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在宅人工呼吸器装着の難病患者を
対象とした災害避難訓練を実施して
南部総合県民局保健福祉環境部阿南保健所 健康増進担当
徳島県災害看護研修会資料4
令和元年度11月24日
ALS患者数(再掲)うち人工呼吸器患者
(再掲)うち在宅人工呼吸器患者
県 計 72 39 18
徳島県における人工呼吸器を装着した在宅難病患者の状況(H31.3月末現在)
対象ケース概要(A氏)
訓練目的
災害発生時に、在宅人工呼吸器装着患者の避難支援について、地域住民や行政、防災・医療・福祉関係機関等で検証を行い、関係者の役割や地域住民との連携体制の確認及び強化を図る。
50代 ALS(筋萎縮性側索硬化症)四肢機能全敗し拘縮を認める。気管切開され終日人工呼吸器管理自宅は土砂災害特別警戒区域。
1.訓練地区の概要2.事前準備
(訓練の協力依頼、避難のための各種資料の作成、プレ訓練、参加者の勉強会)
3.訓練の様子4.訓練振り返り5.今後の課題
本日の内容
今年度の訓練を中心に報告します!
1.訓練地区の概要
平成16年 那賀町(旧木沢村・上那賀町)における大規模土砂災害
平成26年 那賀町・阿南市における那賀川氾濫による大規模水害
那賀川流域における大規模災害発生の状況
2.事前準備・訓練の協力依頼・避難のための各種資料の作成・プレ訓練・参加者の勉強会
・A氏と家族へ訓練の同意をとることから開始・・・・訓練の必要性を理解されない父親へ説明と説得「家に居る方が安全!避難は必要ない!」
事前準備(1年目)
・地域住民への協力依頼(民生委員・自主防災組織等)・・・・病気のことにどこまで触れてよいのか分からず、躊躇「娘さんが難しい病気で在宅療養していることは知っているけど聞いたら悪いと思い、普段の生活状況はわからない。」
担当保健師が何度も地域へ足を運び両者へ必要性を説明
担当保健師が何度も地域へ足を運び両者へ必要性を説明
訓練内容
訓練想定
前日の大雨により、県内でも土砂崩れや停電が発生。自治体から避難指示発令。患者宅においても停電継続し、土砂崩れのおそれあり。
・ヘルパーが安否確認のため自宅訪問し、地域住民の協力を得て家族とともに避難準備し避難開始(訪問看護も合流)
・自宅下まで車椅子にて避難し、リフトカーで高台の避難所(公民館)へ移送
・避難先で療養環境整備し、地域の診療所医師による往診を受ける
訓練参加メンバー・本人,家族・地域住民(民生委員,自主防災会長等)・主治医(専門医)・訪問看護ステーション:看護師・公民館:館長,職員・地元診療所:所長(医師)・ヘルパー事業所:ヘルパー・医療機器(人工呼吸器)取扱事業者・在宅介護支援センター:ケアマネ・社会福祉協議会災害ボランティアセンター職員・地域包括支援センター:看護師・消防,保健センター,保健所職員 31名
※下線ありの人は、訓練のプレイヤー
①停電が続いているため,訪問看護師が訪問にて安否確認
②一時避難を決定③総代等へ避難の応援を要請④避難準備⑤車いすで一時避難所であるコミュニティセンターへ避難
①ヘルパーが自宅を訪問すると自宅が停電していた
②一時避難を決定③総代,訪問看護ステーション等へ避難の応援を要請
④避難準備⑤車いすで坂道を下りる⑥リフトカーを利用し公民館へ避難⑦療養環境の整備⑧地域の診療所の医師による往診
訓練内容の比較
平成30年度 令和元年度
2年目は
バージョンアップ
避難手順書を作成内容・人工呼吸器の確認手順・支援者の連絡先・避難用持ち出しセットの一覧,物品写真
・ベッドから車いすへの移乗方法・発電機の操作方法・車いすへの物品の載せ方・スロープの準備・避難場所
プレ訓練の様子
訓練2日前
訓練の流れ・人工呼吸器の取扱確認勉強会14:00~15:00
医療機器取り扱い業者の担当者より人工呼吸器の取扱について説明
事前勉強会の様子
訓練当日
主治医による勉強会
3.訓練の様子
対象者宅へ移動し(R元年度)訓練開始15:10~
ヘルパーが自宅を訪問本人,父の安否確認
土砂崩れの危険性あり避難を決定父:総代へ,ヘルパー:訪問看護へ避難の応援を要請
父から連絡を受けた総代は,自主防災会長へ連絡
避難手順書をもとに,人工呼吸器が正常に作動しているか確認
訓練当日
① 地区総代,民生委員,自主防災会が到着
発電機を作動(自主防:住民)
ベッドから車いすへ移乗
布タンカ操作手順
② 避難に向けて準備
玄関前へスロープの設置 訪問看護師が到着本人の状態を確認
③ 屋外へ移動
玄関スロープから外へ出る 車いすにロープを結ぶ
車椅子の急降下を避けるため、上方からロープで引っ張り車椅子の操作者の負担を軽減目的
④ 坂道を下りる
父が車いすを引き,自主防災会会長がロープを引く
支援者が両側で支える
安全のためヘルメットを装着
坂の上方からロープで引っ張り車椅子の重みを軽減
自宅までの急な坂道(自宅の位置は道沿いの民家の2階よりも高い)
⑤ 介護タクシー(リフトカー)へ乗車
⑥ 公民館(避難所)へ到着
畳の上を車いすで移動するため,ブルーシートを準備
玄関スロープから公民館内へ
避難場所である和室では・・・先に到着した参加者が段ボールベッド,仕切りを組立
⑦ 公民館和室へ入室
段ボールベッドへ移乗
⑧ 療養環境の整備
ダンボールベッド
発電機(公民館所有)
ざぶとん,災害時エアマット,
子供用マットレス,毛布,タオルを使用し,傾斜をつける
発電機を作動させ,バッテリー充電の
準備
⑨ 地元診療所医師の往診
聴診・一般状態観察バイタルサイン測定
⑩ 訓練終了(開始から約1時間)
水分補給(お茶) 本人の感想
文字盤にて「ベッドが硬い」
⑪ 振り返り 16:17~
参加者より感想を発表 その頃,本人は自宅へ
4.訓練振り返り
参加者の意見(抜粋)
・1年目よりも,避難準備がスムーズに行え,戸外への移動や坂道の下り方などスピードアップした。繰り返しの訓練が大切。
・人工呼吸器の電源確保は最優先である。
・災害時に経路遮断され地域が孤立する可能性が高いため3日間は地域の自助共助で頑張る必要がある。
・今後も地域の横のつながりを更に強化したい。
・発災時の福祉車両の確保が必要。
参加者の意見(抜粋)
・地域にはいろんな分野に強い人がいる。電気に強い人など,いろんな道具についてのキーマンがいる。そのような人材を平時から地域で明確にしておき,いざというときに地域で役割分担できたらよい。
・避難生活では患者も地域の人もお互いが気を遣うため,平時から地域で知っておいてもらうことが必要。
・次回は,避難時の療養スペースの確認もして,3日間の療養環境づくりを考えてみるのも一案。
・旅行用のマット等の持参物を持って避難すれば「硬いベッド」への対応も可能 等
①関係者と地域住民との「顔の見える関係づくり」の機会となった。
②患者本人・家族と地域住民とのつながりが深まった。③地域防災力が強化された。④関係者や地域住民の災害に対する意識や技術の向上につながった。
⑤本人からも貴重な意見が聞かれた。
訓練の成果~2回の訓練を通して~
⑥看護・福祉・医療・消防・行政・医療機器業者等、多機関の参加により多角的な視点で意見交換ができた。(振り返りの際に)
⑦関係者相互の協力体制について、協議できる場となった。⑧災害時、その場に居合わせた誰もが対応できるよう発電機の使用方法や避難用持ち出しセットについて,写真(画像)で提示する等アクションカードを作成した。
訓練の成果~2回の訓練を通して~
5.今後の課題
今後の課題
①避難のタイミングと判断の検討②避難用福祉車両の確保③快適な療養環境づくり④更なる地域住民の理解促進⑤受け入れ病院の確保(難病拠点病院等、受入可能病院の検討)
⑥災害時個別支援計画(在宅療養支援計画)の検討⑦他の重症難病患者に対する訓練の応用
ご静聴ありがとうございました