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研究紀要第222号 1-07 F 2-03 G 中学校における地域学習に関する研究 -社会科から総合的な学習の時間への発展- 平成13年2月 岡山県教育センター

中学校における地域学習に関する研究...「郷土」とされていたものが,1968・1969年の改 訂において「地域学習」「身近な地域」と改めら

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Page 1: 中学校における地域学習に関する研究...「郷土」とされていたものが,1968・1969年の改 訂において「地域学習」「身近な地域」と改めら

研究紀要第222号

1-07F

2-03G

中学校における地域学習に関する研究-社会科から総合的な学習の時間への発展-

平成13年2月

岡山県教育センター

研究紀要第二二二号

中学校における地域学習に関する研究

平成十三年二月

岡山県教育センター

Page 2: 中学校における地域学習に関する研究...「郷土」とされていたものが,1968・1969年の改 訂において「地域学習」「身近な地域」と改めら

ま え が き

岡山県教育センターでは,教育に関する専門的,技術的事項の調査研究,教育関係職員の研修,

教育相談,教育情報の収集・蓄積・発信等の諸事業を行っております。特に,調査研究におきま

しては,国の教育改革の動向と本県の教育課題を踏まえ,幾つかの研究主題を設定し,共同研究

・個人研究を行い,その成果の提供と普及に努めております。

平成14年度から実施される完全学校週5日制に向けて,新学習指導要領もすでに告示され,新

たな教育の方向性が示されました。平成12年度から移行措置が実施され,各学校で新しい学校づ

くりの取り組みが推進されています。新教育課程では,「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展

開し,児童生徒に豊かな人間性や自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育成することが課

題となっています。

その中で,開かれた学校づくりを進めるため,地域や学校の実態等に応じ,家庭や地域の人々

の協力を得るなど家庭や地域社会との連携を深めることが求められています。総合的な学習の時

間においても,社会科においても,「地域(の人々)について学ぶ」すなわち地域社会を対象と

する学習にとどまらず,「地域(の人々)で(から)学ぶ」すなわち地域社会を学習の場や支援

者とする学習や,「地域(の人々)のために学ぶ」すなわち地域社会の発展を願い貢献しようと

する態度を育てる学習をも視野に入れる必要があります。これらは,生涯にわたって学び続ける

能力や態度の基礎を培うための重要な教育活動の一つであるからです。

このような地域に関する学習の必要性にかんがみ,当教育センター社会科研究室では,平成6

年度から,「身近な地域の歴史」や「身近な地域」を課題にして,中学校社会における「適切な

課題を設けて行う学習」の研究を進めてきました。その中で,身近な地域を題材とする学習の意

義と指導上の留意点を提案しています。

それらを受けて,ここに,社会科と総合的な学習の時間における地域学習の指導の在り方につ

いて研究をまとめました。

御高覧の上,御意見,御批判をいただくとともに,新学習指導要領の趣旨に沿う学習指導の実

践のための資料として御活用いただければ幸いです。

終わりになりましたが,この研究を進めるに当たり,御協力をいただきました協力委員の先生

方並びに関係各位に厚くお礼申し上げます。

平成13年2月

岡山県教育センター所長

國 貞 忠 克

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目 次

………………………………………………………………………………………………… 1Ⅰ はじめに

……………………………………………………………………………………………… 1Ⅱ 研究の目的

……………………………………………………………………………………………… 1Ⅲ 研究の内容

…………………………………………………………………………………1 地域学習のとらえ方 1

………………………………………………………………………………………(1) 地域学習とは 1

……………………………………………………………………………(2) 地域学習の教育的意義 1

……………………………………………………………………………2 社会科における地域学習 2

……………………………………………………………(1) 各分野における地域学習の指導内容 2

…………………………………………………(2) 「適切な課題を設けて行う学習」と地域学習 3

……………………………………………………(3) 社会科における地域学習の指導上の留意点 4

……………………3 社会科の「適切な課題を設けて行う学習」と総合的な学習の時間の関連 6

……………………………………………………………………………(1) 共通点は課題解決能力 6

……………………………………………………………………(2) 課題解決能力の育成のために 7

………………………………………………(3) 社会科と総合的な学習の時間をつなぐ地域学習 7

……………………………4 社会科との関連を生かした総合的な学習の時間における地域学習 8

……………………………………………(1) 総合的な学習の時間における地域学習の指導内容 8

……………………………………………(2) 総合的な学習の時間における地域学習の指導方法 8

………………………………………………………………………………………………5 実践事例 8

(1) 事例1 「地域の姿を多面的に見つめ,玉野市の未来像を考える」

………………………-社会科らしい表現の場を工夫して- 9

(2) 事例2 「ふるさと再発見,そして未来への提案」

…-異なる教科の教師の協力による指導体制を工夫して- 16

(3) 事例3 「倉敷の過去・現在・未来」

…………-社会科における学びを総合的な学習の時間へ- 23

…………………………………………………………………………………………………31Ⅳ おわりに

……………………………………………………………資料1 地域学習の対象となる地域施設の例 32

………………………………………………………………………………資料2 地域の調査課題の例 32

Page 4: 中学校における地域学習に関する研究...「郷土」とされていたものが,1968・1969年の改 訂において「地域学習」「身近な地域」と改めら

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研究の概要

身近な地域を課題にして,中学校社会の「適切な課題を設けて行う学習」と総合的な学習の時間の授業実

践を行い,それらを通して,社会科との関連を生かした総合的な学習の時間における地域学習の指導の在り

方を探った。その結果,課題設定,課題追究,課題解決の3段階の学習過程を踏まえ,「調べ方」や「表現

の仕方」を重視した指導方法は,総合的な学習の時間における地域学習にも効果があることが分かった。

地域学習,総合的な学習の時間,社会科,課題学習,学び方,課題解決能力キーワード

Ⅰ はじめに

必要な資料をそろえて調べ学習を行っても,どう

調べればよいか,何をどう読み取ればよいかが分か

らない生徒や,「説明を聞くだけの方が楽でいい」

と言う生徒もいる。生徒にとって身近な題材を扱う

ことで課題意識を醸成し,様々な「調べ方」を体験

することで物事を追究する面白さを味わえるような

授業をしたい。このような問題意識から,生徒にと

って身近な題材を扱う地域学習について研究するこ

とにした。

今,なぜ地域学習か。新旧の中学校学習指導要領

(以下「学習指導要領」と言う。)の総則を比較す

ると,「地域社会」や「地域の人々」など「地域」

の付く文言が,4か所から10か所に増えている。新

設の総合的な学習の時間にかかわる部分を除いても,

2か所増えている。新教育課程において,地域に関

する学習が一層重視されていることが分かる。

学習指導要領「社会」においても,内容が厳選さ

れる中で,地理的分野の「身近な地域」が大項目

「地域の規模に応じた調査」のうちの中項目として

再構成されたり,歴史的分野に大項目「歴史の流れ

と地域の歴史」が新設されたりするなど,地域に関

する学習の充実が求められている。

また,総合的な学習の時間は,学校で学ぶ知識等

を実感を持って理解する機会,学校知と生活知を結

ぶ学習の場として期待されており,地域社会にかか

わる学習活動を展開することが大切になる。

そこで,まず,当教育センターの「中学校社会に

おける『適切な課題を設けて行う学習』の研究 -

『身近な地域の歴史』を課題にして-」(以下「第

一次研究」と言う。)及び「中学校社会における

『適切な課題を設けて行う学習』の研究Ⅱ -『身

近な地域』を課題にして-」(以下「第二次研究」

と言う。)の研究の成果と課題を踏まえ,社会科に

おける地域学習の指導上の留意点を整理することに

した。その上で,社会科との関連を生かした総合的

な学習の時間における地域学習の指導内容及び指導

方法を提案しようと考え,本主題を設定した。

Ⅱ 研究の目的

身近な地域を課題にして,社会科の「適切な課題

を設けて行う学習」と総合的な学習の時間の授業実

践を行い,それらを通して,社会科との関連を生か

した総合的な学習の時間における地域学習の指導の

在り方を探る。

Ⅲ 研究の内容

1 地域学習のとらえ方

(1) 地域学習とは

そもそも地域学習とは何か。広義には,子ども

の居住する身近な地域の自然や歴史,生活や文化,

産業,環境や福祉などにかかわる社会問題,政治

・経済の仕組みなどについての学習を意味する 。1 )

狭義には,小学校社会中学年の市町村及び都道

府県レベルの地域社会の学習と,中学校社会地理

的分野の「身近な地域」を指している。1958年版

小・中学校学習指導要領においては「郷土学習」

「郷土」とされていたものが,1968・1969年の改

訂において「地域学習」「身近な地域」と改めら

れて以来,今日に至るまで小・中学校共に学習指

導要領に位置付けられている。

(2) 地域学習の教育的意義

社会科における地域学習の教育的意義は何か。

1969年の小学校指導書社会編には,地域社会の学

習を行う意味として次の四つが挙げられている 。2 )

○ 個々の社会事象を意味付ける。

○ 社会生活の原則を発見させる。

○ 社会の発展を願う気持ちを養う。

○ 能力を形成する。

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これらに,広義の地域学習の教育的意義 を勘3)

案し,次のように整理した。

① 興味・関心の喚起・自分にとって身近な問題を扱うことができる。・教室の外や学校の外も学習の場となる。

② 学ぶことの意味付け・自分の生活とのかかわりで考えることができる。

・科学や教科の体系性と総合的な現実を含む地域とを結び付けることができる。

・生涯学習のきっかけをつくることができる。③ 学び方の習得

・繰り返し出掛けて自分で確かめることができる。

・観察や見学,調査の方法を身に付けることができる。

・人を訪ねたり招いたりして学び方の幅を広げることができる。

④ 感性や態度の育成・文字認識と体験的,感性的な認識とをつなぐことができる。

・人の生きざまに触れることができる。・人とのコミュニケーションを広げ人間関係のネットワークをつくることができる。

・地域社会の一員としての自覚を持つことができる。

⑤ 社会認識の形成・個々の社会的事象を結び付けることができる。・社会生活の原則を発見することができる。・社会的論争問題に価値判断をすることができる。

このように,広義の地域学習は,学校で学ぶ知

識と実生活との結び付きを重視する総合的な学習

の時間の学習に適している。

そこで,本研究では,「地域学習」を地理的分

野や社会科に限定せず,総合的な学習の時間にお

ける学習活動も含めたものとしてとらえる。

以下,社会科における地域学習の指導内容と指

導方法の在り方を整理し,その上で社会科との関

連を生かした総合的な学習の時間における地域学

習の指導方法について述べる。

2 社会科における地域学習

(1) 各分野における地域学習の指導内容

これからの社会科には,どのような地域学習が

求められるのか。新学習指導要領「社会」を基に

して述べる。

① 地理的分野における地域学習

中項目「身近な地域」については,大別して二

つの改善点がある。第一は,位置付けについてで

ある。従前は,大項目「日本とその諸地域」に位

置付けられていたが,新学習指導要領においては,

大項目「(2) 地域の規模に応じた調査」の一つ目

の中項目として再構成された。諸地域学習の一環

ではなく,地域の規模に応じた調べ方や学び方を

学習する項目の一環とされたわけである。第二は,

ねらいについてである。新学習指導要領には,

「身近な地域」について次のように示されている。

身近な地域身近な地域における諸事象を取り上げ,観察や調

査などの活動を行い,生徒が生活している土地に対する理解と関心を深めさせるとともに,市町村規模の地域的特色をとらえる視点や方法,地理的なまとめ方や発表の方法の基礎を身に付けさせる。

(下線は筆者)

下線部が記述の変更箇所である。この項目の主

なねらいは,「市町村規模の地域的特色をとらえ

る視点や方法」「地理的なまとめ方や発表の方

法」の基礎を身に付けることとされている。「地

域的特色をとらえる視点や方法」とは,地域的特

色をとらえるための調査方法のことである。

以上から,これからの「身近な地域」の学習に

おいては,「調べ方」や「表現の仕方」などの学

び方の学習が一層重視されていることが分かる。

② 歴史的分野における地域学習

大項目「(1) 歴史の流れと地域の歴史」が新設

され,そのイとして次のように示されている。

身近な地域の歴史を調べる活動を通して,地域への関心を高め,地域の具体的な事柄とのかかわりの中で我が国の歴史を理解させるとともに,歴史の学び方を身に付けさせる。

この中項目のねらいは,第一に,身近な地域の

歴史に関心を持たせることにより,「地域への関

心」を育てることである。第二に,「地域の具体

的な事柄とのかかわり」の中で,我が国の歴史に

より具体性と親近感を持たせながら理解を深める

ことである。そのためには,民俗学などの成果を

生かして,人々の生活や生活に根ざした文化に着

目したり,博物館や郷土資料館などを活用したり

することが大切である。第三に,「歴史の学び

方」を身に付けさせることである。「身近な地域

の歴史」とは,生徒による「調べる活動」が可能

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で,生徒にとって身近に感じられる範囲の歴史を

指しており,生徒自らの「調べる活動」となるよ

う工夫する必要がある 。4)

なお,この中項目には,地域の特性に応じた時

代を取り上げ,内容の(2)以下とかかわらせて実

施することと,地理的分野との連携に留意するこ

とが求められている。3年間を見通した,地域学

習としての指導計画の工夫が肝要である。

③ 公民的分野における地域学習

大項目「(1) 現代日本の歩みと私たちの生活」

の「イ 個人と社会生活」と,大項目「(3) 現代

の民主政治とこれからの社会」の「イ 民主政治

と政治参加」の一部を抜粋する。

個人と社会生活家族や地域社会などの機能を扱い,人間は本来社

会的存在であることに着目させ,個人と社会とのかかわりについて考えさせる。

民主政治と政治参加地方自治の基本的な考え方について理解させる。

その際地方公共団体の政治の仕組みについて理解させるとともに,住民の権利や義務に関連させて,地方自治の発展に寄与しようとする住民としての自治意識の基礎を育てる。

「個人と社会生活」は,個人が家族や地域社会

の一員として,他の人々と共に生活を営んでいる

ということを自覚させ,個人と社会とのかかわり

についての見方や考え方の基礎を養うことを主な

ねらいとしている。社会生活を円滑にするために

互いの合意に基づいてルールがつくられており,

これを守ることが大切であることなどについて,

生徒会の規則や地域の自治会の規則など,具体的

な事例を取り上げて考えさせることが重要である。

この学習の成果は以後の学習の基礎となるもので

あり,確実に身に付けさせることが必要である 。5 )

「民主政治と政治参加」の抜粋部分は,地方自

治の基本的な考え方について,地方公共団体の仕

組みと関連させて理解することを主なねらいとし

ている。地域社会における住民の福祉は,住民の

自発的努力や住民参加の自治によって実現するも

のであること,地方自治の発展に寄与しようとす

る自治意識の基礎を育てることの2点が大切であ

る 。6)

また,大項目「(3) 現代の民主政治とこれから

の社会」の「ウ 世界平和と人類の福祉の増大」

のうち,「地球環境,資源・エネルギー問題」に

ついては,身近な地域の生活との関連性を重視し,

世界的な視野と地域的な視点に立って追究させる

工夫を行うよう示されている。

以上,公民的分野にも地域学習に関する内容が

含まれており,その視点を大切にすべきであろう。

(2) 「適切な課題を設けて行う学習」と地域学習

① 「適切な課題を設けて行う学習」の目指すもの

「適切な課題を設けて行う学習」のねらいは何

か。新旧の学習指導要領の「適切な課題を設けて

行う学習」に関する記述を比較してみる。

【1989年告示】生徒の主体的な学習を促し、社会的事象に対する

関心を一層高めるため、各分野において、第2の内容の程度や範囲に十分配慮しつつ事項を再構成するなどの工夫をして、適切な課題を設けて行う学習の充実を図るようにすること。

(下線は筆者)

【1998年告示】生徒の主体的な学習を促し,課題を解決する能力

を一層培うため,各分野において,第2の内容の程度や範囲に十分配慮しつつ事項を再構成するなどの工夫をして,適切な課題を設けて行う学習の充実を図るようにすること。

(下線は筆者)

この学習のねらいは,従前は,第一に「生徒の

主体的な学習」を促すこと,第二に「社会的事象

に対する関心を一層高める」ことであったと言え

る。新学習指導要領においては,第一のねらいは

従前と変わらないものの,第二の記述は「課題を

解決する能力を一層培う」ことと改められた。

「課題を解決する能力を一層培うため」という

点は,「自ら課題を見いだし,自ら学び自ら考え,

課題を解決する力を育成することを目指してい

る」と説明されている。また,この学習の充実が

求められている理由は,「自ら学ぶ意欲や課題を

見いだし追究する能力や態度を育成することが重

要であると考えるから」とされている 。7)

したがって,これからの「適切な課題を設けて

行う学習」には,[生きる力]としての課題解決

能力の育成が期待されていると言えよう。ただし,

この場合の課題解決能力とは,社会科の目指す公

民的資質の基礎や社会認識の形成にかかわる能力

に限定される。

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② 「適切な課題を設けて行う学習」の指導内容

この学習の指導内容については,「各分野にお

いて,第2の内容の程度や範囲に十分配慮しつつ

事項を再構成するなどの工夫」をするとのみ示さ

れ,地理的分野や歴史的分野のどの内容を扱うか

示されていない点は,従前同様である。しかし,

新学習指導要領においては,公民的分野にこの学

習を取り入れるべき内容が2か所明示された。こ

れは,大きな改訂点であり,課題解決能力の育成

を図る「適切な課題を設けて行う学習」の一層の

充実が求められていると言えよう。

そのうち1か所は,大項目「(1) 現代社会と私

たちの生活」の「ア 現代日本の歩みと私たちの

生活」の「内容の取扱い」であり,もう1か所は,

「(3) 現代の民主政治とこれからの社会」の「ウ

世界平和と人類の福祉の増大」の「内容の取扱

い」である。後者について,該当部分を抜粋する。

「地球環境,資源 エネルギー問題」について・は,適切な課題を設けて行う学習を取り入れるなどの工夫を行い,国際的な協力や協調の必要性に着目させるとともに,身近な地域の生活との関連性を重視し,世界的な視野と地域的な視点に立って追究させる工夫を行うこと。

(下線は筆者)

地球環境の悪化と資源・エネルギーの有限性と

その枯渇の問題などについて,適切な課題を設け

て行う学習を実施することには,次のような意義

がある。第一に,環境汚染や自然破壊が,地球規

模,国家規模の問題であるとともに,地域の課題

であることに気付かせることである。第二に,資

源循環型社会への転換を図るための省資源,省エ

ネルギー及びリサイクルなどの必要性を実感させ

ることである。第三に,自らの生活を見直すとと

もに,現在及び将来の人類がよりよい社会を築い

ていくために,これらの課題を考え続けていく態

度を育てることである。3分野の関連を図り,7

年間にわたる社会科学習の締めくくりとして,い

わゆる“ , ”を実現するThink Globally Act Locallyため,身近な地域の現実や課題と結び付けた「適

切な課題を設けて行う学習」が求められている。

以上から,中学校社会における地域学習の代表

例として,過去・現在・未来の「身近な地域」を

課題にした「適切な課題を設けて行う学習」を挙

げることができる。

(3) 社会科における地域学習の指導上の留意点

では,地域学習としての「適切な課題を設けて

行う学習」の指導上の留意点は何か。内容面と方

法面,指導計画の視点から述べる。

① 内容面の留意点

まず,指導内容についてである。第一次研究で

「身近な地域の歴史」の学習の指導上の留意点を,

第二次研究で「身近な地域」の学習の指導上の留

意点をそれぞれ示している 。これらに公民的分8)9)

野における地域学習の指導上の留意点を加味し,

社会科における地域学習の指導の内容面の留意点

を次のように整理した(表1)。

表1 内容面の留意点

小学校における身近な地域についての既習ア

内容を把握し,必要以上の重複は避け関連や

発展を図る。

資料の収集について次の点に留意する。イ

○ 身近な公共施設や公共機関,文化財,景

観等に関する情報を収集しておく。

○ 郷土資料館や図書館などの展示内容や刊

行物などの情報を収集しておく。

○ 都道府県史や市町村史,郷土資料集等を

活用する。

○ 新聞やテレビ,インターネット等で報じ

られる地域のニュース,地方自治体の広報

誌等をよく見ておく。

校外の調査活動においては,対象となる施ウ

設,機関,商店等との連絡を密にし,活動の

趣旨や内容への理解と協力を求める。

3分野の学習相互の関連を図り,地域や人エ

類の未来への課題を取り上げる。

② 方法面の留意点

次に,指導方法についてである。この学習の主

なねらいである課題解決能力の育成の視点から,

指導方法を吟味することが重要であると考えられ

る。方法面の留意点は,第一次研究及び第二次研

究の成果 から次のように導き出すことができ10)11)

る(表2)。

表2 方法面の留意点

課題設定,課題追究,課題解決の3段階のア

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指導の過程を踏まえる。

課題設定の段階において,予想や学習計画イ

(→調べ方)を立てる活動を行う。

課題追究の段階において,見学や観察,聞ウ

き取り調査や動態調査等の体験的な活動を行

(→調べ方)う。

課題解決の段階において,発表と討議の活エ

(→表現の仕方)動を行う。

課題解決の段階において,学習を振り返るオ

活動を行う。

各段階において,作業的,体験的な活動をカ

(→調べ方,表現の仕方)行う。

各段階において,「学習課題調査カード」キ

「学習カード」「自己評価表」を活用する。

(→調べ方,表現の仕方)

このうち,特に重要な点をまとめると,次の二つ

になると考えられる。第一に,どのような課題につ

いて,いつ,どこで,だれと,何を手掛かりに,ど

のような手順で,どのような手段で調べまとめるの

か(調べ方)である。第二に,どのような課題につ

いて,いつ,どこで,だれと,だれに対して,どの

ような方法で表現するのか(表現の仕方)である。

ここで言う「調べ方」や「表現の仕方」は,社会科

学習の一環であるので,社会的な見方や考え方に根

ざしていることが重要である。

第一次研究及び第二次研究の結果からすると,特

に,表2のエ「発表と討議の活動」とオ「学習を振

り返る活動」の指導については,工夫・改善の余地

がある。調べ学んだことを他者へ向けて表現する活

動や,自己評価等により自己の学びを振り返ってそ

の成果と課題を自覚し,次の活動へ向けて修正・改

善していく活動の一層の充実が,自ら課題を見いだ

し,自ら学び自ら考え,課題を解決する力の向上に

結び付くと考えられるからである。

そこで,エとオについて次のような工夫を加える

ことにした。

○ エ「発表と討議の活動」について

第一は,発表内容に調査の過程を盛り込むこと

である。調査の結果だけでなく,社会的事象を見

いだし,課題を設定して追究する過程が明確に分

かるようなまとめ方や表現の方法を工夫すること

で,発表者と聞き手との間で「調べ方」や「表現

の仕方」を共有することができると考えられる。

第二は,調査の経過発表や討議の形態として,

模造紙や報告書による発表,ディベート的な討論

に加え,コンピュータによるプレゼンテーション

やポスターセッションも取り入れることである。

ポスターセッションは,少人数単位で発表するの

で,発表者は全体を前にした発表より緊張度が低

く,聞き手も気楽に質問できる。また,一つのグ

ループが何度か繰り返し発表するので,グループ

内の多くの生徒が発表役になるチャンスがある。

なお,ポスターセッションのグループごとの発表

方法は多様であり,ポスターや模造紙に限らず,

模型などの作品や実物,伝統芸能や伝統技術など

の実演,クイズ形式などを用いる場合もある。

第三は,外部人材を活用することである。発表

や討議の活動の際に,課題設定や課題追究の段階

でお世話になった外部人材をゲストとして招き,

コメントをもらうことで,成就感や有用感を持つ

ことができると考えられる。

○ オ「学習を振り返る活動」について

第一は,「学習シート」の改善である。「学習

シート」は,課題解決の段階での活用のため第一

次研究及び第二次研究において提案したものであ

るが,「他のグループの調べ方,表現の仕方のよ

かった点」の欄を加えることにした。発表の活動

の際の相互評価の観点を明確にし,「調べ方」や

「表現の仕方」,他の生徒の学びのよさに着目で

きるようにするためである。このことは,発表者

に自分が受け入れられているという安心感を持た

せ,活動の活性化をももたらすものと考えられる。

また,他の

生徒の学び

を評価した

り,自己の

学びを他の

生徒から評

価されたり

することで,

自己評価の

力が付いて

いくと考え

られる。

第二は,

学習の途中

と最後の2

 発表と討議の活動

 学習を振り返る活動

 調べる活動 まとめる活動

 学習を振り返る活動

 単元のガイダンス 課題をつくる活動

 予想を立てる活動

 学習計画を立てる活動

自己評価表 Ⅱ

課課題題設設定定

課課題題追追究究

課課題題解解決決

学習課題調査カード

学習課題調査カード

学習シート学習シート

自己評価表 Ⅰ

自己評価表 Ⅰ

図1 「適切な課題を設けて行う学習」の指導過程

Page 9: 中学校における地域学習に関する研究...「郷土」とされていたものが,1968・1969年の改 訂において「地域学習」「身近な地域」と改めら

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段階で自己評価の活動を導入することである。

自己評価の活動については,第一次研究及び第

二次研究において,課題解決の段階の最後に

「自己評価表」を用いて行う方法を提案した。

本研究では,課題追究の段階の最後にも,課題

設定から課題追究までの学習活動を振り返る自

己評価の活動を取り入れ,合計2回行うことに

した(図1)。

第三は,「自己評価表」の改善である。次の

3点について改善することにした。1点目は,

「自己評価表」を二つに分け,課題追究の段階

の自己評価用を「自己評価表Ⅰ」(図2),課

題解決の段階の自己評価用を「自己評価表Ⅱ」

(図3)としたことである。2点目は,学習活

動の目標を意識しながら自己評価できるように

するため,「課題設定の段階と課題追究の段階

のめあて」「課題解決の段階のめあて」の欄を

加えたことである。3点目は,評価項目等に

「調べ方」や「表現の仕方」に関する観点を加

えたことである。

これらの工夫・改善によって,生徒は,学習の

流れの中で各段階の活動がどのような意味を持つ

のかを自覚し,「調べ方」や「表現の仕方」,自

己評価の仕方などの学び方に着目することができ

ると考えた。

③ 3年間を見通した指導計画

第二次研究の結果,課題解決能力の育成のため,

3年間を見通した指導計画を作成し,系統的に実

施することが課題として残されている。地域学習

の指導内容の面からも,第1学年から第3学年ま

での間に必要以上の重複を避け,3分野の関連や

発展を図るため,3年間を見通した地域学習に関

する学習課題を整理するなど,指導計画の工夫が

重要である。

そこで,本研究では,3年間を見通した指導計

画(表3,7,11)を作成することにした。その

際,地域学習としての「適切な課題を設けて行う

学習」の課題や学習内容,すなわち「内容知」の

系統性と,「調べ方」や「表現の仕方」,すなわ

ち「方法知」の系統性に配慮した。社会的な見方

や考え方に根ざした「調べ方」「表現の仕方」の

指導に重点を置いた「適切な課題を設けて行う学

習」を系統的に実施することは,自ら課題を見い

だし,自ら学び自ら考え,課題を解決する力の育

成に有効であると考えられる。

3 社会科の「適切な課題を設けて行う学習」と総

合的な学習の時間の関連

(1) 共通点は課題解決能力

総合的な学習の時間の指導のねらいは,学習指

自 己 評 価 表 Ⅰ

年 月 日 ( )年( )組( )番氏名( )

課題設定の段階と ① グループの人と協力しよう。課題追究の段階の ② 課題について自分なりの予想を立てよう。めあて ③ 調べ方を工夫し,いろいろな調べ方に挑戦しよう。

1 今回の学習を振り返って,あなた自身の学習活動はどのようでしたか。次のA~Eを目安に,下の(1)~(6)の各項目の内容について,あなたに最もよく当てはまる記号を選んで,○印を付けてみましょう。

A はい B どちらかといえばはい C どちらともいえないD どちらかといえばいいえ E いいえ

(1)グループの人としっかり協力できましたか。A B C D E

(2)課題に興味・関心を持ち,意欲的に調べる A B C D Eことができましたか。

(3)課題について自分なりの予想を基に,調べ A B C D Eる計画を立てることができましたか。

(4)課題について,どんな方法で調べればよい A B C D Eか見通しを持って活動できましたか。

(5)課題について,いろいろな種類の資料を集 A B C D Eめることができましたか。

(6)集めた資料を基に,自分なりに工夫してま A B C D Eとめることができましたか。

2 今回の学習ではどんな調べ方ができましたか。次のア~タのうち,今回あなたが使った調べ方すべてに○印を付け,その数を[ ]に記入してみましょう。ア教科書 イ 資料集 ウ地図帳 エ 図書室の本 オ先生からの資料カ校外で見付けた資料 キ ビデオ ク ケインターネットCD-ROMコ先生への質問 サ 家の人への質問 シ 先生や家の人以外の人に直接質問

ス先生や家の人以外の人への電話 セ 先生や家の人以外の人へのファックスソ先生や家の人以外の人への電子メールタその他( ) 計[ ]とおり

3 2で○印を付けたもののうち,今回,初めて使った調べ方を{ }に記入してみましょう。

{ }

図2 「自己評価表Ⅰ」

自 己 評 価 表 Ⅱ

年 月 日 ( )年( )組( )番氏名( )

① グループの人と協力しよう。

課題解決の段階 ② 表現の仕方を工夫し,自分たちの思いを伝えよう。のめあて ③ いろいろな調べ方や表現の仕方のよい点に注目しよう。

④ 課題について自分なりの考えを持とう。

今回の学習を振り返って,あなた自身の学習活動はどのようでしたか。次のA~Eを目安に,下の1~7の各項目の内容について,あなたに最もよく当てはまる記

号を選んで,○印を付けてみましょう。

A はい B どちらかといえばはい C どちらともいえないD どちらかといえばいいえ E いいえ

1 グループの人としっかり協力できましたか。A B C D E

2 調べて分かったことを相手にとって分かり A B C D Eやすく表現することができましたか。

3 自分の調べた課題や学習した内容につい A B C D Eて,もっと調べてみたいと思いましたか。

4 他のグループの発表から,いろいろな調べ A B C D E方やものの考え方に気付きましたか。

5 課題について自分なりの考えを持つことが A B C D E

できましたか。

6 以前よりも,身近な地域の学習に興味や関 A B C D E心を持てるようになりましたか。

7 以前よりも,社会科の学習にやる気がわい A B C D Eてきましたか。

図3 「自己評価表Ⅱ」

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- -7

導要領総則に次のように示されている。

(1) 自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。

(2) 学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすること。

(1)のねらいは,「自ら課題を見付け,自ら学

び自ら考え,よりよく問題を解決する力などの

[生きる力]を育てること」と説明されている 。12)

[生きる力]としての課題解決能力の育成が期待

されていると言えよう。

ただし,この場合の課題解決能力は,社会科の

場合と異なり,公民的資質の基礎や社会認識の形

成にかかわる能力等に限定されない能力である。

「科学的な見方や考え方」や「伝え合う力」「事

象を数理的に考察する能力」「進んで生活を工夫

し創造する能力」「実践的コミュニケーション能

力」などにかかわるものであり,それらを一体化

して総合的に働くようにする「知の総合化」にか

かわる能力とも言える。

以上から,「適切な課題を設けて行う学習」で

育てる課題解決能力と総合的な学習の時間で育て

る課題解決能力との非同一性は無視できないもの

の,それぞれの学習が目指すものの中には,重な

り合う部分が少なからずあると考えられる。

(2) 課題解決能力の育成のために

そこで,社会科の「適切な課題を設けて行う学

習」と総合的な学習の時間の関連について,課題

解決能力の育成の視点から述べる。

社会科については,前述のとおり,社会的な見

方や考え方に根ざした「調べ方」「表現の仕方」

の指導に重点を置いた「適切な課題を設けて行う

学習」の実施が,課題解決能力の育成につながる

と考えられる。

総合的な学習の時間についてはどうか。学習指

導要領に示されている総合的な学習の時間の学習

活動上の配慮事項から,キーワードを整理すると

次のようになる。

・ 自然体験やボランティア活動などの社会

体験

(→調べ方)・ 観察・実験

(→調べ方)・ 見学や調査

(→表現の仕方)・ 発表や討論

(→調べ方,表現・ ものづくりや生産活動

の仕方)

(・ グループ学習や異年齢集団による学習

→調べ方,表現の仕方)

・ 地域の人々の協力や全教師一体の指導体制

(→調べ方)・ 地域の教材や学習環境

これについても,「調べ方」と「表現の仕方」

の二つが重要であると考えられる。ただし,活動

主義が過ぎて「はい回り」に陥らないようにする

ために,教科等で培われる「ものの考え方」(例

えば,社会的な見方や考え方,科学的な見方や考

え方など)に根ざした「調べ方」「表現の仕方」

が発揮されるように学習活動を支援する必要があ

る。生徒が社会的な見方や考え方,科学的な見方

や考え方などに根ざした「調べ方」「表現の仕

方」を発揮する経験を積むことで,自ら課題を見

付ける力や学ぶ力,考える力,解決する力が育成

されるのではないかと考えられる(図4)。

以上から,課題解決能力の育成のためには,社

会科において

も総合的な学

習の時間にお

いても,「調

べ方」や「表

現の仕方」に

焦点を当てた

指導が重要で

あると考えら

れる。

(3) 社会科と総合的な学習の時間をつなぐ地域学習

地域学習は,社会科のカテゴリーと総合的な学

習の時間のカテゴリーが重なり合う部分に位置す

る。社会科のカテゴリーの地域学習は「適切な課

題を設けて行う学習」に代表され,「調べ方」や

「表現の仕方」を重視した指導によってねらいに

迫ることができる。総合的な学習の時間のカテゴ

リーの地域学習も,「調べ方」や「表現の仕方」

を重視した指導によってねらいに迫ることができ

る。したがって,地域学習は,「適切な課題を設

けて行う学習」で培われた「調べ方」「表現の仕

方」が総合的な学習の時間で発揮されたり,総合

図4 課題を解決する能力の概念

調

調調

べべ

方方

解決する力解決する力

自ら考える力自ら考える力

自ら学ぶ力自ら学ぶ力

見付ける力見付ける力

表現の仕方

表表現現のの仕仕方方

 教科等のものの考え方 教科等のものの考え方

 教科等のものの考え方 教科等のものの考え方

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的な学習の時間で培われた「調べ方」「表現の仕

方」が「適切な課題を設けて行う学習」に発揮さ

れたりする,双

方向の関係性に

おけるインター

フェイス(橋渡

し的領域,境界

面)ととらえる

ことができる

(図5)。

4 社会科との関連を生かした総合的な学習の時間

における地域学習

(1) 総合的な学習の時間における地域学習の指導内

総合的な学習の時間の学習内容について,学習

指導要領に課題の例は示されているものの,その

例示にこだわる必要はないとされている。しかし,

「地域や学校の特色に応じた課題」についての学

習活動や,配慮事項の「地域の教材や学習環境の

積極的な活用」などの記述は,この時間に地域学

習を行うことの意義や可能性を示唆している。

したがって,前述の社会科における地域学習の

指導の内容面の留意点(表1)のア~ウを参考に

して,取り上げる学習対象や学習課題を工夫する

ことにした。また,総合的な学習の時間における

地域学習の対象となる地域施設の例と,地域の調

査課題の例を整理し(巻末の , ),これ資料1 2

らを手掛かりに,地域素材を探索し教材化を図る

ことにした。

(2) 総合的な学習の時間における地域学習の指導方

2 (3) 社会科における地域学習の指導前述 の「

」のうち,「 」を上の留意点 ② 方法面の留意点

参考にして,総合的な学習の時間における地域学

習の指導方法の留意点を,次のように考えた。

① 課題設定,課題追究,課題解決の3段階の学習

過程を踏まえる。

学習課題を明確に意識しつつ学習活動を展開す

ることにより,活動に意味付けがなされるととも

に,社会的な見方や考え方,科学的な見方や考え

方などが発揮され,有意義な学びが成立すると考

えられる。

表現の仕方表現の仕方 表現の仕方表現の仕方

調調 べべ 方方調調 べべ 方方

図5 地域学習の概念

② 課題追究の段階で見学や観察,聞き取り調査や

動態調査等の体験的な活動を行う。

体験的な活動の工夫により,試行錯誤,納得や

実感,新たな疑問,表現の意欲などを引き出し ,1 3 )

科学的,論理的あるいは社会的な思考・判断を促

すことができるとともに,学習の発展性が期待で

きる。

③ 課題解決の段階で発表と討議の活動を行う。

総合的な学習の時間においては,答えが一つに

帰結しない場合が多く,生徒一人一人の学びを交

流する必要がある。調査や追究の結果だけでなく

過程を盛り込んで紹介し合うこと,一人一人の得

意分野を生かした発表方法を取り入れることによ

り,多様な追究方法や「調べ方」「表現の仕方」

に着目することができ,学び方の視野が広がると

考えられる。

④ 課題追究と課題解決の2段階にわたる学習を振

り返る活動を行う。

総合的な学習の時間においては,学習活動を展

開する中で,生徒自らが設定した課題や学習計画,

追究の過程を自ら振り返り,評価し,改善を図っ

ていくことは,極めて重要な役割を果たす 。発14)

表と討議の活動における相互評価と,2段階にわ

たる学習を振り返る活動(自己評価)により,自

己の学びを見取り,客観視する力を付けることが

できると考えられる。

なお,総合的な学習の時間においては,以上に

加え,指導体制の在り方にも留意する必要がある。

本研究では社会科「適切な課題を設けて行う学

習」の指導過程を応用するため,社会科教師が中

心となり,他教科教師等の協力を得る形態を基本

とした。その際,学年単位の目指す方法知を「適

切な課題を設けて行う学習」のそれとそろえた上

で,各教師の専門分野や得意分野を生かし,生徒

間の「調べ方」の違いに応じた指導分担と「表現

の仕方」の違いに応じた指導分担を使い分けるこ

とにした。併せて,可能な限り外部人材を招へい

し協力を仰ぐことにした。

5 実践事例

以上のような考えに基づいた実践事例を三つ報

告する。事例1及び2は,社会科を中心とした実

践,事例3は,総合的な学習の時間を中心とした

実践である。

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(1) 事例1 「地域の姿を多面的に見つめ,玉野市

の未来像を考える」 -社会科らしい表現の場を

工夫して-

本実践では,身近な地域の学習に,歴史・地理

・公民の各分野の特性を生かした「適切な課題を

設けて行う学習」を導入することにより,地域の

過去・現在・未来を互いに関連付け,地域に対す

る認識を深め,住民として地域の将来を積極的に

考えていこうとする態度を養うとともに,郷土へ

の愛着を深めたいと考えた。

また,学習を通して,「調べ方」「表現の仕

方」などの学び方を身に付けることも学習のねら

いとした。

① 取り上げた地域の概要

玉野市は,県の最南部に位置する人口約72,000

人の小都市である。市の南部には,日本の渚100なぎさ

選にも選ばれた県下最大の海水浴場である渋川海

岸(本校の学区)が,北部には,自然林を生かし

た県下最大の都市公園である深山公園があるなど,み や ま

自然の多い風光明媚な地域である。び

市の中心部に近い宇野港は,四国への玄関口と

しての役割を果たすとともに,大正時代から造船

業が栄え,海運と造船の街として発展してきた。

近年は,瀬戸大橋の開通による連絡船の廃止,造

船不況などにより,市勢が伸び悩んでいる。現在

「海洋観光都市」構想が掲げられ,新しい街づく

りの取り組みが行われている。

② 3年間を見通した指導計画

地域の過去・現在・未来を段階を追って学習す

ることで,地域に対する認識を深められるように

するとともに,「調べ方」「表現の仕方」の育成

に系統性を持たせるように配慮した(表3)。

第1学年歴史的分野ア

江戸時代の日比村(岡山藩)と香西浦(高松

藩)の漁業権を巡る争いを題材とし,この時代の

漁業の発達や地域社会の様子をつかめるようにす

るとともに,地域の人々の心情に迫ることで,郷

土への愛着を育てようと考えた。

「調べ方」としては,資料から当時の人々の願

いや社会の姿を読み取る方法に,「表現の仕方」

としては,ディベートの仕方に重点を置いた。

第2学年地理的分野イ

市の主な産業や施設,自然を題材とし,現在の

市の姿を多面的にとらえることで,身近な地域の

地域的特色を理解できるようにしようと考えた。

「調べ方」としては,資料の収集やフィールド

ワーク,聞き取り調査の仕方に,「表現の仕方」

としては,ポスターセッションの仕方に重点を置

いた。

第3学年公民的分野ウ

市の未来像を題材とし,第2学年地理的分野の

学習でつかんだ市の現状や,地域住民の思い・願

いの調査結果を基にこれからの街づくりを提案す

ることで,地域社会の一員としての自覚を育てよ

うと考えた。

「調べ方」としては,聞き取り調査やアンケー

ト調査の仕方に重点を置いた。「表現の仕方」と

しては,ポスターセッションにおける寸劇や各種

教育機器の活用など,発表内容に応じた発表方法

の選択に重点を置いた。

③ 第2学年地理的分野「玉野市ってどんなまち?

-玉野市で大きな役割を果たしている産業・施

設・自然を調べ,玉野市がどんなまちか考えよう

-」の授業実践

目標ア

(ア) 身近な地域の発展の様子を探りたいという意欲

を持って,産業・施設・自然についての調査活動

や発表の活動に取り組むことができる。(社会的

事象への関心・意欲・態度)

(イ) 諸資料やフィールドワークに基づき,身近な地

域の産業・施設・自然の現状を多角的に考察する

ことができる。(社会的な思考・判断)

(ウ) 調べた内容を図・グラフなどに工夫してまとめ,

ポスターセッションで分かりやすく発表すること

ができる。(資料活用の技能・表現)

(エ) 産業・施設・自然についての調査や発表を通し

て,現在の身近な地域の姿を多面的にとらえ,そ

の地域的特色を理解することができる。(社会的

事象についての知識・理解)

授業実践(10単位時間扱い)イ

(ア) 課題設定の段階

玉野市を代表する様々な産業・施設・自然につ

いて,その歴史や沿革,現在の姿や事業内容,今

後の展望,市の発展への貢献などの視点から調べ,

身近な地域の姿を多面的にとらえることができる

ようにした。

まず,生徒に対して「玉野市を代表する産業・

施設・自然にはどんなものがあるか」というアン

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表3 3年間を見通した「適切な課題を設けて行う学習」の指導計画

α中学校学習テーマ:玉野の過去・現在・未来 -地域の姿を多面的に見つめ,玉野市の未来像を考えよう-

目 指 す 方 法 知 ( 「 調 べ 方 」 「 表 現 の 仕 方 」 )学年 単元と課題,時数 学 習 目 標

【歴史的分野】 江戸時代の日比村(岡山藩) 課 題 ・大槌島はどちらのものか考えていこうという意欲を持つ。学年の重点江戸時代の産業・技 と香西浦(高松藩)の漁業権 設 定 ・当時の漁業の発達や地域社会の様子について調べたいという意欲を持つ。

第 術の発達 (大槌島の境界)を巡る争いに の段階 ・学習計画を立てることができる。資料から当づち

時の人々の着目し,村の権利を死守しよう一 「江戸時代の境界争 とした人々を描いた資料の読み 課 題 ・資料を基に争いの経過や人々の心情を読み取り,整理することができる。願いや社会

いから,当時の産業 取りやディベートを通して,郷 追 究 ・漁業権争いに対する自分の意見をまとめることができる。の姿を読み学 や社会の様子を探ろ 土への愛着を持つとともに,こ の段階取る方法,

ディベートう」 の時代の漁業の発達や地域社会年 の様子をつかむことができる。 課 題 ・根拠となる資料を挙げて自分たちの考えを主張することができる。の仕方

6単位時間扱い 解 決 ・相手側の発言に対し,根拠となる資料を挙げて反論することができる。の段階目指す内容知:郷土への愛着

【地理的分野】 玉野市の主な産業や施設,自 課 題 ・身近な地域の発展の様子を調べたいという意欲を持つ。学年の重点玉野市ってどんなま 然に着目し,諸資料の収集やフ 設 定 ・見通しを持って,自分の学習課題に即した学習計画を立てることができる。

第 ち? ィールドワーク,聞き取り調査 の段階資料の収集やフィールを通して,身近な地域の特色を

二 「玉野市で大きな役 多面的に理解するとともに,調 課 題 ・いろいろな方法で資料を収集することができる。ドワーク,割を果たしている産 べ考えたことをポスターセッシ 追 究 ・フィールドワークや聞き取り調査を進めることができる。聞き取り調

学 業・施設・自然を調 ョンで発表することができる。 の段階 ・予想と調べた結果を比較して,結論をまとめることができる。査の仕方,ポスターセべ,玉野市がどんな

年 まちか考えよう」 課 題 ・発表の仕方を工夫して,ポスターセッションを進めることができる。目指す内容知:身近な地域の特 ッションの解 決 ・他グループの発表内容を理解して,質問や意見を出すことができる。色の多面的理解 仕方

10単位時間扱い の段階

【公民的分野】 玉野市の現状とこれからの街 課 題 ・市の街づくり計画に関する資料を見たり担当者の話を聞いたりして,自分なりの街学年の重点わたしたちがつくる づくりに着目し,地域の人々へ 設 定 づくりプランを提案しようとする意欲を持つ。

第 未来の玉野市 の聞き取り調査やアンケート調 の段階 ・学習計画を発表し合い,他グループの意見を参考にして練り直すことができる。聞き取り調査やアンケ査を基に,自分なりの街づくり

三 「地域の人々の願い プランを提案することを通し 課 題 ・自分の学習課題の追究に適した「調べ方」を考え実施することができる。ート調査のを基に自分たちが望 て,地域社会の一員としての自 追 究 ・聞き取り調査やアンケート調査を工夫し,地域住民や様々な施設で働く人々の街づ仕方,発表

学 む将来の玉野市の姿 覚を持つとともに,発表内容に の段階 くりに対する意見や情報を幅広く収集することができる。内容に応じをまとめ,市長に提 応じた発表の仕方を選択し工夫 ・収集した意見や情報を基に,自分なりの街づくりプランをまとめることができる。た発表の仕

方年 案しよう」 することができる。課 題 ・自分たちの提案のよさをアピールできるように,発表の仕方を選択し工夫すること

10単位時間扱い 解 決 ができる。目指す内容知:地域社会の一員の段階 ・他グループの発表内容を理解して,質問や意見を出すことができる。としての自覚

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表4 学習課題の分野と訪問先等

分 野 訪 問 先産業・施設・自然

工業 造船 ・ 造船総務課A A・郷土史家

金属 ・ 金属総務課B B

港湾 日比港 ・岡山地方振興局宇野港管理事務所・ 海運C

宇野港 ・岡山地方振興局宇野港管理事務所・ フェリーD

観光・ 渋川海岸 ・玉野市観光協会レジャ ・玉野海洋博物館ー

競輪 ・玉野市競輪場

遊園地 ・ 王国E

福祉・ スポーツ ・玉野青少年スポーツセンター

健康 公園 ・深山公園

福祉 ・特別養護老人ホーム

ケートを行った。次に,多くの生徒が挙げた産業

・施設・自然のうち,調べてみたいという希望の

多かったものを4分野に分類し,13カ所の訪問先

に集約した(表4)。その上で,同じ訪問先を希

望する生徒でグループをつくり,グループごとに

学習課題を設定した。

(イ) 課題追究の段階

インターネットの使い方や書籍の探し方などの

調べ方について紹介し,幅広く資料が集められる

よう配慮した。生徒では入手困難な資料について

は,教師が収集したものを提供した。

また,電話の掛け方や訪問時のマナー,メモの

取り方,写真の撮り方などのポイントを整理した

マニュアルを作り,配布・説明した。生徒がこの

マニュアルをフィールドワークや聞き取り調査の

参考にすることで,主体的な調査活動を進められ

るようにした。

写真1 王国で聞き取り調査をする生徒E

(ウ) 課題解決の段階

発表用資料の作成の仕方について,次の点に留

意するよう助言した。

○ 調べたことの羅列で終わらないようにするた

め,予想と結果,調べた方法を明示する。

○ できるだけ箇条書きで記述し,具体的な説明

は口頭で行う。

○ グラフ,イラスト,写真,小道具などを活用

し,聞き手が興味を持てるようにする。

また,次のような効果を期待し,学級単位と学

年単位の2回ポスターセッションを行った。

○ 発表役を全員体験することができる。

○ 多人数の中では発言しにくい生徒にも,質問

や意見を出す機会が増える。

○ 学級内の他グループのよい点を取り入れて発

表の仕方を修正・改善することで,学年単位の

ポスターセッションで効果的な発表をすること

ができ,成就感が高まる。

写真2 学年単位のポスターセッション

生徒の変容ウ

(ア) 身近な地域の特色の多面的理解について

イメージマップ「玉野市についてのイメージ」

の学習前と学習後の比較によると,平均語彙数がい

増加した(図6)。また,記述の内容も,学習前

には,観光や自然など特定の項目に偏る傾向があ

ったが,学習後には,視点が大きく広がっている

生徒が多く見られた(図7)。

これらの結果や報告書の内容から,生徒は,身

近な地域の特色を多面的に理解できたことがうか

がえる。

図6 イメージマップの平均語彙数の比較

0 5 10 15 20

91人中(1%水準で有意差あり)

事前

事後

(個)

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図7 抽出生徒のイメージマップ(上が学習前)

(イ) 「表現の仕方」について

学習後,第2学年生徒97名に,ポスターセッシ

ョンについてのアンケートを行った。

アンケートの結果(一部)

○ 他の学級の発表も聞くことができたのはよかった→「そう思う」「どちらかといえばそう思う」計93.8%

○ 少人数単位なので質問がしやすかった→「そう思う」「どちらかといえばそう思う」計71.6%

○ 1回目より2回目の方がうまく発表することができた→「そう思う」「どちらかといえばそう思う」計61.7%

これらの結果や授業中に見られた生徒の姿から,

生徒は2回のポスターセッションに主体的に参加

することができたこと,生徒の「表現の仕方」が

向上したことがうかがえる。

④ 第3学年公民的分野「わたしたちがつくる未来

の玉野市 -地域の人々の願いを基に自分たちが

望む将来の玉野市の姿をまとめ,市長に提案しよ

う-」の授業実践

目標ア

(ア) 自分なりの街づくりプランを提案する活動に意

欲的に取り組むとともに,地域社会の一員として

の自覚を持つことができる。(社会的事象への関

心・意欲・態度)

(イ) 学習課題に応じたアンケート調査や聞き取り調

査の仕方を選択・工夫し,調査結果を基に自分な

りの街づくりプランを提案することができる。

(社会的な思考・判断)

(ウ) 収集した意見や情報を分析して自分なりの提案

を導き出すことができるとともに,そのよさをア

ピールするための発表の仕方を選択・工夫するこ

とができる。(資料活用の技能・表現)

(エ) 街づくりプランを提案する活動を通して,身近

な地域のよさや抱える問題,人々の願いを理解す

ることができる。(社会的事象についての知識・

理解)

単元指導計画(10単位時間扱い)イ

表5参照。

授業実践ウ

これまでの地域学習の成果を生かし,個々の学

習課題に応じて調査の内容や対象,「調べ方」な

どを生徒が自由に決め,できるだけ自分たちの力

で学習活動を進められるように配慮した。

(ア) 課題設定の段階

「単元のガイダンス」として,市の「まちづく

り出前講座」を利用して企画課職員を招き,市が

「まちづくり総合計画」によってどのような街づ

くりを進めているかについて話を聞く機会を設け

た。これをきっかけにして,自分ならどのような

街づくりを進めるかについて課題意識を持てるよ

うにした。

「課題をつくる活動」では,地域の人々の願い

を基に,スペイン村予定地(約5.1 )とA造船ha社宅跡地(約0.9 )をどのように利用すべきかha提案することを学習活動の「ゴール」に据えるこ

とにより,街づくりについての具体的な学習課題

を設定できるとともに,課題追究への意欲を持て

るようにした。

「予想を立てる活動」では,街づくりに関する

地域の人々の願いについて予想するよう助言する

ことで,調査対象や調査方法を絞り込めるように

した。

「学習計画を立てる活動」では,第2学年地理

的分野「玉野市ってどんなまち?」の学習でつか

んだ市の現状や特色を想起し,それを念頭に調査

すべき内容を考えるよう助言した。また,各グル

ープの学習計画ができたところで,それを学級で

発表し合う場を持った。これにより,他グループ

の計画や調べ方に刺激を受けたり,他グループか

らの質問や意見を参考にしたりして計画を練り直

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- -13

表5 第3学年公民的分野「わたしたちがつくる未来の玉野市」の単元指導計画

課題「 」地域の人々の願いを基に自分たちが望む将来の玉野市の姿をまとめ,市長に提案しよう

段 階 学 習 活 動 調べ方,表現の仕方 教 師 の 支 援時数

課題設定2 ・学習方法と学習 ・市の街づくり計画に関する資料を見 ・学習内容と課題について説明する。単元のガ単元のガ

内容を知る。 たり担当者の話を聞いたりして,自イダンスイダンス・市の担当者の話 分なりの街づくりプランを提案しよ ・市の企画課職員を招き,「まちづくを聞く。 うとする意欲を持つ。 り総合計画」について話をしてもら

う。1 ・グループごとに ・地域の人々の願いを基に,スペイン課題をつ課題をつ

自分たちの考え 村予定地とA造船社宅跡地の利用方くるくるに基づいて学習 法を中心に街づくりを考えるよう促課題を決定する。 す。

・地域の人々の願 ・「学習課題調査カード」の利用を促予想を立予想を立いを予想する。 す。てるてる

・学習計画を立て ・見通しを持って学習計画を立てる ・第2学年の地域学習で学んだ市の現学習計画学習計画 2る。 ことができる。 状を想起し,それを念頭に調査すべを立てるを立てる

き内容を考えるよう助言する。・学習計画を発表 ・他グループの意見を参考にして, ・市の予算や主な施設などの街づくりし合い,質問・ 学習計画を練り直すことができる。 の参考資料を提示する。意見を交換する。 ・自分の学習課題の追究には,訪問,

・予約が必要な訪 アンケート,電話,ファクシミリな問先に決めたグ どのうち,どの方法が適しているかループは,訪問 を考えるよう助言する。の予約をする。

課題追究・聞き取り調査, ・自分の学習課題の追究に適した 調 ・予約が必要な訪問先には,生徒自身調べる調べる 課外 「

アンケート調査, べ方」を考え実施することができ が予約するよう念を押す。フィールドワー る。クなどを行う。 ・聞き取り調査やアンケート調査を

工夫し,地域住民や様々な施設で働く人々の街づくりの意見や情報を幅広く収集することができる。

3 ・調査結果を基に ・収集した意見や情報を基に,自分 ・各グループのプランを冊子にまとめまとめるまとめる街づくりプラン なりの街づくりプランをまとめる るため,報告書の様式を示しその利をまとめる。 ことができる。 用を促す。

・ここまでの学習 ・「自己評価表Ⅰ」の利用を促す。学習を振学習を振を振り返る。り返るり返る

課題解決1 ・調査結果と街づ ・自分たちの提案のよさをアピール ・様々な機器の中から自分たちの発表発表と討発表と討

くりプランを発 できるように,発表の仕方を選択 に合ったものを選択するように助言議議表し合い,質問 し工夫することができる。 する。・意見を交換す ・他グループの発表内容を理解して, ・OHP,OHC,テープレコーダーる。 質問や意見を出すことができる。 などを準備する。

・「学習シート」の利用を促す。1 ・ここまでの学習 ・ワークシート「発表の評価」と「自学習を振学習を振

を振り返る。 己評価表Ⅱ」を用い,相互評価や自り返るり返る己評価をするよう促す。

・代表生徒が市長 ・自分たちの街づくりプランについ ・市の企画課との連絡を密にし,市長課外に提案する。 て,調査結果を基に理由を挙げて との会見の場を設定する。

説明することができる。

すことができるようにした。

(イ) 課題追究の段階

「調べる活動」では,あらかじめ次の2点を助

言しておいた。

○ 資料収集だけでなく,街頭インタビューを含

む聞き取り調査やアンケート調査,施設の訪問

など,自分の学習課題の追究に適した「調べ

方」を工夫する。

○ 予約が必要な訪問先には,自分たちで予約し

た上で訪問する。

「まとめる活動」では,報告書の様式を示し,

それに従って各グループでまとめ,学年全体で冊

子「未来の玉野市」としてとじるようにした。様

式には,スペイン村予定地とA造船社宅跡地につ

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表6 聞き取り調査やアンケート調査等の主な対象

○ 街頭インタビュー・買い物客( ショッピングセンター, 生協和田F G店など)

・JR宇野駅やフェリーの利用客・深山公園や渋川海岸を訪れている人

○ 訪問による聞き取り調査・ リゾートホテル ・玉野市観光協会H・レクレセンター ・ デイケアセンターI・特別養護老人ホーム ・玉野市東清掃センター

○ ファクシミリや電話による質問・玉野灘崎農業協同組合 ・深山公園管理事務所・ファーマーズマーケット・パラグライダー関連協会

○ アンケート調査・他学年の生徒や保護者

写真3 深山公園でインタビューをする生徒

いての利用案のデザインを描く欄を設けることに

より,提案内容が具体的に分かるようにした。

(ウ) 課題解決の段階

「発表と討議の活動」では,模造紙,OHP,

OHC,ディジタルカメラ,テープレコーダなど,

できるだけ多くの種類の機器を利用できるように

し,発表方法の選択肢を多数用意した(写真4)。

冊子「未来の玉野市」を生徒から市長に手渡す

場の持ち方については,市の企画課と調整を進め

た。その結果,市長から「せっかくだから,提案

写真4 発表する生徒

写真5 提案について市長に説明する生徒

について中学生から直接話が聞きたい」という要

請があり,約40分間にわたって代表生徒が市長に

提案について説明する会を設けることができた

(写真5)。

生徒の変容エ

(ア) 学習計画の練り直しと「調べ方」について

学習計画を立てる活動では,計画を発表し合う

場において,各グループの計画に対する質問や意

見が活発に出された。「テーマと調べ方が合って

いないのでは」「○○でも聞き取り調査を行った

方がよい」「テーマとスペイン村予定地の利用案

が一致していない」などの意見を受け,幾つかの

グループが計画の修正を行った。また,質問に答

えることで,自分たちが取り組む内容が明確にな

ったグループもあった。これらのグループでは,

学習課題の追究に適した聞き取り調査やアンケー

ト調査を能率よく実施することができた。

生徒は学習計画を発表し合う中で計画を練り直

すことができたこと,生徒の「調べ方」が向上し

たことがうかがえる。

(イ) 地域社会の一員としての自覚について

あるグループは,当初「活気のあるスペイン風

なまち」を提案することにし,「活気のあるまち

づくりには,交通網の充実が必要」と考えて,J

R宇野駅やFショッピングセンターに聞き取り調

査に行った。しかし,駅員の「利用客が少ないと

列車の増便等は難しい」という話や,買い物客の

「福祉施設などがある穏やかな街にしたい」「女

性が安心して子どもが産める街がいい」という話

を聞き,「スペイン風な高齢者と若者のまち」を

提案することに変更した。スペイン村予定地を住

宅地にすることで鉄道の利用客が増え,そこに高

齢者福祉施設と若者向けのアウトレットの店舗を

造ることで,高齢者と若者が触れ合う街になるの

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ではないかと考えた。また,住宅や施設すべてを

スペイン風の建物にし,スペイン料理など色々な

料理を出す水上レストラン街を造ることで,観光

客も集められるのではないかと考えた。

このように,幾つものグループが自分たちのプ

ランに地域の人々の意見を融合させ,次々と発展

させていくなど,教師が予想した以上の取り組み

が見られた。

生徒は,地域の人々の生の声に触れることを通

して,自分本位の考えで終わらずに地域の人々の

思いや願いを考慮することの大切さに気付き,地

域社会の一員としての自覚を持ったことがうかが

える。

⑤ 結果と考察

第2学年地理的分野「玉野市ってどんなま

ち?」と第3学年公民的分野「わたしたちがつく

る未来の玉野市」の実践を比較して述べる。

「調べ方」についてア

二つの実践における「自己評価表Ⅰ」の記入内

容の変化を追ってみた(図8)。

これによると,「自分なりの予想を基に調べる

計画を立てることができたか」という問いに対し

て,「はい」「どちらかといえばはい」と答えた

生徒が,55%から69%に増えている。また,「ど

んな方法で調べればよいか見通しを持って活動で

きたか」という問いに対して,「はい」「どちら

かといえばはい」と答えた生徒は,両実践とも63

%程度である。第2学年では,計画の立て方や調

査の対象,「調べ方」などについて,教師が幾つ

かのパターンを示し参考にさせたのに対し,第3

学年の実践では,初めから生徒に任せ,訪問先へ

図8 「自己評価表Ⅰ」の集計結果(一部)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

2年適切な課題実施後

3年適切な課題実施後

2年適切な課題実施後

3年適切な課題実施後

はい

どちらかといえばはい

どちらともいえない

どちらかといえばいいえ

いいえ

2年適切な課題は 2000年2月,3年適切な課題は同10月 (91人 中 )

予想を基に計画を立てたか

見通しを持って活動したか

の依頼の電話などもすべて生徒に任せたことを考

慮すると,「調べ方」の「見通し」について両実

践の数値に差がなかったということは,実質的な

「調べ方」の向上と受け取れる。さらに,「何と

おりの調べ方ができたか」という問いに対して,

第2学年の実践で平均3.1とおりであったものが,

第3学年の実践では3.6とおりと広がりを見せて

いる。

第3学年の実践後の生徒の感想にも,「今回は,

2年生のときの地域学習とは違い,どこを訪問す

るかというところから自分たちで考えなくてはい

けないのでとても大変だったが,それと同時にや

りがいもあった」という感想が多く見られた。

「表現の仕方」についてイ

「発表と討議の活動」の様子から述べる。

第2学年の実践では,ポスターセッションにお

ける発表方法は,ほとんどの生徒が模造紙を使っ

た説明であったが,全生徒に発表役が回り,表現

の経験を積むことができた。第3学年の実践では,

発表方法の選択肢を増やした結果,OHP,OH

C,ディジタルカメラの画像の投影など,教育機

器を効果的に利用した表現ができた。複数の機器

を駆使するグループや,テープレコーダを使った

寸劇を行うグループなど様々な創意工夫が見られ,

聞き手を意識した声の大きさや話す速度にも成長

の跡がうかがえた。

考察ウ

ア,イから,二つの実践により,生徒の「調べ

方」や「表現の仕方」が向上するとともに,生徒

は地域を対象にした調べ学習に成就感や有用感を

持つことができたと考えられる。

一方で,次のような課題が残った。

地域を対象にした調べ学習を重ねる中で,生徒

の「調べ方」の要領はよくなった。しかし,第3

学年の実践において,幾つかのグループでは,自

分たちの予想を様々な意見や資料から多角的に検

証するのではなく,自分たちの予想に沿った意見

や資料だけを集めようとする傾向が見られた。社

会的な見方や考え方に根ざした「調べ方」として

は不十分であったと考えられる。今後,幅広く情

報を集め,自分たちの予想を批判的に検証しつつ

結論を導き出すという,公正で民主的な態度を育

てるための支援を工夫・改善していきたい。

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(2) 事例2 「ふるさと再発見,そして未来への提

案」 -異なる教科の教師の協力による指導体制

を工夫して-

本実践では,身近な地域を課題にした「適切な

課題を設けて行う学習」において,3年間を見通

した指導計画を基に,社会科教師と他教科教師等

とのティーム・ティーチングなどの指導体制を工

夫した。

身近な地域の過去・現在・未来を対象にし,地

域のよさや諸課題を見いだす学習活動を通して,

郷土への愛着とその未来への展望を持たせるとと

もに,「調べ方」「表現の仕方」などの学び方を

育てることを目指した。

① 取り上げた地域の概要

本校の学区は,英田郡の大原町と東粟倉村から

成り,県の北東部に位置している。人口はそれぞ

れ約5,000人,1,500人であり,過疎化と少子高齢

化傾向が見られる。

大原町は,かつて因幡街道の宿場町として栄え,

剣豪宮本武蔵生誕の地と伝えられている。今なお

本陣や脇本陣などが残り,町も積極的に街並み保

存に取り組み,当時をしのばせるたたずまいを見

ることができる。また,これらの歴史と文化を生

かした観光にも力が入れられ,年間約30万人の観

光客が県内外から訪れ,平成17年度の岡山国体で

の剣道競技会場となっている。

東粟倉村は,氷ノ山後山那岐山国定公園に属す

る。県の最高峰の後山(1,345 )は行者山ともm呼ばれ,昔から修験道の霊場として有名で,大護

摩法要などの修験行事も行われている。近年は,

雄大で美しい自然を生かした滞在型の快適な保養

地を目指して,ヨーロッパの雰囲気を彷彿とさせほうふつ

るベルピール自然公園や愛の村パークを中心に地

域興しが図られている。

生徒は,身近な地域に対して「豊かな自然」

「歴史」というイメージを抱いている一方で,

「過疎」「財政難」「環境破壊」など現在の町・

村づくりを危惧する考えも持っている。ぐ

② 3年間を見通した指導計画

地域の過去・現在・未来を相互に関連付けるこ

とで地域に対する認識を深められるようにすると

ともに,「調べ方」「表現の仕方」の育成に系統

性を持たせるよう配慮した(表7)。

第1学年地理的分野ア

学区での道の駅建設構想を題材とし,地域の自

然や産業,特産物などを生かした地域興し策を考

え出せるようにするとともに,身近な地域のよさ

への関心を高めようと考えた。

「調べ方」としては,見学や聞き取り調査,資

料収集の仕方に,「表現の仕方」としては,ポス

ターセッションの仕方に重点を置いた。

第2学年歴史的分野イ

江戸時代の因幡街道と宿場町・古町を題材とし,

この時代の産業や街道が果たした役割をつかむと

ともに,郷土への愛着を育てようと考えた。

「調べ方」としては,フィールドワークの仕方

に,「表現の仕方」としては,調査結果の地図へ

の表し方に重点を置いた。

第3学年公民的分野ウ

英田郡北部の大原町,東・西粟倉村(以下「英

北地域」と言う。)の合併問題を題材とし,地方

自治を身近な問題としてとらえるとともに,地域

の未来像を予測することで,地域の未来への展望

を持たせようと考えた。

「調べ方」としては,収集した情報を基に未来

を予測する方法に,「表現の仕方」としては,ポ

スターセッションにおける聞き手に分かりやすい

発表の仕方に重点を置いた。

③ 第1学年地理的分野「地域の現状を調べ,大原

町と東粟倉村に道の駅を建設しよう」の授業実践

目標ア

(ア) 身近な地域の現状や特産物などについて,興味

・関心を持って調べることができる。(社会的事

象への関心・意欲・態度)

(イ) 収集した資料や聞き取り調査などの結果を基に,

地域の活性化に結び付くアイディアを考え出すこ

とができる。(社会的な思考・判断)

(ウ) 調べた内容や考えを図やポスターなどにまとめ,

ポスターセッションで発表することができる。

(資料活用の技能・表現)

(エ) 地域が持つよさを見付け,その地域的特色を理

解することができる。(社会的事象についての知

識・理解)

授業実践(10単位時間扱い)イ

(ア) 課題設定の段階

英北地域では,地方自治体や関連団体が中心と

なり,地域興しの一環として自然や歴史を生した

観光開発に力が注がれている。事前に,夏休み

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表7 3年間を見通した「適切な課題を設けて行う学習」の指導計画

β中学校学習テーマ:ふるさと再発見,そして未来への提言

目 指 す 方 法 知 ( 「 調 べ 方 」 「 表 現 の 仕 方 」 )学年 単元と課題,時数 学 習 目 標

【地理的分野】 大原町や東粟倉村の現状に着 課 題 ・道の駅建設について調べ,地域興し策を考えたいという意欲を持つ。学年の重点身近な地域 目し,見学や聞き取り調査,資 設 定 ・学習計画を立てることができる。

第 料収集を基に,地域の自然や産 の段階見学や聞き取り調査,「地域の現状を調 業,特産物などを生かした地域

一 べ,大原町と東粟 興し策を考え出すことを通し 課 題 ・観光関連施設を見学したり,聞き取り調査や資料収集を進めたりすることができる。資料収集の倉村に道の駅を建 て,地域のよさを見付けるとと 追 究 ・調査結果を基に,自分たちのアイディアを作品などにまとめることができる。仕方,ポス

学 設しよう」 もに,ポスターセッションで発 の段階ターセッションの仕方表することができる。

年 10単位時間扱い 課 題 ・調査結果やまとめた作品等について,ポスターセッションで発表することができる。解 決 ・発表をよく聞き,質問を出し合うことができる。目指す内容知:身近な地域のよの段階さの発見

【歴史的分野】 江戸時代,学区を通っていた 課 題 ・本陣や脇本陣などの街並みのフィールドワークを通して,因幡街道を中心とした郷学年の重点江戸時代の産業と 因幡街道や宿場町に着目し,フ 設 定 土の歴史について調べたいという意欲を持つ。

第 交通 ィールドワークや郷土史家の講 の段階 ・見通しを持って学習計画を立てることができる。フィールドワークの仕話を基に当時の街並みを地図に

二 「江戸時代の因幡 表すことを通して,街道の果た 課 題 ・フィールドワークや講話などにおいて,メモを取りながら話を聞くことができる。方,調査結街道を現在の道路 した役割や人々の生活の様子を 追 究 ・郷土史家へ質問をし,因幡街道の役割や当時の人々の生活,社会の様子についての果の地図へ

学 や鉄道と比較し, 理解するとともに,郷土の歴史 の段階 情報を集めることができる。の表し方街道の果たした役 への愛着を持つことができる。

年 割を考えよう」 課 題 ・フィールドワークや講話などを通して得られた情報を分かりやすく地図に表すこと解 決 ができる。目指す内容知:郷土への愛着

5単位時間扱い の段階

【公民的分野】 英北地域の合併問題に着目 課 題 ・英北地域の合併問題について調べ,地域の未来の姿を提案しようとする意欲を持つ。学年の重点地方自治 し,収集した情報を基に地域の 設 定 ・イメージマップによって,合併問題について調べたいことを書き出すことができる。

第 未来像を予測して提案する活動 の段階 ・見通しを持って学習計画を立てることができる。収集した情報を基に未「英北地域の合併 を通して,地方自治を身近な問

三 のメリットやデメ 題としてとらえるとともに,地 課 題 ・インターネットなどによる資料収集や聞き取り調査を主体的に進めることができる。来を予測すリットを予測し, 域の未来への展望を持つことが 追 究 ・収集した情報を基にグループで話し合い,合併の効果や街づくり構想についての自る方法,聞

学 地域の未来のある できる。 の段階 分たちの考えをまとめることができる。き手に分かりやすい発べき姿を提案しよ

年 う」 課 題 ・ポスターセッションで,まとめたことを聞き手に分かりやすく発表することができ目指す内容知:地域の未来への 表の仕方解 決 る。展望

10単位時間扱い の段階 ・他グループの考えも生かしながら,自分たちの提案を練り上げることができる。

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の宿題として地域PRポスターの制作を課し,地

域興しに目を向けるようにしておいた。

授業では,まず,英北地域の中で,西粟倉村に

あって大原町や東粟倉村にないものはないか問い

掛けた。何人かの生徒が道の駅を挙げたので,大

原町と東粟倉村の地域興しのためには,どのよう

な道の駅を建設すればよいかについて話し合った。

黒板にこの地域の地形図を拡大したものをはり

(写真6),イメージを膨らませるようにしたと

ころ,「この辺りに建設するのがよさそうだ」

「何か特産物を開発するとよい」「レストランで

は名物になるメニューを出そう」という意見が出

てきた。

次に,用紙に調べてみたい事柄を書き出し,そ

れらを集約して次の四つの学習課題を教師が提示

した。

○ 「道の駅」

○ 「特産物開発」

○ 「観光マップ・ルート」

○ 「キャッチコピー,ポスター」

自分の興味・関心に基づいてこの中から一つを

選択し,同じ学習課題を選んだ者同士でグループ

をつくった。グループで「学習課題調査カード」

を使って学習計画を立てた。

次に,美術科

教師から地域P

Rポスターの講

評と,ポスター

のデザインの仕

方などを聞く場

を設け,活動の

見通しが持てる

写真6 地形図を見て道の駅に よう配慮した。

ついて考える生徒

(イ) 課題追究の段階

観光関連施設の見学や聞き取り調査,パンフレ

ット収集,インターネットによる情報収集などを

通して,施設の働きや特産物開発の取り組みなど

から地域のよさに着目できるようにした。

その際,技術・家庭科教師からインターネット

を用いた「調べ方」や料理の作り方について,美

術科教師からポスターの作り方について,助言や

支援を受ける機会を設け,生徒が主体的に活動で

表8 学習課題と調べ方,他教科教師との連携

学習課題 調 べ 方 連携教科

道の駅 ・英北地域の観光関連施設(道の駅 技術・家あわくらんど 楽市楽座 J工房, 庭, ,東粟倉工房,愛の村パーク等)の見学と聞き取り調査

・インターネットによる情報収集

特産物開 ・英北地域の観光関連施設(道の駅 技術・家発 あわくらんど 楽市楽座 J工房, 庭, ,

東粟倉工房,愛の村パーク等)の見学と聞き取り調査

・パンフレット収集・インターネットによる情報収集

観光マッ ・大原町・東粟倉村役場担当課へのプ・ルー 資料請求ト ・商工会への資料請求

・智頭急行大原駅の見学 美術キャッチ・パンフレット収集コピー,

スター ・ポスターの作成ポ

きるよう配慮した(表8)。

(ウ) 課題解決の段階

レポートやポスター,図表等を活用したポスタ

ーセッションによる発表会を実施した。その際,

全員が発表役を体験できるよう配慮するとともに,

次の点に留意するよう助言した。

○ ポスター,模造紙,図表など多様な表現方法の

中から,グループの発表内容に適した方法を選ぶ。

○ メモを取りながら話を聞き,質問事項もできる

だけメモにまとめた上で発言する。

○ 発表を通して,次の学習への問題意識を持つよ

うにするため,とっさに浮かんだアイディアや素

朴な疑問を記録しておく。

生徒の変容ウ

(ア) 身近な地域のよさの発見について

「自己評価表Ⅱ」の「以前よりも,身近な地域

の学習に興味や関心を持てるようになったか」と

いう問いに対して,78人中71人が「はい」「どち

らかといえばはい」と答えており,地域の諸問題

への関心の高まりが表れている。

「学習シート」の生徒の感想を次に示す。

○ 町役場の人が武蔵や小次郎の衣装を着て観光客に町を紹介しているのはすごいと思った。

チョコレートやハーブなど特産品作りを行っている○会社があり,努力しているんだなあと感じた。

J工房では大原町の黒大豆を使った料理が人気があ○ります。地元の人のアイディアでいろんな料理が作られてます。

○ 温泉めあてで大原や東粟倉に来ている人が多い。

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このように,自然環境や歴史を生かした産業・

観光,地域興しや歴史を守る取り組みへの人々の

努力などに言及した感想が多く見られた。

以上から,生徒は身近な地域のよさを発見する

ことができたことがうかがえる。

(イ) 「調べ方」「表現の仕方」について

「自己評価表Ⅰ」の集計結果の一部(78人中)

を次に示す。

○ どんな方法で調べればよいか見通しを持って活動できたか→「はい」「どちらかといえばはい」計68人

○ いろいろな種類の資料を集めることができたか→「はい」「どちらかといえばはい」計58人

○ 自分なりの予想を基に調べる計画を立てることができたか→「はい」「どちらかといえばはい」計51人

「調べる活動」では,自分が持っている教材か

ら調べるだけでなく,校外へ資料収集に出掛けて

見学やインタビューを工夫したり,インターネッ

トや教育機器を活用して多方面から資料を収集し

たりするなど,いろいろな調べ方に挑戦しようと

する意欲が感じられた。

ポスターセッションでは,グループで綿密な打

ち合わせをしたり,リハーサルを行って話し方を

練習したりするなど,積極的な取り組みが見られ

た。自分たちのグループで考えた名物料理を並べ

たり,図表を用いて地域興し策を熱心に説明した

りするなど,各グループとも趣向を凝らした発表

や表現ができた。

これらの結果から,生徒の「調べ方」「表現の

仕方」が向上したことがうかがえる。

④ 第3学年公民的分野「英北地域の合併のメリッ

トやデメリットを予測し,地域の未来のあるべき

姿を提案しよう」の授業実践

目標ア

(ア) 英北地域の合併問題について調べ,地域の未来

の姿を提案する活動に興味・関心を持って取り組

むことができる。(社会的事象への関心・意欲・

態度)

(イ) 調査結果を基に合併のメリットやデメリットを

予測し,地域の未来のあるべき姿について自分な

りの考えを持つことができる。(社会的な思考・

判断)

(ウ) 調べた内容や考えを図表やレポートなどにまと

め,ポスターセッションで分かりやすく発表する

ことができる。(資料活用の技能・表現)

(エ) 町村合併のシミュレーションを通して,地方自

治を身近な問題としてとらえるとともに,地域の

現状や課題を理解することができる。(社会的事

象についての知識・理解)

単元指導計画(10単位時間扱い)イ

表9参照。

授業実践ウ

(ア) 課題設定の段階

近年,国や地方自治体においては,市町村合併

推進に向けての取り組みがなされている。身近な

地域の政治や財政についての現状と未来像を関連

付けて学習できるようにするため,英北地域3町

村の合併を想定し,現在のこの地域の実態を踏ま

え,合併するとどのような変化が見られるかを課

題とした。

「単元のガイダンス」では,まず,英北地域内

の二つの中学校第3学年生徒対象の合併問題に関

するアンケート結果を提示することにより,この

問題への意識付けを図った。次に,合併後の新町

名を地域興しのキャンペーンなどでなじみの深い

「みどりの共和国町」と想定した上で,その町役

場をどこに置くべきかを考えることにした。その

際,数学科教師とのティーム・ティーチングで,

三角形の重心の求め方を応用して,英北地域の地

図から中心点を割り出す方法を説明した。割り出

された中心点を新役場庁舎建設場所と仮定し,シ

ミュレーション的な学習活動への契機とした(写

真7)。

「課題をつくる活動」では,イメージマップを

用いて調べてみたい事柄を書き出した。それらを

集約して,次の四つの学習課題を教師が提示した。

生徒は,自分の興味・関心に基づいてこの中から

写真7 数学科教師とのTTの授業で「みど

りの共和国町」の中心点を考える生徒

Page 23: 中学校における地域学習に関する研究...「郷土」とされていたものが,1968・1969年の改 訂において「地域学習」「身近な地域」と改めら

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表9 第3学年公民的分野「地方自治」の単元指導計画

課題「 」英北地域の合併のメリットやデメリットを予測し,地域の未来のあるべき姿を提案しよう

段 階 学 習 活 動 調べ方,表現の仕方 教 師 の 支 援時数

課題設定1 ・学習方法と学習内容 ・英北地域の合併問題について調 ・「合併問題に関するアンケート」の結単元のガ単元のガ

を知る。 べ,地域の未来の姿を提案しよ 果を提示し,この問題への意識を高めイダンスイダンスうとする意欲を持つ。 る。

・数学科教師とのTTにより,合併後の役場の建設場所をイメージできるようにする。

1 ・合併問題についての ・イメージマップによって,合併 ・書き出された内容を集約し,生徒の力課題をつ課題をつイメージマップをつ 問題について調べたいことを書 で解決できそうな学習課題を四つ示しくるくるくり,学習課題を決 き出すことができる。 て選択できるようにする。定する。

・学習課題について予 ・「学習課題調査カード」の利用を促す。予想を立予想を立 2想を立てる。てるてる

・情報収集の仕方やま ・見通しを持って学習計画を立て ・前年度の特別活動「職場見学」で経験し学習計画学習計画とめ方を考え,学習 ることができる。 た,調査活動への協力依頼の仕方などをを立てるを立てる計画を立てる。 想起するよう助言する。

課題追究・資料の収集や聞き取 ・インターネットなどによる資料 ・「学習課題調査カード」を活用し,安調べる調べる 課外り調査などを行う。 収集や聞き取り調査を主体的に 全に配慮して取り組むよう助言する。

進めることができる。 ・技術・家庭科教師から,インターネットの利用の仕方について助言する。

3 ・調査結果をまとめ, ・収集した情報を基にグループで ・美術科教師から,建物のデザインの仕まとめるまとめる地域の未来像を予測 話し合い,合併の効果や街づく 方について助言する。する。 り構想についての自分たちの考

えをまとめることができる。・ここまでの学習を振 ・「自己評価表Ⅰ」の利用を促す。学習を振学習を振り返る。り返るり返る

課題解決3 ・調査結果と自分たち ・ポスターセッションで,まとめ ・道徳の時間や学級活動等で経験したポ発表と討発表と討

の提案をポスターセ たことを聞き手に分かりやすく スターセッションの仕方を想起し,聞議議ッションで発表し合 発表することができる。 き手に分かりやすい表現の仕方を工夫う。 するよう助言する。

・報告書や作品について効果的に紹介する方法を工夫するよう助言する。

・「学習シート」の利用を促し,他のグループの「調べ方」「表現の仕方」のよい点に注目できるようにする。

・他グループの考えも生かしなが ・メモを取りながら話を聞くよう助言し,ら,自分たちの提案を練り上げ 考えを整理できるようにする。ることができる。

・ここまでの学習を振 ・「自己評価表Ⅱ」の利用を促す。学習を振学習を振り返る。り返るり返る

・代表生徒が提案を役 ・自分たちの提案について,調査 ・役場や関係機関と連絡を取り,趣旨の課外場や関係機関に提出 結果を基に理由を挙げて説明す 理解と活動への協力を要請する。する。 ることができる。

一つを選択した。

○ 「新役場庁舎のデザイン」

○ 「合併のメリット」

○ 「合併のデメリット」

○ 「合併後の街づくり構想」

「予想を立てる活動」及び「学習計画を立てる活

動」では,同じ学習課題を選んだ者同士でグループ

をつくり,「学習課題調査カード」を使って予想や

学習計画を立てた。

(イ) 課題追究の段階

「調べる活動」では,3町村役場の見学や聞き

取り調査,資料請求,パンフレット収集,インタ

ーネットによる情報収集などを通して,英北地域

の現状と合併問題について調査を進めた。その際,

技術・家庭科教師から,インターネットを用いた

「調べ方」について助言や支援を受ける機会を設

け,生徒の主体的な学習活動が円滑に進むよう配

慮した。また,町村役場の担当課への調査協力依

Page 24: 中学校における地域学習に関する研究...「郷土」とされていたものが,1968・1969年の改 訂において「地域学習」「身近な地域」と改めら

- -21

表10 学習課題と調べ方,他教科教師との連携

学習課題 調 べ 方 連携教科

新役場庁 ・英北3町村役場庁舎の見学 美術舎のデザイン

合併のメ ・英北3町村役場担当課への資料請 技術・家リット 求と聞き取り調査 庭

・パンフレット収集・インターネットによる情報収集

合併のデ ・英北3町村役場担当課への資料請 技術・家メリット 求 庭

・商工会への資料請求・パンフレット収集・インターネットによる情報収集

街づくり ・駅舎内の見学 美術構想 ・パンフレット収集

・ポスター作成の留意事項

頼や聞き取り調査等の日程調整などについては,社

会科教師が支援した(表10)。

「まとめる活動」では,収集した情報を基にグル

ープで話し合い,合併の効果や街づくり構想につい

ての自分たちの考えをまとめた。その際,美術科教

師から建物のデザインの仕方の基本的な事柄につ

いて助言を受ける機会を設け,新役場庁舎のデザ

インの具体的なイメージを膨らませることができ

るよう配慮した。

(ウ) 課題解決の段階

「発表と討議の活動」では,調査結果と自分た

ちの提案をポスターセッションで発表し合った

(写真8)。その際,難解な語句は自分の言葉に

置き換えて説明するなど,報告書や作品について

効果的に紹介する方法を工夫するよう助言した。

なお,こ

の活動の前

の道徳の時

間や学級活

動において,

意図的にポ

スターセッ

ションの活

写真8 ポスターセッションをする 動を取り入

生徒 れておき,

図9 「学習課題調査カード」(左)と「学習シート」の例

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その経験を想起して聞き手に分かりやすい表現の

仕方を工夫するよう助言した。

生徒の変容エ

(ア) 地域の未来への展望について

「まとめる活動」では,諸資料に基づいて,

「合併によって住民や財政は潤うかもしれないが,

新たな施設建設を考えると本当にゆとりが生まれ

るのか」「開発によって環境破壊という問題が発

生するのではないか」「公共サービスは維持でき

るのか」などと,細かい分析を行う生徒が見られ

た。

ポスターセッションでは,合併問題について

「学校はどうなるのか」「役場の職員数が削減さ

れると,公共サービスが低下しないか」「選挙が

大変になるのではないか」などの質問がたくさん

出された。これに対して担当のグループは,「学

校数は現状維持するが,部活動の交流は図る」

「一般職や特別職員数の削減により財政にゆとり

ができる」「選挙を通じて住民の政治意識が高ま

る」など,自分たちが調べ,未来予測をした結果

を基にして受け答えをすることができた。「合併

反対」の意見に対し,「対話の重視」「現状を少

しでもよい方向にしていく」「みんなの政治,み

んなの町」という前向きな意見も出された。

これらの結果から,生徒は地域の未来への展望

を持つことができたことがうかがえる。

(イ) 「調べ方」「表現の仕方」について

「自己評価表」の集計結果の一部(79人中)を

次に示す。

「自己評価表Ⅰ」○ いろいろな種類の資料を集めることができたか→「はい」「どちらかといえばはい」計51人

○ 自分なりの予想を基に調べる計画を立てることができたか→「はい」「どちらかといえばはい」計44人

「自己評価表Ⅱ」○ 他のグループの発表から,いろいろな調べ方やものの考え方に気付いたか→「はい」「どちらかといえばはい」計64人

○ 分かりやすく表現することができたたか→「はい」「どちらかといえばはい」計45人

これらの結果や授業中に見られた生徒の姿,レ

ポート,作品などから,主体的に調べ考えたこと

を交流し合う活動を通して,生徒の「調べ方」の

幅が広がり,「表現の仕方」が向上したことがう

かがえる。

⑤ 結果と考察

生徒の感想に「作品制作のときの美術の先生か

らのアドバイスは,構図や言葉を考えていく上で

参考になった」「(技術・家庭の授業では)まだ

インターネットを学習していないのにコンピュー

タを使うことができ,道の駅について調べやすか

った」というものが多く見られた。他教科教師の

専門分野を生かした支援を取り入れることにより,

生徒は,多様な「調べ方」「表現の仕方」に接し

て学習活動への見通しや期待感とともに,充実感

を持つことができたと考えられる。

3年間を見通した指導計画に基づき,異教科教

師等の協力による指導体制を工夫して「適切な課

題を設けて行う学習」の授業実践に取り組んだ結

果,生徒の「調べ方」「表現の仕方」を広げたり

深めたりすることができたと考えられる。また,

生徒は,地域について調べたことで「人」と出会

い「歴史」に触れ,それらの存在を見つめ直すこ

とができたと考えられる。

一方で,次のような課題が残った。

第一は,学習計画を修正する場面の設定である。

「学習を振り返る活動」を課題追究の段階の最後

と課題解決の段階の最後の2回取り入れたが,そ

の後の学習活動を修正・改善することにはつなが

りにくかった。一度立てた学習計画を追究活動の

途中で臨機応変に変えていくことは,生徒にとっ

ては難しかった。課題追究の段階の途中に,「中

間報告会」を開くなどして,調べたりまとめたり

する計画を軌道修正する場を持つことにより,後

半の学習活動への新たな意欲とともに,より適切

で柔軟な「調べ方」「表現の仕方」を引き出すこ

とができると考えられる。

第二は,外部人材の確保である。本実践では,

異教科教師の協力による指導体制を基本にしなが

ら,一部では,郷土史家をゲストティーチャーと

した授業も実施した。郷土史家などを探したり協

力依頼をしたりする労力は小さくなく,そのこと

が幅広く外部人材を依頼することに踏み切りにく

い要因の一つにもなっている。「調べ方」「表現

の仕方」を一層広げ,「郷土への愛着」を高める

ためには,人材バンクをつくるなどして地域で活

躍している人々を円滑に招へいし,学習活動を支

援する体制を整えることが必要である。

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(3) 事例3 「倉敷の過去・現在・未来」-社会科

における学びを総合的な学習の時間へ-

本実践では,自ら課題を見いだし,自ら学び自

ら考え,課題を解決する力を育成するため,社会

科と総合的な学習の時間それぞれの3年間を見通

した計画を基に授業に取り組んだ。

社会科においては,3年間を見通した「適切な

課題を設けて行う学習」(身近な地域を課題にし

たもの)の指導計画を整理した。地域の素材を積

極的に扱うことで,生活の場である倉敷の「過去

・現在」に対する認識を深め,愛着を持たせなが

ら,その「未来」の姿について積極的に考えてい

こうとする態度を養いたいと考えた。

総合的な学習の時間においては,社会科を始め

幾つかの教科の学習内容と関連を持たせながら,

3年間を見通した指導計画を立てた。実践を通し

て,社会科学習で身に付けた,社会的なものの見

方や考え方に根ざした「調べ方」「表現の仕方」

が,総合的な学習の時間でどのように生かされ,

また,その経験が社会科学習にどのようにつなが

るかも整理していくことにした。

① 取り上げた地域の概要

本校の学区は,JR倉敷駅の南西にあり,市の

中心部と水島臨海工業地域の中間に位置する市街

地である。この地域は元々農村地帯であったが,

水島臨海工業地域の発展などに伴って宅地化が進

み,転出入者の数も多い。そのため,周辺の学校

では生徒数が減少傾向にある中,本校ではそれほ

ど大きな変動がなく,依然として学級数29の大規

模中学校である。倉敷の政治の中心となってきた

市の中心部(美観地区を含む)にも,倉敷の産業

の発展を考える上では欠かせない水島臨海工業地

域にも比較的近いので,両方とも含む地域が自分

たちの「地域社会」という意識を生徒は持ってい

る。

したがって,本実践で取り上げる「地域」は,

市の中心部や水島臨海工業地域も含む地域ととら

えた。

② 3年間を見通した指導計画

社会科「適切な課題を設けて行う学習」ア

「適切な課題を設けて行う学習」は,第1学年

歴史的分野,第2学年地理的分野,第3学年公民

的分野の3分野において実施することにした。歴

史的分野においては,第1学年の学習内容を受け

て近世から近代にわたる内容を中心にした課題を

設定した。地理的分野においては,ここ数十年の

地域の発展の様子をとらえることができるよう

「身近な地域」を課題とした。公民的分野におい

ては,「地方自治」の学習と関連付けながら,現

在の地域の実状や問題を取り上げ,未来への展望

を持つことができるよう課題を設定した。3年間

で「過去・現在・未来」の倉敷について時間の流

れに沿って発展的に学習を進め,内容知を育てよ

うと考えた。

この学習で系統的に育てたい方法知として,

「調べ方」と「表現の仕方」を考えた。第1学年

でフィールドワークや聞き取り調査,第2学年で

地図の読図・作図や統計資料のグラフ化,第3学

年で討論の指導に重点を置いた(表11)。

総合的な学習の時間イ

総合的な学習の時間「サザンクロス」の指導計

画作成に当たって,内容知と方法知の二つの視点

から各教科等の学習との関連付けを図った。

(ア) 内容知の関連

1学期の後半にクロスカリキュラム期間を設定

し,「サザンクロス」の各学年のテーマと関連す

る各教科等の学習内容のうち,可能なものをこの

期間に集中して実施した。「サザンクロス」や様

々な教科等において,同じ時期に同じテーマで学

習することで,生徒が総合的に学べるように工夫

した。教師集団にとっても,他教科の内容を意識

して指導することによって相互に好影響を与える

と考えた。また,この期間に学習した内容が,2

学期の「サザンクロス」における個人の学習課題

設定に役立つように配慮した。

各教科等の中でも,社会科は,表12のようなテ

ーマを扱う本校の総合的な学習の時間との関連が

特に深い。社会科は,本校のクロスカリキュラム

の中心教科ととらえられる。

(イ) 方法知の関連

各教科等ごとにどのような学び方やものの考え

方を育てるべきか検討し,その重要性を確認した

上で「サザンクロス」との方法知の面の関連に配

慮した。その上で,各学年の「サザンクロス」に

おいて重点を置く方法知を,特に関連の深い社会

科「適切な課題を設けて行う学習」において各学

年で重点を置く方法知(表11)にそろえることに

した。

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表11 3年間を見通した「適切な課題を設けて行う学習」の指導計画

γ中学校学習テーマ:倉敷の過去・現在・未来 -郷土倉敷の発展の姿を見つめ,未来について考えよう-

目 指 す 方 法 知 ( 「 調 べ 方 」 「 表 現 の 仕 方 」 )学年 単元と課題,時数 学 習 目 標

【歴史的分野】 江戸時代以来物資の集積地や 課 題 ・身近な地域の発展の基礎が築かれる様子について調べたいという意欲を持つ。学年の重点江戸時代から明治 紡績業の中心地として栄えた倉 設 定 ・学習計画を立てることができる。時代への政治と社 敷の歴史に着目し,フィールド の段階フィールド

ワークや聞第 会の変化 ワークで古い街並みを見たり当時の人々の生活に関する話を聞 課 題 ・代官所跡や蔵屋敷の街並みなどでフィールドワークや聞き取り調査を進めることができ取り調査

一 「美観地区の街並 いたりすることを通して,郷土 追 究 きる。の仕方,そみから郷土倉敷の への愛着を深めるとともに,江 の段階 ・調査した過程と結果をまとめることができる。のまとめ方

学 歴史について調べ 戸時代から明治時代にかけてのよう」 政治や社会,産業の特色につい 課 題 ・調査した過程と結果を発表することができる。

年 て調べまとめることができる。 解 決 ・発表をよく聞き,質問を出し合うことができる。8単位時間扱い の段階 ・郷土史家による講話を聞き,考えたことをまとめることができる。

目指す内容知:郷土への愛着

【地理的分野】 急速に発展を遂げつつある現 課 題 ・本校の生徒数の増減のグラフをきっかけに,地域の発展の様子について調べたいとい学年の重点身近な地域 在の倉敷の姿に着目し,収集し 設 定 う意欲を持つ。

た資料を分析することを通し の段階 ・見通しを持って学習計画を立てることができる。新旧の地図の比較から第 「資料の分析を通 て,そのすばらしさや問題点を変化を読みして,発展を遂げ 認識するとともに,特色を生か

二 つつある郷土倉敷 した街づくりについて自分なり 課 題 ・美観地区や商店街などでのアンケート調査や統計資料の収集ができる。取る方法,のすばらしさを見 の考えをまとめることができ 追 究 ・収集した資料を基に,コンピュータでグラフを作るなどして分析することができる。統計資料か

学 付け出そう」 る。 の段階 ・分析結果やその他の情報を整理して,結論を導き出すことができる。らグラフを作りその変

年 8単位時間扱い 課 題 ・調査した過程と結果についてグラフ等を使って分かりやすく発表することができる。目指す内容知:地域のすばら 化を読み取解 決 ・発表をよく聞き,質問や意見を出し合うことができる。しさの認識 る方法の段階

【公民的分野】 地域の現状や問題点に着目 課 題 ・市の資料を見たり担当者から話を聞いたりして,地域の現状に課題意識を持つ。学年の重点地方自治 し,市の資料の調査や地域での 設 定 ・見通しを持って学習計画を立てることができる。

第 実態調査,住民へのアンケート の段階調査結果を基に自分の「実態調査やアン 調査等の結果を基に討論するこ

三 ケート調査を基 とを通して,身近な問題として 課 題 ・地域での実態調査やアンケート調査により現状や住民の声を把握することができる。考えをまとに,将来の倉敷の の認識を深めるとともに,将来 追 究 ・調査結果を基にグループで話し合い,地域の未来についての自分たちの考えをまとめめ,他者と

学 あるべき姿につい の倉敷のあるべき姿の具体像を の段階 ることができる。討論して結論を導き出て考えよう」 描き提案することができる。

年 課 題 ・まとめたことを基に他グループと討論し,考えを練り上げることができる。す方法10単位時間扱い 解 決 ・練り上げた考えを具体的な取り組みとしてまとめ提案することができる。目指す内容知:地域の未来へ

の段階の提言

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表12 総合的な学習の時間「サザンクロス」全体計画

全体テーマ:「共生」 ~すべての人々と共に豊かに暮らしていくために,私たちはどう生きていけばいいのだろう? ~

学 テ 生徒の 生徒の興味・関心 生徒の認識を クロスカリキュラム各学年の目標と予想される生徒の主な学習内容 活動の を高めるための 深め,疑問を の中で関連する

年 マ 方 向 導 入 の 活 動 醸成する活動 主な教科等とその単元

○社会:世界の国々世界と共に生きる 知 ○国際経験豊富な ○外国人留学生との方や海外在住経 交流会 ○英語:スクールライフ○世界の人々や事柄との出会いを通して,違いの中にあるすばらしさに気付 る験のある方の講 ・日本文化の紹介 ○理科:植物の生活(環き,国際社会の中での自分の生き方について考える。 ・演会 ・外国の生活習慣や 境問題)国 ○課題解決の過程を通して,基本的な「調べ方」「表現の仕方」を身に付ける。 感

世界の人々の生活(衣食住) ○外国人による日 文化についての学 ○技術・家庭:世界の民1 際 ・世界から学ぶ じ世界の人々の伝統文化 本語弁論大会の 習 族服年 理 る

日本と世界のつながり 視聴 ・日本との違いや類 ○音楽:日本とアジアの解 ・世界について学ぶ ・食料品などの輸入先 似点について学習 楽器体地球規模の環境問題 ○道徳:日本の友へ・世界のために学ぶ 験

す戦争と平和の問題る

○社会:身近な地域地域と共に生きる ○郷土史家や伝統 ○身近な地域の発展文化を守り育て の様子についての ○理科:動物の生活と種○身近な地域の歴史や文化,人々の生活に触れることを通して,伝統 文化 活ている方の講演 調べ学習(社会科 類(地域に生息すや人々の営みのすばらしさに気付き,地域社会の中での自分の生き方に 動会 の適切な課題を設 る動物)ついて考える。

○地域の伝統芸能 けて行う学習) ○美術:大原美術館見学地 ○課題解決の過程を通して,工夫を凝らしながら自分なりの「調べ方」「表現の鑑賞会 ・人口,工業,商 ○音楽:郷土の音楽2 域 の仕方」を身に付ける。

地域の伝統工芸の体験 業,農業,観光・ ○国語:方言と共通語,年 社 ・地域から学ぶ地域の伝統芸能の体験 交通の学習課題ご 手紙の書き方会

地域の文化の再発見 とに調べ,発表会 ○道徳: 運動・地域について学ぶ Let'slove観光パンフレット作り を実施地域が抱える問題についてのアンケート・地域のために学ぶ地域の環境問題についての調査

○社会:人間尊重と日本国すべての人々と共に生きる 発 ○障害のある方や ○出前福祉体験講座憲法○高齢者や障害者,福祉の仕事にかかわる人々との触れ合いを通して,人 信 福祉施設で働い 受講

ている方の講演 ・点字,手話,車い ○理科:生物のつながり権についての認識を深め,すべての人々が幸せに暮らせる社会を共につく す会 す介助,ガイドヘ ○技術・家庭:幼児とわっていくための自分の生き方について考える。 る

○障害のある方が ルプなどの体験活 たし人 ○課題解決の過程を通して,多様な「調べ方」「表現の仕方」を身に付け,自 ・苦難を乗り越え 動,質疑 応答 ○国語:ヒロシマ神話3 権 分の考えを地域に発信したり,自分の考えを基に地域に貢献したりする。 貢

福祉施設の訪問 て生き生きと活 ○道徳:だれが石を投げ年 ・ ・人々から学ぶ 献福祉にかかわる人の話 躍している姿を よと言ったか福 す

点字や手話の学習 描いた映像作品 ○特別活動:ボランティ祉 ・人々について学ぶ る介助についての学習 の視聴 アプランを立活街の福祉マップ作り てよう・人々のために学ぶ a動ボランティア活動計画・実践

③ 第1学年歴史的分野「適切な課題を設けて行う

学習」の実践

外部人材や学年行事の関係から,「サザンクロ

ス」の実施後,社会科において江戸時代から明治

時代にかけての倉敷の歴史を取り上げ「適切な課

題を設けて行う学習」を実施した(表13)。

課題追究の段階ア

この学習では,フィールドワークや聞き取り調

査の方法,そのまとめ方を重点的に指導した。

生徒は,調査地点のルートマップを作ったり,

写真やビデオに記録したり,観察・調査事項の記

入用メモ用紙を自作したりするなど,「調べ方」

に工夫が見られた。また,史跡を訪問した生徒は,

その場所の管理をしている方や歴史に詳しい方か

ら聞き取り調査をすることができ,本や資料だけ

では得られない情報を入手し課題解決に役立てた。

さらに,生徒は,図書館の本やインターネット

による情報収集と並行して,「どの施設を訪問す

れば詳しく調べることができるか」「だれに聞け

ば詳しく話をしてくださるか」について探した。

これは,「サザンクロス」の学習を通して,本や

表13 グループ別学習課題の一覧

(課題「美観地区の街並みから郷土倉敷の歴史について調べよう」)

倉敷代官所跡やその周辺にはどんなものが残倉敷代官についてっているか。代官の行った政治はどんなものだったのか。

商人は,どんな家に住み,どんな商売をし倉敷の商人の生活にて,どんな生活をしていたのか。ついて倉敷と言えば「白壁の街」。特徴あるその風倉敷の街並みについて景にはどんな工夫があるのか。

倉敷紡績所とは,何を作るどんな工場だっの倉敷紡績所についてか。それはどんな人たちによってどうして作られたのか。

大原美術館を始め倉敷に多くのものを残した大原孫三郎について大原孫三郎とはどんな人だったのか。

「○○新田」という地名が学区にも見られる倉敷の新田開発についが新田開発が進められたとき,この辺りはどて

。うなっていたのか

インターネットからの情報も大切であるが,直接

自分の目で見たり,人から聞いたりした情報の方

が,より詳しく説得力のあるものになることを体

験的に学んだ結果であると考えられる。

課題解決の段階イ

調査した結果は,発表会で互いに紹介し,疑問

点は質問として出し合った。十分答えることがで

きなかった質問や,調べた生徒自身疑問として残

ったことはまとめておき,本単元の最後で郷土史

家を招いた際にその点も含めて話していただいた。

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④ 第2学年地理的分野「適切な課題を設けて行う

学習」の授業実践

第2学年の社会科では,「身近な地域」の単元

において「適切な課題を設けて行う学習」を導入

した。課題は「資料の分析を通して,発展を遂げ

つつある郷土倉敷のすばらしさを見付け出そう」

とし,前年度の実践を受けて,現代の郷土倉敷の

発展の様子をここ数十年の変化の中でとらえるこ

とにした。この実践では,「調べ方」「表現の仕

方」のうち,特に「新旧の地図の比較から変化を

読み取る方法や,統計資料からグラフを作りその

変化を読み取る方法」などの資料活用の技能に力

点を置いて指導を進めた。

また,総合的な学習の時間「サザンクロス」と

の関連も重視し,クロスカリキュラム期間(表15

3 クロスカリキュラムで地域社会とその学び中の「

」)に位置付けた。方を学ぼう

課題設定の段階ア

(ア) 「課題をつくる活動」

倉敷の発展の様子を調べていくに当たって,ど

のような点に着目したらよいかを考えるため,

「倉敷と言えば」の問いに対して一番に思い浮か

ぶものを出し合い,それをまとめていく形で学習

課題をつくった。

(イ) 「予想を立てる活動」

共通の学習課題を持つ生徒ごとにグループを組

み,「学習課題調査カード」を用いて予想を立て

た。予想は,その学習課題の内容に関してできる

だけ多岐にわたるように考え,単発の調査で終わ

らないように助言した。また,発展の様子だけで

はなく,その

マイナス面,

すなわち衰退

しているもの

や好ましくな

いものにも着

目するよう助

言した。

写真9 予想を立てる生徒

(ウ) 「学習計画を立てる活動」

「学習課題調査カード」を用い,予想が正しい

かどうかを確かめるためにはどのような資料が必

要か,だれの話を聞けばよいか,そのためにはど

表14 学習課題と訪問先・調査先・請求資料の一覧

学習課題 主な訪問先・調査先・請求資料

人 口 倉敷市統計書【倉敷市企画部企画課】倉敷市立 小学校(児童数の変化・中心部の減少傾向)K倉敷市立 小学校(児童数の増加・K小との比較)L

観 光 倉敷市統計書【倉敷市企画部企画課】倉敷市観光統計書【経済部観光振興課】チボリ公園大原美術館倉敷市役所観光振興課美観地区での観光客へのアンケートチボリ公園周辺での観光客へのアンケート

農 業 倉敷市統計書【倉敷市企画部企画課】農業協同組合倉敷市役所農林水産課青果市場農家への質問

工 業 倉敷市統計書【倉敷市企画部企画課】製鉄M自動車工業N

水島地域環境再生財団(工業の発達と環境の変化)

商 業 倉敷市統計書【倉敷市企画部企画課】商工会議所倉敷商店街振興連盟駅前商店街でのアンケート笹沖商店街でのアンケートショッピングセンターでのアンケートO

交 通 倉敷市統計書【倉敷市企画部企画課】倉敷警察署

倉敷駅JR水島臨海鉄道

こへ行けばよいかについて話し合った。

課題追究,課題解決の段階イ

(ア) 「調べる活動」

グループごとに,訪問先・調査先での聞き取り

調査の内容や資料の請求内容の検討を進めた(表

14)。

検討作業や代表者による交渉の作業では,相手

が忙しくない時間帯を選んだり,電話で伝える内

容や聞き出す内容を整理したりするなど,前年度

に学習した経験が役立ち,能率的に進めることが

できた。調査当日も,予想したことを証明しよう

という意志を

持って鋭い質

問をしたり,

発表会に備え

て多目に写真

を撮ったりす

るなど,前年

度の学習の成

果が現れてい

写真10 アンケートをする生徒 るグル-プが

多かった。

(イ) 「まとめる活動」「発表と討議の活動」

この学習は,「地域社会」をテーマとする第2

学年のクロスカリキュラムの一環として実施した

もので,特に「まとめる活動」においてその利点

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が生かされ,「表現の仕方」の向上が見られた。

まず,数学科の「資料の整理」において資料を整

理する方法や考え方について学習し,次に,技術・

家庭科の情報に関する分野において表計算ソフトを

活用してグラフを作る方法を学習した。その上で,

「調べる活動」で収集した資料の中から必要な資料

を選択し,技術・家庭科教師とのティーム・ティー

チングによる支援を受けながらコンピュータに入力

してグラフ化する作業を行った。その結果,どのグ

ループも収集した資料をグラフ化することができ,

その変化の傾向を

容易につかむこと

ができた。

発表会において

も,そのグラフを

使うことでポイン

トを絞った分かり

やすい発表を行う

ことができた。

写真11 発表する生徒

図10 「学習課題調査カード」の例(部分)

学習を終えての感想(「学習シート」より)

○ 確かにこういう課題は大変なことも多いけれど,発表の仕方やまとめていくときのやり方を自分で考えていくのは楽しいです。それに,自分のまとめ方と他人のまとめ方とを比べてそれぞれのよい点を見付けるとき驚きがあります。

○ 大変だったけどすごく自分にプラスになることが多かった。例えば,「統計書」にはこんなグラフや表がある,ここに行ったらこういうのが載っている本があるなどが分かってきました。先生に教えてもらったことを頭の中に入れるのではなく,自分たちで調べて発

表するとすごく自分の中で納得のいく覚え方ができたし,いろんな人の発表を聞けてすごくよかった。これからもこういうのをしてみたいです。

○ 市役所で資料をもらったり話を聞いたり,自分たちでも資料を探してみたりまとめたりと,いろんな意味で力が付いてきたと思う。これから,いろいろなテーマで総合的な学習をやることになるけど,今までの経験を生かして,より多くの資料を集め分かりやすくまとめられたらいいと思う。

生徒の変容ウ

前年度の歴史的分野における「適切な課題を設

けて行う学習」と比べ,生徒の変容が顕著だった

のは,次の3点である。

第一に,「調べ方」が多様になった点である。

地域に住むたくさんの方や会社に電話を掛けたり

訪問したりすることはもちろん,インターネット

や地域の図書館の郷土コーナーの利用,統計や観

光施設からファクシミリで取り寄せたデータの活

用,アンケート調査による資料収集など様々であ

った。

第二に,「表現の仕方」が多様になった点であ

る。従来の模造紙を使った発表,写真やビデオを

使った発表に加えて,コンピュータの学習を進め

たことでグラフを効果的に使った発表が目立った。

また,地図に着色して変化の様子を示すなどの工

夫も多く見られた。

第三に,学び方に粘り強さが出てきた点である。

あるグループは,農業について農協を訪問したが

欲しい情報が得られず,次に青果市場も訪問して

みたが同じであった。紆余曲折を経て,最後は市う

の農林水産課でやっと答えが見付かった。このよ

うに,課題追究の段階で失敗があったがあきらめ

ず,どうすれば課題を解決することができるか試

行錯誤を繰り返し,何とか結論にたどり着いたと

いう例が幾つか見られた。

以上のように,前年度の総合的な学習の時間や

社会科「適切な課題を設けて行う学習」の経験を

土台にして,「調べ方」「表現の仕方」などの学

び方を広げることができたと考えられる。

⑤ 第2学年総合的な学習の時間「サザンクロス」

の授業実践

学習活動の概要ア

学年テーマ「地域社会」の下,「見つめようわ

がふるさと倉敷,考えようぼくらの未来」を課題

とした(表15)。まず,単元のガイダンスで一年

間の見通しを持った後,郷土史家の講演を聞くこ

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表15 第2学年総合的な学習の時間「サザンクロス」の概要

(テーマ:「地域社会」)1 単元名 「見つめよう わがふるさと倉敷 考えよう ぼくらの未来」2 単元の目標

○ 倉敷について自ら設定した課題について,自ら学び考え,主体的に判断しながら,よりよく解決していくことができる。また,その過程を通して,「調べ方」や「表現の仕方」を身に付けることができる。

○ 倉敷の特色ある産業・歴史・文化について主体的に調査活動に取り組んだり,地域社会で積極的に活躍する人々の生きざまに触れたりすることを通して,進んでその発展にかかわろうとする意欲や,伝統や文化に誇りを持ちそれを守り育てようとする態度を養う。

(20単位時間扱い)3 単元指導計画

学 習 活 動 教 師 の 支 援段 階 時数

1 郷土倉敷を見つめよう課題設定 1・「サザンクロス」の目標や概要を把握する。 ・プレゼンテーションソフトを使って今年度の「サザ単元のガイ単元のガイ・映画「倉敷 今・むかし」を視聴し,地域社会 ンクロス」の全体像を説明し,見通しが立ちやすいダンスダンスを対象にした学習活動への意欲を持つ。 ようにする。

2 郷土倉敷の歴史とその特色をつかもう本地 1認域 ・郷土史家による講演を聞き,質問をする。 ・地形図を配布することにより,地名を探しながら聞識社 けるようにし「調べたい」という意欲を引き出す。の会

3 クロスカリキュラムで地域社会とその学び方を学ぼ育の 各う成基 教

科 ・各教科等において郷土倉敷に関する様々な題材 ・この期間をクロスカリキュラム期間とし,各教科等等 と出会い, 調べ方 表現の仕方 を経験する。 においてテーマ「地域社会」(倉敷)に関する学習「 」「 」の を集中して実施する。時 :方言と共通語,手紙の書き方, :身 ・テーマに関するウェビングにより,各教科等で取り国語 社会間 近な地域, :資料の整理, :動物の生 上げる内容を調整する。数学 理科

課 活と種類, :郷土の音楽, :大原美術 ・地域の人材とのTTや地域での体験的な学習を取り音楽 美術の題 館見学, :郷土舞踊とダンス, 入れる。保健体育 技術・

家庭 外国醸意 :コンピュータの活用,食事の計画,成識 : , :語 道徳Let's look around Kurashiki city

運動, :将来つきたい職業Let'slove 特別活動

4 郷土倉敷について学習課題を決定しよう2・これまでの学習を基に,テーマの中で自分の調 ・学習課題が内容的に近い生徒で学級を超えて「内容課題をつく課題をつくべてみたい学習課題をつくる。 グループ」を編成し,専門分野を考慮して担当教師るる

を配置する。学学 【内容グループ】民話・方言,歴史,伝統工芸,郷土玩具,祭り・の習の習伝統行事,郷土芸能,郷土料理,福祉,環境,観決課決課光,国際交流定題定題

・グループごとに課題について予想し,再検討す ・「学習課題調査カード」を配布し,課題についての予想を立て予想を立てる。 予想や学習計画を立てやすいようにする。るる

・課題追究の方法を検討し,調査・訪問計画を作 ・「調べ方」の見通しを持ちにくいグループにはこま学習計画を成する。 やかに声を掛け相談に応じる。立てる

5 郷土倉敷についての学習課題を調査しよう課題追究 10・収集すべき資料や調査・訪問先を決める。 ・「学習課題調査カード」を見,調査計画が不十分な調べる調べる・質問事項を検討する。 グループには調査方法を助言して多様な「調べ方」

ができるようにする。・校外で調査活動をする。(1日) ・生徒が調査・訪問先に連絡を取った後,各担当教師

が活動の趣旨や内容を訪問先に説明し承諾を得る。・電話依頼や訪問の際のマナーについて助言する。

・調査活動のまとめをし,発表方法を検討する。まとめるまとめる・ここまでの学習を振り返る。 ・「自己評価表Ⅰ」の利用を促す。学習を振り学習を振り

返る返る

6 郷土倉敷について調べた成果を発表しよう課題解決 6・希望する発表方法が近い生徒同士で「方法グル ・得意分野を考慮して「方法グループ」の担当教師を発表と討議発表と討議ープ」をつくる。 配置する。

・「表現の仕方」の見通しを持ちにくいグループには【方法グループ】こまやかに声を掛け相談に応じる。コンピュータ活用,ビデオ編集,寸劇,紙芝居,

描画,演奏,調理,ディジタルカメラ活用,OHC活用,OHP活用,実物制作

・発表の準備をする。 ・「学習シート」を配布し,「調べ方」や「表現の仕・学級発表会を行い質問・意見を交換する。 方」の工夫に着目できるようにするとともに,質問・発表会の反省をする。(自己評価・相互評価) ・意見を出しやすくする。学習を振り学習を振り・「サザンクロス」全体の反省をする。 ・「自己評価表Ⅱ」の利用を促す。返る返る

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表16 主な学習課題

・吉備津彦 と温羅の話民 話 ・方 命みこと う

・笹無山の話 ・倉敷の昔話言ささ

・倉敷の方言

・美観地区の歴史歴史

・楯築遺跡 ・藤戸の合戦たて

・倉敷の地名と歴史

・天領うちわ ・羽島焼伝統工芸・酒津焼 ・倉敷ガラス・備中和紙 ・花ござ作り・ちょうちん作り

・倉敷張り子 ・福だるま郷土玩具・郷土のおもちゃ

・素隠居 ・阿智神社のご神幸祭り・伝・千歳楽統行事・備中神楽 ・茶屋町の鬼踊り郷土芸能・瀬戸内ちらし寿司郷土料理・ままかり寿司 ・たこ料理・むらすずめ ・倉敷おこわ

・倉敷の高齢者福祉( 荘)福祉 P・視覚障害者に住みよい街づくり

・高梁川の水質調査環境・学区内の環境 ・倉敷の空気・倉敷川の水質調査・倉敷の動植物・ごみ処理のしくみと問題

・障害者・高齢者のための観光観光マップ作り

・私たちの観光パンフレット作り

・姉妹都市カンザスシティーと国際交流の交流

・姉妹都市クライストチャーチとの交流

とで関心・意欲を高めた。次に,クロスカリキュ

ラムを実施することで地域社会に対する基本的な

認識を深め,地域社会について総合的に把握でき

るようにした。それらを通してわいてきた疑問を

基に学習課題をつくり,追究していった。

指導体制の工夫イ

前年度の実践の成果と課題を踏まえ,特に次の

2点を工夫した。第一に,「予想を立てる活動」

から「まとめる活動」にかけて,学級を解体し学

習課題が内容的に近い生徒を集めて「内容グルー

プ」をつくり,各グループの学習課題と教師の専

門分野との関連を考慮して担当教師を配置した点

である。第二に,「発表と討議の活動」において,

「内容グループ」を解体して生徒が希望する発表

方法ごとに「方法グループ」をつくり,各グルー

プの発表方法と教師の得意分野との関連を考慮し

て担当教師を配置した点である。見通しを持ちに

くい生徒も,複数の学習集団や教師からアドバイ

スを受けることにより,「調べ方」や「表現の仕

方」を自分なりに広げることができた。

生徒の変容ウ

本単元は,生徒たちが生活する身近な地域を対

写真12 神社で聞き取り調査を

する生徒

象としており,地域のネットワ

ークを大いに活用し,そこで生

き生きと活躍する人々と触れ合

う機会を多くつくることができ

た。その中で,地域の発展のた

めに積極的に働く人々の生きざ

まに触れることが,自らの生き

方を考えるきっかけとなった生

徒が見られた。また,発表のた

めに実物を制作したグループで

は,地域の方が簡単そうにしていた作業がなかな

かうまくできなかったことから,地域に残る伝統

的な技術の高さに感動し,伝統文化の保存に貢献

したいと思うようになった生徒も見られた。

学習を終えての感想(「学習シート」より)

昔からの伝統のお祭りには,ちゃんとした意味があ○ります。なくなりかけていた「協力」ということを復活するのもその一つだと思います。私は,これからお祭りというすばらしいものをいろんな人たちに伝えて広げていきたいです。

○ 紙すきでは,力と感覚など,長年の経験と勘が必要だということが体験して分かりました。和紙は「心」ですき「謙虚な心」で作っていることを知り,とてもびっくりしました。何事も一年目だと思ってやると緊張するからうまくできると聞き,納得しました。

○ ○○さんが優しく教えてくれ楽しくできたことも,私にとっては貴重な思い出となりました。あの張り子は大事に飾っています。機械化されていく今,手作りがどれだけすばらしくどれだけ楽しいものかよく身に付きました。 私たちもできるだけ手作りの伝統的なものを減らしたくないと思っています。

⑥ 結果と考察

第2学年「サザンクロス」の結果からア

アンケートによると,「社会科の『適切な課題

を設けて行う学習』が総合的な学習の時間に役立

ったか」という問いに対して,93%の生徒が「役

立った」と答えている。また,「どんな内容が役

図11 「学習課題調査カード」の例

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立ったか」という問いに対して,36%の生徒が

「倉敷について調べた内容や友達の発表」と答え

ている。これは,社会科の「適切な課題を設けて

行う学習」で培った内容知が総合的な学習の時間

にも生かされた結果と考えられる。

また,「どの活動で役立ったか」という問いに

対して,57%の生徒が「発表の準備」,42%の生

徒が「質問事項を検討する活動」と答えている

(図12)。これらは,社会科の「適切な課題を設

図12 「適切な課題を設けて行う学習」のどの活動が総合的な学習の時間で役立ったかの分析結果

図13 自己評価表Ⅰの集計結果

けて行う学習」で培った「調べ方」や「表現の仕

方」などの方法知が総合的な学習の時間にも生か

された結果と考えられる。

三つの実践を振り返ってイ

三つの実践(第1・2学年「適切な課題を設け

て行う学習」と第2学年「サザンクロス」)にお

ける「自己評価表Ⅰ」の記入内容の変化を追って

みた(図13)。

これによると,「どんな方法で調べればよいか

見通しを持って活動できたか」という問いに対し

て,「はい」「どちらかといえばはい」と答えた

生徒が58%から82%に増えている。また,「自分

なりの予想を基に調べる計画を立てることができ

たか」という問いに対して,「はい」「どちらか

といえばはい」と答えた生徒が47%から68%に増

えている。経験を重ねていくに従って「調べ方」

や学び方に見通しを持つことができたと考えられ

る。

また,「いろいろな種類の資料を集めることが

できたか」という問いに対して,「はい」「どち

らかといえばはい」と答えた生徒が46%から67%

に増えている。さらに,「何とおりの調べ方がで

きたか」という問いに対しても,第1学年「適切

な課題を設けて行う学習」で平均2.52とおりであ

ったものが,第2学年「適切な課題を設けて行う

学習」では2.59とおり,第2学年「サザンクロ

ス」では3.37とおりと広がりを見せている。

課題の内容が違うので一概には言えないが,経

験を重ねる中で「調べ方」や学び方が広がったと

考えられる。

考察ウ

ア,イから,3年間の見通しの下に重点を置く

内容知と方法知を設定し,社会科「適切な課題を

設けて行う学習」と総合的な学習の時間との関連

を図って実践した結果として次のことが言える。

第一は,社会科学習で培った社会認識(内容

知)や,社会的な見方や考え方に根ざした「調べ

方」「表現の仕方」(方法知)が総合的な学習の

時間の課題解決に役立てられたということである。

第二は,地域というフィールドで人々と触れ合う

体験により,社会科の学習内容に現実的な意味を

補うことができ,総合的な学習の時間の課題解決

への見通しやものの見方・考え方を確かなものに

することができたということである。

0% 20% 40% 60% 80% 100%

2年適切な課題実施後

2年適切な課題実施後

2年適切な課題実施後

2年適切な課題実施後

はい

どちらかといえばはい

どちらともいえない

どちらかといえばいいえ

いいえ

1年適切な課題は2000年3月307人,2年適切な課題は同6月296人,

2年総合的学習は同11月288人

予想を基に計画を立てたか

1年適切な課題実施後

2年総合的学習実施後

見通しを持って活動したか

1年適切な課題実施後

2年総合的学習実施後

いろいろな資料を集めたか

1年適切な課題実施後

2年総合的学習実施後

工夫をしてまとめたか

1年適切な課題実施後

2年総合的学習実施後

0% 20% 40% 60% 80% 100%

2000年11月実施(132人中)

グループでの話し合い

調査の方法の検討質問事項の検討

校外での調査活動コンピュータの操作

まとめの作業発表の準備

発表会での発表や質問

役立った 役立たない

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一方で,学習を振り返る活動に関して次のよう

な課題が残った。

「自己評価表Ⅰ・Ⅱ」を利用して学習の途中と

最後の2回自己評価を行うことにより,生徒は自

分の学びの状況をある程度つかみながら活動する

ことができた。しかし,本校の総合的な学習の時

間のように活動が長期にわたる場合,2回の自己

評価だけでは,振り返りの間隔が空き,次の活動

への意欲にうまく結び付いていない様子もうかが

えた。長いスパンの振り返りとともに,毎時間の

振り返りの必要性を感じた。今後,短時間で書き

込めるカード式の自己評価表を開発するとともに,

次時への動機付けのために教師が継続的にコメン

トを記入できるような活用方法も工夫したい。

Ⅳ おわりに

本研究は,3人の協力委員によって,身近な地域

を課題にした社会科の「適切な課題を設けて行う学

習」と総合的な学習の時間の授業実践を行い,それ

らを通して,社会科との関連を生かした総合的な学

習の時間における地域学習の指導の在り方を探った

ものである。

事例1,2では,生徒の「調べ方」や「表現の仕

方」が向上するとともに,生徒は地域を対象にした

調べ学習に成就感や充実感を持ったことがうかがえ

る。事例3では,社会科で培った社会認識や,社会

的な見方や考え方に根ざした「調べ方」「表現の仕

方」が総合的な学習の時間に生かされたことがうか

がえる。

「調べ方」「表現の仕方」に焦点を当てて3年間

を見通した「適切な課題を設けて行う学習」の指導

計画を作成し,それを応用し発展させ,異教科教師

や外部人材の協力によって地域学習の指導に当たる

ことは,地域及び地域の人々への愛着並びに課題解

決能力の育成に効果的であると言える。

一方で,実践を通して,追究活動の途中修正や短

いスパンの自己評価のための支援などには改善の余

地があることも明らかになった。形成的評価の在り

方についての更なる研究を今後の課題としたい。

本研究が地域を対象とする学習を進める際の参考

になれば,幸甚である。

第1章○参考文献

1) 佐久間勝彦:地域学習,授業研究用語辞典(横須賀薫編),教育出版, .147,1990p2) 文部省:小学校指導書 社会編,大阪書籍, .3740,1969pp -

3) 玉井康之:地域に学ぶ「総合的な学習」 -学社融合時代の学校・行政の役割と可能性-,東洋館出版

社, .1920,2000pp -4) 文部省:中学校学習指導要領(平成10年12月)解説 -社会編-,大阪書籍, .86 87,1999pp -5) 同上書, .130132pp -6) 同上書, .144145pp -

7) 同上書, .162p8) 岡山県教育センター:中学校社会における「適切な課題を設けて行う学習」の研究 -「身近な地域の

歴史」を課題にして-, .4,1996p9) 岡山県教育センター:中学校社会における「適切な課題を設けて行う学習」の研究Ⅱ -「身近な地

域」を課題にして-, .3,1998p

10) 前掲書8), .36などp11) 前掲書9), .26などp12) 文部省:中学校学習指導要領(平成10年12月)解説 -総則編-,東京書籍, .54,1999p13) 同上書, .62p14) 文部省:小学校社会指導資料 新しい学力観に立つ社会科の授業の工夫,大阪書籍, .18,1995p

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資料1 地域学習の対象となる地域施設の例

国の機 □ 道路・港湾整備事務所 □ 陸運事務所 □ 地方気象台 □ 海上保安庁関 □ 郵政監察局 □ 郵便局 □ 労働基準監督署 □ 公共職業安定所

□ 外国領事館 □ 貿易検疫所 □ 入国管理局 □ 税関 □ 農政局□ 食糧事務所 □ 農業事務所 □ 営林署 □ 農林統計事務所 □ 税務署□ 社会保険庁事務所 □ 裁判所 □ 検察庁 □ 法務局 □ 刑務所□ 財務省印刷局 □ 日本銀行支店 □ 河川工事事務所 □ 国道工事事務所

地方公 □ 県庁(又は市役所・町村役場)各部局 □ 県市町村議会 □ スポーツ施設共団体 □ コミュニティホール(市民会館,町民・村民会館,公民館等) □ 図書館 □ 公園の機関 □ 動物園・植物園 □ 水族館 □ 警察署 □ 職業訓練施設 □ 保健所

□ 清掃処理工場 □ 高齢者福祉施設 □ 医療福祉施設 □ 障害者福祉施設□ 給食センター □ 児童会館等学童施設 □ 救急・消防機関 □ 上下水道管理局□ 美術館・博物館・資料館・科学館 □ 天文台 □ 第三セクターの公社□ 運転免許センター □ 福祉事務所 □ 消費生活センター□ パスポートセンター □ 国際交流センター □ 環境保健センター

半官半 □ NTT □ ガス会社 □ 電力会社 □ 住宅公団 □ 道路公団民の機 □ 道路交通情報センター □ 鉄道事務所 □ 駅 □ 観光協会消費者協会関 □ 雇用促進事業団 □ 失業対策事務所 □ 自治体等のインターネットサーバ機関

公共的 □ 社会福祉協議会 □ シルバーセンター □ ボランティア・慈善事業団体な民間 □ 商工会議所 □ 農協・漁協連合会 □ 森林組合 □ 生活協同団体団体 □ 市場等流通業者 □ 中小企業団体 □ 専門生産者団体 □ 出版物流通業者

□ 放送局・新聞社等の報道機関 □ 文化団体 □ 自然・動物保護団体 □ 空港□ バス会社 □ 海運会社

その他 □ 農林水産業 □ 鉱業 □ 食料品 □ 繊維製品 □ パルプ・紙・木製品の事業 □ 化学製品 □ 石油・石炭製品 □ 窯業・土石製品 □ 鉄鋼 □ 非鉄金属所(産 □ 金属製品 □ 一般機械 □ 電気機械 □ 輸送機械 □ 精密機械業部門 □ その他の製造工業製品 □ 建設 □ 廃棄物処理 □ 商業 □ 金融・保険別) □ 不動産 □ 運輸 □ 通信・放送 □ 教育・研究 □ 事務用品

□ 医療・保健・社会保障 □ 対事業所サービス □ 対個人サービス

資料2 地域の調査課題の例

自然,環境, □ 気候 □ 山岳 □ 高原,台地 □ 鍾乳洞 □ 地質 □ 化石エネルギー □ 植物 □ 動物 □ 昆虫 □ 森林 □ 河川 □ 海,海岸

□ 湖沼 □ 湿原 □ 公害 □ ごみ,産業廃棄物 □ 放置自転車□ リサイクル □ 電力,発電 □ ガス

産業,交通, □ 地場産業 □ 特産物 □ 農林水産業 □ 鉱工業 □ 流通業通信 □ 道路 □ 鉄道 □ 港湾 □ 空港 □ 情報通信

歴史,文化 □ 人物 □ 文化財 □ 史跡 □ 郷土史 □ 文学 □ 民話,伝承□ 方言 □ 住居 □ 民謡,音楽 □ 伝統行事,祭り □ 伝統芸能□ 伝統工芸 □ 伝統玩具 □ 風俗,習慣 □ 郷土料理 □ スポーツ

国際,平和 □ 国際交流 □ 姉妹都市 □ 国際協力,国際貢献 □ 在住外国人□ 貿易 □ 国際航路 □ 戦争体験 □ 非核宣言都市

福祉,衛生, □ 障害者福祉 □ 高齢者福祉 □ 児童福祉 □ 保健所公的サービス □ ごみ処理工場 □ 再生工場 □ 上下水道 □ 医療 □ 社会保障

□ 社会教育行政 □ 女性 □ 消費者被害

地域づくり, □ 地域開発 □ 企業誘致 □ 観光 □ 名所 □ 土産,特産品地域興し □ 各種イベント □ クリーン団体 □ 自然保護団体 □ まちづくり協議会

※ 資料1・2は,次の文献やWebページを参考に作成した。○ NTT番号情報株式会社中国支店:タウンページ,日本電信電話株式会社,1999○ 玉井康之:地域に学ぶ「総合的な学習」 -学社融合時代の学校・行政の役割と可能性-,東洋館出版社,2000○ 澁澤文隆:中学校総合的学習新構想プラン集1 教科学習をもとに創る,教育出版,2000○ . . . 95 132. (総務省統計局・統計センターのWebページ)http://www stat go jp/data/io/zuhyou/io a xls

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平成11・12年度岡山県教育センター所員研究中学校社会・総合的な学習の時間協力委員会

協力委員

鍵 本 芳 明 倉 敷 市 立 南 中 学 校 教 諭

木 村 啓 司 玉 野 市 立 日 比 中 学 校 教 諭

谷 口 卓 生 英田郡大原町東粟倉村学校組合立大原中学校教諭

なお,岡山県教育センターでは,次の者が本研究に当たった。

東 長 典 教科教育部指導主事

平成13年2月発行

中学校における地域学習に関する研究-社会科から総合的な学習の時間への発展-

編集兼発行所 岡山県教育センター

〒703 8278 岡山市古京町二丁目2番14号-

(086)272 1205TEL -

(086)2721207FAX -

URL http://www edu-c pref okayama jp/. . . .