12
46 ISO 9000 では,用語「継続的改善」を次のように定 義している(3.2.13 項)。 要求事項を満たす能力を高めるために繰り返し行わ れる活動 参考:改善のための目標を設定し,改善の機会を見 出すプロセスは,監査所見及び監査結論の利用, データの分析,マネジメントレビュー又は他の 方法を活用した継続的なプロセスであり,一般 に是正処置又は予防処置につながる。 9001 8.5.1 項で継続的改善を要求しているが,その 対象は「品質マネジメントシステムの有効性」である。 すると上の定義で,「要求事項」には「有効性に関して品 質マネジメントシステムに与えられている,あるいは期 待されている要求事項」が該当し,改善プロセスの終端 に位置する是正処置や予防処置も「品質マネジメントシ ステムに対する」処置だということになる。理屈を述べ ているようだが,継続的改善に関しては,まずこのあた りの認識をしっかり押さえておくことが重要である。 たとえば,製品の設計が悪くて客先でクレームがつい たとする。原因を調べて技術的に手を打てば(設計変更 をすれば),それは定義上(ISO 9000 3.6.5)是正処 置に該当するが,規格が 8.5.1 項で期待している「改善」 にはあたらない。この場合は「品質マネジメントシステ ムの一環として設計管理のプロセスを構築し運用してい ながら,なぜそのような設計不良を発生させたのか」が 問題であって,設計管理のプロセスの「不良発生防止能 力」を高めるための改善が「是正処置」として実行され なければならない。その立場からは,設計の変更は単な る「修正処置」(用語 3.6.6)という位置づけになる。 設計不良を契機として設計管理のプロセスが「是正」 されれば,以後は類似のものも含めて多数の設計不良の 発生が未然に防止できるようになると期待できる。そう いう「効率のよさ」がプロセスを改善することの効用な のだが,実際にはコトはそう簡単ではない。ISO 9000 2.9(継続的改善)で改善活動を a)~g)の 7 つのス テップに分けて解説しているが,その中心部分は次のと おりである。 b) 改善の目標(複数)を設定する。 c) 可能性のある解決策(複数)を探索する。 d) 解決策を評価し,選定する。 規格がいっていることに嘘はないが,では,たとえば ステップアップ ISO 9001 ISO 認証取得の資源投入をムダにしない QMS の運用と審査- 有効性の改善 規格解説 講師は語る -8.5 継続的改善のポイント- エム・アンド・エス・クオリティーガーデン 福田 渚沙男 101.何を「継続的に改善」するのか 2.規格がいう「改善のプロセス」

有効性の改善 - ipc-web.jp · 「品質マネジメントシステムが役に立たない」という 経営者は「役に立つようにシステムを改善していない」

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46

連 載 /ステップアップ ISO 9001

ISO 9000 では,用語「継続的改善」を次のように定

義している(3.2.13 項)。 要求事項を満たす能力を高めるために繰り返し行わ

れる活動 参考:改善のための目標を設定し,改善の機会を見

出すプロセスは,監査所見及び監査結論の利用,

データの分析,マネジメントレビュー又は他の

方法を活用した継続的なプロセスであり,一般

に是正処置又は予防処置につながる。 9001 は 8.5.1 項で継続的改善を要求しているが,その

対象は「品質マネジメントシステムの有効性」である。

すると上の定義で,「要求事項」には「有効性に関して品

質マネジメントシステムに与えられている,あるいは期

待されている要求事項」が該当し,改善プロセスの終端

に位置する是正処置や予防処置も「品質マネジメントシ

ステムに対する」処置だということになる。理屈を述べ

ているようだが,継続的改善に関しては,まずこのあた

りの認識をしっかり押さえておくことが重要である。 たとえば,製品の設計が悪くて客先でクレームがつい

たとする。原因を調べて技術的に手を打てば(設計変更

をすれば),それは定義上(ISO 9000 の 3.6.5)是正処

置に該当するが,規格が 8.5.1 項で期待している「改善」

にはあたらない。この場合は「品質マネジメントシステ

ムの一環として設計管理のプロセスを構築し運用してい

ながら,なぜそのような設計不良を発生させたのか」が

問題であって,設計管理のプロセスの「不良発生防止能

力」を高めるための改善が「是正処置」として実行され

なければならない。その立場からは,設計の変更は単な

る「修正処置」(用語 3.6.6)という位置づけになる。

設計不良を契機として設計管理のプロセスが「是正」

されれば,以後は類似のものも含めて多数の設計不良の

発生が未然に防止できるようになると期待できる。そう

いう「効率のよさ」がプロセスを改善することの効用な

のだが,実際にはコトはそう簡単ではない。ISO 9000は 2.9(継続的改善)で改善活動を a)~g)の 7 つのス

テップに分けて解説しているが,その中心部分は次のと

おりである。 b) 改善の目標(複数)を設定する。 c) 可能性のある解決策(複数)を探索する。 d) 解決策を評価し,選定する。 規格がいっていることに嘘はないが,では,たとえば

連 載 ステップアップ ISO 9001

-ISO認証取得の資源投入をムダにしないQMSの運用と審査-

有効性の改善

規格解説 講師は語る

-8.5 継続的改善のポイント-

エム・アンド・エス・クオリティーガーデン

福田 渚沙男

第10回

1.何を「継続的に改善」するのか

2.規格がいう「改善のプロセス」

47

設計プロセスの改善に関して具体的にはどのように目標

を設定すればいいのだろうか。どうすればうまい解決策

が探索できるのだろうか。何を基準に解決策の評価をす

ればいいのだろうか。すべては??である。 ここで,われわれは規格(9001)が実質的には「やっ

てほしいこと」を書き並べ,(外部からの評価が可能なよ

うに)品質マネジメントシステムとしての構成のさせ方

を指定しているだけの存在にすぎないことを想起する必

要がある。肝心なその「中身」は,すべて組織の側で開

発しなければならないのである。

規格は,たとえば 8.2.3(プロセスの監視及び測定)で

プロセスに関して計画どおりの結果が得られない場合は

「適宜修正および是正処置をとること」を要求している

が,この内容は「問題があれば解決してください。そし

てそのことがどのように(有効に)行われることになっ

ているか,手順を明らかにして,外部に説明できるよう

にしておいてください」といっているのと同じである。

しかし実際には,発見された問題はたとえば QC ストー

リーの各ステップ(問題解決のための科学的方法の手順)

をあてはめて,そのようなステップにしたがって効果的

に問題解決をすることができるように訓練された人たち

に取り組ませなければ,ほとんど絶対に上手には解決し

ないのであって,「改善」に関してはこのような認識をも

つことがきわめて重要である。 「品質マネジメントシステムが役に立たない」という

経営者は「役に立つようにシステムを改善していない」

のであり,させていても改善が進まないとすれば,その

主な理由は「改善技法の教育をしていないから」である

といいきってもいい。QMS の有効性の改善には「課題

達成型」よりも「問題解決型」の,いわゆる解析的アプ

ローチによる問題解決技法がとくに有効なのであるが,

最近の日本ではこの技法の衰退が甚だしく,これが「役

に立たない QMS」を蔓延させている根本原因ではない

かと筆者は考えている。 (Susao FUKUDA)

ISO 9001/JIS Q 9001 の「4 章 品質マネジメントシ

ステム」の「4.1 一般要求事項」では,次のことを要求

している。 1) ISO 9001 規格の要求事項に従って,品質マネジメ

ントシステムを確立し,品質マニュアルやその下位文

書を作成して,その文書で定めた内容を実行し維持す

る必要がある。 2) 確立した品質マネジメントシステムは,その有効性

を継続的に改善していく必要がある。 プロセスが計画どおりの結果が得られるように継続的

な改善活動を行い,未達の場合には,活動の見直しなど

の必要な処置を取れ,ということである。 しかし,ここで注意しなければいけないことは,ISO

9001 の要求事項は,きわめて狭義の継続的改善を要求し

実践ガイド

継続的改善の進め方

(有)品質管理総合研究所 代表取締役所長 細谷 克也

1.継続的改善におけるISO 9001の弱点

3.問題解決技法を学ぶことの重要性

48

連 載 /ステップアップ ISO 9001

ているという点である。これを具体的に述べると次のよ

うになる。

◆ISO 9001 要求事項の限界

ISO 9001 は,品質マネジメントシステムの有効性の

継続的改善を要求しているが,製品やサービスに対する

個々の改善活動,テーマごとの改善効果の把握,改善活

動の進め方の評価,改善活動の成果の向上までは要求し

ていない。 もう少し整理すると次のようになる。

1) 継続的改善のプロセスの設定は組織の判断に委ねて

おり,必要な仕組みとして要求していない。また,改

善のプロセスの計画を要求しているが,改善理由,現

状把握,目標設定など,個々の改善に必要な改善活動

の計画書は要求していない。 2) マネジメントレビューなどの機会を通じて,継続的

改善を実施することは要求しているが,要因解析,解

決策の評価と特定などの具体的な要求はなく,是正処

置や予防処置に一部見られるだけである。 3) 品質マネジメントシステムの改善の証拠を求めてい

るが,製品やサービスに関する個々の改善効果の把握

や成果を具体的には要求していない。 4) プロセスの監視・測定を要求しているが,改善処置

後のプロセスの有効性を評価することまでは要求して

いない。また,改善活動の進め方を評価し,改善のレ

ベルを向上させることは要求していない。

品質マネジメントシステムのパフォーマンスが向上で

きるように,継続的改善のプロセスを充実させるには,

ISO 9001 の要求事項の範囲にとどまらず,改善活動の

仕組みを構築し,実行することが重要である。 改善活動を効果的,効率的に進めるためには,問題解

決の手順と統計的手法の習得が不可欠である。 そのために追加すべき要求事項をまとめると,次のよ

うになる。

◆ISO 9001 に追加する要求事項

1) 継続的改善の仕組みを構築し,品質マネジメントシ

ステムのパフォーマンスの向上に取り組めるようにす

る。また,個々の改善活動計画を策定する。これによ

り,継続的改善の計画プロセスを充実する。 2) 統計的手法の習得・活用により,真の原因を究明し

効果的な対策を立案できるようにする。これにより,

継続的改善の実施プロセスを充実する。 3) 改善結果の評価を的確に実施し,改善効果の把握と

管理の定着および標準化が確実にできるようにする。

これにより,継続的改善の確認・検証プロセスを充実

する。 4) パフォーマンスおよび改善活動の評価方法の確立に

より,改善対象プロセスの有効性を的確に評価する。

これにより,継続的改善の処置プロセスを充実する。

(1) 職場の問題

いつの時代も,企業や職場を取り巻く環境は厳しい。

これまでいかに努力して成果をあげてきたとしても,こ

れで十分ということはない。 私たちの会社や職場で起こっているいろいろな問題を

列挙すると,次のようなものがある。 ①市場ニーズを先取りした魅力ある新製品が創出できな

い。 ②品質が悪く,不良率やクレームが一向に減らない。 ③生産システムの改善が進まず,生産性が低い。 ④販売の拡販が進まず,売上高もシェアも伸びない。 ⑤手直しやミスが減らない。 ⑥設備の故障率が低減しない。 ⑦コストの削減が進まず,利益が出せない。 ⑧先端技術・卓越した技能の開発が遅れている。 ⑨経営環境や市場状況などの変化に対応して行けない。 組織における職場の基本的な任務は,各部署が分担す

る役割を上位方針にしたがって着実に遂行することであ

るが,この中には上記のような問題に対する改善活動へ

2.パフォーマンス向上のためのISO 9001への追加要求事項

3.効果的,効率的な改善の進め方

49

の取組みが重要である。 品質を中核において,IT(情報技術)を経営のインフ

ラとして活用し,顧客満足の創出,歓喜を呼ぶ新製品の

開発,製品開発期間の短縮および大幅なコスト低減など

の実現による企業価値の向上につとめなければならない。

(2) 問題解決の手順

効果的に改善を進めるコツ――それは改善の定石を身

につけるということであろう。 職場の改善にあたっては,データにもとづく実証的問

題解決法が提唱され,活用されている。これは“QC 的

問題解決法”とも呼ばれ,その適用範囲が広く,確実性

が高いため,多く利用されている。 この問題解決法のポイント――それが表 1 に示す「問

題解決の手順」である。 従来の改善のプロセスは,問題を経験・勘・度胸・思

いつきなどにより見通し,これにもとづいて対策を立て

て実施し,うまくいかなければやり直すという試行錯誤

の繰返しによるところが多かった。これでは経験や固有

技術が浅いとうまくいかないし,勘が外れると改善は不

可能になってしまう。 改善を効果的・効率的に実施していくには,改善の進

め方が論理的であり,筋が通っていなければならない。 「問題点→要因の究明→対策の実施→効果の確認」の

手順で,一貫性のある活動を展開することが重要である。

そのためには,「問題解決の手順」にしたがって,一歩ず

つ確実に進めながら問題を煮つめ,対策を立てていくの

がよいであろう。この手順は,問題を合理的に解決して

いくための 1 つの科学的アプローチといえる。

(3) 改善の進め方

改善を効果的,効率的に進めるには,次の手順(表 1参照)にしたがって進めるのがよい。

[手順 1]テーマの選定 1) 職場に与えられている上位者からの方針や目標を確

認する。

2) 現在,職場に起こっている Q(品質),C(コスト),

D(量・納期),S(安全),M(士気),E(環境)に

関する問題点を抽出する。 3) 現在抱えている結果系の問題をつかまえる。手段系

の問題をテーマにすると,「手段は達成できたが,改善

効果は得られなかった」という結果に陥りやすい。 4) 悪さの程度を明らかにする。 5) 問題点を評価し,取り組むテーマを決定する。 問題点の評価は,次の諸点について行う。 ①重要度――問題が職場に与えている重要さの度合い

はどうか。 ②緊急度――解決を急がなければならない問題。 ③効果度――改善した時の効果は,改善に要する費用

を差し引いても大きいか。 6) テーマは,抽象的に表現せず,テーマを見て何をね

表 1 問題解決の手順

手 順 実 施 要 領

手順 1 テーマの選定 ・問題をつかむ

・テーマを決める

手順 2 現状の把握と目

標の設定

現状の把握

・事実を集める

・攻撃対象(特性)を決める

目標の設定

目標(目標値と期限)を決める

手順 3 活動計画の作成 ・実施事項を決める

・日程,役割分担などを決める

手順 4 要因の解析

・特性の現状を調べる

・要因をあげる

・要因を解析する

・対策項目を決める

手順 5 対策の検討と実

対策の検討

・対策のアイデアを出す

・対策の具体化を検討する

・対策内容を確認する

対策の実施

・実施方法を検討する

・対策を実施する

手順 6 効果の確認

・対策結果を確認する

・目標値と比較する

・有形・無形の効果を把握する

手順 7 標準化と管理の

定着

標準化

・標準を制定・改訂する

・管理の方法を決める

管理の定着

・関係者に周知徹底する

・担当者を教育する

・維持されていることを確認する

50

連 載 /ステップアップ ISO 9001

らっているのかが一目瞭然となるように設定する。 <よい例> ・「管理部における文書取出し時間の短縮」 ・「液晶テレビ組立工程における工程不良率の低減」 ・「電子部品におけるクレームの撲滅」

7) 対策は手段をテーマ名にすると,理想追求型になり,

表面的で応急対策的な活動の展開になることが多いの

で避ける。 <まずい例> ・「文書ファイルの標準化」 ・「顧客カードの整理」 ・「生産革新システムの推進」

[手順 2]現状の把握と目標の設定 1) テーマとして取り上げた問題点について,その現状

はどのようになっているのか,関係するデータを集め

て,現状の事実を正確につかむ。 2) 何を改善するのか,改善対象となる管理特性を決め

る。ここで選んだ管理特性は,目標に対する有効さを

はかる尺度となる。 3) 悪さの実体を把握するために,管理特性の水準(平

均値)やばらつきを調べる。 ①時間別(時系列的にどうなっているか) ②場所別(場所が変わったらどうか) ③症状別(悪さの状態にどんな症状(特徴)があるか) ④機種別(機種別に見たら違いはないか) など。

4) 達成したい目標値と期限を決める。 ここでは,次の 3 つを明確にする。 ・何を ――管理特性 ・いくらをいくつに――目標値 ・いつまでに ――期 限

[手順 3]活動計画の作成 1) やるべきこと (実施事項) を決める。 2) いつ,何をするのか,日程を決める。 3) データの収集,要因の因果関係の解析,対策の実施

など,やるべきことについて,だれがやるのか役割分

担を決める。 4) 活動内容をバーチャ一トなどを使って,活動計画書

を作成する。

[手順 4]要因の解析 1) 特性に影響を及ぼしていると考えられる要因を数多

く抽出する。ここでは,ブレーン・ストーミングを用

いるとよい。 2) 特性と原因との関係を,技術的・経験的な知識によ

り体系化し,特性要因図を作成する(図 1参照)。 3) 特性に大きな影響を及ぼしていると思われる要因を

絞り出す。 4) 特性と要因との関係を QC 手法を用いて解析する。

ここで“仮説の検証”を行う。そのためには, ①仮説の設定 ②データ解析 ③得られた桔論 の 3 つの作業を実施する。 データの種類には ①過去のデータ ②層別した日常のデータ ③新しく実験して得たデータ があるが,これらのデータを用いて解析する。 解析にあたっては,次の点を調べる。 ①層別し,層間に違いがないかどうかを調べる。 ・人別 ・設備・機械別 ・材料・部品別 ・方法別 ②特性や要因が時間的に変化していないかを調べる。 ③要因と特性,要因と要因,特性と特性など,2 変数

の間に相関や回帰関係があるかどうかを調べる。 ④現場・現物をよく観察して,異常がないかどうかを

調べる。 解析手法としては,ヒストグラム,管理図などの QC

七つ道具,検定・推定,回帰分析,分散分析,実験計画

51

法などが有効である。 5) 解析結果をまとめる。 6) 究明された要因についての検討を行い,対策項目を

決める。

[手順 5]対策の検討と実施 1) 対策項目について活動グループの全員の知恵を集め

て,対策のアイデアを出す。 2) いくつかの対策案の中から,効果度,難易度,経済

性などを総合的に評価して最適案を選択する。 3) 最適案について対策の具体化を検討する(図2参照)。 4) 対策をどのようにして実行していくのかについて実

行計画を作成する。 5) 実施方法を検討し,仮の標準(技術標準,製造標準,

作業標準,業務標準など)を作成する。 6) この仮標準にしたがって対策を実施する。

[手順 6]効果の確認 1) 対策の実施時点とその効き方の関係を見て妥当な確

認期間,方法を設定する。 2) 実績データをとる。 3) 実績値と目標値を比較し,改善効果を評価する。 4) 達成度が不満な場合は,さらに[手順 4]または[手

順 5]に戻る。

図 1 「手順書取り出しに時間がかかる」の特性要因図

� � � �

図 2 「手順書の取り出し時間を短くするには」の系統図

52

連 載 /ステップアップ ISO 9001

5) 成果は,最初にねらった有形の効果のほかに,リー

ダーシップの向上,QC 手法の習得,固有技術の蓄積

などといった無形の効果も検討する。また対策により

影響を受けたほかの影響(波及効果)についても,で

きるだけ把握する。

[手順 7]標準化と管理の定着 1) 仮標準を正式な標準とする。 2) 工程管理の方法を決める。 3) 正しい管理の方法を関係者に周知徹底する。

4) 管理のやり方について担当者を教育・訓練する。 5) 新しい仕事のやり方が守られ,得られた改善効果が

維持されているかどうかを確認する。 (Katsuya HOSOTANI)

参考・引用文献 [1] 細谷克也(1989):『QC 的問題解決法』,日科技連出版社。 [2] 細谷克也編著(2000):『すぐわかる問題解決法』,日科技連出

版社。 [3] 細谷克也編著(2002):『品質経営システム構築の実践集』,日

科技連出版社。 [4] 細谷克也編著(2004):『ISO 9001 プラス・アルファでパフ

ォーマンス(業績)を向上する』,日科技連出版社。

ISO 14001

日科技連・環境マネジメントシステム審査登録組織のお知らせ 日科技連・ISO 審査登録センターは,環境マネジメントシステム審査により下記組織の新規登録を決定しました。

<9月度新規登録>

組織名 事業所名 所在地 登録番号 適用規格 審査登録範囲 発効日

トーラファクトリ㈱ 船橋事業所 千葉県船橋市本町 6-8-7 JUSE-EG-259 JIS Q

14001:2004 電子機器,電子制御機器の開発,製造,販売。コンピュータソフトウェアの開発,製造,販売。

2005/9/29

讃陽食品工業㈱ 富田工場 香川県さぬき市大川町富田西

2314 番地 JUSE-EG-251 JIS Q

14001:2004 ピクルス・テーブルオリーブ・チャツネ等アクセントフーズの設計開発から製造まで

2005/9/29

東京プリントメディア㈱ 東京都北区堀船 4-2-1 JUSE-EG-250 JIS Q

14001:2004 読売新聞東京本社から委託された新聞の印刷,梱包・発送 2005/9/29

㈱ワイエスコーティング工業

本社 広島県福山市曙町3丁目30番15 号

JUSE-EG-257 JIS Q 14001:2004

金属表面処理加工の受注から引渡しまで 2005/9/29

川辰都市環境㈲・川辰オートリサイクル

鹿児島県薩摩川内市湯田町282 番地

JUSE-EG-252 JIS Q 14001:2004

使用済自動車の引取集荷・解体・圧縮,フロン回収,自動車リサイクル部品の回収・販売

2005/9/29

東洋管財㈱ 本社及び事業所(東京競馬場,中山競馬場,朝日新聞本社)

東京都新宿区 4 丁目 2 番 10号,他

JUSE-EG-228 JIS Q 14001:2004 建築物の清掃業務 2005/9/29

㈱遠山紙業 エコ計画事業部 埼玉県川口市北原台 1-27-14

JUSE-EG-236 JIS Q 14001:2004

①紙類廃棄物の収集運搬,処理(古紙の分別)及び販売の業務

②一般廃棄物及び産業廃棄物の収集・運搬

2005/9/29

キムラリースサービス㈱ 刈谷営業所 愛知県刈谷市西堺町治右田

140 番地 JUSE-EG-244 JIS Q

14001:2004 車両整備,車両販売,保険販売 2005/9/29

岡野運送㈱ 本社及び各営業所

埼玉県新座市大和田 1-11-3,他

JUSE-EG-241 JIS Q 14001:2004

酒類,食品,飲料,雑貨の配達業務 2005/9/29

㈱オリオンパック

本社工場(有限会 社 竹 中 を 含む)及び東京営業所

埼玉県吉川市栄町 866,他 JUSE-EG-237 JIS Q 14001:2004 印刷紙器製品の製造販売 2005/9/29

お問合せ先:(財)日本科学技術連盟・ISO 審査登録センター 環境登録業務課 〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷 5-10-11 TEL.03-5379-1326 FAX.03-5379-1220

53

G.S 今日のテーマは「継続的改善」ですが,具体的に

どうすればいいのか悩んでいます。 S.H 当社では,いろいろな活動を継続的改善と位置づ

けています。企業は日々改善をしていて,要求事項に対

して「これがそうです」と示すことはむずかしいのでは

ないでしょうか。 K.S 「継続的」の反意語は「思いつき」といってもいい

でしょう。たとえば経営トップが「これは問題だから改

善しなければ」と思いつき,その指示をして改善させる。

これではそのトップがいる時にしか機能しません。わざ

わざ ISO 9001 で継続的改善を要求しているのは,組織

の「人」によることでなく,仕組みとして大きく崩れな

いためでしょう。 ある 1 つの重要特性をとらえて,たとえば生産リード

タイム,納期などを 1 つの指標にして考えてみます。あ

る製品の製造に 20 日かかるという基準に対して,実際

には平均 25 日かかっています。これを 20 日でできるよ

うにしよう―それで改善努力をして,20 日でできたと

します。そこで,今度はその基準を引き上げて 15 日に

しよう―これが継続的改善ではないでしょうか。目標

を下回っているところに対する努力は継続的改善ではな

く,あるところにきたら目標線を引き上げ,そこに向け

て改善していく。 T.S 「改善」に「継続的」がついたとたん,わかりにく

くなる。たとえば当社の場合,改善で「不良率を減らそ

う」という目標をあげる。それを達成し,次には不良が

ゼロになると,さらに継続的改善をしなさいといっても,

これ以上はないという話になってしまう。 G.S それに継続的改善という言葉そのものはわかって

も,具体的にどうすればいいのか悩んでいる企業も多い

ですね。継続的に行うということは PDCA を回していか

なければならない。発生したことに対して処置を行った

ら,それが効果的に働いているのかどうかチェックしな

ければならない。クレームがなくなったから終わりでは

なく,本当になくなったのか,類似したことがほかに起

きていないか。本当にこの施策が効果をあげているのか。

そうやって再発防止につなげていくことが,継続的改善

を進めていくということではないでしょうか。 H.M 当社は 2000 年版に移行して以来,経営目標を品

質方針と一致させていますので,業績の達成度もそのま

ま 3 ヵ月ごとにプロセスの監視・測定でチェックするシ

ステムになっています。達成度が低い部門には,事務局

としては継続的改善という言葉をうまく利用して,「常

に改善していかなければいけない」といっています。 S.T 継続的改善は目標値をもってやればいいというこ

とでしょう。当社では毎日の朝礼で作業者にこれを繰り

返し話すことで,何をすればいいか自然にわかってきて,

組織の仕組みが自動的に動くようになりました。次に,

品質改善の提案制度を設けました。すると,危機管理の

必要が生じると手があがるようになりました。これも継

続的改善です。最終目標は企業の利益ですから,損失を

なくすために作業性の改善,品質改善をすればいい。 目標も全部決め,進捗度も月ごとに見ています。達成

するごとに目標を高くしていき,不良ゼロをめざし全員

一丸で取り組むことができました。いい製品をつくれば

顧客満足を達成し,会社としてもまた仕事がくる。これ

が継続的改善の意味と捉えています。 At.K ISO 9001 の 1 項「適用範囲」でも,1.1 の b に「継

続的改善」という言葉が出てきます。これは QMS を組

継続的改善をディスカッションする

「継続的改善」とは何か

ISO推進者会議

ディスカッションメンバー

G.S (機械・装置メーカー) テーマリーダー

S.H (建設コンサルタント業)

K.S (自動車部品メーカー) T.N (システム開発業)

T.S (電機機器メーカー) M.Y (化学製品メーカー)

H.M (コンクリート製品製造,土木業) Ak.K (紙製品メーカー)

S.T (電子機器メーカー) H.K (文具メーカー)

At.K (通信業) M.I (QMS コンサルタント)

54

連 載 /ステップアップ ISO 9001

織でうまく機能させるためのキーワードとしてかなり重

要なためだろうと私は考えています。

H.M 私は今まで「改善」という言葉自体を不良対策的

な品質向上の改善と捉えていました。しかし,福田渚沙

男氏は本連載の解説で継続的改善について「対象は品質

マネジメントシステムの有効性である」としています。 T.N しかし,何をもって有効とするか。企業の業績が

上がれば有効か。では業績が低迷していると有効ではな

いのか。大きく見れば当然業績に直結しなければならな

いとしても,必ずしもすぐ業績に直結するとはかぎらな

いのではないでしょうか。ここで短絡的な判断をしてし

まうと,目先の改善を進めることで継続的な改善をして

いるととってしまう。たしかに日常的な改善も重要です

が,もっと大きな観点で,何をもって有効性を判断する

のかということがわが社のテーマになっています。 S.T 問題が発生するのはプロセスが悪いためです。だ

からプロセスを直さなければならない。たとえば不良品

が出たら,その製品にかかわる工程をすべて洗い出し,

問題を探す。担当や使用するソフトウェアを変えてみた

りして,統計を取って効果を確認する。そうやって原因

を探していくしか方法はない。それが改善ではないかと

私は思います。 その日の担当者に原因があることも考えられます。以

前,20 名ほどを対象に実験的に「ポカミスはなぜ起こる

か」を調べて統計を取りました。すると,「こういう人は

こういうミスを起こしやすい」ということがわかります。

次はそれを解消するために必要な教育訓練を実施しなく

てはならない。そういう教育の仕組みをつくり,さらに

その仕組みを改善していく。 しかし,有効性を評価する方法は私にもよくわかりま

せん。やはり,その点では第三者審査など外部の目が必

要になると思います。 M.Y 当社でもいろいろな修正をしていますが,全体で

見るとレベルが上がっていない。この活動を是正のプロ

セスと見ると,そのプロセスがおかしいから,結果とし

て改善されていないということでしょう。だから今の是

正の仕組みそのものを見直すことが必要で,それが継続

的改善という理解もできます。福田氏の「役に立たない

のは,役に立つようにシステムを改善していない」とい

うことにも通じるように私は思います。 T.N 規格は二段構えで,日ごろ行う是正処置のさらに

その先に,是正処置,予防処置,マネジメントレビュー,

監査の結果,品質目標などすべてを通じて,品質マネジ

メントシステムの有効性を継続的に改善することを求め

ている。こういった活動から出てくる結果をふまえて,

統合して,システム全体が機能するように運用の仕掛け

をつくりなさいといっているようにも見えます。 ISO 9000 で「有効性」という用語を見ると,「計画し

た活動が実行され,計画した結果が達成された程度」と

あります。この「計画」は,自組織では品質マネジメン

トシステムをなぜつくったか,そこまでさかのぼってし

まう。品質マネジメントシステム構築の目的,運用の計

画です。それぞれのプロセスごとに PDCA を回しながら

途切れることなく進めていけば,継続的改善をしている

ことになるという考え方もあるかもしれません。 しかし改善して,それが有効なのかと問われると,で

は「有効性」の尺度は何かという話になる。 G.S 「尺度はこれ」と出せればいいでしょうが,非常に

むずかしいように思います。しかし,進むべき方向を決

めていて,それにもとづいてしっかりマネジメントレビ

ューができ,アウトプットが出ていれば,有効性につい

有効性はどこで見る

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てはそこで語ることができるのではないでしょうか。 At.K マネジメントレビューで,トップがきちんとアウ

トプットを出せるようにするための必要条件は,どれく

らいのインプットができるかにかかると思います。いか

に正しく情報提供されるか,ということです。 PDCA というのは要求事項ではなく参考という形で

すが,今回のテーマである継続的改善も,インプットを

与えてアウトプットが出て,さらにまたインプットとい

う PDCA のサイクルになると思います。継続的改善をし

ていくために一番重要な要素は,マネジメントレビュー

の回し方のように感じました。

Ak.K 当社の場合は,品質目標としてクレームとその損

失処理費用の目標を数字で出し,実績を毎月集計してい

ます。この件数や金額が減ってくれば改善しているとい

うことでしょうが,なかなか減らない。クレームや不良

品は 1 件ごとに原因や対策を処理表に書いて,トップま

で回しています。しかし,外部審査員にその処理表を見

せると,「原因」の欄に書いてあることは原因ではなく現

象だといわれます。「作業員のうっかりミス」「検査が不

十分」とか,これを原因としてしまうから,同じような

クレームが繰り返されてしまう。原因がわからなければ

対策の立てようがない。 H.K 悪いところはとりあえず見えてくる。しかし,目

先の問題の解決に終始し,システムを改善するところま

でいかない。これは,改善方法を社員がきちんと理解し

ていないことに原因があるのかもしれません。また,シ

ステムを直すには,そのシステム自体をある程度理解し

ていなければなりませんが,そのシステムの理解度が低

いようにも見えます。 G.S クレームに対応して設計変更を行っても,8.5.1項で期待する改善にはあたらない。つまり問題が発生し

たら,さらに根本的な問題まで掘り下げることが重要で

す。そこを是正しなくては再発防止にはつながらない。 しかし,当社でも原因の掘下げがまだ浅いようです。

ある程度まで掘り下げていければ,共通する要因がわか

り,システムの改善につながると思います。やはりうま

く掘り下げて要因にたどりつくための訓練も必要でしょ

う。 S.T まずは人を育てなければならない。ここに継続的

改善の本来の意味があるように思います。人がものをつ

くり,人が仕組みをつくる。だから人が変わらない以上,

絶対に改善できない。 当社は派遣社員が多いのですが,システムを運用して

いくにも,従業員と派遣社員ではどこか考え方に違うと

ころがあると感じていました。考え方が食い違えば,ど

んな仕組みをつくってもうまくいかない。それで,派遣

社員にも少し考え方を変えてもらい,まずは同じテーブ

ルにつこうということからスタートしました。 M.I ISO 9004 の 8.5.4 項「組織の継続的改善」では

「人々を参加させる文化を創出するとよい」と書かれて

います。具体性がないですが,ベースはやはり,そうい

うところをどうやって上げていくかが重要となる。その

ためにも ISO をツールとして使う。 H.K 継続的改善の取組みの結果として,組織スキルと

人の力量が上がり,人のベクトルが同じ方向に向く。そ

れが継続的改善の 1 つの結果ではないかという気がしま

す。

M.Y そういえば内部監査や第三者審査でも,あまり深

い議論をした記憶がないですね。審査するほうもむずか

しい要求事項なんでしょうか。 S.T 当社では内部監査だけではなく,現場で「QC パ

トロール」を行い,記録を見るのではなく改善行為を日

常的に見るようにしています。仕組みを改善したのか,

作業性を改善したのか,その件数に応じて点数をあげて

います。 At.K 私は内部監査でも,品質方針,品質目標,マネジ

メントレビュー,内部監査結果などがきちんと仕組みの

改善につながっているかを必ず確認するようにしていま

継続的改善の結果として「組織スキルと人の力量」が向上

すべての要求事項で「継続的改善」を

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連 載 /ステップアップ ISO 9001

す。企業間の競争が激しい現在,QMS は経営とリンク

していなければなりません。勝ち抜くために,経営目標

を達成しなくてはならない。継続的改善を行うことで事

業計画などの目標を達成し,組織の実力を向上させてい

く。それが経営目標の達成につながります。以前は予定

調和になって,簡単に達成できる形だけの目標をあげて

いました。しかし今は,意図的に達成が困難な目標にし

ています。 実力以上の目標を掲げていくと,いろいろと問題も出

てきます。次年度にもまた目標設定して,さらに継続し

て取り組んでいく。その挑戦的な目標を達成するために

は,従来の仕事のやり方ではダメだとわかる。そうする

と,仕組みを変えなければならないという話が出てきま

す。 H.K 改善のテーマが出てきたら,それを忘れずに継続

的によくしなさい,その時に有効性が上がるようにしな

さいということだと私は考えていました。ですから,審

査対象として具体的なものはなく,たとえば品質目標な

ら,数値目標が達成できていなかったら何かの対策をと

っている。それが継続的改善の実績になると思っていた

のです。個々に問題が出たものをきちんとシステムまで

改善していれば,この項目の審査はそれで終了ではない

でしょうか。 At.K もちろん個々のところでは個々の主管部門が審査

を受けると思います。審査スケジュールで管理責任者や

事務局の項目に入っている「8.5.1 継続的改善」は,QMS全体の仕組みはどうかということでしょう。 G.S 継続的改善はすべての要求事項にかかってくると

ころです。たとえば品質目標を立て,その達成に向けて

必要ならば継続的改善が行われなければいけない。また,

クレームがあったら,「そのクレームについてどのよう

な処置をしましたか。どうやって再発しないようにしま

したか」と聞かれる。これは継続的改善の 1 つの審査だ

ろうと思います。 導入当初は,「継続的改善は品証部門がやっています」

などといい出すこともありましたが,そうではない。や

はり自分たちが行っているプロセスだから,自分たちで

どこを見直していくかを決め,自分たちでその結果が有

効的なのかを確認しておく。 K.S 実務での日々の改善は,ISO の審査登録にかかわ

らずやることでしょう。しかし,規格で求めているもの

は,マネジメントする側の方向性を示すとか,大きな目

標を掲げた時,あとは高みの見物ではダメですよという

ことでしょう。 実務者が日々努力して改善しているのと同じように,

トップも方針を立てて,実行した結果をきちんとチェッ

クして,問題があったら直さなければいけないし,達成

したら,次の方針・目標を掲げなさいといっているので

はないでしょうか。

ISO 推進者会議(IPC:ISO Promoter committee)へのご入会は随時受け付けています (会期は 8 月から翌年 7 月までの 1 ヵ年,年会費:30,000 円/1 名)

お問合せ先:日科技連・ISO 研修事業部 IPC 担当:波田野 崇(TEL.03-5379-1233)

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今月はいよいよ規格の最後にある継続的改善です。 今回のディスカッションでは,かなり突っ込んだ議論

がされています。議論の前半は,継続的改善とは,とら

えどころのないものという意見が多かったようですが,

議論が進んできた後半では,継続的改善と有効性の議論

になっており,ディスカッションメンバーがよく理解さ

れている様子がうかがえます。 ◆◆◆

継続的改善の話に入る前に,継続的改善の定義を確認

しましょう。 ISO 9000 では,継続的改善の定義は,

「要求事項を満たす能力を高めるために繰り返し行われ

る活動」 参考:改善のための目標を設定し,改善の機会を見出

すプロセスは,監査所見及び監査結論の利用,

データの分析,マネジメントレビュー又は他の

方法を活用した継続的なプロセスであり,一般

に是正処置又は予防処置につながる。 となっています。 品質マネジメントシステム規格の目的は,At.K さんが

発言されているように,規格の 1.1 に記載されている「こ

の規格は,次の 2 つの事項に該当する組織に対して,品

質マネジメントシステムに関する要求事項を規定するも

のである。A」顧客要求事項及び適用される規制要求事

項を満たした製品を一貫して提供する能力を持つことを

実証する必要がある場合,b」品質マネジメントシステ

ムの継続的改善のプロセスを含むシステムの効果的な適

用,並びに顧客要求事項及び適用される規制要求事項へ

の適合の保証を通して,顧客満足の向上を目指す場合」

であるはずです。 また継続的改善は,ディスカッションのあちこちで発

言がありましたが,PDCA と深く結びついているもので

しょう。 審査に行って継続的改善の部分を審査してみると,組

織の方々は継続的改善をすごく重いものと考えている方

が多いようです。「継続的改善について,どのように考え

て,どのように実施して,その結果はどうなっています

か?」と質問しても,明確な答えが返ってこないことが

多く,審査側から,データの分析や内部監査での是正処

置,データの分析からの予防処置,あるいはマネジメン

トレビューからのトップの指示事項などを実施している

ことを組織側に説明して,「継続的改善をうまく実施し

ていますね」ということもあります。 私は個人的には,継続的改善をそんなに重々しく考え

る必要はないと思っています。定義を確認しても,「継続

的改善は是正処置及び予防処置につながる」となってい

ます。また,是正処置とは「再発を防止する」ことです。

これらを結びつけて考えると,継続的改善とは「組織の

改善のための目標を設定して,PDCA を回して目標を達

成していくこと」であり,「これを繰り返し実施してシス

テムを向上していくこと」と思っています。 ディスカッションの中で,G.S さんが発言されていま

すが,クレームに対応して設計変更を行う場合,クレー

ムになった根本原因が設計にあるのであれば,設計変更

も 1 つの是正処置になると思います。望ましくない状況

の原因を除去する処置が是正処置であり再発防止といわ

れるのに対して,継続的改善とは目標に向かって改善を

行い,目標が達成されたら,もとの状態に戻らないよう

にシステムを改善することではないでしょうか。ディス

カッションの冒頭での発言にありましたが,思いつきで

改善しても一過性のものであり,一時的によくなるだけ

でいつの間にかもとの状態に戻ってしまうのは,改善で

はありません。 目標を達成しながら,もとに戻らないようにシステム

的に歯止めをかけ,その状態を維持できるようにし,こ

のような改善を継続的に実施して,品質パフォーマンス

の向上を図ることが継続的改善と私は考えています。 (Takeo SHINOHARA)

一口アドバイス

QMS 主任審査員 篠原 健雄((財)日本科学技術連盟 嘱託)