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JIS 意見受付 JIS Z 2354 原案作成委員会 この JIS は日本非破壊検査協会規則「JIS 原案作成に関する規則」に基づき関係者に JIS の制定前の意見 提出期間を設けるために掲載するものです。 意見は規格原案決定の際の参考として取り扱いさせていただきます。 掲載されている JIS についての意見提出は下記メールアドレスまでお願いいたします。 意見受付締切日:2010 10 5 意見提出先:Email:[email protected]

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JIS 意見受付

JIS Z 2354 原案作成委員会 この JIS は日本非破壊検査協会規則「JIS 原案作成に関する規則」に基づき関係者に JIS の制定前の意見

提出期間を設けるために掲載するものです。 意見は規格原案決定の際の参考として取り扱いさせていただきます。 掲載されている JIS についての意見提出は下記メールアドレスまでお願いいたします。 意見受付締切日:2010年 10月 5日 意見提出先:Email:[email protected]

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日本工業規格(案) JIS Z 2354:0000

固体における超音波減衰係数の測定方法

Method for measurement of ultrasonic attenuation coefficient in solids

序文

この規格は,1992 年に制定され今日に至っているが,その後の技術の動向及び測定機器の進歩に対応す

るために改正した。

なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。

1 適用範囲

この規格は,固体の 2 MHz 以上の周波数における超音波減衰を測定する方法について規定する。

2 引用規格

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。

JIS G 4053 機械構造用合金鋼材

JIS B 0601 製品の幾何特性仕様(GPS)表面性状:輪郭曲線方式―用語,定義及び表面性状パラメー

JIS G 4053 機械構造用合金鋼材

JIS Z 2300 非破壊試験用語

JIS Z 2350 超音波探触子の性能測定方法

JIS Z 2352 超音波探傷装置の性能測定方法

3 用語及び定義

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 2300 によるほか,次による。

3.1 遅延体

直接接触法で測定を行う場合に,振動子と試験片との間に一定の間隔を保持するために挿入する物体で,

金属より音響インピーダンスが遙かに小さい硬質の合成樹脂などが用いられる。

4 測定技術者

測定を行う技術者は,固体中の超音波の伝搬に関して十分な知識をもち,測定装置の取扱いに習熟して

いなければならない。

5 減衰係数を測定する試験対象物

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Z 2354:0000

減衰係数の測定は,規定の形状寸法に製作した試験片又は減衰係数を測定しようとする実体(以下,試

験体という。)に対して行う。

5.1 試験片

試験対象物が鋼の場合,試験片は次による。試験対象物が鋼以外の場合,試験片は材料の超音波特性を

考慮して決定する。

a) 形状は,直方体又は円柱とし,寸法は,表 1 による。ただし,減衰係数の測定に対比試験片を使用し

ない場合には厚さは任意とする。

表 1―試験片の寸法

測定に使用する公称周波数

(MHz) 辺の長さ又は直径(mm) 厚さ(mm)

2~10 100 以上 25~50 5~10 50 以上 25~50

b) 測定面と裏面の平行度は,0.01/100 とする。

c) 測定面と裏面との仕上げの程度は,直接接触法の場合,測定面はラッピング仕上げとし,裏面は Rz 3.2

程度とする。ただし,合成樹脂製遅延体を使用する場合には,両面とも Rz 3.2 程度とする。水浸法の

場合は,測定面及び裏面とも Rz 3.2 程度とする。

5.2 試験体

試験片を使用しないで,実物で減衰係数を測定する試験体に要求する条件については 8.3 に示す。

6. 対比試験片

対比試験片の形状・寸法,平行度及び仕上げの程度は,5.1 に示した試験片と同一とし,材質は,JIS G 4053

の SNCM447 の焼入焼戻し材(ただし,焼戻し後は,空冷。)又は減衰係数がこれと同等以下のものとする。

7 使用機材

7.1 超音波送受信装置

超音波の発生には,超音波探傷器,パルス送信器,ファンクションジェネレータなどを用い,超音波の

受信には,超音波探傷器,パルス受信器,オシロスコープなどを用いる。装置に必要な性能は次による。

a) 超音波探傷器を用いる場合は,次による。

1) 増幅直線性は,JIS Z 2352 の 6.2.1 増幅直線性で測定し,偏差が±2%以内とする。

2) 時間軸直線性は,JIS Z 2352 の 6.1.1 時間軸直線性で測定して,誤差が±2%以内とする。

b) オシロスコープを使用する場合は,使用する探触子の公称周波数の 2 倍以上の周波数まで使用できる

オシロスコープとする。

7.2 探触子

探触子は,次による。

a) 使用する探触子は,水浸用探触子又は直接接触用垂直探触子(裸振動子を含む。)とする。ただし,集

束探触子は使用しない。硬質合成樹脂製などの遅延体付き垂直探触子を使用することができる。直接

接触用垂直探触子には,必要に応じて波数を増やす同調回路を付加することができる。

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Z 2354:0000

図 1―遅延体付き垂直探触子の例

b) 探触子をパルス送信器及びパルス受信器又は超音波探傷器と組み合わせて使用した場合の波数は,JIS

Z 2350 で測定して,5 以上とする。また,バースト波発信器を用いて,5 以上の波数を発生させるこ

とができる探触子を使用することもできる。このとき,周波数は JIS Z 2350 に従った方法,周波数

解析装置を用いる方法など,適切な方法を選定して測定する。なお,波数が少なく周波数帯域の広

いパルス波を用いる場合は,附属書 A による。

c) ビームの中心軸の偏り角は,JIS Z 2350 で測定して,1 度以下とする。

7.3 探触子ケーブル

探触子ケーブルは,超音波送受信装置で規定されたものとするが,探触子と試験片との接触を安定させ

るため,できるだけしなやかなものを選択する。

7.4 接触媒質

接触媒質は,次による。

a) 直接接触法の場合の接触媒質は,スピンドル油又はマシン油とする。ただし,横波を使用する場合に

は,高粘度の液体,固体接着剤(サリチル酸フェニール)など横波の伝達に適するものとする。

b) 水浸法の場合の接触媒質は,水とする。ただし,水の使用が適当でない場合には,スピンドル油など

を用いる。

7.5 水槽

水槽は,次による(図 2 参照)。

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Z 2354:0000

図 2―使用する水槽の例

a) 試験片を水中に沈めて,その表面に向けて超音波を入射させるように探触子をセットできる構造とす

る。

b) 試験片の表面の中央付近に超音波を入射させることができるように,X 方向及び Y 方向に探触子を走

査させることができることとする。

c) 試験片に垂直に超音波ビームを入射させることができるように,0.1 度(1/600 の傾き)程度まで探触

子の首振りが行えることとする。

d) 水距離,すなわち探触子と試験片表面の距離を調整するために,Z 方向に探触子を移動させることが

できることとする。

e) 探触子の前面及び試験片の探傷面に付着する気泡の有無を容易に観察でき,かつ容易に除去できる構

造とする。

f) 気泡の発生を防ぐために,一度沸騰させて冷却した水など,十分に脱気した水を使用する。

8 試験片又は試験体の減衰係数の測定

8.1 対比試験片を用いて試験片の減衰係数を測定する方法

8.1.1 音速及び音響インピーダンスが試験片とほぼ等しい対比試験片を用いる直接接触多重反射法によ

る試験片の減衰係数の測定

音速及び音響インピーダンスが試験片とほぼ等しい対比試験片を使用する直接接触多重反射法による減

衰係数の測定は,次による。

a) 超音波探傷器又はパルス送信器及びパルス受信器は,次のように調整する。

1) 測定範囲は,B1が表示器目盛の左端以内に,測定に使用する最終底面エコー(以下,Bmという)が

表示器目盛の右端以内とする。

ここで,Bmの m は,最終エコーの次数を示し,その最大数は,Bmの SN 比が 14dB 未満とならな

い数とするが,更に,次の式で求められる値によって制限される。

CT

Ddf29.0m ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

ここに, m: 最終底面エコーの次数

水浸探触子

試験体又は

対比試験片

探触子

ホルダ

スキャナ

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Z 2354:0000

D: 対比試験片の直径又は辺の長さ(mm) T: 対比試験片の厚さ(mm) C: 対比試験片の音速(km/s) d: 振動子の直径(mm) f: 試験周波数(MHz)

2) リジェクションは“OFF”又は“0”とする。

3) 受信帯域幅は,測定に使用する超音波の周波数を含むものとする。

b) 試験片の探傷面のほぼ中央にごく少量の接触媒質を用い,探触子を擦り合わせるようにして密着させ

る。このとき,探触子と試験片の間に安定な音響結合が得られるように,探触子には一定の圧力を加

える。次に,B1対 Bmの比の dB 値を,ゲイン調整器を用いて測定し,この値を(B1/ Bm)TPとする。

c) 対比試験片について,b)と同様な測定を行い,B1対 Bmの比の値を(B1/ Bm)RBとする。

d) 次の式によって,対比試験片を基準とした相対的減衰係数を求める。

T

BBBB RBmTPm

)1m(

)/()/(500' 11

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)

ここに, ’: 対比試験片を基準とした相対減衰係数(dB/m) m: 最終底面エコーの次数 T: 試験片の厚さ(mm)

e) 減衰係数は,’に対比試験片の減衰係数’’を加算して求める。なお,対比試験片が,SNCM447 の焼

入焼戻し材の場合には,近似的に表 2 の値を対比試験片の減衰係数’’とすることができる。

表 2―SNCM447 の焼入焼戻し材で製作した対比試験片の減衰係数の概略値

単位 dB/m

周波数 2 MHz 5 MHz 10 MHz 15 MHz

対比試験片の 減衰係数’’

縦波 0 0 2 5

横波 0 1 5 15

8.1.2 対比試験片を使用し,第 1 回底面エコーだけを用いる試験片の減衰係数の測定

対比試験片を使用し,第 1 回底面エコーだけを用いる減衰係数の測定は,次による。

a) 超音波探傷器又はパルス送信器及びパルス受信器は,次のように調整する。

1) 測定範囲は,B1が表示器目盛の右端以内とする。

2) リジェクションは“OFF”又は“0”とする。

3) 受信帯域幅は,測定に使用する超音波の周波数を含むものとする。

b) 探触子を試験片の探傷面のほぼ中央にごく少量の接触媒質を用い,擦り合わせるようにして密着させ

る。このとき,探触子と試験片の安定な音響結合が得られるように,探触子には一定の圧力を加える。

次に,表示器上の B1の高さが一定値になるように,ゲイン調整器を調整し,そのときのゲイン調整器

の目盛の読みを E1とする。

c) 対比試験片について,d)と同様な測定を行い,B1に対するゲイン調整器の目盛の読みを R1とする。

d) 次の式によって,対比試験片を基準とした相対的減衰係数を求める。

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Z 2354:0000

T

RE 11500'

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)

減衰係数は,’に対比試験片の減衰係数’’を加算して求める。なお,対比試験片が,SNCM447 の焼入

焼戻し材の場合には,近似的に表 2 の値を対比試験片の減衰係数’’とすることができる。

8.1.3 対比試験片を使用する水浸多重反射法による試験片の減衰係数の測定

対比試験片を使用して水浸多重反射法による減衰係数の測定は,次による。

a) 水距離は,試験片の厚さと測定に使用する底面エコーの次数に応じて,次の式によって求める。

TJmL )5.0(W ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)

ここに, LW: 水距離(mm) J: (水中の音速)/(試験片中の縦波音速) T: 試験片の厚さ m: 測定に使用する底面エコーの次数

b) 超音波探傷器,又はパルス送信器とパルス受信器は,次のように調整する。

1) 測定範囲は,B1が表示器目盛の左端以内に,Bmが表示器目盛の右端以内とする。

ここで,Bmの m の最大数は,Bmの SN 比が 14 dB 未満とならない数とするが,更に,式(1)で

求められる値によって制限される。

2) リジェクションは“OFF”又は“0”とする。

3) 受信帯域幅は,測定に使用する超音波の周波数を含む。

c) 必要な水距離が得られるように,探触子位置を調整する。

d) 試験片の多重底面エコーを観察し,探触子の首振りを調整して,Bm が最大になるように調整した後,

B1が最大になるように調整する。

e) B1/Bmの dB 値をゲイン調整期を用いて測定し,この値を(B1/ Bm)TPとする。

f) 対比試験片について,a)~e)と同様な測定を行い,B1/Bmの dB 値を(B1/ Bm)RBとする。

g) 式(2)によって,対比試験片を基準とした相対的減衰係数を求める。

h) 減衰係数は,’に対比試験片の減衰係数’’を加算して求める。なお,対比試験片が,SNCM447 の焼

入焼戻し材の場合には,近似的に表 2 の値を対比試験片の減衰係数’’とすることができる。

8.1.4 対比試験片を使用し,かつ遅延体付き垂直探触子を使用する直接接触多重反射法による試験片の減

衰係数の測定

対比試験片を使用し,かつ,硬質合成樹脂製などの遅延体付き垂直探触子を使用する直接接触多重反射

法による減衰係数の測定は,次による。

a) 探触子の遅延体の厚さは,遅延体における多重反射が試験片の底面エコーと重ならない寸法を選ぶが,

試験片の厚さを遅延体の長さに適したものとすることができる。

b) 超音波探傷器又はパルス送信器及びパルス受信器は,次のように調整する。

1) 測定範囲は,B1が表示器目盛の左端以内に,Bmが表示器目盛の右端以内とする。

ここで,Bmの m の最大数は,Bmの SN 比が 14dB 未満とならない数とするが,更に,式(1)で求められる

値によって制限される。

2) リジェクションは“OFF”又は“0”とする。

3) 受信帯域幅は,測定に使用する超音波の周波数を含むものとする。

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Z 2354:0000

c) 試験片の探傷面のほぼ中央にごく少量の接触媒質を用いて,探触子を擦り合わせるようにして密着さ

せる。このとき,探触子と試験片の安定な音響結合が得られるように,探触子には一定の圧力を加え

る。次に,B1/Bmの dB 値をゲイン調整器を用いて測定し,この値を(B1/ Bm)TPとする。

d) 対比試験片について,e)と同様な測定を行い,B1/Bmの dB 値を(B1/ Bm)RBとする。

e) 式(3)によって,対比試験片を基準とした相対的減衰係数を求める。

f) 減衰係数は,’に対比試験片の減衰係数’’を加算して求める。なお,対比試験片が,SNCM447 の焼

入焼戻し材の場合には,近似的に表 2 の値を対比試験片の減衰係数’’とすることができる。

8.2 対比試験片を用いない方法による試験片の減衰係数の測定

8.2.1 対比試験片を使用しないで,水浸多重反射法による試験片の減衰係数の測定

対比試験片を使用しないで,任意の厚さの平板試験片を用いる水浸多重反射法による減衰係数の測定は,

次による。

a) 4.6 に規定する水槽を用いて,図 3 の(a)又は(b)のように試験片を配置する。

b) 水距離は,試験片の厚さと測定に使用する底面エコーの次数に応じて,式(5)によって求める。

c) 超音波探傷器,又はパルス送信器及びパルス受信器は,次のように調整する。

1) 測定範囲は,B1が表示器目盛の左端以内に,Bmが表示器目盛の右端以内とする。

ここで,Bmの m の最大数は,Bmの SN 比が 14 dB 未満とならない数とするが,更に,式(1)で

求められる値によって制限される。

2) リジェクションは“OFF”又は“0”とする。

3) 受信帯域幅は,測定に使用する超音波の周波数を含むものとする。

(a)試験片の下に水を満たした配置 (b)試験片の下に発泡ポリスチレンを敷いた配置

図 3―水浸法における試験片の配置

d) 十分に脱脂した試験片を台の上に載せる。

e) 試験片及び探触子の気泡を,はけなどで取り除く。

f) 試験片の多重底面エコーを観察し,探触子の向きを調整して,Bmが最大になるように調整した後,B1

が最大になるように調整する。

g) B1 及び Bm について,エコーの高さが一定値になるように,ゲイン調整器を調整する。そのときのゲ

イン調整器の目盛の読みを E1及び Emとする。

h) 試験片と水との境界面での反射損失の絶対値 R を次式によって求める。

水浸探触子

試験片

探触子

ホルダ

スキャナ

水浸探触子

探触子

ホルダ

スキャナ

発泡ポリスチレン

試験片

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Z 2354:0000

21

21log20ZZ

ZZR ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)

ここに, Z1: 試験片の音響インピーダンス Z2: 水の音響インピーダンス

i) B1及び Bmに対応する片道の規準化距離 niの値(ここに,i=1 又は m)は,次の式によって求める。

2i

)(4

d

IiTn WW ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)

ここに, W: 水中における超音波の波長(mm) : 試験片中における超音波の波長(mm) IW: 水距離(mm) T: 試験片の厚さ d: 振動子の直径(mm)

j) 図 4 から,n1及び nmに対応する拡散損失の理論値を読取り,Q1及び Qmとする。

図 4―拡散損失の理論値

なお,次式を満足する場合は,拡散損失による補正を省略することができる。

25.01 nnm ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)

また,nm≤7が成り立つ場合は,次式により Q1及び Qmを求めることができる。

11 2nQ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(8)

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Z 2354:0000

mm nQ 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9)

k) 反射損失及び拡散損失を補正した B1エコー高さ対 Bmエコー高さの比の値の dB 値C は,次の式によ

って計算する。

1) 図 3(a)の場合は

111 QREC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(10)

mmm QRmEC )12( ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(11)

1CCC m ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(12)

2) 図 3(b)の場合は

111 QEC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(13)

mmm QRmEC )1( ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(14)

1CCC m ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(15)

l) 減衰係数は,次の式によって求める。

Tm

C

)1(500

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(16)

ここに, : 試験片の減衰係数(dB/m) m: 最終底面エコーの次数 T: 試験片の厚さ(mm)

8.2.2 対比試験片を使用しないで,遅延体を使用する直接接触法による試験片の減衰係数の測定

遅延体付垂直探触子を用いた直接接触法による測定は,次に示す測定方法 A 又は測定方法 B のいずれか

による。

a) 測定方法 A

1) 遅延体付垂直探触子を,接触媒質を介して試験片に接触させる。

2) このとき図 5 に示す伝搬経路 VAエコー(遅延体の底面と試験片表面との境界面からのエコー),VB

エコー(試験片底面からのエコー)及び VCエコー(試験片を 2 往復した時のエコー)の高さ(%),

hA,hB及び hCを測定する。

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Z 2354:0000

図 5―遅延体付垂直探触子による測定

3) VAエコー,VBエコー及び VCエコーに対応する片道の規準化距離 nA,nB及び nCの値を,次の式に

よって求める。

2A

4

d

Tn DD ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(17)

2B

)(4

d

TTn DD

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(18)

2)2(4

Cd

DDTTn

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(19)

ここに, D: 遅延体中における超音波の波長(mm) : 試験片中における超音波の波長(mm) TD: 遅延体の厚さ(mm) T: 試験片の厚さ d: 振動子の直径(mm)

図 4 から,n1A,nB及び nCに対応する拡散損失の理論値を読取り,QA,QB 及び QCとする。

なお,次式を満足する場合は,拡散損失による補正を省略することができる。

5.0 AnCn ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(20)

また,nm≤7が成り立つ場合は,次式によって QA,QB 及び QCを求めることができる。

AnAQ 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(21)

BnBQ 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(22)

試験片

遅延体

遅延体付 探触子 振動子

VA VB VC

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Z 2354:0000

CnCQ 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(23)

4) 拡散損失の補正に用いる係数,PA,PB 及び PCを次式によって求める。

20/10 AQAP ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(24)

20/10 BQBP ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(25)

20/10 CQCP ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(26)

5) 遅延体と試験片境界面での反射率(振幅反射率の絶対値)r を次式によって求める。

2/2

BPCPAPAhBhAhCh

AhChr ・・・・・・・・・・・・・・・・・(27)

6) 減衰係数は,次の式によって求める。

B

C

BC P

P

hh

r

Tlog20

500 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(28)

ここに, : 試験片の減衰係数(dB/m) T: 試験片の厚さ(mm)

b) 測定方法 B

1) 図 6 のように,遅延体付垂直探触子を試験片に接触させないときの遅延体の底面からのエコーVA0

の高さ hA0(%)を測定する。

図 6―遅延体の接触面のエコーの測定

2) 次に,図 5 に示したように遅延体付垂直探触子を試験片に接触させたときの伝搬経路 VAエコー(遅

延体の底面と試験片表面との境界面からのエコー)及び VB エコー(試験片底面からのエコー)の

高さ(%),hA及び hBを測定する。

遅延体

遅延体付

探触子 振動子

VA0

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Z 2354:0000

3) 測定方法 A の 3)~4)と同様にして,PA0及び PB を求める。

4) 減衰係数は,次の式によって求める。

00

201

log20500

A

B

AB

AA

P

P

hh

hh

T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(29)

ここに, : 試験片の減衰係数(dB/m) T: 試験片の厚さ(mm)

8.3 実体の試験体に対する直接接触法による減衰係数の直接測定

試験片も対比試験片も使用しないで,実体の試験体に対して減衰係数を直接に測定する方法は,次によ

る。

a) 試験体の条件は,次による。

1) 探傷面と底面が平行な試験体の厚さは,使用する探触子の近距離音場限界距離(1)の 6 倍以上になる

ようにする。振動子の直径 d が小さい探触子を選ぶことによって,多くの場合に,この条件を満足

させることができる。

注 1) 近距離音場限界距離 x0は,次の式で定義する。

4

2

od

x ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(30)

ここに, d: 振動子の直径(mm) : 波長(mm)

2) 円形断面形状の試験体の減衰係数を径方向に測定する場合には,その直径が使用する探触子の近距

離音場限界距離の4倍以上になるようにする。振動子の直径dが小さい探触子を選ぶことによって,

多くの場合に,この条件を満足させることができる。

3) 探傷面と裏面は,通常は,機械加工によって Rz 25 に仕上げる。ただし,圧延のままの滑らかな肌

の場合には,そのまま使用することができる。

b) 探触子

1) 探触子の形式は,直接接触用垂直探触子とする。

2) 振動子の直径は,次の式の条件を満足する範囲において,なるべく小さいものを使用する。

d

T4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(31)

ここに, ℓ: 端面から探触子までの距離(mm) T: 試験体の直径又は厚さ(mm) d: 振動子の直径(mm) : 波長(mm)

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Z 2354:0000

図 7―試験体の端面の影響を受けないための条件

c) 減衰係数を測定するために使用する周波数の上限は,B2の SN 比が 14 dB 未満とならない周波数とす

る。

d) 超音波探傷器又はパルス送信器及びパルス受信器は,次のように調整する。

1) 測定範囲は,B1が表示器目盛の左端以内に,B2が表示器目盛の右端以内とする。

2) リジェクションは“OFF”又は“0”とする。

3) 受信帯域幅は,測定に使用する超音波の周波数を含む。

e) 探触子を接触させた面での反射損失を最小にして測定精度を高めるために,探触子を試験体の探傷面

にできるだけ少量の接触媒質で接触させる。次に,表示器上の B1エコーの高さが一定値になるように,

ゲイン調整器を調整し,そのときのゲイン調整器の目盛を読み,続いて B2エコーの高さがその一定値

になるように,ゲイン調整器を調整し,そのときのゲイン調整器の目盛を読む。それぞれの読みを E1

及び E2(dB)とすれば,その試験体の測定した周波数における減衰係数は,次の式によって求める。な

お,試験体の厚さ又は直径が十分大きいので,探触子の接触による反射損失の影響を無視することが

できる。

T

EE )6(500 21

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(32)

ここに, : 試験体の減衰係数(dB/m) T: 試験体の直径又は厚さ(mm)

9 記録

測定結果の記録は,次による。

a) 測定日時

b) 測定者氏名

c) 対比試験片の種類と厚さ

d) 装置及び材料

1) 超音波探傷器又はパルス送信器,パルス受信器及びオシロスコープの形式及び製造番号

2) (探触子の形式及び製造番号

3) 探触子ケーブルの種類及び長さ

4) 横波の減衰係数測定の場合は,使用した接触媒質の種類

e) 試験片又は試験体

1) 材質

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14

Z 2354:0000

2) 寸法

3) 実体の試験体で測定した場合,探傷面及び裏面の仕上げの状態

f) 測定条件

1) 測定方法

2) 試験周波数(JIS Z 2350 で測定した周波数とする。)

3) 超音波探傷器又はパルス送信器,パルス受信器及びオシロスコープの各つまみの調度

4) 波数(エコーの波数が 5 未満の場合だけ記録する。)

5) 多重底面エコーの次数

6) その他 参考となる事項

g) 測定結果

1) 縦波を使用した場合:L(f MHz)= (dB/m)

2) 横波を使用した場合:S(f MHz)= (dB/m)

f は,JIS Z 2350 で測定した周波数を記す。

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Z 2354:0000

附属書 A

(規定)

パルス波による減衰係数の測定方法

序文

この附属書は,スペクトル解析を用いたパルス波の減衰係数の測定方法について規定する。

A.1 適用範囲

この附属書は,本体に規定する減衰係数測定方法において,5 以上の波数をもつ超音波の代わりに広帯

域パルス波を用い,スペクトル解析を行うことによって周波数ごとの減衰係数を測定する場合に適用する。

A.2 使用装置

使用する装置は,次による。

a) パルサー・レシーバー

広帯域パルス波を発生及び受信することのできるパルサー・レシーバーを使用する。

b) コンピュータ

受信したエコーをデジタル信号として収録し,高速フーリエ変換(FFT)により振幅スペクトルを

計算できる機能をもつコンピュータを使用する。

c) 探触子

直接接触用,水浸用又は遅延材付の広帯域探触子を用いる。なお,遅延材を用いる場合は十分に減

衰の小さい材質のものを選定することとする。

A.3 測定方法

a) 減衰係数の測定は,箇条 8.試験片又は試験体の減衰係数の測定(以下,「減衰測定」とする)に従っ

て実施する。

b) 測定方法を選定して,測定に必要な機材を準備する。なお,探触子は波数の少ない広帯域パルス波を

送信できるものを使用する。

c) 本体の「減衰測定」に記載したそれぞれの測定方法に従って,対比試験片,試験片又は試験体に広帯

域パルス波を入射する。

d) 測定に使用するエコーのうち,最も振幅が大きいものを基準として,その振幅の大きさが表示器上で

80~100 %になるように感度を調整する。なお,対比試験片を用いる方法の場合は,対比試験片及び

試験片のいずれも同じ感度で測定を行う。

e) 受信したエコーをコンピュータにデジタル信号として収録する。それぞれの測定方法ごとに,減衰係

数測定に使用するエコーを表 A.1 に示す。

f) 次節に述べる方法に従って,各エコーの振幅スペクトルを周波数の関数として求める(図 A.1)。この

手順を模式的に図 A.2 に示す。なお,図 A.1 及び図 A.2 は,試験体がプラスチック,FRP など比較的

音響インピーダンスが小さい場合の例で,VAよりも VBの方が大きくなっている。これに対して,試

験体が鋼材などの金属のように比較的音響インピーダンスが大きい場合は, VAの方が VBよりも大き

くなる。

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Z 2354:0000

g) 減衰係数を求めたい周波数における振幅スペクトルの値を,それぞれのエコーの高さ値として用い,

本体の「減衰測定」に記載された方法にしたがって減衰係数を計算する。また,選定した周波数に対

応する波長により,「減衰測定」に記載された方法に従って拡散損失の補正も行う。

h) なお,試験結果には,A.4 に規定する振幅スペクトルのデータを添付する。

A.4 振幅スペクトルの算出

各エコーに対する振幅スペクトルの算出は次の方法による(図 A.3 参照)。

a) コンピュータに収録されたデジタル信号(データ数:Ns)を図の(a)に示す。ここで,デジタル信号の

サンプリング周波数 fsは,減衰係数を求める周波数範囲の上限 fmaxの 2 倍よりも十分に大きくとって

おく。

b) 静止状態(エコー信号のない時刻)に対するデータが 0 からずれた値(図中(a)の d)となっている場

合,この値を Ns個のデータすべてから引き算することにより,静止状態が 0 に対応するようにしてお

く。この状態を(b)に示す。

c) (b)の Ns個のデータのうち,対象とするエコーに相当する部分以外のデータをすべて 0 で置き換える。

この状態を(c)に示す。

d) Ns個のデータの末尾に,0 のデータを適切な数だけ追加することにより,全体のデータ数が 2 の m 乗

個(2m,m は正の整数)とする。このとき,得られる振幅スペクトルにおける周波数間隔が fs/2mで与

えられることを考慮して,全データ数 2mを十分に大きく取る。この状態を(d)に示す。

e) 2m 個からなるデジタルデータに対して高速フーリエ変換(FFT)を行い,周波数ごとに得られた複素

数値の絶対値を振幅スペクトルとする。

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Z 2354:0000

表 A.1―パルス波による減衰係数の測定に用いるエコー

減衰測定方法 測定に用いるエコーの高さ 8.1 対比試験片を用いて試験片の減衰係数を測

定する方法

8.1.1 音速及び音響インピーダンスが試験片とほ

ぼ等しい対比試験片を用いる直接接触多重

反射法による試験片の減衰係数の測定

① 対比試験片の B1 ② 対比試験片の Bm ③ 試験片の B1 ④ 試験片の Bm

8.1.2 対比試験片を使用し,第 1 回底面エコーだ

けを用いる試験片の減衰係数の測定 ① 対比試験片の B1 ② 試験片の B1

8.1.3 対比試験片を使用する水浸多重反射法によ

る試験片の減衰係数の測定 ① 対比試験片の B1 ② 対比試験片の Bm ③ 試験片の B1 ④ 試験片の Bm

8.1.4 対比試験片を使用し,かつ,遅延体付き垂

直探触子を使用する直接接触多重反射法に

よる試験片の減衰係数の測定

① 対比試験片の B1 ② 対比試験片の Bm ③ 試験片の B1 ④ 試験片の Bm

8.2 対比試験片を用いない方法による試験片の

減衰係数の測定

8.2.1 対比試験片を使用しないで,水浸多重反射

法による試験片の減衰係数の測定 ① 試験片の B1 ② 試験片の Bm

8.2.2 対比試験片を使用しないで,遅延体を使用

する直接接触法による試験片の減衰係数の

測定

測定方法 A の場合 ① 遅延体-試験体界面からのエコーhA,

② 試験体の第 1 回底面エコーhB, ③ 試験体の第 2 回底面エコーhC 測定方法 B の場合 ① 遅延体-試験体界面からのエコーhA,

② 試験体の底面エコーhB, 遅延体だけに同じパルスを入射したとき

の遅延体の底面エコーhC 8.3 実体の試験体に対する直接接触法による減

衰係数の直接測定 ① 試験体の B1 ② 試験体の Bm

周波数

振幅スペクトル

f

AA( f )

AB( f )

AC( f )

VA

VB

VC

図 A.1―振幅スペクトル算出のためのデータ処理

(例:8.2.2 の測定方法 A の図 5 に示す 3 個のエコーの場合)

試験片

遅延体

遅延体付 探触子 振動子

VA VB VC

(図 5)

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Z 2354:0000

図 A.2―各エコーの振幅スペクトルを求める手順

(例:8.2.2 の測定方法 A の図 5 に示す 3 個のエコーの場合)

コンピュータによる波形の収録

各エコー信号の切り出し

0 点の追加と高速フーリエ変換

減衰係数の計算

VBVA VC

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Z 2354:0000

(a)d

データ数:Ns

VAVB

VC

対象とするエコー(b)

(c)

(d)

データ数:2m

~~

図 A.3―振幅スペクトル算出のためのデータ処理

(例:8.2.2 の測定方法 A の図 5 に示す 3 個のエコーのうち,VBの振幅スペクトルを求める場合)

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Z 2354:0000

附属書 B

(参考)

電磁超音波共鳴法(EMAR)による減衰係数の測定方法

序文

この附属書は,電磁超音波共鳴法による横波の減衰係数の測定方法について示す。

B.1 適用範囲

この附属書は,電磁超音波センサ(以下,EMAT という)によって金属材料に定在波(超音波共鳴)を

発生させ,その共鳴周波数に対応する横波の減衰係数を非接触で測定する方法について規定する。この方

法は,センサと試験片の接触が計測に与える影響を受けない利点をもつ方法である。

B.2 使用装置

使用する装置は次による。また,その構成を図 B.1 に示す。

a) 高出力パルス発生器

EMAT のコイルに高出力(500~1,000Vp-p)の矩形バースト波を印加できるパルス発生器を用いる。

b) 広帯域レシーバ

試験片中での多重反射からなる残響信号を受信できる広帯域レシーバを用いる。

c) 周波数分析装置

受信した残響信号の積分強度を振幅スペクトルとして測定できる周波数分析装置を使用する。

d) コンピュータ

振幅の周波数依存性から共鳴周波数を求め,このときの残響信号の時間減衰を指数関数近似して減衰係

数を求めるためにコンピュータを使用する。

図 B.1―電磁超音波共鳴法での装置構成 図 B.2―横波用電磁超音波センサの例

N

S

永久磁石

鋼片

長円形平面コイル

スペーサ

N

S

高出力パルス発生器

広帯域レシーバ

ダイプレキサー

プレ

アンプ

コンピュータ

コントロール データ

電磁超音波センサ

試験片

N

S

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Z 2354:0000

e) 電磁超音波センサ(EMAT)

矩形バースト波の発生及び多重反射による残響信号を受信するために EMAT を使用する。横波用 EMAT

の例を図 B.2 に示す。このセンサはトラック形に巻かれた平面コイルと一対の永久磁石からなる。永久

磁石の磁場強度は 0.5T(テスラ)程度が必要である。このセンサは,電磁気的な作用(ローレンツ力と

磁歪)によって近接した金属試験片内に,試験片表面と平行に振動し,板厚方向に伝搬する横波超音波

を非接触で送信し,また受信する。

B.3 測定方法

a) EMAT を試験片表面に当てて,コイルに高出力(500~1000 Vp-p)の矩形バースト波を印加して,超

音波横波を試験片内に励起する。バースト波の持続時間は,横波が板厚を一往復する時間の 5~30 倍程

度とする。

b) 励起し終った後,試験片内で多重反射波が重畳して構成される残響信号を同じ EMAT で受信する。残

響信号を十分細かな間隔でAD変換する。一定区間にわたって各時間における振幅を積算し,それをこ

の周波数での残響信号強度として記録する。

図 B.3―(a) 振幅スペクトルと(b) 減衰曲線の概念図

図 B.4―多重反射波が重畳して構成される残響信号とゲート信号(反射波の包絡線だけを示す)

c) 励起信号の周波数を一定間隔(例えば,100Hz 間隔)で変化させ,周波数毎の残響信号強度を振幅ス

ペクトルとして測定する。 振幅スペクトルには,図 B.3(a)のように共鳴ピークが等間隔に現れる。各ピ

時 間

ゲート信号

反射波1往復の伝搬時間

掃引

周 波 数

(a)

時 間

(b)

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Z 2354:0000

ーク近傍において振幅の周波数依存性をローレンツ関数(又はガウス分布)で最小二乗近似して,その中

心周波数を共鳴周波数 fnとする(n=1, 2, 3, …) 。n 次の共鳴周波数 fnは,試験片厚さ d 及び横波音速 v

と dnvfn 2/ の関係がある。

d) 共鳴周波数で励起した場合,多重反射波はすべて同位相で重畳して受信される。その結果,共鳴周波

数において得られる残響信号は時間とともに指数関数的に減衰する。図 B.4 のように狭いゲートを時間軸

上で掃引しながら各遅れ時間での信号強度を記録することによって図 B.3(b)に示す減衰曲線が求められる。

e) この減衰曲線を指数関数で近似して減衰係数(時定数)′を求める。′ の単位は[s-1]である。

f) 試験片中の音速 C [m/s]を考慮して,dB/m で示した減衰係数 α=8.68×106′ /C を求める。

B.4 拡散補正

電磁超音波共鳴法では,EMAT は非接触で作動するため,試験片との接触に伴うエネルギー損失が生じ

ない。しかし,圧電振動子を使用する直接接触法と同様に,回折による損失(拡散損失)は測定された減

衰係数に含まれる。この影響が無視できる高減衰材の場合を除き,回折損失に対する補正によって減衰係

数測定の精度が向上する。厳密な補正には,EMAT の形状と放射(又は受信)強度分布を考慮した補正曲

線を使用すべきであるが,近似的に EMAT の有効面積(コイルと永久磁石の共通部分の面積)と同じ面積

の円の半径を基準とした Seki らの理論補正式を用いることができる。さらに,片道の規準化距離が 7 以

下の場合には,2dB/(d2/4)の近似値を使用することができる(図 4 参照)。

このように求めた回折損失をαd として残響信号を構成する個々の反射波に適応する。各共鳴周波数に

おいて上記 B.3 e)で測定された減衰係数′ をもとに,測定状況を以下の手順で数値的に再現することによ

って拡散補正を行うことができる(図 B.5)。ここで,T0は横波が板厚を一往復するのに要する時間を,TB

は測定と同じ矩形バースト波の持続時間(≫T0)を示す。また,A は入射時の振幅を示す。

① 共鳴周波数を測定する。

② その周波数で減衰係数を測定し,これをα′ とする。

③ 回折損失を含まない減衰係数α0(<α′ )を仮定する。

④ 残響信号を数値的に再現する:

a. 各反射波の振幅をα0+αdに従って順次減少させる。

b. これらを,互いに T0だけ遅れて重畳させて多重反射波群を作成する。

c. 多重反射波群を,測定と同じ長さの狭いゲートを時間軸上で移動させながら積分して減衰曲線

を得る。

⑤ この結果に指数関数を最小自乗近似し,回折損失を反映した数値的な減衰係数α″ を求める。

⑥ α″ とα′ を比較する。許容される範囲内で一致していれば,上記③で仮定したα0を回折補正後

の減衰係数として決定する。一致しない場合には,上記③に戻って新たにα0を仮定して,α″ と

α′ が一致するまで④と⑤の計算を繰り返す。

参考文献

荻博次,本田崇,平尾雅彦,福岡秀和: "EMAR 法による超音波伝達減衰の絶対測定と金属材料結晶

粒径の非接触測定" 日本金属学会誌, Vol.58, No.9, 1994, pp.1021-1028.

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23

Z 2354:0000

図 B.5―電磁超音波共鳴法における拡散補正の方法

①,② fn と′ を測定

③ 0 (<′ )を仮定

⑥ ″ ′ ?

時間

exp(- ″ t)

0を決定

Aexp0T0)

Aexp0T0)

Aexp0T0) Aexp0T0) Aexp0T0)

0 T0 2T0 3T0 4T0 5T0

時間

TB

振幅

d

YES

NO

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1

解 1

JIS Z 2354:0000

固体における超音波減衰係数の測定方法

解 説

この解説は,規格に規定・記載した事柄を説明するもので,規格の一部ではない。

この解説は,財団法人日本規格協会が編集・発行するものであり,これに関する問合せ先は,財団法人

日本規格協会である。

1 今回までの改正の経緯 この規格は,1992 年に制定され,その後 2003 年及び 2008 年に確認されたが,改正されることなく 18

年が経過し,今回の改正に至っている。

今回,社団法人日本非破壊検査協会は,JIS 原案作成委員会を組織し,JIS 原案を作成した。

この JIS 原案を主務大臣である経済産業大臣に申出し,日本工業標準調査会で審議議決され,平成 XXXX

年で公示された。

2 今回の改正の趣旨 この規格は,1992 年に制定されたが,その後 18 年が経過しており,その間に引用している JIS の一部

が改正され,中でも JIS Z 2300 の改正に基づく用語の見直しが必要となった。また,測定方法,測定機器

などの進歩が見られる一方で,現在一般に使用されている広帯域パルス波を用いた方法には適用できない

という問題が浮き彫りになってきた。このような状況を考慮して,現在一般に広く使用されている超音波

探傷試験方法に整合した超音波減衰係数の測定方法が必要であることから,このたび改正することとした。

まず改正案のドラフトを作成するために,社団法人日本非破壊検査協会の標準化委員会の元に WG(主査:

横野泰和)を設けて,2007 年 10 月から 2009 年 2 月まで審議を行った。その結果をもとに経済産業省の工

業標準調査会(JISC)に改正の提案を行い,2010 年 2 月より JIS Z 2354 改正原案作成委員会(委員長:

三原毅)を開始して審議を行った。

主な改正点は,次のとおりである。 a) 引用 JIS のうち改正・再編されたものがあるため,最新の JIS 体系に整合して引用することとした。ま

た,用語に関しても,最新の JIS に合わせて変更した。

b) 遅延体付の探触子を用いる簡便な方法の規定を追加した。

c) 本体に規定する方法のすべてに対して,広帯域パルス波を用いて周波数成分ごとの減衰係数を測定す

る方法を附属書 A に追加した。

d) 探触子の接触状況の影響を受けない電磁超音波共鳴法による方法の指針を附属書 B に示した。

3 審議中に特に問題となった事項

今回の JIS Z 2354 の改正審議で問題となった主な事項は,次のとおりである。

a) 規格の名称 旧規格の名称は,「超音波パルス反射法による固体の超音波減衰係数の測定方法」であっ

たが,超音波パルス反射法に限らず電磁超音波共鳴法も適用することを記載したため,審議の結果,

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2

Z 2354:0000 解説

解 2

旧名称から「超音波パルス反射法による」を削除した。

b) 超音波送受信装置の性能 旧規格において引用していた JIS Z 2352 が改正されたため,内容の吟味を

行った。このとき次の議論が審議された。 ・ 増幅直線性に関して,旧規格に従った測定方法 A 以外に,ISO に従った測定方法 B 及び測定方法 C

も適用できるようにすべきであることで意見があったが,この場合は判定基準の取決めが必要と

なることが問題点として挙げられた。このたびの JIS Z 2352 の改正に当たって,本件の検討を実

施している,社団法人日本非破壊検査工業会の機材支部からの意見を参考にして,容易に実施可

能な方法を規定することとした。 ・ ゲイン調整器に関しては,JIS Z 2351 に規定されているが,これは装置メーカーが実施する内容を

規定していることから削除することが提案された。 ・ 高周波信号出力端子に関しては,アナログ装置に対応するため削除することが提案された。 ・ オシロスコープの規定に関しては,旧規格をそのまま残すことが提案された。

c) 探触子の周波数の測定 旧規格では探触子の周波数の測定に関する記載がなく,JIS Z 2350 に従って

測定することが提案された。JIS Z 2350 に規定されている周波数の測定方法は,手順がやや複雑であ

るため,他に簡便な方法も使用できるように検討することとした。

d) パルスの波数 旧規格では,パルスの波数を 10 以上と規定していたが,現在使用されている探傷器と

探触子の組合せで波数が 10 波以上となる場合は稀である。このことから,現状で一般的な値として,

パルスの波数を 5 以上と変更し,広帯域パルスのようにさらに波数が少ない場合については,附属書

A に別途規定することとした。

e) 附属書 A のパルス波の周波数 周波数が広帯域の場合,中心周波数から大きく外れると測定値の信頼

性を保つことができないため適用可能な範囲を設定する必要があるとの意見があった。検討した結果,

対象物の材質(減衰の程度)に依存するため,一般に共通した取決めが困難であるとの結論を得た。

その結果,A.3 測定方法の末尾に,「なお,試験結果には,A.4 に規定する振幅スペクトルを添付する。」

という表現を追記することとした。

f) 附属書 B の電磁超音波共鳴法 電磁超音波共鳴による方法は,非接触で測定できる利点があるが,装

置が限定されることとセンサごとにマスターカーブが必要であることなど,適用に際しての要求事項

を満足する必要があるため,規定とせずに参考とすることとした。

4 特許権などに関する事項

特になし。

5 適用範囲

この規格は,固体の 2MHz 以上の周波数における超音波減衰を測定する方法について規定する。したが

って,金属材料はもとより新素材であるセラミックス,繊維強化プラスティックにおける減衰係数の測定

にも適用できる。また,超音波の減衰係数は周波数に依存するため,基本的には狭帯域の周波数の信号に

対して適用するが,広帯域パルス波を用いてそれぞれの周波数成分における減衰係数を測定する方法につ

いても規定する。

6 規定項目の内容及び/又は主な改正点

6.1 適用範囲(箇条 1)

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3

Z 2354:0000 解説

解 3

旧規格では,超音波パルス反射法によって測定する方法について規定していたが,附属書 B で電磁超音

波共鳴法を適用することも記載したため,適用範囲から「超音波パルス反射法によって測定する」という

表現を削除した。

6.2 引用規格(箇条 2)

旧規格で規定していた引用規格のうち JIS G 4103 が廃止となり,その内容が JIS G 4053 に盛り込まれた

ことを考慮して引用規格を変更した。また,旧規格では JIS Z 2351 を引用規格としていたが,これは装置

メーカーが実施する内容を規定していることから削除することとした。

6.3 用語及び定義(箇条 3)

旧規格では,「裸振動子」を定義していたが,現在ではほとんど使用されることがないことから削除した。

一方,今回の改正において,「遅延体」を用いる方法を新たに追加したので,これを用語として追加した。

6.4 減衰係数を測定する試験対象物(箇条 5)

減衰係数の測定を行うために,規定の形状寸法に切り出した試験片を使用する場合,旧規格ではそれぞ

れの測定方法の中で規定していたが,その形状寸法や精度については共通した内容であるため,今回の改

正で新たに項目を起こして別途規定した。

6.5 使用機材(箇条 7)

a) 超音波送受信装置(7.1) 超音波探傷器を使用する場合,その性能に関して引用していた JIS Z 2352 が改正された。ここでは,増

幅直線性に関しては,旧規格に従った測定方法 A 以外にも,ISO に従った測定方法 B 及び測定方法 C が

規定されている。しかしながら,測定方法 B 及び測定方法 C においては,まだ判定基準が確立されていな

いため適用外とした。 ゲイン調整器に関しては,JIS Z 2351 に規定されているが,これは装置メーカーが実施する内容を規定

していることから削除することとした。

b) 探触子(7.2)

旧規格では振動子寸法を 5mm,7mm,10mm,14mm 又は 20mm と規定していたが,海外製品も含めて

他の寸法のものも使用できるように規定を削除した。また,旧規格では,パルスの波数を 10 以上と規定し

ていたが,現在使用されている探傷器と探触子の組合せで波数が 10 波以上となる場合は稀である。このこ

とから,現状で一般的な値として,パルスの波数を 5 以上と変更し,広帯域パルスのようにさらに波数が

少ない場合については,附属書 A に別途規定した。

c) 水槽(7.5)

旧規格では,多重反射のエコー高さを容易に取り扱うために,水槽の底側に探触子を沈めて試験体を水

面に下面(探傷面)だけが水につかるように配置する構造のものを例示していた。ところが実際に水浸超

音波探傷で用いられる水槽は,試験体を水没させるのが一般的であるため,水槽の底部に試験体を沈めて

測定できる水槽を紹介した。

6.5 試験片又は試験体の減衰係数の測定(箇条 8)

a) 対比試験片を使用しないで,水浸多重反射法による試験片の減衰係数の測定(8.2.1)

旧規格では,試験体の裏面が空気に面しているため反射率を 100%とすることができるのに対して,試

験体を水没させる配置に改正したため,裏面の水との境界面における反射率を考慮する方法を規定した。

また,裏面での反射損失を無視できる方法として,試験体の下面に発泡ポリスチレンを敷いて測定する方

法も併せて規定した。

b) 対比試験片を使用しないで,遅延体を使用する直接接触法による試験片の減衰係数の測定(8.2.1)

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4

Z 2354:0000 解説

解 4

遅延体付垂直探触子を用いると,試験体の底面エコーより手前に遅延体と試験体表面の境界面エコーが

観察される。ここで,この境界面エコー高さと試験体の第一底面エコー高さ及び第二底面エコー高さを測

定することによって減衰係数を求める方法を規定し,測定方法 A とした。また,試験体の第一底面エコー

高さと遅延体付垂直探触子を試験体に接触させないときの遅延体の底面エコー高さを測定することによっ

て減衰係数を求める方法を規定し,測定方法 B とした。

6.6 パルス波による減衰係数の測定方法(附属書 A)

本体では波数が 5 以上の狭帯域パルスを用いる場合について規定したが,最近では通常用いられる探触

子においても 5 波以下の波数のものが用いられようになり,さらには 1~2 波程度の広帯域パルスの探触子

が使用される場合もある。周波数帯域が広いということは,減衰の大きな材料中では,超音波が伝搬して

いる間に高周波成分が減衰してピーク周波数が低い側にシフトされる場合がある。このような場合には,

それぞれの周波数成分ごとの減衰係数を測定する必要があることから,本体とは別に附属書として規定し

た。

なお,A.3 測定方法の f)に記載したように,図 A.1 及び図 A.2 は,試験体がプラスチック,FRP など比

較的音響インピーダンスが小さい場合の例で,VAよりも VB の方が大きくなっている。試験体が鋼材など

の金属のように比較的音響インピーダンスが大きい場合は,解説図 1 のように,VAの方が VB よりも大き

くなる。

解説図 1―各エコーと振幅スペクトル(試験体の音響インピーダンスが大きい場合の例)

6.7 電磁超音波共鳴法(EMAR)による減衰係数の測定方法(附属書 B)

減衰係数の測定において,その測定精度に影響を及ぼす因子として測定する表面における伝達損失が挙

げられる。また,多重反射を用いる場合には,探触子が接触する面での反射損失も考慮する必要がある。

これらの影響をなくすためには,非接触で測定することが最も効果的であり,その手法として電磁カップ

リングにより超音波を送受信する電磁超音波法がある。なかでも電磁超音波共鳴法は理論的にも確立され

ており,横波の減衰係数を測定できる利点があることから,附属書としてその手法を紹介した。

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5

Z 2354:0000 解説

解 5

7 懸案事項

現在,超音波標準試験片(STB)の材質評価において,直接接触法を用いて材料の減衰測定を行ってい

るが,熟練者が特別な注意を払って実施しているのが実情である。今後は,測定者の技量に依存しないよ

うな電磁超音波(EMAT)を用いる方法を適用すべきであり,そのための規定が必要である。このため,

電磁超音波(EMAT)を実施するための装置の開発状況について調査を行ったが,現在のところ簡便なも

のがないため,本規格に電磁超音波(EMAT)を用いた測定方法を規定することができなかった。本件に

関しては,次回の改正の際に取り入れることを考慮して,今後も調査を続けることとした。

8 その他解説事項

本体 8.1.1 の a)の 1)において,直接接触多重反射の使用できる最大の次数を,式(1)により規定した。こ

れは,多重反射の次数が大きくなった場合に,超音波のビームの広がりにより試験体の側面の影響が現れ

るのを回避するために,R. L. Roderick らの文献(R. L. Roderick, et.al.:J. App. Phy., 23(1952), P.269)を参考

にして規定したもので,旧規格に記載されている式をそのまま引用した。

9 原案作成委員会の構成表

原案作成委員会の構成表を,次に示す。

JIS Z 2354 (固体における超音波減衰係数の測定方法) 原案作成委員会 構成表

氏名 所属

(委員会長) ○ 三 原 毅 富山大学

(幹事) ○ 横 野 泰 和 ポニー工業株式会社

(委員) 斉 藤 和 則 経済産業省 製造産業局鉄鋼課 清 田 健 二 財団法人日本規格協会 山 路 鉄 生 社団法人日本鋳鍛鋼会 ○ 平 尾 雅 彦 大阪大学 ○ 琵 琶 志 朗 京都大学 ○ 山 田 尚 雄 元神奈川県産業技術センター ○ 小 倉 幸 夫 ジャパンプローブ株式会社 矢 本 守 GE インスペクション・テクノロジーズ・ジャパン

株式会社 石 橋 淳 一 オリンパス株式会社 杉 元 幸 郎 菱電湘南エレクトロニス株式会社 髙 橋 弘 幸 日本クラウトクレーマー株式会社 八 木 隆 義 社団法人日本鉄鋼連盟 ○ 木 村 勝 美 木村超音波研究所 ○ 守 井 隆 史 JFE 大径鋼管株式会社 ○ 田 中 秀 秋 日鋼検査サービス株式会社 ○ 立 川 克 美 千葉県非破壊検査研究会 (事務局) 大 西 利 彦 社団法人日本非破壊検査協会 注記 ○印は,分科会委員を示す。 (執筆者 横野 泰和)