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月刊ケアマネジメント 2013.1 月刊ケアマネジメント 2013.1 表と一言で言っても、どうやって準備していいか分からないし、第 一大勢の前で話すのは苦手…。そんな方も少なくないのでは? 東京都社会福祉協議会では、毎年秋に「アクティブ福祉 in 東京」 (高齢者福祉研究大会)という大会を開催しています。 東京都内の特別養護 老人ホームやデイサービス等で働く職員が、日頃の取り組みや実践を学会形式 で発表する場です。まずは、初めて発表を経験したという皆さんに直撃。大変 だったけれど、やってみると楽し かった、達成感があったという声 が聞こえてきました。(編集部) た。だが勤務時間がお互い異なるため、膝をつきあわせて 進めることは難しかった。そこで宇津木さんは、毎週「 宿 題 」を出すことに。「 伝わりやすい声の出し方を考えること」 「 時間内に説明できるようにすること」など段階的に課題を 設定しながら、無理なく発表の心構えにもなるよう指導した。 最初は緊張しきりだった都丸さんも、録音した自分の声を聞 いたりしながら、また同僚を前にリハーサルをしながら何度も 発表の練習に励んだという。 約半年間の発表準備を通じて、二人の関係は前より確 実に深まった。「 僕が多くの人の前で発表できたのは、宇津 木さんのサポートがあったからこそ。発表の経験を与えてく ださった職場や、仲間に感謝しています 」。 発表は二人でもバックに仲間 大変だからこその「 達成感 」も することで、「トイレでこれだけ排尿があったなんで知らな かった」などの報告もあった。法人で勧められ、アクティブ 福祉で発表することに。 発表にあたっては、パワーポイントのプレゼンテーションだ けでなく、読み上げるための「 台本 」を用意した。大川さ んは自分の結婚式と時期が重なり準備も大変だったそうだ。 上司からは何度も原稿の書き直しを命じられたが、そのた びに内容が洗練されていくのが分かり、それもやりがいだっ たという。職員を集めてリハーサルも行い、さらにブラッシュ アップした。発表したのは二人だが、施設の一体感を高め る効果もありそうだ。 発表後には質問も多くあり、「 大変なのにすごいですね」 と感心された。「 入所者の方が少しでも楽になればと思って 取り組んだことでしたので、それほど大変とは思わなかった のですが。評価って人によって全然違うんですね」と宮田さ ん。でもどこか嬉しそうな表情に、二人の達成感を感じた。 東京都墨田区にある特別養護老人ホーム「はなみずき ホーム」(入所者約 50 名 )。ホーム内の「排泄委員」とし てケアにあたっていた大川絵理さんと宮田雅子さんが、アク ティブ福祉で発表したのは2011年。二人ともこうした場での 発表は今回が初めてだ。研究テーマは「 全員で取り組む 尿測キャンペーン」。職員全員で入所者の一日の排尿量を 測り、最も多く出る時間を把握、個別にトイレへ誘導するこ とで、オムツやパットに出す回数を減らし、自立度を高めよう という取り組みだ。 研究のきっかけは、入所者を一斉にトイレへ誘導すること に違和感を覚えたからだった。トイレヘ誘導すること自体は 悪いことではない。でも全員が同じ時間にというのは、本当 に一人ひとりの身体状況に合わせたケアといえるのだろう か。失禁を防ぐことやオムツゼロが目的になってしまってはい ないだろうか―。そんな問題意識からだった。 とはいえ、ただでさえ忙しい現場。「 余計な仕事が増え た」と嫌みの一つも飛んでくることを覚悟していたが、反応 は意外にも好意的。「 新しい取り組みで少しでもケアの向上 につながるならと、皆協力的でした。発表を通じて、職場 全体で一つの目標に向かって取り組めたのが私にとっての 一番の収穫でしたね」と大川さんは話す。 結果は上々。排尿計測器を使い、客観的に尿量を把握 経験者がビギナーを支援 二人三脚で取り組む 墨田区特別養護老人ホーム「はなみずきホーム」 大川絵理さん(左)と宮田雅子さん(右) 舟渡高齢者在宅サービスセンター 都丸昭�さん(左)と�さん(右) �さん(左)と�さん(右) さん(左)と��さん(右) 会場の様子。一流ホテルでピシッと決める (関連記事 p10 ~にもあり) 東京都板橋区にある「舟渡高齢者在宅サービスセン ター」は、特養に併設するデイサービス。2012 年のアクティ ブ福祉で「 忘れ物を0にする取り組み 」と題して発表をした のが、都丸昭唯さんと宇津木忠さんだ。帰宅時の忘れ物に 利用者自身が気づけるようにする、それが自立支援を促す という目からウロコの内容だ。 当日発表した都丸さんは非常勤の職員で、研究発表は 初めてのチャレンジ。「これまでもチャンスがあればと思って いたのですが、なかなか機会がなくて。なので張り切って準 備をしました」。 もともとは上司の宇津木さんが中心となって実践、法人内 の研究大会で発表していたテーマ。「 忘れ物ゼロというと、 介護職としてはすぐに改善に取り組みたくなるところですが、 そこはぐっと我慢して、どうすれば利用者自身に忘れ物に気 づいてもらえるかを考えたんです 」( 宇津木さん)。結果、 利用者の忘れ物が8割も減るという効果を生み出すことがで きた。研究大会での評価も高く、ぜひアクティブ福祉でも発 表してはという話になる。 その時、宇津木さんは自分より若手に発表させようと思っ た。そこで頭に浮かんだのが、常々「 発表に興味がある」 と話していた都丸さんのこと。「 外の人もたくさん来るので勉 強になるし、何よりも自信につながる」と勧めたという。 そんなわけで、発表まで二人三脚。抄録集の作成は宇 津木さんが担当し、当日の発表は都丸さんが行うことにし in アクティブ福祉

「やってみた発表」 体験談聞きました 発 · 「やってみた発表」 体験談聞きました することで、「トイレでこれだけ排尿があったなんで知らな

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Page 1: 「やってみた発表」 体験談聞きました 発 · 「やってみた発表」 体験談聞きました することで、「トイレでこれだけ排尿があったなんで知らな

� 月刊ケアマネジメント 2013.1

◦今年こそ”発表“デビュー!◦

月刊ケアマネジメント 2013.1 �

発表と一言で言っても、どうやって準備していいか分からないし、第

一大勢の前で話すのは苦手…。そんな方も少なくないのでは?

東京都社会福祉協議会では、毎年秋に「アクティブ福祉 in 東京」

(高齢者福祉研究大会)という大会を開催しています。東京都内の特別養護

老人ホームやデイサービス等で働く職員が、日頃の取り組みや実践を学会形式

で発表する場です。まずは、初めて発表を経験したという皆さんに直撃。大変

だったけれど、やってみると楽し

かった、達成感があったという声

が聞こえてきました。�(編集部)

た。だが勤務時間がお互い異なるため、膝をつきあわせて進めることは難しかった。そこで宇津木さんは、毎週「宿題」を出すことに。「伝わりやすい声の出し方を考えること」「時間内に説明できるようにすること」など段階的に課題を設定しながら、無理なく発表の心構えにもなるよう指導した。最初は緊張しきりだった都丸さんも、録音した自分の声を聞いたりしながら、また同僚を前にリハーサルをしながら何度も発表の練習に励んだという。約半年間の発表準備を通じて、二人の関係は前より確実に深まった。「僕が多くの人の前で発表できたのは、宇津木さんのサポートがあったからこそ。発表の経験を与えてくださった職場や、仲間に感謝しています」。

発表は二人でもバックに仲間大変だからこその「達成感」も

�「やってみた発表」

体験談聞きました

することで、「トイレでこれだけ排尿があったなんで知らなかった」などの報告もあった。法人で勧められ、アクティブ福祉で発表することに。発表にあたっては、パワーポイントのプレゼンテーションだ

けでなく、読み上げるための「台本」を用意した。大川さんは自分の結婚式と時期が重なり準備も大変だったそうだ。上司からは何度も原稿の書き直しを命じられたが、そのたびに内容が洗練されていくのが分かり、それもやりがいだっ

たという。職員を集めてリハーサルも行い、さらにブラッシュアップした。発表したのは二人だが、施設の一体感を高める効果もありそうだ。発表後には質問も多くあり、「大変なのにすごいですね」

と感心された。「入所者の方が少しでも楽になればと思って取り組んだことでしたので、それほど大変とは思わなかったのですが。評価って人によって全然違うんですね」と宮田さん。でもどこか嬉しそうな表情に、二人の達成感を感じた。

東京都墨田区にある特別養護老人ホーム「はなみずきホーム」(入所者約50名)。ホーム内の「排泄委員」としてケアにあたっていた大川絵理さんと宮田雅子さんが、アクティブ福祉で発表したのは2011年。二人ともこうした場での発表は今回が初めてだ。研究テーマは「全員で取り組む

尿測キャンペーン」。職員全員で入所者の一日の排尿量を測り、最も多く出る時間を把握、個別にトイレへ誘導することで、オムツやパットに出す回数を減らし、自立度を高めようという取り組みだ。研究のきっかけは、入所者を一斉にトイレへ誘導すること

に違和感を覚えたからだった。トイレヘ誘導すること自体は悪いことではない。でも全員が同じ時間にというのは、本当に一人ひとりの身体状況に合わせたケアといえるのだろうか。失禁を防ぐことやオムツゼロが目的になってしまってはいないだろうか―。そんな問題意識からだった。とはいえ、ただでさえ忙しい現場。「余計な仕事が増えた」と嫌みの一つも飛んでくることを覚悟していたが、反応は意外にも好意的。「新しい取り組みで少しでもケアの向上につながるならと、皆協力的でした。発表を通じて、職場全体で一つの目標に向かって取り組めたのが私にとっての一番の収穫でしたね」と大川さんは話す。結果は上々。排尿計測器を使い、客観的に尿量を把握

経験者がビギナーを支援二人三脚で取り組む

墨田区特別養護老人ホーム「はなみずきホーム」

大川絵理さん(左)と宮田雅子さん(右)

舟渡高齢者在宅サービスセンター

都丸昭�さん(左)と����さん(右)�さん(左)と����さん(右)さん(左)と����さん(右)

会場の様子。一流ホテルでピシッと決める(関連記事 p10~にもあり)

東京都板橋区にある「舟渡高齢者在宅サービスセンター」は、特養に併設するデイサービス。2012年のアクティブ福祉で「忘れ物を0にする取り組み」と題して発表をしたのが、都丸昭唯さんと宇津木忠さんだ。帰宅時の忘れ物に利用者自身が気づけるようにする、それが自立支援を促すという目からウロコの内容だ。当日発表した都丸さんは非常勤の職員で、研究発表は初めてのチャレンジ。「これまでもチャンスがあればと思っていたのですが、なかなか機会がなくて。なので張り切って準備をしました」。もともとは上司の宇津木さんが中心となって実践、法人内の研究大会で発表していたテーマ。「忘れ物ゼロというと、介護職としてはすぐに改善に取り組みたくなるところですが、そこはぐっと我慢して、どうすれば利用者自身に忘れ物に気づいてもらえるかを考えたんです」(宇津木さん)。結果、利用者の忘れ物が8割も減るという効果を生み出すことができた。研究大会での評価も高く、ぜひアクティブ福祉でも発表してはという話になる。その時、宇津木さんは自分より若手に発表させようと思った。そこで頭に浮かんだのが、常 「々発表に興味がある」と話していた都丸さんのこと。「外の人もたくさん来るので勉強になるし、何よりも自信につながる」と勧めたという。そんなわけで、発表まで二人三脚。抄録集の作成は宇津木さんが担当し、当日の発表は都丸さんが行うことにし

in アクティブ福祉