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1 乳がんの新しい検出法 静岡大学 学術院工学領域 電気電子工学系列 教授 桑原 義彦 愛知医科大学 医学部外科学講座 乳腺・内分泌外科 准教授 藤井 公人 平成301213

乳がんの新しい検出法 - JST...• MRIのように3次元画像が得られるが,造影剤を必要としない。 • PETのようにがんの部分を顕在化して表示できるが,造影剤を

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乳がんの新しい検出法

静岡大学 学術院工学領域 電気電子工学系列

教授 桑原 義彦

愛知医科大学 医学部外科学講座 乳腺・内分泌外科

准教授 藤井 公人

平成30年12月13日

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従来技術とその問題点

乳がん:女性で最も多いがん

X線マンモグラフィX線被曝→検診対象年齢40歳以上検査時の痛み→検診率50%未満高密度乳腺での見落とし

乳がんの診断X線マンモグラフィ→超音波診断・触診→

造影MRI検査→バイオプシ→診断確定

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マイクロ波イメージングX線マンモグラフィに代わる検査手段として研究

X線被曝なし→対象年齢を下げる検査時の痛みなし→検診率の向上高コントラスト→高密度乳腺での見落としなし小型・軽量・低コスト,造影剤注射不要

マイクロ波イメージングの原理組織の誘電率差によって発生する反射波の検出

乳房組織の誘電率北米での調査:乳腺密度に応じ4カテゴリーに分類カテゴリーごとに誘電率の周波数特性を重ねがき乳腺とがんのコントラストは平均8〜10%

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手術検体を使った乳房組織の誘電率の調査

• わかったこと日本人の乳腺組織の誘電率はかなり高い乳腺やがん組織の誘電率や導電率は加齢とともに低下乳腺とがん組織の誘電率差は10〜15%

• マイクロ波イメージングの診断装置で有効な発見乳房組織の誘電率と導電率の間には強い線形関係があるデバイモデルで分析すると、がんの導電率の分布はほかの組織の分布と重ならない→世界初の発見

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乳房組織の誘電率の測定

30 40 50 60 70 80 900

50

100

y = 0.0059x + 9.7321

y = -0.1428x + 62.6686

年齢

比誘電率

脂肪がん

30 40 50 60 70 80 900

50

100

y = -0.2033x + 62.9505

年齢

比誘電率

乳腺

30 40 50 60 70 80 900

1

2

y = 8.9432e-4x + 0.2305

y = -0.0012x + 1.7269

年齢導電率

脂肪がん

30 40 50 60 70 80 900

1

2

y = -0.0067x + 1.9437

年齢

導電率

乳腺

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乳房組織の比誘電率と導電率の関係

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デバイパラメータ

生体組織の電気定数(複素誘電率)は周波数によって変化.

周波数依存の電気定数はパラメータε∞,Δε,σsを使ったデバイモデ

ルで表す.𝜀 𝜔

𝜀0= 𝜀∞ +

∆𝜀

1+𝑗𝜔𝜏+

𝜎𝑠

𝑗𝜔𝜀0(1)

ここで,ωは角周波数,τは緩和時間で乳腺組織では15ps[6],ε0は

真空の誘電率測定した複素誘電率ε’,ε”より(1)式を書き直す𝜀 𝜔

𝜀0= 𝜀′ − 𝑗𝜀"

= 𝜀∞ +∆𝜀

1+ 𝜔𝜏 2 − 𝑗𝜎

𝜔𝜀0+

∆𝜀𝜔𝜏

1+ 𝜔𝜏 2 (2)

最小二乗法によって,測定したε’,ε”の周波数特性と,(2)で表される実部,虚部の周波数特性を一致させるε∞,Δε,σsを各組織につい

て求める.

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乳房組織のデバイパラメータの分布

0

5

10

15

20

25

30

35

0 0.5 1 1.5 2 2.5

ein

f

s ig

sig vs einf

乳腺

脂肪

がん

• がん組織と乳腺組織のε∞やΔεの差は明瞭に表れない.• がん組織と乳腺組織のσsは乳腺組織について,σs<1.4[S/m],がん組織についてはσs>1.7[S/m]で,明瞭な差が認められる.

• マイクロ波イメージングで精度よくσsを推定できれば,その形状の組織ががんかほかの組織かを識別することができる.

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マイクロ波イメージングのハードウェア

構成 臨床撮像装置(2011)

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マイクロ波イメージングのソフトウェア

𝑽𝑚 𝒓𝒐𝒃𝒔 −𝑽𝑏 𝒓𝒐𝒃𝒔 ≅ 𝐹 ሶε 𝒓 − ሶε𝑐 𝒓

• 計測側

• 計測側で受信する電圧𝑉𝑚

• 解析側(計算機上)

• 解析側で受信する電圧𝑉𝑐

ሶε𝑏ሶε 𝒓ここを求める

※ ሶε𝑏 𝒓 が真値に近づくと受信電界の差がゼロに近づく

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計算機シミュレーションによる検証

真の導電率分布(+ががん) 回復した導電率分布(*ががん)導電率分布からのがん領域の抽出

多偏波の利用,導電率と誘電率の予備知識の有効活用等,独創的な考察を盛り込んだ画像再構成プログラムを開発。シミュレーションにより4㎜の分解能でがんの領域の90%の部分を抽出できることを確認。

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本技術が実現すれば

• 乳がん検診の年齢引き下げ(被曝なし)

• 受診率の向上(痛みなし)

• 高濃度乳腺における診断精度の確保

• 確定診断までのプロセスの簡略化

• 装置価格が低くX線技師も必要でないことから,超音波診断装置のように大病院だけでなく、かかりつけ医での設置が可能

• MRIのように3次元画像が得られるが,造影剤を必要としない。

• PETのようにがんの部分を顕在化して表示できるが,造影剤を必要としない。

• MRIとPETの機能を併せ持ち,価格も安い。

• 市場規模:国内500億円,海外5000億円

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実用化に向けた課題

• 高感度,広帯域で単純な構造のアンテナを使った撮像センサの実現プリント板ダイポール→自己補対構造を持つパッチアンテナの使用を検討中

• 測定データとシミュレーションデータを一致させる校正手法の確立

• 更なる高分解能の実現4mm→xxmm

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企業への期待

以下の条件を満たす企業との共同研究を希望

• 医療機器の製造販売経験がある

• AMED資金を使った共同研究が可能

• 樹脂調合・整形技術を持つ→撮像センサの設計製造

• センサ位置制御技術→検査台の設計製造

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :診断装置、診断方法、診断プログラム

• 出願番号 :特願2018-158617

• 出願人 :静岡大学、愛知医科大学

• 発明者 :桑原義彦、藤井公人

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お問い合わせ先

静岡大学イノベーション社会連携推進機構

コーディネータ 鈴木 俊充

TEL 053-478-1702

FAX 053-478-1711

e-mail sangakucd@cjr.shizuoka.ac.jp