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1 医療機関における海外からの高度薬剤耐性菌の 持ち込み対策に関するガイダンス 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国際感染症センター

医療機関における海外からの高度薬剤耐性菌の 持ち …dcc.ncgm.go.jp/prevention/resource/resource05.pdf4 2. 本ガイダンスの対象と目的 「薬剤耐性菌の輸入」には患者のみではなく、いまだ不明な点は多いものの、食品、野

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医療機関における海外からの高度薬剤耐性菌の

持ち込み対策に関するガイダンス

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター

国際感染症センター

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目次

1. はじめに ..................................................................................................................................3

2. 本ガイダンスの対象と目的 ......................................................................................................4

3. 医療機関における海外からの高度耐性菌の持ち込みのリスク・アウトブレイク報告・

諸外国の対応例.........................................................................................................................5

(1) 医療機関における海外からの高度耐性菌の持ち込みリスク ..............................................5

(2) 海外から持ち込まれた高度耐性菌のアウトブレイク .........................................................5

(3) 諸外国での対応例 ...............................................................................................................5

4. 医療機関における対策 .............................................................................................................8

(1) 対策の流れのまとめと注意点 .............................................................................................8

(2) 海外からの転院搬送の受け入れ .......................................................................................10

(3) 入院時点での感染対策 .....................................................................................................13

(4) 隔離解除の判断と注意点 ..................................................................................................17

(5) 退院後の注意 ....................................................................................................................17

5. スクリーニング検査 ..............................................................................................................19

(1) 緒言 ..................................................................................................................................19

(2) 腸内細菌科細菌 ................................................................................................................19

(3) 多剤耐性緑膿菌(MDRP)・多剤耐性アシネトバクター(MDRA) .............................21

(4 ) バンコマイシン耐性腸球菌(VRE) ...............................................................................21

6. 濃厚曝露(アウトブレイク含む)が起きた場合の対応 .........................................................27

(1) 濃厚曝露者と隔離について ..............................................................................................27

(2) 接触者調査 .......................................................................................................................28

(3) アウトブレイク後のスクリーニング検査方法 ..................................................................29

(4) 本邦における対応 .............................................................................................................29

(5) 保健所への連絡と感染症法に基づく届け出 .....................................................................30

7. 略語一覧 ................................................................................................................................31

8. 参考文献 ................................................................................................................................32

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1. はじめに

訪日外国人数・出国日本人数は増加を続けており、2017年の実績ではそれぞれ 2800万人、

1700 万人を越えた[1]。仕事や留学、移住等の理由で海外に長期間滞在・居住する海外在留

邦人(3 カ月以上の長期滞在者もしくは永住者)の数も 130 万人を越えている[2]。国外の日

系企業の総数(拠点数)も 7 万を超えており[2]、まさに、グローバル時代を迎え、国内外を

行き来するライフスタイルは限られた人だけのものではなくなっている。一方で、薬剤耐性

(AMR) は国境を越えて容易に拡散するため、世界的な脅威として早急な対策が求められて

いる[3, 4]。海外では感染症の疫学的状況が国内とは大幅に異なっており、日本では検出さ

れることが稀で、かつ、治療の選択肢が極めて限られる高度薬剤耐性菌の検出頻度が高い国

や地域も存在する。本ガイダンスでは日本の医療現場においてそういった耐性菌の輸入・拡

散を防ぐための対策について概説したい。

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2. 本ガイダンスの対象と目的

「薬剤耐性菌の輸入」には患者のみではなく、いまだ不明な点は多いものの、食品、野

生動物、環境など様々なルートが考えられる[5]。本ガイダンスの対象としては、日本国内

の医療機関内における、患者からの持ち込みによる高度薬剤耐性菌の拡散を防ぐことにタ

ーゲットを絞ったものとした。また、AMR の問題は細菌に限らず、ウイルス、結核、寄

生虫、真菌など多岐にわたるが本ガイダンスでは細菌(高度薬剤耐性菌)を対象とした。

「高度薬剤耐性菌」に関しては、海外では多剤耐性:MDR (multidrug-resistant)もしくは超

多剤耐性:XDR (extensively drug-resistant)といった用語が使用されている[6]。本ガイダン

スの主な対象菌としては、感染症法上の届け出基準も参考に[7]、カルバペネマーゼ産生腸

内細菌科細菌 (carbapenemase-producing Enterobacteriaceae: CPE)・カルバペネム耐性腸内細

菌科細菌 (carbapenem-resistant Enterobacteriaceae: CRE)、多剤耐性アシネトバクター

(multidrug-resistant Acinetobacter species: MDRA)、多剤耐性緑膿菌 (multidrug-resistant

Pseudomonas aeruginosa: MDRP)、バンコマイシン耐性腸球菌 (vancomycin-resistant

Enterococci: VRE)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌 (vancomycin-resistant Staphylococcus

aureus) などが含まれる。しかし、本ガイダンスの対策そのものは日本の医療機関でも比

較的高頻度に検出の認められる基質特異性拡張型ベータラクタマーゼ (extended-spectrum

beta-lactamase) 産生腸内細菌科細菌(以下 ESBL産生菌)やメチシリン耐性黄色ブドウ球

菌 (methicillin-resistant Staphylococcus aureus: MRSA) の医療機関内での拡散防止にも当ては

まるものである。

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3. 医療機関における海外からの高度耐性菌の持ち込みのリスク・アウトブレイ

ク報告・諸外国の対応例

(1) 医療機関における海外からの高度耐性菌の持ち込みリスク

海外の医療機関を受診後に帰国した患者が、自国の医療機関内に高度耐性菌を持ち込む

リスクについては先進国を中心に指摘されている。ICU入室時の MDRの保菌率を調べたフ

ランスの報告[8]では、 「フランス国外での抗菌薬加療を含む入院歴」がリスクファクター

(OR: 10.7, 95% CI: 4.2 – 27.3)として挙げられている。本邦からの報告でも、海外で入院歴の

ある患者のうち 56.5%が ESBL や MRSA を含む何らかの薬剤耐性菌を保菌しており、その

中には、MDRAや VRE といった高度耐性菌も含まれていた[9]。また、この報告の中ではヨ

ーロッパ・中東・アジアでの入院歴や、デバイスの使用・ICUへの入院歴・侵襲的な処置を

受けた例・複数種類の抗菌薬暴露歴のある症例では耐性菌検出の頻度が高かった[9]。

高度耐性菌の蔓延している地域で、特に濃厚な医療曝露を受けることが耐性菌の保菌の

リスクとなっていることがわかる。

(2) 海外から持ち込まれた高度耐性菌のアウトブレイク

海外からも同様の報告があるが、本邦でも海外から持ち込まれた高度耐性菌がアウトブ

レイクを起こした事例がいくつ報告されている。2008 年の韓国からの多剤耐性アシネトバ

クターの持ち込みに続くアウトブレイクの事例[10]、2014 年に欧州から持ち込まれたバンコ

マイシン耐性腸球菌/多剤耐性 Acinetobacter baumannii/KPC 型カルバペネマーゼ産生肺炎桿

菌のアウトブレイクの事例[11] 、2015 年、ラオス/タイ渡航中に意識障害が出現して搬送さ

れた患者から多剤耐性 Acinetobacter baumannii が検出され、アウトブレイクを起こした事例

[12]などである。いずれも感染対策の徹底などで終息しているが、海外で医療機関受診歴が

ある患者を起点としたアウトブレイクの懸念は常にあり、対策が必要である。

(3) 諸外国での対応例

国外からの高度耐性菌の持ち込みへの対策としての施策を行なっている国がある。いず

れも、他国の病院受診歴のある患者を対象としてスクリーニングを行う事、結果が陰性であ

る事が判明するまでは隔離対策を行うことを推奨している。以下にいくつかの対応例を挙

げる。

【オランダ】[13]

高度耐性菌の院内感染を防ぐためのガイドラインの一部(アクティブサーべーランス

の対象者の一部)として言及されている。

スクリーニング対象者:2 ヶ月以内に海外の病院で治療歴があり、かつ、以下のいずれ

かがある患者。

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24 時間以上の入院歴

手術歴

カテーテルやドレーンの挿入歴や挿管歴

創部や膿瘍、せつなどの皮膚病変

スクリーニング対象菌:ペニシリン耐性肺炎球菌、VRE、ESBL産生菌、CRE、MDRA、

MDRP、多剤耐性腸内科細菌など。

スクリーニング方法:以下のすべての培養を提出する。咽頭、直腸もしくは便、喀痰(喀

痰を伴う咳嗽があれば)、創傷部(あれば)、尿(尿道カテーテルがあれば)、臍部もし

くは腋窩スワブ(新生児)。

感染対策の種類は検出された耐性菌に応じて設定。

【スコットランド】[14]

CPE の診断・治療・コントロールに関するツールキット内の一部として言及されてい

る。

スクリーニング対象者:12 カ月以内にスコットランド以外の病院に入院歴がある、ス

コットランド外の病院で透析を受けたことがある、もしくは CPE に感染もしくは保菌

していた者と密接な接触があった患者。

スクリーニング対象菌:CPE

スクリーニング方法:直腸スワブ/便培養+尿道カテーテルを挿入されていれば尿の提

出、傷があれば創部の培養。

陽性時の対応:個室隔離、標準予防策に加えた感染経路別感染対策。患者や家族への情

報提供、ICT への連絡。抗菌薬やデバイスなど臨床情報のレビュー、接触者の特定とス

クリーニング、退院時・転院時には保菌陽性について情報提供を行う。

1回目のスクリーニング培養が陰性であれば 48 時間あけて追加で 2 回検体を採取し

(day 0, 2, 4)、計 3 回検査が陰性であれば隔離解除とする。

【フランス】[15]

高度耐性菌の輸入の防止に関する推奨あり。

スクリーニング対象者:耐性菌が高頻度で認められる地域(耐性菌の状況は変化するた

めに、ガイドラインでは地域のリストは提示していない)にある他国の病院に 24 時間

以上入院した帰還者、もしくは、過去 1 年以内に他国での入院歴のある旅行者。

スクリーニング方法:直腸スワブおよび便培養。

スクリーニング対象菌:CPE、VRE

対応:対象患者が入院する場合、ICT に自動的に連絡がいく。ICT もしくは医療者は対

象患者に感染管理について説明を行い、カルテに記載する。速やかに接触感染対策を含

む感染対策を開始する。感染管理が入院時に行われていれば、接触者(同じ医療者によ

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ってケアを受けた患者)のスクリーニングの推奨はなし。KPC産生菌や VREが検出さ

れた場合は、ICT はフランス保健機関に報告する。耐性のメカニズムの同定を行う。感

染対策およびサーベイランスはスクリーニングを毎週行い、3回陰性が確認されるまで

継続する。

CRE/CPE に対する感染対策として、国外や流行地の医療機関への入院例のある患者へのス

クリーニングや感染対策を推奨しているガイダンスは、他にも米国、イングランドなど複数

存在する[16, 17]。

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4. 医療機関における対策

(1) 対策の流れのまとめと注意点

海外からの高度耐性菌の持ち込みリスクの高い、海外での入院歴(医療曝露歴)のある患

者が医療機関に入院する際には、日本在住者であれば、海外からの転院搬送もしくは帰国後

外来受診を経て入院するかのいずれかであろう。外国居住者であれば、日本に短期旅行中も

しくは長期滞在中の場合が多く、時に Medical tourism(メディカルツーリズム:医療サービ

スを目的とした海外への渡航)の場合もありうる[9]。重要な点として、「海外での入院歴や

医療曝露歴」は海外からの転院搬送などあらかじめわかっている場合は別として、多くの場

合、患者自身もしくは患者の家族等から聴取しないと得られない情報である。院内の感染対

策マニュアルなどを整備し、各診療部門にも、“海外での入院歴”の聴取を確実に行い、こ

れに該当する患者の入院の際はあらかじめ ICT に連絡をするよう周知しておくことが重要

である。また、スクリーニング検査(別項参照)の依頼の仕方や検査法に関して、細菌検査

室と十分な情報共有をしておくことは必須である。対応の流れについて以下のフローチャ

ートにまとめた。

なお、「海外での入院歴」のある患者に関しては、前項 3でまとめた通り、高度耐性菌の持

ち込みリスクの極めて高い症例と考えられる。それ以外の医療曝露歴や渡航歴に関して、ど

の程度までを感染対策の対象とするかについては、明確な切り分けは困難である。例として

渡航歴のみを対象とした場合、膨大な数の患者が対象となる一方で高度耐性菌の保菌率は

「入院歴」を対象にした場合に比し、かなり下がることが予想されるため、高度耐性菌を検

出するためのアクティブスクリーニングの費用対効果・時間対効果が下がる点や隔離のた

めのリソースの不足などの問題も生じる。「入院歴はないものの海外からの高度耐性菌の持

ち込みリスクの高い」例としては、外来での手術や侵襲的処置、慢性の創傷部やその処置、

透析、VFR(Visiting friends and relatives:親族や友人の訪問)、広域抗菌薬曝露歴、高度耐性

菌の検出頻度の高い国(南アジア~東南アジア、中東、一部ヨーロッパ地域、中南米など)

への滞在などがあげられる[9, 18-20]。こういった事例を高度耐性菌の持ち込みの対策対象

とするか否かは、各施設や患者とその入院病棟(基礎疾患や免疫状態など)ごとの判断を要

するものと考えられる。

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図 1. 海外での入院歴(医療曝露歴)のある患者に対する対策の流れ

海外での入院歴(医療曝露歴)のある患者の入院に

ついて ICTへの事前連絡

すべて陰性

スクリーニング検査を提出

耐性菌の検出

患者の耐性菌への感染リス

クを考慮し、隔離継続か

解除かを検討する。

個室隔離と接触予防策を指示

患者家族・病棟管理者・担当医へ

の事前説明

接触予防策を継続

対策マニュアルの作成・各部署への周知・細菌検査室と

のスクリーニング検査に関する事前取り決め

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(2) 海外からの転院搬送の受け入れ

海外からの転院搬送を経て入院に至る患者は、直近までの濃厚な医療曝露歴を有するこ

とが多く、高度耐性菌の持ち込みリスクが高い。また、高度耐性菌の持ち込み以外にも、

海外からの転院搬送受け入れに関しては注意を要する点があり、あらかじめの準備を行っ

ておくことは、感染対策を含めゆとりを持った対応を行うために、医療安全上も重要であ

る。本稿では、主に、そうした患者を国内の医療機関で受けいれる際の対応について概説

する。

大まかな流れは図 2 のようになる。

図 2. 海外からの患者の受け入れの大まかな流れ

① 現地からの要請

多くの場合、患者自身、患者家族、保険会社、搬送仲介業者などから搬送依頼の連絡を受

ける。医学的な情報に関して正確を期するために、患者の情報については、現地の医療機関

と直接コンタクトできる立場の人(患者家族、保険会社など)、患者の病状を説明できる人、

保険の手続きなどの交渉ができる人に窓口になってもらうことが望ましい。直接現地医療

機関と交渉するという選択肢もあるが、患者・家族の意思が置き去りに話が進むことは避け

なければならないため、患者や家族ともコミュニケーションを取ることが重要である。保険

会社などの中間業者が医療機関や患者家族との調整を請け負い、中間業者とのみ交渉を行

うこともある。

確認すべき事項として、現在の入院理由(疾患)と状況、帰国時の状況(点滴、その他の

カテーテル類やドレーンの有無)を確認する。また帰国後に必要な医療について評価し、帰

① 現地からの要請

②院内の調整

③受入れ当日の対応

④来院後の対応

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国後そのまま入院が必要なのか(その場合はおおよその入院日数)、外来診療で対応可能な

のか判断しなければならない。これまでの経過を把握するために、診療状況提供書を FAX

またはメールで送付してもらう。薬剤耐性菌による感染症が問題になっている場合は、診療

情報に含まれて記載されている場合が多いが、菌名が書いてあるものの感受性が不明な場

合、「感染症」と書かれているものの詳細が不明な場合など、情報が不十分である場合は、

追加で問い合わせを行っておく。当該患者および滞在病棟における耐性菌検出状況につい

ても、可能な限り問い合わせる。

日本からの旅行者であれば健康保険を持っていることが多いが、現地在住の日本人や外

国人では日本の健康保険を持っていないことがあり、健康保険の有無を確認しておく。健康

保険がない場合は、医療費は 10 割負担となり、医療機関によっては 1 点 10 円を超える医

療費を設定している医療機関もある。また個室隔離が必要な場合であっても個室料金がか

かる医療機関もある。これらの診療にかかる費用に関しても搬送前に確認をしておく。

外国人である場合は、国籍、使用する言語、通訳の有無を確認する。

海外からの転院搬送は、患者の全身状態が安定していることが前提で行われるべきであ

る。また転院可能かどうかの判断は、現地の医療機関の医師が行うべきものであり、受け入

れる側が判断することは危険である。搬送を受け入れる前に必ず現地の医師の搬送許可証

を送付してもらう。

フライトが確定した時点で最寄りの空港に到着する時間、場所、便名、空港から病院まで

の搬送方法について必ず連絡をもらう。空港から病院までの搬送方法が設定されていない

場合、全身状態などから必要であれば先方に民間救急を提示する(例:全日救患者輸送株式

会社など)。なお搬送に関するコストの支払いについては患者・家族、もしくは仲介業者に

確認しておく。空港まで迎えに行く必要がある場合には、車内で必要な医療行為、モニター

類などについて現地の医療機関と綿密に打ち合わせをしておく。

Checklist

連絡窓口の設定

連絡窓口の担当者名、続柄および会社名、電話番号・FAX・メールアドレスを受入

れシートに記入する。

入院理由の確認

転院予定日の確認

診療情報提供書を依頼(薬剤耐性菌の感染・保菌についても情報収集)

転院許可が出ているかの確認

フライト(航空会社、便名、到着予定時刻)が決定した場合は連絡してもらうこと

を説明

空港から病院までの搬送手段を確認

同行者の有無の確認(家族・医療スタッフなど)

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国籍・言語。通訳の必要性

個人情報(年齢、生年月日)

② 院内の調整

海外からの転院症例は耐性菌スクリーニング検査の対象であり、原則として個室を確保

する必要がある。また重症度に応じて、個室、集中治療室など病室を決める。集中治療室へ

の入室が必要な場合は集中治療室の責任者や看護師長(またはリーダー)に事前に情報を共

有しておく。転院後速やかに専門科による治療が必要な場合は、事前に当該科に連絡してお

く。その際に、どの診療科が主科となって診療を行うのか決めておく。当日主に対応する担

当者を決めておく。また来院する時間は遅れることもあり、実際の対応時間が夜間になるこ

ともあるため、必要に応じて夜間当番医や来院予定日の翌日以降の担当者とも情報を共有

しておく。民間救急で来院する場合は、救急科などの救急車受け入れ窓口にも来院時間を連

絡しておく。転入院までに IDを取得・カルテ作成を行い、紹介状などの情報を集約してお

く。

外国人を受け入れる場合、医療通訳が必要となることがある。患者家族や患者が連れてく

る家族による通訳では、①医療に関する専門用語が十分伝わらない、②通訳者の自己判断で

患者本人に正確に伝えないことがある、などの理由から可能な限り医療通訳者を用意する

ことが望ましい。医療通訳を病院として雇用している医療機関はまだ多くないが、時間単位

の契約での対面医療通訳サービスや電話通訳による医療通訳サービスが提供されており、

来院までに患者の使用する言語の医療通訳が利用できるか確認しておくことが望ましい。

なお、電話通訳の例として以下のような会社が利用可能である。

・AMDA国際医療情報センター(http://amda-imic.com/):無料。英語、中国語、韓国語、タ

イ語、ポルトガル語、スペイン語の 6 か国語に対応。

・LanguageOne(https://www.languageone.qac.jp/):有料。英語、中国語、韓国語、ポルトガル

語、スペイン語、タイ語、ロシア語、タガログ語、ベトナム語、ヒンディー語、インドネシ

ア語、ネパール語、フランス語の 13 ヶ国語に対応。

・メディフォン(https://mediphone.jp/medicalinterpretation/):有料。 英語・中国語・韓国語・

ポルトガル語・スペイン語・ベトナム語・タイ語・ロシア語・タガログ語・フランス語・ヒ

ンディー語・モンゴル語・ネパール語・インドネシア語・ペルシャ語・ミャンマー語・広東

語の 17 カ国語に対応。

Checklist

病室の確保

集中治療室の場合、集中治療室の責任者に連絡

必要であれば、専門科にも連絡

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夜間当番医や翌日以降の担当医との情報共有

到着時刻を救急部の窓口に連絡

医療通訳者の手配

患者のカルテ作成

③ 受け入れ当日の対応

現地を予定通りに出発したことを確認し、到着予定時刻を再確認する。空港に迎えに行く

場合には時間に余裕を持って出発する。おおよその到着時間が判明すれば院内で情報を共

有する。

Checklist

受け入れ態勢の再確認

科内担当者の確認

関係者に到着時間の情報共有

④ 来院後対応

来院後は救急外来などで、状態の評価を行い、必要な検査を実施する。全身状態が来院前

の想定よりも悪い場合には、状態に合わせて、病室を変更することも考慮する。入院になる

際の感染対策やスクリーニング検査については別項に詳細を記載した。入院時に改めて健

康保険、旅行保険などの有無や支払い方法について確認を行う。支払いが円滑に行われそう

でない事例については、入院早期から具体的な支払い方法について医事課と相談を行う。患

者が無事に来院したことを搬送元の医療機関に連絡を行う。

Checklist

救急外来で、入院病室の決定

入院病棟へ連絡

入院スクリーニング実施(別項参照)

支払い方法の確認(状況に応じて医事課と相談)

搬送元の病院への返事作成

(3) 入院時点での感染対策

<感染対策>

原則として個室隔離を行う。入院時にスクリーニング検査(別項参照)を行う。標準予防策

に加え接触予防策を開始する。

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<病棟とのコミュニケーション>

病棟管理者へ重要な耐性菌検出のリスクがあり厳重な接触感染対策と個室管理が必要であ

る事を説明し協力を得る。師長をはじめとした病棟スタッフとのコミュニケーションを密

にし、隔離を含めた対策期間の目安など状況をこまめに伝えていく。また、カルテにもわか

りやすく状況を記載する。標準/接触感染予防の遵守率は高く保つ必要があり、継続的な確

認を要する。

<担当医とのコミュニケーション>

原則的に、病棟と同様のコミュニケーションを行う。感染対策や薬剤耐性菌の治療等に関し

て、ICT や感染症医が随時サポートしていく旨も伝えておく。

<患者や患者家族とのコミュニケーション>

感染対策が必要な理由やその内容について事前に説明をして理解を得ておくのが望ましい。

あらかじめ説明文書のひな形などを用意しておくとよい(次ページ「患者・患者家族への説

明例」参照)。

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<患者・患者家族への説明例>

様及びご家族の方へ

感染対策についてのお願い

海外の地域によっては、薬剤耐性菌(抗菌薬の効きにくい細菌)が日本よりも多く存在す

ることが知られています。海外での医療行為を受けられた方の当院への入院に当たって

は、それらの菌をお持ちになっていないかを検査する必要があります。病院に入院されて

いる患者さんには、免疫力(体の抵抗力)が低くなっている方や、様々な手術や処置が必

要な方がいらっしゃいます。そういった方々への感染を防ぐために、検査結果がわかるま

では感染対策が必要です。薬剤耐性菌を持っていることがわかった場合、感染対策を継続

させて頂きます。薬剤耐性菌を持っているかどうかを調べることは、ご自身の治療や予防

に役立つ場合もあります。ご理解の上ご協力をお願い申し上げます。

●耐性菌は患者さん自身や周囲の環境・器具、衣服等に付着したり、人の手を介して他

の方にうつることがあります。

●複数の患者さんに接する医療スタッフは、他の患者さんに持ち運んでしまうことを防

ぐために手袋・エプロン・ガウン等を着用します。

●聴診器や血圧計などの器具は個別化し、個室への移動をお願いすることもあります。

●手を介して感染することがあるため、手をきれいにすることが非常に重要となりま

す。医療スタッフも徹底いたしますが、患者さんご自身や

ご家族・ご面会の方も部屋の出入りの際には、石鹸と流水による手洗い又は、備え付

けのアルコール製剤による手指衛生をして頂けますようお願いいたしま

す。

この対策を徹底するため、必要な防護具等(マスク、手袋、ガウン)のイラ

ストを部屋の前に表示をさせて頂くことをご了承ください。

ご不明な点や疑問点がありましたら、お気軽に医師や看護師にお尋ねくださ

い。

説明日 平成 年 月 日

説明者 所属 氏名

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<患者・患者家族への説明例>(英語バージョン)

To. Mr/Ms and his/her family members

Regarding our Infection Control Policy

It has been reported that there are some areas outside Japan where drug-resistant bacteria (bacteria

which is difficult to be treated by antibiotics) exist much more frequent than in Japan. We need to

screen inpatients who had history of healthcare-exposure abroad if they carry such drug-resistant

bacteria or not upon admission. There are some inpatients who are immunosuppressed and do not

have enough strength to fight against bacteria, as well as those who require surgeries and procedures

for their treatment. We need to use infection control measures when caring you until we find out if

you carry drug-resistant bacteria or not. If you do carry such bacteria, then, we will continue to use

infection control measures during your admission period. It might also be useful for your treatment

and prevention to know the status of you carriage of drug-resistant bacteria.

Thank you for your cooperation.

● Drug-resistant bacteria can be transmitted to another person through patients, their

environments/equipment, and clothes, etc in addition to transmission by hands.

● Our hospital staffs use glove/apron/gown when caring you not to transfer drug-resistant

pathogens to other patients.

● Personalized stethoscope and sphygmomanometer will be used for you, and we may ask you to

stay in a private room.

● Hand-hygiene is very important because transmission through hands can occur.

In addition to the hospital staffs, patients themselves and family

members/visitors are encouraged to clean their hands by water and soap or

alcohol-based hand sanitizers.

Please understand that a sign indicating the necessary equipment (mask, gloves,

gown) will be place at the door of your room.

If you have any question, please feel free to contact doctors or nurses.

Date of explanation (Year) (Month) (Day)

Explained by (Department) (Name)

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(4) 隔離解除の判断と注意点

隔離解除に関しては、あらかじめ各医療機関で基準を定めておく必要がある。スクリー

ニング検査の陰性の確認をもって、隔離解除とする方法が一般的であるが、糞便等の場

合、薬剤耐性菌の検出感度が十分ではないことが知られている[21]。このため、例えば

Public Health England(イングランド公衆衛生サービス)では、急性期病院でのカルバペネ

マーゼ産生腸内細菌科細菌の拡散を防ぐために、48 時間空けて採取した直腸スワブの、3

回連続での培養陰性をもって隔離解除を推奨している[16]。なお、入院時のスクリーニン

グが陰性でも、入院経過中に高度耐性菌の検出が明らかになる例も報告されている[8]。ハ

イリスク症例(現地での集中治療室への入室歴、侵襲的処置歴、複数種類の抗菌薬への曝

露歴、デバイスの使用、薬剤耐性菌の高蔓延地域[中東、アジア、ヨーロッパ等]での入院

歴等)[9] では隔離解除に関しては慎重に検討する。また、こういった症例では解除にな

ったとしても、入院中も ICT による定期的な監視・モニタリングを継続するのが望まし

い。

(5) 退院後の注意

薬剤耐性菌が検出され、入院中は接触感染対策等の感染対策を継続された患者が退院す

るにあたり、日常生活や家庭での生活等に関しての指導を求められる場合がある。このよ

うな退院後の注意の要点を以下にまとめる。

① 家庭での生活 [22, 23]

薬剤耐性菌の健康な家族への伝播のリスクは低いと考えられている。家庭での感染対策は

一般的には標準予防策・手指衛生・通常の清掃で良い。特に、トイレ使用の前後や、調理

の前後の手指衛生には十分な注意を払う。排泄の自立していない患者に対しての排泄介助

が必要な場合は、標準予防策と前後の手指衛生を遵守する。患者に医療器具の必要な場

合、可能な限り使い捨てのものとし、血圧計や体温計、剃刀などの物品は本人専用にする

のが望ましい。創部に薬剤耐性菌が感染している場合は、創部は清潔な保護剤などで覆う

ことが望ましい。尚、薬剤耐性菌で、感染症法の届け出疾患(例:腸チフス、パラチフ

ス、細菌性赤痢など)にも該当する場合、保健所による調査や指導の対象にもなる。

② 職場での活動

一般的な注意事項は①に準じる。食品を扱う仕事、医療や介護職、保育職等に関しては、

職場の感染対策の手順にも準じる必要があるため、事前に担当者とのコミュニケーション

をとることが望ましい。

③ 医療機関の受診

別の医療機関への受診に際しては、薬剤耐性菌の保菌(もしくは感染)があったことにつ

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いて情報提供をすることが望ましい。患者には、そのように説明し、医療機関同士でのス

ムーズな情報共有につなげられるようにする。

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5. スクリーニング検査

(1) 緒言

多剤耐性菌スクリーニングの対象としてESBL産生腸内細菌科細菌あるいはCPE、 MDRP、

MDRA、VRE、MRSAなどが想定される。一般に、検体採取部位として鼻腔 (MRSA)や糞便

(MDRA を除く上記の耐性菌) が挙げられる。但し、創部がある場合には創部の培養検査、

尿道カテーテルが留置されている場合は尿培養検査が必要になる。MDRA に関しては、上

腕や鼠径部の皮膚ぬぐいが有用との報告もあり[24]、スクリーニング検体として考慮してよ

い。耐性菌の保菌調査を実施する場合は、検出対象とする耐性菌と検査項目を微生物検査部

門と予め打ち合わせておくことが望ましい。参考として当院で実施している耐性菌スクリ

ーニング法を図 3 に示す。

本項では前述の耐性菌に対する保菌調査について記載する。ただし、本項では、日常診療に

おいてしばしば実施される MRSAスクリーニングについては言及しない。

(2) 腸内細菌科細菌

糞便などを対象とした耐性菌保菌調査では目的に応じて、バイタルメディア ESBL/MBL

スクリーニング寒天培地 TM、、CHROMagar™ KPC、CHROMagar™ ESBL、 CHROMagar™ 、

mSuper CARBA、chromID ESBL 寒天培地 TM、chromID CARBA 寒天培地 TMなどの寒天平板

培地を用いる。これらのスクリーニング用培地は種類によって感度・特異度が異なる場合が

あるので事前に検討する必要がある[25]。

分離された菌株は、微量液体希釈法あるいはディスク拡散法による薬剤感受性検査を実

施する。第 3 世代セファロスポリン耐性株が、ESBL産生あるいはカルバペネマーゼ産生確

認検査の対象となる(表 1)[26]。ただし、耐性菌用選択培地上に発育した菌株は薬剤感受

性検査と並行してベータラクタマーゼ産生確認検査に進むと効率がよい。ESBL産生菌とそ

れ以外のベータラクタマーゼ産生菌は、セフェム系薬やペネム系薬に対する感受性により

鑑別が可能であり、特に LMOX (ラタモキセフ) や FRPM (ファロペネム) の有用性が報告

されている[26, 27]。また、CPEのスクリーニング基準として、MEPM (メロペネム) の MIC

値 ≥1 mg/L をカットオフ値とすると感度・特異度ともに優れることが報告されている[28]。

一方で、CPEの中には、MEPMの MIC 値が 1 mg/L 未満の菌株も存在することから、EUCAST

はそのカットオフ値を MIC >0.125mg/L (ディスク拡散法では阻止円径 <28mm)としている

[29]。しかし、自動同定薬剤感受性検査機器を含め、市販の薬剤感受性検査用パネルは、

MEPMの 0.25mg/L の濃度設定がなされていないことから、現実的な指標とは言えない。本

邦において主要なカルバペネマーゼである IMP-型産生株には、LMOX のカットオフ値を≥

16mg/L とすると感度・特異度とも良好であるとの報告がある[27]。クロモジェニックセフ

ァロスポリンを用いたシカベータテスト TMは、ESBL や MBL (metallo-beta-lactamase:メタ

ロ-ベータラクタマーゼ) の検出に有用であるとの報告がある一方で[30]、感度が十分ではな

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いとの報告もある[31]。特に AmpC産生株に対する感度が低い印象がある。シカベータテス

ト TMは、迅速性には優れており、ESBL産生株の判定には有用であるが、MBLや AmpCを

産生する菌株の判定は慎重に行う必要がある。

各種ベータラクタマーゼ産生確認検査については、下記の特異的阻害薬を用いた検査があ

る。

<ESBL>

ESBL 産生株に対する CAZ (セフタジジム)と CTX (セフォタキシム) の薬剤感受性が CVA

(クラブラン酸) の存在下で回復することを利用して、微量液体希釈法、ディスク拡散法に

よる ESBL 産生菌の検出法が CLSI のドキュメントに記載されている[25]。そのための検査

用ディスクも市販されている。但し、ESBL 確認用ディスクを購入していない施設では、

CVA/AMPC (アモキシシリン/クラブラン酸) のディスクを併用する Double Disk Synergistic

Test (DDST) が有用である[32]。その他、Etest にも CVA を含有する ESBL 検出用ストリッ

プが市販されている[33]。

<AmpC>

Enterobacter spp.、Serratia spp.、Citrobacter spp.などは染色体上に誘導的に産生される AmpC

をコードする遺伝子を保有しているため、AmpC 産生菌であることの確認検査の対象になら

ない。第 3 世代セファロスポリン系薬に耐性を示し、ESBL 産生菌でない Klebsiella spp.や

Escherichia coli Proteus mirabilisが AmpC産生確認検査によりプラスミド性 ampCの保有の

有無を確認できる。AmpC産生株の確認検査は確立されていないが、第 3世代セファロスポ

リン系薬と AmpC の阻害剤である、3-アミノフェニルボロン酸あるいはクロキサシリンを

添加することで検出が可能である[34]。市販の AmpC/ESBL 鑑別ディスクも有用である。

<カルバペネマーゼ>

CLSI は、特殊な試薬を要さず、汎用性が高い方法として modified carbapenem inactivation

method (以下、mCIM)を推奨している[25]。CarbaNP test は迅速性の観点で優れている。

mCIM と CarbaNP testは何れも感度・特異度が 98%以上との報告がある[35]。CLSIの M100-

S28 には MBL産生確認のために mCIMに EDTAを併用する eCIMが収載されている。クイ

ックチェイサーIMP®[36]は IMP-型 MBL特異的モノクローナル抗体を用いる方法で、IMP型

酵素産生株の検出頻度が高い本邦では(13)有用である。表 2 に示すように各クラスの酵素特

異的阻害剤の併用によるカルバペネマーゼの鑑別法が考えられている。

<院内に微生物検査部門がない施設>

微生物検査部門がない医療施設で耐性菌スクリーニング検査が必要な場合は、微生物検査

を委託している衛生検査所に依頼する。ESBL や AmpC 産生菌、CRE/CPE の保菌調査が必

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要な場合は、委託先の衛生検査所に必要な検査の内容、検査に必要な費用などについて打ち

合わせる必要がある。

(3) 多剤耐性緑膿菌(MDRP)・多剤耐性アシネトバクター(MDRA)

Pseudomonas aeruginosa であれば 8 剤(アミノグリコシド、カルバペネム、抗緑膿菌活

性を有するセファロスポリン、フルオロキノロン、抗緑膿菌性ペニシリン+ベータラクタ

マーゼ阻害薬、モノバクタム、ホスホマイシン、ポリミキシン)の内 3 剤以上が耐性、

Acinetobacter species であれば 10 剤(アミノグリコシド、カルバペネム、フルオロキノロ

ン、抗緑膿菌性ペニシリン+ベータラクタマーゼ阻害薬、広域セファロスポリン、ST 合

剤、ペニシリン+ベータラクタマーゼ阻害薬、テトラサイクリン、ホスホマイシン、ポリ

ミキシン)の内 3 剤以上が耐性であれば MDR と判定され、世界的な基準として提唱され

た[6]。一方、感染症法の報告基準では、アミノグリコシド系薬(AMK [アミカシン])、カ

ルバペネム系薬(IPM/CS [イミペネム/シラスタチン]、MEPM)、フルオロキノロン系薬

(CPFX [シプロフロキサシン]、LVFX [レボフロキサシン])の異なる 3系統の抗菌薬いず

れにも耐性を示す菌株を MDRP、MDRAと判定することとなっており(表 3)、本邦では

この基準が用いられることが多い。MDRP、MDRAは世界各国で分離されているが、我が

国で分離されることは多くない。MDRAは、発展途上国や中国などにおいて分離頻度が高

い[37]。MDRP や MDRA用の選択培地も市販されているが、保菌調査に使用されることは

稀である。通常は、CPDX (セフポドキシム) などの第 3 世代セファロスポリン系薬を含有

する培地上に発育した菌株を対象に薬剤感受性検査実施して表 3 に示した基準で判定す

る。カルバペネム耐性株において、市中病院の微生物検査室におけるカルバペネマーゼ産

生能の確認は必須ではないが、疫学調査などの際には確認検査を考慮する。

<院内に微生物検査部門がない施設>

糞便や皮膚ぬぐいなどから緑膿菌やアシネトバクターが分離されても、感受性検査を実施

しない衛生検査所がある。ただし、検体が、MDRP あるいは MDRAの保菌検査を目的とし

て提出したことを検査依頼票に明記すると感受性検査が確実に実施される。

(4 ) バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)

糞便を対象とした VRE の保菌調査には VRE スクリーニング培地が用いられる。スクリ

ーニング対象のバンコマイシン耐性菌は、Enterococcus faecium および Enterococcus faecalis

であるが、VCM に自然耐性を示す Leuconostoc spp. や Lactobacillus spp. 、Enterococcus

gallinarum、Enerococcus casseliflavus、Enterococcus flavescens なども選択培地上に発育する。

VRE は、スクリーニング用選択培地に発育した菌株に対して菌種同定と感受性検査成績か

ら判定する。ただし、感染症法に基づく届け出基準は、VCM の MIC 値が >16mg/L の菌株

であり、菌種名と vanA、vanB、vanCなどの耐性遺伝子の特定は必要ない。なお、VCM (バ

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ンコマイシン)、TEIC (テイコプラニン)の薬剤感受性パターンから簡易的に推定できる[38]。

検査が可能であれば Verigene®や GeneXpert®等の病原体核酸検査により vanA、vanB などの

バンコマイシン耐性遺伝子の特定が可能である。

<院内に微生物検査部門がない施設>

衛生検査所に VREのスクリーニング検査を委託できる場合が多い。ただし、検体が、VRE

の保菌検査を目的として提出した旨を検査依頼票に明記すれば感受性検査は確実に実施さ

れる。

表 1. ESBL産生腸内細菌科細菌のスクリーニング検査および確認検査(CLSI, M100-S27)

菌種 ディスク拡散法 微量液体希釈法

スクリーニング検査 確認検査 スクリーニング

検査

確認検査

E.coli

Klebsiella pneumoniae

K. oxytoca

CPDX (10µg) ≤17mm

CAZ ≤22mm

AZT ≤27mm

CTX ≤27mm

CTRX ≤25mm

CAZ と CAZ/CVA、

CTXと CTX/CVAの

CVA併用ディスクと

単剤の阻止円径差が

5mm以上

CPDX ≥8 mg/L

CAZ ≥2 mg/L

AZT ≥2 mg/L

CTX ≥2 mg/L

CTRX ≥2 mg/L

CAZ と CAZ/CVA、

CTXと CTX/CVAの

CVA併用と単剤に

おける MIC差が

3 管 (8 倍) 以上

Proteus mirabilis CPDX ≤22mm

CAZ ≤22mm

CTX ≤27mm

同上 CPDX ≥2 mg/L

CAZ ≥2 mg/L

CTX ≥2 mg/L

同上

セフポドキシム (CPDX)、セフタジジム (CAZ)、アザクタム (AZT)、セフォタックス (CTX)、

セフトリアキソン(CTRX)、クラブラン酸 (CVA)

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表 2. カルバペネマーゼの種類と阻害薬

酵素名 GES KPC IMP VIM NDM OXA-48

及び亜型

主な確認

検査法

クラブラン酸 + +/- - - - +/-

3-アミノフェニル

ボロン酸

- + - - - -

メルカプト酢酸ナト

リウム(SMA)

- - + + +* - SMAディスクを

用いた Double

Disk Synergistic

Test (DDST)

エチレンジアミン四

酢酸 (EDTA)

- - + + + - EDTAを用いた

DDST, Etest

ジピコリン酸 - - + + + -

その他 イミペネム感性

~中等度耐性

アザクタム感性

アザクタ

ム感性

テモシリン

高度耐性

+: 阻害あり, -: 阻害なし

* 阻害効果が弱く、通常のディスク間距離では検出し難い

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表 3.感染症法に基づく MDRP、MDRAの判定基準

イミペネ

メロペネ

シプロフ

ロキサシ

レボフロ

キサシン

アミカシ

MDRP 微量液体希釈法 ≧8 mg/L

(16)

≧8 mg/L ≧4 mg/L

(4)

≧8 mg/L ≧64 mg/L

(32)

ディスク拡散法 ≦15mm

(13)

≦15mm ≦15mm

(15)

≦13mm ≦14mm

(14)

MDRA 微量液体希釈法 ≧8 mg/L

(16)

≧8 mg/L ≧4 mg/L

(4)

≧8 mg/L ≧64 mg/L

(32)

ディスク拡散法 ≦18mm

(13)

≦14mm ≦15mm

(15)

≦13mm ≦14mm

(14)

CLSI M100-S27 における R判定とされる基準値を示す。

()内は感染症法に基づく届け出における判定基準を示す。

CLSI は、シプロフロキサシン、レボフロキサシンの微量液体希釈法の判定について 1 管引き

下げること(それぞれ ≤0.5mg/L、≤1mg/L が感性、)を決定している。

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図 3.耐性菌スクリーニングのフロー

ESBL; extended spectrum beta-lactamase, MBL; metallo beta-lactamase, VRE; vancomycin-

resistant enterococci, MRSA; methicillin resistant Staphylococcus aureus, VRSA; Vancomycin-

resistant Staphylococcus aureus, MEPM; meropenem, CMZ; cefmetazole, LMOX; latamoxef,

AZT; azactam, PIPC/TAZ; piperacillin/tazobactum, CPFX; ciprofloxacin, AMK; amikacin, MDRP;

multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa, MDRA; multidrug-resistant Acinetobacter species,

CRE; carbapenem-resistant enterobacteriaceae

スクリーニング対象とする検体全例:便あるいは直腸スワブ、鼻腔(MDRA保菌の確率が高い→腋窩、鼠径部の皮膚ぬぐい)咳症状あり:喀痰あるいは咽頭尿道カテーテル留置:尿術創など:非開放膿拭い

ESBL/MBL選択培地 VRE選択培地 MRSA選択培地

S.aureusE.faecalisE.faecium

MEPM、CMZ、LMOX、AZT、PIPC/TAZ等の薬剤感受性パターン

遺伝子検査vanA、vanB検出

遺伝子検査

オキサシリンMIC:≧4μg/mlセフォキシチンMIC:≧8μg/ml

バンコマイシンMIC :≧16μg/ml

ブドウ糖非発酵菌

腸内細菌科細菌

24-48時間培養後、同定検査

バンコマイシンテイコプラニン耐性/感性

表現型パターン

バンコマイシンMIC :≧16μg/ml

MEPMCPFXAMK耐性(表3)

届け出行政検査

MRSA

届け出

VRSA

VRE

MDRPMDRA

薬剤感受性検査

・シカベータテスト・AmpC/ESBL鑑別Disk・カルバペネマーゼ鑑別Disk Plus・クイックチェイサーIMP®・(mCIM)

ESBL、AmpC、カルバペネマーゼ

産生菌

時に薬剤感受性試験の前あるいは同時に実施

判定不可

薬剤感受性検査でCREの基準*を満たす

届け出:CRE、MDRAは全数報告、MDRPは定点報告

無菌検体からの検出、あるいは起因菌と考えられる場合

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*感染症法に基づく届け出における CREの判定基準(1 か 2を満たす)

1. メロペネム MIC ≥2mg/L(拡散ディスク法では阻止円 22mm以下)

2. イミペネム MIC ≥2mg/L(拡散ディスク法では阻止円 22mm以下)+

セフメタゾール MIC ≥64mg/L(拡散ディスク法では阻止円 12mm以下)

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6. 濃厚曝露(アウトブレイク含む)が起きた場合の対応

(1) 濃厚曝露者と隔離について

アウトブレイクの定義は種々あるが、厚生労働省医政局地域医療計画課長通知(平成 26

年 12 月 19 日)[39]によると、院内感染のアウトブレイクとは、一定期間内に、同一病棟

や同一医療機関といった一定の場所で発生した院内感染の集積が通常よりも高い状態のこ

とであることとされる。同通知では、CRE、VRSA、MDRP、VRE及び MDRAの 5 種類の

多剤耐性菌については、保菌も含めて 1 例目の発見をもって、アウトブレイクに準じて厳

重な感染対策を実施すること、とされている。

便やその他の体液に CREや VREを保菌することにより、ほかの人に感染伝播させる可

能性がある。一度 CREや VRE が陽性となった症例は長期間保菌する可能性がある。CRE

や VREを獲得、感染伝播するリスクは、侵襲的処置、カテーテル留置、食事・排便・入

浴の介助が必要な患者で高い[40]。医療環境において疫学的リンクを有する患者(同室

者、感染対策が行われる前に CREや VRE を獲得した症例と医療従事者を共にした人)も

CRE や VRE獲得のリスクが高くなるとされる。

フランスにおけるガイドライン[15]や米国ワシントン州のガイドライン[41]は、入院時に

十分な感染対策が実施されていない場合で、同じ病棟に入院している、もしくは同じスタ

ッフによりケアを受けている患者を濃厚曝露者と定義し、CREや VREのスクリーニング

が推奨されている。フランスのガイドラインでは、少なくとも 2 例目が同定された時点

で、全ての保菌者は専用エリアに隔離され、専用スタッフによって医療を提供されること

を推奨している。

オランダのガイドライン[13]では、CREによるアウトブレイクは、同じ病棟で同じ期間

に複数の患者に同一の耐性菌が同定されたこと定義している。アウトブレイクが起きた場

合には、次の 3 つのコホートに分けてケアされることが推奨されている。①耐性菌が陽性

となったグループ、②スクリーニング検査を実施したが結果が未だ分かっていないグルー

プ、③入院前に過去の培養検査等で耐性菌が陰性であることが分かっている状況で入院し

てきたグループ。

米国 CDCによるガイドライン[17]では、CRE 陽性者ならびに CREを感染させる可能性の

ある患者は、個室に隔離し、個室に隔離しても、担当する看護師は専用スタッフとするべ

きであるとしている。アウトブレイク時など CREの患者が多い場合は、他の職種(呼吸器

療法士など)もケアを提供するスタッフの一員と考えるべきであることを推奨している。

個室の数が不足している場合は、失禁のある患者、医療機器が装着されている患者、コン

トロール不十分な創部がある患者を個室隔離の優先としている。

CRE・VREとは異なり、MDRA・MDRP については、濃厚曝露者と隔離についての記載

は限られており、主要なガイドラインにおいて曝露者の定義についての記載は明らかでな

かった。対策としては、米国感染管理疫学専門協会 (APIC)[42] や、日本環境感染学会[43]

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では、アウトブレイク時には専任スタッフによる該当患者のケアが推奨されている。また

ニュージーランド[44]では、多剤耐性グラム陰性桿菌が検出された患者の担当スタッフ数

は可能な限り少なくし、担当者については専門的な知識を持つことが推奨されている。

(2) 接触者調査

濃厚曝露やアウトブレイクが発生した時には、感染対策のために潜在的な保菌者を同定

するために、接触者調査が必要になる。

CRE・VREについてはオランダや米国のガイドラインが参考になる。オランダのガイド

ライン[13]は、平時には ICUで予期せぬ薬剤耐性菌が同定された時、アウトブレイク時に

は ICUでも非 ICUでも接触者調査が推奨されている。調査対象は、最初の培養陽性の検体

提出日以降、同じ病室でケアされているか、もしくは陽性患者と濃厚に接触しているすべ

ての患者が推奨されている。接触者の対象に既に退院している患者を含めるかどうかはケ

ースバイケースである。

米国のガイドライン[17]では、接触者の対象を、隔離前に陽性者と同室でケアされた患

者としている。通常接触者調査は、疫学的リンクに基づいて実施されるが、米国のガイド

ラインでは、PPS (有病率調査) を接触者調査の 1 つの手段として挙げている。これは、特

定の病棟/ユニット単位で、CREの有病率を迅速に評価するための効果的な方法であり、

通常は、その病棟/ユニットに存在している全ての患者に対して実施される。この手法

は、これまで気がつかなかった CRE保菌者が特定の病棟/ユニットに存在していることを

特定したり、アウトブレイク中の追加の感染例を迅速に評価する際に有用である。単一の

CRE 感染者で他へ感染拡大が起きていない状況では、有病率調査を行っても追加の感染者

を同定することは難しいことが指摘されている。このような状況では調査の準備を行って

いる間に、インデックスケースと同じ病棟にいた患者は退院もしくは他の病棟へ異動して

いる可能性が高い。初期の接触者調査中に、感染拡大を認めた場合は、接触者調査の対象

を拡大していく必要がある。米国のガイドラインでは、その他の手法として、アクティブ

サーベイランスをあげている。この手法は、疫学的リンクがない可能性がある患者を対象

に行う。対象は、一定の基準を設定し、施設に入院しているリスクの高い患者(高齢者、

長期療養型施設からの転院例、CRE流行地域での医療を受けてきた例、ICU入室者)とす

る。この手法は、より CREの有病率が高い地域、病院において有用であると考えられ、い

くつかの CREを含む多剤耐性菌対策に用いられているが、アクティブサーベイランスが

CRE 減少に寄与したかどうかの正確な情報はない。

MDRA・MDRP については、日本環境感染学会、WHO、欧州臨床微生物学会

(ESCMID)、ニュージーランドのガイドラインが参考になる。日本環境感染学会[43]では、

MDRAを含む MDROが検出された時点で、同室であった患者や同様のリスクを持つ同病

棟患者を対象にアクティブサーベイランスが推奨されている。WHO[45]のガイドラインで

は基本的に MDRAを含む MDRO保菌患者に関するアクティブサーベイランスは推奨して

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いないが、アウトブレイクなどの状況があれば有益かもしれないとしている。ESCMID[46]

のガイドラインでは、アウトブレイク時には地域における検出頻度や保菌リスクを考慮し

た上で入院患者に対するスクリーニングが強く推奨されている。ハイリスク要因としては

がん病棟や ICUへの入院、長期間の抗菌薬使用、長期入院、基礎疾患の存在、デバイス留

置、手術歴などが挙げられる。また医療従事者に対するスクリーニングも推奨されている

が、エビデンスレベルが低く、対象の細かい定義の記載は認めていない。ニュージーラン

ドのガイドライン[44]ではアウトブレイク時には、潜在的な曝露のリスクのある同室患者

対象にスクリーニングが推奨されている。

(3) アウトブレイク後のスクリーニング検査方法

CRE・VREについて、フランスのガイドライン[15]は、保菌者が別の病棟や別の病院へ

転棟・転院する場合、病院の管理下のもとで毎週スクリーニング検査を実施されることを

推奨している。病院に残っている場合は、直腸スワブによる便検査が 3 回陰性になるまで

感染対策を継続されることが推奨されている。オランダのガイドライン[13]は、アウトブ

レイク時には週に 1-2 回のスクリーニング検査(アクティブサーベイランス)が推奨され

ている。さらに CREや VREは環境がリザーバーになりうるため[41]、リザーバー特定の

ための環境検査が推奨されている。一方で、事前に明らかに肯定的な結果が得られること

が分かっている場合を除き、医療スタッフ間におけるスクリーニング検査は推奨していな

い。

MDRAについては、日本環境感染学会[43]では、MDRAを含む MDROのスクリーニン

グ検査として、気管内チューブ吸引物、喀痰、カテーテル尿、創部、皮膚からの検体採取

が推奨されている。ESCMID[46]のガイドラインでは、検体採取部位としては便に加えカテ

ーテル挿入部位や創部などのバリア破綻部位が推奨されている。本ガイドラインでは、ア

ウトブレイク時の医療従事者へのスクリーニング検査は、症例群との関連が強そうな場合

に限り推奨されている。

(4) 本邦における対応

本邦においても資源に限りはあるが、これらの耐性菌によるアウトブレイクが起きたと

きは、陽性者は専用エリアへの隔離、専用スタッフによる医療の提供が望ましいと考え

る。少なくとも陽性者の専用エリアへの隔離は実施する。その際に、可能な医療資源と、

個々の患者の感染拡大のリスクを考えて対応する。

最初の培養陽性の検体提出日以降、陽性者と同じ病室でケアされている、もしくは陽性

患者と濃厚に接触している患者を濃厚接触者と考え、接触者調査が推奨される。

複数例の陽性者を認めた場合、接触者調査の対象を広げていくことの検討が必要であ

る。その場合、同病棟や、陽性者と同一の医療従事者を介した患者などを対象としたアク

ティブサーベイランスや有病率調査の検討が考えられる。医療従事者の調査は、行う事に

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よって事前に有益な情報が得られると強く想定される場合を除き、現時点でエビデンスは

乏しい。

CRE・VREについては直腸スワブを含む(その他の、これらの耐性菌が検出された検体

における)、MDRA・MDRP については、気管内チューブ吸引物、喀痰、カテーテル尿な

ど(その他の、これらの耐性菌が検出された検体における)からの定期的な検体採取が推

奨される。

アウトブレイク後のスクリーニング検査は、アウトブレイク終息まで継続されることが

望ましい。アウトブレイク対応には、患者の隔離、接触者調査、一般市民への広報等多く

の要素が含まれるため、オランダのガイドライン[13]にも記載されているように、行うべ

き対応の意志決定のためには、感染症専門医、感染管理専門看護師、細菌検査技師、薬剤

師、病棟責任者、病棟スタッフ、病院幹部等からなる複数の専門分野のチームが編成され

ることが推奨される。

(5) 保健所への連絡と感染症法に基づく届け出

CRE、VRE、MDRA、MDRP いずれも 2018 年 11 月時点で、感染症法[7]に基づく 5類全

数疾患である。届出基準に従い、診断した医師は、7 日間以内に最寄りの保健所へ届け出

る義務がある。保菌者については届出対象ではないが、感染対策上、情報共有は重要であ

るので、必要に応じて保健所へ連絡を行う。

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7. 略語一覧(以下に記載以外のものは、本文中に記載)

AMR (antimicrobial resistance): 薬剤耐性

MDR (multidrug-resistant): 多剤耐性

CPE (carbapenemase-producing Enterobacteriaceae): カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌

CRE (carbapenem-resistant Enterobacteriaceae): カルバペネム耐性腸内細菌科細菌

ESBL (extended-spectrum beta-lactamase): 基質特異性拡張型ベータラクタマーゼ

MBL (metallo-beta-lactamase): メタロ-ベータラクタマーゼ

MDRA (multidrug-resistant Acinetobacter species): 多剤耐性アシネトバクター

MDRP (multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa): 多剤耐性緑膿菌

MRSA (methicillin-resistant Staphylococcus aureus): メチシリン耐性黄色ブドウ球菌

VRE (vancomycin-resistant Enterococci): バンコマイシン耐性腸球菌

VRSA (vancomycin-resistant Staphylococcus aureus): バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌

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医療機関における海外からの高度耐性菌の持ち込み対策に関するガイダンス

平成 31 年 2 月 12 日作成

<作成メンバー>

早川佳代子 1,2,守山祐樹 1, 井手聡 1,齋藤翔 1,2, 石金正裕 1,2, 山元佳 1, 忽那賢志 1, 杦木 優子

3, 目崎和久 4, 鈴木久美子 2, 土井朝子 5,石井良和 6, 吉村幸浩 7, 大曲貴夫 1,2

1. 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国際感染症センター 総合感染症科

2. 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国際感染症センター AMR臨床リフ

ァレンスセンター

3. 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 院内感染管理室・看護部

4. 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 検査部・細菌検査室

5. 神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科・総合診療科

6. 東邦大学医学部 微生物・感染症学講座

7. 横浜市立市民病院 感染症科