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平成 28 年度 IoT 推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (家庭内機器のネットワーク連携等調査) 「スマートホームの実現に向けた 機器接続・データ利活用等の検討事項」 報告書 平成 29 3

「スマートホームの実現に向けた 機器接続・データ …平成28 年度IoT 推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (家庭内機器のネットワーク連携等調査)

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平成 28 年度 IoT 推進のための新産業モデル創出基盤整備事業

(家庭内機器のネットワーク連携等調査)

「スマートホームの実現に向けた

機器接続・データ利活用等の検討事項」

報告書

平成 29 年 3 月

Page 2: 「スマートホームの実現に向けた 機器接続・データ …平成28 年度IoT 推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (家庭内機器のネットワーク連携等調査)
Page 3: 「スマートホームの実現に向けた 機器接続・データ …平成28 年度IoT 推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (家庭内機器のネットワーク連携等調査)

目次

1. 検討の概要 .......................................................................................................................... 1

1.1. 検討の背景と目的.............................................................................................................. 1

1.1.1. 検討の背景 .................................................................................................................. 1

1.1.2. 検討の目的 .................................................................................................................. 2

1.2. 検討体制・内容と実施方法 ............................................................................................... 3

1.2.1. 検討体制と検討内容 ................................................................................................... 3

1.2.2. 検討の実施方法 .......................................................................................................... 5

2. これまでの国内の取組とスマートホームの将来像と課題 .................................................... 7

2.1. 国内における取組状況 ...................................................................................................... 7

2.1.1. 国際標準規格の普及と実証事業等の取組 .................................................................. 7

2.1.2. これまでの実証事業等の取組における課題 ............................................................... 8

2.2. 家庭内機器の進化............................................................................................................ 14

2.3. IoT・スマートホームビジネスの市場見込み .................................................................. 15

2.3.1. グローバルでみた IoT・スマートホーム関連ビジネスの市場見込み ..................... 15

2.3.2. 国内における IoT・スマートホーム関連ビジネスの市場見込み............................. 16

2.4. スマートホームの将来像 ................................................................................................. 18

2.5. スマートホームの将来像の実現に向けて解決すべき課題.............................................. 20

3. スマートホームの現状(接続検討とデータ利活用) ......................................................... 22

3.1. 他社間連携 ...................................................................................................................... 22

3.1.1. 他社間連携の現状 ..................................................................................................... 22

3.1.2. 他社間連携における検討事項 ................................................................................... 25

3.2. セキュリティ・認証 ........................................................................................................ 26

3.2.1. セキュリティ・認証の現状 ...................................................................................... 26

3.2.2. セキュリティ・認証における検討事項 .................................................................... 29

3.3. 製品安全 .......................................................................................................................... 30

3.3.1. 製品安全の現状 ........................................................................................................ 30

3.3.2. 製品安全の検討事項 ................................................................................................. 32

3.4. データ利活用 ................................................................................................................... 33

3.4.1. データ利活用(国内外)の現状 ............................................................................... 33

3.4.2. データ利活用における検討事項 ............................................................................... 34

3.5. プライバシー ................................................................................................................... 35

3.5.1. プライバシーの現状 ................................................................................................. 35

3.5.2. プライバシーにおける検討事項 ............................................................................... 36

4. スマートホームの最新動向を踏まえた今後の方向性 ......................................................... 37

4.1. 米国企業・欧州企業等調査 ............................................................................................. 37

4.2. 最新のトレンドと機器メーカーの今後の方向性 ............................................................ 42

4.2.1. 音声認識デバイスの台頭 .......................................................................................... 42

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4.2.2. 機器メーカーの今後の方向性 ................................................................................... 42

5. スマートホームの目指す将来像に向け検証すべき論点 ..................................................... 44

5.1. 接続検討の今後の方向性 ................................................................................................. 44

5.1.1. 他社間連携の検討の方向性 ...................................................................................... 45

5.1.2. セキュリティ・認証の検討の方向性 ........................................................................ 46

5.1.3. 製品安全の検討の方向性 .......................................................................................... 47

5.2. データ利活用の今後の方向性 ......................................................................................... 49

5.2.1. データ利活用の検討の方向性 ................................................................................... 50

5.2.2. プライバシー・個人情報保護の検討の方向性 ........................................................... 51

6. 終わりに ............................................................................................................................ 52

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1

1. 検討の概要

1.1. 検討の背景と目的

1.1.1. 検討の背景

IoT・ビッグデータ・人工知能(AI)等の IT の技術革新によって、実世界から得られたデータ

を分析・解析し、その結果を再び実世界にフィードバックする社会が現実になりつつあり、全て

の産業でデータを核としたビジネスモデルの革新が産業の垣根を越えて生じ、今後は産業構造の

大変革が予想されている。

欧米各国が先進的な取組を始める中、こうした変革への対応が遅れれば日本企業が国際競争を

失うおそれもあるため、データを活用した新たなビジネスモデルを創出する企業のチャレンジを

促進する環境を整備することが重要である。

経済産業省では、このような問題認識から IoT 推進の新たな枠組みの整備を進めており、産業

構造の大変革が予想される分野として、「平成 28 年新産業構造ビジョン中間整理」(平成 28 年4

月産業構造審議会新産業構造部会)でも「スマートハウス」が有力分野とされているところであ

る。

図表 1.1-1 IoT・ビッグデータ・AI 等による有力なビジネス分野

出典:産業構造審議会 商務流通情報分科会 情報経済小委員会 中間取りまとめ報告書 平成 27年(2015年)5月

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2

本検討においては、家電製品・住宅設備機器をネットワークに接続した「スマートハウス」か

ら、家電製品・住宅設備機器に加えて、様々なセンサー・通信機能を有する機器(以下「家庭内

機器」と呼ぶ。)をネットワークに接続することで取得できる家庭内データの利活用により、生

活空間(暮らし)をカスタマイズ可能となる将来の状態を「スマートホーム」と呼称することと

した。図表 1.1-2 スマートホームのイメージを示す。

図表 1.1-2 スマートハウスから「スマートホーム」へ

スマートホーム分野において、この新たな枠組みの中でビジネス環境の整備を適切に推進する

ためには、これまでの家電製品を中心とした家庭内機器によるスマートホームの取組やビジネス

の現状を把握した上で、IoT 技術を用いて家庭内機器をネットワーク化したスマートホームの今

後のあり方を検討することが求められている。

1.1.2. 検討の目的

前述の背景に基づき、本検討では以下を目的として実施する。

IoT 技術を用いて家庭内機器をネットワーク化したスマートホームについて、スマートホー

ムの全体像を整理する。

IoT 技術を用いて家庭内機器をネットワーク化したスマートホームについて、家庭内機器の

現状を踏まえ、メーカー間をまたいだ機器接続やそのための認証方式・セキュリティ要件や

制御、つながることによる製品安全、データ収集の仕組み、プライバシーなどを中心として、

今後、取り組むべき事項を明らかにする。

家電製品・住宅設備機器

ネットワーク化

家電製品・住宅設備機器

生活空間(暮らし)

ネットワーク化

家庭内から取得可能なデータの質・量の拡大

データ利活用による生活空間(暮らし)の高度化

取得可能な家庭内データ

スマートハウス スマートホーム

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3

1.2. 検討体制・内容と実施方法

1.2.1. 検討体制と検討内容

(1) ワーキンググループ・サブワーキンググループの設置・運営

本検討では、有識者で構成されるスマートホームワーキンググループ(以下「WG」という。)、

接続検討サブワーキンググループ(以下「接続検討SWG」という。)、データ利活用サブワーキ

ンググループ(以下「データ利活用SWG」という。)の3つの組織体の設置・運営を通じて、そ

れぞれ次の検討を行った。

· スマートホームWG

スマートホームにおける全体像を整理するとともに、今後取り組むべき事項について検討

し、取りまとめる。

· 接続検討SWG

機器に関して、他社間連携を実現する接続方法、他社間連携のもとでのセキュリティ・認

証、製品安全の在り方について整理する。

· データ利活用SWG

ユースケースに関して、スマートホームにて収集されるデータを活用して、サービス視点

でのユースケースの創出、プライバシーへの考慮について検討する。

(2) 検討体制

スマートホームWGは以下の6名の委員等により構成した。

図表 1.2-1 スマートホームWG委員名簿(五十音順、敬称略)

座長

一色 正男

神奈川工科大学 創造工学部 ホームエレクトロニクス開発学科 教授

委員

石川 雅紀 神戸大学大学院 経済学研究科 教授

柴崎 亮介 東京大学 空間情報科学研究センター 教授

新 誠一 電気通信大学 情報理工学研究科 教授

丹 康雄 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 教授

向殿 政男

明治大学 顧問・名誉教授

オブザーバー

一般財団法人 家電製品協会

一般社団法人 住宅生産団体連合会

一般社団法人 電子情報技術産業協会

一般社団法人 日本電機工業会

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接続検討SWGは以下の5名の委員等により構成した。

図表 1.2-2 接続検討SWG委員名簿(五十音順、敬称略)

主査

新 誠一

電気通信大学 情報理工学研究科 教授

委員

信太 洋行 東京都市大学 都市生活学部 准教授

住谷 淳吉 一般財団法人 電気安全環境研究所 電気製品安全センター 所長

丹 康雄 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 教授

吉岡 克成

横浜国立大学大学院 環境情報研究院/先端科学高等研究院 准教授

オブザーバー

一般財団法人 家電製品協会

一般社団法人 住宅生産団体連合会

一般社団法人 電子情報技術産業協会

一般社団法人 日本電機工業会

データ利活用SWGは以下の6名の委員等により構成した。

図表 1.2-3 データ利活用SWG委員名簿(五十音順、敬称略)

主査

柴崎 亮介

東京大学 空間情報科学研究センター 教授

委員

板倉 陽一郎 ひかり総合法律事務所 弁護士

関田 隆一 福山大学 工学部 スマートシステム学科 准教授

竹中 毅 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人間情報研究部門

サービス設計学研究グループ 主任研究員

原 辰徳 東京大学 人工物工学研究センター 准教授

村上 進亮

東京大学大学院 工学研究科 システム創成学専攻 准教授

オブザーバー

一般財団法人 家電製品協会

一般社団法人 住宅生産団体連合会

一般社団法人 電子情報技術産業協会

一般社団法人 日本電機工業会

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1.2.2. 検討の実施方法

(1) スマートホームWG・接続検討SWG・データ利活用SWGの開催

本検討では、第1回スマートホームWGにて検討の方向性を示した後、具体的な論点について、

接続検討SWG、データ利活用SWGにおいて検討を進めた。

各SWGの委員等の意見を踏まえ、スマートホームを実現に向けた今後の検討事項を取りまと

めた。スマートホームWG及び各SWGの議題を図表 1.2-4 に示す。

図表 1.2-4 スマートホームWG・接続検討SWG・データ利活用SWGの開催日程・議題

日 時 議 題

第1回

スマートホームWG

平成 28 年 11月 28 日(月)

18:00~19:15

1.検討会の開催要綱及び情報の取扱い等について

2.スマートホームの実現に向けた現状と検討の方向性について

3.サブワーキンググループの主査の選定について

4.その他

第1回

データ利活用SWG

平成 28 年 11月 29 日(火)

18:00~19:50

1.検討会の開催要綱及び情報の取扱い等について

2.スマートホームにおけるサービスの現状とデータ利活用の課題につ

いて

3.その他

第1回

接続検討SWG

平成 29 年1月 19 日(木)

9:00~10:00

1.検討会の開催要綱及び情報の取扱い等について

2.スマートホームにおける機器接続等の現状と将来像の実現に向けた

検討の方向性について

3.その他

第2回

データ利活用SWG

平成 29 年1月 26 日(木)

16:30~17:55

1.スマートホームにおけるデータ利活用等の現状と将来像の実現に向

けた検討の方向性について

2.その他

第2回

接続検討SWG

平成 29 年 2月 7日(火)

18:00~19:25

1.他社間連携、セキュリティ・認証、製品安全に関する今後の方向性

(案)について

2.関係団体へのヒアリング

3.その他

第2回

スマートホームWG

第3回

接続検討SWG

第3回

データ利活用SWG

平成 29 年 3月 13 日(月)

9:00~10:50

1. 「スマートホームの実現に向けた機器接続・データ利活用等の検討

事項」報告書案について

2.その他

(2) データ利活用調査

文献調査及び米国での企業ヒアリング調査等を通じて、スマートホームにおけるデータ利活用

の情報収集を行った。

文献調査では、スマートホームに関する企業やアライアンス、調査会社等による既存の調査結

果、学術論文あるいは事例に関する文献(Web サイト等も含む。)を調査し、必要な情報の抽出、

整理を行った。

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6

また、米国での企業ヒアリング調査等では、調査から得られた情報を基に、機器メーカーのデ

ータ利活用ビジネスの取組、プラットフォーマーとのアライアンスの動向、ユースケースの動向

等について有益な知見を得るという観点で、海外企業にヒアリングを実施し、得られた知見を本

調査の今後の検討事項に反映した。

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7

2. これまでの国内の取組とスマートホームの将来像と課題

2.1. 国内における取組状況

2.1.1. 国際標準規格の普及と実証事業等の取組

これまでの我が国におけるスマートホームの取組は、1971 年のマイクロプロセッサーの登場に

よるマイコン家電に始まり、コンピュータ・ネットワークの進化とともに家庭内機器の最適運転・

省エネルギー運転などのコントロール化が指向されてきた。

1990 年代にはインターネットの商用利用が開始され、家庭内機器のネットワーク化の進展によ

り、家庭内機器同士をつなぐホームネットワークのオープンな通信規格として「ECONET」が

1997 年に開発された。しかしながら、「ECONET」は家庭内機器の細やかな制御が実現できる一

方で、OSI 参照モデルの物理層までを規定していたことが普及の技術的障害となっていた。

そこで、物理層は一般的な IP アドレスを使い、その上に ECHONET のプロトコルをのせる新

しい通信プロトコルとして「ECHONET Lite」が 2011 年 7 月にリリースされ、同年 12 月には

HEMS(Home Energy Management System、以下「HEMS」という。)の標準 IF となった。

以降、これまで節電と更なる省エネを推進するためのエネルギーマネジメントシステムの構築

に向け、HEMS を中心としたオープンな通信規格「ECHONET Lite」の普及活動を実施してき

た。

「ECHONET Lite」普及に向けては、「相互接続性の確保」と「更なる活用の推進」に取り組

んできており、国際標準規格となった今後も引き続き、アジア、米国、欧州等に、普及に向けた

活動を実施していくものである。

「更なる活用の推進」では、HEMS から得られる電力利用データを利活用し、単なる省エネに

留まらない新たなビジネスモデルを確立すべく、平成 26 年度、平成 27 年度の2か年において「大

規模 HEMS 情報基盤整備事業」を実施し、次に挙げる4つの成果を得ている。

①大規模 HEMS 情報基盤の構築・運用・高度化

全国約1万4千世帯のモニター宅に HEMS を導入し、各家庭の電力データを⼀元的にクラウ

ド管理する情報基盤のシステムを構築するとともに、実際の運用を通じて、機能の改善・高度

化を実施するとともに、約1年間に渡って大きな障害なく運用を実施した。

②HEMS データ利活用事業者への API 標準仕様書の策定

HEMS データを取得する API 標準仕様書を策定するとともに、実装した API を介して、約

1.4 万世帯の CT 及び約 7,700 世帯のスマートメーターから取得した電力データを、安定的に、

かつ、10-30 分のタイムラグで、サービサーに提供可能であることを確認した。

また、モニター向けに、単なる HEMS の省エネサービスに留まらず、各モニターのニーズに

応じて、「見守りサービス」、「クーポンやポイントを利用した来店サービス」など、暮らしを便

利で豊かにするサービスを提供した。

③プライバシーに配慮した電力利用データの利活用環境の検討

利用者の実際の声を反映したプライバシー上の対応策を検討し、消費者が安心できる、プラ

イバシーに配慮した HEMS データ利活用を進めるべく、「HEMS データ取扱マニュアルα版」

を策定した。

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8

④大規模 HEMS 情報基盤の効果検証

大規模 HEMS 情報基盤を通じて、合計 31 種類の HEMS データ利活用サービスをモニター

に提供。HEMS データ利活用サービスの利用が、モニターの省エネ・節電意識の向上につなが

り省エネを実現した。

国内におけるスマートホームの取組として、ECHONET Lite の普及促進の活動及び大規模

HEMS 情報基盤整備事業の概要を図表 2.1-1 に示す。

図表 2.1-1 国内におけるスマートホームの取組

出典:平成 27 年度 大規模 HEMS 情報基盤整備事業 活動概要 平成 28 年(2016 年)3 月

2.1.2. これまでの実証事業等の取組における課題

(1) 平成 20年度以降の主な実証事業等の取組

平成 20 年度以降、「大規模 HEMS 情報基盤整備事業」までのスマートホーム関連での主な実

証事業等の取組は、図表 2.1-2 に示すように、主にエネルギーマネジメントを中心とした家庭内

機器の相互接続性の強化への取組が主であった。

ECHONET Lite規格の普及 大規模HEMS情報基盤整備事業(H26-H27)の成果

相互接続性の確保

更なる活用の促進

「産学官」の協業体制の構築 「国際標準化」の推進

業界と連携した相互接続性強 実証を通じた新サービス創出

大規模HEMS情報基盤の構築・運用・高度化

HEMSデータ利活用事業者へのAPI標準仕様書の策定

プライバシーに配慮した電力利用データの利活用環境の検討

今後も引き続き普及に向けた活動を実施

大規模HEMS情報基盤の効果検証

大規模HEMS情報基盤からHEMSデータを取得するAPI標準仕様書を策定

実装したAPIを介して、スマートメーター等から取得した電力データを安定的に、かつ10-30分のタイムラグで、サービサーに提供可能なことを確認、等

プライバシーに配慮したHEMSデータ利活用を進めるべくHEMSデータ利活用マニュアル(案)を作成大規模HEMS情報基盤を通じて、合計31種類ものHEMS

データ利活用サービスをモニター様に提供。HEMSデータ利活用サービスの利用が、モニター様の省エネ・節電意識の向上に繋がり省エネを実現。

HEMSデータ利活用事業者システム

HEMSデータ利活用事業者システム

標準API

大規模HEMS情報基盤

・・・・

HEMSデータ

データ提供 データ提供

機器

HEMS

HEMS事業者システム

データ送信

・・・・

機器

HEMS

データ送信

・・・・

機器

HEMS

データ送信

・・・・

各種サービス提供

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9

図表 2.1-2 国内における平成 20 年度以降の主なスマートホームの取組

No 実証事業等の名称 実施年度 概要 主な分野

1 スマートハウス

実証プロジェクト

※経済産業省委託事業

平成 21 年度

(2009 年度)

ユーザーの多様なライフスタイルに応じ、家庭

用太陽電池や蓄電池等のエネルギー機器、家

電、住宅機器等について遠隔制御等の外部コン

トロールを可能とし、住宅全体におけるエネル

ギーマネジメントを実現した。

接続機器から得られる利用情報やユーザーが

入力する好みの情報を活用した新サービスの

創出を目標に各種実証事業を実施。

サービス創出の検討では、アンケート調査から

有用性評価等により可能性や課題を整理。

エネルギー

マネジメント

2 米国ニューメキシコ

実証事業

※NEDO(新エネルギー・

産業技術総合開発機構)委託

事業

平成 21 年度

(2009 年度)~

平成 23 年度

(2012 年度)

米国側建築の住宅に日本の HEMS を導入した

スマートハウスにて実生活環境を再現した。

太陽光発電量予測を考慮し家庭内のエネルギ

ー機器を運転制御することによる自動デマン

ドレスポンスを実現した。

エネルギー

マネジメント

3 「うちエコ診断」検証事業 平成 23 年度

(2011 年度)

凸版印刷株式会社は、環境省の平成 23 年度家

庭エコ診断効果検証実測調査事業を受託し、日

本アイ・ビー・エム株式会社と共同で HEMS

を使った全国約 1000 世帯の温室効果ガス排出

状況を実測し、そのデータの分析によって家庭

部門における効果的な省エネ行動を支援した。

エネルギー

マネジメント

4 次世代エネルギー・

社会システム実証

※経済産業省委託事業

平成 23 年度

(2011 年度)~

平成 26 年度

(2014 年度)

横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州

市でスマートコミュニティ実証事業を実施し

た。

・神奈川県横浜市(広域大都市型)

住宅約 4000 戸、大規模ビル等約 10 棟を対象

とした大規模な実証。(東芝・東京電力)

・愛知県豊田市(戸別住宅型)

創エネ、蓄エネ機器を導入した 67 戸の新築

住宅を中心とし、地産地消を行う実証を実施。

エネルギー

マネジメント

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10

No 実証事業等の名称 実施年度 概要 主な分野

5 エネルギーマネジメント

システム標準化における

接続・制御技術研究事業

(一般財団法人 エネルギー

総合工学研究所(IAE))

※経済産業省委託事業

平成 24 年度

(2012 年度)~

平成 26 年度

(2014 年度)

エネルギーマネジメントシステムの国際標準

化に向けた総合戦略の推進を担う。

・ECHONET Lite を用いた EMS の国内外に

おける普及促進に関する工程表の策定

・エネルギーマネジメントシステムの国際標準

化の促進

等を実施

エネルギー

マネジメント

6 エネルギーマネジメント

システム標準化における

接続・制御技術研究事業

HEMS 認証支援センター

(神奈川工科大学)

※経済産業省委託事業

平成 24 年度

(2012 年度)~

平成 26 年度

(2014 年度)

公知な標準インターフェースである

「ECHONET Lite」を活用した相互接続検証

の環境整備を担う。

「HEMS 認証支援センター」として、機器認

証データ採取や相互接続試験を行う設備を整

え、試験設備を持たない企業に対し、機器の試

験が公平かつ効率的に行える環境を提供。

エネルギー

マネジメント

7 エネルギーマネジメント

システム標準化における

接続・制御技術研究事業

EMS(エネルギーマネジメ

ントシステム) 新宿実証セ

ンター

(早稲田大学)

※経済産業省委託事業

平成 24 年度

(2012 年度)~

平成 26 年度

(2014 年度)

デマンドレスポンス実現に向けた国際標準化

に関わる先端研究を実施。

「EMS 新宿実証センター」の設備では、

実証事業として下記の実証や試験を実施。

・スマートメーター ~HEMS~ 各機器を一気

通貫に接続し、総合的に制御する実証

・デマンドレスポンス指令と HEMS との連動

試験

・停電時の蓄電池による自立運転の実証

・スマートハウスと配電系統との連係試験

エネルギー

マネジメント

(2) 大規模 HEMS情報基盤整備事業(平成 26年度・平成 27年度)の取組

平成 26 年度、平成 27 年度の「大規模 HEMS 情報基盤整備事業」ではデータ利活用によるサ

ービス創出に向け、図表 2.1-3 に示すように、HEMS データの利活用を中心に「生活支援サービ

ス」、「クーポン配信サービス」、「省エネ支援サービス」、「その他」の計 31 サービスを実施した。

結果、実証事業の終了までに 30 サービスは提供を終了しており、サービスとしては定着してい

ない状況にある(No.29 の「スマートライフレポート発行サービス/エネルギーポイント発行サ

ービス」はサービス提供継続中)。

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11

図表 2.1-3 大規模 HEMS 情報基盤整備事業で提供した HEMS データ利活用サービス一覧

No. サービス分類 サービス名称 サービス提供事業者 提供エリア

1 生活支援

サービス

高齢者見守り・健康チェック

サービス

・福岡県みやま市

・株式会社エプコスマートエネルギ

ーカンパニー

福岡県みやま市

2 住宅履歴管理システム

「SMILE MINI」

株式会社構造計画研究所 東京・神奈川・千葉・

埼玉

3 生活総合支援サービス/

見守りサービス

株式会社 PONTE 全国

4 地域生活支援サービス 株式会社大和総研ビジネス・イノベ

ーション

神奈川県川崎市中原

5 電気・ガス料金プラン診断

サービス

・福岡県みやま市・福岡市

・株式会社エプコスマートエネルギ

ーカンパニー

福岡県みやま市

6 被災度判定計ネットワーク

情報提供サービス

株式会社ミサワホーム総合研究所 三重県桑名市

7 Let's HEMS コミュニテイ 株式会社エイベック研究所 全国

8 ご家族見守りサービス KDDI 株式会社 三重県桑名市

9 クーポン配信

サービス

節電へのご協力に応じた

クーポン配信サービス

東京急行電鉄株式会社 東京・神奈川

10 出かけて節電サービス 株式会社エネット 全国

11 ひかり TV エコでポイント

サービス

株式会社 NTT ぷらら

(協力:凸版印刷株式会社)

全国

12 省エネ支援

サービス

エコなくらしの診断サービス 東京ガス株式会社

(協力:凸版印刷株式会社)

東京ガスの都市ガス

供給エリア

13 仮想電気料金プランと

電気クーポンサービス

・福岡県みやま市

・株式会社エプコスマートエネルギ

ーカンパニー

福岡県みやま市

14 家庭用太陽光余剰電力

買取サービス

・福岡県みやま市

・株式会社エプコスマートエネルギ

ーカンパニー

福岡県みやま市

15 グランツリーアプリ HEMS

コンテンツ

・株式会社セブン&アイ・ネットメ

ディア

全国

16 ご家庭のエネルギーの見える化

とモニター様のライフスタイル

にあった生活関連サービス

株式会社 TOKAI ホールディングス 静岡県静岡市

Page 16: 「スマートホームの実現に向けた 機器接続・データ …平成28 年度IoT 推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (家庭内機器のネットワーク連携等調査)

12

No. サービス分類 サービス名称 サービス提供事業者 提供エリア

17 全電力会社の電気料金プランと

の比較サービス

・株式会社エプコスマートエネルギ

ーカンパニ

・福岡県福岡市

・全国

・福岡県福岡市

18 太陽光の自家消費と購入電力の

見える化サービス

株式会社エナリス 全国

19 蓄電池レンタルサービス ONE エネルギー株式会社 全国

20 デマンド予測に基づくピーク

告知と削減ポテンシャルの評価

住友電気工業株式会社 全国

21 電力見える化・世帯間分析・

比較サービス

株式会社グリーン発電会津 福島県会津地域

22 電力見える化・節電アドバイス

サービス

株式会社 Sassor 全国

23 ゆるっと・キリっと省エネ

プロジェクト

株式会社 NTT ファシリティーズ 全国

24 情報配信

サービス

桑名市からのお知らせサービス 三重県桑名市 三重県桑名市

25 テレビで配信!電力使用状況&

「チラ CM」

・株式会社 CBC テレビ

・株式会社博報堂 DY メディアパー

トナーズ

三重県桑名市・

四日市市

26 HEMS 端末によるお買い得情

報・ライフサポート情報

株式会社ヤマダ電機 三重県桑名市、

四日市市、三重郡、

いなべ市

27 お得情報配信サービス CCCマーケティング株式会社 三重県桑名市・

四日市市

28 その他

(HEMS デ

ータ利活用事

業者向けサー

ビス)

あなたの価値診断 大日本印刷株式会社 三重県桑名市・

四日市市・春日井市

29 スマートライフレポート発行

サービス/エネルギーポイント

発行サービス

凸版印刷株式会社

(NTT ぷらら、東京ガスと共同実

施)

全国

30 太陽光発電(PV)発電量予測サ

ービス

三菱電機インフォメーションシス

テムズ株式会社

三重県桑名市、

四日市市、春日井市

31 標準 APIなどを利用したアプリ

コンテスト

大和ハウス工業株式会社 全国

出典:平成 27年度 大規模 HEMS情報基盤整備事業活動概要(iエネ コンソーシアム)

提供を終了する iエネ コンソーシアム提供の HEMSデータ利活用サービス(iエネ コンソーシアム)

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(3) データ利活用による新規サービスの創出の課題

「大規模 HEMS 情報基盤整備事業」におけるデータ利活用による新規サービスの創出に対して

は、HEMS データ、電力利用データに限定したサービスであったこともあり、サービス利用者の

モニタアンケート結果に見られるように、ユーザーに魅力的なサービス提供、利用者が料金を利

用者が料金を支払ってまで受けたいと思えるサービスは少なかった点が課題として挙げられる。

図表 2.1-4 大規模 HEMS 情報基盤整備事業でのサービスに関するモニタアンケートの結果

出典:平成 27 年度大規模 HEMS 情報基盤整備事業活動概要(i エネ コンソーシアム)を基に作成

(4) 事業継続・拡張における課題

「大規模 HEMS 情報基盤整備事業」におけるスキームは、各家庭からのデータを集約・サービ

ス提供者に配布するための情報基盤を必要とするため、事業継続の観点からは情報基盤の構築、

運用・保守にかかる費用負担が挙げられる。また、HEMS データ以外の機器等からのデータを集

約・サービス提供者に配布する拡張性の観点からは、新たに各家庭等からのデータを収集・管理

するために情報基盤の拡張構築・運用・保守にかかる費用負担の課題や標準 API の設計・開発が

挙げられる。

そのため、今後の IoT 推進におけるスマートホームビジネスの環境整備に向けては、これまで

の実証事業等におけるスキームとその課題を踏まえた検討が必要になる。

大規模HEMS情報基盤

… …

サービス利用者(モニタ)

HEMSデータ

サービス分類 当初期待 満足度 継続意向 料金支払意向

見守り 2.0% 58.3% 27.0% 44.0%

機器メンテナンス 1.9% 50.8% 29.7% 24.3%

SNS 0.9% 53.5% 26.8% 10.2%

クーポンDR 11.5% 43.7% 36.1% 12.5%

見える化 62.7% 76.1% 42.8% 32.2%

省エネアドバイス 5.9% 53.1% 37.7% 20.6%

料金プラン提案 10.2% 49.9% 42.5% 22.8%

情報配信 4.0% 51.8% 39.9% 11.3%

<サービスに関するモニタアンケートの結果>

サービス提供者

API

エネルギーマネジメント 生活支援サービス(クーポン、見守り等)

サービス

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2.2. 家庭内機器の進化

現状、スマートホームを構成する家庭内機器の進化は機器単体の高機能化や機器と機器をつな

ぐ家庭内のネットワーク化から、家庭内機器から得られるデータを外部サーバーに蓄積・活用し

てユーザーにサービス提供する外部システムとのネットワーク化のフェーズに移行している段階

と考えられる。

「冷蔵庫」を例に挙げると、単に冷やす・冷凍する機能に加え、除菌・脱臭、急速冷凍、鮮度

を長く保つなどの高機能化や、音声認識技術により、ユーザーが声で食品名を伝えることで、冷

蔵庫内の食品を在庫管理し、ユーザーに期限近くの食品をお知らせする機能や、ユーザーが使い

たい食品を話すことで料理メニューをお知らせするなどの高機能化とともに、ネットワーク化に

より、冷蔵庫内のカメラで撮影した画像や在庫食品情報をスマートフォンに連携して、冷蔵庫内

の食品を確認することが可能となっている。

最新機器の動向として、コンシューマ・エレクトロニクス分野では世界最大の見本市であるコ

ンシューマー・エレクトロニクス・ショー (Consumer Electronics Show) 2017(以下「CES

2017」という。)における冷蔵庫の例を挙げる。最新の冷蔵庫では Wi-Fi 通信にて、天気予報、

音楽配信、レシピなど様々なアプリケーションを利用できるとともに、食品の消費期限を登録す

ることで期限間近となった食品のアラートやその食品を使った料理のお勧め表示、不足する食品

等を音声で注文することが可能な製品が登場しており、機器と情報サービスが連携することで新

たなサービス価値をユーザーに提供する動きがでてきている。

図表 2.2-1 家庭内機器(冷蔵庫)の最新動向(CES2017)

CES 2017 での最新機器の動向から、今後は機器の高機能化とともに機器間連携や外部サーバ

ー連携のネットワーク化が進展することで、「他の製品・サービスとの連携による高度化」が見込

まれ、エネルギー分野における「柔軟かつ効率的なエネルギー供給システム」の実現とともに、

スマートホーム分野における家庭内機器データとエネルギー・データの相互利活用の段階を経て、

長期的には「プラットフォームへの情報集約とデータのマルチユース」への進化が見込まれると

考えられる。ただし、「大規模 HEMS情報基盤整備事業」のようにプラットフォームへの情報集約・

情報連携には課題もあるため、相互利活用に向けた接続方式が整理された段階で、データ配置等

を含めた情報集約・情報連携の在り方を検討する必要があると考える。

2回ノックで冷蔵庫内を見える化

冷蔵庫内にカメラが内蔵されており、大型タッチパネルディスプレイを2回ノックすると、ドアを開くことなく冷蔵庫内の確認が可能

LGの「WEBOS」にて、天気予報、音楽など様々なアプリケーションが利用可能。SMART TAGメニューからは、冷蔵庫内の食品・飲み物が誰のモノか、消費期限の残日数を登録可能。

タグを追加

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図表 2.2-2 家庭内機器の進化

出典:産業構造審議会 新産業構造部会 新産業構造ビジョン中間整理 平成 28年(2016年)4月を基に作成

2.3. IoT・スマートホームビジネスの市場見込み

2.3.1. グローバルでみた IoT・スマートホーム関連ビジネスの市場見込み

IoT の市場規模の見通しについては、様々な調査機関・企業から公表されているが、本節では

米調査会社 IDC、米コンサルティング企業 McKinsey、米通信・ネットワークシステムベンダー

の Cisco Systems による市場予測を取り上げる。

IDC では、世界の IoT 市場規模について、2014 年の約 6,500 億ドルから、2020 年には 1.7 兆

ドルになると予測している。

McKinsey や Cisco Systems では、IT・ソフトウェア企業や電子部品メーカー、通信キャリア

等のサプライヤーによる IoT 関連の製品・サービスの直接的な売上のみを捉えるのではなく、IoT

を導入する企業のオペレーションの効率化を通じて実現されるコスト削減効果やマーケティング

の高度化に伴う売上増加等も含めた全体的な効果を“IoT によりもたらされる経済価値”として

試算しており、McKinsey では、2025 年における IoT による潜在的な経済効果(economic impact)

として、経済効果を 3.9~11.1 兆ドルと予測。Cisco Systems は、2013 年から 2022 年までの

10 年間に IoE がもたらす経済価値を 14.4 兆ドルと推計している。

このうち、McKinsey では、スマートホーム関連ビジネスでは、少なくとも 2,000 億ドルから

3,000 億ドルに達すると見込んでいる。

エネルギー

スマートホーム

家電、住宅設備等の機器

健康・予防

エコキュート等の自己学習・最適化

スマートメーターによる電力使用量見える化

機器単独での高度化

機器等のネットワーク化、見える化、遠隔制御等

他の製品・サービスとの連携による高度化

プラットフォームへの情報集約とデータの相互利活用家庭内エネルギー

第4次産業革命における再編の軸エリア最適 広域最適

需要家リソース利用

柔軟かつ効率的なエネルギー供給システム

・・・

HEMSを通じた複数機器の制御

新たに生まれる機能・価値

①広域電力の需給制御

①広域電力の需給制御

④EVの系統利用(蓄電)

③節電へのインセンティブ

①広域電力の需給制御

③節電へのインセンティブ

④EVの系統利用(蓄電)

⑧設備監視・保安

⑥家庭間電力融通(パリティ達成による)

①機器使用の見える化

⑦マスカスタマイゼーション化④健康サービスと

医療連携

②エネルギー利用の

見える化

②高度な見守りエネルギー

スマートホーム

⑥個々の生活に最適な広告

②見える化

⑧データプラットフォーム上で様々なサービス提供

②見守り

③宅配効率化(不在情報活用)

④健康情報サービス

① ②見える化

⑤小売(買物)の自律的効率化

③地域の物流効率化(予測の高度化)

⑤小売(買物)の⼀部自律化

⑥機器等と広告の融合

製造(電機、住宅、住宅設備)、電気・ガス・水道(小売)、・・・等

関連する産業(例)

レベル4(データの相互利活用)

製造(蓄電池、EV)、情報サービス(アグリゲータビジネス、ネガワット取引)・・・等

小売、広告、警備、道路貨物運送、医療・介護・・・等

住宅・生活関連産業全般に影響拡大警備サービスや、自動注文等の先行EV蓄電の利活用や節電ポイント等の先行

スマートメータ(全戸設置2024年)情報の利活用の先行

レベル3(機器等の連携拡大)レベル1/2(現状)

電気・ガス(小売)、電気機械器具製造、建設・不動産賃貸(住宅)、・・・等

現在 2020年代半ば頃

企業間連携やデータ利活用、プラットフォーム化にハードルあり

小売

物流

スマートホームでは、機器・サービスごとに様々な高度化が図られ、プラットフォームに統合⇒ 各分野(小売、健康等)の高度化・課題解決が進展

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図表 2.3-1 世界全体の IoT 市場・スマートホーム関連ビジネスの予測

(単位:兆ドル)

2025 年 IoT 市場予測分野 最小 最大

オフィス業務(エネルギー、業務管理等) 0.1 0.2

住居(オートメーション、セキュリティ等) 0.2 0.3

自動車(自動運転、保険等) 0.2 0.7

屋外(ロジスティクス等) 0.6 0.9

現場業務(業務最適化等) 0.2 0.9

小売(自動会計、支払) 0.4 1.2

市民生活(健康、福祉等) 0.2 1.6

都市(保険、公共交通等) 0.9 1.7

工場(運用管理、予防保守等) 1.2 3.7

出典:Unlocking the potential of the Internet of Things

McKinsey Global Institute(June 2015)

2.3.2. 国内における IoT・スマートホーム関連ビジネスの市場見込み

IoT の国内の市場規模については、IDC Japan の予測を取り上げる。IDC Japan では、国内の

IoT 市場は 2020 年まで年間平均成長率 16.9%で成長し、13.8 兆円に達すると予測している。

また、スマートホーム分野の市場規模については、富士経済の予測を取り上げる。富士経済で

は、国内のスマートハウス関連製品・システム市場全体では 2020 年に 2 兆 8,886 億円(2013 年

比 39.1%増)に達すると予測している。太陽光発電システム、HEMS、定置型リチウムイオン電

池の3品目がスマートハウスの中核システムであり、その中でも創エネを担う太陽光発電システ

ムが市場をけん引している。伸びとしては、特に V2G/V2H、EV/PHV、電力スマートメーター、

EV/PHV 充電器、マンション高圧一括受電サービスが大幅に伸びると予測されている。

0.1-0.2

0.2-0.3

0.2-0.7

0.6-0.9

0.2-0.9

0.4-1.2

0.2-1.6

0.9-1.7

1.2-3.7

オフィス業務(エネルギー、業務管理等)

住居(オートメーション、セキュリティ等)

自動車(自動運転、保険等)

屋外(ロジスティクス等)

現場業務(業務最適化等)

小売(自動会計、支払)

市民生活(健康、福祉等)

都市(保険、公共交通等)

工場(運用管理、予防保守等)

IoT市場予測 (兆ドル)最小 最大

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図表 2.3-2 国内のスマートホーム関連市場予測

(単位:百万円)

2013 年

実績

2020 年

予測

伸び率

(2020/2013)

創エネ・蓄エネ・省エネ、電力融通全体 1,311,640 1,874,100 142.9%

住宅用太陽光発電システム 960,500 497,700 51.8%

家庭用燃料電池システム 44,020 178,500 405.5%

太陽熱利用システム 3,970 3,460 87.2%

家庭用定置型リチウムイオン電池 9,490 26,540 279.7%

家庭用ヒートポンプ式給湯器 200,000 200,000 100.0%

EV/PHV 89,700 924,400 1030.5%

EV/PHV 充電器 3,000 21,000 700.0%

V2G/V2H 960 22,500 2343.8%

スマート家電・ネットワーク機器 全体 653,120 603,325 92.4%

スマート家電 615,250 556,270 90.4%

スマートタップ 320 305 95.3%

HGW(ホームゲートウェイ) 14,800 17,100 115.5%

ブロードバンドルータ 20,900 23,600 112.9%

高速 PLC モジュール 1,150 3,200 278.3%

Zig-Bee モジュール 700 1,520 217.1%

Wi-SUN モジュール - 1,330 -

エネルギー管理システム 全体 36,650 101,610 277.2%

直流給電システム - 48,000 -

HEMS 11,300 30,300 268.1%

MEMS - - -

住宅分電盤 25,350 23,310 92.0%

スマートメーター 全体 34,190 197,790 578.5%

電力スマートメーター 12,600 96,000 761.9%

ガススマートメーター 20,000 100,000 500.0%

水道スマートメーター 1,590 1,790 112.6%

エネルギー・ICT を活用したサービス 全体 40,820 111,740 273.7%

マンション高圧一括受電サービス 9,700 65,800 678.4%

「見える化」サービス 220 940 427.3%

DR(デマンドレスポンス)サービス - 1,000 -

ホーム ICT 生活支援サービス 30,900 44,000 142.4%

合計 2,076,420 2,888,565 139.1%

出典:富士経済 スマートハウス関連市場の将来展望(2014 年)から引用

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2.4. スマートホームの将来像

今後の家庭内機器の高機能化とともに外部システムとのネットワーク化の進展に伴い、家庭内

で連携する機器が増え、機器から取得できるデータの量・質が向上することで、エネルギー消費

の見える化や家電の On/Off 操作などに留まらない、生活空間のカスタマイズや製品ライフサイク

ルにおける改善などの、革新的なサービスが可能になると考えられる。

生活空間のカスタマイズでは、例えば、住宅の基本情報(図面等)と履歴情報(メンテナンス、

交換、リフォーム履歴等)を集約した「住宅履歴書」情報に家庭内機器の情報を付加することで、

住宅・家庭内機器の修繕履歴等を保持・管理することが可能となり、中古住宅や賃貸住宅の資産

価値の維持・向上につながると考えられる。また、製品ライフサイクルにおける改善では、物流

段階における在宅確認の高度化による再配達コストの削減、消費段階での情報収集による製品安

全情報の配信、リコール対策の高度化、廃棄段階での家電リサイクル・リユースの高度化などが

可能になると考えられる。

革新的サービスの創出により、サステイナブルな社会の実現に向けた「社会課題の解決」や、

事業者や個人における「ニーズの充足」につながることが期待される。

データ利活用による「社会課題の解決」に向けては、次の例が挙げられる。

· ライフログを活用して在宅介護の高度化や女性の社会進出促進のための生活支援

· 家電製品のトレーサビリティ向上による、リコール対策や廃家電の適正ルートでの排出促進

· 自律制御などの徹底した省エネによる、サステイナブルな社会の実現、等

また、データ利活用による「事業者・個人ニーズの充足」においては、次のサービス例が挙げ

られる。

· 消費者情報や機器稼働状況の分析による、消費者ニーズに合致した製品開発

· 外出先から自宅の状況把握や家電製品の自動制御による快適な生活の実現

図表 2.4-1 スマートホームの実現による革新的サービスの創出による期待

○開発段階における利用者のニーズ把握○生産コストの削減、等

○在宅確認の高度化による再配達コストの削減

○宅配サービスの高度化、等

○消費情報の収集による製品安全情報の配信

○リコール対策の高度化、等

○廃家電リサイクル率の向上○家電リサイクルの高度化、

革新的サービスの創出による期待スマートホームの実現(エネルギー消費の見える化などに留まらない、革新的なサービス)

社会課題の解決

日本国内で抱える社会的な課題を解決する。(例)・ライフログを活用して在宅介護の高度化や女性の社会進出促進のための生活支援。

・家電製品のトレーサビリティ向上による、リコール対策や廃家電の適正ルートでの排出促進。

・自律制御などの徹底した省エネによる、サステイナブルな社会の実現。

事業者・個人ニーズの充足

事業者や個人のニーズを充足する。(例)・消費者情報や機器稼働状況の分析による、消費者ニーズに合致した製品開発。

・外出先から自宅の状況把握や家電製品の自動制御による快適な生活の実現。

生活空間のカスタマイズ

製品ライフサイクルの各フェーズにおける改善

生産

物流

消費

廃棄

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(参考1)社会課題例(リコール)

リコール分野では、リコール対象製品の回収が進まないことに起因した製品事故などの社会課

題が存在しており、解決に向けて様々な取組が行われている。

一部では先進的な事例もあり、解決に向けてデータを利活用する余地はあると考えられる。

図表 2.4-2 スマートホームの実現によるリコール分野における期待

(参考2)社会課題例(リサイクル)

リサイクル分野では、家電リサイクル法において、社会全体として適正なリサイクルを推進す

ることを目指し、回収率目標を定め、その達成のため、関係主体は取組を進めているが、それに

対し、不適正ルートへの排出が、大きな社会問題・環境問題等へつながっており、家電リサイク

ル法に基づく排出を進めることが急務となっている。

その際、排出者へのアンケート調査結果によると、排出者の排出行動には利便性が大きな影響

を及ぼすと考えられるため、利便性向上が重要であるところ、スマートホーム実現によるデータ

利活用の可能性が広がる中、容易に排出手続が行えるようになるなど、排出者の利便性向上に繋

がる可能性がある。また、データ利活用により、静脈分野における物流コストの削減に繋がる可

能性もあり、動静脈連携として一体となった検討が望まれる。

図表 2.4-3 スマートホームの実現によるリサイクル分野における期待

Page 24: 「スマートホームの実現に向けた 機器接続・データ …平成28 年度IoT 推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (家庭内機器のネットワーク連携等調査)

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2.5. スマートホームの将来像の実現に向けて解決すべき課題

家庭内機器のネットワーク化が進展し、現状から「他の製品・サービスとの連携による高度化

の実現」に向けては、家庭用電気(電子)製品の IoT デバイスと紐付くサービスが、メーカー間

を超えた機器間連携・データ連携により、相互に接続し合い、従来の電力利用データにとどまら

ないデータ利活用により、新たな付加価値創出につながっていくことが期待される。

しかしながら、機器間連携とデータ利活用が進展しない主な理由には、機器の IoT 化とユース

ケース創出の関係は「鶏と卵」状態にあるという仮説が考えられる。

すなわち、機器メーカー側からは、例えば、機器をつなげた先のユースケースが見えづらい、

マネタイズのモデルが築けないといった理由により、機器をネットワークにつなげるモチベーシ

ョンがわかないと考えられる。また一方で、ユースケース側からは、つながる機器が少ない中で

具体的・魅力的なユースケースが想定できないと考えられる。そのため、機器の IoT 化とユース

ケースの創出は「鶏と卵」といった状況に陥っているため、機器・ユースケースごとの課題への

検討も進展がみられないと考えられる。

そのため、本検討では機器とユースケースにおける課題について、並行して検討する必要があ

ると考えた。

図表 2.5-1 機器とユースケースの課題構造

そこで、本検討では、スマートホームの将来像の実現に向け、現状からネットワーク化の進展

により、「他の製品・サービスとの連携による高度化の実現」に向けて解決すべき課題として、「①

機器」における課題として、他社間連携を実現する接続方法、他社間連携のもとでのセキュリテ

ィ・認証、製品安全を「接続検討 SWG」にて検討を実施することとした。

また、「②ユースケース」においては、スマートホームにて収集されるデータを活用して、サー

ビス視点でのユースケースの創出、プライバシーへの考慮について、「データ利活用 SWG」にて

検討を行うことした。

機器 ユースケース

「機器+通信」の時代における・他社間連携を実現する接続方法・セキュリティ・認証・製品安全

・魅力的なサービスの創出・プライバシーのあり方

ユースケースがないため、機器の課題解決が進まない。

機器の課題が解決しないため、ユースケースの創出が進まない。

課題課題

Page 25: 「スマートホームの実現に向けた 機器接続・データ …平成28 年度IoT 推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (家庭内機器のネットワーク連携等調査)

21

図表 2.5-2 課題への検討事項と SWG での検討

他社間連携を推進するためには、今後どのようなことを検討していくかを明らかにする。また、接続にあたって必要となるセキュリティ・認証、製品安全のあり方を整理する。

【検討事項】

①-1 他社間連携

①-2 セキュリティ・認証

①-3 製品安全

スマートホームにて収集されるデータを活用して利用者の利便性を高めるため、サービス視点でのユースケースをもとにプライバシーを考慮した上で、収集すべきデータ・要求事項・法規制等の個別課題をとりまとめる。

【検討事項】

②-1 データ利活用

②-2 プライバシー

①機器

②ユースケース

検討の目的

接続検討SWG

データ利活用SWG

検討SWG

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3. スマートホームの現状(接続検討とデータ利活用)

スマートホームにおける他社間連携、セキュリティ・認証、製品安全、データ利活用、プライ

バシーについての現状と検討事項を示す。

3.1. 他社間連携

3.1.1. 他社間連携の現状

スマートホームビジネスのプレイヤをグローバルでみると、日本以外では、主に欧州、米国に

て複数のアライアンスが立ち上がっている一方で、個社の取組も進展している状況である。

日本・欧州はエネルギーマネジメントのビジネスプレイヤが数多いが、米国ではエネルギーマ

ネジメントだけでなく、Google、Amazon、Apple などの情報サービス企業等が新たなサービス

のビジネスを推進している状況である。

図表 3.1-1 グローバルでみたスマートホーム関連のビジネスプレイヤ

(引用元資料):産業構造審議会 商務流通情報分科会 製品安全小委員会(第 4 回)、平成 28 年 6 月 30 日、ボッ

シュ・パナソニック HP

このような中、他社間連携の現状は、アライアンス内で接続方法を標準化する取組がある一方、

個社による取組もあり、先行的に取組を進めている主体ごとに接続方法が異なり、全体では多種

多様な接続方法となっている状況である。

例えば、図表 3.1-2 に示すように、サービス提供事業者のクラウド間や家庭内機器(IoT デバ

イス)間で接続方法は異なる状況である。

欧州

日本

米国

アライアンス

アライアンス

個社

個社

アライアンス 個社

<個社例>アマゾン:アマゾンダッシュボタン<個社例>

パナソニック:HEMS(AiSEG)

<個社例>ボッシュ:HomeConnect

家電on/off等の制御

エネルギー使用量の見える化 専用ボタンを押すことで注文

Page 27: 「スマートホームの実現に向けた 機器接続・データ …平成28 年度IoT 推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (家庭内機器のネットワーク連携等調査)

23

図表 3.1-2 スマートホームにおける接続の概況

現状の他社間連携モデルを接続点で整理すると、連携のポイントは a.サービス提供事業者・機

器メーカー間等のクラウド間連携、b.デバイス間連携に分けられ、さらに b.デバイス間連携は、

b-1.HEMS 等のコントローラデバイスを介した連携と b-2.IoT デバイス間の連携に分けられる。

連携の結節点ごとの各プレイヤの取組をマッピングすると、図表 3.1-3 のようになる。

インターネット/携帯電話通信事業者網

ゲートウェイ(例:家庭用ルータ) 3G

LTE

スマートフォン経由/連携

需要家の家庭内機器

サービス

提供事業者

A社

E社

C社

【連携①】E社:アプリケーション間のサービス連携を提供

専用 アプリケーション 専用アプリケーション アプリケーション

B社

コントローラ(例:HEMS)

エアコン

電子レンジ

冷蔵庫

スマートフォン

ルームセンサー

コントローラ経由 機器直接

コントローラ(例:KNX)

照明

洗濯機

シャッター

コントローラ経由

G社

X団体

Y団体

テレビ

F社

照明

【連携③】G社:IoTデバイス同士を接続可能とする規格を提供

【連携②】X団体:異なるメーカーのIoTデバイスを連携

D社

電子錠

・X 団体:異なるメーカーのデバイス同士を連携する規格

(例)太陽光による設備(蓄電池システム)の充電量が十分なタイミングで、自動で

洗濯機を稼働させる

・E 社:個社のアプリケーションを連携するサービス

(例)天気情報等のサービス同士を連携させることで、条件に応じて家電を制御する

・G 社: IoT デバイス同士を接続する規格

(例)ドアの鍵が閉められると照明の電源をオフにする

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図表 3.1-3 他社間連携の結節点における分類

他社間連携の結節点における分類をもとに、グローバルでみた主なプレイヤごとの規格につい

て、参画企業等を整理すると、特にデバイス間連携では、競合企業が多い状況が特徴として挙げ

られる(図表 3.1-4)。

図表 3.1-4 他社間連携の接続点の分類におけるアライアンス・個社の取組状況

コントローラ

IoTデバイス IoTデバイス IoTデバイス

b-1.コントローラ間連携

b-2.IoTデバイス間連携

a.クラウド間連携

b.デバイス間連携

欧州白物大手(Kellendonk等)

Qualcomm,LGElextrolux等

Intel,GE,SAMSUNG等

日系白物大手(Panasonic等)

Bosch Cisco ABB

他社間連携 プラットフォーム提供団体/企業と参画企業例

IoTデバイス IoTデバイス IoTデバイス

Texas Instruments,Panasonic等

Texas Instruments,Comcast Cable等

ETSI,CCSA,ATIS等 Flexeye,ARM,BT等Google, SAMSUNG,ARM等

Zapier

アライアンス

個社

アライアンス 個社

対 応 ア プ リ 数

地 域

規格/サービス名称

ア ラ イ ア ン ス参 画 企 業

規格/サービス名称

地 域

ア ラ イ ア ン ス参 画 企 業

アライアンスoneM2M

不明

不明

全数不明(ETSI、CCSA、ATIS

等)

不明

Allseen

英、米、他

OCF

米、他

HyperCat

AllJoyn IoTivity HyperCat

英、他

Thread Group

Thread

米、英、他

200社以上(Qualcomm,Elextrolux,Microsoft等)(2015年12月時点)

100社以上(Intel, Cisco, Sumson等)(2015年度時点)

40社(Flexeye、BT、ARM等)

220 社以上(Google、ARM、Sumsong等)(2015年11月時点)

少数 不明 不明 不明

米、他 米、他

個社Apple

Homekit

Google

Brillo

- (個社のため) - (個社のため)

不明 少数

b-

1.

コントローラ間連携

a.クラウド間連携

対応デバイ ス数

b-

2.IoT

デバイス間連携

地 域

ア ラ イ ア ン ス参 画 企 業

対応デバイ ス数

国 際 標 準

Zapier

米、他

Zapier

500以上(2016年7月時点)

- (個社のため)

ECHONET CONSORTIUM

・IEC62480,62457,62394

・ISO/IEC14543-4-3

275会員(東電、東芝等)(2016年7月時点)

センサー関連デバイス等の8デバイス103種類(2015年6月時点)

欧州、アジア他

KNX association

ISO/IEC14543-3

318会員(Texas Instruments 等)(2013年8月時点)

センサー関連デバイス等の8デバイス(2013年8月時点)

米、カナダ、他

ZIGBee alliance

なし

403会員(Philips 等)(2013年8月時点)

センサー関連デバイス等の8デバイス49製品(2013年8月時点)

EEBus initiative

IEC62746

全数不明(Kellendonk他)

不明

Google/Nest

不明

- (個社のため)

Amazon.com

米、他

不明

mozaiq

不明

Bosch,cisco,ABB

不明

独、米、他

IFTTT

-(個社のため)

305(2016年5月時点)

米、日、他

IFTTT

Yahoo! Japan

- (個社のため)

48(2016年5月時点)うち、スマートホーム関連10

myThings

b.デバイス間連携

米、他

不明

- (個社のため)

オーディオデバイス等の200デバイス以上(2015年8月時点)

規格/サービス名称 ECHONET Lite KNX SEP(ZigBee)3.0 EEBus Nest Labs Amazon Echo

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3.1.2. 他社間連携における検討事項

グローバルでのアライアンス・個別企業の取組状況を基に他社間連携方法の在り方を検討する

と、デバイス間連携は既に複数のアライアンスによる取組が行われており、我が国でも

ECHONET Lite が国際標準化を進めている状況である。しかしながら、規格が乱立している状況

のため、異なるアライアンス間での他社間連携、標準化の進展には時間を要すると考えられる。

したがって、他社間連携を推進するには、数多くのアライアンス・個別企業が競合するデバイ

ス間連携よりもクラウド間連携の可能性が考えられる。

クラウド間連携は、グローバルでみると、先進企業では既に取組が始められている。一方で、

我が国ではまだ進展が見られていないため、他社間連携を推進する上では、クラウド間連携での

取組を推進することが重要と考えられる。

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3.2. セキュリティ・認証

3.2.1. セキュリティ・認証の現状

各種センサー・通信機能をもつ IoT 機器(以下「IoT デバイス」という。)がネットワークに接

続されることで、IoT デバイスやシステム等へのサイバー攻撃等によって、個人の生活データな

どの情報漏えいなどのセキュリティリスクの増大が懸念されている。

IoT デバイスのセキュリティリスクへの対策の考え方や具体的な対策例としては、「IoT セキュ

リティガイドライン」等の各種ガイドラインにて、各ステークホルダーが取り組むべき事項が示

されている。

特に「IoT 開発におけるセキュリティ設計の手引き」では、HEMS コントローラーを中心に接

続された HEMS 対応機器やそれ以外の接続機器へのセキュリティリスクが示されている。

ここで、本報告書の「セキュリティ・認証」は、IoT デバイスの接続における認証機能・認証

方式を含めたセキュリティ対策を示すものとする。

スマートホームにおけるセキュリティリスクを考える上での構成要素を図表 3.2-1 に示す。ス

マートホームの構成要素には、サービス事業者、ネットワーク、中継機器、IoT デバイスが挙げ

られる。

本報告書では、ネットワーク接続するデバイスを「IoT デバイス」(IoT を構成するデバイスや

システムの総称)とする。

図表 3.2-1 スマートホームの構成要素

出典:「IoT セキュリティガイドライン」、「IoT 開発におけるセキュリティ設計の手引き」を基に作成

スマートホームの構成要素について、IoT 特有の性質と想定されるリスクをみると、ネットワ

ークとクラウドサービス事業者は従来と IoT による新たなセキュリティ脅威が変わらないと考え

られる。そのため、スマートホームとしてセキュリティ・認証を考慮すべき対象は、「アプリケー

ションサービス」、「IoT デバイス/中継機器」、「利用者」の3者と考える。

スマートホームの構成要素

家庭用ルータ スマートフォン

アプリケーションサービス

インターネット 携帯電話通信網

中継機器

IoTデバイス

情報家電等

システム・サービス提供者・機器メーカー

利用者

利用者

ネットワーク

サービス事業者

屋外カメラHEMSコントローラー

クラウドサービス

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図表 3.2-2 スマートホームにおける IoT 特有のリスクを考慮すべき対象

出典:「IoT セキュリティガイドライン」、「IoT 開発におけるセキュリティ設計の手引き」を基に作成

「サービス事業者」と「IoT デバイスメーカー」については、「IoT セキュリティガイドライン」、

「IoT 開発におけるセキュリティ設計の手引き」等の各種ガイドラインに既知の脅威へのセキュリ

ティ対策例が示されており、図表 3.2-3 にスマートホームにおけるセキュリティ対策例を示す。

図表 3.2-3 スマートホームにおけるセキュリティ対策例

出典:「IoT セキュリティガイドライン」、「IoT 開発におけるセキュリティ設計の手引き」を基に作成

アプリケーションサービス

IoTデバイス/中継機器

利用者

スマートホームの構成要素

家庭用ルータ スマートフォン

アプリケーションサービス

インターネット 携帯電話通信網

中継機器

IoTデバイス

情報家電等

IoTによる新たなセキュリティ脅威の

有無

システム・サービス提供者・機器メーカー

利用者

利用者

ネットワーク

サービス事業者

従来と同様

新たなセキュリティ脅威がある

新たなセキュリティ脅威がある

IoT特有の性質と想定されるリスク

該当なし(※IoT特有の性質によらない)

(性質1)脅威の影響範囲・影響度合いが大きいこと

(性質6)開発者が想定していなかった接続が行なわれる可能性があること

(性質1)脅威の影響範囲・影響度合いが大きいこと(性質2)IoT機器のライフサイクルが長いこと(性質3)IoT機器に対する監視が行き届きにくいこと(性質4)IoT機器側とネットワーク側の環境や特性

の相互理解が不十分であること(性質5)IoT機器の機能・性能が限られていること(性質6)開発者が想定していなかった接続が行なわ

れる可能性があること

新たなセキュリティ脅威がある

スマートホームでセキュリティ・認証を考慮すべき対象

屋外カメラHEMSコントローラー

クラウドサービス

運用・保守

構築・接続

設計

アプリケーションサービス

スマートホームにおけるセキュリティ・認証の対象

IoTデバイス/中継機器

セキュリティ脅威例

不正アクセス

Dos攻撃

情報漏えい

ウイルス感染

不正アクセス/不正利用

Dos攻撃

盗聴・改ざん

情報漏えい

屋内

家庭用ルータ

屋外

コントローラー

情報家電等

セキュリティ対策例

3. 守るべきものを特定する4. つながることによるリスクを想定する5. つながりで波及するリスクを想定する6. 物理的なリスクを認識する7. 過去の事例に学ぶ

スマートフォン

対策例IoTセキュリティガイドラインでのセキュリティ対策例

1. 経営者がIoTセキュリティにコミットする2. 内部不正やミスに備える

8. 個々でも全体でも守れる設計をする9. つながる相手に迷惑をかけない設計をする

10. 安全安心を実現する設計の整合性をとる

11. 不特定の相手とつなげられても安全安心を確保できる設計をする

12. 安全安心を実現する設計の検証・評価を行う

13. 機器等がどのような状態かを把握し、記録する機能を設ける14. 機能及び用途に応じて適切にネットワークにつなげる15. 初期設定に留意する16. 認証機能を導入する

17. 出荷・リリース後も安全安心な状態を維持する18. 出荷・リリース後もIoTリスクを把握し、関係者に守ってもらいたいことを

伝える19. つながることをによるリスクを⼀般利用者にも知ってもらう20. IoTシステム・サービスにおける関係者の役割を認識する21. 脆弱な機器を把握し、適切に注意喚起を行う

分析

方針

・サーバセキュリティ・脆弱性対策等

IoT機器の開発からIoTサービスの提供まで、21のセキュリティ対策指針が示されている

・Dos対策

・データ暗号化

・脆弱性対策・ソフトウェア署名等

・脆弱性対策・ユーザー認証

・Dos対策

・通信路暗号化

・データ暗号化・出荷時状態リセット・耐タンパーH/W・耐タンパーS/W等

IPA IoT開発におけるセキュリティ設計の手引き

セキュリティ上の脅威がセーフティに影響を及ぼさないよう「設計の見える化」等が示されている。

(※ IPA IoT開発におけるセキュリティ設計の手引きでは対象外)

見守りサービス

エネルギー管理

購買管理

・・・

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また、IoT 機器・サービスを利用する「利用者」には、IoT セキュリティガイドラインにより、

以下の4つの留意すべきルールが示されている。

1.問合せ窓口やサポートがない機器やサービスの購入・利用を控える

・インターネットへの接続機器やサービスの問合せ窓口やサポートがない(もしくはサポー

ト期限切れ)場合、安全な状態で継続して機器やサービスを利用できない。

・問合せ窓口やサポートがない(もしくはサポート期限切れ)機器やサービスの購入・利用

を控える。

2. 初期設定に気をつける

・機器を初めて利用する際には、ID/パスワードを設定する。パスワードの設定では、機器購

入時のパスワードのままとしない、他の人とパスワードを共有しない、他のパスワードを

使い回さない、生年月日等他の人が推測し易いものは使用しない等の点に気をつける。

3. 使用しなくなった機器については電源を切る

・使用しなくなった機器や不具合が生じた機器をインターネットに接続したままでは、機器

が乗っ取られ、不正利用される恐れがある。

・使用しなくなった機器や不具合等が生じた機器は電源を切る。

4. 機器を手放す時はデータを消す

・機器を捨てる、売る、貸し出すなど、機器を手放す場合には機器に記憶されている情報の

削除を行わないと情報漏えいの恐れがある。

・機器を手放す際には、利用者のプライバシー情報が漏れないよう、情報を確実に削除する。

図表 3.2-4 利用者に求められる4つの利用ルール

出典:「IoT セキュリティガイドライン」を基に作成

スマートホームにおけるセキュリティ・認証の対象

利用者

セキュリティ脅威例

セキュリティ対策例

2. 初期設定に気をつける

・機器を初めて利用する際には、ID/パスワードを設定する。パスワードの設定では、機器購入時のパスワードのままとしない、他の人とパスワードを共有しない、他のパスワードを使い回さない、生年月日等他の人が推測し易いものは使用しない等の点に気をつける。

IoTセキュリティガイドラインでの利用ルール

1. 問合せ窓口やサポートがない機器やサービスの購入・利用を控える

・インターネットへの接続機器やサービスの問合せ窓口やサポートがない(もしくはサポート期限切れ)場合、安全な状態で継続して機器やサービスを利用できない。

・問合せ窓口やサポートがない(もしくはサポート期限切れ)機器やサービスの購入・利用を控える。

3. 使用しなくなった機器については電源を切る

・使用しなくなった機器や不具合が生じた機器をインターネットに接続したままでは、機器が乗っ取られ、不正利用される恐れがある。

・使用しなくなった機器や不具合等が生じた機器は電源を切る。

4. 機器を手放す時はデータを消す

・機器を捨てる、売る、貸し出すなど、機器を手放す場合には機器に記憶されている情報の削除を行わないと情報漏えいの恐れがある。

・機器を手放す際には、利用者のプライバシー情報が漏れないよう、情報を確実に削除する。

⼀般利用者が留意すべきルールを4つ挙げている。

セキュリティ脅威例 対策例

IPA IoT開発におけるセキュリティ設計の手引き

一般利用者へのセキュリティ脅威・対策例は対象外のため、記載なし

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3.2.2. セキュリティ・認証における検討事項

スマートホームにおける機器のセキュリティ対策においては、各ステークホルダーがセキュリ

ティ上の脅威(リスク)への対策に取り組むことや、ユーザーにも一定の IT リテラシーが求めら

れている。

しかし、上記対策が実施されていたとしても、次のセキュリティ脅威があると考えられる。

個々の機器メーカーのセキュリティ対策だけでは、十分でなく、セキュリティ対策が十分で

ない既存の機器をネットワークにつないだことによる脅威がある。

常時ネットワークに接続をしていない、都度接続する機器があると考えられる。

セキュリティ上の脅威がセーフティのハザード要因となるケースも考えられ、国際的にもセ

キュリティとセーフティを一体で検討する潮流があることから、セキュリティとセーフティ

を一体的に検討する必要がある。

EOL(End of Life)が長いという特性を持つ家電製品においては、出荷時点ではセキュリテ

ィ脅威への対策済みであっても、常に新たなセキュリティ脅威が生じることから、出荷後も

新たなセキュリティ脅威に対応する必要がある。

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3.3. 製品安全

3.3.1. 製品安全の現状

(1) 国内における製品安全の現状

スマートホームでは、一般消費者の遠隔操作によって家電製品に危険が生じる可能性があるた

め、平成 24 年度から、遠隔操作に対する設計上の配慮について検討が行われ、電気用品調査委員

会の審議・承認を経て、「遠隔操作に対する技術基準の解釈の追加要望」が提出された。

それを踏まえて、電気用品安全法では、電気用品及び配線器具について、それぞれ解釈別表第

八と解釈別表第四で、遠隔操作に関する製品安全基準への適用の考え方が示された。

電気用品、配線器具について、これまでの遠隔操作への対応状況を図表 3.3-1 に示す。

図表 3.3-1 家電製品の遠隔操作への対応

電気用品安全法の解釈別表第八及び第四で示された製品安全基準・範囲を比較すると、遠隔操

作の製品安全基準の規定は、電気用品(別表第八)と配線器具(別表第四)で違いはないが、配

線器具(別表第四)では、ユーザーに警告表示をすることで遠隔操作可能な配線器具の範囲を拡

大してきた。

電気用品安全法の解釈別表第八及び第四で示された製品安全基準・範囲を図表 3.3-2 に示す。

スマートホーム

配線器具

電気用品

家電の遠隔操作

電気用品を操作

•配線器具に対し、電気用品安全法解釈別表第四にて、遠隔操作に関する製品安全基準を規定(平成26年9月)•遠隔操作可能な配線器具の範囲を拡大(平成28年3月)

•電気用品に対し、電気用品安全法解釈別表第八にて、遠隔操作に関する製品安全基準を規定(平成25年5月)

これまでの対応状況

配線器具を介して電気用品を操作

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図表 3.3-2 遠隔操作に対する配線器具と電気用品の電気用品安全法の比較

(2) 海外における製品安全の検討事項

現在、家電製品(一部業務用を含む。)の国際標準の安全規格 IEC60335-1 において、遠隔操

作および安全担保に関わるソフトウェアのダウンロードへの追加要求事項について、議論されて

いる。

議論の内容は、遠隔操作については日本での電気用品安全法の解釈別表第八の改正内容と同等

の内容である。しかし、セキュリティ要件とソフトウェアのダウンロードについては、従来の概

念の変更や新たな概念に基づくものとなっている。

セキュリティ要件では、Public network の定義の範囲を拡大し、ゲートウェイなどを介してイ

ンターネットに接続される範囲を「Public network」とするため、住宅内、携帯回線も含まれ

ることとなる。

また、ソフトウェアのダウンロードでは、製品の安全担保に関わるものに限定し、機器が見え

る範囲からの書換えに制限することが議論されており、注視が必要である。

遠隔操作に対する電気用品安全法の解釈

遠隔操作の製品安全基準の規定

1.遠隔操作を行うことができる製品の判定方法 - 危険源がない又はリスク低減策により危険源がない機器と評価されるもの

電気用品(別表第八)

配線器具(別表第四)

○ ○

2.通信回線の故障に対する安全状態の維持 - 途絶でも安全状態を維持し、復旧しない場合も安全状態を確保できること

○ ○

3.不意な動作の抑制対策 - 手元操作が最優先されること- 機器付近の人で容易に通信回線の切り離しができること- 操作結果のフィードバック確認ができること

○ ○

4.動作の確実性 - 動作保証試験の実施及び取扱説明書等への記載- 操作機器の識別管理

○ ○

5.使用する宅内通信回線における動作の円滑性 - 外乱に対する誤動作防止- 通信回線接続時の再接続

○ ○

6.公衆回線を利用する場合の安全対策 - 途絶・故障等により安全性に影響を与えない対策を講じること ○ ○

7.2カ所以上からの遠隔操作 - 同時に2 カ所以上の遠隔操作を受けない対策を講じること ○ ○

8.誤操作防止対策 - 適切な誤操作防止対策を講じること ○ ○

9.出荷状態における遠隔操作機能の無効化 - 出荷状態において、遠隔操作機能を無効にすること ○ ○

10.遠隔操作可能な配線器具の範囲拡大 - 警告表示等を条件として、利用者が負荷機器を自由に選択できる配線器具にまで拡大

○ -条件付の

範囲拡大

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図表 3.3-3 IEC60335-1 の議論内容(日本の規格との相違点及び懸念点)

3.3.2. 製品安全の検討事項

スマートホームにおける機器の製品安全には、「IoT セキュリティガイドライン」にも示されて

いるように、セキュリティ上の脅威がセーフティに影響を及ぼさないよう、各機器メーカーに安

全安心設計の見える化に取り組むことが求められている。

しかし、上記対策が実施されていたとしても、セキュリティ・認証と同様な課題とともに次の

ような製品安全の担保についての課題があると考えられる。

セキュリティ上の脅威がセーフティのハザード要因となるケースも考えられ、国際的にもセ

キュリティとセーフティを一体で検討する潮流があることから、セキュリティとセーフティ

を一体的に検討する必要がある(セキュリティ・認証における検討事項再掲)。

製品安全の担保のあり方として、これまで機器自体の物理的な手段で安全性を担保する「機

械安全」をベースに、機器に搭載されたマイコン等の制御により安全を付加的に高める取組

がなされてきたが、今後ネットワークに接続する機器の登場に伴って、ネットワークに接続

することを前提として安全を提供する考え方が必要となる。

Public networkには住宅内や携帯回線を含み、通信には暗号化などセキュリティ対策を講じた通信方式を用いる。

従来のPublic networkの定義が変更され、現在の議論の定義では、ゲートウェイなどを介してインターネットに接続される範囲を「Publicnetwork」としており、住宅内、携帯回線も含まれることとなる。

~ IEC60335-1の議論内容(日本の規格との相違点および懸念点)~

セキュリティ要件の追加要求事項 ソフトウェアダウンロードの追加要求事項

ソフトウェアのダウンロードを製品の安全担保に関わるものに限定し、機器が見える範囲からの書換に制限する。

製品の安全性を最終的に確保するための制御にソフトウェアが使われている場合に対象となる。

製品安全に因らない、例えば製品の便利機能に該当するアプリケーションソフトウェアの書換は規格のスコープ外として議論の俎上に載っていない。

全ての通信が保護対象となり、暗号化などのセキュリティ対策が求められる。(保護すべき通信範囲と考え方を明確にする必要がある。)

安全担保に関わるソフトウェアダウンロードについて、日本国内とグローバルで異なる製造の対応が求められる。

インターネット3G/4G

G/W

ルーター

携帯回線

無線LAN

Bluetooth

携帯回線

ルーター ルーター

無線LANHUB

LAN

無線LAN

Bluetooth

住宅A 住宅B 住宅C

遠隔操作/モニタリング

凡例 Public network

ソフトウェアダウンロード

安全担保 製品機能 他

有線無線無線

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33

3.4. データ利活用

3.4.1. データ利活用(国内外)の現状

国内外のスマートホームビジネスについて、文献調査を基にデータ利活用に関して、国内外に

おける取組状況の違いを、「①ユースケース」、②「プレイヤ」、「③データ」の観点で調査・整理

した結果、次の3つの特徴が挙げられる。

① ユースケースについては、日本・欧州はエネルギー管理を中心とした取組であるが、米国

では人工知能を活用してより高度なサービスを実施している。

② プレイヤについては、日本・欧州は単独の大規模事業者が中心となって実施しているが、

米国では異業種連携やベンチャーの参入がなされている。

③ データは地域による大きな違いが無い。

上記の特徴から、データには違いがないものの、ユースケースやプレイヤでは「日本及び欧州」

と「米国」で違いが見られることから、データ利活用において高度化の余地は大きいと考えられ

る。日本・欧州・米国におけるスマートホームビジネスのデータ利活用の特徴を図表 3.4-1 に示

す。また、日本・欧州・米国におけるスマートホームビジネスへのデータ利活用の比較を図表 3.4-2

に示す。

図表 3.4-1 日本・欧州・米国におけるスマートホームビジネスのデータ利活用の特徴

サービス利用者

事業者

スマートホームデータ

・家庭の消費エネルギー・家電の利用状況・家庭の温度・湿度・家庭の空気

・家庭内の人の動き・設備の利用状況・設備の問題履歴・ドア・窓の開閉状態 、等

取得可能データ(想定)

③データ

大きな違いは無い

人工知能

日本・欧州の特徴

米国の特徴

②プレイヤ

単独の大規模事業者

が中心

②プレイヤ

異業種連携や

ベンチャー参入も

①ユースケース

エネルギー管理

が中心

①ユースケース

より高度な

サービスも

エネルギー使用量の見える化家電on/off等の制御

ユーザー特性に応じた制御

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図表 3.4-2 日本・欧州・米国におけるスマートホームビジネスへのデータ利活用の比較

3.4.2. データ利活用における検討事項

従来は、電力データの活用というデータを中心に検討を進めてきたため、多様なサービスの創

出につながらなかったのではないかと推測される。それは 3.4.1. に挙げた日本・欧州と米国の

ユースケースの特徴の差異に見て取れる。そのため、新たなサービスを創出するためには、サー

ビスを中心に検討を進めていくことが有効であると考えられる。また、サービスの創出により社

会的課題にも資すると考えられるところ、リコール分野、リサイクル分野における活用の方法に

ついても検討を行うこととした。

日本・欧州

地域データ利活用の現状

①ユースケース ②プレイヤ

<主なプレイヤ>・ 家電メーカー例)パナソニック、東芝、

Bosch、Philips・ インフラ事業者例)東京電力、東京ガス、

Deutsche Telekom、ABB

③利活用可能データ(※)

国内外で多少の差異はあるが、データ面で大きな違いは無い。

<データ例(想定)>・家庭の消費エネルギー・家電の利用状況・家庭の温度・湿度・家庭の空気(ハウスダスト等)・家庭内の人の動き・設備の利用状況・設備の問題履歴(水漏れ等)・ドア・窓の開閉状態・鍵の解錠/施錠・家屋周辺の映像・ユーザーの行動、位置情報・天気情報

米国 「エネルギー管理」が多いが、特性に応じた制御等、比較的高度なユースケースもある

比較的、ベンチャー企業の参入や、異業種を含むプレイヤ間連携が目立つ

<主なユースケース>・ HEMSによるエネルギー管理ECHONET LiteやKNX等を採用したHEMSで、エネルギー使用の見える化、家電on/off等の制御。

・ 見守りサービスボタン押下でかけつけ、エネルギー消費状況の通知、ドア・床・ベッド等の異常検知。

「エネルギー管理」が中心であり、日本では「見守り」が比較的充実している

大規模事業者が、単独で提供するサービスが中心

<国内で、あまり無いユースケースの具体例>・ Nest人工知能搭載のサーモスタット。居住者行動を機械学習し、特性に応じた温度調整が可能。

・ HomekitiPhone等で、照明、鍵、空調等の対応機器を⼀元的に制御。音声による制御も可能。

・ Amazon Echo音声認識エンジン内蔵スピーカー。音声指示で音楽再生・天気の通知等が可能。

・ Amazon Dash Button日用品購入デバイス。商品の数量等を設定しておくことで、ボタン押下で購入可能。

<国内で、あまり無いプレイヤ・連携の具体例>・ IFTTT(IT事業者・ベンチャー)様々なサービス同士をつないだ設定を可能とするプラットフォーム。(例:Garageio社の車庫ドア開閉システムと天気予報サービスで、雨天時に車庫を閉める設定)

・ Nest Labs(機器メーカー・ベンチャー)Nestをハブとして、家電メーカー・設備機器メーカー・自動車メーカー等と連携し、サービス提供。2014年に、Googleが買収。(例:車で帰宅時に、家に近づいたら温度調節)

データは国内外に大きな違いは無い

※データ例は想定のため、実際に取得しているデータを調査・検討することが望ましい。

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35

3.5. プライバシー

3.5.1. プライバシーの現状

現状のプライバシーに配慮したデータ取扱指針は、「平成 27 年度 大規模 HEMS 情報基盤整

備事業」にて整備された「HEMS データ利用サービス市場におけるデータ取扱マニュアル」があ

る。

サービス利用者とサービス提供主体となるサービサ、サービス利用者のデータを収集・加工・

管理するアグリゲータから構成されるデータ利活用ユースケースは、データとサービスの流れに

基づき、次の3パターンに類型化される。

①アグリゲータがサービス提供主体(サービサ)の場合

②アグリゲータがサービス提供主体(サービサ)の場合で第三者提供を伴う

③サービサがサービス提供主体

プライバシーの観点からは、データ取得やデータを第三者提供する際に、サービス利用者の同

意取得が必要と考えられる。そのため、サービス利用者とは、ユースケース①~③でデータ取得

による同意取得、ユースケース②・③では第三者取得提供への同意取得が必要となる。

データとサービスの流れに基づいたユースケース分類を図表 3.5-1 に示す。

図表 3.5-1 データとサービスの流れに基づいたユースケース分類

出典:スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会 HEMS データ利用サービス市場における

データ取扱マニュアル 2016 年 3 月

顧客情報や HEMS データの生データについては、データ取得に「同意取得すべき」という整理

になっており、第三者へのデータ提供に「同意取得が必要」という整理になっている。

また、生データを処理した加工情報のうち、解析によって推定される「在・不在」といった推

定情報については、「同意取得が必要」という整理なっており、その他、個人情報を除いた匿名加

工情報、統計情報の加工情報については、第三者提供にも同意取得は不要という整理になってい

る。

「HEMSデータ利用サービス市場におけるデータ取扱マニュアル」で、考え方が示された

※アクターの定義・ サービス利用者:HEMSデータを提供し、HEMSデータを利活用したサービスを享受する。・ アグリゲータ :消費者からHEMSデータを収集し、HEMSデータの管理・加工を行う。サービサにHEMSデータを提供する。・ サービサ :アグリゲータから提供されたHEMSデータを用いて、HEMSデータ利活用サービスを消費者に提供する。

ユースケース①:アグリゲータがサービス提供主体の場合

ユースケース③ サービサがサービス提供主体の場合

ユースケース② アグリゲータがサービス提供主体の場合。第三者提供を伴う

サービス利用者

アグリゲータ+

(サービサ)

データ取得

サービス提供

サービス契約

サービス利用者

アグリゲータ

データ取得

サービス提供

サービス契約

サービサ

データ取得

[第三者提供]

サービス提供

サービス利用者

アグリゲータデータ取得 データ取得

[第三者提供] サービササービサ

契約(情報提供)

サービス提供

契約(個別サービス)

サービス利用者⇒アグリゲータデータ取得することに対する同意取得が必要

アグリゲータ⇒サービサ第三者提供することに対する同意取得が必要

Page 40: 「スマートホームの実現に向けた 機器接続・データ …平成28 年度IoT 推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (家庭内機器のネットワーク連携等調査)

36

同意取得の要否について、個人情報保護法と併せて、現在の整理状況を図表 3.5-2 に示す。

図表 3.5-2 データ取得・第三者提供の同意取得の要否

3.5.2. プライバシーにおける検討事項

スマートホームの将来像の実現に向け、データ利活用におけるプライバシーの検討事項は、以

下の観点が挙げられる。

「HEMS データ利用サービス市場におけるデータ取扱マニュアル」のユースケースで整理さ

れたデータ取得、第三者提供の同意取得のパターンで不足例がないかといった観点が挙げら

れる。

プライバシーに配慮したデータ取扱指針は整備されている一方、基本的な考え方に合わせた

運用に努めていても、個別ケースでは、消費者意識に対する配慮等の面で批判や不安視され

る場合もある。そのため事業者は、個別ケースに応じて、社会の理解を得るなどの対応も必

要とされている。また、加工情報が「要配慮個人情報」になっていないかの確認も必要とな

る。

統計情報 HEMSサービス利用状況等の利用者の個人及び世帯に関する情報を、統計的に処理した情報

世代等、粗い粒度のセグメントでの集合値・電力量の統計・電気料金の統計・生活パターン統計、等

- ×

生データ

情報分類(大分類)

加工情報

対象情報 同意取得

顧客情報

HEMSデータ

推定情報 アグリゲータの解析によって推定された、HEMSデータ

HEMSの機器ID、設置情報、動作情報、積算電力量測定値等の情報

HEMSサービス利用者への連絡、世帯動向や利用者の詳細な分析に必要な情報

情報分類(中分類)

・在/不在情報・生活パターンの推定、等

・機器の属性・機器の設置状況・家電や住宅設備等の稼動状況

・電力量積算値、等

・氏名・性別・電話番号・居住地域・住所・世帯情報・職業・所得、等

主な対象データ情報概要データ取得 第三者提供

-

同意取得の要否 参考

<基本的な考え方>個人情報保護法上の個人情報に該当する場合、第三者提供は、原則としてあらかじめ本人の同意が必要である。

<直近の改正>平成27年9月の個人情報保護法改正(未施行)で、個人識別できないよう加工した情報を匿名加工情報とし、本人の同意を得なくても自由に利活用が可能になる予定である。

【凡例】 ◎同意取得が必要、○同意取得すべき、×定めていない、-対象外

個人情報保護法の考え方

<仕組み>サービス情報を利用者自身で管理したいニーズなどに対応した、情報を⼀元管理する仕組みを構築した事例もある。(同意手続き、同意済み契約の参照、等が可能)

※参考事例・【日本】PPM(実証)・【アメリカ】Green Button・【イギリス】midata

同意取得等の情報管理

匿名加工情報

平成27年9月の個人情報保護法改正(未施行)で導入される概念で、特定の個人を識別しないよう加工処理された、顧客情報やHEMS情報

⼀定の基準に基づく情報(匿名加工情報への処理手法や取扱は、今後、詳細化予定)

- ×

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37

4. スマートホームの最新動向を踏まえた今後の方向性

4.1. 米国企業・欧州企業等調査

CES 2017 にて、スマートホーム関連サービスを実施している米国企業・欧州企業等へのヒア

リング等を実施した。

スマートホーム関連機器を提供している機器メーカーの取組の概況としては、特に音声認識機

能を有する「Amazon Alexa」とのデバイス間連携が数多く実施されており、クラウド側に収集し

たデータに AI を適用して、利用者の行動パターンを学習するなどの独自の取組も見られたが、ベ

ースのトレンドは、機器のネットワーク化と機器の制御を指向しているとみられる。

各スマートホーム関連企業の取組状況を図表 4.1-1 に示す。

図表 4.1-1 CES2017 におけるスマートホーム関連企業の取組状況

No. 企業名 スマートホームへの取組

1 Vivint

元々はセキュリティ会社であり、2010 年にデバイス関連にも参入。

サービスとしてはドアベルカメラやサーモスタットなどを提供し、それら

は独自のディスプレイやスマホ等向けの App で I/F を提供している。

ディスプレイを兼ねたデバイスがハブの役割をしており、他のデバイスか

らの情報を自社クラウドに連携する。

自社クラウド上は、Sky という AI がデータ分析等によってサービスを支

援している。Sky は、大きく3つのフェーズでユーザーの行動パターンを

機械学習していく。初めは「質問(外出、帰宅等の各種シーンで実施した

いデバイス操作方法をユーザーに質問する)」で学習する。その後、「確

認(各種シーンでユーザーが好むと想定されるデバイス操作を実施するか

否か聞く)」で学習する。最終的には、「事後通知(各種シーンで自動的

にデバイス操作を行い、結果を通知する)」のフェーズとなる。

他社連携は Amazon Echo、Kwikset Smart Lock、Nest と実現している。

2 Whirlpool

家電メーカー。約 20 種類のコネクト家電をリリースした。

特にユニークなものは、以下のとおり。

<調理支援>

冷凍食品等の加工食品メーカーと連携することで、包装に付いているバー

コードを読み込み、適切な方法で自社製品のオーブンによる調理を行うこ

とができる。

<家電制御>

アプリで冷蔵庫、乾燥機の制御が可能。

他社連携は、Amazon Echo、Nest、Google Home、Apple Homekit と実

現している。Amazon Echo は、基本的にアプリでできること全てを音声

で対応している。なお、洗濯機は Amazon dash の Replenishment に対応

しており、洗剤を自動購入することができる。

コネクト家電として、スマホ等からリモートコントロールや、ボイスコン

トロールできることに取り組んでいる。

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No. 企業名 スマートホームへの取組

3 iDevice

デバイスメーカーとして、Android で操作できるデバイスを提供している。

照明、電源スイッチ、サーモスタットなどに対応している。シーンに応じ

た設定も可能。

全てがWi-Fiベースで、専用のハブとなるようなデバイスは必要としない。

他社連携は、Amazon Echo、Apple Homekit、Google Home と実現して

いる。

4 First Alert

センサーを中核としており、煙検知による異常時の通知、家庭内の温度・

湿度などの環境モニタリング、赤ちゃん部屋などを想定したカメラによる

呼吸数・温度・湿度などのモニタリング及び異常通知、サーモスタットな

どを提供している。

独自にモニタリング可能なディスプレイデバイスを提供している。

他社連携は、Amazon Echo、Apple Homekit、Google Home と実現して

いる。

5 Zmode

センサー及びデバイスメーカー。

センサー系は、煙検知、ガス・一酸化炭素検知、ドア・窓開閉、モーショ

ンセンサー等を提供しており、これらはカメラを備えたハブとなるデバイ

スを介して、クラウド上にデータを集めることが可能。

デバイス系は照明、スマートロック、ドアベル等を提供しており、基本的

に Wi-Fi で制御することが可能。

在宅・外出・睡眠などのシーンに応じたデバイス制御も可能。

6 Ring

ドアベルカメラを提供しており、不在時でもスマートフォンなどを使っ

て、遠隔で訪問者に対応することができる。

他社連携は、IFTTT、Samsung、ADT Plus、Smartthings、Kevo などと

実現している。

7 Kwiset

鍵メーカーで、アメリカで 70 年の歴史がある老舗企業。スマートロック

は、15 年前から参入。

スマートロックでは、通信方法などの仕組みに応じた3つのブランドを展

開している。

1つ目は Kevo で、Bluetooth 通信。DIY で設置することが可能。

2つ目は Premis で、Homekit 連携を前提とした仕組み。Siri による音声

制御や開閉の履歴管理、リモートコントロールや開閉可能なユーザー管理

(追加・削除など)が可能。

3つ目は SmartCode で、既存のホームセキュリティサービスをベースに

アドオンされた仕組み。Home Connect との連携も可能。

8 Fibaro

モーションセンサーを核とした様々なモニタリングや制御を行っており、

Z-Wave によるものと Wi-Fi による2種類がある。

他社製品である照明やスマートロック、サーモスタットなどの制御を実現

している。

他社連携は、Apple Homekit と実現している。

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No. 企業名 スマートホームへの取組

9 Xfinity Home

通信会社でケーブルテレビなどを展開しており、約5年前にホームセキュ

リティを中心としたデバイスに参入。

各種センサーやビデオを活用したホームセキュリティを中心に、サーモス

タットや照明制御などのサービスを提供しており、これらのデータはクラ

ウド上で管理され、独自のアプリでモニタリングや機器制御ができる。

10 Petcube

ペット向け給餌機を提供しており、遠隔での給餌・監視ができる。

2017 年 4 月から販売開始予定の新たな給餌機は、Amazon dash の

Replenishment に対応しており、餌を自動購入することができる。

11 Somfy

Protect/Myfox

様々なセンサーやカメラ、スマートロック等によって、ホームセキュリテ

ィサービスを提供している。

他社連携は、Amazon Echo、Nest、IFTTT と実現している

12 Anova

真空調理を可能にするデバイスであり、スマートフォンアプリと対応した

調理ができる

レシピ情報と連携して、それに合わせて適切に自動調整して調理すること

が可能。

13 OPCOM Link

GrowWall というサービスで、水と種をまくことによって、室内で野菜を

育てることができる(屋外には対応していない)。

カメラが備え付けられており、成長状況をモニタリングできる。

14

Shenzhen

Pilot Labs

Technologies

ホームアシスタントで、ボイスコントロールによって機器制御や音楽を再

生することなどができる。

Amazon Alexa の機能を内蔵している他、表情認識の機能をもつ。

15 Skybell

Technologies

ドアベルカメラを提供しており、不在時でもスマートフォンなどを使っ

て、遠隔で訪問者に対応することができる。

Wi-Fi ベースで実現している。

他社連携は、Amazon Echo、Nest、icontrol、Smartthings、IFTTT、Kwikset

等と実現している。

16 Home8

ホームセキュリティシステムを提供している。

セキュリティカメラの映像をスマートフォン等で確認でき、異常時の通知

を受け取ることもできる。

17 Withings

ノキアの子会社。

ヘアブラシによる髪の健康管理、体重計・体温計・血圧計による体の管理、

腕時計型ウエアラブル端末によるアクティビティ・睡眠管理、カメラ付き

センサーによる空気環境の管理などが可能。

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No. 企業名 スマートホームへの取組

18 Bosch

Home connect では、ハブとなる小型の四角いデバイスを介して、照明や

家電などの制御を行うことができる。

他社連携は、Home connect の規格に合わせる企業と連携している。

個別サービスで特にユニークなものとしては、mykie というキッチンアシ

スタントで、音声でのやりとりにより、調理方法を教えてくれる。背面に

プロジェクターを備えており、映像を照射できる。mykie の display は人

の目の形になる等、親しみを持ちやすくする工夫がある。また、キッチン

のファンでは、調理中の火力の強弱等に合わせて、強弱を制御することが

できる。

セキュリティカメラでは、センサーを備えることにより不審者等の動きに

合わせたり、照明を備えることにより鮮明な画像を撮ることを可能にした

りする工夫がされている。家庭内の空気をセンシングして、温度や湿度な

どを可視化する仕組みもある。

19 Samsung

Smart things で各家電をつなぐことと、個々の家電のスマート化を進めて

いる。

洗濯乾燥機は、洗濯機と乾燥機をそれぞれセパレートし、丁寧に扱う必要

がある素材のものとそうでないものを同時に洗濯及び乾燥させることを

可能にしている。

テレビは、配線を少なくする工夫として、電源コード以外の全てのコード

(USB,HDMI など)を光ファイバーで、少し離れたところに設置可能な

ハブにつないで利用できるようにしている。

ロボット掃除機は、Amazon Echo と連携し、音声による制御も可能。

冷蔵庫は、前面にディスプレイを備えており、冷蔵庫の中身を確認したり、

買い物リストを管理したり、レシピを確認したりする機能を備えている。

冷蔵庫の中身については、カメラが内蔵されており、食品の識別は初回の

み手入力で登録する(例:カメラの画像からリンゴを選択し、それがリン

ゴであることを登録する)と、以降は認識できるようになる。また、音楽

を聴いたり、天気などの情報を確認したりすることもできる。

20 LG

Electronics

SmartthinQ という規格で各家電をつなぐことと、個々の家電のスマート

化を進めている。

洗濯乾燥機は、洗濯機と乾燥機をそれぞれセパレートし、丁寧に扱う必要

がある素材のものとそうでないものを同時に洗濯及び乾燥させることを

可能にしている(LG 社と Samsung 社の洗濯乾燥機は上下の配置位置が

異なる)。

冷蔵庫は、前面にディスプレイを備えており、冷蔵庫の中身を確認したり、

買い物リストを管理したり、レシピを確認したりする機能を備えている。

また、音楽を聴いたり、天気などの情報を確認したりすることもできる。

ホームアシスタントはボイスコントロールによって機器制御や音楽の再

生などができる。Amazon Alexa の機能を内蔵している他、表情認識の機

能をもつ。

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No. 企業名 スマートホームへの取組

21 Haier

特徴的な個別機器として、冷蔵庫は、前面にディスプレイを備えており、

冷蔵庫の中身を確認したり、買い物リストを管理したり、レシピを確認し

たりする機能を備えている。また、音楽を聴いたり、天気などの情報を確

認したりすることもできる。

他社連携は、一部の家電製品が Apple Homekit と実現している。

22 August

Home

DIYのように個人で購入して必要に応じて改変することで、既存システム

に追加できるスマートロックデバイスを提供している。従来の鍵もそのま

ま使用できるよう、扉の外側ではなく内側にアドオンする。

他社連携は、主にApple Homekit、Amazon Echo、Google Homeと実現し

ている。

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4.2. 最新のトレンドと機器メーカーの今後の方向性

4.2.1. 音声認識デバイスの台頭

過去のスマートホームにおける機器連携のアプローチは、デバイス間やクラウド間と行った違

いはあるが、本質的には制御対象の機器同士の連携を主眼としていたと考えられる。他方、米国

Amazon が 2015 年に音声認識対応スピーカー「Echo」を販売後、音声によって家電等を制御し、

音声認識デバイスが UI となり、機器制御の中心的なポジションを占めるようになってきている。

特に、CES2017 では Amazon の音声認識 AI である「Alexa」や音声認識対応スピーカー「Echo」

に対応したデバイスが 700 点以上出展されたように、音声認識デバイスが新たな UI としての地

位を確立したと考えることが出来る。LG や GE アプライアンス、Phillips などの家電メーカーだ

けでなく、Huawei などの通信機器事業者や Ford、フォルクスワーゲンなどの自動車メーカーも

Amazon「Alexa」への対応製品を展示していることからも、多くの事業者から音声認識デバイス

が新たな UI として確実に位置付けられていることを伺うことが出来ると言える。

それら音声認識スピーカーの特徴としては、機器だけでなく、音楽配信や天気予報配信、ネッ

ト注文や検索などのユーザーに身近なサービスを提供可能であるという点であり、機器メーカー

はそのようなサービスと組み合わせることでブレイクスルーが生まれる可能性があると考えられ

る。例えば、ディスプレイ付の冷蔵庫に天気予報を出したり、在庫情報から自動で食料品を発注

するというようなサービスが考えられる。

ただし、それら音声認識スピーカーや操作 UI は最終的には消費者の嗜好によって選択される

物であり、機器メーカーとしては自社製品の販売促進の観点からも、それぞれに対応することが

考えられるため、1社独占になりにくいと言える。また各機器メーカーは特定の UI に従属する

ことなく、他の UI との連携を実施するとともに、複数種類の「操作・UI」機能(Amazon Alexa、

Apple Homekit など)につながりながらも、「操作・UI」を介さないデータ(機器稼働データな

ど)やその他データとの連携による付加価値サービスの提供により、差別化を図る方向へ取り組

むことが可能であるとも考えられる。

4.2.2. 機器メーカーの今後の方向性

あらゆる機器がネットワークに接続する機能を有するようになる中、最近では上記音声認識デ

バイスを代表とした複数の UI に対応する傾向が見て取れる。代表例として Phillips の「Hue」

は Amazon「Alexa」、Apple「HomeKit」、Google「GoogleHome」などに対応しており、それぞ

れの操作 UI から操作が可能である。また、米国スタートアップである August Home は前述の操

作 UI それぞれに対応しているが、それぞれの操作 UI とはクラウドを活用して接続されており、

自社独自で稼働情報などを収集し、それを活用したビジネス展開を検討しているところである。

今後、機器メーカーにおいて同様の取組が一般化する可能性があり、クラウド環境を活用するこ

とで、単なる機器売りのビジネスモデルからサービスとセットにしたソリューション型のビジネ

スモデルへの転換が図ることが可能と考えられる。そのためにはサービス層における操作 UI を

介さないデータの活用や、他のサービスとの連携により、機器の付加価値を向上させ、他社と差

別化を図ることが重要である。サービス層におけるクラウド間連携の促進が必要と言える。連携

のイメージ図を図表 4.2-1 に示す。

Page 47: 「スマートホームの実現に向けた 機器接続・データ …平成28 年度IoT 推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (家庭内機器のネットワーク連携等調査)

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図表 4.2-1 機器メーカーの今後の方向性

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5. スマートホームの目指す将来像に向け検証すべき論点

スマートホームの目指す将来像の実現に向け、接続検討 SWG、データ利活用 SWG にて、今後

検証すべき論点を挙げ、議論を実施し、今後の方向性と実証事業等での検証すべきポイントを整

理した。

5.1. 接続検討の今後の方向性

接続検討 SWG では、他社間連携、セキュリティ・認証、製品安全の観点について、今後検証

すべき論点を挙げ、第1回、第2回と2度の議論を実施し、それぞれについて、今後の検討の方

向性、実証事業等での検証すべきポイントを導いた。

第1回接続検討 SWG で挙げた検証すべき主な論点を図表 5.1-1 に示す。

図表 5.1-1 接続検討 SWG で挙げた検証すべき主な論点

他社間連携

・国際的な潮流を視野に、HttpsやJsonなどWeb標準のプロトコルの活用はどうか?・機器毎にネットワークに接続する状態を監視する仕組み(e.g.東電のスマートメーターオペレーションセンター)が必要になるのではないか?

・機器がつながるメーカークラウド、サービスクラウド、UIクラウドなど複数のクラウド環境が登場するため、それぞれの役割の整理が必要では無いか?

・クラウドへの接続方法として、常時接続と都度接続の二通りの考え方があるが、非常事態を想定して両方の手段を具備するべきでは無いか?

観点 検証すべき主な論点

セキュリティ・認証

・製品ライフサイクルが長い機器がネットワークにつながるため、例えば提供メーカーがサービス停止を行い放置されるケースが発生すると考えられる。当該機器はセキュリティホールになる危険性が高いため、何かしらの対策が必要では無いか?

・セキュリティチェックやファームウェアのアップデートなど、機器メーカーはネットワークに接続する機器の状態を監視し、「常に安心な状態」を提供するモデルへの転換が求められるのでは無いか?

・どこにどのデータがあるのかなど役割を明確にすることが、セキュリティモデルを検討する際に必要になるのではないか?

製品安全

・機能安全の考え方から、ネットワークに接続している利点を活かした考え方にシフトすべきでは無いか?その際に必要な論点は何か?

・使い方や機器の設置などに対して、データを活用してユーザにアドバイスを行うことで、故障率の低減など製品安全の向上に資するのでは無いか?

・個々の安全対策だけで無く、システム全体として製品安全を捉えた際に考慮すべき観点は何か?

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5.1.1. 他社間連携の検討の方向性

スマートホームの目指す将来像に対し、他社間連携の現状と米国調査を通じた最近のトレンド

をもとに、他社間連携の推進を図るために、第1回接続検討 SWG で提示した論点及び委員から

の指摘事項について、以下のとおり整理した。

(1) 現状と今後の検討の方向性

• 機器間連携の方式としては、クラウド間・デバイス間による方式に大別される。デバイス

間の連携においては、それぞれのプレイヤによって規格等の提案がなされている状況であ

り、一定程度促進がなされているが、規格間の連携はなかなか実現出来ていない状況であ

る。

• 他方、最近は UI や IoT プラットフォーム(各事業社の API を連携し、他社間連携を実現

する方法)の活用等、クラウドを活用した連携方式を採用するケースも現れ始めており、

本方式は簡便に他のサービスを利用できる利点がある。我が国においては未だクラウドを

活用したスキームについての取組がなかなか進展していない中、今後の方向性としてクラ

ウド活用の可能性を提示した。

• 具体的には機器メーカーは自社製品がつながるクラウド環境を構築し、UI クラウドに対

して自社の製品を制御する API や、データ取得の API を提供するモデルで有り、他の製

品もしくはサービスと掛け合わせたソリューションの提供や、クラウド環境に蓄積された

データを活用したプラットフォームビジネスなどの可能性が広がると考えられる。

• しかし、①ガラパゴス化しないための方策、②違うメーカーの機器を同じ UI で制御する

方法、③そもそものクラウドの運用にコストが掛かる、④ネットワークに接続する状態を

監視する仕組みが必要等の指摘があったほか、⑤クラウドへの接続が遮断された状況にお

ける危機回避の必要性も指摘された。

(2) 実証事業等での検証すべきポイント

今後の検討の方向性のうち、社会実装に向け、実証事業等で、まず検討すべきポイントと

しては、次の2点が挙げられる。

• クラウド間の連携においては、多くのアプリケーションで利用されているような Https

や Json など Web 標準のプロトコルを活用する。

• 機器がつながるメーカークラウド、サービスクラウド、UI クラウドなど複数のクラウド

環境が登場するため、それぞれの役割(データ蓄積・分析、ユーザー管理、制御命令連携

等)の整理に向けた検討を行うとともに、連携における課題や共通化すべき事項を抽出す

る(通信量やレイテンシー、緊急時の危機回避の観点等からエッジ側の活用も視野に入れ

た検討が望ましい。)。

(3) 実証事業等で検証した成果の活用方法

実証事業等を通じての成果を基に、他社間連携において、最低限共通化すべき事項が明確

になった際は、ガイドライン等の作成・ルール化を行うことが考えられる。

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5.1.2. セキュリティ・認証の検討の方向性

スマートホームの目指す将来像に対し、クラウドを活用したスキームを前提とした場合のセキ

ュリティ・認証について、第1回接続検討 SWG で提示した論点及び委員からの指摘事項につい

て、以下のとおり整理した。

(1) 現状と今後の検討の方向性

• セキュリティの世界は、攻撃者と防御者の進化は一進一退であり、家電製品などがネッ

トワークにつながることを前提とする時点で、組み込み型の対策では十分でなく、パソコ

ンやスマートフォンなどの情報通信機器と同じように、使用段階におけるリスク把握やセ

キュリティホールへの対策を講じる必要が生じると考えられる。

• また、クラウドを活用したスキームを前提として、様々な機器がネットワークに接続する

状況とすると、家電製品などの製品ライフサイクルが長い機器がネットワークに接続する

ため、例えば提供メーカーが知らない間に途中でサービスを停止してしまうケースや、ユ

ーザーがセキュリティ対策を行わず未対策のまま放置されるケースを想定し、メーカーに

よるセキュリティチェックやファームウェアのアップデートの必要性や機器メーカーは

自社製品について正常な状態であるか把握するために監視する必要性を提示した。また、

セキュリティチェックやファームウェアのアップデートをメーカーが提供するためには

メーカーのビジネスモデルが、機器売りモデルからソリューション提供モデルへ変革する

必要性があるとの意見もあった。

• しかし、①個々の機器だけでなく、ホームネットワーク全体としての視点が必要であり、

②その状態をユーザーが容易に確認出来る仕組みの構築が必要や、③開発ポートなど隠れ

た経路を悪用した攻撃の存在、④セキュリティレベルの低い機器の扱い、⑤セキュリティ

対策・監視を目的としたログの取得などの課題も指摘された。

(2) 実証事業等での検証すべきポイント

今後の検討の方向性から、社会実装に向け、実証事業等でまず検討すべきポイントとして

は、まずはつながった状態で何を把握可能なのか、から始める必要があること、つながった

状態でどこまでセキュリティレベルの有効性を確認できるかといった観点から、次の2点を

挙げた。

• ネットワークを通した稼働状況の監視や取得データの活用などによって、セキュリティチ

ェックやファームウェアのアップデートを行うための機器の状態把握が可能であるか検

討を行うとともに、出来なかった場合のセキュリティ担保のあり方について引き続き検討

を行う。

• どのような仕組みにより、システム全体としてのセキュリティレベルの把握が可能か、併

せてユーザーが把握するためにどのような仕組みが必要か、引き続き検討を行う。

(3) 実証事業等で検証した成果の活用方法

セキュリティを担保するためのオンラインによるファームウェアのアップデートのあり方

等について、実証事業を通じて確認されたリスクや問題点を基に、ガイドラインの作成等の

検討を行うことが考えられる。

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5.1.3. 製品安全の検討の方向性

スマートホームの目指す将来像に対し、クラウドを活用したスキームを前提とした場合の製品

安全のあり方について、第 1回接続検討SWGで提示した論点及び委員からの指摘事項について、

以下のとおり整理した。

(1) 現状と今後の検討の方向性

• 製品安全の担保のあり方として、これまで機器自体の物理的な手段で安全性を担保する

「機械安全」をベースに、機器に搭載されたマイコン等の制御により安全を付加的に高め

る取組がなされてきたが、今後ネットワークに接続する機器の登場に伴って、ネットワー

クに接続することを前提として安全を提供する考え方が必要では無いかと提示したとこ

ろ、賛同を得ることが出来た。機器の稼働情報を機器メーカーが取得・分析することで、

故障検知などが可能となり、ユーザーに対して常に安全な状態を提供出来るだけで無く、

メーカーとしても故障情報を詳細に把握することで、製品開発にフィードバックが出来る

などの利点があると考えられる。また、委員からは、具体的な例として機器の使い方や設

置状況などのデータを取得し、ユーザーに通知することで、誤使用や経年劣化による事故

の防止に資すると考えられることに加え、機器のトレーサビリティを高めリコール対策と

しても有効との意見があった。

• 一方で、①機器を繋いだことによる増大するリスクに対してどの主体(UI 事業者、機器

メーカー、サービス事業者など)がリスクアセスメントを行うのか、②事故防止や誤動作

抑止には、機器単体の情報だけで無く、周辺情報の活用が必要、③緊急時における機器制

御、④機器のトレーサビリティ確保に向けたビジネスモデルのあり方、製品安全の考え方

として最終的に消費者は自分で身を守る意識を持つことが重要、⑤ユーザーに対して適切

なリスクの説明が必要などの課題も指摘された。

(2) 実証事業等での検証すべきポイント

今後の検討の方向性から、社会実装に向け、実証事業等でまず検討すべきポイントとして

は、まずはつながった状態で何を把握可能なのか、から始める必要があること、つながった

状態でどこまで機器の状態を把握出来るかといった観点から、次の 3 点を挙げた。

• クラウドで取得する機器稼動データの分析を行い、機器の状況把握(消費電力量や稼働状

況の分析による故障検知)やユーザーに対しての通知・提案等がどこまで可能か検証する。

• 各社のデータをつき合わせて分析することで、家の中で機器が置かれている状況をどこま

で把握できるのか検証する。

• アンケート調査等により取得した機器の実際の使い方などに関する定性的な情報と、メー

カーが取得する機器の稼働情報などの定量的な情報を掛け合わせることで、メーカーが予

め予見可能な使用方法であったか確認を行う。

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(3) 実証事業等で検証した成果の活用方法

安全性の向上に資する取組の有効性が明らかになれば、製品安全に資する共通のルールと

して標準化や JIS 等の規格化の検討を行う(機器の状態把握のために各メーカーが取得すべ

きデータを定義するなど)ことが考えられる。

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5.2. データ利活用の今後の方向性

データ利活用 SWG では、データ利活用、プライバシー・個人情報保護の観点について、第1

回はリコール・リサイクルの将来像を中心としてスマートホームに係るサービス全体も幅広く議

論いただいた。

・ リコールの将来像

家電メーカー等から、直接的にリコール対象製品を保有する者に対して通知を行う。又は、

火災等重大事故に繋がる可能性が高い場合は、遠隔で運転停止等の措置を取る。

・ リサイクルの将来像

家電リサイクル法に基づく排出の利便性等を高めるよう、家電の買換えではなく、引っ越

し等による廃家電の排出の場面で、以下のスキームを検討する

① スマホのアプリ等を通して排出の手続を行うことができ、収集運搬業者の選択等が出来

る。

② 家電リサイクル券・支払いの手続について、排出者が郵便局で支払いを行わなくて済む

よう、当該収集運搬業者は自社券を発券できる者とし、当該収集運搬業者に対して電子決

済での支払いを行う。

③ 排出者が製造業者等へ廃家電が届いたことを自動的に確認できるよう、排出者に引取報

告通知が届く。

第2回は第1回の御指摘を踏まえて検証すべき論点を挙げ、それぞれについて、今後の検討の

方向性、実証事業等での検証すべきポイントを導いた。

データ利活用 SWG で挙げた検証すべき主な論点を図表 5.2-1 に示す。

図表 5.2-1 データ利活用 SWG で挙がった検証すべき主な論点

観点 検証すべき主な論点

・機器・データを活用した新サービスの創出やサービサー参入のため、どのような事業環境が必要か。ほかに必要なことは。

・ユーザー視点のサービスを生み出していくために、どのようなことに取り組むべきか。ハッカソン等の企画を検討・実施するのであれば、機器からのデータのみならず、ユーザーの属性情報等があった方がいいのではないか。

・機器関連サービスについて、(単独ではマネタイズされない)リコール・リサイクルに係るサービスを他の製品ライフサイクルに係る他のサービスと⼀体的に行うこととした場合、どのようなスキームが考えられるか。

・機器の制御・データ蓄積が行われる中で、リコールに係る強制停止、故障検知、リユースやシェアリングを見越した使用状況の把握・評価等の可能性

サービス

プライバシー・個人情報保護

・メーカーの異なる複数の機器がネットワークした場合におけるプライバシー・個人情報保護の在り方は。また、今後、様々なサービス事業者が参入していくことを前提としたプライバシー・個人情報保護の在り方は。

・実証事業の際に考慮すべきことは。

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5.2.1. データ利活用の検討の方向性

スマートホームの目指す将来像に対し、米国調査を通じた最近のトレンドをもとに、サービス

創出を図るために、データ利活用SWGで提示した論点及び委員からの指摘事項について、以下

のとおり整理した。

(1) 現状と今後の検討の方向性

<新サービスの創出等について>

• サービスに関して、機器・データを活用した新サービスの創出やサービサー参入を進めて

いく必要があり、また、ユーザー視点のサービスを生み出していく必要があり、そうした

観点から、本実証事業においては、得られたデータ等を活用したハッカソン等の企画を検

討・実施し、また、モニターに対するアンケート調査を実施することを考えている。

• これに対して、委員からは、データ提供を受けるサービサーの観点から、データの項目に

不足が無いか確認すべきや、データの形式を標準化しておく必要があるのではないかとの

意見があった。また、どのような人がどういう状況で使用したか分かるよう、ログデータ

のみならず、ユーザーの属性情報や空間情報等も提供する必要があるのではないかとの意

見もあった。

• また、高齢者等がサービスを受ける対象として考えられることや都市/地方における差異

も考えられる中で、ユーザー視点でのサービスを生み出していくためには、実証事業の中

で興味・関心等の高い人のみならず、可能な限り幅広く参加を求めるべき点や、モニター

に対するアンケート調査のみならず、広く一般の方に対して望まれるサービスや懸念点に

ついて調査すべきとの意見もあった。

<機器関連(製品ライフサイクル)サービスについて>

• 機器関連サービスについて、社会的課題解決のため、実証事業の中でリコールやリサイク

ルを実施することは賛同され、消費者に使っていただけるよう製品ライフサイクルに係る

他のサービス(例えば、購入時の保証書管理や延長保証、消費時の各製品の使用状況(電

力使用量)の把握、故障した際の対応(修理)、廃棄時のリユースなど)と一体的に行う

ことを考えている。

• これに対して、委員からは、リユースも実施し、消費者にとって容易でかつ社会的に見て

適正な排出の選択肢が多様に提示されることが重要である、当該事業の社会的ベネフィッ

トを評価していただきたい、消耗品・メンテナンス品の処分も検討を行っていただきたい

との意見があった。

<機器の制御・データ蓄積の活用について>

• 機器の制御・データ蓄積が行われる中で、リコールに係る強制停止、故障検知、リユース

やシェアリングを見越した使用状況の把握・評価等の可能性と提示させていただいたとこ

ろ、改めて故障検知を進めていただきたい、リコールに係る強制停止は可能な限り擬似的

なもので実施していただきたいとの意見があった。

(2) 実証事業等での検証すべきポイント

• 実証事業の中で、ハッカソン等の企画を実施する際には、事前から、サービサーにどのよ

うなデータ項目をどのような形式で提供する予定かを示し、それに対するサービサーの意

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見を踏まえつつ、実施を行う。また、ハッカソン等の企画においては、モニターの同意を

得つつ、ユーザーの属性情報や機器から得られる空間情報等についても提供を行う。

• 広く消費者の方のニーズや懸念点を把握するために、モニターに対するアンケート調査の

みならず、広く消費者の方へのアンケート調査等を活用し、広く消費者の方のニーズや懸

念点の把握に努める。

• リコールやリサイクルに関してその取組の効果を検証するととともに、リユースや故障時

の対応など製品ライフサイクルに関する他のサービスも実施して、その効果を検証する。

• クラウドで取得する機器稼働データの分析を行い、機器の状況把握(消費電力量や稼働状

況の分析による故障検知)やユーザーに対して使い方の通知・提案等がどこまで可能か検

証する(製品安全部分再掲)。

(3) 実証事業等で検証した成果の活用方法

サービサーに提供されるデータの在り方等について、ハッカソン等を含む実証事業を通じ

て、標準化が必要な場合には、その内容について検討を行うこと、また、リコール・リサイ

クルに関して、本実証事業を通して、その有効性が明らかになった場合には、それを踏まえ

たリコール・リサイクルの在り方を検討することが考えられる。

5.2.2. プライバシー・個人情報保護の検討の方向性

スマートホームの目指す将来像に対し、米国調査を通じた最近のトレンドをもとに、サービス

創出を図るために、データ利活用SWGで提示した論点及び委員からの指摘事項について、以下

のとおり整理した。

(1) 現状と今後の検討の方向性

• プライバシー・個人情報保護について、メーカーの異なる複数の機器がネットワーク化し

た場合のプライバシー・個人情報保護を検討する必要があり、また、今後、様々なサービ

ス事業者が参入していくことを前提としたプライバシー・個人情報保護を検討する必要が

ある。

• これに対して、委員からは、実証事業の中で、モニターに対してアンケート調査等を実施

し、事前で同意した内容と実際に取得・提供された内容とにモニターの中でギャップがな

いかを確認し、また、ギャップが生じるような場面でもサービスとの関係等で許容される

か否かを確認すべきではないかと意見があった。

(2) 実証事業等での検証すべきポイント

• 実証事業の中で、モニターに対してアンケート調査等を実施し、事前で同意した内容と実

際に取得・提供された内容とにモニターの中でギャップがないかを確認し、また、ギャッ

プが生じるような場面でもサービス等との関係で許容されるか否かを確認する。

(3) 実証事業等で検証した成果の活用方法

モニターに対するアンケート調査等から、スマートホームに係るサービスの性質等を考慮

しつつ、モニターが予見できるような事前の同意の内容・方法等の在り方について検討を行

うことが考えられる。

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6. 終わりに

今般、スマートホームに関して、最新の欧米のトレンドを踏まえて、将来像を描かせていた

だき、そうした中、他社間連携、セキュリティ・認証、製品安全、データ利活用、プライバシ

ーという各論点について、今後の検討の方向性や実証事業等での検証すべきポイント等を整理

させていただいたところである。

しかし、今回提示させていただいたクラウド間連携をスマートホームの将来像が日本に定着

していくには、その有効性を検証しつつ、継続的な取組が必要であると考えられる。そうした

中で、

・従来、あまりネットワークと接点を持って来なかった分野も関連してくる可能性がある中、

上記論点に対応しつつ、どのように参入を促していくのか。

・上記将来像を前提にサービサーがユーザー視点のサービスをどのように生み出していくのか。

・消費者としても興味・関心等を持っている層のみならず、持っていない層にもいかにして使

っていただけるようにしていくのか。

など、引き続き、検討していく必要があると考えられる。その際、目的はあくまでもサービス

創出であるので、機器をクラウドに繋げるといった技術的な面では無く、生活者に向けた価値

の提供を行うべく、“ヒト”を中心に据えることが重要である。

他方、そもそも、クラウド間連携を促進するためには、最低限、各機器がネットワークに接

続する機能を有し、かつ機器メーカーは自社のクラウド環境を構築・運用する必要があるが、

クラウド環境の構築・運用には多大なコストが掛かる点も、課題として挙げられる。また、家

庭内における機器には、エアコン、冷蔵庫、テレビ等のように、Wi-Fi 等の IP 通信機能にリソ

ースを割くことが出来るものから、環境センサーのように Zigbee のような非 IP 系の通信機能

しか搭載することが出来ない機器も存在する。加えて、通信機能を持たせるためには設計変更

が必要になるなど、ネットワーク化の「入り口」においても多大なコストを必要とする。さら

には機器からのデータ活用において、これまでの推進してきた「ECHONET Lite」を始めと

する標準化の活用が考えられる。そのため、今後の検討においては、以下の点についても検討

を深めていく必要がある。

・ クラウド環境構築・運用のコスト低減策

・ 機器のネットワーク化に掛かるコスト低減

・ 機器からのデータ取得・活用に向けた標準化の活用

また、スマートホームの将来像の定着状況を踏まえつつ、着実に進めていくために、その実

現に向けてスケジュール等を設けていくことも今後の検討課題であると考えられる。