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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title 兵庫県下に於ける院内異状死並びに院外心肺停止症例の取り扱いに関 する研究調査 : 現状と問題点、改善策の提言(第三報) (平成19年度 社団 法人神緑会事業報告3) 著者 Author(s) 上野, 易弘 / 浅野, 水辺 / 菱田, / 長崎, / 木下, 博之 掲載誌・巻号・ページ Citation 神戸大学医学部神緑会学術誌,24:14-21 刊行日 Issue date 2008-08 資源タイプ Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 版区分 Resource Version publisher 権利 Rights DOI JaLCDOI 10.24546/81008004 URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81008004 PDF issue: 2021-03-25

Kobe University Repository : Kernel · ,改 善策の提言一(第 三報) 神戸大学大学院医学研究科社会医学講座法医学分野 神戸大学大学院医学研究科祉会医学講座法医学分野

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Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le

兵庫県下に於ける院内異状死並びに院外心肺停止症例の取り扱いに関する研究調査 : 現状と問題点、改善策の提言(第三報) (平成19年度 社団法人神緑会事業報告3)

著者Author(s) 上野, 易弘 / 浅野, 水辺 / 菱田, 繁 / 長崎, 靖 / 木下, 博之

掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大学医学部神緑会学術誌,24:14-21

刊行日Issue date 2008-08

資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文

版区分Resource Version publisher

権利Rights

DOI

JaLCDOI 10.24546/81008004

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81008004

PDF issue: 2021-03-25

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平成19年 度 社団法人神緑会事業報告(3)

兵庫県下 に於 ける院内異状死並びに院外心肺停止症例の取 り扱 いに関する研究調査

一現状 と問題点 ,改 善策の提言一(第 三報)

神戸大学大学院医学研究科社会医学講座法医学分野

神戸大学大学院医学研究科祉会医学講座法医学分野

兵庫医科大学法医学講座

上 野 易 弘(59年 卒)

浅 野 水 辺(H6年 卒)

菱 田 繁(38年 卒)

事業協力者 兵庫県健康生活部健康局医務課主幹兼監察医務係長 長 崎 靖

兵庫医科大学法医学講座 木 下 博 之

1.始 め に

ここ数年,毎 年一度は我 が国の死因究明制度の貧弱

さや,そ れに起 因す る犯 罪死体の見逃 しを指摘する報

道1)-3)が成 されている.平 成19年6月 には,大 相撲時

津風 部屋序 ノロ力士暴行死事件が起 こり,強 く社会的

関心 を惹いた.報 道 によれば,当 初の愛知県犬山警察

署 による検視 では事件性 を見抜 けず,又,病 院での頭

部CT検 査で は異常 が無 く,遺 体 を検案 した医師は「虚

血性心疾患」 と診 断 した とのこ とである.遺 族の求め

によ り新潟大 学で行 われた承諾解剖の結果,遺 体 には

多数の外傷 が認め られ,多 発外傷性 ショック死 と診断

されて暴行死 が明 らかになった とされる.解 剖せず死

体検案のみ に基 づいて行 う死 因診 断の困難 さと誤診 の

危険性,死 亡時画像診断の限界等,我 が国の死因究明

制度の欠陥が また して も露呈 した事件 といえる,

我 々は本報告第一報4)及 び第二報5)の 二回に亙 り,

兵庫県下の うち監察 医による行政解剖に よ り死 因が正

確 に診断 されている神戸市内(西 区 ・北区を除 く)に

於 ける院外(来 院時)心 肺停止症例(CPAOA例)の 現

状 を調査 し,そ の問題点並 びに改 善策 について考察 し

た.又,兵 庫県下の院内異状死 の うち,医 療 関連死 の

疑 いが持 たれ るか,病 院内で急死 して死因不 明である

等 の理 由によ り法医解剖(司 法解剖又 は行政解剖)が

行 われた事例 について,医 療行爲 別 ・解剖種類別の発

生件数 を集計 した.

今 回は,第 二報のデー タに平成19年 のデー タを加 え,

最近7年 間に於 ける兵庫県監察医務区域内(西 区 と北

区 を除 く神戸市 内)の 異状死体 数並 びに院外(来 院時)

心肺停止症例の現状,年 次推移等 を再集計 した.又,

兵庫県 内の院内異状死の法 医解剖例 につ いて も,平 成

19年 のデー タを加 えて再集計 した.

更に,医 療機関に係わる異状死の新 たな視点に よる

分析 として,こ の7年 間に監察医が検案 ・解剖 した異

状死体の中か ら,入 院中の患者 の病院内急死例(監 察

医務 区域外 で発生 した事例 を含 む)と,監 察医務 区域

内 にお ける死亡前24時 間以内に病院受診歴 のあ った病

死例 を抽出 して分析 した.

最後 に,院 内異状死の死因究 明制度 の試行 として平

成17年 度 よ り 「診療行爲 に関連 した死亡の調査分析 モ

デル事業」が開始 されてい るが,平 成19年 末までに評

価結果の概要 が公表 されている35例 について,そ の内

容 を分析 した.

以上の分析 によ り,本 調査研究の最終報告 とした.

2.対 象 及 び方 法

兵庫県 監察医の死 因統計6)を 基に,平 成13年(2001

年)か ら平成19年(2007年)ま での神戸市内(西 区 ・北

区を除 く)に 於 ける異状死体数並 びに院外(来 院時)

心肺停止症例(CPAOA)数 の推移 とその内訳 を集計

した.

次に,平 成13年 か ら19年 までの7年 間に,監 察医が

検案 ・解剖 した院内異状死(監 察医務区域外で発生 し

た事例 を含 む),即 ち,入 院中の患者の病院内急死例が

異状死体 として警察 に届 け られた後,監 察医による行

政解剖 が行 われた事例の年次別件数並 びに死因につい

て調査 した.

第3に,同7年 間の監察 医検案 ・解剖例の中から,

西 区と北 区を除 く神戸市 内における死亡前24時 間以内

に病院受診歴のあった病死例 について調べ た.

第4に,兵 庫県 内の院内異状死については,平 成13

14

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峯111糸」セ≦`こ'駈}ζ:lrドjI、已、 探}24巻2008イ ト

年か ら'1〈成19年 迄 の7イ ト問に.利1戸 大学 大学i院医学系

研究科('F成20'x=41Jよ り医学研究科〉社会医学講座

法医学 分野 と兵庫医科 大学法医学講座.兵 庫県監察医

務室で行った法医解剖(貢1法 解剖及び行政解 剖)の う

ち,医 療機関に関係 した死 亡,即 ち.医 療 行爲が死因

に関連 してい ると疑われた患 者死亡 並びに病院内での

患 痔の急 死について.医 療行爲別 ・解1㌣1」種類別の発生

件数 を集計 した.

第5に.平 成171=度 よ り開始 された 「診療行爲に関

連 した死亡の調 査分析モデル事 業」の 躯例の うち,亀F

成19年 度末までに評flili結果の概 要が公表 されている35

例(全 国の`ll:例数.う ち兵庫 県0)事 例は2例)に つい

て.そ の内容 を分析 した.

3.結 果

1)神 戸市 にお ける年間異状死体数 と院外心肺停止症

例 数

兵庫県監察医が平成13年 か ら平成19年 までの7年 間

に検案 した,神 戸 市(西 区 ・北ix:を除 く)に おける異

状死体(原 則 と して交通事故死を除 く)の 総数は8575

例であ り,そ の うち.医 療機関で心肺蘇 生が実施 され

たCPA(i/症 例は2475例(2996)で あった.

(1)イr2欠a「「,手多

異状死体 数 とCPAOA数 の ヒ年間の 年次推 移 を図

1に 示す.平 成19年 には1363件 の異状死体の検案が行

われ.こ の7年 間で最 も多か った.一 ・方.CPAOA数

も平成19年 に は428件 で前 ・年比 で2割 弱 増 加 した.

CPAOAが 区域 内異状死体 にIllめる割合 も3割 強 とな

り,'F成13年 と同程度で,例 年の割 合(27~29%)に 比

べて 多少高 くなった.

(2)i,.〔三タト'〔、・川1ff肇[[:り[kf夕1」びつ掬安」差ラヒ1り丙'7G

救 急 搬 送 先 病 院 か ら 異 状 死 体 と して 警 察 に 届 出 が な

さ れ.監 察 医 に よ る 死 体 検 案 がlfわ れ た 神 戸 市 内(西

区 ・北 区 を 除 く〉 の 院 外 心 肺 停IL症 例 委父に つ い て.搬

送 先 病 院 別0)で ト次 推 移 を 図2に 示 す.

'FI戊15イ「1ソ、iO:つ こ.峯申ノゴ1i;、'五iilヅ乏[1∫上くり丙1;完・杓11/fノ<

学 医 学 部!lll属病 院 ・兵 庫L【【し災 害 医 療 セ ン ター('ド 成15

年8月 開 設)が 一ヒ位3病 院 で あ り,こ の3医 療 機 関 で

i>体 の8割 をrLlめ て い る.兵 庫 県 災 害 医 療 セ ン タ ー が

平 成17年 に 最 多 と な っ て 以 降.減 少 傾 向 に あ る の に 対

し,神 戸 大 学 医 学 部 附 属 病 院 の 件 数 は 平 成19年 に は 前

年 比 で 約5割 増 加 し,そ れ まで の 漸 減 傾llllをlj兎し た.

・方,神1耐 ∫、「ノ:中央 市 民 病 院 は 兵 庫 県 災 害 医 療 セ ン

ター 開 院 翌 年eFI戊16年)に 件 数 が 大 き く減 少 し た も

の の.'F成17年 以 降 は 増 ノ川 し続 け て お り,'iる 成19年 に

は 兵 庫 県 災 害 医 療 セ ン タ ー 開 院 前 の 件 数 に 復 した.

(3)異 状 死 体 と 院 外 心 肺 停 止 事 例 の 詳 細

7年 間 の 全 異 状 死 体 並 び にCPAOA例 に 於 け る 死

因 の 種 類 を 図3に 示 す.死 因 の 種 類 の 内 訳 は.全 異 状

死 体 で は,病 死 及 び 【⊥1然死5025例(58.6%),自 殺1910

例(zz.3%),不 詳 の 死420例(4.9〔 琴》).溺 水313例

(3./`%),"Jv)1Lン 【くIII'(ノ)タトレ、i251f列(2.9(36),交 」[亘`」fl1改

176例(2.1%),窒 息166例(1.9%)の 順 に 多 か っ た.

CPAC)A例 で は,病 死 及 びrl然 死1564例(63.2%),自

殺340例(13.7%),交 通 事 故129例(5.29ぞ)),不 詳 の 死

102例(4.1%).溺 水93例(3.8%)と 窒 息93例(3.8%)

の 川頁に 多 か っ た.尚,CPAOA例 の 溺 水 は 殆 ど が 入 浴

死(浴 槽 内 溺 死),窒 息 は 殆 ど が 食 物 又 はlii融L物 の 誤 嚥

で あ る.

全 異 状 死 体 ・CPAOA例 の 何 れ に 於 い て も病 死 及 び

一b

O

[b

2

1

1

監察

医務区域内異状

死体数

⊃ 、 612

54H67ZZ9

947 4966一 一一 一一 一一.

1300 1L97136

編ILOK1139; .041104

355 3L5 3L3 3z7 353

[b

O

回b

O

[b

T

⊥T十⊥

 

墜瀾翻

'三

3G4428

[コ 監察区域内異状死

瞬 監察区域内CPAOA

-■ 一 兵庫県下異状死体

0

平 成13年 平 成14年 平 成15年 平成16年 平成17年 平 成1H年 平成19年

註1監 察医務 区域 内 異状 死体 に は院 外心肺 停止 症例 を含 む。

註2監 察医務 区域 は西 区 ・北区 を除 く神戸 市内 であ る。

図1兵 庫県に於ける全異状死体数並びに監察医務区域内異状死体数 ・院外心肺停止症例数(平 成13年 ~平成19年)

IJ

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0

平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成is年 平成19年

図2神 戸 市 内(西 区 ・北 区 を除 く)に 於 ける院 外心 肺停 止症 例 数 の搬 送 先病 院別 年 次 推移(平 成13年 ~平 成19年)

図3監 察医務区域内の全異状死体と院外心肺停止症例の死因の種類(平 成13年~平成19年 の合計)

自然死 の割 合が約6割 を占めて最 も高 く,次 いで 白殺

の割 合が高 いことが共通 してい る.CPAOA例 では病

死の他,交 通事故 と窒.息の割合が全異状死体での各割

合 よ り高 く,結 果 と して交通事故 と窒息が 含 まれ る

「不慮 の 外 因 死」 の割 合が 高か った(全 異 状 死体 で

11.3%,CPAOA例 で17.3%),一 ノ∫.CPAOA例 での

r1殺 の割 合は全異状 死体での割 合の約6割 程度 と低

かった.

2)監 察医 が検 案 ・解剖 した,入 院患者 の病院内急死

平成13年 から同19.年までの7年 間に.阪 神間 を除 く

兵庫県内に於いて入院中の患 者が病 院内で急死 し,異

状 死体 として警察に届 け られた事・例 のうち,監 察医が

検案 ・解剖 した事例の年次別件数を図4に 示す.こ れ

らには医療 行爲が死因に関係する疑 いがある事例 と,

死亡状況Lは 死因は【クく療行爲 とは関係 しない と思われ

たが,死 因が判断出 来ない等の理 山で異状死体 と して

届け られた事例 とがあ り,警 察の検 視の結果,事 件性

はない として司法解剖にな らなかった事例である.届

出件数は.平 成17年 までは最 多で も年聞5件 であった

が,平 成18年 に13件 に 急 増 し,平 成19年 も11件 で あ っ

た.

こ れ らの 死 因 に つ い て,比 較 的 件 数 の 少 な い 平 成13

年 か ら17年 ま で の5年 間 と,件 数 が 急 増 し た 平 成18年

以 降 と に 分 け て 検 討 した.平 成13年 か ら 同17年 ま で の

5'1=問 に9件 の 病 院 内 急 死 が 届 け られ て お り,死 因 の

内 訳 は}誤1嚥 に よ る 窒 息4f列,肺1(IL栓 塞 栓!.i三2例,急'1生

1:i:ifl[性心 疾 想、.脳 動 脈 瘤 破 裂,術 後 の 小 腸 軸捻11{云各1

例 で あ っ た.'ド 成18年 お よ び 同19年 に は 計24件 の 病 院

内 急 死 が 警 察 に 届 け ら れ て い る が.死 因 の 内 訳 は 急 性

14

監12

護1・

of・

窺 ・

葎 ・数2

0平成1:3年平成14年 平成i:,年平成is年 平成17年 平成18年 平成19年

註 監察医務区域外の届出事例を含む。

図4警 察 に 届 け られ て監 察 医 解 剖 され た入 院 中 急 死 例 の

年 次 推移(平 成13年 ~平 成19年)

層一

謂.

し燕

7

一'蕪 一

翠,

曹一

1一

,

蕊 ζし ,.懸 ,.,.

1 1

16一

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神緑会学術誌 第24巻2008年

心臓死9例,腹 膜 炎2例,肺 血栓塞栓1例 の他,そ の

他 の病死3例,不 詳の病死2例,外 因死2例 が認め ら

れたが,誤 嚥窒息は認め られなかった.尚,外 因死か

病死か判断で きない死亡が5例 あ り,内2例 は診療行

爲 が関連 した死亡の調査分析モデ ル事業の調 査対象 と

なった.

3)監 察医が検案 ・解剖 した,西 区 ・北区 を除 く神戸

市内に於 ける死亡前24時 間以内に病 院受診歴 のある

病死

体調不良 を訴 えて病院を受診 し,帰 宅後間 もな く,

或いは退院後間 もな く自宅 で死亡 した場 合,遺 族 は医

療行爲 に不審 を抱 く場合がある.そ の ような事例 は医

事紛争になる可能性がそ うでない事例 よりも高 くなる

と考え られ るので,解 剖に よる死 因調査を行 ってお く

事が 望 ま しい と言 え る.そ こで,兵 庫 県監察 医の検

案 ・解剖例の うち,西 区 ・北 区を除 く神戸市内で発生

し,死 亡前24時 間以 内に病 院受診歴のある死亡例 につ

いて調査 した.

平成13年 か ら同19年 までの7年 間に,入 浴 中の急死

を除 く病死 例で,死 亡前24時 間以 内 に病 院受診 歴が

あ った例 は計117例 で,こ の うち病院へ搬送 され た例

(CPAOA例)は48例 であった.

年次別の発生数を見ると,平 成13年13例(監 察医務

区域内の全検案例に占め る割合1.1%),同14年12例(同

1.0%),同15年12例(同1.1%),同16年11例(同0.9%),

同17年16例(同1.2%),同18年19例(同1.5%),同19年

34例(同2.5%)で あ り,平 成19年 を除 くと,年 間の全

検案数の約1%が 死亡前24時 間以 内に医療機 関を受診

していた事例であった,

解剖 に より判明 した死因別割 合を図5に 示す.心 疾

患が45%で 半数近 くを占め,肺 炎が12%,大 動脈疾患

7%,頭 蓋内出血 ・胃腸疾患 ・肝疾患が各 々6%で あっ

た.こ の うち,心 筋梗塞 による心破裂な ど,医 療機 関

受診時に死 因となる疾病が発症 していた可能性がある

ものが5~10%認 め られた.

4)兵 庫県内の院内異状死(法 医解剖が行われた事例)

平成13年 から平成19年 迄の7年 間に,兵 庫 県内二大

学 の法医学教室並びに兵庫県監察医務室で法 医解剖 が

行われた院内異状死(医 療行爲 関連死 と院内急死)は,

計133件 であった.そ の 医療行爲 別 ・解剖種類別件 数

を表1に 示す.

剖検前 の時点で死亡 との関連が疑 われた医療行爲等

の種類別件数 は,突 然死が43件 で最 も多 く,手 術23件,

註 監察医務区域は西区 ・北区を除く神戸市内である。

図5監 察医務区域内の異状死体のうち,死 亡前24時 間以内

に病院受診歴のあった病死者の死因の内訳(平 成13年~平成19年 の合計)

表1兵 庫県に於ける院内異状死(法 医

解剖実施例)の 医療行爲別件数

(平成13年 ~平成19年)

解 剖医療行爲 件数

司法 行政

手術 23 15 8

麻酔 4 1 3

薬一剤 9 6 3

播管 3 3 U

検査 3 2 1

カ テ ー テ ル 13 8 5

誤診 ・治療不作爲 7 2 5

管理不注意 22 7 IJ

処置 3 2 1

分娩 3 2 1

突然死 43 3 40

合計 133 51 82

患者管理不注意22件 が続 く.以 下,カ テーテル13件,

薬剤9件,誤 診 ・治療等不作爲7件,麻 酔4件,橘 管 ・

検 査 ・処置 ・分 娩が各3件 の順であった.

解剖種別 と医療行爲 との関係で は,司 法解剖が行わ

れた事例 は手術 が最 も多 く,次 いで カテーテル,患 者

管理不注意,薬 剤 の順で多かった.行 政解剖が行われ

た事例の半数は突然死で,次 いで患者管理不注意が多

かった.

民事上の責任 追及(債 務 不履行 ・不法 行爲等 による

損 害賠償請求)に 関 しては情報が な く,不 明であ る.

尚,現 在 も捜 査中或いは裁判継続中の医療過誤死事

件が含 まれていることか ら,事 件の特定 を避 ける爲,

個 々の事例の詳細 は伏せた.

5)診 療行爲に関連 した死亡 の調査分析 モデル事業

平成17年 度 よ り開始 された 「診療行爲 に関連 した死

亡の調査分析モデル事業」は,平 成19年 度末まで に全

17

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国で64例 が受 け付 け られ,35例 については評価結 果の

概 要 が 公 表 され て い る(http://www.med-model.jp/

kekka.html).評 価 結果 の概 要が公 表 され てい る35例

につい て,そ の内容 を分析 した.

対象死者の年齢分布 は0-9歳3例,10歳 代1例,20

歳代2例,30歳 代3例,40歳 代4例,50歳 代1例,60歳

代12例,70歳 代8例,80歳 代1例 で,性 別では男性17

例,女 性18例 であった.

死亡 との関連が疑 われた医療行爲 は,手 術 中の心停

止が6例,術 後の急変が10例,カ テーテル検査関連が

7例,内 視鏡関連が2例,入 院中の急変が5例 であ り,

その他 に経鼻チューブ誤挿入,腰 椎穿刺および神経 ブ

ロ ック後の急死 ,分 娩後の新生児死亡,薬 剤過剰投与

が各1例 であった.

これ ら35例 の うち,地 域評価委員会 において,実 施

された医療行爲 に問題はない と判 断されたのは18例 で

あ る.何 らかの問題 を指摘 された17例 は,手 術 関連が

4例,術 後の急変が7例,カ テーテル検査 関連が3例,

経鼻チ ューブ誤挿入,神 経ブロ ック後の急変,分 娩後

の新生児死亡 がそれぞれ1例 であった.入 院 中の急変

や内視鏡 関連 で医療行爲 との関連 を指摘 された例 はな

か った.

4.考 察

1)兵 庫県に於ける異状死の死因調査制度

兵庫県における異状死の法医解剖制度は,① 犯罪死

体及び犯罪の関与が疑われる死体(変 死体)に 対する

司法解剖(神 戸大学及び兵庫医科大学の法医学教室で

実施 刑事訴訟法第168条 等に基づ く)② 神戸市(西

区 ・北区を除く)に おける異状死体(原 則として交通

事故死 を含まない)を 監察医が解剖する狭義の行政解

剖(死 体解剖保存法第8条 に基づ く)③ 監察医制度

のない地域(神 戸市以外の兵庫県全域.神 戸市西区 ・

北区を含む)に おける承諾解剖(神 戸大学 ・兵庫医科

大学の各法医学教室と兵庫県監察医務室で実施.死 体

解剖保存法第7条 に基づ く)か らなり,2大 学法医学

教室教員 と兵庫県監察医の計7名(平 成19年3月 末現

在.非 常勤監察医を除 く)の 法医学の医師により,こ

れらの法医解剖が行われている.

兵庫県では近年,多 数の死者が同時に発生 した事

件 ・事故 として,平 成7年1月 の阪神淡路大震災に続

き,平 成17年4月 にはJR福 知山線1央速列車脱線事故

が発生 した.兵 庫県監察医は両方の死者の死体検案を

行い,特 に福知山線快速列車脱線事故の発生現場は監

察医務区域外ではあったが,死 体検案活動に参加 し,

2大 学法医学教室員と共に専門医として法医学的に精

確な死体検案を行い,事 件の捜査と真相究明に貢献す

ると共に,遺 族への説明責任 を果たせたと考えてい

る.法 医学が社会的危機管理と人権擁護に貢献する実

践医学である7)ことを具現 し,監 察医制度の有用性 を

社会に示せたものと自負 している.

2)神 戸市に於 ける院外(来 院時)心 肺停止症例の現状

平成19年 の神戸市に於 ける院外(来 院時)心 肺停止

症例は前年 より64件 増加 したが,発 生状況は概ね例年

通 りであ り,7年 間の通算結 果 も本調査報 告の第一

報4)並 びに第二報5)に 述べ た現状 と変 わ りなかった.

高齢社会の進行 に伴 う総死亡数並びに在宅死の増加 と

共 に監察 医が検案 する異状死体 は年 々増 え続 けてお

り,異 状死体 の3割 を占めるCPAOAも 今後増加 して

い くこ とが予想 される.CPAOAを 受 け入 れる病院の

医師,監 察医共 に一層の負担増 は避け られそ うもない

3)警 察に届 けられた入院患者の病 院内急死の現状

監察医が検 案 ・解剖 した入 院患者 の急死例 に関 し

て,医 師法第21条[異 状死体等の届 出]に 基づ く所轄

警察署への届 出は,平 成16年 に微増 したあ と,平 成18

年以降急激 に増加 してい る.医 師法第21条 に関 して

は,平 成16年4月13日,『 医師法第21条 にい う死体 の「検

案」 とは,医 師が死 因等 を判定するために死体 の外表

を検査するこ とをいい,当 該死体が 自己の診療 してい

た患者の ものであるか否かを問わない』 とした東京都

立広尾病 院事件 に対す る最高 裁判所の判決が 下 され

た.ま た,こ の判 決を受け,福 島県立大野病院におい

て平成16年12月 に腹式帝王切開手術 を受けた女性が死

亡 した件に関 し,手 術 を担 当 した産婦人科医が平成18

年2月18日 に医師法第21条 違 反等で逮捕 される とい

う,い わゆる福 島県立大 野病院事件が発生 している.

このような,臨 床 医が強い関心 を寄せ ざるを得 ない医

療事故 に関す る刑事事件 ・裁判が,入 院患者の急死 を

異状死体 と判断す るか否 かについて医師に慎重 な対応

を促 し,平 成18年 以降の届 出の急増 に繋が っている可

能性が考え られる.

監察医が検案 ・解剖 した入院患者急変時の警察届出

事例の死 因は,平 成13年 か ら同17年 までの5年 間は,

平成16年 に急性心臓死 と脳動脈瘤破裂が各1件 あった

他 は,専 ら誤嚥窒息 と肺血栓塞栓症であった.一 方,

平成18年 および同19年 に届 けられた24件 例中9例 の死

因 は虚血性心疾 患や心筋症 といった急性心臓死 であ

り,医 療行爲 と関係 していなか った.届 出のあった患

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神緑会学術誌 第24巻2008年

者の死 亡状況か ら推測 して,届 け られた事例 には医療

行爲 に関連 した死因 を疑 う必要の ない事例 も含 まれて

いることよ り,医 療機 関が慎重 を期 して警察への届 出

を行 った もの と考 えられ,一 連の医師法第21条 関連事

件へのやや過剰 な反応 が伺 われた.一 方で,解 剖 だけ

では病死 とも外 因死 とも判断 を下 しえなかった事例 が

5例 認め られ,医 療関連死 において解剖で証 明出来 る

事柄 には限界があ り,死 因と医療行爲 との関係の判断

が困難 な事例には,死 亡に至 るまでの臨床経過 も含め

た総合 的な調査分析の必要性が示唆 された.

4)監 察医務区域内の異状死体の うち,死 亡前24時 間

以内に病院受診歴 のある病死の現状

監察医の年間検案件数の うち1%強 は,死 亡前24時

間以内 に病院受診歴が あった.死 因は心疾患が45%を

占め,そ の うちの約1割 が心筋梗塞破裂 による心 タン

ポナーデであった.次 いで肺炎,大 動脈疾患が多かっ

た.こ の ことか ら,こ の ような事例の一部は,「直前 の

医療行爲は患者の死亡に対 して責任 も関係 もない」 と

はいえない ことが明 らかになった.

,厚 生労働省が第三者機関での調査分析 を目指 してい

る診療行爲関連死亡は入 院患者が対象で,退 院後若 し

くは受診後 自宅 で死亡 した事例 は対象 とな らない.し

か しなが らこの ような事例 も,広 い意味では医療関連

死 と考え られる場合 もあ り得 る.そ の中で最 も多いの

が,胸 部不快感 を訴 え病院を受診 するも何 らかの理由

で帰宅 し,自 宅に於いて心破裂に基づ く心 タンポナー

デを発症 した急性心筋梗塞事例である.心 破裂 は,壊

死部分の範 囲が小 さく,全 体的な心臓収縮能力が損 な

われていない場合 に発症 し易 く,早 期発見及び治療 に

よって事 な きを得る可能性があるため問題 となる場合

が ある.そ の他,種 々の検査や手術 の後,自 宅 で死亡

してい るのが発見 される場合があ り,時 と して医療行

爲 との関連が問題 とな り,医 事紛争に発展 しうる.

又,頻 度は低いが,死 亡前24時 間以内に受診歴が な

くて も,医 療行爲 との関連について詳細 な検討が必要

と思 われ る事例 も認め られる.例 えば,注 腸検査 を受

けて帰宅後,自 宅で死亡 しているの を発見 され,解 剖

の結果 絞拠性 イ レウスが認 め られた例 や,肺 癌 に対

して放射線療法が実施 され癌細胞がほぼ消失 して数年

後,気 管支 に生 じた円形の潰瘍が肺動脈 と交通 し,自

宅 にて大量喀血 によって死亡 した例 などであ る.

この ような,医 療機 関が死亡状況 に何 らかの関与 を

した事例 は,解 剖 によ り死因 を医学的に明 らか に して

お くことが,医 事紛争を防 ぎ,又,医 事紛争 になった

として も,医 療機 関 と遺族 が互いに 自己に有利 な死 因

を科学的根拠無 しに主張 し合 うと言 った,死 因を巡 る

不毛 な論争 を避けるこ とに繋が るのである.事 態の発

生 当初 に手 間を惜 しまず に解剖 を行 ってお くことが,

結局 は問題解決 に要 する多大な時間 と労力,金 銭 の節

約 に繋が るのである.

5)兵 庫県下 にお ける院内異状死(医 療 行爲関連死及

び院内急死)の 現 状

兵庫県下で発生 した院内異状死 のうち,法 医解剖 が

行われた院内異状死 を分析す ると,入 院患者 の突然死

が最 も多 く,一 方,発 見当初 に死亡 との関連が疑われ

た医療行爲別件数では手術並 びに患者管理の不注意,

カテーテル,薬 剤,誤 診 ・治療不作爲が多かった.

各事例 に行 われた解剖種別で分類す ると,死 亡状 況

か ら見て医療行爲 と関連する可能性 は低い と推測 され

る突然死や患者管理不注意 の事例 には行政解剖が行 わ

れる事が多かった.一 方,「 手術」や 「カテーテル」,

「薬剤」等 の医療行爲 との直接 の関連 が疑われた院内

異状死には,行 政解剖 よ りも詳細 な剖検 と検査が実施

され る司法解剖 が行 われ る傾 向が認め られた.そ の理

由は,医 療行爲 と死 亡 との 因果関係 の証明並 び に過

誤 ・過失の有無 ・程度の判断を厳 密に行 う必要が ある

こと,剖 検結果に よっては医師の刑事責任 を追求す る

必要が生 じること等 にあると考 えられる.

6)兵 庫県下 にお ける院内異状死並びに院外心肺停止

症例の取 り扱 いに於 ける問題点 と改善策

院外心肺停止症例 の取 り扱いに於 ける問題点並 びに

改善策の提言 は本報告第一報4)と 第二報5)で 述べ た通

りである.異 状死体 の科学的で正確 な死 因究明 には高

精度 の解剖 を実施で きる制度 を構築 す る以外 にない,

我 が国の死 因究明制度の貧弱 さと危 うさについて多

くの法 医学者等 が警鐘 を鳴 らして きた8)-10)に もかか

わ らず,剖 検率 は年 々低下 している とい う.こ のよう

な現状 を改善す る爲,最 近,死 体 の画像診断に よって

死 因 を調べ る方法(死 亡 時画像病理 解剖,Ai:Auto-

psyimaging)が 解剖 の代替手段 或い は補助 手段 と し

て取 り入れ られつつある11).CT等 の画像診断で全て

の死 因が判明す る訳で はな く,死 因調査 に於 ける解剖

の重要性が低下す ることはあ り得ないが,診 断上の限

界 を理解 した上 で利用すれば 遺族の解剖承諾 が得 ら

れない ような異状死体の死 因診断にある程度の有効性

は期待出来 る.全 国規模の死 因調査制度 の創設 が直 ぐ

には可能でない以上,死 亡時画像診断の導入は当面の

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姑 息的手段 として有効 であろ う.

我が 国の死 因究明制度 の抜本的改革は,平 成20年6

月に 日本法医学会が提言 した各都 道府県単位 の死因調

査事務所(仮 称)の 設置12)等,国 が主体的に運営する

死 因究明制度 を実現 しない 限 り,問 題点が改 善される

見 込み は ない.監 察 医制度 が存在 す る地域 に於い て

も,東 京都 を除けば医師等の人材不足 と地方 自治体 の

財政危機 は深刻 であ り,そ の将来 は決 して安泰ではな

い.特 に,法 医学者や病理学者等 ,死 因究明制度を担

う人材 は一朝一夕 には育 た ない.国 の主 導13)の 基 に

必要 な人材 の育成 から始め ることが,我 が国の将来の

死因究明制度 に とって喫緊の課題 である.

7)診 療 行爲 に関連 した死亡の調査分析 モデル事業

診療行爲 に関連 した死亡事例の概 要が公表 された35

例 に関する当該評価委員会 の評価結果は,手 術 に関係

ない入 院中の急変や内視鏡 関連の事例 については医療

行爲 との関連性 を否 定 した一方で,手 術 中及 び術後の

急変 では過半数 において手技や術後観察の不備 を指摘

している.一 般 に,起 こった事 象について後か ら振 り

返 って検証す ると厳 しい意見が出やす い爲,評 価 委員

会 においては,発 生時の状況な どを十分 に鑑みた公平

な判断が要求 されている.従 って,公 表事例の約 半数

について,医 療行爲 に何 らかの不備が指摘 された とい

う事実 は,専 門家 による評価委員会の評価が同様事例

の再発 防止のために有用である事 を示す ものである と

思われ る.

厚生 労働省 は平成20年4月,医 療死 亡事故の原 因究

明 ・再発 防止 を行い,医 療 の安全の確保 を 目的 とす る

国の組織(医 療安全調査委員会[仮 称])の 創設 を主眼

とした 「医療 の安全の確保 に向 けた医療事故による死

亡 の原 因究明 ・再発防止等 の在 り方に関する試案 一

第三次試案一」 を発表 した.こ の中で,医 療死亡事故

の再発 防止,医 療に係 る透明性の向上等 を図るため,

医療機 関か らの医療死亡事故の所管大 臣に対す る届出

を制度化す ると共に,医 師法第21条 を改正 し,医 療機

関が届 出を行 った場合 にあっては,医 師法 第21条 に基

づ く異状死の届出は不要 とする とし,福 島県立大 野病

院事 件 以降 の混 乱収拾 を 目指 してい る.し か しなが

ら,医 療安全調査 委員会 は,医 療 関係者の責任 追及 を

目的 と した ものではない とする一方で,故 意や標準的

な医療行爲 か ら著 しく逸脱 した と考 えられる重大 な過

失があ った と地方委員会 が認めた もの につ いては,捜

査機 関 に届 け出を行 う事 も明示 してい る.こ れに対 し

て幾つかの学会が,医 療事故 を専 門的に評価する第三

者機関の創設 には賛成す る立場 をと りなが ら,捜 査機

関への届 出基準が曖昧 であるなどと反対意見 を述べて

いる.そ の爲,実 際に どの様 な形で第三者機関が構築

されるかは,未 だ不透明 と言 わざるを得ない

5.終 わ り に

剖検 に よる死因解明は,一 般社会 に対 して は,死 者

と遺族 の人権擁護 と共 に,死 因統計の正確性の向上,

伝染病 ・中毒等 の発見 と拡大予 防等の社会医学 ・公衆

衛生上 の貢献並 びに犯罪死体 ・事故死体の発見 や事故

の再発防止等 の司法行政上の貢献が大 であ る.

医学 ・医療 との関係 では,院 外心肺停止症例 と院内

異状死 を剖検 し,死 因 を解明す ることは,医 療現場で

の医師の診断 ・治療等 の妥当性 を検証 し医師教育 ・研

修 に有用である と共に,死 因を巡る医師 ・遺族間紛争

の 回避,救 急医学 に関す る調査研 究等 に も有 用 であ

る.監 察医 ・法医学者 にとって も剖検診断能力の向上

に資する ものである,実 際,兵 庫県監察医は神戸市 に

於 いて救 急医 と症例検討会 を行い,CPA症 例 に対す

る医師の判断や治療方法の妥当性の検証 と,監 察 医の

剖検診断の臨床医学的評価 を行 い,互 いの専門技 能を

高めるこ とに役立 てている.

死因究明 は医学 ・医療 の向上 と進歩に貢献出来 ると

共 に,生 者 と社会の健康危機管理 と安全保障に役立つ

のである.専 門医による検案 ・解剖 に基づ く死 因究明

制度の全国規模 での施行が,安 全 ・安心 な日本社会の

構築に繋がるのであ る.

文 献

1)読 売新 聞(大 阪),平 成19年5月17日 朝刊

2)朝 日新 聞(大 阪),平 成19年11月23日 朝刊3面

3)神 戸新 聞,平 成20年2月10日 朝刊

4)上 野易弘 ・菱 田繁(2006):平 成17年 度社団法人神

緑会事業報告(3)兵 庫県下に於 ける院内異状死並 び

に院外 心肺 停止症例 の取 り扱 い に関す る研 究調査

一現状 と問題点,改 善策の提言一(第 一報)神 戸

大学 医学部神緑会学術誌,22,17-20

5)上 野易弘 ・菱田繁(2007):平 成18年 度社団法人神

緑会事業報告(3)兵 庫県下に於け る院内異状死並び

に院外心肺 停止症例 の取 り扱 いに関す る研究調査

一現状 と問題点 ,改 善策の提言一(第 二報)神 戸

大学 医学部神緑 会学術誌,23,14-18

6)兵 庫県健康生活部健康局医務課(2001~2007):兵

庫県監察医務死 因調査統計年報 神戸

7)前 田均(2004):実 践科学 としての法医学 科学,

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神緑会学術誌 第24巻2008年

74(11),1292-1295

8)福 永龍繁 ・上野易弘 ・中川加奈子他(1988):兵 庫

県下における異状死体の検案結果(1986年)一 監察

医業務 区域 とその他の区域 との比較一 日本 法医学

雑誌42,431-442

9)溝 井泰彦 ・柳田純一 ・佐藤喜宣他(1994):日 本の

死 因調査 の現状 と問題 点 日本 医事新 報,3639,

28-34

10)中 根憲一(2007):我 が国の検死 制度一 現状 と課題

一 レファ レンス 平成19年2月 号 ,96-125

11)朝 日新聞(大 阪),平 成20年6月18日 朝刊3面

12)日 本法医学会 「死因究明制度のあ り方 に関する検

討委員会」(2008):提 言:日 本型の死 因究明制度の

構 築 を目指 して(中 間報告)死 因調査事務所(仮

称)の 設 置 に つ い てhttp://plaza.umin.ac.jp/leg-

almed/siinkyuumei.htm

13)前 田均(2003):包 括的検死 ・剖検 システム と臨床

法医学の必要性一法医学実務お よび賠償科学 的観点

か らの一私見一 賠償科学,29,46-50

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