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1992年度下水道新技術研究所年報
小規模処理場の省力化の需要調査及び
集約管理システム評価モデルに問する調査
1.はじめに
これから新規に下水道整備に着手しようという市町
村は,ますます人口規模が小さくなり一般に単位水
魔当たりの維持管理費が高くなる傾向がある。
一方,これらの市町村では維持管理技術者の確保
が困難であり,できるだけ人手のかからない維持管
理システムが必要になってくる。
そこで,本調査では,
D できるだけ人手をかけずに,そして高度な技
術がなくてもすむように,維持管理の自動化を
図る。
2)複数の処理場を一括して遠隔監視・制御する
ための集約管理システムを構築し,実用化を図
る。
を目的として,アンケート等による基礎調査を行っ
た。
2.調査方針
1)調査は平成4年度から数年で行う。
2)対象とする処理方式はOD法とする。
3)メンテナンス間隔の目標を1カ月とし,これ
が無理な場合にはメンテナンスアラーム装置等
を考える。
4)自動化は集約管理システムが通用可能なもの
とする。
3.調査内容
平成4年度は基礎調査として,
1)地方自治体における維持管理実態調査と省力
化需要調査
2)OI〕法の運転管理手法の設定調査
3)集約管理システムの評価モデルの作成調査
の各項目について検討した。その結果は以下の様で
ある。
311 実態調査について
OD法を採用する全国の処理場の ちで 計画処
理水量18,000m3/臼以下で,かつ供用開始後1年
以上経過した72カ所を対象に地方公共団体に対し
て郵送によるアンケート調査を依頼し,69カ所に
ついて回収した。回答結果の主な内容は以下のとお
りである。
(1)対象施設の概要
1)施設能力と稼動年数
アンケート対象施設のうちで84%にあたる58カ
所は,3,000mソ冒未満の処理能力となっている
(表3-1)。
また,稼動年数別では60%にあたる41カ所が3
年未満となっており,OD法が極く最近に採用され
だしたことを示している(表3-2)。
2)現有処理能力と現況流入水量の関係
図3-1に示すとおり,現有処理能力に匹敵する
流入状況にある施設は1割程度であり,ほとんどの
施設が処理能力以下の条件で運転されている。
3)現有施設と使用状況
各処理場における単位施設の設置状況は,表3-
3に示すとおりであり,これよりOD法による処
一一11131
1992年度下水道新技術研究所年報
表3-1 事業種別処理能力別施設数
処理規模 (d / 日) 公共下水道 特定環境保全公共下水道 農村集落排水 計
500 未満 1 6 4 1 1
~ 100 0 2 1 0 5 1 7
~ 150 0 5 6 2 1 3
~ 200 0 5 4 0 9
~ 300 0 7 1 0 8
3 00 0 以上 9 2 0 1 1
計 2 9 2 ・9 1 1 6 9
表3-2 事業種別稼働年数別施設数
稼 働 年 数 公共下水道 特定環境保全公共下水道 農村集落排水 計
6 年以上 6 4 0 1 0
3 ~ 5 年 5 8 4 1 7
3 年未満 1 8 1 6 7 4 1
計 2 9 2 8 1 1 6 8
(無回答1)
図3-1 現有施設能力と現況流入水量単位・千
現況流入臓 等ぶ/日)
4
現有能力(千前/日)
表3-3 現有施設の使用状況(使用系列数区分)
な し 1 槽 (池) 2槽 (池)以上 計
沈 砂 2 3 3 3 1 3 6 9
除 砂 3 7 3 1 1 6 9
スクリーン 6 4 2 2 1 6 9
主 ポ ンプ 1 3 1 5 5 6 9
調 整 槽 5 7 8 4 6 9
初 沈 6 6 2 1 6 9
デ ィ ッチ 0 3 8 3 1 6 9
終 沈 0 3 6 3 3 6 9
単位・干
な し 1 槽 (池 ) 2槽 (池)以上 計
滅 菌 1 5 9 - 9 6 9
濃 縮 槽 4 5 8 7 6 9
貯 留 槽 6 5 3 1 0 6 9
脱 水 機 3 0 3 7 2 6 9
脱 臭 4 6 1 8 5 6 9
一一1114-
1992年度下水道新技術研究所年報
理場の標準的なフローシートを示すと次のとおりと
なる。
水処理施設;沈砂池→除砂設備→スクリーン
→主ポンプー→オキシデーション
ディッチ→終沈→滅菌
汚泥処理施設;濃縮槽→貯留槽→脱水機
除砂設備・脱水機の施設が設置されている処理場
数は,ほぼ半分である。
(2)維持管理体制
維持管理の直営,委託の種別については表3-4,
3-5のようになっており,近年になるにつれ直営
の比率が下がってきているのがわか.る。また,規模
別でも委託の割合は高い傾向にある。表3-6より
規模別の処理場常駐人員(日中の人員)では規模が
表3-4 稼働年数別管理体制
稼働年数 直 営 一部委託 全面委託 計
6 年以上 3 4 3 1 0
3 ~ 5 年 1 7 9 1 7
3 年未満 1 1 8 2 2 4 1
計 5 2 9 3 4 6 8
衷3-5 処理能力別管理体制
処理規模は) 直 営 一部委託 全面委託 計
500 未満 0 2 9 1 1
~1,000 3 7 7 1 7
ノ~1,500 1 6 6 1 3
~2,000 0 6 3 9
~3,000 0 4 4 8
3,000以上 1 3 7 1 1
計 5 2 8 3 6 6 9
表3-6 規模別常駐人員
処理規模(d ) 0 人 1 ~ 2 人 3 ~ 4 人 5 人以 上
0~ 50 0 1 0 1 0 0
~ 1,00 0 1 3 2 1 1
~ 1,5 00 5 5 3 0
~ 2,00 0 2 3 1 3
~ 2,5 00 2 0 5 1
~ 3,0 00 1 1 5 4
計 3 3 1 2 1 5 9
大きくなるほどその比率が高くなっている。
(3)維持管理作業の所要時間
図3-2及び図3-3は,施設毎の現有処理能力と
1日の維持管理作業(一般管理は含まず)の延べ所
要時間の関係及び現況日平均処理量と所要時間の関
係を示したものである。
デスクワークを除いた維持管理の作業時間数では
汚泥処理施設の有無によって大きな差が生じ,汚泥
処理施設を有する施設では年間の作業時間の平均が
約12,800時間であるのに対し,水処理施設のみの
処理場でのそれは3,200時間であり,約4倍の差が
あった。
(4)維持管理費
1)電力量及び電力費
図3-4及び図3-5は,各処理施設の現況の日
平均流入下水量と年間の魔力蛍及び電力費の関係を
示したものであり,電力鼠 電力費は流入下水量が
小さいほど割高となっている。
2)維持管理費
図3-6は,現有処理能力と維持管理費(直営の
人件費は含まず)の関係を脱水機の有無別に示した
ものである。
脱水機の有無による差は射まど認められない。
(5)水質測定
水質測定回数については衷3-7のとおりであり,
OD欄内のpH,DOについてはほとんどの処理場
が毎日測定を実施していた。また,処理水のpHま
たはBODとSSについては毎日測定を実施してい
るところと,2~3回/月の箇所がほぼ半々であっ
た。これによれば,OD欄内の運転指標として比較
的簡易に測定のできるpH,DOが用いられている
ことがわかる。
この他,返送汚泥濃度の測定は36カ所で実施し
ており,そのほとんどが1回/週以上の測定頻度で
実施していた。
(6)運転操作時間
運転操作時問については,サンプル数が13件と
少ないが,汚泥脱水機まで設置された処理場のうち
手動運転については操作時間が年間約1,600時間で
あり,これに対して自動運転では年間約42時間で
あった。その構成は表3-8のとおりであり,終沈
のスカム除去や汚泥ポンプの操作,沈砂池でのし漬
除去や沈砂の除去,汚泥濃縮槽での作業に時間がか
かっていた。
(7)自動化のニーズ
維持管理で手間のかかる作業としては,清掃(主
一115一
1992年度下水道新技術研究所年報
図3-2 現有処理能力と維持管理所要時間数
維持管理所要時間(時間/日)
維持管理所要時間八時間/日〕
現有能力(千前/日)
ロ脱水機有り 十脱水機無し
図3 -3 現況処理水教と維持管理所要時間
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冒平均流入水壌(千㌦/日)
□脱水機有り +脱水機無し
図3-4 流入下水量と電力量の関係
400 300 200
電力量(千KWh/年)
屯ロ ロ
ロ ロロ ロ ロ
2
日平均流入水量(千d/日)
-116-
1992年度下水道新技術研究所年報
図3-5 流入下水量と電力費の関係
電力費(百万円/年)
図3-6 現有処理能力と維持管理贅の関係
現有処理能力(千mソ冒)
口脱水機有り +脱水機無し
表3-7 水質試験の頻度ランク別項目別実施状況(施設数)
試験項 目
頻度区分
O D 内 処 理 水
pH D O M L S S p H CO D またはBO D S S
0 実 施 せ ず 2 4 3 0 0 0
1 ほ ぼ 毎 日 5 0 5 2 3 5 3 8 1 9 1 7
2 3 回 / 過 1 1 5 4 2 3
3 2 回 / 週 6 5 2 8 4 4
4 1 回 / 週 4 3 5 4 5 7
5 2 ~ 3 回/月 2 0 9 8 2 5 2 7
6 1回/月以下 0 0 6 3 5 7
ー117-
1992年度下水道新技術研究所年報
表3-8 年間手動運転・操作時闇の試算(年間の平均操作所要時間を使用)
施 設 概 略 操 作 時 間 配 分
1 : 流 入 渠 0 .25 %
2 : 沈 砂 池 24 .0 7 %
3 : 主 ポ ン プ 1 .8 8 %
4 : 分 水 ゲ ー ト (稼 動 堰 ) 0 .14 %
5 : デ ィ ッ チ 槽 0 .0 1 %
6 : 最 終 沈 殿 池 34 .15 %
7 : 放 流 設 備 2 .49 %
8 : 濃 縮 槽 14 .8 1 % 1
9 : 汚 泥 貯 留 槽 7 .9 1 %
1 0 : 汚 泥 脱 水 機 10 .09 %
11 : 場 内 給 水 1 .4 8 %
12 : 受 電 ・配 電 設 備 2 .74 %、
に終沈トラフ)とスクリーンし液の除去が一番多く
なっている。これを受けた形で,自動化の要望とし
ては,自動スクリーンの導入が…一番多く,次に
MLSS制御の導入,流濃調整の順になっている。
また,自動化の阻害要因として,水魔愛執 費胤
スペ…ス等があげられている(泉3-11)。
(8)ヒアリング(苦情等)
OD法の処理場11カ所について,現地ヒアリン
グ調査を行った。その主な結果は,以下のとおりで
ある。
D L唐の処理について多くの労力を費やしてお
り,中には臭気の発生防止のため毎日し液の焼
却を行っているところもあった。
2)最終沈殿池での滞留スカムの処理に苦慮して
いる。例えばセンターウェルの中に滞留したス
カムを手作業で除去している例もあった。また,
スカムを収集できてもうまく処理できなくて困っ
ているところもあった。
3)重力式汚泥濃縮槽では汚泥濃縮が良好でなく,
上下に汚泥が分離しているため,中間水をポン
プにて排除することにより汚泥濃度を確保して
いるところがあった。
3-2 運転手法レベルについて
OD法の運転における操作因子は,①曝気機,
②返送汚泥ポンプ,③余剰汚泥引き抜きポンプの
3つである。これらの操作因子ごとに,運転手法と
その特性を比較検討したのが表3-12~3-14で
表3-9 維持管理で手間のかかる作業項目
作 業 項 目 件 数
清掃 (主 に終沈 トラフ) 1 7
ス ク リー ンし連 の除去 1 6
汚泥 脱水 9
水 質試験 4
日 ・月報整 理 3
表3-10 自動化の要望
項 目 件 数
自動スク リーンの導入 5
M L SS 制御の導入 4
流煎調整 3
遠方監視 2
D O 制御 1
停電時のシーケンサー故障通報 .1
義3-11自動化を妨げる要因
要 因 件 数
水量変動 (雨天時を含む) 9
眉 動化のための費用 8
自動化 のためのスペース 5
水質変動 3
異物の流入 3
汚泥処理 (特に乾燥) 3
自動化処理の信頼性 3
パソコンらの知識修得 2
特 に妨 げる要因はない 3
-118-
1992年度下水道新技術研究所年報
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1992年度下水道新技術研究所年報
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1992年度下水道新技術研究所年報
ある。
この結果をもとに,必要なセンサー等を考慮した
組み合わせを検討し,自動化による運転管理手法レ
ベルを表3-15のようにランク分けした。
各ランクの特徴をもとに,評価モデルの開発目標
を検討し,同表に示す「Cランク」レベルの自動化
を目指すことにした。
Cランクは表3-15の様な制御法を原則として,
1)DO計,pH計,MLSS計,UV計,汚泥
界面計,返送汚泥濃度計で水質の監視を行
う。
2)曝気工程をタイマーセット,マニュアル,
DO追随等で嫌気好気を制御(回転数制御も
含む)出来るものとする。
3)返送汚泥量,余剰汚泥量はタイマーセット,
マニュアル,MLSS制御等で制御出来るも
のとする。
4)これらの項目の実際の設定においてははと
表3-15 運転管理手法のレベル
項 目
ランク定 義 程 度 曝気装置の制御 返送汚泥量の制御 余剰汚泥畳の制御
A
O D 法で考慮され 最高級な機能 (人 理論をデル法によ 固形物収支による SR T 一定 法 に よ
る全ての機能を含 的判断が最も少な る曝気魔の制御 返送汚泥量の制御 る余剰汚泥最の制
む。 い) 御
B
0 1〕法で考慮 され 高級な機能 理論モデル法を参 固形物収支による SR rr・・Hd定法による
る機能をほぼ含む
が,W両部経験則に
よる。
考に曝気量を制御
する (経験則によ
る制御)。
返送汚泥濠の制御 余剰汚泥幾の制御
SR T 一定 法 に よ
C
O D 法で考慮され やや高級な機能 pH , D O を参考 固形物収支による
る一般的必要な機 に曝気慶を制御す 返送汚泥隻の制御 る余剰汚泥最の制
能を含む。 る (経験則による
制御)。
御
D
O D 法で考慮 きれ 中級の機能 pH を参考 に曝気 固形物収支による M L SS 濃度+定法
る一般的必要な機 量を制御す る(経 返送汚泥量の制御 による余剰汚泥量
能か ら一部を削除 験別による制御)。 の制御
E
O D 法で考慮 され 必要な機能 定期的巡回により 一定量を返送によ 一定量を引き抜 く
る最低限必要な機 曝気量を更生する る返送汚泥量の制 余剰汚泥量の制御
能にカメラ監視を
加えたもの
(経験則による制
御)。
御
F
O D 法で考慮 され 最低限必要な機能 定期的巡回により 一定量を返送によ 一定量を引き抜 く
る最低限必要な機 曝気量を更生す る る返送汚泥量の制 余剰汚泥量の制御
能 (経験則 による制
御)。
御
ー1231
1992年度下水道新技術研究所年報
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1992年度下水道新技術研究所年報
んどを各処理場毎の経験則によることとする。以
上のことが可能なシステム構成とする。
3-3 維持管理費用評価モデルの作成調査
(1)検討の対象とする内容
維持管理費用モデルの作成にあたり,検討の対象
とする改善項目は,
1)機器の自動化による省力化
2)監視・操作の自動化による省力化
3)処理施設の集約化による建設費及び維持管理
費の低減化
である。
① 機器の自動化による省力化
「機器の自動化」は現在,(社)日本下水道施設業
協会でその調査が継続中であるが,最も開発が求め
られているのは「し漆の搬出回数を減らすことを目
的としたスクリーンユニット」である。
③ 監視・操作の自動化による省力化
「監視・操作の自動化」については,「監視・操
作の自動化モデル・Cランク」を採用した場合の省
力化の割合を検討し,維持管理餓用モデルを作成す
る。
③ 処理施設の集約化による建設費及び維持管
理費の低減化
処理施設の集約化により衷3-16のような効果
が期待できるものと考えられている。
これらの効果のうち,「設計」の項目は建設費の
費目の範囲に入ることから,検討から削除する。
(2)維持管理費用モデルに用いる項目
自動化,集約化により±効果の考えられる項目
として次の費用を考えている。
・人件費 ・電力費 ・整備点検費
・補修費 ・水質試験費
4.まとめと今後の予定
アンケート調査の結果,次のようなことがわかっ
た。
1)ほとんどの施設は3,000mソ日未満で,稼動
年数3年未満が多い。
2)維持管理は委託するところが増えており,維
持管理コストは140円/m3程度が多い。
3)水質測定に関しては,ほとんどの処理場で
pH,DOを測定している。
4)運転操作時間では,沈砂池のし液除去,終沈
スカム除去,汚泥濃縮槽等に時間がかかってお
り,自動化のニーズもこれを反映していた。
さらに自動化,集約化による維持管理費用評価虻
デル作成のための調査を行い,評価モデルの考え方
を整理した。
今後は,(社)日本下水道施設業協会の調査結果
等を踏まえ,
① 汚泥処理も含めた評価モデルの作成
② モデル地区でのケーススタディー
③ 評価モデルの改良
等を行ってゆく予定である。
●この調査に関する問い合わせは 技術部長 村上 忠弘
研究第二部主任研究員 阿久津 忠
研究第一部主任研究員 鈴木 茂
研究第二部研究員 細洞 克己
研究第二部研究員 浦川 与作
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