New 日本が変わる、エッジが変えるエッジ産業分析レポート（第2 … · 2013. 7. 30. · 2010年2月22日株式会社野村総合研究所サービス事業コンサルティング部

2010年2月22日

株式会社野村総合研究所サービス事業コンサルティング部副主任コンサルタント

寺田知太

〒100-0005東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル

第125回NRIメディアフォーラム

“日本が変わる、エッジが変える”エッジ産業分析レポート（第2回）

～医療・介護用食品産業～

新美佑

Copyright（C） 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 1

目次

１．はじめに

２．業界のポテンシャル

３．BtoB市場における課題

４．BtoC市場における課題

５．参考資料


1.はじめに：医療・介護用食品とは

「見た目が良い」、「美味しい」、「栄養バランスに優れる」、「調理の手間が省ける」のが特長

医療・介護用食品のメリット

食事の提供

調理の手間が省ける（コスト削減）「食べている」ことを実感させてあげられる

調理の手間が省ける（コスト削減）「食べている」ことを実感させてあげられる

美味しい見た目が良い栄養バランスに優れる咀嚼能力の回復に繋がる

美味しい見た目が良い栄養バランスに優れる咀嚼能力の回復に繋がる

要介護者、病者のメリット

介護者、病院・施設、給食事業者のメリット


1.はじめに：医療・介護用食品とは

具体的には「流動食」、「病者食」、「介護食」、「とろみ調整剤・ゲル化剤」といった医療・介護向けの加工食品を指す

「トロミーナ」ウエルハーモニー

「おじや親子丼風」キューピー

「減塩習慣」大正製薬

「カラダしっかりいちご風味」ホリカフーズ

商品例

10,800 (百万円)(10.5%)

食べ物・飲み物が旨く飲み込めず、咽せ、誤嚥（ごえん）を起こす人のために、食べ物・飲み物にとろみを付けるもの

とろみ調整剤・ゲル化剤

12,650 (百万円)(12.3%)

要介護者向けの食品

咀嚼・嚥下機能レベルにより、キザミ・ミキサー食、ソフト・ムース食等が存在

介護食

28,900 (百万円)(28.8%)

厚生労働省が定める特別用途食品および、たんぱく質、ナトリウム、カロリー等の調整をした調整食

病者食

46,400 (百万円)(48.5%)

食品規格上の濃厚流動食

咀嚼・嚥下機能が低下している高齢者向け

流動食

2008年販売額・構成比

詳細区分

医療・介護用食品の概要

出所）富士経済「食品マーケティング便覧2009」より作成


目次

１．はじめに




５．参考資料


44,000 46,400 49,900

27,90028,900

29,600

890010700

126508,5009,700

10,800

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

2006年 2007年 2008年（見込）

とろみ調整剤・ゲル化剤

介護食

病者食

流動食

2.業界のポテンシャル

医療・介護用食品市場は年7-8%で成長中

医療・介護用食品市場は増加の一途。も伸びが大きいのは介護食で2006年から2008年の間で約25％の増加

医療・介護用食品市場規模推移

出所）富士経済「食品マーケティング便覧2009」より作成

89,300

95,700

102,950

（百万円）



外部環境の点からも在宅市場を中心に今後の成長が予測される

高齢者にとって住みやすい社会作りと共に、一方で医療費や社会保障費の抑制が求められており、政府は在宅医療・介護政策を推進している

政策

経済

社会

技術

介護保険法の改正(2006.4)により、医療費・社会保障費の抑制方針が鮮明に施設における居住費・食費は全額自己負担に(2005.10)

第4次介護保険事業計画の制定(2009.3)により、在宅医療の支援を強化

介護保険改定（2005.10）、診療報酬改定(2006.4)にて、施設における介護食に対する栄養基準を強化

高齢者施設の「栄養管理体制加算」「栄養マネジメント加算」「経口移行加算」が新設さらに、「栄養管理実施加算」も新設

特別用途食品制度の改定(2009.4)により、流動食等の在宅向け販売を促進

2009年1-3月期GDPは実質で前期比4.0%減、年率換算15.2%減で、戦後大の減少率となった。長引く不況は医療費・社会保障費の抑制圧力に

2006年より人口減少社会に突入したが、高齢者（65歳以上）人口は拡大

高齢者人口の増加に伴い、要介護者の人口は増加する見込み

真空や加圧により様々な食材に各種液体成分を完全浸透させる技術、食品のエキスを逃さずに加工する技術など、柔らかい食材加工に関する技術が各社で開発されている

外部環境要因詳細

出所）各種新聞・雑誌記事より作成



①要介護者の拡大、②コスト意識の高まり、③在宅向け市場の立ち上がりにより、市場は拡大するものと考えられる

現在の対象市場

施設入居

在宅

加工食品手作り

①要介護者数の拡大①要介護者数の拡大

高齢化に伴い、要介護認定者数が増加高齢化に伴い、要介護認定者数が増加

②コスト意識の高まり②コスト意識の高まり

介護施設の利用に係わる居住費・食費が全額自己負担となり、病院・高齢者福祉施設や給食事業者においてコスト意識が高まっている

介護施設の利用に係わる居住費・食費が全額自己負担となり、病院・高齢者福祉施設や給食事業者においてコスト意識が高まっている

③在宅向け市場の立ち上がり③在宅向け市場の立ち上がり

在宅医療・介護支援政策により、在宅向け市場が本格的に立ち上がる

在宅医療・介護支援政策により、在宅向け市場が本格的に立ち上がる

製品の形態

顧客の入居場所

医療・介護用食品市場全体市場拡大の要因


目次

１．はじめに




５．参考資料


3.BtoB市場における課題：BtoB市場のバリューチェーンとプレイヤー

病院・施設向けのBtoB市場で商品が届けられるプロセスは、病院・施設が調理を内製している場合と、給食事業者に外注している場合で異なる

食品原料メーカー／医療品原料メーカー／機能性食品素材メーカー／栄養補助食品メーカー・・・

バリューチェーンプレイヤー

原材料

製造

卸

販売

利用者

専業卸食品卸医療卸

病院／高齢者福祉施設

専業メーカー食品メーカー医療関連メーカー

給食事業者

・ホリカフーズ・クリニコ・ニュートリー等・明治乳業・味の素・キユーピー等・エーザイ・エスエス製薬・テルモ等

・ﾍﾙｼｰﾌｰﾄﾞ・療食ｻｰﾋﾞｽ・ﾀﾞｲｴｯﾄﾌｰﾄﾞ等・伊藤忠食品・国分・トーホー等・ﾒﾃﾞｨｾｵ・ﾊﾟﾙﾀｯｸ・ｱﾙﾌﾚｯｻ・ｽｽﾞｹﾝ等

・日清医療食品・富士産業・ｼﾀﾞｯｸｽﾌｰﾄﾞｻｰﾋﾞｽ・ｴｰﾑｻｰﾋﾞｽ・ﾒﾌｫｽ等

※病院・施設が調理を内製している場合

※病院・施設が調理を外注している場合

出所）各種新聞記事、東京商工リサーチ等より作成


3.BtoB市場における課題

専業メーカー、加工食品メーカー、医療関連メーカーが30社以上参入し、鎬を削っている。近年は食品メーカーを中心に、新規参入・重点領域化が相次いでいる

食品原料ﾒｰｶｰ/医療品原料ﾒｰｶｰ/機能性食品素材ﾒｰｶｰ/栄養補助食品ﾒｰｶｰ/

プレイヤー



専業メーカー食品ﾒｰｶｰ医療関連

ﾒｰｶｰ

病院・施設向け給食事業者

主要参入メーカー一覧


クリニコ明治乳業ホリカフーズキユーピーニュートリー日清オイリオフードケア味の素ファルマ宮源マルサンアイエーザイ焼津水産化学工業テルモフクシマフーズ大塚製薬工場日清ファルマ興和創薬ネスレニュートリションキッセイ薬品工業和光堂三和化学研究所旭松食品旭化成ファーマ日東ベストエスエス製薬マルハニチロアボットジャパンヤヨイ食品イーエヌ大塚製薬マルハチ村松H+B ライフサイエンスハウス食品

江崎グリコカセイ食品

医療・介護用食品専業メーカー

医療関連メーカー

加工食品メーカー


3.BtoB市場における課題

卸売業者は、組合を組成することで収益を確保している

卸売業者は地場系の中小企業が多い。組合を組成し、エリア内での過度な競争を回避することで、収益を確保している


プレイヤー




ﾒｰｶｰ

病院・施設向け給食事業者

全国病院用食材卸売業協同組合

ﾒﾃﾞｨｶﾙﾌｰﾂﾞｼﾞｬﾊﾟﾝ

【メディカルフーヅジャパン】

全国病院用食材卸売共同組合に対抗し、医療系卸11社が設立

11社の協同仕入れ機能を持つ

キューピー、和光堂、ニチレイ等とPB商品を共同開発

【メディカルフーヅジャパン】

全国病院用食材卸売共同組合に対抗し、医療系卸11社が設立

11社の協同仕入れ機能を持つ

キューピー、和光堂、ニチレイ等とPB商品を共同開発

【全国病院用食材卸売協同組合】

病院への販売網に強い影響力を持つ

加盟するには、当該エリアの組合卸からの認可が必要

2003年、「加盟業者の販売地域を制限したとして、独占禁止法違反

（事業活動の不当な制限）により排除勧告を受けた経緯あり

【全国病院用食材卸売協同組合】

病院への販売網に強い影響力を持つ

加盟するには、当該エリアの組合卸からの認可が必要

2003年、「加盟業者の販売地域を制限したとして、独占禁止法違反

（事業活動の不当な制限）により排除勧告を受けた経緯あり

出所）富士経済「シルバーフード・フードサービスの徹底解明」、新聞記事等より作成


3.BtoB市場における課題：市場の成長を阻害する要因

ユーザーサイドが抱えている不満は「価格が高いこと」、「導入しても大きな負荷削減にはならないこと」

バリューチェーン上のプレイヤー

原料ﾒｰｶｰ




ﾒｰｶｰ

給食事業者

① 価格が高い

給食事業者：「今後の成長のためには、加工食品の取扱を増やし、人件費も含めた経済コストの低減が必須と考えている。しかし、現状加工食品は価格が高く、導入してもコストアップに繋がる。」

病院・施設：「利用者からは好評だが、単品の価格が高い。」

② 大きな負荷削減にならない

給食事業者：「加工食品を導入することで、どの程度人員効率が上がるのか、シミュレーションを行なった。しかし、１、２品を加工食品に代える程度では、調理時間短縮効果は極めて限定的だった。」

病院・施設：「調理に要する時間というのもあるが、「配膳」に要する時間も大きい。加工食品への代替が進んだとしても、一つ一つの品を並べる手間が削減されないと大きくは時間短縮とはならない。」

ユーザーサイドにおける不満

出所）NRIインタビュー


3.BtoB市場における課題：市場の成長を阻害する要因

成長の阻害要因は給食事業者がバイイングパワーを発揮できていないこと

メーカー・商品数が多すぎること、卸を中心とした固定的な取引関係等により、給食事業者がバイイングパワーを発揮できていない

参入メーカー・商品数が多い

・商品特性は大きく変わらない。しかし淘汰は進んでいない。

卸は組合を組成することでエリアごとに「なわばり」を確保

・競争不全に陥っている可能性

卸とメーカーは区分ごとに固定的な取引関係

・専業ﾒｰｶｰと専業卸、食品ﾒｰｶｰと食品卸、医療ﾒｰｶｰと医療卸

病院・施設は商品を指名買い（既存の取引関係を重視）

・商品をスイッチするｲﾝｾﾝﾃｨﾌﾞが存在しない

取扱商品を集約できない

スケールメリットが効かない

価格が高い大きな負荷削減にならない

問題構造

単品単品での商品提供に終始

原料ﾒｰｶｰ

プレイヤー




ﾒｰｶｰ

給食事業者

全国病院用食材卸売業協同組合ﾒﾃﾞｨｶﾙﾌｰﾂﾞ

ｼﾞｬﾊﾟﾝ

卸

メーカー

給食事業者

給食事業者

給食事業者

卸

病院、施設


3.BtoB市場における課題：打ち手の方向性

大規模プレイヤーによる、メニューレベルでの商品提供と、一括購買によるコストダウンをより進めていく必要があるものと考えられる

原料ﾒｰｶｰ

プレイヤー



専業ﾒｰｶｰ食品ﾒｰｶｰ医療関連

ﾒｰｶｰ

給食事業者

価格低減を実現負荷削減を実現

あるべきプロセス

栄養士

ﾒｰｶｰとの共同商品開発によりﾒﾆｭｰ提案力を強化

勉強会等を通じた栄養士への営業

病院・施設からのﾒﾆｭｰ権獲得

単品ごとではなく、ﾒﾆｭｰﾚﾍﾞﾙでの商品提供

商品の絞込みによる一括購買の実現

給食事業者自身：一括購買により仕入値が低減

病院・施設：美味しく、見た目も良く、食べやすいメニューを従来と変わらない価格で提供可能

加工食品の利用度を圧倒的に高めることで、調理等の手間を削減

メーカーと共同開発

１

２

３

３４

２３

４

１


目次

１．はじめに





4.BtoC市場における課題：BtoC市場のバリューチェーンとプレイヤー

BtoC市場はBtoB市場と比べて1/10程度の規模であり、市場としては未発達の状態

チャネルとしては、通信販売がほとんどを占める。メーカー、卸がそれぞれ自社webサイトにて販売することも珍しくない

食品原料メーカー／医療品原料メーカー／機能性食品素材メーカー／栄養補助食品メーカー・・・

バリューチェーンプレイヤー

原材料

製造

卸

販売

利用者

専業卸／食品卸／医療卸

一般消費者（在宅）

専業メーカー／食品メーカー／医療関連メーカー

通信販売

EC事業者薬局配食サービス通信販売

通信販売

GMS



7%

18%

67%

8%


チャネル構成比は現状、通販が約7割を占める

量販店

通販

薬局

その他

医療・介護用食品の家庭向けチャネル別販売額構成比（08年見込）

875（百万円）

2,225

8,405

975

出所）富士経済「シルバーフード・フードサービスの徹底解明」より作成



在宅介護における商品・サービスの選択意思決定はヘルパー・ケアマネジャーに大きく依存している

要介護者の介護は、家族に加えて、介護サービス事業者のヘルパーが行なうケースも多い

食事等に係る意思決定は、介護サービス事業者のヘルパー、ケアマネジャーに依存する部分が大きい

要介護者

家族

ヘルパー

ケアマネジャー介護の実施

ケアプラン作成

ヘルパーによる介護を

参考にする

介護全般について相談する

自分の介護方法が不安

※ヘルパーは、家族の方と交代で介護を行うため、要介護者に対する介護について情報交換を行う

介護プロセスにおける各人の間のやり取り

介護における商品・サービスの選択意思決定に対して大きな影響力を持つ


4.BtoC市場における課題

BtoC市場におけるユーザーサイドの不満は、BtoB市場と同様に「価格が高いこと」「大きな負荷削減にはならないこと」。加えて、そもそも認知が進んでいない状況にある

価格が高い点、負荷削減にならない点は、BtoB市場と同様

① 価格が高い

「成形されており見た目は良いし、美味しそうだけど、単品で数百円するのは正直高いと思う。」

② 大きな負荷削減にならない

「おかずを１～２品加工食品に代えたとしても、調理にかかる時間はあまり変わらないのではないか。」

ユーザーサイドにおける不満


専業卸/食品卸/医療卸

一般消費者（在宅）、在宅介護ｻｰﾋﾞｽ事業者

専業ﾒｰｶｰ/食品ﾒｰｶｰ/医療関連ﾒｰｶｰ

通信販売

EC事業者

薬局配食

サービス通信販売

通信販売

GMS

プレイヤー

③ そもそも知らない

「このような商品があることをそもそも知らないヘルパーさんが多いはず。また、本当に栄養の点で良いのか、といったところは商品を見てもあまりわからない。普通の雑炊と同じでは？と思ってしまう。」

出所）NRIインタビュー


4.BtoC市場における課題

BtoC市場において、調達のスケールメリット実現と、パッケージによる商品提供が可能となる大規模チャネルプレイヤーが存在しないことが、最大の成長阻害要因

基本的な問題構造はBtoB市場と同様。加えて、チャネル機能を担う大手プレイヤーが存在しないことが市場の成長を阻害する大の要因

問題構造


専業卸/食品卸/医療卸

一般消費者（在宅）、在宅介護ｻｰﾋﾞｽ事業者

専業ﾒｰｶｰ/食品ﾒｰｶｰ/医療関連ﾒｰｶｰ

通信販売

EC事業者

薬局配食

サービス

通信販売

GMS

プレイヤー

固定的な取引関係により多数のメーカー・商品が氾濫

取引が集約されず、価格が低減しない

価格が高い負荷削減を実現そもそも認知されない

購入する際は、単品の組み合わせがほとんど

プロモーションに対する投資がほとんど行なわれない

店頭で目にする機会が少ない

＋

大規模チャネルが不在※１

※１

通信販売


総括

ポテンシャルの高い同市場の成長を阻害する要因は「価格の高さ」と「利用による負荷低減効果の少なさ」ポテンシャルの高い同市場の成長を阻害する要因は「価格の高さ」と「利用による負荷低減効果の少なさ」

今後のさらなる成長のためには、大規模プレイヤー主導によるスケールメリットの追求と、単品ではなく一食としてのパッケージ化したメニュー提供が必要となる

今後のさらなる成長のためには、大規模プレイヤー主導によるスケールメリットの追求と、単品ではなく一食としてのパッケージ化したメニュー提供が必要となる

医療・介護用食品市場は、今後も成長が予測される医療・介護用食品市場は、今後も成長が予測される

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