6
1 木幅 5 以下のグラフの 3 彩色可能性の必要十分条件 島崎浩幸1 概要:本稿では、木幅 3 以下のグラフの 3 彩色可能性に対する都築2 の予想を証明し、さらに木 3 以下の条件を木幅 5 以下に一般化する。 1. はじめに 1.1 グラフ グラフとは頂点(ノード)と辺(エッジ)によって構成される 抽象的な概念で、様々なものの関連がグラフとしてモデル 化できる(:路線図やコンピューターネットワークなど)グラフの解法が現実問題の解法として役に立つことがあり、 グラフの最適化問題は計算理論研究室の研究テーマの一つ である。最適化問題の一つとしてグラフ描画問題というも のがあり、本研究では彩色問題を扱う。 1.2 諸定義 V : 全頂点の集合 E : 全辺の集合 G = (V,E) : 無向グラフ 1.3 彩色問題とは グラフ彩色とは、入力グラフ G に対して隣接する頂点同 士が同じ色にならないように全頂点を彩色することである。 グラフ G の彩色に必要な最小の色数を求める問題を彩色最 適化問題(彩色問題)と呼ぶ。k-彩色問題では、グラフ G k 色で彩色出来るかどうかの可否を問う。本研究で扱う 3 彩色問題は、入力グラフが 3 色で彩色出来るかの可否を問 う。この問題は NP 困難であり、現在でも研究されている 問題の一つである。 1.4 本研究について 3 彩色問題での 3 彩色不可のグラフパターンの検証」 (後、前研究)において、3 彩色不可能な部分グラフの特徴を 指摘し、頂点に対して 1 つずつ彩色しなくてもグラフの形 だけで 3 彩色の可否がわかるのではないかという提案と、 その検証が行われた。その結果、バタフライコンフリクト (後述)の有無が 3 彩色の可否を決めることの正当性が実験 から得られたが、完全に証明はされていない。そこで、本 研究では制約をより一般化した上でグラフの 3 彩色出来る こととバタフライコンフリクトが無いこと等価性を証明す ることで、 3 彩色問題の解法速度の向上や、 k 彩色問題の解 †1 明治大学 Meiji University 2 明治大学 2017 年度卒 Graduated from Meiji University in 2017 法の足掛かりとする。 2. バタフライコンフリクトの定義 バタフライコンフリクトの説明の前に、定義「蝶型グラフ」、 「ウィング対」、「バタフライ連鎖」の説明をする。 2.1 蝶型グラフ 蝶型グラフとは、次数 2 の頂点と次数 3 の頂点がそれぞ 2 つ、全 4 頂点のグラフのことを言う。4 頂点クリーク から 1 辺を除いたグラフと等価である。 2.2 ウィング対 ウィング対とは、蝶型グラフにおいて次数 2 2 つの頂 点のことを言う(1 の赤色の頂点)。蝶型グラフを 3 彩色 するためには、ウィング対は同色でなければならない。 1 : 蝶型グラフ 2.3 バタフライ連鎖 バタフライ連鎖とは、グラフ G における異なる頂点の列 1 , 2 ,.., (k 2) で、1 i < k となるすべての i に対し て、 +1 が蝶型部分グラフのウィング対であるよう なものを言う。このとき、グラフ G のどのような 3 彩色も、 バタフライ連鎖の頂点 1 , 2 ,.., をすべて同色で塗らなけ ればならない。

木幅 5以下のグラフの 3彩色可能性の必要十分条件1 木幅5以下のグラフの3彩色可能性の必要十分条件 島崎浩幸†1 • 概要:本稿では、木幅3以下のグラフの3彩色可能性に対する都築†2の予想を証明し、さらに木

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Page 1: 木幅 5以下のグラフの 3彩色可能性の必要十分条件1 木幅5以下のグラフの3彩色可能性の必要十分条件 島崎浩幸†1 • 概要:本稿では、木幅3以下のグラフの3彩色可能性に対する都築†2の予想を証明し、さらに木

1

木幅 5以下のグラフの 3彩色可能性の必要十分条件

島崎浩幸†1

• 概要:本稿では、木幅 3 以下のグラフの 3 彩色可能性に対する都築†2 の予想を証明し、さらに木

幅 3 以下の条件を木幅 5 以下に一般化する。

1. はじめに

1.1 グラフ

グラフとは頂点(ノード)と辺(エッジ)によって構成される

抽象的な概念で、様々なものの関連がグラフとしてモデル

化できる(例:路線図やコンピューターネットワークなど)。

グラフの解法が現実問題の解法として役に立つことがあり、

グラフの最適化問題は計算理論研究室の研究テーマの一つ

である。最適化問題の一つとしてグラフ描画問題というも

のがあり、本研究では彩色問題を扱う。

1.2 諸定義

V : 全頂点の集合

E : 全辺の集合

G = (V,E) : 無向グラフ

1.3 彩色問題とは

グラフ彩色とは、入力グラフ G に対して隣接する頂点同

士が同じ色にならないように全頂点を彩色することである。

グラフGの彩色に必要な最小の色数を求める問題を彩色最

適化問題(彩色問題)と呼ぶ。k-彩色問題では、グラフ G が

k 色で彩色出来るかどうかの可否を問う。本研究で扱う 3

彩色問題は、入力グラフが 3 色で彩色出来るかの可否を問

う。この問題は NP 困難であり、現在でも研究されている

問題の一つである。

1.4 本研究について

「3 彩色問題での 3 彩色不可のグラフパターンの検証」(以

後、前研究)において、3 彩色不可能な部分グラフの特徴を

指摘し、頂点に対して 1 つずつ彩色しなくてもグラフの形

だけで 3 彩色の可否がわかるのではないかという提案と、

その検証が行われた。その結果、バタフライコンフリクト

(後述)の有無が 3 彩色の可否を決めることの正当性が実験

から得られたが、完全に証明はされていない。そこで、本

研究では制約をより一般化した上でグラフの 3 彩色出来る

こととバタフライコンフリクトが無いこと等価性を証明す

ることで、3 彩色問題の解法速度の向上や、k 彩色問題の解

†1 明治大学

Meiji University

†2 明治大学 2017 年度卒

Graduated from Meiji University in 2017

法の足掛かりとする。

2. バタフライコンフリクトの定義

バタフライコンフリクトの説明の前に、定義「蝶型グラフ」、

「ウィング対」、「バタフライ連鎖」の説明をする。

2.1 蝶型グラフ

蝶型グラフとは、次数 2 の頂点と次数 3 の頂点がそれぞ

れ 2 つ、全 4 頂点のグラフのことを言う。4 頂点クリーク

から 1 辺を除いたグラフと等価である。

2.2 ウィング対

ウィング対とは、蝶型グラフにおいて次数 2 の 2 つの頂

点のことを言う(図 1 の赤色の頂点)。蝶型グラフを 3 彩色

するためには、ウィング対は同色でなければならない。

図 1 : 蝶型グラフ

2.3 バタフライ連鎖

バタフライ連鎖とは、グラフ G における異なる頂点の列

𝑣1, 𝑣2, . . , 𝑣𝑘 (k ≥ 2) で、1 ≤ i < k となるすべての i に対し

て、𝑣𝑖 と 𝑣𝑖+1が蝶型部分グラフのウィング対であるよう

なものを言う。このとき、グラフ Gのどのような 3彩色も、

バタフライ連鎖の頂点𝑣1, 𝑣2, . . , 𝑣𝑘をすべて同色で塗らなけ

ればならない。

Page 2: 木幅 5以下のグラフの 3彩色可能性の必要十分条件1 木幅5以下のグラフの3彩色可能性の必要十分条件 島崎浩幸†1 • 概要:本稿では、木幅3以下のグラフの3彩色可能性に対する都築†2の予想を証明し、さらに木

2

図 2 : バタフライ連鎖の例

2.4 バタフライコンフリクト

バタフライコンフリクトとは、グラフ G におけるバタフ

ライ連鎖の頂点𝑣1, 𝑣2, . . , 𝑣𝑘 (k ≥ 2)で、異なるウィング対

{𝑣𝑖 , 𝑣𝑗} (1 ≤ i < j ≤ k)が辺を持つことを言う。このとき、グ

ラフ G は 3 彩色できない。例えば、図 3 においていずれか

の破線がグラフの辺であるとき、そのグラフはバタフライ

コンフリクトが生じていると言え、3 彩色出来ないことを

確認できる。

図 3 : バタフライコンフリクトの例

なお、用語の名称や定義方法が前研究と一部異なるが、そ

れはより一般的に定義したためである。

3. 木分解と木幅

3.1 木分解の利用

本研究における証明の手段として木分解を利用する。木分

解によって大きなグラフ(問題)を小さく分けることが出来

るため、一般的なグラフに対して分析が容易となる。

3.2 木分解の定義

無向グラフ G=(V,E)の部分グラフを木のように並べたも

のを木分解と呼ぶ。部分グラフ1つ1つをバッグと呼ぶ。

木は以下の条件を満たす。

[1]G上の全ての頂点はそれぞれ 1 つ以上のバッグに存在す

る。

[2]G 上の全ての辺はそれぞれ 1 つ以上のバッグに存在す

る。

[3]ある頂点 v について、v が存在するバッグは連結してい

る。

3.3 木幅の定義

木分解の幅とは、その木分解の[バッグの大きさの最大値-

1] である。グラフ G の木幅とは、G を木分解して得られ

るあらゆる幅の最小値である。

図 4 : グラフと木分解後の木の例

4. 証明する定理

4.1 前研究との相違点

前研究ではバタフライコンフリクトと 3 彩色可能性の関

係性が分析され、以下の予想について検証が行われた。

予想 : 木幅 3 以下のグラフにおいては、3 彩色可

能性とバタフライコンフリクトを持たないこと

は等価である

この予想は検証によって正当性が得られた一方で完全に

証明されたわけではない。本研究ではこの予想をより一般

化し、以下のような定理として証明をする。

定理 : 木幅 5 以下のグラフにおいては、3 彩色可

能性とバタフライコンフリクトを持たないこと

は等価である

4.2 3彩色可能なグラフの分析と証明の準備

バタフライ連鎖の頂点の 3 彩色するとき、ウィング対が

同色でなければならないことから、証明するものを新たに

以下の定理 1 とする。

定理1 : G を無向グラフ、T を G の木幅5以下の

木分解、X を T のバッグのひとつ、I={𝑰𝟏 … 𝑰𝒕} を

G[X]の 2 頂点以上の独立点集合の集まりで、異な

る i,j について𝑰𝒊 ∩ 𝑰𝒋 = ∅であるようなものとする。

このとき 1 ≤ i ≤ t に対して𝑰𝒊の頂点を 1 色で塗

るような、G の 3 彩色が存在する。

また、グラフ G を木分解でバッグに分けたとき、一般性

を失うことなく、次の 4 つの場合を考えればよい。

(基底)X は T のただ一つのバッグである

(導入)X と隣接する T のバッグはただひとつ(X’)

であり、X は X’にただひとつの頂点を加えたも

のである。

(忘却)X と隣接する T のバッグはただひとつ(X’)

であり、X は X’からただ一つの頂点を除いたも

のである。

(統合)Xと隣接する T のバッグは X1 と X2 のふた

つであり、この三つのバッグは集合として等しい。

あらゆる G[X]において、以上の 4 種類のバッグについて

定理 1 に基づいた 3 彩色可能性を証明することで、帰納的

Page 3: 木幅 5以下のグラフの 3彩色可能性の必要十分条件1 木幅5以下のグラフの3彩色可能性の必要十分条件 島崎浩幸†1 • 概要:本稿では、木幅3以下のグラフの3彩色可能性に対する都築†2の予想を証明し、さらに木

3

に T 及び G の 3 彩色可能性を証明ができる。

定理 1 の証明にあたって、バタフライコンフリクトがな

い頂点数 4,5,6 のグラフの独立点集合の取り方を調べる。

ここで、グラフ G[X]の互いに交わらない独立点集合の集ま

り𝐼1, 𝐼2, ... , 𝐼𝑘を、(|𝐼1|, |𝐼2|, ... ,|𝐼𝑘|)型の独立集合族と呼ぶ。

4 頂点グラフでバタフライコンフリクトがないグラフは(2)

型のみであることは明らかである(蝶型グラフ)。次に 5 頂

点グラフで独立集合族の取り方と、それぞれのバタフライ

コンフリクトの有無、またバタフライコンフリクトが無い

族同士の部分グラフの有無を調べ、以下の表にまとめる。

独立集合族 バタフライコンフリクト 部分グラフ

(2)型 有

(2,2)型 無 無

(2,3)型 無 ⊂ (2,2)型

(3)型 無 無

(4)型 無 ⊂ (3)型

(5)型 無 ⊂ (3)型

表 1 : 5 頂点のグラフにおける独立集合族の取り方

以上より、5 頂点グラフでバタフライコンフリクトを持

たないならば、必ず(2,2)型、(3)型のいずれかの独立集合族

を持つ。同様に 6 頂点のグラフで独立集合族の取り方を、

(2.2)型、(3)型を基準に調べ、以下の表にまとめる。

独立集合族 バタフライコンフリクト 部分グラフ

(2,2)型 有

(2,2,2)型 無 無

(2,3)型 無 無

(2,4)型 無 ⊂ (2,3)型

(3)型 有

(3,3)型 無 ⊂ (2,3)型

(4)型 無 無

(5)型 無 ⊂ (4)型

(6)型 無 ⊂ (4)型

表 2 : 6 頂点のグラフにおける独立集合族の取り方

以上より、6 頂点グラフがバタフライコンフリクトを持

たないならば、必ず(2,2,2)型、(2,3)型、(4)型のいずれかの

独立集合族を持つ。以下のような各頂点数におけるバタフ

ライコンフリクトがない独立集合族について定理 1 が成り

立つ説明をすれば G に対しての証明が出来る。

頂点数 6

① (|𝐼1|,|𝐼2|,|𝐼3|) = (2,2,2)型

② (|𝐼1|,|𝐼2|) = (2,3)型

③ (|𝐼1|) = (4)型

頂点数 5

④ (|𝐼1|,|𝐼2|) = (2,2)型

⑤ (|𝐼1|) = (3)型

頂点数 4

⑥ (|𝐼1|) = (2)型

また、頂点数 5 の(3)族と頂点数 4 の(2)族は頂点数 6 の(4)

族の部分グラフであるため、証明から省く。したがって、

上記のパターン①~パターン④について証明をする。

5. 定理1の証明

5.1 基底

|X| ≤ 6 なので、バタフライコンフリクトがないことから、

3彩色が可能なことおよび、互いに交わらない独立点集合

をそれぞれ一色で彩色できることは容易に確認できる。

5.2 導入

導入における追加頂点を v、X で v ∈ 𝐼𝑖について、𝐼𝑖 - {v}

の 1 頂点を v’、または 2 つ以上の頂点を v’ ={𝑣𝟏′ … 𝑣𝒕′}と

する。

【パターン①】X = X’ ∪ {𝑣} であり、𝐼1, 𝐼2は独立点集合、

v と𝐼1, 𝐼2の各頂点に辺がある。

図 5 : ①のグラフ

証明すること:𝐼1, 𝐼2, 𝐼3の 6 頂点をそれぞれ同色で塗る

ような G の3彩色がある。

定理 1 より、𝐼1, 𝐼2をそれぞれ同色、v’を別の色で塗るよう

な G - {𝑣}の 3 彩色がある。

=> v と v’を含む𝐼3について、v を v’と同色で塗れば、求め

る3彩色が完成する

②(|𝐼1|,|𝐼2|) = (2,3)型のとき、X において v が𝐼1に含まれる場

合、𝐼2に含まれる場合、いずれにも含まれない場合の 3 通

りのパターンが考えられるため、それぞれで証明をする(順

に②-a、②-b、②-c とする)。

【パターン②-a】X = X’ ∪ {𝑣} であり、𝐼2は独立点集合、v

は𝐼2の各頂点と X - Iの 1 頂点に辺がある。

Page 4: 木幅 5以下のグラフの 3彩色可能性の必要十分条件1 木幅5以下のグラフの3彩色可能性の必要十分条件 島崎浩幸†1 • 概要:本稿では、木幅3以下のグラフの3彩色可能性に対する都築†2の予想を証明し、さらに木

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図 6 : ②-a のグラフ

証明すること:𝑰𝟏, 𝑰𝟐の 5 頂点をそれぞれ同色で塗るような

G の3彩色がある。

定理 1 より、𝐼2の 3 頂点を同色、残りの 2 頂点をそれぞれ

別の色で塗るような G - {𝑣}の 3 彩色がある。

=> v と v’を含む𝐼1について、v を v’と同色で塗れば、求

める3彩色が完成する。

【パターン②-b】X = X’ ∪ {𝑣} であり、𝐼1, 𝐼2 − {𝑣}は独立点

集合、v は𝐼1の各頂点と X - Iの 1 頂点に辺がある。

図 7 : ②-b のグラフ

証明すること:𝐼1, 𝐼2の 5 頂点をそれぞれ同色で塗るような

G の3彩色がある。

定理 1 より、𝐼1, 𝐼2 − {𝑣}をそれぞれ同色、残りの 1 頂点を

別の色で塗るような G - {𝑣}の 3 彩色がある。

=> v と v’を含む𝐼2について、v を v’と同色で塗れば、求め

る3彩色が完成する。

【パターン②-c】X = X’ ∪ {𝑣} であり、𝐼1, 𝐼2は独立点集合、

v と𝐼1, 𝐼2の各頂点に辺がある。

図 8 : パターン②-c のグラフ

証明すること:𝐼1, 𝐼2の 5 頂点をそれぞれ同色で塗るような

G の3彩色がある。

定理 1 より、𝐼1,𝐼2をそれぞれ同色で塗るような G - {𝑣}の 3

彩色がある。

=> v を別の色で塗れば、求める3彩色が完成する。

③(|𝐼1|) = (4)型のとき、X において v が𝐼1に含まれる場合、

含まれない場合の 2 通りのパターンが考えられるため、そ

れぞれで証明をする(順に③-a、③-b とする)。

【パターン③-a】X = X’ ∪ {𝑣} であり、𝐼1 − {𝑣}は独立点集

合、v と X - Iの 2 頂点に辺がある。

図 9 : パターン③-a のグラフ

証明すること:𝐼1の 4 頂点を同色で塗るような G の3彩

色がある。

定理 1 より、𝐼1 − {𝑣}の 3 頂点を同色、残りの 2 頂点をそ

れぞれ別の色で塗るような G - {𝑣}の 3 彩色がある。

=> v と v’を含む𝐼1について、v を v’と同色で塗れば、求め

る3彩色が完成する。

【パターン③-b】X = X’ ∪ {𝑣} であり、𝐼1は独立点集合、v

とバッグ内の各頂点に辺がある。

Page 5: 木幅 5以下のグラフの 3彩色可能性の必要十分条件1 木幅5以下のグラフの3彩色可能性の必要十分条件 島崎浩幸†1 • 概要:本稿では、木幅3以下のグラフの3彩色可能性に対する都築†2の予想を証明し、さらに木

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図 10 : パターン③-b のグラフ

証明すること:𝐼1の 4 頂点を同色で塗るような G の3彩

色がある。

定理 1 より、𝐼1の 4 頂点を同色、残りの 1 頂点を別の色で

塗るような G - {𝑣}の 3 彩色がある。

=>v を残った別の色で塗れば、求める3彩色が完成する。

④(|𝐼1|,|𝐼2|) = (2,2)型のとき、X において v が𝐼1(𝐼2)に含まれる

場合、含まれない場合の 2 通りのパターンが考えられるた

め、それぞれで証明をする(順に④-a、④-b とする)。

【パターン④-a】X = X’ ∪ {𝑣} であり、𝐼2は独立点集合、v

は𝐼2の各頂点と X – Iの 1頂点と辺を持つ

図 14 : パターン⑥-a のグラフ

証明すること:𝐼1, 𝐼2の 4 頂点をそれぞれ同色で塗るような

G の3彩色がある。

定理 1 より、𝐼2の 2 頂点を同色、残りの 2 頂点をそれぞれ

別の色で塗るような G - {𝑣}の 3 彩色がある。

=> v と v’を含む𝐼1について、v を v’と同色で塗れば、求

める3彩色が完成する。

【パターン④-b】X = X’ ∪ {𝑣} であり、𝐼1, 𝐼2は独立点集合、

v は𝐼!, 𝐼2の各頂点と辺を持つ

図 15 : パターン⑥-b のグラフ

証明すること:𝐼1, 𝐼2の 4 頂点をそれぞれ同色で塗るような

G の3彩色がある。

定理 1 より、𝐼1, 𝐼2をそれぞれ同色で塗るような G - {𝑣}の 3

彩色がある。

=>v を残った別の色で塗れば、求める3彩色が完成する。

5.3 忘却

忘却における削除頂点を v とする

【パターン①】X = X’ − {𝑣} であり、𝐼1, 𝐼2,𝐼3は独立点集合、

v ∈ 𝐼3

証明すること:𝐼1, 𝐼2の 4 頂点をそれぞれ同色で塗るよう

な G の3彩色がある(I3は忘却により独立点集合ではなく

なる)。

定理 1 より、𝐼1, 𝐼2,𝐼3をそれぞれ同色で塗るような G の 3

彩色がある。

=> X’から v を除いたとき、X で𝐼1, 𝐼2のそれぞれを同色で

塗るような3彩色が完成する。

②(|𝐼1|,|𝐼2|) = (2,3)型のとき、X において v が𝐼1に含まれる場

合、𝐼2に含まれる場合、いずれにも含まれない場合の 3 通

りのパターンが考えられるため、それぞれで証明をする(順

に②-d、②-e、②-f とする)。

【パターン②-d】X = X’ − {𝑣} であり、𝐼1, 𝐼2は独立点集合、

v ∈ 𝐼1

証明すること:𝐼2の 3 頂点を同色で塗るような G の3彩

色がある。

定理 1 より、𝐼1, 𝐼2をそれぞれ同色、X’ – Iの 1 頂点を残っ

た別の色で塗るような G の 3 彩色がある。

=> X’から v を除いたとき、X で𝐼2の 2 頂点を同色で塗る

ような3彩色が完成する。

【パターン②-e】X = X’ − {𝑣} であり、𝐼1, 𝐼2は独立点集合、

v ∈ 𝐼2

証明すること:𝐼1, 𝐼2の 4 頂点をそれぞれ同色で塗るような

G の3彩色がある。

定理 1 より、𝐼1, 𝐼2をそれぞれ同色、X’ – Iの 1 頂点を残っ

た別の色で塗るような G の 3 彩色がある。

=> X’から v を除いたとき、X で𝐼1, 𝐼2をそれぞれ同色で塗

るような3彩色が完成する。

【パターン②-f】X = X’ − {𝑣} であり、𝐼1, 𝐼2は独立点集合、

v ∉ 𝐼1, 𝐼2

証明すること:𝐼1, 𝐼2の 5 頂点をそれぞれ同色で塗るような

G の3彩色がある。

定理 1 より、𝐼1, 𝐼2をそれぞれ同色、X’ – Iの 1 頂点を残っ

た別の色で塗るような G の 3 彩色がある。

=> X’から v を除いたとき、X で𝐼1, 𝐼2をそれぞれ同色で塗

るような3彩色が完成する。

Page 6: 木幅 5以下のグラフの 3彩色可能性の必要十分条件1 木幅5以下のグラフの3彩色可能性の必要十分条件 島崎浩幸†1 • 概要:本稿では、木幅3以下のグラフの3彩色可能性に対する都築†2の予想を証明し、さらに木

6

③(|𝐼1|) = (4)型

のとき、X において v が𝐼1に含まれる場合、含まれない場

合の 2 通りのパターンが考えられるため、それぞれで証明

をする(順に③-c、③-d とする)。

【パターン③-c】X = X’ − {𝑣} であり、𝐼1は独立点集合、v

∈ 𝐼1

証明すること:𝐼1の 3 頂点を同色で塗るような G の3彩

色がある。

定理 1 より、𝐼1の 4 頂点を同色、X’ – Iの 2 頂点をそれぞ

れ別の色で塗るような G の 3 彩色がある。

=> X’から v を除いたとき、X で𝐼1の 3 頂点を同色で塗る

ような3彩色が完成する。

【パターン③-d】X = X’ − {𝑣} であり、𝐼1は独立点集合、v

∉ 𝐼1

証明すること:𝐼1の 4 頂点を同色で塗るような G の3彩

色がある。

定理 1 より、𝐼1の 4 頂点を同色、X’ – Iの 2 頂点をそれぞ

れ別の色で塗るような G の 3 彩色がある。

=> X’から v を除いたとき、X で𝐼1の 4 頂点を同色で塗る

ような3彩色が完成する。

④(|𝐼1|,|𝐼2|) = (2,2)型のとき、X において v が𝐼1(𝐼2)に含まれる

場合、含まれない場合の 2 通りのパターンが考えられるた

め、それぞれで証明をする(順に④-a、④-b とする)。

【パターン④-a】X = X’ − {𝑣} であり、𝐼1, 𝐼2は独立点集合、

v ∈ 𝐼2

証明すること:𝐼1の 2 頂点を同色で塗るような G の3彩

色がある。

定理 1 より、𝐼1, 𝐼2をそれぞれ同色、X’ – Iの 1 頂点を別の

色で塗るような G の 3 彩色がある。

=> X’から v を除いたとき、X で𝐼1の 2 頂点を同色で塗る

ような3彩色が完成する。

【パターン④-b】X = X’ − {𝑣} であり、𝐼1, 𝐼2は独立点集合、

v ∉ 𝐼1, 𝐼2

証明すること:𝐼1, 𝐼2の 4 頂点をそれぞれ同色で塗るような

G の3彩色がある。

定理 1 より、𝐼1, 𝐼2をそれぞれ同色、X’ – Iの 1 頂点を別の

色で塗るような G の 3 彩色がある。

=> X’から v を除いたとき、X で𝐼1, 𝐼2をそれぞれ同色で塗

るような3彩色が完成する。

5.4 結合

X と隣接するふたつのバッグX1とX2は集合として等しい

ため、X1,X2の彩色結果を X の対応した頂点にそのまま引

き継ぐことが出来る。このことから 3 彩色が可能であるこ

とは明らかである

5.5 まとめ

G[X]の基底、導入、忘却、結合についてバッグ内での彩

色が定理 1 に基づき 3 彩色可能であるため、T が 3 彩色可

能、そしてそれは G も 3 彩色可能と言える。したがって、

木幅 5 以下のグラフにおいては、3 彩色可能性とバタフラ

イコンフリクトを持たないことは等価である。

6. 今後の展望

木幅 5 以下までのグラフについては証明が出来たが、そ

れ以上の木幅についても検証し、より一般的な定理を調べ

る余地がある。今現在検証中であり本研究には含まれてい

ないが、木幅 6 に関してはおそらく定理 1 によって証明が

出来る見通しが立っている。同様に木幅 7 以降の証明が出

来ればより一層の 3 彩色問題の解法の足掛かりとなるだろ

う。

参考文献

1) 都築秀之 3 彩色問題での 3 彩色不可のグラフパターンの検証

http://www.th.cs.meiji.ac.jp/assets/researches/2017/tsuzuki/research_tsu

zuki.pdf

2) 岩田陽一“Tree-width and other width parameters”(2013-7)

http://www-imai.is.s.utokyo.ac.jp/~imai/lecture/GraphMinor.pdf