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東日本大震災における 地域連携に関する事例収集について 1 平成25年3月14日(木) 東北発コンパクトシティプロジェクトチーム事務局 資料-2

東日本大震災における 地域連携に関する事例収集について...1.事例収集の目的 背景: 東北発コンパクトシティの考え方は、平時だ けでなく、災害時にも有効に機能することが

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  • 東日本大震災における地域連携に関する事例収集について

    1

    平成25年3月14日(木)

    東北発コンパクトシティプロジェクトチーム事務局

    資料-2

  • 1.事例収集の目的

    背景:

    東北発コンパクトシティの考え方は、平時だけでなく、災害時にも有効に機能することが想定される。

    【基本方針】

    ①個々の都市におけるコンパクトなまちづくり

    ②都市と農山漁村地域の連携

    ③近隣市町村間の連携

    目的:東北発コンパクトシティの趣旨に沿った、平時の都市と農山漁村地域間及び近隣市町村間の連携を踏まえ、東日本大震災時における地域間連携による災害時の支援について事例収集。

    2

    東北発コンパクシティの趣旨に沿った平時の連携が、災害支援の面で有効であったかどうか。

    有効であれば、「東北発コンパクシティ」の更なる普及へ

  • 活用した調査媒体

    3

    媒体 確認した新聞 確認方法資料 新聞 河北新報:H23.3.12~H24.3.31 ・図書館等で新聞閲覧

    石巻河北:H23.3.14~H24.3.31

    三陸新報:H23.8.2~H24.3.31

    岩手日報:H23.3.12~H24.3.31 ・岩手県立図書館HPに掲載された震災関連記

    事見出しを確認し、関連記事を図書館で閲覧 岩手日日:H23.3.12~H24.3.31

    盛岡タイムス:H23.3.12~H24.3.31

    東海新報:H23.3.12~H24.3.31

    復興釜石新聞:H23.6~H24.11 ・FM 岩手釜石支局HPで紹介されている記事内

    容を閲覧

    福島日報:H23.3.12~H24.3.31 ・福島日報HPにて、記事内容を閲覧

    ① 新聞

    ② 主な書籍・雑誌

    ③ ホームページ

    媒体 主な書籍・雑誌名 書籍

    雑誌

    ・「東日本大震災クロニカル H23.3.11~H23.5.11」 社会と基盤研究会

    ・「自治体情報誌データファイル H23.3.下~H23.5.下」 イマジン出版

    ・「東日本大震災 宮城県の 6 か月間の災害対応とその検証」 宮城県

    ・「その時私は・・」 吉浜地区公民館

    ・「東日本大震災津波 岩手県防災危機管理監の 150 日」 越野修三 ぎょうせい

    ・「闘う東北」 朝日新聞東日本大震災取材班

    ・「再び、立ち上がる」 河北新報社編集局

    ・「大槌町震災からの 365 日」 東野真和 岩波書店

    ・「原発と自治体」 金井利之 岩波ブックレット

    ・「早く的確な救援のために」 中村民雄 早稲田大学ブックレット

    ・「地方自治体は重い負担に耐えられるか」 小林麻里 早稲田大学ブックレット

    ・「大規模災害に強い自治体間連携」 稲継裕昭 早稲田大学ブックレット

    ・「東日本大震災の復興 自治体・企業・労組の支援実例集」(財)くらしのリサーチセンター

    ・「減災と市民ネットワーク」 三舩康道 学芸出版社

    ・「震災日誌 in 仙台」 松舘忠樹 笹氣出版

    ・「人を助けるすんごい仕組み」 西條剛央 ダイヤモンド社

    ・「希望の地図」 重松清 幻冬舎

    ・「大震災とコミュニティ」 山崎丈夫 自治体研究

    媒体 確認した主なHP HP ・復興庁、総務省、全国市長会

    ・市町村HP ・その他(NPO等) 等

    2.新聞・HP等による事例収集

  • ・被災経験のある自治体よる職員派遣、物資支援例:新潟県(3/12)・神戸市から仙台市へ

    ・日本海側の県・自治体からの物資・支援例:秋田県、能代市、湯沢市氏等が岩

    手県、気仙沼市等へ

    ・周辺自治体(内陸)から沿岸部へ支援例:遠野市の後方支援

    住田町(大船渡市等)北上市(陸前高田等)登米市・栗原市(南三陸等) 等

    ・日本海側の自治体及び広域からの避難者受け入れ例:青森県、新潟県、関西連合など

    ・住民組織、民間の被災地支援例:いわて生協が被災地へ食糧支援

    ・被災地に隣接する自治体等での避難者・仮設住宅敷地の受け入れ例:登米市、栗原市、角田市、丸森町、紫波町、盛岡市、福島市等

    ・被災地に隣接する自治体から被災地への職員派遣例:栗原市(南三陸町)、登米市(南三

    陸町)、盛岡市(釜石市)、一関市(陸前高田市) 等

    ・医療サービスの連携例:人工透析患者への対応(北海道)

    気仙沼市、七ヶ浜町等の無料バス相馬郡医師会が南相馬共同診療所

    ・被災地と避難所を結ぶ移動手段提供例:北上市、花巻市 等

    ・被災地での復興市の開催例:多賀城市、南三陸町

    ・住民組織、民間の被災地支援活発化例:釜石市の町内会が避難所運営を支

    援、宮古市内陸の住民が避難所食料支援

    ・連携調整・拡充例:一関市・藤沢町・平泉町が宮城県

    気仙沼市を後方支援栗原市・登米市・兵庫県内4市町と南三陸町・女川町への災害応援協定

    ・独自の仮設住宅建設例:住田町が町単独で木造仮設住宅

    建設、陸前高田市被災者の受け入れへ

    ・住民組織による復旧の動き例:気仙沼市で復興協会設立

    大槌町(避難所自主組織結成)

    ・被災地での復興市の開催例:雄勝、牡鹿 等

    4

    ※主に内陸や広域(遠方)の自治体による被災地への支援

    発災1ケ月後以降(主に4月、5月、6月)

    ※被災地では復旧・復興の胎動(建築制限、復興計画検討の始動 等)

    ※沿岸部の被災地に隣接する県や市町村による支援が本格化

    ・連携強化例:相馬市が小田原市と災害協定(9月)

    観光連携強化(平泉町、気仙沼市、陸前高田市)(10月)

    大崎市が県外と災害協定(11月)東松島市と東根市友好都市(12月)

    7月以降

    発災1週間以内 発災1ケ月以内

    新聞・HP等による事例収集概要

  • 3.自治体アンケートの実施

    実施の目的:自治体のまちづくりの担当課を通じて、震災時の支援内容の確認とともに、平時の連携有無、連携内容について確認する。

    実施の背景:新聞・HPで確認できた震災時の連携は、人道支援の取り組みが大半(ボランティア等)東北発コンパクシティの趣旨に沿った、震災前の平時のまちづくりに関した連携を含む活動は把握しきれない。

    対象者:岩手・宮城・福島の3県に属する東北発コンパクトシティ推進研究会の対象自治体(3万人以上)及び沿岸部の3万人以下の自治体計54自治体へメールで配信

    5

    実施内容:内陸部の自治体(沿岸部の被災地域に対する連携・支援内容)

    ・支援内容、支援主体、支援時期、支援先、震災前の連携有無 等

    沿岸部の自治体(自治体内での連携・支援内容)・支援内容、支援主体、支援時期、震災前の連携有

    無 等

    <記入欄>

    支援内容区分(該当する支援内容について、下記の①~⑩から選び、□欄をチェックしてください。)

    ①食料、飲料、生活用品提供支援 ②避難所に関わる支援 ③救援物資の仕分け、搬送等に関わる支援

    ④仮設住宅に関わる支援 ⑤ボランティア受け入れ等に関わる支援 ⑥復興市の開催等に関わる支援

    ⑦移動手段に関わる支援 ⑧医療、心療に関わる支援 ⑨募金活動等の支援

    ⑩その他

    支援を実施した主体(該当する項目を選び、□欄をチェックしてください。)

    自治体 住民組織 NPO その他(具体的に記入してください:                            )

    支援を開始した時期(該当する項目を選び、□欄をチェックしてください。)

    震災1週間以内 震災1か月以内 震災3ヶ月以内 震災3ヶ月以降

    支援内容(具体的に記入して下さい。)

    震災前の平時においても、この地区間(組織間)は連携の関係がありましたか(□欄をチェックしてください)

    震災前からあった 震災前はなかった わからない

    「震災前から平時の連携があった」と回答した場合、その連携とは具体的にどのような内容ですか(下欄に記入してください。)

    ※複数の事例を記入いただく場合には、本用紙をコピーして記載いただきますようお願いいたします。

    差支えのない範囲でご記入ください。

    自治体名 部署名

    記入者氏名 電話番号

    ご協力ありがとうございました。

    ◆宮古市内陸部の川井地区、新里地区住民が交代で市内避難所へおにぎり、支援物資を送る。(H23.3.27岩手日報)

    ◆岩泉町、田野畑村では、内陸の住民が、津波被災地域からの避難者に対して要望を聞き、サポート。(H23.3.19河北新報)

    東日本大震災における地域連携に関する事例収集(自治体の中での連携・支援)

    新聞報道によると、自治体内の連携・支援(助け合い)として、以下のような事例がありました。

    <新聞報道による自治体内での連携・支援>

    ◆女川町の復興連絡協議会が、県内外農協や卸売市場等の支援を受け、おながわ復幸市を開催。(H23.5.3石巻河北)

    調査票(沿岸部の自治体向け)

  • 自治体アンケートの結果

    ・計33自治体から回収(内陸17、沿岸16)

    【傾向】(内陸部の自治体)・自治体による支援が多く、震災前の連携は少ない。(沿岸部の自治体)・住民組織による支援が多く、震災前の連携があるものが多い。

    6

    10

    11

    3

    3

    8

    9

    8

    1

    3

    1

    7

    0 2 4 6 8 10 12

    職員派遣

    救援物資

    中継基地

    医療救護班

    避難所

    被災住民受入

    仮設住宅

    ボランティア

    移動手段

    募金活動

    その他

    支援内容(内陸) 単位:自治体数

    5

    13

    2

    0 2 4 6 8 10 12 14

    震災前からあり

    震災前は無し

    わからず

    平時の連携関係(内陸) 単位:自治体数

    16

    4

    2

    3

    0 5 10 15 20

    自治体

    住民組織

    NPO

    その他

    支援主体(内陸) 単位:自治体数

    14

    12

    8

    6

    7

    5

    5

    3

    1

    4

    0 2 4 6 8 10 12 14 16

    食料・生活用品

    避難所

    救援物資の仕分け・搬送

    仮設住宅

    ボランティア

    復興市

    移動手段

    医療・診療

    募金活動

    その他

    支援内容(沿岸) 単位:自治体数

    10

    9

    5

    0 2 4 6 8 10 12

    震災前からあり

    震災前は無し

    わからず

    平時の連携関係(沿岸) 単位:自治体数

    9

    12

    1

    5

    0 2 4 6 8 10 12 14

    自治体

    住民組織

    NPO

    その他

    支援主体(沿岸) 単位:自治体数

    内陸部の自治体 沿岸部の自治体

    発送数 回収数 回収率

    内陸 27 17 63%

    岩手県 10 7 70%

    宮城県 7 4 57%

    福島県 10 6 60%

    沿岸 27 16 59%

    岩手県 10 7 70%

    宮城県 14 6 43%

    福島県 3 3 100%

    合計 54 33 61%

    岩手県 20 14 70%

    宮城県 21 10 48%

    福島県 13 9 69%

    表 発送・回収部数

    注:一つの自治体から複数の事例が挙がった場合、それぞれの回答をカウントしているため、回答数の合計とアンケート対象市町村数は合致しない。(但し、一つの自治体から、“支援主体が自治体”の回答が複数あった場合には、当該自治体の“支援主体が自治体”は1とカウント。)

  • 7

    内陸部自治体の主な支援内容震災前の連携関係は、「姉妹都市」、「災害協定」によるものが多い。

    大槌町、釜石市 ○ ○ ○ ○

    当市への避難者 ○ ○ ○・市内避難者、高速バス・新花巻駅利用者、高齢者・退院直後の方を避難所を開設して受入

    ○ ○ ○・岩手県が借りた物件、雇用促進住宅、市営住宅、民間会社の社員寮を仮設住宅として提供

    釜石市、大槌町、陸前高田市ほか

    ○ ○ ○・ボランティア受け付け、調整、ボランティア移動用にバス運行、ボランティアへの施設提供

    ○ ○ ○・市内宿泊施設と沿岸被災地(釜石・大槌・陸前高田市方面)を結ぶ無料送迎バス(タクシー)の運行

    ○ ○ ○ ・日赤用窓口、職員で奇跡の一本松保存募金活動釜石市 ○ ○ ○ ・岩手県、釜石市などの要請で、仮設住宅の受入

    ○ 八幡平市 総務課

    陸前高田市、宮古市、大槌町、山田町、大船渡市、釜石市、相馬市

    ○ ○ ○・市から、宮古市、相馬市へ物資提供・市民等からの提供物資を、陸前高田市、大船渡市、釜石市、大槌町、山田町に提供

    ○ ・宮古市と姉妹都市

    都市計画課釜石市、大船渡市、大槌町

    ○ ○ ○

    ・釜石市:給与支払、共済事務、臨時職員任用事務・大船渡市:土木事務、防災集団移転事業、埋蔵文化財発掘・大槌町:上下水道事務、防災集団移転事業、区画整理事務

    ・釜石市、大船渡市とは、北東北地域連携軸構想推進局議会を組織し、人事交流を行っていた

    被災者支援室

    大船渡市、大槌町

    ○ ○ ○ ・当該自治体仮設住宅団地に支援員を配置し見守り ○

    大槌町、宮古市、釜石市、大船渡市、山田町、陸前高田市、遠野市

    ○ ○ ○ ○ ○ ○ ・各種ボランティア活動 ○

    防災危機管理課

    職員等派遣

    物資提供

    中継基地

    医療救護

    避難場所

    被災住民受入

    その他

    自治体

    アンケー

    ト回収状況

    ○ 花巻市

    自治体名 記入部署 支援先

    支援区分 実施主体 支援開始時期

    移動手段

    募金活動

    ○ 北上市

    仮設住宅

    ボランテ

    ィア受入

    ・大規模災害時における岩手県市町村相互応援に関する協定・岩手県防災ヘリコプター応援協定・災害時における相互援助に関する協定(釜石市)・消防相互応援に関する協定

    ヶ月以内

    ヶ月以内

    ヶ月以降

    った

    なか

    った

    平時の連携内容

    支援内容

    平時の連携関係

    わからない

    住民組織

    NPO

    その他

    1週間以内

  • 8

    沿岸部の自治体内での主な支援内容 平時における住民連携が、支援につながった事例がある。

    ○ 田野畑村 復興対策課 ○ ○ ○ ○

    ・避難所の暖房器具が不足していたが、 防災行政無線で放送し、内陸の家庭からすぐに確保することができた。・発災日から数日は、避難所の近隣の女性部(婦人会)の方や女性個人の方が、炊き出しに参加した。・停電が長引く様子から、村内の建設業者に依頼し、大型発電機や仮設トイレを避難所に設置いただいた。・内陸部の自治会に「おにぎり」作りをお願いし、避難所まで届けていただいた。(過剰供給にならないよう、支援が可能な自治会に、曜日と個数を決めて依頼。)

    ○・地域には、困っている人を助け、支え合いながら暮らしていく 『結いの精神』 が息づいている。

    ○ 岩泉町 復興課 ○ ○ ○ ○ ○ ○

    ・旧町村単位で町内6地区に結成されている自主防災組織の相互協力として、交代で被災者支援(避難所での炊き出し)を実施・旧町村単位6地区で結成されている地域振興協議会(自治組織)が復興支援(物販イベント等開催)

    ○・地域自治組織の相互協力(地域振興協議会活動、自主防災協議会の防災訓練研修)

    ○ 山田町 総務課 ○ ○ ○・自治会等の素早い協力で食料の安定的な供給ができた。最初の炊出しは、震災当日の午後8時25分に避難所に届いた。

    ○・山田町総合防災訓練において、農村部の自治会を中心に炊出し訓練を毎年実施

    ○ 石巻市河南総合支所地域振興課

    ○ ○ ○

    ・内陸部である河南地区住民(自主防災会の方々が中心)が、数週間にわたり避難者に対して炊き出しの提供を行った。中でも、広渕地区へは、地区内の5つの行政区毎の自主防災会などのメンバーが交代で炊き出しを行った。・また、河南地区では消防団による給水車巡回による水の配給を行っていたが、ほかにも地域住民宅で飲み水に使える井戸を持っているお宅から地元住民も含め多くの方が水を頂戴した。

    ・河南地区(うち特に広渕地区)は、平成15年に発生した宮城県北部連続地震の経験を踏まえ、平成17年から行政区毎に順次、自主防災会を組織し、毎年、安否確認と炊き出しの訓練を行っているほか、消防署からのAED使用法の指導を受けたり、初期消火訓練などを実施していた。

    久之浜・大久支所 ○ ○ ○ ○ ○ ○

    ・石川町のボランティア有志がおにぎり炊き出し・石川町社会福祉協議会の災害ボランティアによるガレキ片付け、海岸清掃、草刈などの支援・石川町古内の桜まつり、石川町産業交流祭、石川町中谷地区収穫祭、さらに久之浜第一小学校の農業体験などを通じての交流・久之浜諏訪神社例大祭開催にあたり、石川町の皆さんが御神輿の担ぎ手として参加し祭り開催を維持

    ○・海と山の交流(久之浜・大久地区と石川町)・石川町古内の桜まつり、海竜の里・久之浜漁港まつり等を通じての相互交流

    消費生活センター ○ ○ ○・震災後は、本市に住民登録のある方々はもとより、他自治体に住民登録があっても本市に居住している方々の消費生活相談は受付・処理を行っている。

    いわき市

    なか

    った

    平時の連携関係

    ヶ月以内

    ヶ月以内

    ヶ月以降

    った

    わからない 平時の連携内容

    その他

    ボランテ

    ィア受入

    復興市等

    支援開始時期

    支援内容

    1週間以内

    アンケー

    ト回収状況

    自治体名 記入部署

    支援区分 実施主体

    食料・飲料等

    避難所

    救援物資

    仮設住宅

    移動手段

    医療・心療

    募金活動

    その他

    自治体

    住民組織

    NPO

  • 4.東北発コンパクトシティの観点からの整理

    (1)方針1:個々の都市におけるコンパクトなまちづくり ⇒同じ地区に住む共同体意識による連携

    ・新聞・書籍・HP及びアンケートにより収集した取組を、東北発コンパクシティの観点から整理を行った。・まちづくりの「空間」「ハード」の面のみならず、地域の「連携」「運営」のソフト面を重視し整理を行った。

    住民連携による自主防災①

    市町村

    岩手県岩泉町(主体)

    住民による連携

    内容

    ・旧町村単位(6地区)で結成される自主防災組織が、交代で、避難所での炊き出しを実施。

    ・旧町村単位で結成される地域振興協議会が物販イベント等を開催。

    震災前の関係

    ・旧町村単位の自治組織が地域振興協議会活動や自主防災組織の防災訓練研修などで相互協力する関係があった。

    市町村

    岩手県大槌町(主体)

    住民による連携

    内容

    ・吉里吉里地区住民の避難所では住民自治による災害対策本部が立ち上がり、支援食糧分配など集落ぐるみの自助体制が作られた。

    震災前の関係

    ・昭和8年三陸大津波での被災を教訓に、吉里吉里地区では三陸大津波で被災しなかった地区に中心部を形成していた。

    (集落内の結束が強かったものと想定される)

    住民連携による自主防災②

    結の精神(住民の絆)による連携

    市町村

    岩手県田野畑村(主体)

    住民と自治体

    内容

    ・発災の夜、村が防災無線により、内陸住民に避難者用のストーブ提供を呼びかけ、直ぐに確保。

    ・避難所近隣の女性(婦人会や個人)が、炊き出しに参加。

    ・内陸部自治会がおにぎりを避難所に配達。(自治体が、各自治会に配達曜日と個数を依頼)

    震災前の関係

    ・当地域では、困っている人を助け、支えながら暮らす「結の精神」が息づいている

    交流施設を活かした連携

    市町村

    宮城県気仙沼市(主体)

    住民と施設管理者

    内容

    ・本吉地区ではH23.4.29に道の駅「大谷海岸」農林水産物直売センターを仮設で再開し、地元農家の持ち込みによる農産品の販売、生活用品の販売、雇用の場の確保により地域復旧を目指す。

    震災前の関係

    ・道の駅「大谷海岸」は、観光客と地元住民の交流拠点として機能していた。

    9

  • (2)方針2:都市と農山漁村地域の連携 ⇒沿岸部と農山村間(内陸)の連携

    市町村

    宮城県石巻市(河南)(主体)

    住民連携

    内容

    ・内陸部の河南地区住民(自主防災組織中心)が、数週間にわたり避難者に対する炊き出しを実施。

    ・河南地区では消防団による給水車巡回による水の配給、井戸を持つ地域住民が地元住民に水を提供。

    震災前の関係

    ・H15宮城県北地震の経験から、行政区毎に自主防災会を組織し、毎年、安否確認と炊き出しの訓練を実施。

    市町村

    岩手県山田町(主体)

    住民連携

    内容

    ・災害時の孤立を前提に備蓄を進めてきたが、特に食料は十分でなかったが、内陸農村部の自治会の素早い協力により、震災日の午後8時25分には避難所に炊き出しが届いた。

    震災前の関係

    ・町の総合防災訓練において農村部の自治会を中心に炊き出し訓練を実施。

    内陸と沿岸の自主防災②

    内陸と沿岸の自主防災①

    海と山の交流

    市町村

    福島県いわき市(久之浜・大久地域)

    (主体)住民連携

    内容

    ・内陸部の石川町では、沿岸部に対し住民有志による炊き出し、石川町社会福祉協議会の災害ボランティアによるガレキ片付け、海岸清掃、草刈などを支援。

    ・沿岸部の久之浜諏訪神社例大祭開催にあたり、石川町住民が御神輿の担ぎ手として参加し、祭り開催を維持。

    震災前の関係

    ・沿岸部の久之浜・大久地区と内陸部の石川町では「海と山の交流」を実施している関係。

    10

  • (3)方針3:近隣市町村間の連携 ⇒自治体(地域)を超えた連携

    地場産業を活かした連携

    協定等による連携

    市町村

    岩手県久慈市(主体)自治体

    内容・より被害の大きい野田村に対し、

    支援を実施。

    震災前の関係

    ・久慈市と野田村は、広域連合でごみ処理と介護保険事業等を共同実施。

    住民交流による連携①

    市町村

    岩手県盛岡市(主体)

    住民連携

    内容

    ・盛岡市下湯沢自治町内会では、沿岸部の被災自治体に対する支援を地域ぐるみで取り組んだ。

    震災前の関係

    ・下湯沢自治町内会では、20年ほど前から沿岸部からの嫁や婿取りが活発化し、年々交流が深まっていた。

    市町村

    岩手県住田町(主体)自治体

    内容

    ・町の独自事業として、一戸建て仮設住宅を整備し、周辺自治体の避難者を受け入れた。仮設住宅は、町産材(主にスギ材)を使用し、町内の事業者が木材供給、建設業組合が建設。

    震災前の関係

    ・森林・林業日本一の町づくりを行う住田町では、仮設住宅についての独自の構想があり、震災以前に大まかな設計が完成していた。

    住民交流による連携②

    市町村

    岩手県紫波町(主体)

    住民連携

    内容・紫波町が大槌町吉里吉里地区

    の被災者受け入れのため避難所を提供。

    震災前の関係

    ・吉里吉里小PTAと紫波町紫波公民館は26年間交流を続け、毎年夏と秋に児童約30人が、相手側の民家に泊まる交流を続けていた。

    11

  • 結の精神(住民の絆)による連携

    方針1

    同じ地区に住む共同体意識による

    連携

    岩手県田野畑村 等【岩手県田野畑村】・昔ながらの住民連携によ

    る取組・まちづくりが、どのように災害支援に役立てられたかを調査

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    5.ヒアリング調査の実施

    【福島県いわき市】・沿岸(いわき市久之浜・

    大久地域海)と内陸(石川町)の住民交流による取組・まちづくりが、どのように災害支援に役立てられたかを調査

    【岩手県住田町】・地場産業による取組・ま

    ちづくりが、どのように災害支援に役立てられたかを調査

    交流施設を活かした連携

    住民連携による自主防災

    宮城県気仙沼市等

    岩手県岩泉町岩手県大槌町 等

    方針 タイプ 事例

    方針2

    沿岸部と農山村間(内陸)の

    連携

    方針3

    自治体(地域)を超えた連携

    海と山の交流

    内陸と沿岸の自主防災

    福島県いわき市 等

    宮城県石巻市岩手県山田町 等

    地場産業を活かした連携

    協定等による連携

    住民交流による連携

    岩手県住田町 等

    岩手県久慈市 等

    岩手県紫波町岩手県盛岡市 等

    ヒアリング対象

  • 連携事例のヒアリング結果

    (1)方針1 田野畑村の取組 「結(ゆい)の精神が息づく、住民の絆づくり」

    田野畑村の概要(H22国勢調査)○面積 156k㎡○人口 3843人○世帯数 1309世帯○65歳以上人口 33.9%○産業構成

    1次:2次:3次=26%:28%:46%

    田野畑役場

    道の駅たのはた

    アズビィホール(避難場所)

    田野畑村

    田野畑村の被災状況○震度 震度4○死亡・不明者 39人○被災家屋 274棟

    全壊 225棟大規模半壊 22棟半壊 23棟一部損壊 4棟

    ○津波遡上高25.5m(平井賀漁港)

    ※Google Mapを加工

    浸水した主な集落

    13

  • ① 結(ゆい)について

    ・ 田野畑では、漁業、酪農等が盛んで、近所の人が手伝いに行くことがよくある。また、津波やヤマセによる飢饉に見舞われてきた地域で、貧しい暮らしの中で培われたもので、日頃から助け合う風土が根付いている。・ 最も顕著なものとして、葬儀に関わる助け合いである。集落で「葬儀を出す」という習わしがある。・ 山の幸、海の幸の物々交換は、よくあること。・ 結は、一人暮らし高齢者の見守りにも有効。・ 「結」が根付いていると、直接、その人を見なくても、近所の人に聞けば、無事であるかどうかわかる。

    ② むらづくりについて

    ・ H16年住民自治に向けた取組みを始め、H22年「田野畑村協働のむらづくり基本条例」を制定。結の精神を守り育てることを基本。・ 行政依存ではなく、自治会でやれることは自治会でやろう、という考えで進めている。村(行政)の行事を、地域に戻した。・甲賀自治会長談:「新しい自治のしくみと言うけど、私たちにしたら20年前に戻っただけ」・ 定住促進も行ってきている。H22年に、学校の統廃合に伴い空いた教職員宿舎を、子育て移住世帯確保に向け、10年間無料の施策を実施した。その結果、5世帯が移住。・ 仕事が見つからない、地域になじめない、といった理由から、2世帯は他へ移ってしまった。人を増やせばいいというものではない。・ 定住は容易でないため、交流人口増加に向け体験型観光に力をいれて取り組んでいる。・ サッパ船で、漁師がガイド役を行っている。住民が勉強し、地元を知るいい機会にもなっている。ガイド料も年に百万程度入り、副収入となっている。・ まちづくり・地域コミュニティをまとめるのは、行政ではなく、NPOが望ましい。婚活など、行政が踏みだしにくい案件も多くある。

    ヒアリング対象者:田野畑村 復興対策課 課長復興対策課 主任

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  • ③ 震災時の連携について

    ・ 国道45号沿いの福祉教育施設(アズビイ)を避難拠点に活用し、避難所を集約化できたことで、安否確認等のその後の対応を含め迅速に対応できた。・ 高台移転の検討は、村の所有地に高台移転すれば、土地の面ではスムーズに進めることが可能であるが、集落・地域を配慮し、地区ごとに話し合いをもって進めている。・ 昔からの結が根付いて地域コミュニティを大事にすることから、震災後も、村外への転出者は6世帯と極めて少ない。震災による「人口減少拍車」というものは、田野畑では発生していない。・ 田野畑では浸水地域に、建築規制はかけていないが、誰も住宅を建てない。孫の代まで考えると、浸水エリアには家を建てられない。次の代のことも考えた末の結論が住民側の結論であった。

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  • (2)方針2 久之浜・大久地域の取組 「海と山の交流 『遠くの親戚よりも近くの他人』」

    いわき市の概要(H22国勢調査)○面積 1231.35k㎡○人口 342,249人○世帯数 128,722世帯○65歳以上人口 25.1%

    久之浜・大久地域の被災状況○死亡・不明者 67人(市の15%)○被災家屋 2292棟

    全壊 899棟大規模半壊 304棟半壊 598棟一部損壊 491棟

    ○津波遡上高8.7m(久之浜海岸部)

    久之浜・大久地域

    小名浜

    久之浜・大久地域の概要(H22国勢調査)

    ○人口 5,775人(市の17%)○世帯数 1,890世帯(市の15%)

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    ※Google Mapを加工

    福島第二原発

    いわき駅

    いわき市

    石川町

  • 17

    ① 地域づくり協議会について

    ・久之浜・大久地域づくり協議会は、平成9年に発足した。・平成9年までは、区長や商工会、漁協関係者等の各種の“長(おさ)”で構成されたまちづくり懇談会があったが、実際に動く人がいなかった。・平成9年当時のまちづくり懇談会の会長が辞めたことが契機となり、肩書にとらわれないメンバーで、住民による住民のための地域づくり協議会を立ち上げることとなった。・会費千円/年の自主的な協議会で、口コミでメンバーが集まった。・会員メンバーは、250人程度を維持している。・いわき市は、昭和41年に、14の市町村が合併し、広い市域であるため、地域の色を出すため、中山間地域の方が、まちづくりが活発である。特に、久之浜・大久地域は、危機感もあり、いわき市の中でも個性的で活発な地域である。・久之浜・大久地域は、自然、海、海洋資源等、昔ながらの自然の豊かな恵みを大事にしたまちづくりが中心で、住む人にとってやさしいまちづくりを展開している。・活動としては、石川町との「海と山交流事業」、平成13年から始まった漁港まつり、ハマエンドウ・ハマヒルガオ等の海岸植物の保護、ハマエンドウまつり、海岸清掃を年に5~6回行っていた。・平成24年7月に国土交通省の海事関係功労者表彰において、久之浜・大久地域づくり協議会が、国土交通省大臣賞を受けた。・他には、年に1度、メンバーで旅行を行っている。・協議会運営の課題は、「お金」と「人」。・人がいれば(住んでいれば)、お金は、なんとかなる。地域に「人」がいることが最も大事なこと。

    ヒアリング対象者:いわき市久之浜・大久支所 参事兼支所長主幹兼地域振興担当員

    いわき市久之浜・大久地域づくり協議会 会長

    ※福島県ホームページより

  • 18

    ② 海と山交流事業について

    (経緯)・石川町との交流は、平成21年から始まった。・きっかけは、当時の石川町長が、有事に備えて町外の地域と交流をもつことに積極的。・石川町は、桜で有名な町。・石川町の桜まつり、久之浜・大久の漁港まつり等、まつりを通じての交流。・石川町の桜まつりには、久之浜・大久地域の海産物を持ち込み、久之浜の漁港まつりでは、石川町から農産品が持ち込まれる。

    (震災時)・12日の1号機の水素爆発後、13日8時すぎに、いわき市は久之浜・大久地域に対して、自主避難勧告を出した。・この最も危険が迫っている13日の朝、石川町から、副町長及び多くの職員が、どこの自治体よりも早く、救援物資を持って久之浜に駆けつける。・当時、多くの避難所では、救援物資が全く無い状況にあるなか、久之浜・大久の住民が避難している場所では、石川町からの救援物資、石川町民による給水・炊き出しが行なわれた。・石川町では、短時間の中で、町内から800枚の毛布を集め、各家庭でおにぎりをつくり、それを集め、久之浜・大久地域に届けた。・それ以降も、石川町民ボランティアが毎月来ている。・久之浜・大久の復興に向けた防災緑地整備では、石川町の桜の孫苗(100本)を行う予定。・援助を期待して、交流していたわけではないが、日頃の交流(平時の交流)が何より大事。昔から言われる「遠くの親戚より近くの他人」が何より大事。・復興祭りでは、いわき市長よりも、石川町長の挨拶への拍手の方が大きい。それほど、交流地域への感謝が大きい。

    石川町による支援(中谷自治センターホームページより)

  • (3)方針3 住田町の取組 「森林・林業 日本一のまちづくり(地場産業の活用)」

    住田町の概要(H22国勢調査)○面積 335k㎡○人口 6190人○65歳以上人口 38.7%○産業構成

    1次:2次:3次=23%:32%:45%

    住田町の被災状況(H23.6.7現在)○死亡・不明者 13人(町外で被災)○被災家屋 8件

    住田町役場

    木造仮説住宅(火石)

    木造仮説住宅(本町)

    木造仮説住宅(中上)

    陸前高田

    大船渡

    住田町

    19※Google Mapを加工

  • 20

    ヒアリング対象者: 住田町建設課長

    ① 木造仮設住宅建設の経緯について

    ・ 町長の判断で、仮設住宅の備蓄に向け震災前のH23年1月に、三セクの住田住宅産業に、仕様書作成を依頼。H23年3月22日に内閣府に木造仮設住宅を提案する段取りだった。・ 震災後、同じ生活圏の大船渡と陸前高田のために、独自に木造仮設住宅の建設を判断。・ 仮設住宅建設は、本来、県の事業だが、町がはじめて慣例を破り、それも戸建の木造仮設住宅を初めて整備した。・ 建設では、森林活動団体「モアトゥリーズ」の3億円支援を受け、県支援を受けていない。・ 建築確認不要の理由から、29.8㎡の木造戸建仮設住宅とした。・ 間取り等は、基本的にプレハブ協会のものと同等。連結されていないだけの違い。・ 工期短縮を図るため、おとしこみ工法を採用。・ 93戸を町内に建設。他に17戸、被災した高田病院の看護師の宿舎として県立住田病院の近辺に設置。・ 場所の選定は、ライフラインがあるところとし、「火石」は旧町営住宅地、「本町」は旧幼稚園、「中上」は旧小学校のグランドを活用。・ 組立、資材加工もすべて町内業者で賄う。・ 先行したモデルハウスは、三セクの住田住宅産業が仕様書づくりを行い、火石の住宅を随契で建設、その後は、町内の建設協同組合に依頼し、町内の大工にも依頼し、町内総動員で建設。・ 上物は270万円、外構を含めると1戸あたり350万円。プレハブ仮設住宅よりもずいぶん安価に建設できた。・ コスト面もプレハブと比べ廉価で、工期も問題がない。・ プレハブと比べ、木の香り、ぬくもりがあり、人にやさしい・心がなごむ住宅で、入居者からは好評。・ 木造は、リサイクルの点でも優れている。・ 地元からみれば、木材の需要拡大、雇用確保につながった。

    建設当時の仮設住宅 現在の仮設住宅(H25.2)

    建設当時の仮設住宅の様子

    ※住田町ホームページより

  • 21

    ② 森林・林業日本一のまちづくりに向けた取組

    (森林・林業日本一のまちづくり)・ 川上から川下までの一貫したシステムの構築を目指している。・ 川上としては、木を植え育てる。・ 川中としては、一か所に集約した3つの民間工場がある(製材工場、集成材工場、プレカット工場)。・ 川下は、つくることで、第三セクターの住田住宅産業が中心。・ 今回の木造仮設住宅は、ある日突然、発生したものではなく、過去からの継続した積み重ねの下地があったもの。・ 林業によるまちづくりは、仮設住宅で終わらずに、点でなく面で考えようとしている。

    (町営住宅)・ 町営住宅は平成元年から建て替えを実施。・ 平屋・2階建ての戸建の町営住宅を建設。・ 気仙地方の住宅の多くは、昔からの伝統である「せんがい造り」。気仙大工によるもので、寺院の建築等に活かされ、全国へ出稼ぎに出ている。・ 昔からの伝統が、脈々と続いている。・ 木材の需要を増え、若い人が林業につく人も出てきている。・ 再生エネルギーの取り組みとして、木質バイオマスによる森林エネルギー活用を進めている。具体的にはペレット、チップボイラーの普及等。・ 住田町役場の新庁舎も木造2階建てを予定している。ペレットかチップストーブの導入を考え、イニシャルコストについて研究を行っている。

    ※住田町ホームページより

  • 6.まとめ

    ◆今回の事例収集を踏まえ、東北発コンパクトシティの考え方は、平時だけでなく、災害時にも有効に機能すると考えられる。

    ◆災害時の連携・支援、持続可能な地域づくりにあたっては、平時からの連携確保が重要である。

    ・平時からの顔の見えるつきあい・地域の魅力を通した地域間の交流・地域資源を活かした地場産業への取り組みによる連携 等

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