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モノレール 23 6

北九州モノレール長寿命化計画 - Kitakyushu- 2 - 1. 長寿命化計画策定の背景と目的 1.1 計画策定の背景 1)高齢化していくインフラ構造物 (1)

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北九州モノレール長寿命化計画

平成 23 年 6 月

北九州市 建築都市局 都市交通政策課

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目 次

はじめに ........................................................... 1

1. 長寿命化計画策定の背景と目的................................... 2

2. 長寿命化計画の対象施設......................................... 6

3. 長寿命化計画の基本方針........................................ 12

4. 維持管理のフロー.............................................. 14

5. 点検・検査の実施.............................................. 15

6. 健全度の判定.................................................. 18

7. 対策区分の判定................................................ 21

8. 対策実施計画の策定............................................ 23

9. 記録.......................................................... 25

10. 長寿命化計画による効果 ........................................ 29

11. 今後 10 年間の事業目標と今後の重点的な取組み ................... 31

12. 意見聴取した学識経験者および計画策定担当部署など ............... 33

参考資料 .......................................................... 34

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はじめに

北九州市では,昭和 60 年に国内初の「都市モノレール」(延長 8.69km)を開業

し,平成 10 年には平和通駅~小倉駅(0.38km)間の延伸を行うことで,現在全

路線延長が 9.07 キロメートルとなっている。この北九州モノレールは,第 1 期開

業から現在までの 25 年間にわたり,都心部における交通渋滞対策や都心部と住宅

地を結ぶ重要な通勤・通学の手段として,市民活動や都市交通の利便性向上に寄与

している。

しかし,北九州モノレールを構成するインフラ構造物は,建設から約 30 年を経

過し,経年的な劣化による損傷などが見られるようになった。

これまでも,北九州モノレールを健全な状態に維持するための点検や補修対策な

どを適切に実施してきたところであるが,延伸部約 400mを除くと,建設時期が同

時期であるため,損傷も集中して進行する可能性があり,その結果,公共交通とし

ての全体の安全性などに影響がでることも予想される。

そこで,北九州市では,学識経験者や各分野の専門家からなる「北九州モノレー

ル長寿命化対策検討会」を設置し,平成 21 年度より 2 箇年をかけて,利用者の安

全性や公共交通の利便性を確保し,インフラ構造物の長寿命化と維持管理費の縮減

を図ることを目的とした,より計画的で効率的な対策を実施する「北九州モノレー

ル長寿命化計画」の策定に向けて,検討を行った。

本書は,この検討会の検討結果を基に策定した「北九州モノレール長寿命化計画」

の概要について報告する。

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1. 長寿命化計画策定の背景と目的

1.1 計画策定の背景

1)高齢化していくインフラ構造物

(1) 北九州モノレールは北九州市小倉北区の小倉駅から小倉南区の企救丘駅までを結ぶ

北九州高速鉄道の跨座式モノレール路線である。

標準高架形式は RC 支柱とPC軌道桁(標準スパン 20.0m,幅 85.0cm,高さ 150 ㎝)

からなっており,交差点部や鉄道交差部などの特殊部で,鋼支柱,鋼軌道桁が採用さ

れている。また,地上から軌道面までの高さは平均約 12.5m(最大 19.0m)となっ

ている。

(2) 北九州モノレールのインフラ構造物は,以下の事業沿革に示すように昭和 53 年から

昭和 59 年にかけて建設された。

<事業の沿革>

・ 昭和 51 年 2 月 :軌道事業特許申請

・ 昭和 51 年 7 月 :北九州高速鉄道株式会社設立

・ 昭和 51 年 12 月 :軌道事業特許取得

・ 昭和 52 年 5 月 :第一次分割工事施工認可申請

・ 昭和 53 年 9 月 :施行認可(土木関係,志井~企救丘間 1.1km)

・ 昭和 53 年 10 月 :工事着手

・ 昭和 55 年 5 月 :施行認可(土木関係,7.6km)

・ 昭和 60 年 1 月 :開業(小倉(現在の平和通) - 企救丘間)

・ 平成 10 年 4 月 :延伸部開業(小倉 - 平和通間,小倉駅ビルに乗入れ)

(1)北九州モノレールのインフラ構造物の総数は,軌道桁がPC桁 565 本,鋼桁 45

連,支柱が RC 支柱 252 基,鋼支柱 121 基,分岐橋が 4 橋,停留場が 13 停留場

(小倉停留場はJR駅ビルと一体)である。

(2)現在,北九州モノレールのインフラ構造物は建設後約 30 年経過している。

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2)インフラ構造物の損傷と事故

これまでに建設された道路橋や鉄道橋では,適切な維持管理が行われてこなかった

ことから,多くの橋梁で損傷が発生している事例が増えてきており,橋梁そのものの

安全性を脅かすような致命的な損傷も確認されている。

国内でも,近年に鋼トラス橋の斜材が腐食などにより破断に至り,損傷発生後通行

規制を余儀なくされるなどインフラ構造物の高齢化に起因する損傷や事故が数多く報

告されている。

このようにインフラ構造物の損傷が進行した場合,鋼部材の破断やコンクリート片

の剥落などが発生し,公共交通の運行停止や高架下の第三者被害などの事故を招き社

会的影響を引き起こす事態が生じることとなる。

北九州モノレールのインフラ構造物は,現在のところ損傷による事故などの危険性

を有する構造物はないが,写真 1 に示すような損傷が確認された構造物もあるため,

事故を未然に防ぐためにも点検や検査と補修・補強による維持管理の重要性が,イン

フラ構造物の高齢化と共に高まっている。

鋼部材の腐食事例 (鋼軌道桁の主桁)

コンクリート部材の鉄筋露出,剥離事例 (RC 支柱のはり部)

写真 1 北九州モノレールにおけるインフラ構造物の損傷事例

インフラ構造物の損傷が進むと,モノレールの運行に影響を及ぼす事態や,損傷を

受けた部分の落下などによる第三者被害などの事故を起こす可能性が高くなる。

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3)長寿命化計画の必要性

モノレールのインフラ構造物は大半が昭和 60 年に供用開始されたため,劣化が同

時に進行し,その結果として大規模な補修または架替えが同時期に集中することが

想定される。そのような場合,次に示すような影響が考えられる。

・モノレールの運行停止や桁下街路の交通規制による都市交通機能の大幅な低下

・工事コスト増大と集中的な財源確保の困難さ

・市民(モノレール利用者および桁下街路利用者)の安全・安心などへの影響

今後のインフラ構造物の高齢化の進行に伴い,これまでは特に補修を必要としな

かった構造物にも新たに損傷が発生・進行することも想定され,補修時期が一時期

に集中する恐れがある。このような事態にも,限られた予算の下で,適切な事業量

で確実に補修をしていくために,これまでに実施してきた管理方式を強化し,予防

保全に基づく維持管理の方法をより精度の高いものとして確立していく必要がある。

したがって,予防保全の強化と確立によって,市民の安全・安心の確保,および

インフラ構造物のトータル維持管理コストの縮小とインフラ構造物の長寿命化を図

る。さらに年度毎のインフラ構造物維持管理コストが平準化するように管理するこ

とが可能となる。

大規模な補修や架替えを同じ時期に行うことは,社会的影響や財源確保の困難

さが予想されるため,補修などの維持管理コスト低減や工事時期の分散(コスト

発生の平準化)が求められる。

これらの問題を解消する維持管理手法として,「予防保全」の取組みを強化した

長寿命化計画を立案・導入し,計画的で持続可能な維持管理の推進によって,安

全・安心の確保と継続を目指していく必要がある。

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1.2 長寿命化計画の目的

(1) モノレールの安全性や公共交通としての信頼性の確保 長寿命化計画の一環として,インフラ構造物の健全性を定期的な点検によって把

握し,現在発生している損傷,耐震性能の状況,周辺環境条件などによって優先順

位を勘案して,計画的な維持管理を実施する。

全てのインフラ構造物の健全性の把握と,損傷が進行する前に補修を実施する予

防保全によって,インフラ構造物が健全に維持されることとなり,モノレールの安

全性や公共交通としての信頼性確保につながる。

(2) 維持管理のトータルコスト縮減と予算の平準化 対症療法的な維持管理対応(事後保全)を行うことになった場合と比較して,計画

的な予防保全を継続することにより維持管理のトータルコストの縮減を図ることが

できる(図 1)。

また,インフラ構造物全体の健全度を把握することで計画的な維持管理が行える

ようになり,年間予算にばらつきや過度なピークが生じないように平準化を図るこ

とが可能となる。

図 1 予防保全による長寿命化と維持管理コスト縮減のイメージ

本長寿命化計画は,インフラ構造物を開業から約 100 年もたせることを目指し

ている。具体的には、インフラ構造物の劣化の進行を予測して,劣化が進行する

前に対策を実施する「予防保全型」により維持管理を行い、以下の目的で、構造

物の長寿命化を図るものである。

(1) モノレールの安全性や公共交通としての信頼性を確保する

(2) 維持管理のトータルコスト縮減と予算の平準化を図る

時間の経過

時間の経過

健全度ランク

シナリオ2(事後保全)

シナリオ1(予防保全)

シナリオ1

シナリオ2 コスト縮 減

劣化予測式による推定 対策工のライフサイクル

修繕1回目 修繕2回目

架替え

劣化(健全度の低下)が顕在化する前に対処し長寿命化を図る

健全度ランク

対策費用

予防保全の場合

事後保全の場合

事後保全の場合

予防保全の場合

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2. 長寿命化計画の対象施設

2.1対象施設の概要

長寿命化計画は,北九州市および国土交通省が管理している全てのインフラ構造

物を対象とする。

<インフラ構造物の総量>

・ 軌道桁数:PC軌道桁 282 径間(565 本),鋼軌道桁 90 径間(45 連)

・ 支 柱 数: RC支柱 252 基,鋼支柱 121 基

・ 停留場数: 13 停留場

・ 分岐橋数: 4 橋(コンクリート橋)

北九州モノレールのインフラ施設は,主として道路管理者が管理するインフラ構

造物と,北九州高速鉄道株式会社が管理するインフラ外施設に区分される。長寿命

化計画は前者を対象とする。

表 1 モノレールのインフラ構造物の範囲

管理区分 施 設 管 理 者 対 象 施 設

支 柱 軌道桁,床版および停留場を支持する柱(当該柱を支持する土台および基礎を含む)をいう。

桁および床版

軌道桁,床版およびこれらを支持する桁などをいう。ただし,軌道桁については摩耗層部分,軌道桁などに取付ける電車線などは含まない。なお,道路上に設ける分岐器,側線を含む。

インフラ構造物

停 留 場

北九州市 (一部,北九州国道事務所,直轄国道10 号区間)

乗降場,駅舎の骨格を形成する屋根,壁,柱などの構築,階段(エスカレータを含む),コンコースなどの連絡通路をいう。ただし,内装を除く。なお,停留場内の駅務室,改札施設など専ら軌道経営者の業務の用に供する施設は含まないものとする。

インフラ外施設 インフラ構造物以外

北九州高速鉄道㈱

電力設備,通信・信号設備,軌道摩耗層,内装,運営基地など専ら軌道経営者の業務の用に供する施設。

長寿命化計画で対象とする施設は,北九州モノレールの全インフラ構造物とする。

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※軌道は全線複線で,標準区間では街路の中央分離帯に支柱を設置した高架式構造

となっている。また,一部の区間では都市高速と一体となった区間(城野~競馬

場前)が存在する。

図 2 北九州モノレールの路線図

都市高速 競合区間 960m

管理者 :北九州市

管理者 :北九州国道事務所

全延長 9,070m

延伸区間 380m

管理者 :北九州市

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2.2主要なインフラ構造物の概要

PC・鋼軌道桁の断面図及びRC・鋼支柱の正面図を図 3 に示す。

図 3 主要なインフラ構造物

RC支柱 鋼支柱

PC軌道桁 鋼軌道桁

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写真 2 インフラ構造物の概観

PC軌道桁・RC支柱

鋼軌道桁・鋼支柱

停留場

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2.3インフラ構造物の損傷概要

平成 21 年度,平成 22 年度の 2 ヵ年で全インフラ構造物の定期点検を実施した。そ

の結果,半数以上の構造物に経年的な劣化などによる損傷が発生しているのが確認

された。次に各構造物の損傷の概要を示す。

・ PC軌道桁では,コンクリートのひび割れが認められた。また,桁が上側に湾

曲するいわゆる「そり」が発生している。

・ RC支柱では,かぶり不足や経年的な劣化によるコンクリートの剥離・鉄筋露

出が認められた。

・ PC軌道桁,RC支柱では,アルカリ骨材反応が原因と推定されるひびわれが

一部に発生している。※これらの構造物については,他の構造物とは別に特に

点検頻度を密にするなど重点的に管理している。

・ 鋼軌道桁では,一部の桁で塗装の損傷が確認された。また,特に水が溜まりや

すい桁の下面側やボルト継手部では,部分的な腐食が認められた。

・ 鋼支柱でも,一部の支柱で塗装の損傷が確認された。また,特に水が溜まりや

すい梁部や柱基部では,部分的な腐食が認められた。

・ 軌道桁を支持する支承や軌道桁を連結する伸縮装置では,一部の鋼部材で部分

的な腐食が認められた。

・ 駅舎では,一部の外壁で経年的な劣化による外壁材の損傷が認められた。

インフラ構造物の代表的な損傷状況を写真 3-1,3-2 に示す。

PC軌道桁のひび割れ

(側面)

写真 3-1 インフラ構造物の損傷状況

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RC支柱のひび割れ

(梁部)

鋼支柱の腐食

(梁部)

停留場外壁材の損傷

写真 3-2 インフラ構造物の損傷状況

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3. 長寿命化計画の基本方針

(1) 北九州市および北九州国道事務所が管理する総延長9.02kmの北九州モノレール全線のインフラ構造物について,安全性および公共交通としての信頼性を確保しながら,

開業後 100 年間の長寿命化を図っていくことを目指す。

(2) 今後の維持管理トータルコストの縮減を図るため,損傷が進行しない段階で少ないコストで補修を実施する予防保全の考え方に基づく計画的な維持管理の取り組みを

強化する。

(3) 予防保全の考え方に基づき劣化が顕在化する前に性能回復を図るための管理水準を健全度ランクⅢ(p.18 参照)と設定し,全てのインフラ構造物の健全度の維持に努

める。

(4) 劣化対策の対策工法は,原則として,建設当初の性能(後述する健全度ランクⅠ)に回復することを目的に,損傷発生原因を考慮した根本的な対策を実施し,建設当

初の性能回復または現在の要求性能の確保を目的とした対策工法を選定する(緊急

な対応を要する場合などは必要に応じて応急的かつ部分的な対策工法も選定する)。

(5) 劣化対策の時期は,予防保全の考え方に基づき,定期点検結果をはじめとするインフラ構造物の損傷状態や損傷の要因から劣化を予測しながら,損傷が著しく進行す

る段階まで先送りしないように配慮しながら対策時期を調整するなどにより毎年度

の維持管理予算の平準化を図る。

(6) 長寿命化計画の運用においては,劣化対策の確実な推進やより効果的かつ効率的な補修方法への見直しを図っていくために,5 年に 1 回,事業の評価や計画の見直しを

実施し,PDCA サイクルに基づく継続的な改善を進めていく。

長寿命化計画の基本方針は以下の通りとする。

(1) 構造物の供用期間の目標は開業から 100 年間を目指す

(2) コスト縮減を図るために予防保全の取り組みを強化する

(3) 構造物の管理水準を設定し健全度の維持に努める

(4) 劣化対策では基本的に建設当初の性能回復を図ることを目指す

(5) 構造物の劣化を予測し対策時期を調整するなどにより維持管理予算を平準化する

(6) 長寿命化計画の運用では PDCA サイクルにより事業の評価と計画の見直しを実施する

(7) 今後の維持管理は長寿命化計画に基づいて実施する

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(7) インフラ構造物の今後の維持管理は,長寿命化計画に示した維持管理の考え方や取り組み方に基づき着実に実施していくものとする。

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4. 維持管理のフロー

図 4 インフラ構造物維持管理のフロー図

長寿命化計画の導入に伴う維持管理業務の流れは図 4 によるものとする(本資料内の章番号

を併記)。

点検結果の損傷度の判定を行い,健全度判定を行った上で対策区分を判定し,その対策区分

から対策実施計画を作成し,対策を実施する。

また,実施した対策の実績内容などは必ず記録し,データベースとして蓄積する。

損傷度(a~e)の判定

点検・検査の実施(5 章)

診断

(診断技術者)

対策

(北九州市など)

施設の状態(事実)の把握

点検・検査

(点検・

検査者)

健全度の判定(Ⅰ~Ⅴ)(6 章)

対策区分の判定(7 章)

劣化要因の推定,発生位置など

対策実施計画の策定・見直し(8 章)

専門家への意見聴取 (必要に応じて)

性能低下の度合い(健全度)を技術的に判断

対策の必要性・緊急度を技術的に判断

予算条件を踏まえ,行政的に総合判断

対策の実施

記録(10 章)

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5. 点検・検査の実施

(1) 点検・検査の種類と頻度

これまでは日常検査,定期検査,臨時検査を「軌道整備心得,S59.12 制定/H21.4

最新改正」および「建造物整備心得,S59.12 制定/H21.4 最新改正」に基づき実施して

きた。また,コンクリート構造物については第三者委員会による検討を経て策定され

た「維持管理マニュアル(案)(コンクリート構造物編),H15.3 策定/H21.3 改訂」に

基づきインフラ構造物の維持管理を実施してきた。

今回の長寿命化計画では,北九州モノレールの点検・検査は,上記に加え,5 年に

1 回の「定期点検」を導入することとした。これは,インフラ構造物が道路施設に位

置づけられ,主構造が橋梁形式であること,管理者が道路管理者であることなどから,

「道路橋点検マニュアル(案),H21.3,北九州市建設局」や「橋梁定期点検要領

(案),H16.3,国土交通省」を参考にし,新たに作成した「点検マニュアル(案)」に

基づき実施することとしたものである。

表 2 インフラ構造物の点検・検査体系

点検・検査の種類 点検・検査者 点検・検査頻度 備考

日常検査 日常~1 回/6 ヶ月

定期検査 1 回/1 年~1 回/2 年

「軌道整備心得」,「建造物整備心得」などによる

重点管理 継続実施 「維持管理マニュアル」による

臨時検査

北九州高速鉄道㈱

必要時 「軌道整備心得」,「建造物整備心得」などによる

定期点検 専門業者 (委託)

1 回/5 年 「点検マニュアル」による

※ モノレールの維持管理では,保線関係規程に基づく維持管理を「検査」と呼び,道路橋としての維持管理を「点検」と呼び,使い分けている。

(2) 損傷度ランク

損傷度ランクは,基本的にランク a(損傷なし)~ランク e(大きい損傷)の5段

階(損傷の種類によっては 3 段階または 2 段階)とし,損傷の種類ごとに,損傷の

深さや損傷の拡がり(範囲)の観点から分類する。

表 3 に構造物および損傷の種類ごとの損傷度ランクの判定基準を示す。

(1) インフラ構造物の損傷を早期かつ継続的に把握するため,今後は全構造物

を対象に,定期点検を継続的に実施する。この定期点検結果は対策実施計

画策定・見直しの基礎データとする。また,引き続き保線関係規程に基づ

く日常検査,定期検査についても継続的に実施する。

(2) 点検・検査で把握したインフラ構造物の状態から損傷度を判定する。損傷度

は,基本的にランク a~e の 5 段階(3 段階の損傷もあり)とする。

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表 3-1 モノレールインフラ構造物の定期点検の損傷度の判定基準

a b c d e

腐食 損傷なし 深さ小・面積小 深さ小・面積大 深さ大・面積小 深さ大・面積大

亀裂 損傷なし ‐ 溶接部塗膜われ ‐ 線状亀裂

ゆるみ・脱落 損傷なし ‐ ‐ ‐ ゆるみあり

破断 損傷なし ‐ ‐ ‐ 破断している

防食機能の劣化 損傷なし ‐ 局所的なうき 下塗り露出 点錆発生

遊間の異常 損傷なし ‐ 遊間のずれ ‐ 接触

異常な音・振動 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

変形・欠損 損傷なし ‐ 局所的に変形 ‐ 著しく変形

腐食 損傷なし 深さ小・面積小 深さ小・面積大 深さ大・面積小 深さ大・面積大

亀裂 損傷なし ‐ 溶接部塗膜われ ‐ 線状亀裂

ゆるみ・脱落 損傷なし ‐ ‐ ‐ ゆるみあり

破断 損傷なし ‐ ‐ ‐ 破断している

防食機能の劣化 損傷なし ‐ 局所的なうき 下塗り露出 点錆発生

遊間の異常 損傷なし ‐ 遊間のずれ ‐ 接触

異常な音・振動 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

変形・欠損 損傷なし ‐ 局所的に変形 ‐ 著しく変形

ひび割れ 損傷なし ひび割れ幅小・間隔小 ひび割れ幅小・間隔大 ひび割れ幅中・間隔大 ひび割れ幅大・間隔大

剥離・鉄筋露出 損傷なし ‐ 剥離のみ 鉄筋腐食軽微 鉄筋腐食著しい

漏水・遊離石灰 損傷なし ‐ 漏水あり 遊離石灰あり 泥・錆汁混入

うき 損傷なし ‐ ‐ ‐ うきあり

変色・劣化 損傷なし ‐ ‐ ‐ 変色・ひび割れあり

異常な音・振動 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

異常なたわみ 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

変形・欠損 損傷なし ‐ 局所的に変形 ‐ 著しく変形

ひび割れ密度

腐食 損傷なし 深さ小・面積小 深さ小・面積大 深さ大・面積小 深さ大・面積大

亀裂 損傷なし ‐ 溶接部塗膜われ ‐ 線状亀裂

ゆるみ・脱落 損傷なし ‐ ‐ ‐ ゆるみあり

破断 損傷なし ‐ ‐ ‐ 破断している

防食機能の劣化 損傷なし ‐ 局所的なうき 下塗り露出 点錆発生

異常な音・振動 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

異常なたわみ 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

変形・欠損 損傷なし ‐ 局所的に変形 ‐ 著しく変形

腐食 損傷なし 深さ小・面積小 深さ小・面積大 深さ大・面積小 深さ大・面積大

亀裂 損傷なし ‐ 溶接部塗膜われ ‐ 線状亀裂

破断 損傷なし ‐ ‐ ‐ 破断している

防食機能の劣化 損傷なし ‐ 局所的なうき 下塗り露出 点錆発生

支承の機能障害 損傷なし ‐ ‐ ‐ 機能阻害

変形・欠損 損傷なし ‐ 局所的に変形 ‐ 著しく変形

沈下・移動・傾斜 損傷なし ‐ ‐ ‐ 沈下・傾斜あり

腐食 損傷なし 深さ小・面積小 深さ小・面積大 深さ大・面積小 深さ大・面積大

亀裂 損傷なし ‐ 溶接部塗膜われ ‐ 線状亀裂

ゆるみ・脱落 損傷なし ‐ ‐ ‐ ゆるみあり

破断 損傷なし ‐ ‐ ‐ 破断している

変形・欠損 損傷なし ‐ 局所的に変形 ‐ 著しく変形

ひび割れ 損傷なし ひび割れ幅小・間隔小 ひび割れ幅小・間隔大 ひび割れ幅中・間隔大 ひび割れ幅大・間隔大

うき 損傷なし ‐ ‐ ‐ うきあり

変形・欠損 損傷なし ‐ ‐ ‐ 欠損あり

沓座、台座コンクリート

支承部

鋼支柱

柱部梁部台座面

支承本体(鋼)

アンカーボルト(鋼)

損傷ランク

伸縮装置

RC支柱

柱部梁部台座面

鋼軌道桁

部材 損傷の種類

主桁横桁横構

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表 3-2 モノレールインフラ構造物の定期点検の損傷度の判定基準

a b c d e

ひび割れ 損傷なし ひび割れ幅小・間隔小 ひび割れ幅小・間隔大 ひび割れ幅中・間隔大 ひび割れ幅大・間隔大

剥離・鉄筋露出 損傷なし ‐ 剥離のみ 鉄筋腐食軽微 鉄筋腐食著しい

漏水・遊離石灰 損傷なし ‐ 漏水あり 遊離石灰あり 泥・錆汁混入

補強材の損傷 損傷なし ‐ 錆・漏水あり ‐ 錆・漏水著しい

うき 損傷なし ‐ ‐ ‐ うきあり

遊間の異常 損傷なし ‐ 遊間のずれ ‐ 接触

変色・劣化 損傷なし ‐ ‐ ‐ 変色・ひび割れあり

異常な音・振動 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

変形・欠損 損傷なし ‐ 局所的に変形 ‐ 著しく変形

腐食 損傷なし 深さ小・面積小 深さ小・面積大 深さ大・面積小 深さ大・面積大

亀裂 損傷なし ‐ 溶接部塗膜われ ‐ 線状亀裂

ゆるみ・脱落 損傷なし ‐ ‐ ‐ ゆるみあり

破断 損傷なし ‐ ‐ ‐ 破断している

防食機能の劣化 損傷なし ‐ 局所的なうき 下塗り露出 点錆発生

遊間の異常 損傷なし ‐ 遊間のずれ ‐ 接触

異常な音・振動 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

変形・欠損 損傷なし ‐ 局所的に変形 ‐ 著しく変形

ひび割れ 損傷なし ひび割れ幅小・間隔小 ひび割れ幅小・間隔大 ひび割れ幅中・間隔大 ひび割れ幅大・間隔大

剥離・鉄筋露出 損傷なし ‐ 剥離のみ 鉄筋腐食軽微 鉄筋腐食著しい

漏水・遊離石灰 損傷なし ‐ 漏水あり 遊離石灰あり 泥・錆汁混入

うき 損傷なし ‐ ‐ ‐ うきあり

遊間の異常 損傷なし ‐ 遊間のずれ ‐ 接触

定着部の異常 損傷なし ‐ ひび割れあり ‐ 定着部剥離

変色・劣化 損傷なし ‐ ‐ ‐ 変色・ひび割れあり

漏水・滞水 損傷なし ‐ ‐ ‐ 漏水・滞水あり

異常な音・振動 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

異常なたわみ 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

変形・欠損 損傷なし ‐ 局所的に変形 ‐ 著しく変形

腐食 損傷なし 深さ小・面積小 深さ小・面積大 深さ大・面積小 深さ大・面積大

亀裂 損傷なし ‐ 溶接部塗膜われ ‐ 線状亀裂

ゆるみ・脱落 損傷なし ‐ ‐ ‐ ゆるみあり

破断 損傷なし ‐ ‐ ‐ 破断している

防食機能の劣化 損傷なし ‐ 局所的なうき 下塗り露出 点錆発生

遊間の異常 損傷なし ‐ 遊間のずれ ‐ 接触

異常な音・振動 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

異常なたわみ 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

変形・欠損 損傷なし ‐ 局所的に変形 ‐ 著しく変形

ひび割れ 損傷なし ひび割れ幅小・間隔小 ひび割れ幅小・間隔大 ひび割れ幅中・間隔大 ひび割れ幅大・間隔大

剥離・鉄筋露出 損傷なし ‐ 剥離のみ 鉄筋腐食軽微 鉄筋腐食著しい

漏水・遊離石灰 損傷なし ‐ 漏水あり 遊離石灰あり 泥・錆汁混入

うき 損傷なし ‐ ‐ ‐ うきあり

遊間の異常 損傷なし ‐ 遊間のずれ ‐ 接触

変色・劣化 損傷なし ‐ ‐ ‐ 変色・ひび割れあり

異常な音・振動 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

異常なたわみ 損傷なし ‐ ‐ ‐ 異常あり

変形・欠損 損傷なし ‐ 局所的に変形 ‐ 著しく変形

ひび割れ 損傷なし ‐ ‐ ‐ ひび割れあり

うき 損傷なし ‐ ‐ ‐ うきあり

目地ひび割れ 損傷なし ‐ ‐ ‐ ひび割れあり

シーリング材変形・剥離 損傷なし ‐ ‐ ‐ 変形・剥離あり

排水管の破損 損傷なし ‐ ‐ ‐ 破損あり

取付金具の変形・損傷 損傷なし ‐ ‐ ‐ 変形・損傷あり

漏水 損傷なし ‐ ‐ ‐ 漏水あり

損傷の種類損傷ランク

停留場

外壁

排水管

軌道床版

PC軌道桁

分岐橋

主桁床版

ホーム桁(鋼)

主桁

伸縮装置

部材

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6. 健全度の判定

(1)健全度の判定

健全度を判定する目的は,点検・検査によって把握される損傷度と詳細調査などに

よって特定される損傷要因により,同じ損傷度でも性能の低下が異なることによる。

部材の健全度は,コンクリート標準示方書(維持管理編,2007 年制定版,)に示され

ている劣化機構や劣化進行過程などの既存の文献を参考に,今回簡易な表で判定でき

るようにした。

今回策定した対策実施計画では,この健全度は,対策箇所ごとの優先順位付け,対

策工実施時期の決定,対策工法の選定の指標として活用した。

(2)健全度ランク

健全度ランクは,基本的にⅠ~Ⅴの5段階(損傷種類によっては3段階または2段階)

とし,損傷種類ごとに損傷度と損傷要因(初期欠陥,中性化,塩害,アルカリ骨材反応

など)によって分類する。ただし,損傷要因が分類できない場合は,損傷度=健全度ラ

ンクとする。表 4に健全度ランク設定の基本的な考え方を示す。

また,表 5,6,7 にコンクリート部材と鋼部材の健全度ランク判定表の一例を示す。

表 4 健全度ランク判定の基本的な考え方

健全度ランク 健全度ランク設定の基本的な考え方

Ⅰ 損傷が発生していない状態(初期の性能を保持)

Ⅱ 軽微な損傷であり,性能低下がほぼない状態

Ⅲ 明らかな損傷があり,性能低下が懸念される状態

Ⅳ 損傷が著しく,性能の低下が明らかに確認された状態

Ⅴ 顕著な損傷があり,性能の低下が著しく,安全性の観点から緊急的に対策が必要な状態

(1) 損傷度と損傷要因などにより,性能低下の度合いを判断し,「健全度」を判

定する。健全度は,長寿命化計画策定の上で最も重要な概念の 1 つである

管理水準設定の指標として用いる。

(2) 健全度は,基本的に健全度ランクⅠ~Ⅴの 5 段階とする。

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図 5 性能低下と健全度ランクの関係(概念図)

表 5 コンクリート部材(ひび割れ)の健全度ランク判定表

■緊急的な対策が必要 現状で構造物の安全性の喪失が 懸念されるもの

■早期の対策が必要 近い将来(例えば 5 年以内)に構造物の安全性の喪失が懸念されるもの

■計画的な対策で対応可能 予防保全の導入により中長期的なコスト縮減が可能なもの

管理水準

架設後経過年

Ⅰ Ⅱ Ⅲ

健全度

Ⅳ Ⅴ

a 損傷なし Ⅰ Ⅰ

b損傷が軽微 Ⅱ Ⅱ

c損傷小さい Ⅱ Ⅲ

d損傷大きい Ⅲ Ⅳ

e損傷非常に大きい Ⅲ ⅣorⅤ

ひ び 割 れ

1.0mm以上

-

一方向

亀甲状(二方向かつ間隔50cm未満)

-

0.2mm未満

損傷なし

損傷度ランク 中性化・

塩害・ASR等

施工不良乾燥・温度ひび割れ等

最大ひびわれ幅(mm)

ひび割れ方向

健全度ランク

主な損傷要因

0.2mm以上0.3mm未満

0.3mm以上1.0mm未満

種 類

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表 6 コンクリート部材(剥離・鉄筋露出)健全度ランク判定表

表 7 鋼部材(腐食)の健全度ランク判定表

a 損傷なし Ⅰ Ⅰ

b損傷が軽微 - -

c損傷小さい Ⅲ Ⅲ

d損傷大きい Ⅲ Ⅲ

e損傷非常に大きい Ⅳ ⅣorⅤ

剥 離 ・鉄筋露出

鉄筋が露出してしており、鉄筋が著しく腐食している

中性化・塩害・ASR等

健全度ランク

主な損傷要因

種 類損傷度ランク

剥離のみが生じている

鉄筋が露出しているが、鉄筋の腐食は軽微である

損傷状況施工不良乾燥・温度ひび割れ等

損傷なし

-

健全度

損傷要因

a 損傷なし Ⅰ

b損傷が軽微 Ⅲ

c損傷小さい Ⅲ

d損傷大きい Ⅳ

e損傷非常に大きい Ⅴ

腐  食

錆は表面的で面積が小さく,局部的著しい板厚の減少なし

錆は表面的で面積は着目部全体、または、拡がりあり著しい板厚の減少なし

損傷なし

鋼部材表面に著しい膨張、または,明らかな板厚減少あり

鋼材表面に著しい膨張、または,明らかな板厚減少あり面積は着目部全体、または、拡がりあり

経年劣化

種 類損傷度ランク

損傷状況

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7. 対策区分の判定

(1) 対策区分の判定は,表 8 によるものとする。

表 8 対策区分の基本的な考え方

対策区分 対策区分の基本的な考え方

A 損傷が認められないか軽微であるため,補修を行う必要がない

B 損傷が軽微であるが,状況に応じて補修を行う必要がある。

C 性能低下が懸念されるため,速やかに補修などを行う必要がある

S 損傷の原因や進行性などを把握するために詳細調査や重点管理を行う必要がある。

E 構造物の安全性の観点や第三者被害防止などの観点から緊急対応の必要がある。

(2) 今回策定した対策実施計画での対策工法選定の考え方は,コンクリート部材では,表

面被覆工の実施を基本とし,ひび割れ注入や断面修復などを損傷状況に応じて組合せ

るものとした。鋼部材は,再塗装工の実施を基本とし,損傷の種類や健全度ランクに

応じて塗装方法を使い分けるものとした。

なお,PC軌道桁の「そり」については,対策工法の実施で「そり」そのものを回

復することができないため,そりの進行を防止することを目的に対策工法を実施する

こととした。

今回策定した対策実施計画で各部材に用いることとした対策工法を表 9 に示す。

(1) 対策区分は,健全度などにより,対策の必要性・緊急度を判断する指標と

して用いる。対策区分は,対策区分 A,B,C,S,E の 5 区分とする。

(2) 実施する対策は,原則として健全度ランクⅠに回復することを目的に実施

する。対策工法の選定にあたっては,損傷要因を考慮した上で,適切な工

法を選定する。

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表 9 損傷の種類に応じた対策工法

高低差抑制対策 かさ上げ工法

ASR反応抑制対策 表面保護工法(防水工)、ひび割れ注入工法など

鉄筋降伏抑制・剛性回復 主桁補強工法

防食 再塗装工法(全面塗装):外面

防食 再塗装工法(全面塗装):内面

防食 再塗装工法(部分補修):内外面

漏水・滞水防止 水抜き孔設置、漏水部の充填工

不良部分除去・劣化要因浸入抑制 断面修復工法

剥落防止対策 連続繊維シート接着工法

表面防水 表面保護工法(防水工)

ひび割れの修復 ひび割れ注入工法など

かぶりの修復 断面修復工法

剥落防止対策 連続繊維シート接着工法

防食 再塗装工法(全面塗装):外面

防食 再塗装工法(全面塗装):内面

防食 再塗装工法(部分補修):内外面

漏水・滞水防止 水抜き孔設置、漏水部の充填工

防食 再塗装工法(全面塗装):内外面

防食 再塗装工法(部分補修):内外面

外装劣化対策 再塗装工法(全面塗装)

漏水防止対策 床版防水工法

対策工法(補修・補強工法の種別)

対策目的(損傷の種類)

全体鋼支柱

停留場

支柱

鋼桁

軌道桁

外壁

スラブ

RC支柱 梁部

鋼桁桁

構造物区分 部材区分

分岐桁 PC桁・RC桁

PC桁

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8. 対策実施計画の策定

8.1対策実施計画の策定・見直しの方針

(1) 対策実施計画は,定期点検などで確認された損傷に対して,対策内容を明らかにし,

概算の対策費用や対策時期を示したものであり,それによって維持管理のトータルコ

スト縮減等を図る。

(2) 新たな定期点検結果より重大な損傷などが確認された場合などには,必要に応じて,

構造物の劣化対策の対策工法や対策時期を見直すものとする。

(3) 全国の他のモノレールでは耐震対策が進められているものの、北九州モノレールは、

延伸部分のみ耐震対策が行われている。今回、定期点検によって、インフラ構造物の

劣化状況を把握し、今後の具体的な対策の検討に至った。その結果、劣化対策ととも

に、耐震対策を行う。

表 10 劣化対策・耐震対策の内容

対策種別 工事目的

劣化対策 耐久性能を確保するため,各部材の劣化損傷に対し,予防保全を基本とした供用可能年数を延ばす長寿命化を目的に行う補修対策

耐震対策 大規模地震動に対して,道路橋示方書に準じた耐震性能を確保するための支柱,落橋防止システムを対象とした補強対策

構造物の点検・検査,損傷度の判定,健全度の判定,対策区分の判定後は対策実施

計画を策定する。必要に応じて,学識経験者などへの意見聴取を実施する。

(1) 対策実施計画は,個別の損傷に対して,いつ,どのような方法で対策を実施す

るかを示したものである。

(2) 新たに定期点検を実施した後は,定期点検結果を踏まえて必要に応じて対策

実施計画の見直しを行う。

(3) 劣化対策とともに,耐震対策にも取り組むこととする。

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8.2対策時期の分類および対策の優先順位付け

(1)対策時期の分類

長寿命化対策の基本的な対策時期は,まず各対策区分(A,B,C,S,E)の基本的な考

え方に基づき「早急に実施」,「概ね 5 年以内に実施」,「概ね 10 年以内に実施」に分類

する。

さらに具体的な対策実施年度は,この同一の対策区分の中で次項の優先度評価指標

により優先順位付けを行った上で当該年度の予算を勘案して決定する。

図 6 対策の優先順位付けのイメージ

(2)対策の優先順位付け

優先度評価指標は,「健全度ランク」を第一指標とし,対策内容に応じて,「劣化

範囲・影響が大きい区間」,「劣化の進行が速い区間」,「劣化を受け易い環境・仕様

の区間」,「前回対策からの経過年数が長い区間」などの観点から評価指標を設定す

る。今回策定した対策実施計画では,PC軌道桁の「そり量」や「そり変化量」,鋼

軌道桁の「補修後の経過年数」などにより優先順位を検討した。

(1) 長寿命化対策の対策時期は,対策区分(A,B,C,S,E)に基づき分類する。

(2) 長寿命化対策を行う区間の優先順位は,健全度ランクの低い区間を優先する

ことを基本として,構造物の構造特性,環境特性,補修履歴などの優先度評

価指標も考慮しながら対策優先順位を設定する。

早期的な対策 計画的な対策

概ね5年以内 概ね10年以内

緊急的な対策

早急に実施

対策時期

対策区分 B(10年以内にCに推移

すると予測されるもの)

対策の緊急性

対策の優先順位付け 高⇔低 高⇔低 高⇔低

対策実施優先度 高 低

CまたはS

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9. 記録

(1) 記録は,点検・検査,調査設計,対策の各業務で指定されたデータを指定された

フォーマットで記録する。

今後はデータベースの活用によって,データの蓄積に伴う履歴情報の管理を可能

にし,必要な情報を効率的かつ効果的に活用していく。

(2)データはデータ作成者(業務担当者)がその責任において照査する。なお,デー

タの記録,保存の流れも明確にする。

(3)記録されたデータについては,北九州市および北九州高速鉄道㈱がデータベース

に入力し管理する。

(4)データベースに蓄積されたデータは,長寿命化計画に基づく構造物毎の一連の維

持管理業務(マネジメント)における情報伝達向上や意思決定支援および対策実

施計画の毎年度あるいは 5 年毎の見直しなどに活用する。

表 11 データ活用場面の例

業務実施者 必要機能(活用場面)の例 作成する帳票類

・構造物全体の健全度の集計 ・予算計画(中長期推計)・中長期予算の推計 ・各種集計グラフ等・総資産量の集計・対策状況の集計

・構造物基本諸元の表示 ・対策実施計画リスト(短期)・点検結果の集計・分析 ・構造物台帳・点検、対策進捗状況の集計 ・点検台帳・過去の損傷状況の表示 ・診断台帳・過去の補修・補強実績の表示 ・補修補強工事台帳・劣化予測・対策工法の選定(LCC分析)・対策優先順位の算定

北九州市都市交通政策課

北九州高速鉄道㈱

データベースの構築に向けた基本的な方向性を以下に示す。

(1)インフラ構造物の維持管理に関わる行為(点検・検査,評価および判定,対策

など)の結果は,必ずデータベースなどに記録,保存を行う。

(2) 記録するデータは,維持管理の各業務でのデータ作成者(業務担当者)がその

責任において作成するものとする。

(3) 記録されたデータは,北九州市および北九州高速鉄道㈱が保管および管理する

ものとする。

(4)蓄積されたデータは,維持管理業務や長寿命化計画の見直しなどに活用する。

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インフラ構造物のデータベースの一部として今回作成した点検調書等を図 7~

図 9 に示す。

【インフラ構造物台帳】個別点検調書(様式-1)

【点検台帳】個別点検調書(様式-3)

図 7 インフラ構造物のデータベースによる記録例(その1)

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【点検台帳】個別点検調書(様式-4)

【点検台帳】個別点検調書(様式-6)

図 8 インフラ構造物のデータベースによる記録例(その2)

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【補修補強工事台帳】個別点検調書(様式-5)

対策実施計画リスト

対策実施計画リスト(短期・中期計画)イメージ :RC支柱

剥離・鉄筋露出

ひび割れ

剥離・鉄筋露出

ひび割れ

- - -H24(2012)

H25(2013)

H26(2014)

H27(2015)

H28(2016)

H29(2017)

H30(2018)

H31(2019)

H32(2020)

H33(2021)

支柱補強

落橋防止

1 2P28 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅰ Ⅰ A A - - - 0 0 - 15,485 2,250

2 2P29 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅲ C C - - - 2,500 2,500 2,000 補修 補修 14,353 2,250

3 2P30 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅰ Ⅲ A C - - - 200 2,700 2,000 補修 補修 14,637 2,250

4 2P31 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅲ C B - - - 1,950 4,650 2,000 補修 補修 14,584 2,250

5 2P32 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅲ C C - - - 2,250 6,900 - 補修 14,809 2,250

6 2P33 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅲ C C - - - 2,250 9,150 - 補修 15,052 2,250

7 2P34 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅳ C S/C - - - 2,500 11,650 - 補修 15,575 2,250

8 2P35 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅳ C S/C - - - 2,500 14,150 - 補修 14,396 2,250

9 2P36 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅳ C S/C - - - 2,500 16,650 - 補修 15,215 2,250

10 2P37 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅲ C C - - - 2,250 18,900 2,000 補修 16,044 2,250

11 2P38 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅰ C A - - - 2,250 21,150 2,000 補修 15,927 2,250

12 2P39 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅱ C B - - - 1,950 23,100 2,000 補修 13,731 2,250

13 2P42 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅰ Ⅲ A B - - - 200 23,300 2,000 補修 15,234 2,250

14 2P44 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅰ Ⅱ A B - - - 200 23,500 - 14,445 2,250

15 2P45 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅲ C C - - - 1,950 25,450 -

16 2P46 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅲ C C - - - 1,900 27,350 -

17 2P47 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅲ C C - - - 1,900 29,250 -

18 2P48 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅲ Ⅲ C C - - - 1,900 31,150 -

19 2P49 支柱 RC支柱 梁部 城野~北方 1985 25 道路事業 2010 Ⅰ Ⅲ A B - - - 0 31,150 -

対策区分桁番号または支柱番号

部材区分

対策内容・対策時期

架設年度

供用年数

短期(1~5年)概算対策費(千円)

概算対策費累計

(千円)

最新点検年次

備考区間次回点検時期

中期(6~10年)

概算対策費(千円)

健全度 優先度評価指標 耐震対策費

事業区間

優先順位

部材種別

構造物区分

短期計画(5年以内) 中期計画(6~10年以内)

長寿命化対象部材の基本情報 健全度評価結果(診断結果) 長寿命化計画の策定結果(短期計画)

長寿命化計画の策定結果(中期計画)

図 9 インフラ構造物のデータベースによる記録例(その3)

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10. 長寿命化計画による効果

今後 75 年間で劣化対策として長寿命化計画を実施した場合の、事業費シミュ

レーションの結果は,実施しない場合と比べ,維持管理コストが約 50%縮減され

ると試算される。

(実施しないケース)240 億円→(実施ケース)120 億円(▲ 120 億円)

長寿命化計画の実施ケースと,実施しないケース(悪くなってから対応する事後

保全で,補修・補強・架替えをするものと仮定)の事業費の比較を図 10 に示す。

1)試算条件

・管理する全インフラ構造物の今後 75 年間の劣化対策費を試算した。

・耐震対策工事に関する事業費は両ケースとも同一の内容とし,本試算の

対象外とした。

・劣化対策工事の中のエスカレーター更新についても本試算の対象外とした。

・全構造物に長寿命化計画を実施したケースと全構造物に長寿命化計画を実施

しないケースの各ケースの劣化対策の中長期的な対策内容は表 12 の通り想

定して試算を行った。

表 12 劣化対策内容の比較

主な対策内容

長寿命化計画を実

施したケース

●健全度ランクⅢの段階で対策

・PC軌道桁の補修

・鋼軌道桁,鋼支柱の再塗装(Ⅲ種ケレン)

・RC支柱の断面修復(補修面積が小さい)

長寿命化計画を実

施しないケース

●健全度ランクⅤの段階で対策

・PC軌道桁の架替え(そり量 40mm に到達して 10 年後)

・鋼軌道桁,鋼支柱の再塗装(Ⅰ種ケレン)

・RC支柱の断面修復(補修面積が大きい)

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3)試算結果

今後 75 年間(開業後 100 年まで)の中長期対策費用のシミュレーション

では,長寿命化計画を実施しない場合と比較して長寿命化計画の実施による

コスト縮減効果は約 120 億円と試算され,長寿命化計画の有効性が確認され

た。また、短期的には,これからの20年間で予防保全が 42 億円、事後保

全が 64 億円となり,短期でも効果が現れる。(図 10)。

図 10 長寿命化計画の実施有無の違いによる事業費推移の比較

0

20

40

60

80

100

120

140

1~10年目

11~20年目

21~30年目

31~40年目

41~50年目

51~60年目

61~70年目

71~75年目

維持管理コスト(億円)

0

50

100

150

200

250

300

累計維持管理コスト(億円)

長寿命化計画を実施したケース

長寿命化計画を実施しないケース

長寿命化計画を実施したケース(累計)

長寿命化計画を実施しないケース(累計) 約120億円(約50%)のコスト縮減

240億

120億

64億

42億

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- 31 -

11. 今後 10年間の事業目標と今後の重点的な取組み

(1)今後 10 年間の事業目標

1) 予防保全のスタートにあたる初回対策では,劣化対策は耐震対策と極力同時に

施工することで,工事コストの縮減と,並行する道路交通への影響の軽減に努

める。

2) 今後 10 年間の概算事業費は,予防保全のための劣化対策事業として,約 25

億円である。このほか、耐震対策約 50 億円,昇降機等の補修や更新約 25 億円

の,合計約 100 億円を見込んでいる。(表 13)。

表 13 各対策事業の今後 10 年間の実施概要(H24 開始)

今後 10 年間 対策事業分類

対策内容 概算事業費 (億円)

・軌道桁(PC,鋼)のひび割れ補修や再塗装など ・分岐橋(PC,RC)のひび割れ補修など ・支柱(RC,鋼)のひび割れ補修や再塗装など ・停留場(インフラ部)の外壁補修など

約 25 劣化対策事業

・昇降機等の補修・更新など 約 25

耐震対策事業 ・支柱耐震補強 ・落橋防止構造設置

約 50

(2)今後の重点的な取組み

1) 劣化対策事業は,インフラ構造物の定期点検の結果をもとに対策実施計画を

修正し,予算の状況を十分に考慮したうえで実施する。現時点で対策が必要と

判定された対策区分Cの構造物の対策は,概ね 5 年間で完了させる。

2)「損傷の早期発見」と「損傷状況の継続的な把握」を目的として,継続的に点

検・検査を実施する。

(1) 今後 10 年間の事業目標

1)劣化対策と耐震対策を極力同時に実施する。

2)劣化対策事業および耐震対策事業の概算の総事業費は約 100 億円を見込んで

いる。

(2) 今後の重点的な取組み

1)対策区分Cのうち,現時点で対策が必要と判定されたものについては,概ね 5

年間で対策を実施する。

2)定期的な点検・検査を継続的に実施する。

3)計画的な維持管理に不可欠なデータベースの構築を進める。

4)持続可能な仕組みづくり(PDCA サイクル)を進めるため,長寿命化計画は,5

年に 1 回,事業評価と計画の見直しを行う。

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- 32 -

3)予防保全を基本とした計画的な維持管理に不可欠な維持管理行為(点検・検

査,判定,対策)の結果は,データベースに記録・保存し,維持管理業務や

長寿命化計画の見直しなどに活用する。

4)長寿命化計画は,5 年に1回,北九州市が長寿命化計画の見直しを行うもの

とする(図 11 の Action)。また,見直しに際しては,事業評価を行うものと

する(図 11 の Check)。

長寿命化計画の見直しの際には,事業評価と計画の見直しの内容などにつ

いて,市民・利用者への情報公開に努める。

図 11 長寿命化計画の継続的見直し(PDCA サイクル)

Plan計画

(北九州市)

Do実施

(北九州高速鉄道(株))

Check評価

(北九州市)

Action見直し

(北九州市)

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- 33 -

12. 意見聴取した学識経験者などおよび計画策定担当部署

1)意見聴取した学識経験者などの専門知識を有する者

北九州市長寿命化計画策定にあたり「北九州市モノレール長寿命化対策検

討会」を設置した。検討会の構成委員は以下の通りである。

■九州工業大学 大学院 工学研究院

久保 喜延 名誉教授(座長)

山口 栄輝 教授

幸左 賢二 教授

■福岡大学 大学院

添田 政司 教授

■国土交通省国土技術政策総合研究所

玉越 隆史 室長

■(独)土木研究所構造物メンテナンス研究センター

渡辺 博志 上席研究員

星隈 順一 上席研究員

村越 潤 上席研究員

■国土交通省 九州地方整備局

田中 泰幸 道路部地域道路調整官

木村 孝 建政部都市調整官

後田 徹 北九州国道事務所長(H21 年度)

世利 正美 北九州国道事務所長(H22 年度)

■北九州高速鉄道株式会社

白橋 正光 業務部長(H21 年度)

永友 授 業務部長(H22 年度)

■北九州市

池田 昭信 技術監理室次長

藤澤 常憲 建設局道路部長(H21 年度)

佐田富 敏行 建設局道路部長(H22 年度)

梅本 治孝 建築都市局計画部都市交通担当部長(H21 年度)

原口 紳一 建築都市局計画部都市交通担当部長(H22 年度)

2)計画策定担当部署

■北九州市 建築都市局 計画部 都市交通政策課 tel: 093-582-2518

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参考資料

資料 1:北九州モノレール施設の維持管理体系

資料 2:個別維持管理フロー図の一例

(RC支柱の「剥離・鉄筋露出」)

資料 3:劣化予測方法について

資料 4:耐震対策について

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資料 1-1:表 北九州モノレールインフラ構造物の維持管理体系

そり ひび割れ 剥離・鉄筋露出 腐食 防食機能の劣化 亀裂 腐食 防食機能の劣化 漏水・滞水 亀裂 ひび割れ 剥離・鉄筋露出 ひび割れ 白色滲出物 剥離・鉄筋露出 ひび割れ 白色滲出物 剥離・鉄筋露出

疲労 疲労

安全性能使用性能耐久性能

安全性能耐久性能

第三者影響度に対する性能

安全性能耐久性能

耐久性能美観・景観

安全性能耐久性能

安全性能耐久性能

耐久性能 耐久性能安全性能耐久性能

安全性能耐久性能

第三者影響度に対する性能

安全性能耐久性能

安全性能耐久性能

第三者影響度に対する性能

安全性能耐久性能

安全性能耐久性能

第三者影響度に対する性能

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

● ● ● ● ●

点検 - -たたき点検(1回/2年)

- - - - - - - - - - -たたき点検(1回/5年)

剥落防止部分補修(タッチアップ)

全面塗装 -部分補修(タッチアップ)

-水抜き処理(漏水・滞水発

生)- ひび割れ注入 剥落防止 剥落防止

補強または架替え

- - - - - - 全面塗装水抜き処理(今回未処理

分)- - -

一方向の場合・ひび割れ注

入- -

日常検査※注1

車上巡視(1回/週)

- - - - - - - - - - - - - -

定期検査※注2

そり量測定(1回/年)

- - - - -

詳細調査コンクリート弾性係数の追跡

調査

ASRが疑わしい桁を対象に実施※注4

- - - - - - - - - - - -

重点管理(モニタリング)

そり量・桁長測定

(3回/年)ひずみ測定:代表桁(年間数回)

- - - - - - - - - - - - -

※重点管理対象→そり量40mm以上

※現在未発生※疲労耐力の簡易照査結果を踏まえ、定期点検で確認

※現在未発生※疲労耐力の簡易照査結果を踏まえ、定期点検で確認

※柱部は耐震補強実施予定

車上巡視(1回/週)

影響を及ぼす要求性能

・ひび割れ注入・表面防水・かさ上げ処理

近接撮影(1回/5年)

定期点検※注3

-

予防保全

定期的な確認

ASRが疑わしい支柱を対象に実施※注4

※耐震補強実施予定※重点管理対象→二方向(亀甲状)ひびわれかつ白色滲出物あり

施設区分

管理者

梁部

インフラ施設

桁 支柱

北九州市

主要構造物

鋼支柱※駅舎下を含む柱部

-

予防保全対象

構造物区分

鋼桁(箱桁)

分岐桁

PC桁

軌道桁

外面 内面

※鋼軌道桁に準じる

ひび割れ幅測定または弾性係数測定

(2回/年)

中性化/施工要因

二方向(亀甲状)の場合・ひび割れ注入・表面防水

※耐震補強実施予定により不要

近接目視(1回/5年)

徒歩巡視(遠望)(1回/6ヶ月)

徒歩巡視(遠望)(1回/6ヶ月)

ASRが疑わしい支柱を対象に実施※注4

弾性係数測定(2回/年)

維持管理行為

想定される主な劣化要因

ASR/材料の経年劣化

詳細な確認

措置

予防保全の必要性・効果の検証中または予定

維持管理対象

備考

部材区分

損傷

RC支柱

PC桁・RC桁(箱桁・床版橋)

材料の経年劣化/滞水 材料の経年劣化/結露・漏水・滞水 中性化/塩害/ASR/施工要因

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資料 1-2:表 北九州モノレールインフラ構造物の維持管理体系

腐食 防食機能の劣化 亀裂 防食機能の劣化 防水層の劣化 腐食 腐食本体損傷有無、通水状況

疲労 材料の経年劣化 材料の経年劣化 材料の経年劣化/滞水材料の経年劣化/磨耗/滞水

材料の経年劣化/滞水

安全性能耐久性能

耐久性能安全性能耐久性能

耐久性能 耐久性能安全性能耐久性能

安全性能耐久性能

耐久性能

● ● ● ● ● ● ● ●

点検 - - - - - - - -

部分補修(タッチアップ)

- - 全面塗装 全面防水 部分補修 部分補修 部分補修

- 全面塗装 - - - - 交換 交換

日常検査※注1

- - - - -

定期検査※注2

- - -

詳細調査 - - - - - - - -

重点管理(モニタリング)

- - - - - - - -

※現在未発生

※PC桁に支承アンカーが固定されているため、交換が困難

※RC支柱部の排水管は清掃作業必要

構造物区分

損傷

北九州市

主要構造物 付帯設備

鋼桁(内部)

部材区分

材料の経年劣化/結露・漏水・滞水

影響を及ぼす要求性能

維持管理行為

想定される主な劣化要因

詳細な確認

措置

予防保全の必要性・効果の検証中または予定

維持管理対象

備考

近接目視(1回/5年)

施設区分

管理者

スラブ(軌道桁下)

支承(鋼製)

インフラ施設

伸縮継手(鋼製)

排水設備(鋼製)

※駅下鋼支柱部

駅舎

外壁(パネル式)

予防保全対象

定期点検※注2

予防保全

定期的な確認

-

徒歩巡視(遠望)(1回/6ヶ月)

車上巡視(1回/週)

:現状で概ね対応しているもの

:今回新たに対応するもの

:将来的に対応を想定するもの

※注1 工作車を用いて実施する点検

※注2 軌道法に基づく1回/2年の検査も含む。

※注3 高所作業車等を用いて近接目視で全部材を点検する。

※注4 ASRに関する詳細調査(圧縮強度、塩分量、中性化深さ、アルカリ量、残存膨張、鉄筋腐食等)を実施

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- 37 -

START

定期点検

うきがあるか?

鉄筋露出かつ著しい鉄筋

腐食ありか?

鉄筋露出のみありか?

[点 検]

劣化損傷状態の把握

点検結果の性能評価

[健全度判定]

YES

YES

C

YES

緊急対応

剥落防止

工で補修

補修・補強工事

の実施

E

健全度ランク

[調査・設計]

工事発注のための

詳細調査・補修補強設計を行う

[記録]データベース

計画的な対応

剥離・鉄筋露出の損傷度ランク(a,c,d,e)

対策区分ランク

次回の点検

NO

NO

NO

YES

[長寿命化計画]

対策区分ランク : A, E , C

⇒優先度評価はなし

長寿命化計画への活用

たたき点検 コンクリートの近接目視結果

剥離のみありか?

次回定期点検

まで日常管理

健全度ランク

[対策区分判定]

日常検査の実施

※徒歩巡視

日常的な対応

NO

対策必要性の評価

資料 2:図 個別維持管理フロー図の一例

(RC支柱の「剥離・鉄筋露出」への対策)

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資料 2:表 個別維持管理フロー図に関する項目の説明

点検 ・検査

本計画で追加した定期点検と従来から北九州高速鉄道㈱で実施していた各検査とにより,モノレールに発生している損傷を早期に発見することなどを目的に実施する。

損傷度の判定 点検・検査で確認された損傷を損傷の深さまたは範囲などから損傷度を判定する。 損傷の状況から,損傷度を5段階(a~e)に分類する。a が健全で e が最も損傷が

進行している状態を表す。

健全度の 判定

損傷の状態を判定する「損傷度判定」に対して,損傷要因などから技術的に性能低下の度合いについての判定することを「健全度判定」とする。 健全度はⅠ~Ⅴで表され,Ⅴが最も性能が低下した状態である。

対策区分 の判定

健全度などにより,対策の必要性・緊急度を判断し,「対策区分」を判定する。対策区分は,対策区分 A,B,C,S,E の 5 区分とする。 対策区分は,長寿命化計画の優先順位決定の指標とする。

対策実施 計画

対策時期は予防保全の考え方に基づき健全度ランクⅢの段階とする。耐震対策および補修対策が必要なインフラ構造物について,健全度ランクおよび構造物の構造特性,環境特性,補修履歴などの優先度評価指標により優先順位を付け,年度毎の対策実施計画を立案する。

重点管理 アルカリ骨材反応が原因と考えられるPC軌道桁や RC 支柱を対象として行う管

理で,「そり」や「ひび割れ」,「滲出物」について点検頻度を増やして損傷の進行状況を監視するとともに,必要により詳細調査や対策を実施する。

詳細調査 ・設計

長寿命化計画に基づいて「計画的な対応」として対策を行うインフラ構造物に対して,劣化損傷要因の特定,補修工法・仕様の選定や補修数量の算出などを目的として詳細調査および設計を行う。

対策の実施

管理 ・工事

対策区分 A,B,E に対しては日常業務で対応する「日常的な対応」として通常の維持管理を行う。対策区分 S に対しは「継続的な対応」として重点管理を行う。対策区分 C に対しは長寿命化計画に基づいた「計画的な対応」として補修・補強工事を実施する。

記録 「構造物台帳」,「点検台帳」,「補修補強工事台帳」,「対策実施計画」の4種類の

帳票様式で出力しての活用を想定し,データベースで情報を一元的に管理する。

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- 39 -

資料 3:劣化予測方法について

今回策定した対策実施計画では,劣化予測の対象部材は,対象とする損傷の種類ご

との劣化特性(劣化要因の種類,劣化の進行性など)や点検データの取得状況などを

踏まえ,「PC軌道桁のそり量」,「鋼軌道桁・鋼支柱の腐食および防食機能の劣化」を

対象とすることとした。

1.PC軌道桁のそり量

PC軌道桁は,定期検査の中で,H15 年度(2003 年度)以降の全ての桁のそり量

計測を行ってきている。

PC軌道桁のそり量の傾向は,アルカリシリカ反応(以下,ASR と呼ぶ)の影響が

想定されるが,個々の桁ごとに異なる特性を有していることが分かったため,桁1

本ごとに直近 5 年間の「そり変化量」の傾向から,劣化予測を行うこととした(図 1

参照)。

N 年後の累計そり量(mm)

=最新の累計そり量(mm)+直近5年間の平均そり変化量(mm/年)×(最新計測年度からの経過年数)

図 1 PC軌道桁そり量の劣化予測方法

PC桁そり量の劣化予測方法

0

10

20

30

40

50

60

1984198619881990199219941996199820002002200420062008201020122014201620182020

西暦

累計そり量(mm)

上り-2114

上り-2119

上り-3022

供用開始年度劣化予測期間(10年間)

傾向分析期間(直近5年間)

最新計測年度

計測開始年度

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2.鋼部材(外面部)の腐食および防食機能の劣化

鋼部材の場合は,塗装の健全性を保つことが腐食防止となることから,予防保全上

の管理水準は「防食機能(塗膜)の劣化」に着目することとし,防食機能低下が始ま

る点さび発生段階(=塗膜はがれの発生段階)と設定した(表 1)。活荷重による鋼軌

道桁の疲労損傷は,現時点では確認されていないため,健全度判定および劣化予測の

対象としていない。

今回の定期点検結果と経過年数の関係性が現時点ではばらつきが大きいため,過去

の補修実績なども踏まえ,ここでは既往の知見を参考に表 2 に示す劣化予測モデルを

設定した。建設時に採用した一般塗装系(A 塗装系)のサイクルは次回再塗装時期を,

また重防食塗装系(C 塗装系)のサイクルは次回再塗装後以降の再塗装時期の予測に

用いた。

なお,北九州モノレールの再塗装(塩化ゴム系からポリウレタン樹脂系やふっ素樹

脂系への塗り替え)は,建設後 6 年目から現在(25 年目)にかけて継続的に実施して

きている。

表 1 鋼部材の腐食の管理水準

国土技術政策総合研究所資料※資料1 北九州市

定量的な値に よる評価

劣化過程 さび発生面積

(%)

劣化状態 腐食 損傷度

健全度 ランク

備考

1.健全 X<0.03

異状なし。 誰が見ても外観的にはさびが認められないか,さびらしきものがあっても無視し得る程度のもの。

a Ⅰ

Ⅱ 対策不要

▼管理水準

2.点さび発生 0.03≦X<0.3

僅かにさびが見られる。 さびが観測される部分以外の塗膜の防食機能はほぼ維持されていると思われる状態。

3.全面点さび 4.防錆効果の失効

0.3≦X<5.0

明らかにさびが見られる。 誰が見ても発錆部分が多く,何らかの処置を施さなければならない状態。

5.全面さび 5.0≦X 見かけ上ほぼ全面にわたってさびが見られる。早急に塗料を塗り直さなければならない状態。

c~e Ⅴ

要対策

表 2 当面の劣化予測モデルの設定値

塗り替えサイクル

(健全度Ⅲに到達する年数)

一般塗装系(A,B 塗装系) 8 年

重防食塗装系 (C 塗装系,ふっ素樹脂塗装) 27 年

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■解説資料:鋼部材の劣化予測モデル

図 2 の劣化予測モデルは,「さび発生面積(%)」を指標とした統計データの分析結

果を参考に作成されたものである。

予防保全の実施対象となる健全度ランクをランクⅢと仮定した場合は,塩害環境以

外の架橋条件において,現在健全度ランクⅡ以下の鋼部材が予防保全の実施対象にな

るまでの期間は,表より,一般塗装系(A,B 塗装系)で 8 年,重防食塗装系(C 塗装系)

で 27 年となっている(表 3)。

経過年数

図 2 劣化予測モデル※資料1(前述)と健全度ランクの関連

表 3 塗装別塗替え間隔設定値※資料1(前述)

t1 t2 t3 塗装仕様

塩害地 域以外

塩害 地域

塩害地 域以外

塩害 地域

塩害地 域以外

塩害 地域

一般塗装系(A,B 塗装系) 8 年 適用外 15 年 適用外 21 年 適用外

重防食塗装系 (C 塗装系,ふっ素樹脂塗装) 27 年 16 年 50 年 30 年 68 年 41 年

※塩害地域:塩害の影響地域は,海岸線より 200mまでとしている(道路橋示方書 Ⅳ下部工編P169, C 地域)

※資料1「国土技術政策総合研究所資料 No.523 2009.3 道路橋の計画的管理に関する調査研究

-橋梁マネジメントシステム(BMS)-」より引用

Ⅰ,Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ 健全度ランク

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資料 4:耐震対策について

1. 既設構造物の耐震性

北九州モノレールの耐震設計基準は下の表に示すとおりである。

表 1 耐震対策の状況

写真は阪神大震災での RC 支柱の破壊事例である。

写真 1 RC 支柱の段落し部の破壊事例 写真 2 RC 支柱の柱基部の破壊事例

耐震対策一覧表①小倉~平和通り ②上部都市高速区間 ③一般部(①②以外)

RC支柱

鋼支柱

落橋防止システム

補強済 (9基)(コンクリート中詰め工法)

未対策(99基)

未対策(223基)

H8年復旧仕様にて設計(7基)(連結ケーブル)

補強済(29基) (鋼板巻き立て工法)

H8年復旧仕様にて設計(7基)(コンクリート中詰め工法)

未対策(363基)

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2.耐震対策の概要

(1)基本方針

北九州モノレールの耐震対策の基本方針は,道路橋示方書・同解説 Ⅴ耐震設計編の

耐震設計の基本方針を参考とし,以下のように設定する。

(1) 供用期間中に発生する確率が高い地震動(レベル1地震動)と,供用期間中に発生

する確率は低いが大きな強度を持つ地震動(レベル2地震動)の2段階のレベルの設

計地震動を考慮するものとする。ここで,レベル2地震動としては,プレート境界

型の大規模な地震を想定したタイプⅠの地震動および内陸直下型地震を想定したタ

イプⅡの地震動の2種類を考慮するものとする。

(2) 橋の重要度は,北九州モノレールが主要な道路および鉄道と交差する,また道路

に近接する構造であり,構造物の機能が失われることの影響度の大きさを考慮し,

とくに重要度が高い橋として区分し,B種の橋として扱うものとする。

(3) 耐震設計においては,設計地震動のレベルと重要度に応じて以下のように設計す

る。

1) レベル1地震動に対しては,耐震性能1(地震によって橋としての健全性を損な

わない性能)を確保するように耐震設計を行う。

2) レベル2地震動に対しては,耐震性能2(地震による損傷が限定的なものにとど

まり,橋としての機能の回復が速やかに行い得る性能)を確保するように耐震設計

を行う。

(4) 耐震設計で想定していない挙動や地盤の破壊などにより構造系の破壊が生じても,

上部構造の落下を防止できるように配慮するものとする。

北九州モノレールが目指す耐震性能を次に示す。

表 5 目標耐震性能

設計地震動 A 種の橋 B 種の橋

レベル1地震動 地震によって橋としての健全性を損なわない性能

(耐震性能 1) タイプⅠの地震動 (プレート境界型の大規模な地震) レ ベ ル

2 地震動

タイプⅡの地震動 (兵庫県南部地震のような内陸直下型地震)

地震による損傷が橋として致命的とならない性能

地震による損傷が限定的なものにとどまり,橋としての機能の回復が速やかに行い得る性能 (耐震性能 2)

※色付き部分がモノレールで目指す耐震性能を示す。

「道路橋示方書・同解説 Ⅴ耐震設計編 平成 14 年 3 月」p8

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(1)支柱の補強概要

1)RC 支柱

RC 支柱の耐震補強は,ほとんどの支柱が中央分離帯にあり,道路の建築限界との

余裕がないため,柱を余り大きくしないで補強できる鋼板巻立工法を採用する。同

工法は,下図に示すように柱部に鋼板を巻きつけて補強する方法である。

図 1 RC 支柱の補強概要

2)鋼支柱

鋼支柱は,鋼板特有の座屈を防止するため,支柱内部にコンクリートを充填する方

法を用いる。

写真 3 座屈による柱の破壊事例 図 2 コンクリート充填補強の概要

(2)落橋防止システムの概要

現行基準では,不測の事態に備えて桁の落橋を防止する目的で,落橋防止システムを設

置するものと規定している。北九州モノレールでは,この落橋防止システムが設置されて

いないため,耐震対策として必要な対策を実施する。 ・ 桁の落下に対する対策:桁の落下に対しては,桁同士の連結や,桁と下部工を連結す

ることで防止するのが一般的な方法である。

写真 4 落橋防止装置のイメージ

柱内部にコンクリートを打

形鋼による拘束補強

段落とし部の補強

鋼板によるじん性の補強

鋼板とフーチングの間の隙間アンカー筋による曲げ耐力の向上