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この号の内容 1 日本向けセミナー「中国の農村汚水処理の現状と課題」‐中華人民共和国農村汚水処理技術システムおよび管理 体系の構築プロジェクトの成果‐」の開催 P2 2 中国の問題環境への対応するための総合的な取り組み~環境にやさしい社会構築プロジェクト 進捗報告 (その3) P3 3 JICA ボランティア総会、2 年ぶりの開催!! P4 4 対中円借款最後の事業への貸付が完了 実行案件数計 231 P5 5 「四川省における防災教育推進及び能力向上プロジェクト」~「第 4 回公衆減災教育フォーラム」参加~ P7 6 ~大連日本人学校・北京日本人学校で出前講座を開催~ P8 7 ハルビン市朝鮮族第一学校で「日本文化祭」開催!! P9 8 中国の音楽フェスで環境保護を目指す~FUJI ROCK FESTIVAL への参加~ P10 2017 年度第 2 独立行政法人国際協力機構 中華人民共和国事務所 郵便番号 100004 北京市朝陽区東三環北路 5 号北京発展大厦 400 電話: +86-10-6590-9250 FAX +86-10-6590-9260 Email [email protected] JICA ウェブサイト(中国): https://www.jica.go.jp/china/index.html JICA 中国事務所ミニブログ(微博): http://weibo.com/u/3248071500 ★ボランティア活動(人民網): http://j.people.com.cn/99005/index.html JICA 中国事務所ニュースレター *** ニュースレターに関するお問い合わせはこちらまで *** Email [email protected] 皆様からのご感想やコメントをお待ちしております。

JICA 中国事務所ニュースレター · 2018-02-05 · 発展与環境研究所所⻑の潘家華⽒による基調講演、共催者であるjica及び環 保センターによる挨拶、⽇本の執筆者や中国の研究者による発表、質疑応答などが

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こ の 号 の 内 容

1 日本向けセミナー「中国の農村汚水処理の現状と課題」‐中華人民共和国農村汚水処理技術システムおよび管理

体系の構築プロジェクトの成果‐」の開催 P2

2 中国の問題環境への対応するための総合的な取り組み~環境にやさしい社会構築プロジェクト 進捗報告

(その3) P3

3 JICA ボランティア総会、2 年ぶりの開催!! P4

4 対中円借款最後の事業への貸付が完了 実行案件数計 231 件 P5

5 「四川省における防災教育推進及び能力向上プロジェクト」~「第 4 回公衆減災教育フォーラム」参加~ P7

6 ~大連日本人学校・北京日本人学校で出前講座を開催~ P8

7 ハルビン市朝鮮族第一学校で「日本文化祭」開催!! P9

8 中国の音楽フェスで環境保護を目指す~FUJI ROCK FESTIVAL への参加~ P10

2017 年度第 2 号

独立行政法人国際協力機構 中華人民共和国事務所 郵便番号 100004 北京市朝陽区東三環北路 5 号北京発展大厦 400 室 電話:+86-10-6590-9250 FAX:+86-10-6590-9260 Emai l:j [email protected] ★JICA ウェブサイト(中国):https://www.jica.go.jp/china/index.html ★JICA 中国事務所ミニブログ(微博):http://weibo.com/u/3248071500 ★ボランティア活動(人民網):http://j.people.com.cn/99005/index.html

JICA 中国事務所ニュースレター

***ニュースレターに関するお問い合わせはこちらまで** * Emai l:j [email protected]

皆様からのご感想やコメントをお待ちしております。

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JICA 中国事務所ニュースレター 2017 年度第 2 号

上)セミナーの様⼦ 中)清華⼤学常教授の発表 下)江蘇省常熟市での浄化槽

日本向けセミナー「中国の農村汚水処理の現状と課題-

中華人民共和国農村 汚水処理技術システムおよび管理

体系の構築プロジェクトの成果-」の開催

「中国農村汚⽔処理技術システムおよび管理体系の構築プロジェクト」は 2014年 9 ⽉に開始し、2017 年 9 ⽉に終了しました。プロジェクトでは①農村部における汚⽔処理改善を⽬的とした法律や政策、②農村汚⽔処理技術の適⽤⽅法、設計・維持管理技術、③農村部における汚⽔処理事業の運営管理を最適化するための体制強化に取り組みました。

8 ⽉ 25 ⽇に、プロジェクトの成果やプロジェクトを通じて得た中国の農村汚⽔処理の実態や課題を、同分野にて中国への進出・事業拡⼤を検討している⽇系企業、⽔環境対策に携わる開発コンサルタント等を対象に紹介し、中国や他の途上国での事業展開、JICA プロジェクト実施にあたっての参考情報として活⽤していただくことを⽬的としたセミナーを JICA 市ヶ⾕ビルにて開催し、⽇系企業をはじめ約 80 名の⽅に参加いただきました。

セミナーでは、プロジェクトにてカウンターパートである中国科学院⽣態環境研究センターと共にとりまとめた、中国農村汚⽔にかかる政策、設計・維持管理技術、運営体制に係る提⾔内容や、中国の農村汚⽔処理の現状が紹介されました。特に、清華⼤学環境学院の常杪教授からは、中国の農村汚⽔処理の整備にあたり、PPP⽅式の事業が近年盛んに⾏われていることなど、急速な変化が起きている中国の実態が伝えられました。また、⽇系企業が中国で事業展開するため参考情報として、中国でのビジネス環境や進出の条件についても報告されました。

JICA 中国事務所では、今後も中国の開発課題解決に貢献することのみならず、プロジェクトから得た経験や教訓を⽇本へのフィードバックすることも積極的に⾏っていく予定です。

吉⽥進⼀郎

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JICA 中国事務所ニュースレター 2017 年度第 2 号

1 枚⽬)1-1 訪問先での交流の様⼦ 2 枚⽬)訪問先での視察(1) 3 枚⽬)訪問先での視察(2) 4 枚⽬)シンポジウムの様⼦ 5 枚⽬)『⽇本環境問題:改善と経験』

中国の環境問題へ対応するための総合的な取り組み ~環境にやさしい社会構築プロジェクト進捗報告(その3)~ ⽇中友好環境保全センター(以下、環保センター)では、2016 年 4 ⽉より「環

境にやさしい社会構築プロジェクト」を実施しています。同プロジェクトは、中国における環境問題への対応能⼒を総合的に強化するため、政策・法制度の整備促進、環境汚染防⽌技術の普及、市⺠らの環境意識の向上などを進めていくものです。本プロジェクトの最近の活動内容を紹介します。

1.廃電気電⼦製品等のリサイクル推進(8-9 ⽉訪⽇研修) 中国では 2012 年に「廃旧電器電⼦産品回収処理管理条例」が施⾏され、テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機・パソコンのリサイクルが進められており、昨年には対象品⽬にプリンター・携帯電話など⼩型家電製品が追加されました。 ⼀⾒順調な中国の廃電気電⼦製品のリサイクルですが、⽇本の家電リサイクル法制度と異なり製造業者による回収などの物理的責任が無く、拡⼤⽣産者責任(Extended Producer Responsibility : EPR)の強化の必要性や対象品⽬(電気⾃動⾞の電池等)の拡充、リサイクル率の向上など課題が⼭積しています。 本プロジェクトでは 8-9 ⽉に 10 名の中央及び地⽅の廃棄物担当職員らが訪⽇し、環境省や地⽅政府の職員、⼤学の研究者などから⽇本の家電及び⼩型家電リサイクルに関する政策や研究、事業活動などの説明を受けるとともに、秋⽥県・富⼭県・愛知県のリサイクル企業を訪問し、現場視察などを⾏いました。訪⽇により得られた知⾒は、検討中の「廃旧電器電⼦産品回収処理管理条例」の制度改正などに反映されるとともに、更なる⽇本の経験の共有に向けて活動を進めて⾏く予定です。

2.⽇本の環境対策の経験(9 ⽉セミナー開催) 環保センターは、研究活動や政策⽴案により中国における環境対策の推進を⾏う

組織であると共に、⽇本及び中国の環境協⼒を推進するプラットフォームでもあります。このため、本プロジェクトでも環境分野での⽇中交流のため学⽣・研究者・企業等の訪問の受⼊れや情報提供、セミナーの開催などの活動を展開しています。

9 ⽉ 22 ⽇には環保センターにて、笹川平和財団と社会科学⽂献出版社により『⽇本環境問題:改善と経験』(2017 年 9 ⽉刊⾏)の出版を記念して「⽇中環境問題⽐較研究シンポジウム」が開催されました。セミナーでは⼀般財団法⼈⽇本環境衛⽣センター理事⻑で元環境省事務次官の南川秀樹⽒、中国社会科学院城市発展与環境研究所所⻑の潘家華⽒による基調講演、共催者である JICA 及び環保センターによる挨拶、⽇本の執筆者や中国の研究者による発表、質疑応答などが⾏われ、研究者・学⽣やメディアなど約 100 名が参加しました。

今後も環境分野の⽇中関係者らによる交流の機会を提供するとともに、⽇中の環境政策情報を提供する WEB の整備なども⾏っていく予定です。

染野憲治

(環境にやさしい社会構築プロジェクト チーフ・アドバイザー)

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JICA 中国事務所ニュースレター 2017 年度第 2 号

8 ⽉ 14 ⽇、JICA 事務所にて 2017 年夏季ボランティア総会が開催されました。中国ではボランティア派遣数の減少に伴い、2015 年 8 ⽉を最後に総会が開催されていない状態が続いていましたが、2017 年 7 ⽉に 2017 年度 1次隊として 5 名の新ボランティアが着任し、派遣中ボランティア数が⼆桁(11名)に達したことによって機運が⾼まり、実に 2 年ぶりの総会実現に⾄ったのです。 本総会の実施に向けて、イニシアティブを取ったのは、2017 年 4 ⽉に赴任したばかりの 2016 年度 4 次隊の 3 名(秋吉隊員、三浦隊員、藤本隊員)でした。派遣中ボランティアには総会参加経験者が⼀⼈もいないという状況の中で、正にゼロからの企画・実施となりましたが、総会が各参加者にとって貴重な学びの機会となるよう、また派遣数減少に伴い希薄になりつつあったボランティア間の連携強化の⼀助とすべく、上記 3 名が中⼼となって約 3 ヵ⽉前から少しずつ準備を進めたのです。

今回の総会は、主に「活動報告会」、「職種別(⽇本語教育および環境保全)分科会」、「⽣活講座」という 3 つのパートから構成されていました。メインパートである活動報告会には、⽇本⼤使館職員、国際交流基⾦(北京⽇本⽂化センター)職員、JICA 専⾨家等、多くの来賓の⽅々にご出席いただき、4 名の代表ボランティアが各配属先での活動についてプレゼンテーションを⾏いました。発表者の中には⽇本語クラスの授業シーンの再現や活動⾵景のスライドを上映する等、⼯夫を凝らしたユニークなプレゼン⼿法を駆使するボランティアもおり、来賓の⽅々が熱⼼に⽿を傾け、質問をされていた姿が⼤変印象に残っています。また、報告会後には来賓の⽅々より、「ボランンティアの皆さんが中国各地で素晴らし活動を展開されていますね。」、「総会はボランティア事業を理解するうえで⾮常に貴重な機会。ぜひまた声をかけてください。」といった声が上がりました。 久しぶりに開催されたボランティア総会ですが、盛会のうちに終わったことで、今後の定期開催を求める声が⾼まっており、早ければ次回総会が 2018 年冬季に開催される予定です。中国のボランティア派遣規模は決して⼤きくはありませんが、今後もボランティア事業の動向にご注⽬ください。

1 枚⽬)活動報告会の様⼦ 2 枚⽬)活動報告会参加者 3 枚⽬)⾃⼰紹介をするボランティア 4 枚⽬)職種別分科会(環境保全)

JICA ボランティア総会、2 年ぶりの開催!!

池⽥ 敬

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JICA 中国事務所ニュースレター 2017 年度第 2 号

対中円借款最後の事業への貸付が完了 実行案件数計 231 件 対中 ODA の 90%を占める円借款は、1979 年に始まりました。貸付承諾額累計は 3

兆 3165 億円で、実施したプロジェクトは 231 件を数えます。 2017 年 9 ⽉ 26 ⽇に最後の実施中案件であった「⻘海省⽣態環境整備事業」への貸付が終了しました。承諾額63 億円、⻘海省⻘海湖周辺の 10 県において、約 8 万ヘクタールの植林や、砂漠化防⽌及び砂防ダム対策等を⾏う事業でした。 中国は、1978 年に打ち出された「改⾰・開放」政策により、経済成⻑を遂げてきましたが、その舞台裏で⽇本の ODA を含む⽇中経済協⼒がインフラの整備に貢献してきました。中国に対する円借款の歴史を振り返って⾒たいと思います。 1980 年代の第1次円借款から第2次円借款前半(1979〜1987 年度)までの特徴は、⽯炭輸送を中⼼とした運輸インフラ整備事業を重点的に融資対象としたことです。これは、エネルギー消費の 75%を⽯炭に依存する中国において、⽯炭資源の産出地が⼭⻄省を中⼼とした内陸部にある⼀⽅、消費地が沿海部にあるため、⽯炭の輸送を担う鉄道及び港湾整備に⾼い優先順位が置かれていたことが背景にあります。例えば、河北省に位置する秦皇島港は、円借款事業である「北京・秦皇島間鉄道拡充事業」、「⼤同・秦皇島間鉄道建設事業」、「秦皇島港拡充事業」、「秦皇島港⽯炭バース第 4 期建設事業」により、中国最⼤の⽯炭積出港となっています。

第2次借款後半の 1988 年度から第3次借款にかけては、改⾰開放政策がさらに加速された時期に対応しています。この間の円借款は、これまでの運輸プロジェクトに加えて、北京、天津、⻄安、重慶などの都市部における上下⽔道やガス供給事業、都市間を結ぶ通信事業、肥料⼯場、⻘島、海南島といった開発拠点におけるインフラ整備事業などを対象とし、中国国⺠の⽣活⽔準向上に直接役⽴つものや、経済開発の重点地域、都市などの経済基盤整備を⾏い、内容はより広範かつ多様なものとなりました。 第4次円借款は、第 9 次 5 ヶ年計画(1996〜2000 年)に対応するものですが、98 年度までの 3 年間とそれ以降 2000 年度までの 2 年間とに分けて総枠が協議され、96〜 98 年度(前 3 年)は全体で 5,800 億円を⽬途とすることが、99〜2000 年度(後2 年)については 3,900 億円を⽬途とすることが合意されました。第4次円借款では従来の経済インフラ事業に加え、環境及び⾷料・貧困分野を重視すると共に、地域的には内陸部への協⼒に重点を置きました。この背景には、中国経済の急成⻑に伴う歪みとして顕在化してきた環境汚染や、⼈⼝・所得の増加に伴う⾷料不⾜への懸念、さらには内陸部と沿海部の地域間所得格差の拡⼤といった問題への対処が緊急の課題となってきたことが挙げられます。特に、環境問題は、中国だけでなく、⽇本にも直接影響を及ぼす地球全体の問題との認識から、第4次円借款では、柳州、本渓、蘭州、フフホト、包頭、瀋陽の 6 都市における⼤気汚染をはじめとする環境対策事業や、河南省淮河、湖南省湘江、⿊⿓江省・吉林省を貫く松花江等、それぞれの流域における⽔質・環境改善事業に円借款が供与されました。これらは「開発と環境の両⽴を図りながら持続的成⻑を⽀援していく」という⽇本政府開発援助の理念に沿ったものでした。

1 枚⽬)⻘海省⽣態環境整備事業(Before) 2 枚⽬)⻘海省⽣態環境整備事業(After) 3 枚⽬)⻘海省⽣態環境整備事業(現状)

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JICA 中国事務所ニュースレター 2017 年度第 2 号

また、2000 年度には通常年次分借款とは別に、中国に対して 2 案件(「北京都市鉄道建設事業」及び「⻄安咸陽空港拡張事業」)、合計 172 億 2 百万円の特別円借款が供与されました。特別円借款はアジア経済の早期回復を⽬的として 98 年 11 ⽉に発表された「緊急経済対策」を踏まえ、99 年度より 3 年間で総額 6,000 億円を上限として「経済危機の影響を受けているアジア諸国等」を対象に創設されました。その後 99 年 11 ⽉に発表された「経済新⽣対策」を受けて、2000 年 1⽉には供与対象国を「経済危機の影響を直接⼜は間接に受けたアジア諸国を中⼼とする開発途上国」に拡⼤することが決定されたこともあり、中国も対象国の⼀つになったものです。

対中円借款 20 周年の節⽬を迎えた 2000 年、⽇本国内の厳しい経済・財政状況と中国の⽬覚しい経済発展状況を勘案し、対中経済協⼒のあり⽅に対する⾒直しが議論されました。国内各界の有識者から構成される外務省懇談会「21 世紀に向けた対中経済協⼒のあり⽅に関する懇談会」の提⾔等を踏まえ、⽇本政府は 2001 年 10 ⽉に「対中国経済協⼒計画」を公表しました。同計画では、対中経済協⼒の重点分野として「環境など地球規模問題への対応、市場経済化促進、相互理解の増進、内陸部の⺠⽣向上・社会開発、⺠間レベルの経済関係拡⼤のための環境整備など」を掲げ、「沿海部の経済インフラは基本的に中国⾃らが実施」することとしました。この⽅針を受け、2001 年度以降の対中国円借款は、沿海部のインフラ事業から内陸部を中⼼とした環境、⼈材育成事業等にその対象をシフトしていきました。 この結果、2001 年度以降は、環境分野が対中国円借款の中核として位置づけられるようになりました。具体的には、上下⽔道整備による地⽅都市の⽔環境の改善、集中型熱供給施設の整備による⼤気汚染の改善、廃棄物処理施設の整備、森林の劣化・砂漠化や⼟壌流失の抑制を図るための植林・植草等の事業等がこれにあたります。また、2003 年度には新型肺炎(SARS)が猛威を振るったことを受け、10 省での感染症対策強化を⽬的とする公衆衛⽣基礎施設整備事業に円借款が供与されました。⼈材育成分野の⽀援としては、内陸部の 22 省・市・⾃治区の 200 ⼤学を対象に校舎・設備の整備や教職員の⽇本での研修を⽀援する⼈材育成事業に円借款が供与された他、放送を通じた⼈材育成(教育・知識・⽂化⽔準向上)に寄与すべく、地⽅ 6 省のテレビ・ラジオ放送局の整備に対し、円借款が供与されました。

中国の経済発展が⾶躍的に進んだという状況を踏まえ、2005 年 4 ⽉の⽇中外相会談において、2008 年の北京オリンピック前までに円借款の新規供与を円満終了することについて共通認識に達し、これを受け、中国に対する新規の円借款承諾は 2007 年度分をもって終了しました。現在は、対中国円借款の 38 年にわたる経験とネットワークの蓄積を⽇中の企業間協⼒に活⽤しています。 張陽

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JICA 中国事務所ニュースレター 2017 年度第 2 号

四川省は地震多発地域であり、2008 年 5 ⽉の四川⼤地震のほか、2013 年にも雅安地震(芦⼭地震)が発⽣し甚⼤な被害が出ていますが、学校や地域における防災能⼒強化の取り組みは⽴ち遅れています。四川⼤地震を受け、JICA は 4 つの技術協⼒プロジェクトを実施し、2015 年からは、四川⼤学-⾹港理⼯⼤学災害復興管理学院、深セン壹基⾦公益基⾦会(以下、壹基⾦)、雅安市教育局教育科学研究所をカウンターパート機関として、「四川省における防災教育推進及び能⼒向上プロジェクト」を実施しています。このプロジェクトでは、学校内における児童、教員、学校管理者、教育部⾨の防災意識及び災害対応能⼒向上と、防災教育の継続的な実施のための体制が構築されることを⽬指しています。 2017 年 10 ⽉ 12 ⽇、国際防災の⽇(10 ⽉ 13 ⽇)に合わせて、四川省の成都市において、壹基⾦主催の「第 4 回公衆減災教育フォーラム」が開催され、全国各地教育部⾨、マスコミ報道機関、防災教育分野の社会組織など約 80 ⼈の参加の下、「防災教育の政府・⺠間協同」をテーマに、活発な意⾒交換が⾏われました。JICA の短期専⾨家として、兵庫県⽴⼤学⼤学院減災復興政策研究科の⻘⽥良介教授及び神⼾市消防局予防部の井上貴資係⻑が、⽇本の減災復興ガバナンス及びコミュニティ防災に関し発表を⾏い、マスコミ各社からの取材を受けました。 ⻘⽥専⾨家は、官⺠協同のメカニズム、⾃助・共助・公助など⽇本の減災復興ガバナンスの理論を説明したほか、「復興基⾦」や「中間⽀援組織」などの実例を挙げ、⽇本の官⺠協同を推進する⽅策、社会組織が災害救助・復興建設の中で果たす重要な役割について発表を⾏いました。また、記者からの質問を受け、⽇本の学校教育における防災教育の位置づけ;学校内で⾃主的に防災教育を実施できる背景;国⺠の防災意識・防災能⼒を⾼めるための⽇本の独特な取り組みなどについて紹介しました。 井上専⾨家は、神⼾市消防局の⼀事業として「防災福祉コミュニティ(BOKOMI)」という⾃主防災組織が⽴ち上がった背景、結成⽅法、組織構成、⾏政や学校との連携訓練、他団体と連携した活動及びその効果について事例を挙げて紹介しました。 阪神・淡路⼤震災を契機として検討されてきた理論体系及び⼀連の効果的な取り組みは参加者の関⼼を集め、防災教育に関する技術協⼒の継続実施や⽇中間の交流促進などの要望が多く出されました。2018 年 10 ⽉の案件終了を⾒据え、プロジェクトでは引き続き、中国側の要望に応じて、中国の防災教育事業の発展に貢献するよう努⼒していきたいと考えています。

「四川省における防災教育推進及び能力向上プロジェクト」 ~「第 4 回公衆減災教育フォーラム」参加~

前島幸司/丁莉

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JICA 中国事務所ニュースレター 2017 年度第 2 号

9 ⽉ 29 ⽇、⼤連⽇本⼈学校の中学部 3 年⽣では学習の⼀環として、「国際社会における主体的な⽣き⽅を考える〜⽀援・協⼒がつなぐ⽇本と中国の関係から、今後の⽇中友好を考える〜」をテーマとする授業が開催されました。⼤連⽇本⼈学校より要望を受けて、9 ⽉ 29 ⽇、JICA 中国事務所の所員が、講師として訪問しました。⽇本や JICA の海外での活動を紹介すると同時に、東⽇本⼤震災直後に⽇本が世界の様々な国の⽀援を受けたこと(中国の緊急援助隊も含まれます。)を紹介し、世界における各国の相互依存関係およびその必要性を説明しました。また、国際援助、開発途上国・先進国の基準、GNI、GDP の定義・区分等の⽤語の解説もしました。⽣徒さんからは、「受援国の⼈たちは、⽇本にどのようなイメージを持っているか」等の質問がありました。⽣徒さんは、12 ⽉ 2 ⽇に総合的な学習の時間を利⽤して、この出前⼝座による学習の成果をひとりずつ発表したそうです。 また、各⾃が「フェアトレード」「発展途上国の⼦どもたち」「発展途上国の⾷糧と暮らし」をテーマに 12 ⽉に発表する予定とのことでした。将来や進路の検討に、少しでも役に⽴てば、嬉しい限りです。 北京⽇本⼈学校でも、11 ⽉ 10 ⽇に⼩学部 4 年⽣約 46 名向けに「JICA が北京や中国全体の発展にどのように貢献したか」をテーマに、JICA 中国事務所の所員が昔の北京と今の北京と写真等を⾒ながら、⽇本の ODA の北京や中国への貢献事例を紹介しました。 JICA 中国事務所では、⽇本⼈学校や中国国内の中国の学校に出前講座をさ

せていただいています ご要望等がありましたら、ぜひ JICA 中国事務所

広報班(メルアド:[email protected])までご連絡 ください。

~大連日本人学校・北京日本人学校で出前講座を開催~

馮威

1 枚⽬)⼤連⽇本⼈学校 2 枚⽬)⼟岐所員(講師)の授業⾵景(⼤連) 3 枚⽬)中⾥所⻑(講師)の授業⾵景(北京) 4 枚⽬)北京⽇本⼈学校の⽣徒さんたち

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JICA 中国事務所ニュースレター 2017 年度第 2 号

11 ⽉ 3 ⽇、JICA ボランティア⿊川さくら隊員の配属先であるハルビン市朝鮮族第⼀中学にて⽇本⽂化祭が開催されました。このイベントは、⽣徒が楽しみながら⽇本語や⽇本⽂化に触れる機会を提供するという狙いのもと、⿊川隊員と同僚⽇本語教師が中⼼となって企画したものであり、ハルビン市朝鮮族第⼀中学で⽇本語を学習する中学・⾼校⽣約 50 名が参加したほか、同校の校⻑、副校⻑をはじめとする多くの教師および JICA 所員も出席しました。 ⽇本⽂化祭では、⽇本語を学習し始めたばかりの中学 1 年⽣から⾼校 2 年⽣が学年別に歌、⼨劇、踊り、空⼿演武等を披露。⽣徒と教師が何週間もかけて準備した成果がいかんなく発揮され、会場は温かい拍⼿と声援に包まれました。 驚いたのは、受験を控えた中学 3 年⽣以外の全ての学年が複数の出し物を発表したことです。まだ⽇本語を上⼿に話すことができない中学 1・2 年⽣が阿波踊りや歌、空⼿演武を演じたことに⼤きな感銘を受けました。また、中学 3 年⽣〜⾼校 2 年⽣の⼨劇では、⽣徒が⼿作りで⼩道具を⽤意していたこと、⽇本語の台詞を⾔い間違えることがほとんどなかったことは、とても強く印象に残っています。 各学年の出し物は以下のとおりです。 <中学 1 年⽣> :阿波踊り、 歌『コトバの魔法』、 空⼿演武 <中学 2 年⽣> :歌『勇気 100%』、空⼿演武 <中学 3 年⽣> :⼨劇『ロボット』(⽇本語教材に掲載されているストーリーを演劇化) <⾼校 1 年⽣> :⼨劇『注⽂の多い料理店』 (原作:宮沢賢治) 歌『⼿紙〜拝啓⼗五の君へ〜』 <⾼校 2 年⽣> :⼨劇『We are!』(アニメ「ONE PIECE」をモチーフとした演劇) 歌『Have a nice day』 ⽂化祭終了後、⽣徒たちは充実した表情を浮かべ、「緊張したけど楽しかった。」、「また⽂化祭をやりたい!」といった声もあがっていました。ハルビン市朝鮮族第⼀中学では、今後も校内作⽂コンクールやかるた⼤会、外部団体主催の合唱コンクール参加等バラエティに富んだ活動が予定されており、⽇本語教育の更なる活性化が期待されています。

1 枚⽬)中学 1・2 年⽣ 空⼿演武 2 枚⽬)中学 1 年⽣ 阿波踊り 3 枚⽬)中学 3 年⽣ ⼨劇『ロボット』 4 枚⽬)⾼校 1 年⽣ 歌 『⼿紙〜拝啓⼗五の君へ〜』 5 枚⽬)⾼校 1 年⽣ ⼨劇 『注⽂の多い料理店』 6 枚⽬)⾼校 2 年⽣ ⼨劇 『We are! 』 7 枚⽬)⿊川隊員 (前列右から 4 番⽬)と⽣徒 8 枚⽬)集合写真

ハルビン市朝鮮族第一学校で「日本文化祭」開催!!

池⽥ 敬

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JICA 中国事務所ニュースレター 2017 年度第 2 号

⽇本の夏の⾵物詩、⾳楽フェスティバル。皆様は毎年新潟で開催される FUJI ROCK FESTIVAL(以下 FRF)をご存知でしょうか。FRF はアジア最⼤規模で且つ、アジアで最もクリーンな⾳楽フェスと⾔われています。この度 FRF で⻑年環境保護に取り組んでいる NPO とご縁があり、7 ⽉ 27〜31 ⽇、中国⼈の同僚を連れて、FRF がなぜクリーンと呼ばれるのか、その謎を探るべく環境保護ボランティア活動に参加して参りました。 3 ⽇間の開催期間とその前後、我々は来場者へのごみ袋配布、ごみステーションでの分別ナビゲート、参加型環境教育企画、会場清掃を⾏いました。それぞれの活動で、来場者もボランティアも⾃主的に、そして楽しく環境問題を意識できる⼯夫がされています。例えば、配布するごみ袋は昨年の FRF で回収したペットボトルから作られており、毎年限定のデザインです。リサイクルされた袋であることはごみ袋にも記載されており、⾃らの分別活動がどのように還元されているか知ることができます。環境教育企画では、参加者のみでなく、伝える側であるボランティアも環境問題に関する知識を得ることができます。また、参加者にはオリジナルのタオルをプレゼント。舞台から流れてくる⾳楽を聴きながら、環境問題に関するクイズや、ごみステーションで分けられた資源の更に細かい分別を⾏います。参加者はごみを扱うにも関わらず、笑顔に溢れていました。 ⾳楽フェスに無料で⾏けるからボランティアに参加する、プレゼントがもらえるから環境教育企画に⾜を運ぶ等、環境について考えることが第⼀の参加⽬的でなくても、私はいいと思います。環境問題は難しい、よくわからないというダークなイメージを持つ⼈が多いです。それならば楽しみながら考えて欲しい。楽しみながら環境問題を考えるきっかけを掴むことが出来るなら、⾳楽はとても相応しい⼿段だと思います。 また、環境保護の取り組みだけでなく、ソフト⾯でも多くの学びを得ました。例えば、スタッフによるボランティアへの体調配慮や元気付けの⾔葉、本部テントの準備物の周到さ、5分前集合など。中国⼈同僚だけでなく、⽇本⼈である私も勉強になりました。 中国でも様々な⾳楽フェスが開催されていますが、SNS を⾒る限り、会場はごみで溢れかえっています。中国が抱える最⼤の問題である環境問題。多くの若者が楽しみながら環境保護活動を⾏えるような⾳楽フェスでの導⼊を⽬指して、これから準備を進めて参ります。

1 枚目)ごみステーションでの分別ナビゲートの様⼦

2 枚目)ごみ袋配布時の呼びかけ⽂を中国語に翻訳 3 枚目)環境教育企画の参加者へのプレゼント 4 枚目)(左から)配属先同僚のゴンさん・ウーさんと秋吉隊員

中国の音楽フェスで環境保護を目指す ~FUJI ROCK FESTIVAL への参加~

⻘年海外協⼒隊秋吉 楓 隊員

(職種:環境教育)