12
MS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について ○岩切良次 (環境調査研修所) 【はじめに】 塩素化ターフェニル(PCT)は、Kanechlor-CAroclor 54シリーズなどで、全世界で約6万トンが製造された 1) 日本国内では2620トンが生産、140トンが輸入され、そのうち1/4は電気機器関係、3/4が可塑剤や潤滑油、接着 剤等の用途で使用されている 2PCTの用途はPCBとほぼ類似していることから、PCB汚染廃棄物やPCB汚染土 壌からも検出され、前報において、廃棄物不法投棄場所から得られた土壌試料中のダイオキシン類分析を行った ところ、比較的高いレベルのDL-PCBが検出されたと同時に、DL-PCB画分のGC/MS測定時にロックマスの大き な変動が認められ、その原因の一つがPCTであることを報告した 3) PCTPCBの構造は非常に似ており(図1)、 JISやマニュアル等に記載されているクリーンアップ方法では分離が困難であると考えられることから、PCTDL- PCBPCDD/DFsを分離・精製できる条件を検討することは大変重要な課題である。またGC/MS測定においても PCTがロックマスへの変動や測定対象への妨害を起こすことが分かっていることから、PCTを含む試料のGC/MS 測定時の問題点を明らかにすることも重要である。そこで本報では、以下の2点について、検討・考察を行った。 GC/MS測定時の問題点(高分解能、低分解能)とその対処法 ②測定上の妨害となるPCTを除去する精製法の検討 Cl x Cl y Cl z Cl x Cl y Cl z Cl x Cl y Cl z 1 塩素化ターフェニルの構造

MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

MS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ

ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

○岩切良次 (環境調査研修所)

【はじめに】

塩素化ターフェニル(PCT)は、Kanechlor-CやAroclor 54シリーズなどで、全世界で約6万トンが製造された1)。

日本国内では2620トンが生産、140トンが輸入され、そのうち1/4は電気機器関係、3/4が可塑剤や潤滑油、接着

剤等の用途で使用されている2)。PCTの用途はPCBとほぼ類似していることから、PCB汚染廃棄物やPCB汚染土

壌からも検出され、前報において、廃棄物不法投棄場所から得られた土壌試料中のダイオキシン類分析を行った

ところ、比較的高いレベルのDL-PCBが検出されたと同時に、DL-PCB画分のGC/MS測定時にロックマスの大き

な変動が認められ、その原因の一つがPCTであることを報告した3)。PCTとPCBの構造は非常に似ており(図1)、

JISやマニュアル等に記載されているクリーンアップ方法では分離が困難であると考えられることから、PCTとDL-

PCBやPCDD/DFsを分離・精製できる条件を検討することは大変重要な課題である。またGC/MS測定においても

PCTがロックマスへの変動や測定対象への妨害を起こすことが分かっていることから、PCTを含む試料のGC/MS

測定時の問題点を明らかにすることも重要である。そこで本報では、以下の2点について、検討・考察を行った。

①GC/MS測定時の問題点(高分解能、低分解能)とその対処法

②測定上の妨害となるPCTを除去する精製法の検討

Clx

Cly

Clz Clx

Cly

Clz Clx Cly Clz

図 1 塩素化ターフェニルの構造

Page 2: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

【試料と方法】

試料:本検討で用いた汚染土壌は,前報3)と同様に廃棄物投棄場所周辺で採取された土壌を用いた。

分析方法

試料の抽出:抽出法は,土壌のダイオキシン類簡易測定マニュアルに従い4)、高圧流体抽出(ASE-200(日本ダイオネクス))を用いた.

クリーンアップ:粗抽出液にクリーンアップスパイクを添加後ヘキサン転溶を行い、多層シリカゲルクリーンアップ(硝酸銀シリカゲル,硫酸シリカゲル(22%,44%),水酸化カリウムシリカゲル)を,その後活性炭分散シリカゲルリバースカラム(関東化学)にて,mono-ortho PCBsとnon-ortho PCBとPCDD/DFsの分画を行った。これを~100µLまで濃縮し、GC/MSにて測定を

行った。また、分画試験に用いる土壌抽出標準液として、粗抽出液の一部を多層シリカゲル、アルミナカラムにてクリーンアップを行った。アルミナカラムでは、PCT、DL-PCB、PCDD/DFsを同一画分に取るために、ヘキサン100mLで前洗浄後、50%

ジクロロメタン含有ヘキサン50mLにて溶出を行った。

分画試験:分画試験では、アルミナ(ICN Alumina Super I)、活性炭分散シリカゲルリバースカラムを用いた。アルミナカラムは、7.5gのアルミナを内径10mm、長さ30cmのガラスクロマト管に湿式充填を行った。活性炭分散シリカゲルカラムは市販のものをそのまま用いた。分画は10ml、または5mlごと行い、各画分は窒素ガスによって乾固直前まで濃縮を行い、ノナンを30~50µL、シリンジスパイクを50µLを添加し、GC/MS測定を行った。分画試験では、PCTの標準物質としてAroclor5432 (Accu

Standard)を、DL-PCBsの標準物質としてWHO PCB+PCB170+PCB180 CleanUP Standard (CIL)を用いた。

GC/MS測定:PCDD/DFs、DL-PCBsのGC/MS測定条件を表1,表2に示す。なお、SIMのモニターイオンは環境省の土壌マニュアル5)に従ったので、ここでは省略する。 PCTの測定には平成14年度化学物質分析法開発調査報告書6) を参考に条件を設定した。測定条件を表3に示す。分画試験の測定にはGC条件は表3の条件で行い、MS条件は表1~表3の各物質の条件を用いた。

測定には,JMS-700D(日本電子),Autospec-Ultima (Waters), GC-7890/5975MSD(Agilent) を用いた.測定に用いたキャピラリーカラムは,BPX-DXN(60m, i.d. 0.25mm),HT8-PCB (60m, i.d. 0.25mm) (関東化学),分画試験ではDB-

5ms(30m i.d. 0.25mm Agilent)を用いた。データ処理にはDiok Ver4.02 (日本電子)を用いた。

Page 3: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

表1 GC条件

PCDD/DFs

GC: Agilent 6890

分離カラム:BPX-DXN 60m×0.25mm i.d. (SGE/関東化学)

注入口温度:280℃

注入法:スプリットレスモード(1.5min)

注入量:2µL

キャリアガス:ヘリウム 1.0 mL/min (定流量モード)

昇温条件

130℃ (1min)→(15℃/min)→210℃(5min)→(3℃/min)→

→290℃(5min)→(10℃/min)→330℃(0min)

DL-PCBs

GC: Agilent 6890

分離カラム:HT-8 PCB 60m×0.25mm i.d. (関東化学)

注入口温度:280℃

注入法:スプリットレスモード(1.5min)

注入量:2µL

キャリアガス:ヘリウム 1.5 mL/min (定流量モード)

昇温条件

130℃ (1.5min)→(20℃/min)→200℃(0min)→(2℃/min)→

→240℃(0min)→(4℃/min)→300℃(0min)

低分解能測定

GC: Agilent 7890A

分離カラム:BPX-DXN 60m×0.25mm i.d. (SGE/関東化学)

注入口温度:280℃

注入法:スプリットレスモード(1.5min)

注入量:2µL

キャリアガス:ヘリウム 1.0 mL/min (定流量モード)

昇温条件

130℃ (1min)→(15℃/min)→210℃(5min)→(3℃/min)→

→290℃(5min)→(10℃/min)→330℃(0min)

表2 MS条件

表3 PCT測定のGC/MS条件

分離カラム:DB-5 ms 30m×0.25mm i.d (Agilent)

:BPX-DXN 60m×0.25mm i.d. (SGE/関東化学)

注入口温度:280℃

注入法:スプリットレスモード(1.5min)

注入量:2µL

キャリアガス:ヘリウム 1.5 mL/min (定流量モード)

昇温条件

110℃ (1.5min)→(15℃/min)→200℃(0min)→(2℃/min)→

→240℃(0min)→(24℃/min)→300℃(5min)

化合物名 m/z 強度比

Terphenyl 230.1096 -

MoCT M 264.0706 100

M+2 266.0682 33.91

DiCT M 298.0316 100

M+2 300.0289 65.89

TriCT M 331.9926 100

M+2 333.9899 97.86

TeCT M 365.9537 77.02

M+2 367.9509 100

PeCT M+2 401.9119 100

M+4 403.9091 65.10

MS:JMS-700D(日本電子) MS:Autospec Ultima (Waters) MS:Agilent 5975C inert XL

インターフェース温度:280℃ インターフェース温度:280℃ インターフェース温度:280℃

イオン源温度:280℃ イオン源温度:280℃ イオン源温度:280℃

イオン化電圧:38V イオン化電圧:35V イオン化電圧:70V

イオン化電流:500µA イオン化電流:500µA

Page 4: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

【結果と考察】

GCMS測定上における問題点と対処法

図2~図5に、分解能10000、7000、3500、および低分解能測定時の汚染土壌試料のmono-ortho PCBsのクロマトグラムのうち、13C-HxCB,13C-HpCB、TeCT、PeCT、ロックマス(低分解能測定を除く)を示す。図2~図4の高分解能測定において、ロックマスのm/z 330.97924には、PCTの由来のフラグメントイオンによる妨害が認められたが、これは主に4塩素化ターフェニル の[M](m/z 365.9537)から塩素が1個外れたフラグメントイオン(m/z 330.98481)であることが推測された(図6)。

また、4塩素化ターフェニルの分子イオン([M+4]+: 369.9478)とHxCBの13Cラベル体([M]+:369.8847)や、5塩素化のターフェニルの分子イオン([M+6]+:405.9058)とHpCB 13Cラベル体([M]+:405.8428)の分離にはそれぞれ、理論上では約5900、約6400の分解能が必要である。そのため、分解能が低くなるにつれて13C-HxCB、13C-HpCBに対する妨害が大きくなりることが予想され、定量値への影響が懸念される。

さらに4塩素化ターフェニルと5塩素化ターフェニルの分子イオンは、それぞれPeCDDとHxCDDの13Cラベル体との質量分離に約6600と約7200の分解能が必要なことも確認された。ただし、これらは、活性炭シリカゲルカラムなどのPCDD/DFsとDL-PCBsを分離するクリーンアップ操作によって、PCTからの妨害を受けずに測定することが可能であるが、2カラム測定法など、DL-PCBsとPCDD/DFsを同じ測定液にする場合には、妨害を受けることが十分に考えられるため、注意が必要である。

以上より、高分解(分解能7500以上)の測定の場合は、PCTのフラグメントイオンによる、定量に用いるイオンへの妨害はないと思われ、ロックマスのm/zを変更(例えばm/z 331からm/z 343や319、293)することでPCTによる測定精度への影響は取り除かれ、測定は問題なく実施可能である。

ただし、土壌や底質のダイオキシン類簡易測定法では低分解能GC/MSによる測定が可能であり、この場合にはPCT

が含まれた試料のDL-PCBを含む測定液では、PCTによる妨害を大きく受けることが予想される。その際には、定量値に対する影響が懸念されることから、低分解能GC/MS測定を行う際には、試料から可能な限りPCTを取り除く必要がある。

Page 5: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(653699)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

13C-H6CB / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(16777200)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

TeCT / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(302017)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

13C-H7CB / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(6855313)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

PeCT / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(4146148)

(33554400)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

QcMs-331 / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(1178615)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

13C-H6CB / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(16777200)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

TeCT / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(553217)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

13C-H7CB / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(13300978)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

PeCT / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(2677491)

(33554400)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

QcMs-331 / Average

13C-HpCB

Lock Mass (m/z331)

13C-HxCB

TeCT

PeCT

13C-HpCB

Lock Mass (m/z331)

13C-HxCB

TeCT

PeCT

図 2 分解能10000におけるクロマトグラム 図 3 分解能7000におけるクロマトグラム

Page 6: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

12.5 13.0 13.5 14.0 14.5 15.0 15.5 16.0 16.5 17.0 17.5 18.0 18.5 19.0 19.5 20.0 20.5 21.0 21.5 22.0 22.5 23.0 23.5 24.0 24.5 25.0 25.5 26.0 26.5 27.0 27.5Retention Time (min)

(18614)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

13C-H6CB / 371.8817

12.5 13.0 13.5 14.0 14.5 15.0 15.5 16.0 16.5 17.0 17.5 18.0 18.5 19.0 19.5 20.0 20.5 21.0 21.5 22.0 22.5 23.0 23.5 24.0 24.5 25.0 25.5 26.0 26.5 27.0 27.5Retention Time (min)

(51288)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

TeCT / Average

12.5 13.0 13.5 14.0 14.5 15.0 15.5 16.0 16.5 17.0 17.5 18.0 18.5 19.0 19.5 20.0 20.5 21.0 21.5 22.0 22.5 23.0 23.5 24.0 24.5 25.0 25.5 26.0 26.5 27.0 27.5Retention Time (min)

(4753)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

13C-H7CB / 405.8428

12.5 13.0 13.5 14.0 14.5 15.0 15.5 16.0 16.5 17.0 17.5 18.0 18.5 19.0 19.5 20.0 20.5 21.0 21.5 22.0 22.5 23.0 23.5 24.0 24.5 25.0 25.5 26.0 26.5 27.0 27.5Retention Time (min)

(21212)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

PeCT / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(1147653)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

13C-H6CB / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(16777200)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

TeCT / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(1248489)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

13C-H7CB / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(11443591)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

PeCT / Average

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47Retention Time (min)

(8412746)

(33554400)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

QcMs-331 / Average

13C-HpCB

Lock Mass (m/z331)

13C-HxCB

TeCT

PeCT

13C-HpCB

13C-HxCB

TeCT

PeCT

図 4 分解能3500におけるクロマトグラム

図 6 実試料から得られたTeCTのマススペクトル(左、中(拡大図))とライブラリー内のTeCTのマススペクトル

図 5 低分解能GC/MSにおけるクロマトグラム

TeCT

Page 7: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

【結果と考察】

クリーンアップによるDLPCBsとPCTの分離について。

Wichimann et al.は、内径16mmのガラスカラム、30gのアルミナを用いてPCTとPAH、PCBとの分離に関する検討を行っており、1%ジクロロメタン含有ヘキサン150mLでPCB,PAHを溶出後、PCTを50%ジクロロメタン含有ヘキサン250mLで回収している7)。本検討でもこの方法を参考として、アルミナ充填量を7.5g、カラム内径を10mmとして、ダイオキシン類分析でも使用例が多く、他のアルミナと比較してもPCBやダイオキシン類の保持力が強いICN Alumina Basic Super I を用いて検討を行った。

図7にアルミナカラムクロマトグラフィーによる、DL-PCBとPCTの分画試験の結果について示す。ヘキサン100mLで前洗浄を行い、ここにDL-PCBやPCTの溶出がないことを確認した。その後に、1%ジクロロメタン/ヘキサン溶液による分画試験を行ったところ、mono-ortho PCBsが140mLまでに溶出することを確認したが、それまでにPeCTとTeCTがわずかに溶出していた(図8)。しかし、その後の画分を測定したところ、TCPの大部分はアルミナに吸着したままであることが確認できた。よって、アルミナカラムでPCTとDL-PCBの分離が可能であることがわかった。

また、今回結果は示していないが、ダイオキシン類分析で通常用いられている活性炭分散シリカゲルのリバースカラムで分画試験を行ったところ、25%ジクロロメタン含有ヘキサン、およびジクロロメタンの含有量を減らした条件(10%)の両方の場合で、mono-ortho PCBsとPCTが同時に溶出され、活性炭分散シリカゲルでは、mono-ortho PCBとPCTの分離は困難であることが確認された。ただし、PCTとnon-ortho PCBs、PCDD/DFsはほぼ分離可能であった。また、活性炭分散シリカゲルカラム以外の炭素系吸着材 (Supelco社製 Carboxen-569, -1021, -1018, -1000, Carbosieve S-III, -G) による分画試験でも同様の溶出傾向であり、本結果から、炭素系吸着材によるmono-ortho PCBとPCTの分離は困難であると考えられた。以上の結果から、PCTとDL-PCBsを効果的に分離するためには、まず活性炭シリカゲルカラムを用いてmono-ortho PCBsとnon-ortho PCBやPCDD/DFsとの分離を行い、その後、活性炭シリカゲルカラムで得られたmono-ortho PCBの溶出液をアルミナを用いてPCTと分離する操作が必須であること考えられた。

そこで、汚染土壌試料の抽出液を用いて、活性炭シリカゲルカラムによりmono-ortho PCBsを分離した画分を一定量に定容し、その半量を上述で決定したアルミナの溶出条件によって精製を行った。図9には、高分解能GC/MS測定によるアルミナ精製の有無によるクロマトグラム、図10は低分解能GC/MS測定によるクロマトグラムの比較である。図9から、アルミナ処理を行うことでmono-ortho画分のPCTが大きく減少し、それによりPCT由来のロックマスの妨害も大きく減少していることが確認できた。また図10から、アルミナ処理後は内部標準物質の測定チャンネルへの妨害が大きく減少しており、低分解能GC/MSの測定でも十分に定量可能な状態になった。

図11には、従来のマニュアルやJISに示された精製法のフロー図と、本検討結果を基に提案される精製法のフロー図を示す。従来の方法では、mono-ortho PCBやnon-ortho PCB・PCDD/DFsの其々の画分にPCTが含まれていたことから、測定上で何らかの妨害を受けていた。しかし、今回提案する精製法はPCTをほぼ分離できるため、PCT高濃度に含む試料の分析において大変有効な方法である。とくに、土壌の簡易分析法によって用いる低分解能GC/MSの測定においては、本検討結果を用いることで精度の良い定量操作が期待でき、極めて有効な精製方法であることが確認された。

Page 8: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

0

10

20

30

40

50

60

70

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200

回収率(%)

1%DCM/Hex溶出量(mL)

#77

#81

#105

#114

#118

#123

#126

#156

#157

#167

#169

#189

5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34Retention Time (min)

(2539)

(53997)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

STD 5432 700ppb (Unknown sample)

5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34Retention Time (min)

(67542)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

1%MC/Hex 100mL (Unknown sample)

5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34Retention Time (min)

(2430)

(24794)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

1%MC/Hex 120mL (Unknown sample)

5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34Retention Time (min)

(2584)

(24901)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

1%MC/Hex 140mL (Unknown sample)

5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34Retention Time (min)

(2664)

(32944)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

1%MC/Hex 160mL (Unknown sample)

18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37Retention Time (min)

(642415)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

STD 5432 700ppb (Unknown sample)

18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37Retention Time (min)

(61840)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

1%MC/Hex 100mL (Unknown sample)

18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37Retention Time (min)

(162852)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

1%MC/Hex 120mL (Unknown sample)

18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37Retention Time (min)

(294529)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

1%MC/Hex 140mL (Unknown sample)

18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37Retention Time (min)

(272936)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsity

1%MC/Hex 160mL (Unknown sample)

図7 DLPCBsの1%ジクロロメタン含有ヘキサンによるアルミナカラムの溶出曲線

STD STD

100mL

120mL

140mL

160mL

100mL

120mL

140mL

160mL

TeCT PeCT

アルミナカラムにおける分画ポイントは

#105の溶出終了点であり、本検討における分画試験では140mLが最適な分画点であることが確認された。

しかしながら、140mLの溶出点では、4,5塩素化ターフェニルの溶出が始まっているため、DL-PCBへの影響が少なくなるように、本検討においては、#105

の回収が若干悪くなるが、溶出量を130mLとして決定した。

図 8 分画試験時の各画分におけるTeCT、PeCTのクロマトグラム

Page 9: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(256817)

0

20

40

60

80

100In

tensi

ty13C-P5CB / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(16777200)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

TriCT / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(242454)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

13C-H6CB / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(16777200)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

TeCT / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(190116)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

13C-H7CB / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(5833962)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

PeCT / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(2416268)

(23728905)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

QcMs-331 / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(1027413)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

13C-P5CB / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(1221517)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

TriCT / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(818913)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

13C-H6CB / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(4422282)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

TeCT / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(628838)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

13C-H7CB / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(1650921)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

PeCT / Average

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44Retention Time (min)

(3369827)

(9302649)

0

20

40

60

80

100

Inte

nsi

ty

QcMs-331 / Average

PeCB

TriCT

HxCB

TeCT

HpCB

PeCT

PeCB

TriCT

HxCB

TeCT

HpCB

PeCT Lock mass

Lock mass

図9 活性炭シリカゲルカラムmono-ortho PCB画分のアルミナ精製の有無による

クロマトグラムの比較(高分解能GC/MS測定)

Page 10: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44Retention Time (min)

(11841)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

13C-H6CB / Average

6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44Retention Time (min)

(183328)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

TeCT / Average

6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44Retention Time (min)

(4129)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

13C-H7CB / Average

6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44Retention Time (min)

(17038)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

PeCT / Average

6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44Retention Time (min)

(33)

(590)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

13C-H6CB / Average

6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44Retention Time (min)

(30)

(603)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

TeCT / Average

6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44Retention Time (min)

(21)

(413)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

13C-H7CB / Average

6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44Retention Time (min)

(1246)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

PeCT / Average

アルミナカラム処理後

TeCT、PeCTの主要なピークがなくなり、13C-HxCB、13C-HpCBのピークが明瞭になった(矢印は内部標準物質)。

14.4 14.6 14.8 15.0 15.2 15.4 15.6 15.8 16.0 16.2 16.4 16.6 16.8 17.0 17.2 17.4 17.6 17.8 18.0 18.2Retention Time (min)

(896)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Inte

nsity

13C-H6CB / Average

14.4 14.6 14.8 15.0 15.2 15.4 15.6 15.8 16.0 16.2 16.4 16.6 16.8 17.0 17.2 17.4 17.6 17.8 18.0 18.2Retention Time (min)

(23560)

0102030405060708090100

Inte

nsity

TeCT / Average

14.4 14.6 14.8 15.0 15.2 15.4 15.6 15.8 16.0 16.2 16.4 16.6 16.8 17.0 17.2 17.4 17.6 17.8 18.0 18.2Retention Time (min)

(421)

0102030405060708090100

Inte

nsity

13C-H7CB / Average

14.4 14.6 14.8 15.0 15.2 15.4 15.6 15.8 16.0 16.2 16.4 16.6 16.8 17.0 17.2 17.4 17.6 17.8 18.0 18.2Retention Time (min)

(479)

0102030405060708090100

Inte

nsity

PeCT / Average

図10 アルミナカラム処理の有無による

低分解能GC/MSの測定結果

13C-HxCB

TeCT

13C-HpCB

PeCT

13C-HxCB

TeCT

13C-HpCB

PeCT

Page 11: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

抽出

多層シリカゲルカラム

ヘキサン溶出(前捨)

アルミナカラム

2%ジクロロメタン/ヘキサン(mono-ortho PCBとPCTの一部)

50%ジクロロメタン/ヘキサン溶出( non-ortho PCBとPCDD/DFs)

PCTの大部分

PCTによる妨害を受ける

アルミナカラム単独処理は、測定対象のフラクションの両方にPCTが溶出することから、PCTを含む試料には適さない。

従来のアルミナを用いた処理法例①抽出

多層シリカゲルカラム

ヘキサン溶出(前捨)

アルミナカラム

5%ジクロロメタン/ヘキサン(DL-PCBとPCTの大部分)

PCTによる妨害を受ける

この条件でDL-PCBを全て溶出させると、PCTもほぼ溶出してくるため、測定時の妨害となる。

従来のアルミナを用いた処理法例②

抽出

多層シリカゲルカラム

ヘキサン溶出(前捨)(DL-PCB以外のPCBとPCTの一部)

測定対象外

活性炭シリカゲルカラム

25%ジクロロメタン/ヘキサン(mono-ortho PCBとPCTの大部分)

トルエン溶出( non-ortho PCBとPCDD/DFs)

1%ジクロロメタン/ヘキサン(mono-ortho PCBのみ溶出)大部分のPCTはアルミナに吸着

ガラスカラム内径を15mmから10mm→カラム高さを得ることで分離を改善

活性炭シリカゲルカラム処理でPCTがほとんど溶出するmono-orthoPCBフラクションからPCTを取り除くことで、効率的にPCTを取り除くことが可能となった。

図11 本検討結果による前処理法の提案

抽出

多層シリカゲルカラム

ヘキサン溶出(前捨)(DL-PCB以外のPCBとPCTの一部)

測定対象外

活性炭シリカゲルカラム

25%ジクロロメタン/ヘキサン(mono-ortho PCBとPCTの大部分)

トルエン溶出( non-ortho PCBとPCDD/DFs、

PlanarのPCT)

PCTによる妨害を受ける

活性炭シリカゲルカラムの単独処理では、PCTのほとんどがmono-ortho PCBフラクション

に溶出し、一部(平面構造をとる塩素化ターフェニルと予想)がトルエンにて溶出するが、妨害の影響は少ない。

活性炭シリカゲルを用いた処理法例

Page 12: MS16 P 09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキ …ee-net.ne.jp/ms/sympo13/poster/MS16_P_09_iwakiri_P.pdfMS16_P_09 塩素化ターフェニルを含んだ ダイオキシン類試料の分析上の問題点について

【結論】 ☆PCTを多く含んだ試料のダイオキシン類分析のDL-PCBs測定時にロックマスへの妨害が認められたが、これは主に4塩素化ターフェニルの1個が脱塩素したフラグメントイオンがロックマスのm/z331に対して妨害を与えていると推察された。

☆高分解能GC/MS測定では、ロックマスのモニターイオンの変更を行い、分解能を約7200以上に設定すればPCTの影響を受けずに測定可能だが、低分解能GC/MS測定は、PCT由来のフラグメントイオンの妨害を取り除くことができないためPCTによる妨害を大きく受けることがわかった。

☆PCTを含む試料のダイオキシン類分析を行う場合、活性炭シリカゲルカラムによって得られたmono-ortho PCB画分を、アルミナカラムを用いて1%ジクロロメタン含有ヘキサンで溶出することで、mono-ortho PCBsとPCTを分離することが可能であった。この精製法を使うことで、低分解能GC/MSでも精度よく測定が可能であった。 【謝辞】 本検討を行うに当たり、ご協力を頂きました、福岡県環境保健研究所 宮脇 崇 様、(公財)ひょうご環境創造協会 兵庫県環境研究センター 松村千里 様に深く感謝いたします。

引用文献

1) Boer, The Handbook of Environmental Chemistry Vol3 Part K, p44, 2000, 2) 化学物質の環境リスク評価 [23]ポリ塩化ターフェニル 平成18年 環境省,3)岩切良次 他, 第20回環境化学討論会講演要旨集, 440-441, 2011,4) 土壌のダイオキシン類簡易測定マニュアル 平成21年3

月,5)環境省ダイオキシンに係る土壌調査測定マニュアル,平成21年3月 環境省,6) 平成14年度分析法開発調査報告書 297-312 環境省,

7) Wichmann et al., Chemospher 78 680-687,2010

*本発表の内容については発表者の個人的見解であり,環境省としての意見ではありません.