し

っかりと確認していくことが必要だろう。

また、先生同士のつながりが強く、連帯意識が強いように思われる。それは広域的な地域性が関係し

ているかもしれない。例えば、初任者が郡部の学校など小規模の学校に配属されることとなれば、仕事

面だけでなく生活面も含め、頼れるのはその学校の先輩たちしかいない。こうしたことから自然発生的

に先生方のつながりが強くなり、そのことが安定感を生んでいく。一方で、授業展開には個人裁量が広

く認められているという印象をもっている。

学校力事業の成果と課題は?

北海道では、学習成果を見取る部分が弱かったという印象がある。本事業の実施により、単元単位で

しっかりと学習成果を見取るようにシフトしてきた。形成的な評価がなされるようになってきたと認識

している。

これまでの学習指導要領では、主として学習内容をみてきたが、次期の学習指導要領の検討に当たっ

ては学習内容、学習方法、学習成果の把握をセットで重視してほしい旨、昨年 11 月に文部科学大臣か

ら中央教育審議会に諮問がなされている。このうち、学習成果の見取り、成果把握の部分が北海道では

弱かったのではないかと感じている。

また、北海道では、授業の展開に一定程度の個人裁量が認められているが、校長がリーダーシップを

発揮して授業改善を進めていかなければならないのではないか。北海道の学校を訪問して、教頭先生が

経営方針を説明し、事業のことを分からないと話す校長先生も少なからずいらっしゃるように感じるこ

ともあるが、どうだろうか。この事業では、校長のリーダーシップを強く求めており、北海道の新しい

校長像を示していける可能性を感じている。

さらに、教員の「育ち」という点では初任校が大事になる。

この事業では、実践指定校が包括的な学校改善を進めながら積極的に初任者を迎え入れ、初任者の成

長を支援し、他校にミドルリーダーを輩出していく仕組みを導入した。長い教師人生の基盤となる初任

期の教師を支える拠点校となることも本事業の大きな意義かもしれない。そのため、初任者を対象とし

てアンケートを実施し、実践指定校に配置された初任者層に明らかな違いが出てくるようであれば、そ

れをこの事業の成果と考えても良いように思う。

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(3)村 山 紀 昭 氏(北海道教育大学前学長)

北海道教育における学校力事業の意義は?

この事業が始まった平成 24年度の直前ごろは、正面から

「学力向上」を目標に掲げることに躊躇する向きが道内に

あった。しかし、現在では、学校現場にも「学力向上」の

必要性が受け入れられるようになったと思う。

「学力向上」については学校全体で考えないと結果が出ない。

それで本事業も「学校力向上」となり、重点的な教職員の加

配と一緒に実践指定校の取組を強力に後押ししてきた。

この事業は、従来型のモデル事業ということではなくて、

「総合実践事業」として継続的に実施されるものとしてスタ

ートし、本道教育において先導的な役割を果たしてきている。

実践指定校を訪問した印象は?

1年目、ほとんどの学校が校長を中心に意気盛んだったが、事業の多数の課題にどう取り組むか焦点

が定まっていない感があった。学校内の教職員の意思統一が十分でないと思われる学校もあった。

しかし、2年目からは、早くも顕著な成果を出す学校が現れ始めた。石狩市立花川小学校は、事業開

始の当初から校長先生の受け止めが非常に良く、課題を的確に重点化し取り組んだ。こちらがびっくり

するくらいに、ノート指導など学校全体で的を絞ってチャレンジし、周りの期待に十二分に応えている。

その他、登別市立幌別小の校内研修の徹底、大樹町立大樹小の地域ぐるみの取組、千歳市立桜木小で

の2回にわたる市川伸一先生を招いた公開研究授業などが印象に残った。また、名寄市立名寄小では、

バスで幌別小や花川小に先生方が大挙して視察に行くなどし、各学校間のこうした実際の見聞が事業の

方向性の確立に生きたように思う。

学校力事業の成果と今後の方向性は?

4年目を迎え、まずは事業の初志を繰り返し確認することが大事だ。従来型のプロジェクトと違い、

学力向上を中心に、北海道の教育を変えるという大きな志を忘れてはならない。

それと、繰り返し強調しているが、結果を出すことから目をそらさないようにしてほしい。先日、桜

木小の公開研で、市内多数の先生方を前にして、学校力の担当責任者が自校の全国学力・学習状況調査

の正答率の経年変化を数字で堂々と報告していたが、こうしたことが当たり前になることを望みたい。

また、北海道全体でいうと、当初の全国平均を超えるという大目標は、まだ容易ならぬ課題であるこ

とを常に踏まえてほしい。この点からも、札幌市ができるだけ早く、本事業に何らかの形で参画するこ

とが必要だと思っている。

当面、一番大事なのは、この3年間の取組で何が効果があったかを検証し、それに基づいて課題の重

点化を徹底することだ。「あれもこれも」とか「とりあえずこれを」では確実な成果を得られない。

その際、次期学習指導要領改訂の動きなど、全国的な教育政策を的確にとらえ、取組の一面化に陥ら

ないようにすることが不可欠だ。今後は特に、取り組みやすく目に見える結果が出やすい学習規律など

だけに止まらず、授業力を学校全体として引き上げるための学校それぞれの工夫が大事だ。実践指定校

では、週1回の実践の振り返り・リフレクションのための従来型でない実のある研修会が当たり前にな

ってほしい。そのために、無駄な実務や行事にメスを入れ、時間の余裕を作ることが必須。

最後に、この事業の大きな柱の一つに「人材養成」つまりは教師力向上にあることをあらためて強調

しておきたい。北海道の教育を変えるのは、北海道の教師の資質・能力を向上させることなしにはあり

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えない。この点の認識が、行政も学校現場も他都府県と比べて一貫して弱いように思う。

とくに校長・教頭等の管理職は、学校の教育活動を充実させていく、学校改善にリーダーシップを発

揮していくという意味での学校経営能力を高い質で向上させていくことが極めて重要だと考えている。

この事業では、北海道教育大学教職大学院と連携して、教員の資質向上を図るとしているが、全国的

に見て道教委と教員養成大学との連携は十分とは言えない。「養成・採用・研修の一体化」という国の

大方針を、謳い文句に終わらせず、本気で具体化しなければならないのではないだろうか。

(4)境 智 洋 氏(北海道教育大学准教授)

学校力事業の学校を訪問した印象は

実践指定校では初任者の育成や授業づくりなどで成果を

上げてきている。指定校は「管内の拠点(コア)」という意

識をもって取り組むことが大切であり、その学校に所属する

教職員も管内の教職員のコアであるといった意識をもって

本事業に関わる必要がある。しかし、一部の指定校では校長

や教頭の意識は高いが、一般教員の意識がそれほど高まって

いない状況も見られた。

近隣実践校をはじめとする管内の学校は

校からもっと学ぼうとする姿勢がほしい。指定校には、他の

学校の参考になる取組がたくさんあるが、あまり伝わってい

ないと思う。

印象に残っている学校・授業は?

石狩市立花川小学校では、最初に取組の説明を聞いて教室を見て回ったが、先生方が一体となって研

修や教育活動を検証しながら取り組んでいる様子がよく分かった。

名寄市立名寄小学校では、理科の授業において、課題を明確に示し、実験、意見交換、意見の集約、

考察をしっかり行っており、ただの実験で終わりがちな授業を確

北見市立緑小学校では、調査結果から本校の課題を明らかにし、その課題に関わる単元を重点的に指

導していた。理科においても学校の実態を把握、分析して授業に生かす姿勢は見事であった。

学校力事業の今後の方向性は?

全道的な取組を一層充実させるためには、指定校や教育局の本事業に対する温度差を解消する必要が

ある。また、指定校の管理職が本事業の趣旨や取組の意図を一般教員と改めて確認することも大切であ

る。指定校の教員であるという意識を育てるために、指定校の中核となる教員に集中的に研修を受けさ

せてみてはどうか。

管内の教員が指定校で学ぼうという意識を高めるために、指定校の研修の日程や内容などを周知する

ことが重要である。また、研修に参加しやすい条件を整えることも大切である。そのほか、指定校で研

修を数回受けたら免許更新研修の単位

北海道教育の方向性は?

本道の子供たちには、基礎学力の保障は大切なことであり、今後も重点的に取り組む必要がある。同

時に、地域の抱える課題を自分自身で感じ取り、地域の将来を見つめて自分たちにできることは何かを

考えることができる問題解決能力を身に付けさせ、将来、地域の主体者となって生きていく態度を育て

ることも重要である。

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えない。この点の認識が、行政も学校現場も他都府県と比べて一貫して弱いように思う。

とくに校長・教頭等の管理職は、学校の教育活動を充実させていく、学校改善にリーダーシップを発

揮していくという意味での学校経営能力を高い質で向上させていくことが極めて重要だと考えている。

この事業では、北海道教育大学教職大学院と連携して、教員の資質向上を図るとしているが、全国的

に見て道教委と教員養成大学との連携は十分とは言えない。「養成・採用・研修の一体化」という国の

わらせず、本気で具体化しなければならないのではないだろうか。

氏(北海道教育大学准教授)

は?

実践指定校では初任者の育成や授業づくりなどで成果を

上げてきている。指定校は「管内の拠点(コア)」という意

って取り組むことが大切であり、その学校に所属する

管内の教職員のコアであるといった意識をもって

本事業に関わる必要がある。しかし、一部の指定校では校長

や教頭の意識は高いが、一般教員の意識がそれほど高まって

じめとする管内の学校は、コアである指定

校からもっと学ぼうとする姿勢がほしい。指定校には、他の

学校の参考になる取組がたくさんあるが、あまり伝わってい

石狩市立花川小学校では、最初に取組の説明を聞いて教室を見て回ったが、先生方が一体となって研

修や教育活動を検証しながら取り組んでいる様子がよく分かった。

名寄市立名寄小学校では、理科の授業において、課題を明確に示し、実験、意見交換、意見の集約、

考察をしっかり行っており、ただの実験で終わりがちな授業を確かな学力に結び

北見市立緑小学校では、調査結果から本校の課題を明らかにし、その課題に関わる単元を重点的に指

。理科においても学校の実態を把握、分析して授業に生かす姿勢は見事であった。

全道的な取組を一層充実させるためには、指定校や教育局の本事業に対する温度差を解消する必要が

ある。また、指定校の管理職が本事業の趣旨や取組の意図を一般教員と改めて確認することも大切であ

る。指定校の教員であるという意識を育てるために、指定校の中核となる教員に集中的に研修を受けさ

管内の教員が指定校で学ぼうという意識を高めるために、指定校の研修の日程や内容などを周知する

ことが重要である。また、研修に参加しやすい条件を整えることも大切である。そのほか、指定校で研

修を数回受けたら免許更新研修の単位の一部として認めるなどのシステムを作っても

たちには、基礎学力の保障は大切なことであり、今後も重点的に取り組む必要がある。同

時に、地域の抱える課題を自分自身で感じ取り、地域の将来を見つめて自分たちにできることは何かを

考えることができる問題解決能力を身に付けさせ、将来、地域の主体者となって生きていく態度を育て

えない。この点の認識が、行政も学校現場も他都府県と比べて一貫して弱いように思う。

とくに校長・教頭等の管理職は、学校の教育活動を充実させていく、学校改善にリーダーシップを発

揮していくという意味での学校経営能力を高い質で向上させていくことが極めて重要だと考えている。

この事業では、北海道教育大学教職大学院と連携して、教員の資質向上を図るとしているが、全国的

に見て道教委と教員養成大学との連携は十分とは言えない。「養成・採用・研修の一体化」という国の

わらせず、本気で具体化しなければならないのではないだろうか。

石狩市立花川小学校では、最初に取組の説明を聞いて教室を見て回ったが、先生方が一体となって研

名寄市立名寄小学校では、理科の授業において、課題を明確に示し、実験、意見交換、意見の集約、

かな学力に結び付けていた。

北見市立緑小学校では、調査結果から本校の課題を明らかにし、その課題に関わる単元を重点的に指

。理科においても学校の実態を把握、分析して授業に生かす姿勢は見事であった。

全道的な取組を一層充実させるためには、指定校や教育局の本事業に対する温度差を解消する必要が

ある。また、指定校の管理職が本事業の趣旨や取組の意図を一般教員と改めて確認することも大切であ

る。指定校の教員であるという意識を育てるために、指定校の中核となる教員に集中的に研修を受けさ

管内の教員が指定校で学ぼうという意識を高めるために、指定校の研修の日程や内容などを周知する

ことが重要である。また、研修に参加しやすい条件を整えることも大切である。そのほか、指定校で研

の一部として認めるなどのシステムを作ってもよい。

たちには、基礎学力の保障は大切なことであり、今後も重点的に取り組む必要がある。同

時に、地域の抱える課題を自分自身で感じ取り、地域の将来を見つめて自分たちにできることは何かを

考えることができる問題解決能力を身に付けさせ、将来、地域の主体者となって生きていく態度を育て

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6 今後の方向性 (1)成果と課題

i)成果

・実践指定校では、経営ビジョンや目標を明確に示し、「教育課程・指導方法等」「地域・家庭

との連携」「人材育成」「学校マネジメントその他」の4つを窓口として、学校が一体となっ

た包括的な学校改善に取り組み、学力向上などに成果を上げている。

・多くの実践指定校等が、「学習規律の徹底・学習環境の整備」「基礎学力を高めるための授業

改善」「日常実践に直結するための校内研修の改善」の3つの取組を重点的に推進し、落ち着

いた学習環境をつくり、基礎学力の定着、若手教員の指導力の向上などが図られている。

・本事業を「教育行政執行方針」に盛り込み、重点的な教育施策として位置付け、研修会や協議

会を開催し、所管するすべての学校に実践指定校の取組を普及している市町も見られる。

ⅱ)課題

・一部の教職員が本事業の趣旨や内容を十分理解していないため、学級間、教師間の取組やその

徹底の度合いに大きな差が生じている事例が見られる。

・本事業の内容や実践指定校の取組などが、近隣実践校をはじめ特別連携校、管内の各学校に十

分周知されていない。

(2)今後の取組 成果と課題を踏まえ、今後、次のことを重点的に取り組むことが大切である。

ⅰ)徹底深化

実践指定校等は、これまで以上に本事業への理解を深め、組織的な取組を推進し、学校間、学

級間、教師間の取組や徹底の度合いなどに大きな差が生じないよう工夫する必要がある。

その際、次の点に留意することが大切である。

① 校長の経営ビジョンに本事業の趣旨や内容を位置付けること。 ② それぞれの取組の意義、内容、推進方法などについて、改めて全教職員で確認すること。 ③ 教職員や保護者等と目標や取組の進捗状況、成果や課題などを共有できるよう、数値化や可

視化に努めること。 ④ 月ごとや学期ごとなど、定期的に複数回にわたり取組の評価を行い改善すること。

ⅱ)取組の普及

実践指定校の取組を近隣実践校はもとより、道内のより多くの学校に普及させる必要がある。

その際、次の取組などが考えられる。

① 実践指定校等は、実践指定校の取組が近隣実践校、特別連携校に着実に浸透するよう、合同

研修等のシステム、内容、方法などを一層工夫すること。 ② 実践指定校等を設置する市町教育委員会は、所管するすべての学校に実践指定校の取組を普

及させる場面を設定すること。 ③ 道教委は、実践指定校を各管内の「拠点校」として位置付け、その取組を管内のすべての学

校に公開する場を設定すること。また、実践指定校等が包括的な学校改善を組織的に進めるた

めに共通で取り組んでいる学習規律の徹底や学習環境の整備などを、すべての学校で実践する

よう働き掛けること。 ④ 道教委は、実践指定校等が、互いの取組を交流し、実践の質を一層高める場を設定すること。

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資料 学校力向上に関する総合実践事業実施要綱

(平成 25年3月 28日教育長決定) (平成 26 年3月 27 日一部改正)

第1 事業趣旨

学校改善の取組については、これまでも道内外でテーマ別に様々な研究指定が行われ、事例集や指

導資料、市販書籍等の形で成果が蓄積されてきている。こうした先行事例を十分踏まえ、管理職のリ

ーダーシップの下で全校が一つのチームとなった包括的な学校改善を推進し「学び続ける学校」のモ

デルを提示することにより、従前の研究成果の更なる普及に資するとともに、当該校及び近隣校から

将来のスクールリーダーを継続的に輩出する新たな仕組を構築する。

第2 事業内容

1 実践指定校

本事業を実施する学校(以下、「実践指定校」という。)は、次の各号に掲げる取組を参考とし、

道内外の先進事例・優良事例から積極的に学びながら、地域や児童生徒の課題を踏まえて、包括的

な学校改善を行うものとする。

(1) 教育課程・指導方法等

ア 学年ごとの最低限の到達目標を設定(学力、体力、生活リズム等)

イ 発達の段階を踏まえた全学級における学習規律・生活規律の統一及び徹底(中学校区での統

一も積極的に検討、生徒指導や道徳の時間との連動)

ウ 各学年の基礎学力を保障する教育課程・指導方法

・教えて考えさせる指導(教科書をベースとした指導、学習課題の明確化、習得型授業におけ

る「教師からの説明-理解確認-理解深化-自己評価」といった4段階を意識した授業デザ

イン、予習・授業・復習のサイクル確立)

・繰り返し指導を効果的に位置付けた年間指導計画(学期中及び学期末における復習のための

時間の確保、検定システム、休み時間・放課後・給食の待ち時間等を利用したつまずきの解

消、教育課程全体を通した適切な量の問題演習)

・効果的な習熟度別指導やティームティーチング

・実物投影機などICT機器の全教室常設及び日常的活用、必要に応じたフラッシュ型教材の

活用

エ 体力向上のための取組(新体力テストと連動した授業づくり、体育の授業以外の一校一実践、

運動の目安の時間の設定等)

オ 特別な支援を要する児童生徒へのきめ細かな指導(普通学級を含む)

カ 学校間連携(中学校区を単位とした幼保小連携や小中連携、小中連携チェックリストの活

用等)

キ 「総合的な学習の時間」と各教科との関連の重視

(2) 地域・家庭との連携

ア 学校支援地域本部の設置及び活動の促進

イ コミュニティ・スクール導入の積極的検討(国の調査研究事業の活用)

ウ 地域と連携した土曜日の活用の在り方の見直し(土曜日の教育支援体制の構築又は土曜授業

の実施)

エ 児童生徒が勉強と向き合う時間の確保(家庭学習やテレビ・ゲーム等の時間の目安の設定、

生活リズムチェックシートの活用、無理のない定着を可能とする反復型宿題の工夫、家庭学習

ノートの実践、土日及び長期休業中の家庭学習を担保する工夫、部活動や少年団の時間の見直

しに関わる学校としての取組)

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オ 社会教育との積極的な連携・社会教育プログラムの活用(補充的学習との連動等による長期

休業中における生活習慣改善の取組、通学合宿、朝読・家読の取組、保護者の学習機会への支

援・協力、学校での出欠集約等による参加者確保の工夫、関連する研修会への教職員の参加等)

カ 課題や危機意識の共有及び協働関係の構築(レーダーチャート等を活用した学力や学習状況

等に関する分かりやすい情報提供、保護者アンケート等の工夫改善(事務職員加配を活用した

取組を含む。)

キ 休日や長期休業中等の補充的学習サポートの実施と学校サポーターの積極的活用

(3) 人材育成

ア 若手教員や将来のスクールリーダーの計画的な育成を目指した総合的な取組(管理職等によ

る日常的な巡回指導や授業研究、計画的な放課後のテーマ別研修、必要に応じ平成 24 年度に

試行実施したジョブシャドーイングの取組やメンターチームの編成等)

イ 初任者研修等を自校で実施(授業日における校外研修の原則廃止)

ウ 放課後のテーマ別研修への近隣実践校教員参加の積極的受入れ(前提条件として、学校間で

可能な限りの行事日程等を同一化)

エ 日常授業の改善に直結する校内研究・研修の重点化(改善に直結しない研究や大部の研究紀

要の廃止など抜本的見直し、優れた教育技術や効果的な教材の積極的共有、無理なく参加でき

るミニ研修やワークショップ型研修の充実等)

オ 必要に応じ、特別支援学校のセンター的機能を活用した研修の実施

カ 実践指定校の取組を普及する市町村単位の研修の実施(実施指定校関係者の意見を十分に踏

まえた研修の組み立てを含む)

(4) 学校マネジメントその他

ア 学校の改善サイクルの実質化・迅速化

・学校関係者評価と連動したGPACマネジメントサイクルの年間複数回実施

・DCAPマネジメントサイクルの随時実施

・データに基づく現状・課題の徹底的な分析

・SMARTの考え方に基づく目標設定

・全国学力・学習状況調査等の当日採点及び指導の改善への反映

・各種標準学力テストの改善サイクルへの効果的位置づけ等

イ 外部からの継続的な指導助言及びそれを踏まえた教育課程・指導方法等の不断の見直し(大

学教授、指導主事、道内外の著名な実践家等)

ウ 必要に応じ、道立教育研究所・北海道教育大学教職大学院等との連携(道立教育研究所「学

校力向上研修・研究員」の受入れ、年間を通した教職大学院生の実習受入れ)

エ 成果・課題の積極的発信(HPの随時更新、全授業の原則公開、学校見学の積極的受入れ等)

オ 教職員が児童生徒と向き合うための時間の確保(学校行事の精選、会議の厳選や長期休業中

への移行、朝の打ち合わせの原則廃止、必要に応じた稟議システムの導入、定時退勤日の設定、

管理職・一般教員・事務職員間の役割分担の大幅な見直し等)

カ 発達障害の児童生徒を含む全ての児童生徒が、より学習に集中できるようにするための学校

環境、教室環境の整備((1)イ、ウ、オと連動)

2 市町村教育委員会及び近隣実践校等

(1) 実践指定校を設置する教育委員会は、本事業の成果を積極的に学ぶ強い意欲を有する周辺の学

校(以下、「近隣実践校」という。)を指定する。近隣実践校は、実践指定校が行う放課後の研修

への参加、公開授業・各種会議の参観、合同研修の開催等を通して、本事業の成果を効果的に吸

収し、次年度の教育課程・指導方法の改善に目に見える形で反映させることとする。

(2) 実践指定校を設置する教育委員会は、当該市町村の各種研修において、実践指定校の取組を積

極的に普及させることとする(各種研修において実践指定校関係者を講師として活用する、実践

指定校への視察を義務づけ、その後の学校改善に関する計画を立てさせる等)

(3) 実践指定校と同一管内の他の市町村の学校で、本事業の成果を積極的に学ぶ学校(以下、「特

別連携校」という。)を指定する。特別連携校は、実践指定校の研修への参加、公開授業・各種

会議の参観、アドバイザーからの指導助言などを通して、本事業の成果を効果的に吸収し、次年

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度の教育課程・指導方法の改善に目に見える形で反映させることとする。

3 実践指定校等の校種

実践指定校は、当面、小学校から指定する。

なお、近隣実践校・特別連携校については、1(1)カに規定する小中連携の一層の推進や、本事

業の中学校への拡大の可否を検討する等の観点から、中学校との連携体制が整った地域においては、

中学校を指定することもできるものとする。

第3 実践地域等の指定

1 実施計画書の提出

本事業の趣旨内容に賛同し、実施を希望する市町村教育委員会は、実施計画書(別記様式1)を

所管の教育局を経由し教育政策課長に提出する。

2 実践指定校等の決定

教育政策課は、関係各課と連携して市町村教育委員会から提出された実施計画書を精査の上、実

施市町村(以下、「実践地域」という。)、実践指定校及び近隣実践校を決定し、教育長名で通知する。

3 特別連携校の指定

特別連携校の指定を希望する学校を設置する市町村教育委員会は、希望調書(別記様式2)を教

育局に提出する。教育局は、管内の実践指定校を設置する市町村教育委員会と連携の上、教育政策

課長に希望調書を提出する。

教育政策課は、関係各課と連携し、教育局から提出された希望調書を精査の上、特別連携校を決

定し、教育政策課長名で通知する。

第4 人的配置

1 管理職等の在任期間については、事業目的の達成の観点から、従前の例によらず、可能な限り柔

軟に取り扱うものとする。

2 実践指定校に係る教職員人事は、校長の意見を最大限踏まえつつ、次の事項に留意して行うもの

とする。

(1) 学校改善に関する認識を共有する管理職等(校長、教頭、教務主任等)の配置

(2) 初任者を含む若手教員の積極的・継続的な配置(近隣実践校含む。)

(3) 広域人事対象者及び他の都府県との人事交流経験者の積極的受け入れ

なお、実践指定校からの異動先や後任者に関する数年先の人事構想を教育局と本庁担当課で共有

するものとする。

第5 初任者研修

実践指定校における初任者研修の取扱いについては、初任者研修実施要項(平成元年3月 23 日教

育長決定)の規定にかかわらず、別紙の取扱いによるものとする。

第6 加配措置

1 実践指定校及び近隣実践校が加配措置を希望する場合は、具体的活用方法や校内体制等について

実践地域の教育委員会と協議の上、必要に応じて、実践指定校には教員(初任者配置に伴う措置を

含む。)及び事務職員を、近隣実践校には教員を加配し、配置については、各年度ごとに、学校の

取組状況を踏まえて決定する。

2 近隣実践校への加配は、実践指定校の研修への参加、公開授業・各種会議の参観などを通して、

本事業の成果を効果的に吸収し、次年度の教育課程・指導方法の改善に反映させるという明確な目

的の下で行うものとする(成果の着実な吸収が見られない場合は加配措置を中止する)。

3 特別連携校が第2の1に規定する内容に準じて取組を行うにあたって加配措置を希望する場合

には、その計画内容に応じて検討を行い、強い必要性が認められる場合に措置を行う。

第7 指定期間

事業趣旨を踏まえ、当分の間継続とする。

なお、積極的な取組が見られない等事業の継続が困難な場合は、市町村教育委員会と本庁担当課が

協議の上、指定を解除する。

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第8 実施報告書及び計画書

実践地域の教育委員会は、1月末までに当該年度の暫定版報告書及び新年度の暫定版計画書を、3

月末までに確定版の報告書及び計画書を、所管の教育局を経由し教育政策課長に提出する。教育政策

課は関係課及び関係教育局と協議の上で報告書の内容を精査し、必要な指導助言を行う。

第9 実施体制

1 関係課との連携

本事業は、教育政策課がとりまとめを行いつつ、関係課等(教育政策課、教職員課、義務教育課、

健康・体育課、生涯学習課、道立教育研究所等)が緊密に連携協力して実施するものとする。 な

お、各学校の改善サイクルの迅速化に資するため、次年度の取組や諸会議、アドバイザー派遣、提

出資料等に関する道教委からの諸連絡については、原則として前年度の12月までに行うよう努め

るものとする。

2 アドバイザー

実践地域及び実践指定校等の取組の支援、その他北海道教育に対する様々なアドバイスを得るた

め、各分野の第一人者を「学校力向上に関する総合実践事業アドバイザー」(以下、「アドバイザー」

という。)として委嘱する。

なお、アドバイザーの委嘱に関する事項は別に定める。

3 推進協議会

本事業の実施上の課題や取組状況、成果などの情報を共有し、事業を効果的に実施するため、実

践指定校の校長や道教委関係課職員で構成する「学校力向上に関する総合実践事業推進協議会」(以

下、「推進協議会」という。)を設置する。

(1) 構成

ア 推進協議会は、次の構成員により組織する。

・実践指定校、近隣実践校及び特別連携校の校長

・実践地域の教育委員会関係職員

・教育政策課、教職員課、義務教育課、健康・体育課及び生涯学習課の関係職員、道立教育研

究所の関係職員

イ 推進協議会には、必要に応じ、2により委嘱したアドバイザーが出席する。

(2) 協議内容

推進協議会においては、次に掲げる事項を行う。

ア 事業推進上の課題や取組状況、成果などの情報共有

イ 関係課及びアドバイザーからの情報提供及び指導助言

ウ その他「学校力向上に関する総合実践事業」に係る意見交換

(3) 実施回数

協議の内容等を次年度の改善に反映させる観点から、年2回(7月、12月)程度開催する。

4 その他

ア 本事業の実施にあたっては、関係課と関係教育局が緊密に連携しつつ、各学校が遅くとも1

月までには次年度の全体計画を立てることができるよう、迅速かつ効率的な行政事務を行うも

のとする。

イ 本事業の実施にあたっては、北海道教育大学及び関係校長会等と連携を取りながら進めるも

のとする。

第 10 その他

その他、本事業の実施に係る必要な事項については、別に定める。

附 則

この要綱は、平成 25年4月1日から施行する。

附 則

この要綱は、平成 26年4月1日から施行する。

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平成26年度 学校力向上に関する総合実践事業実践指定校等一覧

H26.4.1 現在

年度 管内 市町村名 学 校 名 近 隣 実 践 校 特別連携校

平成二十四年度

石狩

千歳市 桜木小学校 北栄小、緑小、信濃小

北広島市 大曲小学校 大曲東小、緑が丘小、双葉小、大曲中

石狩市 花川小学校 緑苑台小、紅南小、双葉小、花川中 当別町立当別中

西当別中

胆振 登別市 幌別小学校 幌別西小、幌別東小

上川 名寄市 名寄小学校 名寄南小、名寄西小、風連中央小、

名寄中、名寄東中、智恵文中、

風連中、名寄東小

十勝 大樹町 大樹小学校 大樹中

釧路 釧路町 遠矢小学校 別保小、富原小、遠矢中

平成二十五年度

空知 岩見沢市 南小学校 岩見沢小、中央小、美園小

後志 小樽市 稲穂小学校 花園小、潮見台小 古平町立古平小、

積丹町立美国小

渡島 函館市 八幡小学校 亀田小、鍛神小

檜山 江差町 南が丘小学校 江差小、江差北小 せたな町立瀬棚小

上川 旭川市 大有小学校 青雲小、永山西小、近文小、啓北中

オホーツク 網走市 網走小学校 東小、白鳥台小、西が丘小

根室 別海町 別海中央小学校 上西春別小、中春別小

平成二十六年度

後志 倶知安町 倶知安小学校 北陽小 京極町立京極小、

喜茂別町立喜茂別小

日高 えりも町 えりも小学校 笛舞小、東洋小、えりも岬小、庶野小、

えりも中

留萌 留萌市 留萌小学校 東光小、潮静小、港北小、緑丘小 羽幌町立羽幌小、

小平町立小平小、鬼鹿小

苫前町立苫前小

宗谷 稚内市 稚内東小学校 中央小、南小、港小、声問小、

潮見が丘小、東中

オホーツク 北見市 緑小学校 三輪小、美山小

計 実践指定校 19校 近隣実践校 61校(小50、中11) 特別連携校11校