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平成24年9月  第705号 21 1.はじめに ISO International Organization for Standardization)の航空関係専門委員会である ISO/TC20「航空機及び宇宙機」の分科会の一 つであるSC9「航空貨物及び地上機材」の年 次総会が710日~12日の3日間にわたり、中 国、北京の朝陽区にある 1 中国民航科学技術 研究院(中国民用航空局航空安全技術中心) にて行われ、我が国(P メンバー)として阿 倍委員と参加した。 1中国の科学技術部が認めた民間航空で唯一の公 益非営利科学研究機関。民間航空局(CAAC)直 属の事業部でもある。本院の主要な業務は、民 間航空の研究開発の遂行とその展開を進めるこ とで、民間航空の安全と科学技術研究の発展を 行うことにある。 ISO/TC20/SC9「航空貨物及び地上機材」 国際会議に出席して ~貨物機の装備及び空港内の貨物及び旅客輸送設備標準化~ 写真1 会議風景

ISO/TC20/SC9「航空貨物及び地上機材」 国際会議に出席して2012/09/06  · IATAのMr. Liaoより、2012-2013 IATA ULD Roadmap - Creation of ULD Regulations としてプレゼンテーションがあった。今ま

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  • 平成24年9月  第705号

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    1.はじめにI S O( I n t e r n a t i o n a l O r g a n i z a t i o n f o r

    Standardization)の航空関係専門委員会であるISO/TC20「航空機及び宇宙機」の分科会の一つであるSC9「航空貨物及び地上機材」の年次総会が7月10日~12日の3日間にわたり、中国、北京の朝陽区にある注1中国民航科学技術研究院(中国民用航空局航空安全技術中心)

    にて行われ、我が国(Pメンバー)として阿倍委員と参加した。

    注1: 中国の科学技術部が認めた民間航空で唯一の公益非営利科学研究機関。民間航空局(CAAC)直属の事業部でもある。本院の主要な業務は、民間航空の研究開発の遂行とその展開を進めることで、民間航空の安全と科学技術研究の発展を行うことにある。

    ISO/TC20/SC9「航空貨物及び地上機材」国際会議に出席して

    ~貨物機の装備及び空港内の貨物 及び旅客輸送設備標準化~

    写真1 会議風景

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    2.背景本SC9は航空貨物用装備品、貨物収納機材、貨物を空港内で運搬する機材及び、乗客を空港内で安全に移動するための機材の標準化を進めている分科会である。IATA(International Air Transport Association)とはliaison(連携)を結んでおり、IATAと連携して、世界の貨物設備、地上機材の共通化の為の標準化を行っている。その他、ISO内で、TC104「貨物コンテナ」及びTC222「梱包」ともliaisonを結んで、情報交換を行っている。

    SAE International(以下、SAE。旧Society of Automotive Engineers)との関係も事実上は密であり、多くの委員がSAEのメンバーも兼ねている。本SCはSAEとは補完的であり、ISO及びSAEがIATAの意向を展開するという状態にある。ISOが規格制定を行っている場合はSAEは競合する規格は制定せず、SAEが規格制定を行っている場合はISOは規格を制定してもSAEを参照することで、重複した規格制定を行わないようになっている。尚、ISOのポリシーとして、2年以上国際会議に参加していない、投票権のあるメンバー(Pメンバー)は、投票権のないメンバーグルー

    プ(Oメンバー)に落とすことになった。国際規格に我が国の意見を反映させる為には、国際会議への出席は必須である。このたびの出席は、メンバーとの意志の疎通のみならず継続的投票権を維持するためにも必要なものであった。

    3.会議内容(1)TC20/SC9 構成(図1)活動はSC9での活動が主体であり、現在活

    動しているワーキンググループ(WG)はWG1(防氷関係)のみであり、他のWG(安全及び貨物取扱)は現在休止中であるが、これから活動を開始すべく今回議論が進められた。

    (2)参加者及び委員構成(表1)①参加者  投票権を有するPメンバー12ヵ国、投票権のないOメンバー10ヵ国から委員は構成される(表1)。今回、全体会議で9ヵ国の参加を得た。会議での議決が成立するためには、Pメンバー5ヵ国以上の参加が必要となる。今回はPメンバー7ヵ国(中国、仏、独、日本、スウェーデン、英、米)が出席し、

    図1 TC20/SC9構成図

    WG1De-icing and anti-icing fluids and equipment for transport aircraft

    WG2Airworthiness(休止中)

    WG3Baggage handling(休止中)

    SC9Air cargo and ground equipment

    ISO/TC20Aircraft and space vehicles

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    会議での議決が成立した。  国際会議を開いても、Pメンバーの出席国数が足りないと、新規案件等の進捗が図れないため、今後ほかのSCなどでの日本開催時は注意していきたい。  なお、liaisonであるIATAの参加(2名)、Air Canadaの傍聴があった。  尚、ブラジルはこれまでの参加状態、及び当国の希望からPメンバーよりOメンバーに変更された。

    ②議長任期延長について  議長は引き続き Jack Springer (USA、FedEx)が担当することが承認された。なお、副議長として、SAEの経験が豊富な J.J. Machon(France、BNAE、フランスの航空標準化研究所)が引き続き担当する。事務局はKalim Benmeziane、BNAE)が担当となった。  議長再選については、すでに27年以上にも渡り、議長を続けている人をこれ以上続けていいものか、世代交代をする必要があるのではないかとの疑義があるものの、多くのメンバーの信頼と実績から、承認された。現在、多くのTC、SCが高齢化してきており、世代交代が少ない。特に会社定年を迎えると、会社からのサポートが切れることで支障がでることがあり、SC1では実

    施直前で国際会議が議長の出張費のサポートがないため、キャンセルになった経緯がある。本TC9では今後は正副2名体制で議長を進めることができ、加えて、若いK. Benmezianeが事務局となったことから、リスクは回避された。

    (3)議事①開会及び昨年度開催延期の説明  昨年度の開催延期の説明があった。結局は議長、事務局、開催国委員のすべてがそろうのが最低条件であり、それが満たされなかったため。これに伴う開催国負担、開催ができないための議決の延長、次の会の作業量の増大など多くの問題を生むことになる。翻って、本年度のISO/TC20/SC1及びIEC/TC107の開催国となった我々であるが、問題なきよう、しっかりフォローして、無事開催に持ち込まねばならないことを再確認した。

    ②TC20報告  第45回TC20国際会議が2011年11月28日から11月30日にかけてロンドンにて行われたことについて事務局より報告があった。  TC20より、SC9の範囲を「貨物の安全標準」まで広げるよう提案があった。

    表1 TC20/SC9構成国

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     SC9としては、貨物のX線確認など、テロ対策などの安全基準であるため、今までのSC9活動を越えているので、セキュリティの専門家がいるTCにて行うか、TC20下でならば新たなSC作って対応すべきと提言した。

     ③ IATA地上支援機材と環境マネジメントグループ、及びULD(Unit Load Device)技術専門委員団よりのリエゾンレポート

     IATAのMr. Liaoより、2012-2013 IATA ULD Roadmap - Creation of ULD Regulations としてプレゼンテーションがあった。今まではエアラインを指導することで、同時にULDについても進められたが、このごろは非エアラインのULDが80%以上を占めるに至り、IATAとしては航空貨物関連標準化を行っているところにIATA ULD Regulationsというものを展開することで、ULD飛行時の安全を確保しようとしている。具体的にはISOの当委員会への参加、SAEへの参加となる。

    ④規格対照表(IATA、SAE、ISO)について  このISO、IATA、SAE規格比較一覧表を用いて、将来の標準化projectとしてISOを開発するかしないかを決める指標となる。  少なくとも1年に2度見直すこととする。本対照表は我が国においても規格開発のベースとして参考になるものである。

     ⑤SAEとのリエゾンについて  Mr. J.J. Machonにより、SAEでの活動説明があった。多くの委員がSAEの委員にもなっており、重複して規格を策定するおそれを回避している。なお、関係するものがある場合は回覧を行う。

     ⑥ C E N(E u r o p e a n C o m m i t t e e f o r Standardization)TC 274との情報交換

     DIN(German Institute for Standardization、ドイツ規格協会)のK.Ihrowより、CEN TC 274 Aircraft ground support equipmentの説明があった。ISOの提案の元にもなることが多いが、ISOとの大きな違いは強制規格もあることである。欧州統一であるが、投票は国ごとに行われ、国力に比例し、投票の重み付けがある。この点が1国1票であるISOとの違いとなっている。

     ⑦ AEA(Association of European Airlines)とのリエゾンについて

     現在活動中である。WG1で、駐機中の除氷/防氷方法について、ISO/DIS 11076(Ed 5) Aircraft – Ground based de-icing/anti-icing methods with fluidsとして作業中。

     ⑧承認事項(a)Aircraft cargo equipmentⅰ) ISO/DIS 16049-1 Air cargo - Restraint

    straps - Part 1 : Design criteria and testing methods

       本件は、DIS承認を6月に得たが、技術的なコメントがスウェーデンよりでており、その内容の回答により、直接規格にするか、FDISで回覧・投票にかけるか決めることとする。最近は規格制定を早くできるよう、手順を踏むものが多くなっている。本件も、内容によっては早い規格化が見込まれる。ⅱ) ISO/DIS 6517 Air cargo equipment –

    Certified lower deck containers – Design and testing

       我が国の意見を採用し、空港の貨物室でコンテナの上方へのドア解放時のクリアランスを確保するため改訂する必要が

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    あることが決まった。ⅲ) ISO/NP 4118 Air cargo – Non-certified

    containers for the lower deck of large capacity aircraft

       本件はフランスと我が国のコメントを加え、NPステージ完了を承認された。DIS投票は2013年1月3日までに登録することに決まった。ⅳ) ISO/NWI 10327 Aircraft – Certified aircraft

    container for air cargo – Specification and testing

       本件はフランスと我が国のコメントを加え、NPステージ完了を承認された。DIS投票は2013年1月3日までに登録することに決まった。ⅴ) I S O / D I S 14186 A i r c a r g o – F i r e

    containment covers (FCC) – Performance and testing requirements

       延焼防止のためのカバーをコンテナにかける方法はパレットへカバーをかけることとは全く条件が違ってくるので、2つを別件として考える。DIS投票結果待ち。ⅵ) ISO/NP 9788 Air cargo – Double stud tie-

    down互換性維持のための改定提案   英国より説明有。環境問題に対処するため、表面処理についても検討し、6価クロムを除くことも含め検討することとなった。その結果を以てNPとして英国から提出予定。ⅶ) ISO/PWI 4115 Air cargo equipment – Air-

    land pallet nets   パレットネットのワークショップより、耐空性要求事項になることを想定し考えてゆくこととなった。(ISOやJISと違い、強制法規となることを意味することを踏まえ検討を行う。ⅷ) ISO/NP 9788 Air cargo – Double stud tie-

    down

      同上(b)Ground equipment – Cargoⅰ)Definitions, Terminology, etc., - Cargo   ISO/NP 10254 Air cargo and ground

    equipment – Vocabularyは英語、フランス語に加え、ドイツ語の3ヵ国語バージョンとなる。なお、本提議は定義をICAOに準拠することになった。その他修正を行い、DIS投票に回すことになった。ⅱ)Ground equipment, Aircraft ・ ISO/PRF 11532 Ai rc ra f t – Ground

    equipment – Graphical symbols   新たな提案の「よりゆっくりと」を表

    現したカタツムリの記号について承認された。なるべく早く発行する。本規格はCEN/TC 274 Aircraft ground support equipmentに送付し、EN(European Standard、欧州規格)に反映させる。

     ・ ISO/CD 15845 Ground support equipment – Boarding equipment for disabled passengers – Functional requirements

       我が国より、関空、成田にあるA380アッパーデッキ対応のリフト仕様を参考に、より現実的な要求仕様を提案した。特にback-up systemをfail safe systemに置き換えることでのコストダウンを図れるように提案した。J.J.Machonより提案があり、ISO 10254 Vocabularyに二つの定義のあいまいさを排除するために加えることとした。また、EN12312-14との協調を進めることも確認された。基本的にISOよりもENの方が詳細まで定義されている。我が国からは、提供可能な図面を提示し、日本仕様を把握してもらうことで、問題軽減を図った。議決はしておらず今後も見てゆく必要あり。

     ・ ISO/CD 6966-2 Aircraft ground equipment

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    – Basic requirements – Part 2 ; Safety requirements

       フランスとスウェーデンのコメントを付して承認された。Boeing 787などの、複合材製の胴体へのインパクト現象を考慮したDocking protectionのコメント(我が国による、自動ブレーキのみから、よりコストダウンした警報システムも許容することについてなど)については、本会議後改めて扱いを決める。EN 1915-1に合わせた改訂のため、自由がきかない。この革新的なシステムの採用については、次回の見直し時に織り込み、今回は見送ることで合意した。DIS投票へは、コメントの処理終了後、回すこととする。

     ・ ISO/PWI 09051 Protection of aircraft interface

       複合材の機材保護に関する新規案件として提案されたが、採用しないこととした。その代わり、この内容は ISO 6966-2に反映される。(FAA/University of California, San Diegoでの複合材インパクト調査プログラムからのフィードバックが受領された時点で見直しを行うこととする。)

    ⅲ) TC20/SC9/WG1 De-icing and anti-icing ・ ISO/NP 11076 Aircraft – De-icing/anti-

    icing method on the ground   11076:2006の定期見直しに伴い、最新情報を織り込むため実質全面改訂となるが、ICAOとの時間差をなくすため、PRF(Proof of a new Internat ional Standard;最終原案投票なしにApproval Stageを通過する場合に適用される)として、早急に発行プロセスに入る。

     ・ ISO/NP 11077 Aircraft ground equipment – De-icer – Functional requirements

       11077:1993の定期見直しに伴い、最新情報を織り込むため実質全面改訂となるが、本件はフランス、我が国、ウクライナの修正案を加え、承認された。なお、ウクライナの提案により、EN 12312-6 Aircraft ground support equipment - Specific requirements - De-icers and de-icing/anti-icing equipmentの情報を追記する。

    ⅳ)Unit load devices projects ・ フランスないしは英国がload modelの新規提案を行うことに各国が同意した。

    ⅴ)Cargo fire protection project ・ Fire Containment Coverに関連したもの

    であるが、FAAの要求により、フランスをプロジェクトリーダーとしてpassive container用の新規提案を準備することになった。

    ⅵ) Cargo pallet net testing, degradation and control

     ・ EASAの評価テストプログラムの結果により、SC9はネットの試験法を起こすこととなった。

    ⅶ)Tie-down fittings testing method ・ 英国が本件をISO 9788:1990 Air cargo

    equipment -- Cast components of double stud fitting assembly with a load capacity of 22 250 N (5 000 lbf), for aircraft cargo restraintの改訂版(ISO/NP 9788)に織り込むことを提案し承認された。

    ⅷ)TC20/SC9/WG3 Baggage handling ・ 今回は参加していないが、オランダから、Aircraft handling – Checked baggageの提案があった。(Part 1:Mass and dimensions 該当文書N1264)

    (4)新たな規格制定について① Garment Container(GOH:Garment on

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    Hanger、つま衣服などりコンテナ内に吊り下げる貨物)の要求(IATA ULD Technical Manual UTM 50/4, SAE AIR 4359)   SAE文書は規格ではなく、情報のみである。これらはコンテナ構造に影響を及ぼす可能性があるため、ISO 6517:1992 Air cargo equipment – Base-restrained certified containers exclusively for the lower d eck o f h ig h - cap ac i t y a i r c r a f t , I S O 10327:1995 Aircraft – Certified aircraft container for air cargo – Specification and testing、およびnon-certifiedのコンテナに影響を及ぼす。対応策としては、1)要求をISOに織り込む、2)新規規格を起こす、の手法がある。今回は、英国及び我が国がこの問題についての標準化に協力することとなった。

    ② パレット延長装置について(IATA ULD Technical Manual UTM 60/1, SAE ARP 1988A)   SAE文書は強制ではなく、提案である。以前の討論で、本件は規格化しないことで決定している。英国は、本件はパレットネットの規格開発に関連しており、ISO規格の代わりに入念に作った、ネットの規格開発に拡張部分で何をすればよいかを提示したレポートを作るべきと提議した。   J.J.Machonはネットの機能を保証をするためのインターフェースとしての機能はないことを前提とすることを明示した。

    ③貨物ストッパー   J.J.Machonから、提示があった。本件はFAA TSO (Technical Standard Order)が発行されるか準備された時点でISO規格

    化を検討する。

    ④ 断熱コンテナの要求(IATA ULD Technical Manual UTM 80/1, SAE ARP 5741)   測定要求のみで、性能要求がない。そこで、FAAはTSO(Technical Standard Order)を発行する決定をした。FAAは冷却能力は検討の対象としておらず、機能性部品が機体の機能に悪影響を及ぼさないことを問題にしている。この要求は飛行中、機能しているコンテナ(TECACコンテナという。)を含む。現在、各種コンテナについて格付けが進行中である。   なお、SC9に於いては、IATAが重要であると指摘したにもかかわらず、EASAは興味を示さないことを問題に考えている。

    ⑤ AIR 1558A Aircraft interface protective devices   本件はISO 6966-2:2005 Aircraft ground

    equipment – Basic requirements – Part 2 : Safety requirementsに関連するものである。6966-2よりprotective devicesを抽出し、SAEよりも広範囲をカバーする新たな規格を起こす方向で我が国は了解した。   Swedenは積載作業の環境条件のプレゼンテーションを行い、その結果をいくつかのISO規格に反映することを提案した(特にコンテナの標準)。本検討は現在翻訳中であり、10月より、新プロジェクト検討として開始する。

    (5)制定済み規格の5年ごとの見直し(定期見直し。)Systematic Review(略称SR)として見直し

    を行うものである。28件の規格について、見直しを行った。特に問題となったものを以下に記す。

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    (a )ISO 9667:1998 Aircraft ground support equipment - Tow bars   改訂にBoeing 737事故に関連したSAE

    ARP(Aerospace Recommended Practices)を織り込むかどうかフランスで評価する。

    (b )ISO 11241:1994 Aircraft - Aircraft engine transport devices   エンジン種類増加に伴い改訂を行う。フランスからNWIP(New Work Item Proposal)を発行する。

    (c )ISO 10841:1996 Aircraft - Catering vehicle for large capacity aircraft - Functional requirements   EN 12312-2と ISO 27470:2011 Aircraft

    ground equipment - Upper deck catering vehicle - Functional requirementsとの協調をはかるため、改訂を加えることを確認した。本件、A380の2階部分へのアクセスを想定している。フランスからNWIPを発行する。

    (d )ISO 12056:1996 Aircraft - Self-propelled passenger stairs for large capacity aircraft - Functional requirements    EN 12312-1との協調をはかるため、改訂を加えることを確認した。本件、A380の2階部分へのアクセスを想定している。フランスからNWIPを発行する。

    (e )ISO 11995:1996 Aircraft - Stabil i ty requirements for loading and servicing equipment   改訂を加えることを確認した。フランスからNWIPを発行する。

    (f )ISO 6967:2006 Aircraft ground equipment - Main deck loader - Functional requirements & 6968:2005 Aircraft ground equipment - Lower deck loader - Functional requirements   EN 12312-9との協調をはかるため、改

    訂を加えることを確認した。フランスからNWIPを発行する。

    (6)次回会議2013年10月開催と決定した。開催場所はスウェーデンが第一候補となっ

    た。委員が自国に持ち帰って検討する。開催が困難な場合はフランスとなる。事務局より、1年ごとの開催は無駄が多い

    (議事内容が少なくなる)為、もう少し長い間隔で開催したいとの意見があり、おおよそ1年半ごとに開催することになった。

    なお、参考までにISOの規格作成の進め方と、用いられる略語を表2に記す。

    4.問題点他のTC20の分科会委員会と同様、作成され

    た規格の活用が問題となるが、他と比べては有効な活用がされている。出来上がった規格を直接使用せずとも、本委員会のメンバーによる議決をもって他の規格制定グループ(SAE、CEN等)に影響を及ぼせるので、有効である。なぜならば、米国の委員及び多くの欧州の委員はSAEのメンバーであるし、欧州の委員はCENの委員会のメンバーも兼ねているから、ISOの場で得られたコンセンサスはそのまま有効となるからである。ただ、委員が高齢化(委員長が70歳台)しており、入院で参加できないものもみられ、若返りが必要であろう。フランスの事務局2名の内1名は40歳程度で十分若いので、今後が期待される。一方我が国は、国内分科会の年齢構成はそこまで高くはないものの、その代わりに委員の交代が頻繁であり、経験の伝承が困難になっている。国際会議で我が国の代表としての意見を言うためにも、きちっとした技術及び経験の伝承が必須となる。我が国の分科会では、

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    航空貨物ハンドブックを見直すこととしており、それを通じて底上げを図ってゆきたい。

    5.IATAとの関係IATAとの関係は緊密であり、SAEと伍してゆく為にもその関係の維持が必要である。この三者の関係を維持することで、発言権を保持することができる。そのため、我が国は、SAEへ入会する必要はあまり大きくないが、IATAのもと、当委員会での議決を事実上SAEに反映することが可能であるので、この場を積極的に活用することが有効である。

    6.所感ISO/TC20/SC9(航空貨物及び地上機材)は、次々と新機材が導入される中、それに合わせた地上機材の設置のための規格の制定、輸送合理化を進めるコンテナやパレットの基準制定、火災延焼防止のための対策の制定など重要性が増している分野の専門委員会である。

    最近の大きな話題としては、A380導入に伴う、Upper deck(2階建ての2階の部分)へのアクセスのための規定制定がある。

    Boeing 787などの胴体が複合材の機材導入に伴う新規機材は、今後の実績に基づいて検討していく。なお、本専門委員会での我が国の発言力を強めるためには、より積極的に国際委員会に協力をする必要がある。具体的には建設的なコメントを規格案回覧時に提示したり、新規案件を提示したりすることである。特に我が国では地上機材、貨物用運搬機材

    を作るメーカー、航空会社、ハンドリング会社が一体となって参加しており、より一層の切磋琢磨で存在価値を得ることが見えてきた。新たな機材であるMRJ、A350 XWB、Boeing 747-8などを念頭に、我が国の航空産業に於ける地位を上げる一助となるよう、努めていきたい。

    ISO/IEC規格は予備段階と、通常次の6つの段階を踏んで作成される。0-(予備段階)PWI : Preliminary work Item (予備業務項目)1-(提案段階)NP : New work item Proposal (新業務項目提案)2-(作成段階)WD : Working Draft (作業原案)3-(委員会段階)CD : Committee Draft (委員会原案)4-(照会段階)DIS : Draft International Standard (国際規格案 - ISO)CDV : Committee / Draft for Vote (投票用委員会原案 - IEC)5-(承認段階)FDIS : Final Draft International Standard (最終国際規格案)6-(発行段階)PAS : Publicly Available Specification(公開仕様書)TS : Technical Specification(技術仕様書)TR : Technical Report(技術報告書)IS : International Standard (国際規格)

    表2 ISO規格制定段階

    〔(一社)日本航空宇宙工業会 技術部部長 藤貫 泰成〕