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第1幕 第1場 とある農場の入り口 奥には野原があり小川が流れている その岸では洗濯女たちが洗濯の支度をして ジャンネッタとコーラス 刈り取り人のすてきな慰めは 太陽がかんかんに照ってるときに ブナの木の下 あの丘の麓で 休んで一息つくこと! 昼間の激しい熱気は 木陰や小川が和らげてくれる けれど 燃え立つ愛の炎は 木陰も小川も和らげることはできぬ 幸運なのさ 刈り取り人は そんな用心せずとも良いから! ネモリーノ (本を読んでいるアディーナを見つめながら) 何てきれいなんだ 何てかわいいんだ! 見れば見るほど好きになる... だけど彼女の心に おいらにゃ無理なんだ ほんのわずかな愛の気持ちを吹き込むことだって 彼女は読んで勉強して学んでいる... 何も知らないことなんてないんだ... おいらはいつまでも馬鹿で ため息つくことしか知らないんだ 誰かおいらの心を磨いてくれないか? 誰がおいらに愛を教えてくれないか? アディーナ (笑って) すてきだわ このお話! 不思議な冒険なのよ ジャンネッタ 何を笑ってるの?話してみてよ あなたの読んでる面白い話を アディーナ これはトリスタンの物語よ! 愛のお話なの コーラス 読んで、読んでみて ネモリーノ (彼女のとこに そっと そっと 近付いて仲間に入れてもらいたいなあ) アディーナ 「冷淡なイゾルデのことを ハンサムなトリスタンが愛しました けれど望みのかけらもありませんでした 彼女を得られる日の そこで彼が訪ねたときに 賢い魔法使いのもとを 魔法使いは彼に与えたのです 壺の中から とある愛の妙薬を おかげで美しいイゾルデは

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�第1幕

第1場

とある農場の入り口 奥には野原があり小川が流れている その岸では洗濯女たちが洗濯の支度をして

ジャンネッタとコーラス

刈り取り人のすてきな慰めは

太陽がかんかんに照ってるときに

ブナの木の下 あの丘の麓で

休んで一息つくこと!

昼間の激しい熱気は

木陰や小川が和らげてくれる

けれど 燃え立つ愛の炎は

木陰も小川も和らげることはできぬ

幸運なのさ 刈り取り人は

そんな用心せずとも良いから!

ネモリーノ

(本を読んでいるアディーナを見つめながら)

何てきれいなんだ 何てかわいいんだ!

見れば見るほど好きになる...

だけど彼女の心に おいらにゃ無理なんだ

ほんのわずかな愛の気持ちを吹き込むことだって

彼女は読んで勉強して学んでいる...

何も知らないことなんてないんだ...

おいらはいつまでも馬鹿で

ため息つくことしか知らないんだ

誰かおいらの心を磨いてくれないか?

誰がおいらに愛を教えてくれないか?

アディーナ

(笑って)

すてきだわ このお話!

不思議な冒険なのよ

ジャンネッタ

何を笑ってるの?話してみてよ

あなたの読んでる面白い話を

アディーナ

これはトリスタンの物語よ!

愛のお話なの

コーラス

読んで、読んでみて

ネモリーノ

(彼女のとこに そっと そっと

近付いて仲間に入れてもらいたいなあ)

アディーナ

「冷淡なイゾルデのことを

ハンサムなトリスタンが愛しました

けれど望みのかけらもありませんでした

彼女を得られる日の

そこで彼が訪ねたときに

賢い魔法使いのもとを

魔法使いは彼に与えたのです 壺の中から

とある愛の妙薬を

おかげで美しいイゾルデは

Page 2: L'elisir d'amore Atto1(JP)

彼からもう決して逃げられなくなったのです」

全員

こんな完璧な妙薬の

こんな不思議な効能の

作り方が分かればいいのにね

作れる人を知っていればいいのにね!

アディーナ

ほんの一口すすっただけで

その魔法の小さな壺から

たちまちその頑なな心は融けて

イゾルデは優しくなりました

変わったのです 一瞬にして

その冷淡な美人は

トリスタンの恋人に

生きたのです トリスタンに貞節に

彼はその最初の一口を

永遠に祝福し続けたのです

全員

こんな完璧な妙薬の

こんな不思議な効能の

作り方が分かればいいのにね

作れる人を知っていればいいのにね!

第2場

ドラムの音がして皆立ち上がる ベルコーレが到着する

兵士の一隊を率いて 兵士たちは

奥に整列する 彼はアディーナに近づき 挨拶して

花束を差し出す

ベルコーレ

あの美しいパリスが

リンゴを一番きれいな娘に捧げたように

俺の最愛の娘さんよ

俺は君に捧げるよ この花束を

だがあいつよりも恵まれていて

あいつよりもっと幸せだな 俺は

このプレゼントへのお返しに

持ち帰れるんだからね 君のきれいな心を

アディーナ

(女たちに)

(この男の方 紳士ね!)

ジャンネッタとコーラス

(ええ 本当に)

ネモリーノ

(おい!こりゃまずいぞ!)

ベルコーレ

分かるのさ そのかわいい顔で

俺が君の胸に傷をつけたことくらいは

だがそれは驚くべきことじゃないんだ

俺はイケてるし 俺は軍曹だ

どんな美女も俺には抵抗できないのさ

この羽根飾りを見ればな

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マルスに屈服しただろ 戦の神に

あの愛の神の母親だって

アディーナ

(なんて紳士なの!)

ジャンネッタとコーラス

(ええ 本当に)

ネモリーノ

(彼女は笑ってる...ああ おいら悲しい!)

ベルコーレ

今 俺を愛してるなら 俺が君を愛してるように

どうしてすぐに武器を捨てないんだ?

俺のアイドルよ 講和協定だ

いつ君は俺と結婚したいんだい?

アディーナ

お若い方 私は急いでいませんのよ

もう少し考えたいの

ネモリーノ

(みじめなおいら!もし彼女がOKしたら

絶望でおいら 死んじまうよ)

ベルコーレ

これ以上時間を おお神よ 無駄にするんじゃないぜ

月日は飛び去っていくんだ

戦争でも 恋でも

ためらえば即 敗北だ

勝者に降伏するんだ

俺からもう 君は逃げられない

アディーナ

ちょっと見てよ この男の人の

ちょっと見てよ 大胆な態度を

もう勝利の歌を歌ってるわよ

まだ剣を交える前なのに

そんなに そんなに簡単じゃないわ

アディーナを征服するのはね

ネモリーノ

(彼の勇気のほんのちょっとでも

アモールがおいらにくれたらなあ!

そしたら言えるのに どれだけおいらが苦しんでるのか

同情して貰えるかも知れないのに

だけどおいら あまりにシャイで

なんにも話すことができないんだ)

ジャンネッタとコーラス

(ほんと お笑いだわ

もしアディーナが落ちることがあれば

もし男たち皆の復讐を

この兵隊さんができるなら!

ええ ええ でもこの女狐じゃあねえ

そう簡単には捕まえられないわよ)

ベルコーレ

ところで 俺のお嬢さん

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この広場をお借りするぜ ちょっとばかり

許してくれるかい 俺の兵隊たちに

屋根の下で休むことを

アディーナ

喜んで

私はほんと幸せ者ね

あなたにボトルを提供できるんですもの

ベルコーレ

感謝するぜ (俺はもう家族の一員みたいなもんだな)

アディーナ

あなたたち また始めなさいよ

途中でやめてた仕事を 太陽がもう沈むわ

全員

行こう 行こう

(ベルコーレ、ジャンネッタとコーラスは退場)

第3場

アディーナとネモリーノ

ネモリーノ

一言だけ ねえアディーナ

アディーナ

またいつもの面倒ね!

いつものため息ね!あなた行った方がいいんじゃない

町にいるあなたの叔父さんのところへ

ひどい病気だって言われてるんでしょう

ネモリーノ

おじさんの苦しみなんて何でもないよ - おいらのに比べれば

おいらはここを離れられないんだ...

千回もやってみたんだけど...

アディーナ

でももし叔父さんが死んで

別の相続人をのこしてたら? ...

ネモリーノ

そんなことどうして気にしなくちゃいけないんだい? ...

アディーナ

飢え死にするかも知れないじゃない 誰も助けてくれなくて...

ネモリーノ

飢えて死んでも恋に死んでも ...おいらにとっちゃ同じことさ

アディーナ

聞いて あなたはお人よしで

謙虚だわ あの軍曹とは大違い

あなたは信じてるみたいだけど 私に愛情を吹き込めるって

だからはっきり言っておきますけど

あなたに教えておくけど あなた無駄な恋の期待をしてるのよ

気まぐれな私には 情熱なんてないのよ

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私の中には目覚めてもすぐ死んでしまう情熱しかないの

ネモリーノ

ああ!アディーナ! ...それはなぜ? ...

アディーナ

いい質問ね!

尋ねてごらんなさい 心地よいそよ風に

なぜ絶え間なく吹いているのかと

ユリの上や バラの上を

野原の上や 小川の上を

あなたに答えるでしょう それが風には自然なんだと

気まぐれで浮気なのは

ネモリーノ

じゃあおいらはどうすれば? ...

アディーナ

私への愛は

あきらめるの 私から逃げるのよ

ネモリーノ

大好きなアディーナ! ...おいらにゃ無理だよ

アディーナ

できないの?なぜ?

ネモリーノ

なぜかって!

小川に聞いとくれよ どうして呻きながら

自分の生まれた断崖から

誘ってくる海へと飛び込んでいくのかって

そして海の中にどうして死にに行くのかって

きっと答えるんだ 自分は引き寄せられてるって

説明できない力に

アディーナ

で どうしたいのよ あなたは?

ネモリーノ

死にたいんだ そんな風に

だけどあんたを追いかけてだよ

アディーナ

他の場所で恋したら そしたらうまくいくわ

ネモリーノ

ああ!そんなの無理だよ

アディーナ

そんな狂気からあなたを治すにはね

だって狂ってるもの 変わらぬ愛なんて

あなたも私のやり方を真似したらいいわ

毎日変えるの 恋人をね

ちょうど釘が釘を引き抜くみたいに

恋に恋を追い立てさせるの

そんな風にして私は恋を楽しんでるし

そんな風にして私は心を自由にしてるのよ

ネモリーノ

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ああ!おいらはあんただけを見て 感じてるんだ

昼も夜も あらゆるものの中に

忘れようとしても無理なんだ

あんたの顔がおいらの胸には刻みこまれてる...

あんたがやってるように変えるのは

他の恋だったらできるだろうけれど

だけど無理なんだ 無理なんだ

この最初の恋を胸から追い出すのは

(退場)

第4場

村の広場 居酒屋「ウズラ亭」が片側にある 色々な職業の村人たちが行きかう トランペットの音が

女たち

あの音は何かしら?

男たち

大ニュースだ!来て見てみろよ 

女たち

一体何なの?

男たち

金色の馬車に乗って

見知らぬ紳士がやってくるんだ

見ろよ あの高貴な顔立ちを!

なんて衣装だ! なんて立派な乗り物だ!

全員

きっと きっと偉い人に違いない...

男爵か 侯爵さまが旅してるんだろう...

急いで馬を走らせる偉いお方だ...

もしかしたら公爵さま...おそらくもっと偉いかも

ご覧よ...やって来る...近づいて来るぞ

平伏だ 帽子を取れ 平伏だ 平伏だ

第5場

ドクター・ドゥルカマーラ 黄金の場所の上に立って

手にはカードや瓶を持っている その後ろには

トランペットを演奏している召使 全員

村人は取り囲む

ドゥルカマーラ

さて さて 村の衆よ

しっかり聞きなされ お喋りせずに

吾輩はすでに推測し 想像しておるが

すでに諸君は吾輩のことをご存じだと

吾輩こそ偉大な医師にして

博識の大博士の

ドゥルカマーラであるぞ

その輝かしき技量と

そして限りなき能力は

世界に知れ渡っておる...そして他の場所でも

人々の恩人にして

あらゆる病を治療し

数日のうちに皆を退院させて

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吾輩は病院をカラにする

そして健康を売り広めるために

世界中を吾輩は行くのだ

お買いなされ お買いなされ

お安い価格でお分けしまっせ

これは歯痛を止める

奇跡の水薬だ

ネズミや害虫には

強力な駆除剤ともなる

ご覧あれ 証明書があるぞ

権威ある本物だ

触りなされ 見なされ お読みなされ

お望みの方があれば誰でも

この吾輩の特別の

馴染みやすく 効能あらたかな薬のおかげで

七十代の男性で

虚弱体質だった人が

十人の子供の祖父になって

まだピンピンしておる

かくのごとく「一触れで健康」は

たったの一週間で

一人ならず未亡人が

嘆くのをやめましたぞ

おお お肌の艶を失ったご婦人方

若返りたいとは思いませぬか?

あなた方の望まぬ皺は

これを使って消せますぞ

欲しくはないかね 若い娘さん方

ツヤツヤ滑らかな肌を?

イケてる若い衆よ

いつも恋人が欲しかろう?

お買いなされ 吾輩の特効薬を

超特価でお分け致しますぞ

中風患者は動けるようになり

みな治すのだ 卒中も

喘息も 虚弱体質も

ヒステリーも 糖尿病も

治すぞ 中耳炎も

それに腺病 くる病も

さらには肝臓のトラブルに至るまで

こいつは近頃のはやり病だ

お買いなされ 吾輩の特効薬を

超特価でお分け致しますぞ

吾輩はこいつを遠方より運んで来た

はるか千マイルの彼方から

言ってご覧なされ 一体いくらするか?

一瓶でいかほどかと?

百スクーディ? ...三十? ...二十? ...

いいや...誰も驚くでないぞ

吾輩の感謝の印である

皆さん方の親切なおもてなしに

吾輩が提示するのは おお善良なる諸君

たったの1スクードだ

コーラス

1スクード 本当に?

これ以上気前の良い人はきっと居ないぞ

ドゥルカマーラ

さてこちらだ これほどにゴージャスで

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香り高い妙薬は

ヨーロッパ中が知っておるぞ 吾輩が売ると

決して9リラ以下になることはないと

しかしこれもまた明らかなことだが

吾輩はこの国に生まれたことゆえ

3リラで皆さんにはお分けしよう

たった3リラで結構だ

これはお日さまのように明確なことだ

これを欲しいと思う人は誰でも

1スクードこっきりを

吾輩のポケットに入れてくれれば良い

ああ!故郷への暖かい愛情は

かくも偉大な奇跡を生み出すのだ

コーラス

全く本当だ 分けてくれ

偉大なドクターだ あんたは!

あんたがお出でくださったことを

ずっと忘れないよ

第6場

ネモリーノと前場の人物

ネモリーノ

(気合だ!きっと神さまが

特別においらのために寄こしてくれたんだ

この奇跡の人を村に

この人の知恵でおいらも賢くなってやるぞ)

ドクター すいません...

ほんとなんですか 持ってるってのは

すばらしい秘密を? ...

ドゥルカマーラ

驚くが良い

吾輩のポケットは、パンドラの壺だ

ネモリーノ

じゃあお持ちじゃないですか...もしかしたら...

愛の飲物を

王女イゾルデの?

ドゥルカマーラ

ああ! ...何? ...何だって?

ネモリーノ

つまりその...素晴らしい

愛を目覚めさせる妙薬で...

ドゥルカマーラ

ああ!そうだ そうだ 分かったよ 何のことか

吾輩がその醸造元だ

ネモリーノ

それはほんとですか?

ドゥルカマーラ

実のところ

最近はたいへんな売れ行きでね

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ネモリーノ

ああ運がいい!売ってるんですか?...

ドゥルカマーラ

毎日世界中にな

ネモリーノ

じゃあおいくらで売ってくれます?

ドゥルカマーラ

廉価じゃぞ...つまり ...その...ちょっと...

ネモリーノ

1ゼッキーノ ...おいらはこれしか持ってません...

ドゥルカマーラ

ちょうどその値段だ

ネモリーノ

ああ!受け取ってください ドクター

ドゥルカマーラ

これは魔法の酒じゃぞ

ネモリーノ

ありがとう ああ!ほんとに ありがとう!

おいら幸せだ うれしいです

こんなすてきな薬を

作ってくれる人に感謝です!

ドゥルカマーラ

(吾輩が回って来た国では

必ずひとり以上のバカがおった

だがこれほどの奴は 実際

見たことないし いないだろう)

ネモリーノ

それで...ドクター...ちょっとだけ...

どうやってこれは使うんですか?

ドゥルカマーラ

注意深く 静かに 静かに

瓶を少しばかり振る...

それから栓を抜く...だが気を付けるのだ...

気が抜けてしまわぬようにな

そして唇にそれを近づけて

一口啜ってみるがいい

すると驚くべき効果が

やがて現れてくるのだ

ネモリーノ

すぐにですか?

ドゥルカマーラ

実際には

必要なのだ 丸一日ほど

(ちょうど十分な時間だな

取り繕って逃げるのには)

ネモリーノ

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で 味は?

ドゥルカマーラ

すばらしいぞ...

(ボルドー酒で 薬ではないからな)

若者よ!おい?ちょっと?

ネモリーノ

先生?

ドゥルカマーラ

それとな...黙っておるのだぞ...分かるな?

最近は愛を売ることは

非常に嫉妬を買う商売でな

もし刺激するとまずいのだ

お役所の監視を

ネモリーノ

信じてください

誰一人としてこれを知られることはありません

ドゥルカマーラ

では行け 幸運な人間よ

宝物をお前に吾輩は授けたのだからな

すべての女どもが

明日はお前にため息つくだろう

(だが明日の早朝には

吾輩はここからトンズラしとるぞ)

ネモリーノ

ああ!ドクター おいら約束しますよ

おいら飲むんだ たったひとりの人だけのために

他の人のためじゃない どんなに美人のひとでも

一滴も取っておいたりしないよ

(本当に 親切な星が

この人をここに送って下さったんだなあ)

(ドゥルカマーラは居酒屋に入る)

第7場

ネモリーノひとり

ネモリーノ

すばらしい妙薬!お前はおいらのもんだ!

そうさ すっかりおいらの... - きっと強力に違いないぞ

その効き目は まだ飲んでもいないのに

喜びが満ち溢れてるんだ おいらの胸には!

だけど どうして効き目が

確かめられないんだろう

一日たってからでないと?

飲んでみよう

(彼は飲む)

おおっ!うまい! - おおっ!すてきだ! - もう一口

(もう一度飲む)

ああ!血管から血管へと

気持ち良い暖かさが流れてく!...ああ!たぶんあの人も...

おそらく 同じ炎を

感じ始めてるぞ...きっとそうだ...

おいらにそれを告げてくれてる 喜びと食欲が

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おいらの中で突然目覚めたんだ

(居酒屋のベンチに座って ポケットから取り出す

パンや果物を それから声を上げて歌いながら食べる)

ララ ララ ララ

第8場

アディーナと前場の人物

アディーナ

(だれかしら あのヘンな人は?

見間違い?まさかネモリーノ?

あんなに浮かれて!いったいどうしたの?)

ネモリーノ

(おどろいた!あの人だ...

(立ち上がって彼女に駆け寄ろうとするが止まって再び座る)

いやダメだ...近づいたら... おいらのため息が

あの人をうんざりさせないように どうせ...明日には

おいらに首ったけだからな あの冷たい人も)

アディーナ

(私を見もしないわ!何て変わりようなの!)

ネモリーノ

ラララララレラ

ララララララ ...

アディーナ

(分かんないわ 本気なのかふざけてるのか

あのはしゃぎ方は)

ネモリーノ

(今のところ愛は感じてないようだな)

アディーナ

(無関心を装うつもりね)

ネモリーノ

(楽しんでろよ 野蛮な女め

もうしばらくは おいらの悩みを!

明日には終わるんだから

明日にはおいらを愛するんだから)

アディーナ

(断ち切りたいのね このバカ

投げ捨てたいのね 自分を縛る鎖を

でももっと重くなるだけよ

そんなことしても)

ネモリーノ

ララララ ...

アディーナ

(彼に近づいて)

すばらしいわ!

あのレッスンは役に立ったのね

ネモリーノ

Page 12: L'elisir d'amore Atto1(JP)

そうなんだ 実際に

こうしてテストしてる

アディーナ

じゃあこれまでの苦しみは?

ネモリーノ

忘れられると思う

アディーナ

それじゃ 古い炎は?

ネモリーノ

もうすぐ消えるよ

あと一日で

それでおいらの心も癒されるだろうさ

アディーナ

ほんとに それは良かったわね...

だけど...もう少し様子を見ましょ

第9場

ベルコーレ 舞台裏で その後舞台 前場の人々

ベルコーレ

(歌う)

トラン トラン トラン トラン トラン トラン 

戦争でも 恋でも

包囲戦は退屈で疲れるな

アディーナ

(ちょうどいい時にベルコーレね)

ネモリーノ

(ここにあのムカつく奴が)

ベルコーレ

(入ってきて)

俺は白兵戦で行くぜ

戦争でも 恋でも

アディーナ

さて ステキな軍曹さん

広場はお気に召しまして?

ベルコーレ

防御は完璧だ

あえなく破れちまったよ

アディーナ

でもあなたの心は告げないの

もうすぐ降伏するかもって?

ベルコーレ

ああ それを愛が望むのならね!

アディーナ

それを見るかもしれませんわよ

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ベルコーレ

いつ?そんなことあり得るのか!

ネモリーノ

(くやしくて震えちまうぞ)

ベルコーレ

言ってくれ 俺の美しい天使よ

いつ結婚できるんだい?

アディーナ

すぐにね

ネモリーノ

(何を言ってるんだ?)

ドゥルカマーラ

それは いつ?

アディーナ

(ネモリーノを見て)

6日以内には

ベルコーレ

そりゃあいい!それなら満足だ

ネモリーノ

(笑って)

ハ!ハ!そりゃいいや

ベルコーレ

(何を笑ってやがる

このボケナス野郎?

とっ捕まえてぶん殴ってやるぞ

すぐにここから出て行かなけりゃ)

アディーナ

(あいつ あんなに浮かれて陽気でいられるなんて

私が結婚するって聞いたのに!

もう隠してなんていられないわ

私を駆り立てるこの怒りを)

ネモリーノ

(大風呂敷野郎!もう思い込んでるんだろ

自分の指が天に届いたって

だけど罠はもう仕掛けられてるのさ

明日になれば分かるだろうさ)

第10場

ドラムが鳴る ジャンネッタが農婦たちとやって来る そのあと

兵士たちがベルコーレに駆け寄る

ジャンネッタ

軍曹、軍曹、

あんたの仲間が探してるわよ

ベルコーレ

俺はここだ 何事だ?そんなに急いで?

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兵士

2分前に 伝令が

何かは分かりませんが あなた様に命令を

ベルコーレ

(読む)

大尉殿だ! ...ああ!ああ!そうか

さあ 同志よ 出発するぞ

コーラス

出発はいつ?

ベルコーレ

明日の朝だ

コーラス

何と そんなにすぐに!

ネモリーノ

(がっかりだな アディーナは)

ベルコーレ

命令は絶対だ - どうしようもない

コーラス

何てひどい巡り会わせ!

こんな頻繁に守備隊を入れ替えなんて!

恋人をあきらめなくちゃなんないのに

ベルコーレ

命令は絶対だ - どうしようもない

愛しい人よ!聞いたかい?明日 お別れだ!

(アディーナに)

せめて覚えていてくれ - 俺の愛を

ネモリーノ

(はい、はい、明日には新しい恋のことが聞けるのにね)

アディーナ

私はあなたに変わらぬ愛の証を差し上げます

約束は覚えていますわ

ネモリーノ

(はい、はい、明日にはおいらに言うんだよな)

ベルコーレ

もし誓いを守るつもりなら

なぜ前倒ししないんだ?減るもんじゃないし?

今日にも俺と結婚することはできないのかい?

ネモリーノ

(今日にもだって!...)

アディーナ

(ネモリーノを観察して)

(困ってるみたいだわ)

そうね 今日でも...

ネモリーノ

Page 15: L'elisir d'amore Atto1(JP)

今日だって!おおアディーナ!

今日なんて あんた言うのか? ...

アディーナ

どうしてダメなの? ...

ネモリーノ

せめて明日の朝まで待っておくれよ

ベルコーレ

お前に何の関係があるんだ?ちょっと待てよ

ネモリーノ

アディーナ 信じて お願いだ..

あんたはこいつとは結婚できないんだ...保証するよ...

もうちょっと待って...たったの一日だけ...

たったの一日だ...おいらは理由を知ってる

明日になったら おおステキな人 苦しむことになっちゃうよ

苦しむことになる おいらみたいに

ベルコーレ

天に感謝しやがれ このヒヒ野郎

狂ってるのか 酔っ払ってるのか知らんが!

てめえの首を絞め 八つ裂きにしてたとこだぞ

もし今お前が正気だったらな

俺がこの手を抑えていられるうちに

とっとと行け どアホウめ 俺の前から消えろ

アディーナ

可哀想に思ってあげてよ まだ子供じゃない

勘違いしてて ちょっとヘンなのよ

頭の中で 私が彼を愛さなくちゃいけないって思い込んでるの

頭がぐちゃぐちゃになってるの 私への愛のために

(復讐してやる 苦しめてやるわ

後悔させてやるわ 倒れて足元に這いつくばるまで)

ジャンネッタ

見てよ あのおめでたい男!

コーラス

妙に自惚れてるわね

考えてんのよ あの軍曹に張り合おうなんて

この世じゃ勝ち目なんてないのにね

ああ びっくりよ 全く

あの美人のアディーナなんか分不相応よ あんたにゃ

アディーナ

(思い切ったように)

行きましょう ベルコーレ

知らせるのよ 公証人に

ネモリーノ

(動揺して)

ドクター!ドクター...

助けて!助けてー!

ジャンネッタとコーラス

ほんとに壊れちゃったわ

アディーナ

Page 16: L'elisir d'amore Atto1(JP)

(仕返ししてやるわ)

ステキなパーティに

みんな ご招待しましょう

ベルコーレ

ジャンネッタ 女の子たち

みんな待ってるぜ 踊りに来るのを

ジャンネッタとコーラス

ダンス!パーティー!

誰が断ったりするもんですか?

アディーナ、ベルコーレ、ジャンネッタとコーラス

ステキな調和のうちに - 楽しい仲間たちと

幸せにして - 一日を過ごしたい

パーティーには来てくれるでしょう - 愛の神さまも

(こいつ呆然としてる - 笑わせてくれるわ)

ネモリーノ

おいらを軍曹がバカにしてる - おいらをイジってる 薄情女は

みんなの笑いものに - おいらをしてるんだ あの女

おいらの心は踏みにじられて - もう希望はない

ドクター!ドクター! - 助けてー!お願いだ!

アディーナはベルコーレに手を差し出し 一緒に退場する

ネモリーノの動揺は激しさを増し 皆は彼を嘲笑する