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Harris & Wilson (1978)のモデル(以下,HW モデル)• “集積の経済”を考慮した商業立地モデル
二次元空間ではモデルの性質が未解明• 多数の均衡解が同時に複数存在
• 均衡解の安定性を評価し,尤もらしい均衡解を選択する必要がある
二次元空間における商業集積立地モデルの確率安定性解析
第59回土木計画学研究発表会・春大会@名城大学
鈴木 雅史 (東北大学), 山口 修平(東北大学), 赤松 隆(東北大学)
1. 背景
均衡解の例
2. HW モデル
𝒏𝒋: 立地点j における小売企業数, 𝒄𝒊𝒋: 立地点i-j 間の物理的距離
𝜶: 規模の経済性の程度を表すパラメータ, 𝝉 : 交通費用パラメータ
𝒎: 各立地点における消費者数,𝜿 : 企業の固定費用
3. 均衡解の安定性評価法 - 漸近安定性
漸近安定性によって均衡解の局所安定性を判別:調整ダイナミクスの Jacobi 行列の固有値の符号を調べる
• 調整ダイナミクス
• 局所安定性の評価法
6. 数値計算による安定均衡解の評価
7. まとめ
二次元空間におけるHW モデルにおいて,2つの安定性評価手法によって安定均衡解の特性を明らかにした.
確率安定性解析により,輸送技術の向上とともに,企業集積が進展することを明らかにした.
空間設定:周期境界を持つ8×8立地点の正方形格子• この空間設定の下で,木暮ら(2018)が構造パラメータに
依存しない均衡解(自明解)を列挙(156個) 安定均衡解の候補集合:自明解のみ
• 周期境界条件下における多くの集積経済モデルの局所安定解は自明解(Ikeda et al.(2018))
HW モデルの構造パラメータ(τ,α) を網羅的に動かし,確率安定となる立地パターンを下図に示す 小売企業はある立地点における利潤が非負ならその立地点に
参入し,負ならば撤退する.
4. 均衡解の安定性評価法 - 確率安定性 交通費用パラメータの減少とともに小売企業の集積が進展
• 空間周期倍化分岐の発現:集積過程で都市数が半減• 例(α=1.5, 図の赤線上):
1極←2極←4極←8極←16極←32極←分散
大域安定な均衡解は空間的にある程度分散し,企業が存在する立地点間の距離が長い集積パターン(回転対称性の高い集積パターン)
𝛼 を増加させると,大域安定な立地パターンに“スキップ現象”がみられる(32極に注目).
𝛼 = 1.5
横軸に消費者の交通費用パラメータτ ,縦軸に立地パターンのインデックスをとり,局所安定となる立地パターンを下図に示す
• 黒色:局所安定,白色:不安定
確率安定性:大域的かつ唯一の安定均衡解を選択可能• ポテンシャル・ゲームならば,比較的容易に解析可能
HW モデルは, をポテンシャルとするポテンシャル・ゲーム
• 均衡条件と等価なポテンシャル最大化問題を構築可能
• 関数 は利潤 のポテンシャル ⇔
定理(Sandholm(2010)):状態 がポテンシャル関数 を大域的に最大化するなら,状態 は確率安定状態
• 状態空間を離散化した確率的進化ダイナミクスの下で,ポテンシャル・ゲームの定常分布は Boltzmann 分布.ポテンシャル最大状態が最も生起確率が高い.
均衡解の候補を列挙し,それぞれのポテンシャル関数値を比較することによって確率安定解を特定できる.
交通費用パラメータτによらず1極パターンは常に局所安定
1つの交通費用パラメータに対して,局所安定となるパターンが大量に存在
• どのパターンが最も実現しやすいのかを議論することは不可能
目的 : 二次元空間におけるHW モデルで,安定均衡解の特性を明らかにする
空間設定:離散的な立地点の集合
経済主体:小売企業(立地主体),消費者(居住地は固定)
消費者は財の購入地を選択(Logit型選択)• より多数の商業店舗が存在する地点を選好• 自らの居住地に近い地点を選好
消費者の財需要から,小売企業の利潤が以下のように得られる:
P203
(1) 局所安定解の特定
(2) 大域安定解の特定
分散力:財需要による空間競争
集積力:店舗立地に関する規模の経済
均衡条件:
の固有値が全て負 安定
の固有値の少なくとも1つが非負 不安定
1極 2極
4極 8極
16極 32極 分散(64極)
1極 2極 4極 8極 16 32 分散
1極2極
4極
8極
16極
32極分散
局所安定な4極パターンの例