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本日の発表
発表内容 血糖をコントロールする新しい仕組みの発見について発表雑誌 Scientific Reports (サイエンティフィック レポート)解禁日 10月21日(火)、10 AM 英国時間論文著者 坂本昌平(九州大学病院)、宮地孝明(岡山大学・自然生命科学研究支援センタ ー)、日浅未来(岡山大学・薬学部)、市川玲子(味の素)、植松 朗(味の素)、 岩槻健(味の素)、 柴田篤志(九州大学・医学部)、畝山 寿之(味の素)、 高柳涼一(九州大学病院)、山本章嗣(長浜バイオ大)、表弘志(岡山大学・薬学部) 、野村政壽(九州大学病院)、森山芳則(岡山大学・薬学部)
ATPは細胞間で情報を伝える分子として働いている。 情報伝達分子としてのATPの働きを知るために、小胞型ヌクレオチドトランスポー ター(VNUT)の遺伝子を破壊した動物(マウス)を作製した。
VNUT遺伝子を破壊したマウスはインスリン分泌とインスリン感受性が変化し、 血糖値が低下していた。
以上の発見は、ATPが血糖値のコントロールに関わっている事を示しており、VNUTをターゲットとした新しい糖尿病治療薬の開発につながるものです。
1
2
1
ATPは細胞間の情報伝達を担う分子として働いている
開口放出 受容体小胞への充填
プリン作動性化学伝達の基本システム
NH2
NN
N N
CH H
HH
HO HO
C
O H2C O
O
O
P O P O P O
- O
O
- O
O
--
ATP:アデノシン-3リン酸
エネルギー分子として生物はATPが分解される時に放出されるエネルギーを利用している。ATPはエネルギーの通貨とも言われている。
プリン作動性化学伝達分子としてATPやその分解産物は細胞間の情報伝達分子としても働いている。❶ATPは細胞の小胞内にも蓄積されている。❷細胞が刺激されると、小胞内に蓄えられ たATPが細胞外へ分泌される。❸細胞外へ放出されたATPはターゲット細 胞の受容体に結合して、情報を伝達する。
小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)
ATPの放出ATP
ATPの働き
VNUTは2008年に私達が発見したもので、細胞内の分泌小胞へATPを輸送するタンパク質。
VNUTは細胞からのATP分泌に必須なタンパク質。
小胞型ヌクレオチドトランスポーター(Vesicular Nucleotide Transporter,VNUT)
情報の伝達 (化学伝達)
2
VNUTはATPの分泌を通してインスリン分泌を調節している
細胞間の情報伝達分子としてのATPの重要性を知るために、VNUTの遺伝子を破壊した動物(マウス)を作製した。
VNUTはATPの分泌に必須な因子である
VNUT遺伝子を破壊したマウスではATPの分泌が無くなった。
VNUTはインスリンの分泌を調節している
VNUT遺伝子を破壊したマウスではATPによるインスリン分泌抑制が解除されて、インスリン分泌が上昇していた。
ATPはインスリン分泌を抑制
VNUT VNUT
目的
結果
遺伝子破壊マウス
野生型 VNUT遺伝子破壊
10
403020
506070
0
ATP 分泌量
(fm
ol/is
let) 野生型
遺伝子破壊マウス野生型
+ATP +ATP
2
4
6
0インスリン分泌
(ng/
Isle
t/h) 8
ATPでインスリンの分泌が低下
VNUT遺伝子の破壊でインスリン分泌が上昇
3
VNUT遺伝子を破壊するとATPが分泌されなくなる
開口放出 受容体小胞への充填
プリン作動性化学伝達の基本システム
ATPを小胞に輸送して蓄える 小胞内の
ATPを放出受容体にATPが結合して情報を伝達
ATP
小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)
開口放出 受容体小胞への充填
ATPは小胞に蓄積されない
ATPは放出されないATP
VNUT遺伝子を破壊すると...
4
ATPは血中グルコース濃度のコントロールに関わっている
グルコース負荷試験
時間(分) 時間(分)
100
200
300
400
0 30 60 120900
血中グルコース濃度
(mg/
dl)
インスリン負荷試験
20
40
60
80
100
30 60 120900
血中グルコース濃度 (相対値
)
野生型マウス
VNUT遺伝子破壊マウス
野生型マウス
VNUT遺伝子破壊マウス
VNUT遺伝子を破壊したマウスでは血糖値が低下し、インスリンに対する応答性が向上していた。
VNUT遺伝子を破壊したマウスでは血中のグルコース濃度(血糖値)が低下していた。
インスリンを一定量投与した時の血液中グルコース濃度は、野生型マウスよりVNUT遺伝子破壊マウスの方が低下していた。
VNUT遺伝子破壊マウスはインスリンに対する感受性が高い。
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総括
ATPの分泌が無くなった。血糖値が低下した。インスリン分泌が上昇するとともに、インスリン感受性が上昇した。
ATPはインスリン分泌を抑制し、また、インスリン感受性を低下させる事で、血糖値を上昇させる。
VNUTはATPの分泌に必須な因子である。
VNUT をターゲットとした新しい糖尿病治療薬の可能性 (VNUTを阻害する事で血糖値をコントロールできる)
結論
展望
VNUT遺伝子を破壊したマウスでは.....
インスリン分泌の促進 (膵臓β細胞に負荷をかけない)インスリン感受性の上昇
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