26
OFDM-IDMA 無線方式の受信ダイバーシチ 性能評価 北見工業大学工学部電気電子工学科 集積システム研究室 田島 2014 2 24

OFDM-IDMA 無線方式の受信ダイバーシチ 性能評価 …islab.elec.kitami-it.ac.jp/tanimoto/THESIS/H25(2013...OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)は直交

  • Upload
    others

  • View
    3

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

卒 業 論 文

OFDM-IDMA 無線方式の受信ダイバーシチ性能評価

北見工業大学工学部電気電子工学科

集積システム研究室

田島 茜

2014 年 2 月 24 日

目次

第 1 章 はじめに ................................................................................................................. 1 1.1 研究背景と研究目的 ................................................................................................ 1

第 2 章 要素技術 ................................................................................................................. 2 2.1 OFDM 方式 ................................................................................................................. 2

2.1.1 マルチキャリア変調方式 ................................................................................. 2 2.1.2 ガードインターバル ......................................................................................... 5

2.2 IDMA .......................................................................................................................... 6 2.2.1 送受信機構成 ..................................................................................................... 6 2.2.2 干渉キャンセラ ................................................................................................. 7 2.2.3 ランダムインターリーブ ................................................................................. 9

第 3 章 ダイバーシチ技術 ............................................................................................... 10 3.1 受信ダイバーシチ .................................................................................................. 10 3.2 ダイバーシチブランチ構成法 .............................................................................. 10 3.3 ダイバーシチ合成法 .............................................................................................. 11

3.3.1 選択合成法 ....................................................................................................... 11 3.3.2 等利得合成法 ................................................................................................... 12 3.3.3 最大比合成法 ................................................................................................... 13

第 4 章 OFDM-IDMA 無線実験 ....................................................................................... 14 4.1 実験環境と実験装置の概要 .................................................................................. 14 4.2 実験・シミュレーション条件 .............................................................................. 17 4.3 実験・シミュレーション結果 .............................................................................. 18

第 5 章 まとめ ................................................................................................................... 23 謝辞 ..................................................................................................................................... 23 参考文献 ............................................................................................................................. 24

i

第1章 はじめに

1.1 研究背景と研究目的 移動体通信において,限られた周波数を複数のユーザ間で効率的に利用するため,

高度な多元接続が研究されている.従来の TDMA(Time Division Multiple Access),

FDMA(Frequency Division Multiple Access),CDMA(Code Division Multiple Access)

の他に,時間・周波数領域をより効率的に利用する OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)などが利用されている.

近年の無線通信では,機械と機械が通信ネットワークを介して情報をやりとりす

る M2M(Machine to Machine)通信の需要が拡大している.それにより,小パケット

で大多数のユーザが同時通信可能な無線システムの実現が求められている.そこで,

非直交型多元接続方式の中でも,優れたユーザ分離特性を持つことで知られるイン

ターリーブ分割多元接続方式(IDMA : Interleave Division Multiple Access)が検討され

ている[1]. 本研究では,スペクトル利用効率が高く,マルチパス環境において良好な伝送特

性を実現できる OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)と IDMA を組み

合わせた OFDM-IDMA において,フェージングが強い環境で通信性能が劣化する

対策としての受信ダイバーシチ技術に注目し,その無線実験装置を用いた通信特性

評価を行った.

1

第2章 要素技術

2.1 OFDM 方式 直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)は直交

する多数の搬送波をディジタル変調して多重化する方式であり,マルチキャリア変

調方式の一つである.周波数利用効率が高く周波数選択性フェージングに強い方式

であることから,放送や移動通信,無線 LAN などに適用されている[2][3].

2.1.1 マルチキャリア変調方式

マルチキャリア変調方式では,送信データを周波数の異なる複数のキャリアに分

割して伝送する方式である.マルチキャリア変調を用いることによって,データが

複数の搬送波に分散されるため,各キャリアの帯域が狭帯域となり,マルチパスに

よる周波数選択性フェージングが生じてもすべてのデータの失われる確率を低く

することが可能になる.これに対して,単一搬送波の信号では,周波数選択性フェー

ジングによってすべてのデータが影響を受けてしまう可能性がある. 図 2.1.1.1 にマルチキャリア変調方式とシングルキャリア変調方式および OFDM

方式のベースバンドにおける時間波形と周波数スペクトルの概念を示す.同図(a)はシングルキャリア方式に対応するものであり,時間波形の包絡線振幅 A(電力𝐴𝐴2),

シンボル周期𝑇𝑇𝑠𝑠,伝送帯域幅2/𝑇𝑇𝑠𝑠の高速な BPSK 信号を想定している.ここで,同

図(b)に示したマルチキャリア方式を用いて,1シンボル当りの信号エネルギー(図中の斜線部分のエネルギー)を変化させずに4シンボルを同時に(並列に)送信する

ことを考えると,包絡線振幅𝐴𝐴/√4(電力𝐴𝐴2/4),シンボル周期4𝑇𝑇𝑠𝑠の低速な BPSK信号が 4 つの周波数帯に並列に並ぶことになる.同図(a)と(b)を比較すると,マル

チキャリア方式のシンボル周期はシングルキャリア方式の 4 倍であることから,

個々のシンボルの伝送帯域幅は2/(4𝑇𝑇𝑠𝑠) = 1/(2𝑇𝑇𝑠𝑠)となる.したがって,4 シンボル

を周波数分割して同時に送信すると,全体の伝送帯域幅は1/(2𝑇𝑇𝑠𝑠) × 4 = 2/𝑇𝑇𝑠𝑠とな

り,同図(a)と(b)の伝送帯域幅は2/𝑇𝑇𝑠𝑠と一致する.シングルキャリア方式とマルチ

キャリア方式は,信号エネルギーと全体の伝送帯域幅が同一であるため,雑音環境

下や準静的なフェージング環境下におけるビット誤り率特性は同一となるが,周波

数選択性フェージング環境下では,シンボル周期によって特性が大きく左右される

ため,個々のキャリア(サブキャリア)におけるシンボル周期が長いマルチキャリ

2

ア方式の方が良好な特性を示す. 一方,同図(c)に示すように隣接するサブキャリアを重複させて配置する方式が,

OFDM である.この方式は,マルチキャリア方式における個々のシンボルに対す

る一種の変調方式と見なせ,OFDM 変調とも呼ばれる.OFDM 変調は,周期 T の

方形波の周波数スペクトルがゼロ交差する周波数𝑓𝑓 = 𝑛𝑛/𝑇𝑇(𝑛𝑛 = ±1, ±2,∙∙∙)を𝑓𝑓𝑛𝑛と定

義すると,𝑓𝑓𝑛𝑛を搬送波周波数とする変調波が,全て直交するという性質を利用した

ものである.また,隣接するサブキャリアは互いに干渉しないため,同図(c)に示す

ような配置が可能となる.OFDM 変調を行うことによって,シングルキャリア方

式やマルチキャリア方式と比較して全体の伝送帯域幅を狭めることができるため,

周波数利用効率の向上につながる.シングルキャリア方式とマルチキャリア方式で

は,ハードウェア的に実現が不可能な理想ローパスフィルタを適用すれば,伝送帯

域幅を1/𝑇𝑇𝑠𝑠まで狭めることはできるが,OFDM 変調を施すことによって,理想ロー

パスフィルタを適用せずに約1/𝑇𝑇𝑠𝑠まで帯域幅を狭めることができる.

3

(a) シングルキャリア方式

(b) マルチキャリア方式

(c) OFDM 方式

図 2.1.1.1 各種伝送方式の時間波形と周波数スペクトル

Ts A

t −1/Ts 1/Ts 0

f

4Ts

f 0 1/(2Ts)

1/Ts

3/(2Ts)

f 0

1/(4Ts)

t

4

2.1.2 ガードインターバル

送信された電波はマルチパスにより複数の経路を経由して受信側に到来する.こ

れにより,異なる経路の波ごとに到来する時間が異なる(遅延時間の広がりがある)

マルチパス・フェージングが発生するという問題がある.

OFDM では,サブキャリアごとのシンボル・レートはかなり低速になっている.

これ自体でもマルチパスでの到来時間の異なる複数受信波に対して,シンボル間干

渉の影響は低減される.遅延時間の広がりがシンボル・レートに対して短いため,

シンボルの最初の部分でしか前のシンボルの影響を受けないためである.

単純にサブキャリアごとに復調を行うのであれば,これで十分だが,FFT で復調

する場合にはシンボル全体が FFT の対象区間となるので,この区間に異なるシン

ボルの信号が混入するとシンボル間干渉が発生する.この問題を解決するため,

ガードインターバルを挿入する.ガードインターバルは図 2.1.2.1 に示すように

OFDM シンボルの後半の一部分と同じ信号を OFDM シンボルの前半に挿入したも

のである.ガードインターバル区間で一つ前のシンボル信号が混入した場合はガー

ドインターバルと取り除いた箇所を切り出すことにより,シンボル間干渉のない状

態で FFT 処理ができ,OFDM 信号を変調することができる[4].

図 2.1.2.1 ガードインターバル

Symbol1 Symbol2

Symbol1 Symbol2

GI1 GI2

GI1 GI2

Symbol1’ Symbol2’

遅延波

受信波

t

t

先行波

5

2.2 IDMA IDMA は,ユーザに個別のインターリーバを割り当てることによりユーザを識別

する多元接続方式である.符号分割多元接続方式(CDMA : Code Division Multiple Access)と密接な関係にあり,CDMA の拡散符号をインターリーバに置き換えた方

式と見なすことができる.低符号化率で誤り訂正能力の高い誤り訂正符号により符

号化されたビット系列に対し,ユーザ毎に異なるインターリーブパターンを用いて,

系列の順序を入れ替えることにより,多数ユーザ通信におけるマルチユーザ検出性

能が優れている[1].

2.2.1 送受信機構成

図 2.2.1.1 に IDMA 送信機構成を,図 2.2.1.2 に IDMA 受信機構成を示す.端末側

となる各ユーザの送信機は,情報ビット系列𝑏𝑏𝑘𝑘から符号化率𝑅𝑅𝑓𝑓繰り返し符号により

符号化ビット系列𝑐𝑐𝑘𝑘を生成する.次に,符号化された情報ビット系列𝑐𝑐𝑘𝑘を各ユーザ

に固有のインターリーブパターン𝜋𝜋𝑘𝑘で系列の順序を入れ替え,送信符号化系列�̃�𝑐𝑘𝑘を生成する.変調器により OPSK 変調シンボル𝑥𝑥𝑘𝑘を生成し,時間と周波数リソースに

マッピングする.変調シンボルに IFFT を行った後,その信号に CP(Cyclic Prefix)を付加し送信する.

図 2.2.1.1 IDMA 送信機構成

基地局側となる受信機はマルチユーザ干渉キャンセラ(Multiuser Interference Canceller, MIC)と k ユーザの並列型繰り返し復号器で構成される.受信機では,

受信信号が FFT された後,復調される.干渉キャンセラでは,各ユーザの復号器

から出力された外部値𝜆𝜆𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚(�̃�𝑐𝑘𝑘)を事前値として用いて,マルチユーザ干渉除去を行

う.復号器では,干渉キャンセラから出力された外部値𝜆𝜆𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚(𝑐𝑐𝑘𝑘)を事前値として復

号処理を行う.復号器から出力されたより信頼度の高い外部値𝜆𝜆𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚(𝑐𝑐𝑘𝑘)を,次回の

繰り返し処理におけるマルチユーザ干渉キャンセラの事前値として入力する.干渉

キャンセラと復号器との外部値の受け渡しにはインターリーブ𝜋𝜋𝑘𝑘とデインター

リーブ𝜋𝜋𝑘𝑘−1が必要である.

符号化 変調 IFFT CP挿入

6

図 2.2.1.2 IDMA 受信機構成

2.2.2 干渉キャンセラ

図 2.2.1.2 に示す通り,受信機はマルチユーザ干渉キャンセラと,k ユーザの復号

器から構成される並列型繰り返しマルチユーザ受信機である.干渉キャンセラによ

る繰り返し回数を𝑁𝑁𝑖𝑖𝑖𝑖𝑖𝑖𝑖𝑖と定義する.

図 2.2.1.2 の受信機において FFT 処理後の受信信号𝒴𝒴を信号と干渉成分に分けて

表現する.

𝒴𝒴(𝑛𝑛) = ℎ𝑘𝑘(𝑛𝑛)𝑥𝑥𝑘𝑘(𝑛𝑛) + 𝐼𝐼𝑘𝑘(𝑛𝑛) (1) ただし,ℎ𝑘𝑘(𝑛𝑛)は第𝑛𝑛シンボルにおける他ユーザからの干渉成分と雑音成分の和であ

る.

𝐼𝐼𝑘𝑘(𝑛𝑛) = � ℎ𝑙𝑙(𝑛𝑛)𝐾𝐾−1

𝑙𝑙=0,𝑙𝑙≠𝑘𝑘

𝑥𝑥𝑙𝑙(𝑛𝑛) + 𝑧𝑧(𝑛𝑛) (2)

干渉キャンセラと復号器の繰り返し処理による干渉除去アルゴリズムは以下の手

順で与えられる. (A)干渉キャンセラへの入力となる外部値𝜆𝜆𝑚𝑚𝑖𝑖𝑑𝑑(�̃�𝑐𝑘𝑘)を復号器出力の外部値をイン

ターリーブ処理することで得る.

𝜆𝜆𝑚𝑚𝑖𝑖𝑑𝑑(�̃�𝑐𝑘𝑘) = 𝜋𝜋𝑘𝑘�𝜆𝜆𝑚𝑚𝑖𝑖𝑑𝑑(𝑐𝑐𝑘𝑘)� (3) ただし,繰り返し処理における初回は𝜆𝜆𝑚𝑚𝑖𝑖𝑑𝑑(𝑐𝑐𝑘𝑘) = 0とする.

CP除去 FFT 干渉キャンセラ

復号

復号

・・・

7

(B)干渉部分に対する期待値𝐸𝐸𝑘𝑘(𝑛𝑛)及び分散値𝑉𝑉𝑘𝑘(𝑛𝑛)とその全ユーザに対する総和

𝐸𝐸�(𝑛𝑛),𝑉𝑉�(𝑛𝑛)を計算する.

𝐸𝐸𝑘𝑘(𝑛𝑛) = ℎ𝑘𝑘(𝑛𝑛) tanh(𝜆𝜆𝑚𝑚𝑖𝑖𝑑𝑑��̃�𝑐𝑘𝑘(𝑛𝑛)�/2) (4)

𝑉𝑉𝑘𝑘(𝑛𝑛) = |ℎ𝑘𝑘(𝑛𝑛)|2 − |𝐸𝐸𝑘𝑘(𝑛𝑛)|2 (5)

𝐸𝐸�(𝑛𝑛) = �𝐸𝐸𝑘𝑘(𝑛𝑛)𝐾𝐾−1

𝑘𝑘=0

(6)

𝑉𝑉�(𝑛𝑛) = �𝑉𝑉𝑘𝑘(𝑛𝑛) (7)𝐾𝐾−1

𝑘𝑘=0

(C)干渉キャンセラの外部値出力𝜆𝜆𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚(�̃�𝑐𝑘𝑘)をLLR(Log Likelihood Ratio)により計算す

る.

𝜆𝜆𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚(�̃�𝑐𝑘𝑘(𝑛𝑛)) =𝑦𝑦(𝑛𝑛) − 𝐸𝐸�(𝑛𝑛) + 𝐸𝐸𝑘𝑘(𝑛𝑛)𝑉𝑉�(𝑛𝑛)− 𝑉𝑉𝑘𝑘(𝑛𝑛) + 𝜎𝜎

(8)

ただし,𝜎𝜎は伝搬路の雑音電力である.

(D)デインターリーブ処理により復号器入力の外部値𝜆𝜆𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚(𝑐𝑐𝑘𝑘)を得る. 𝜆𝜆𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚(𝑐𝑐𝑘𝑘) = 𝜋𝜋𝑘𝑘−1�𝜆𝜆𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚(�̃�𝑐𝑘𝑘)� (9)

(E)BPSK 復調による復号器出力𝑏𝑏�𝑘𝑘と復号器出力の外部値𝜆𝜆𝑚𝑚𝑖𝑖𝑑𝑑(𝑐𝑐𝑘𝑘)を計算する.

𝑇𝑇𝑘𝑘(𝑛𝑛𝑏𝑏) = � 𝜆𝜆𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚�𝑐𝑐𝑘𝑘(𝑛𝑛𝑖𝑖 + 𝑁𝑁𝑖𝑖𝑛𝑛𝑏𝑏)�𝑁𝑁𝑟𝑟−1

𝑛𝑛𝑟𝑟=0

(10)

𝑏𝑏�𝑘𝑘(𝑛𝑛𝑏𝑏) = 𝑓𝑓𝐷𝐷𝑖𝑖𝑚𝑚𝐷𝐷𝑚𝑚�𝑇𝑇𝑘𝑘(𝑛𝑛𝑏𝑏)� (11) ただし,n = 𝑛𝑛𝑖𝑖 + 𝑁𝑁𝑖𝑖𝑛𝑛𝑏𝑏 , 0 ≤ 𝑛𝑛𝑏𝑏 ≤ 𝑁𝑁𝑏𝑏 − 1

𝜆𝜆𝑚𝑚𝑖𝑖𝑑𝑑(𝑐𝑐𝑘𝑘) = {𝑇𝑇𝑘𝑘(0), … ,𝑇𝑇𝑘𝑘(𝑛𝑛𝑏𝑏), … ,𝑇𝑇𝑘𝑘(𝑁𝑁𝑏𝑏 − 1)} − 𝜆𝜆𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚𝑚(𝑐𝑐𝑘𝑘) (12)

𝑓𝑓𝐷𝐷𝑖𝑖𝑚𝑚𝐷𝐷𝑚𝑚 は BPSK 復調による2進符号を出力する関数である.式 (12) は𝑇𝑇𝑘𝑘(0), … ,𝑇𝑇𝑘𝑘(𝑛𝑛𝑏𝑏), … ,𝑇𝑇𝑘𝑘(𝑁𝑁𝑏𝑏 − 1)に対して各々𝑁𝑁𝑖𝑖個繰り返している.(A)~(E)を繰り返

すことで復号器出力𝑏𝑏�𝑘𝑘に近づく.

8

2.2.3 ランダムインターリーブ

インターリーバのデータ並び替えはハードウェア上ではメモリを使用して行わ

れる.インターリーバによるデータの並び替え動作を図 2.2.3.1 に示す.まず,デー

タ系列{A,B,C,D,E}に対してインターリーバ側メモリにアドレス{1,2,3,4,5}と順

番に指定してデータを書き込む.データの並び替えを行うにはメモリから読み出す

順番を変更する.例えば,アドレス{3,1,5,2,4}と指定するとデータ系列が

{C,A,E,B,D}と並び替えられる.デインターリーバでは,メモリの書き込みのアド

レスが{3,1,5,2,4}であり,読み出しのアドレスが{1,2,3,4,5}とインターリーバと逆の

動作をする.このようにデータを並び替えるアドレス系列{3,1,5,2,4}を事前に記憶

しておけばよい.ただし,IDMA のインターリーブパターンはユーザ特有であるの

でユーザ数 K,シンボル数 N に対して KN 個のアドレス値を事前に記憶する必要が

ある.記憶するデータが多くなるのが欠点である.

図 2.2.3.1 インターリーバの動作

カウンタ 1 2 3 4 5

USER1アドレス

3 1 5 2 4

USER2アドレス

4 5 2 1 3

USER3アドレス

1 3 4 5 2

A,B,C,D,E

1,2,3,4,5

C,A,E,B,D

D,E,B,A,C

A,C,D,E,B

データ インターリーブ

データ

9

第3章 ダイバーシチ技術

3.1 受信ダイバーシチ 陸上移動通信では,送信された電波はフェージングの影響を受けるため,移動局

の移動に伴い受信信号の電力は大きく変化する.受信信号が小さい時には伝送信号

の品質劣化が生じるため,高品質伝送を維持することが困難である.また,フェー

ジングは送信された信号に対し,ランダムな信号で変調するような働きがある.こ

のため,送信時に変調された信号とフェージング変動との区別を行うのが困難とな

るため伝送信号の品質劣化が著しい.また,陸上移動通信のフェージングでは,受

信電力の低下に伴いフェージングの変化速度が増加するので,ランダムに変調され

た信号に見える程度に信号変動が激しい.このため,受信電力の落ち込みを防ぐダ

イバーシチはフェージング対策として特に有効である.

受信ダイバーシチは,独立な複数の受信信号を得る手段と,得られた独立な複数

の受信信号を適切に用いることによりフェージングの変動を軽減する手段とから

構成される.この独立な受信信号のおのおのはダイバーシチブランチ(diversity

branches)と呼ばれ,ダイバーシチを構成する手段はブランチ構成法と呼ばれている.

またブランチからの信号を適切に利用することにより,フェージング変動を軽減す

る手段は,ダイバーシチ合成法と呼ばれている[5].

3.2 ダイバーシチブランチ構成法 ダイバーシチ受信を行うために必要な,独立に変動する受信波を得る方法が,ダ

イバーシチブランチ構成法である.ダイバーシチブランチの例として空間,偏波,

角度,周波数,時間,パスがある.空間,偏波,角度のダイバーシチを実現するに

は複数本の受信アンテナが必要である. 空間ダイバーシチ(space diversity)では,空間的に十分離れた位置に配置された受

信アンテナを用いる.十分離れていれば無相関の受信波が得られる.空間ダイバー

シチの構成例を図 3.2.1 に示す.

10

3.3 ダイバーシチ合成法 ダイバーシチブランチの合成法は,選択合成(selective combining),等利得合成

(equal gain combining),最大比合成法(maximal ratio combining)の3種類が基本として

知られている.合成法には受信機のどの段階で合成を行うかにより,検波前に行う

合成法(predetection combining)と,検波後に行う合成法(postdetection combining)の2

種類がある.等利得合成法と最大比合成法では,各受信信号の位相の値が合成に不

可欠であるので,検波により位相の情報が失われると合成が困難となる.このため,

等利得合成と最大比合成は検波前に行われることが多い.一方,選択合成では,位

相の値が選択する際に不要であるため,実現が容易な検波後に行われることが多い.

3.3.1 選択合成法

選択合成は,図 3.3.1.1 に示すように複数のダイバーシチブランチのうち最大の

包絡線レベルのブランチのみを選択し,その他のブランチの出力は使用しない合成

方法である.一般にブランチ数が多いときは,すべてのブランチの包絡線レベルが

同時に低下する確率は小さくなる.多くのブランチの包絡線レベルが低下するとき

でも,瞬時包絡線レベルの大きなブランチがあれば,そのブランチが選択されるの

でフェージングによる品質劣化を防ぐ効果がある.

アンテナ1

アンテナ2 ブランチ1出力

ブランチ2出力

図 3.2.1 空間ダイバーシチ

11

3.3.2 等利得合成法

等利得合成は,図 3.3.2.1 に示すように各ダイバーシチブランチからの信号の位

相を同一にし(同相化),そのまま加算する方法である.選択合成では受信信号の

レベルが最大でないブランチからの信号は捨てられていたが,等利得合成ではこれ

ら信号成分も有効に利用されるため選択合成よりも効果がある.なお同相化しない

で加算した場合には,加算後の平均電力は増加する.しかし,フェージングの状態

によっては,信号が逆位相に加算される場合もあるので,ダイバーシチによる効果

が得られない.

受信回路

包絡線レベル比較

選択

復調回路

復調回路

受信回路アンテナ

アンテナ

図3.3.1.1 選択合成法

受信回路

受信回路

位相検波

復調回路+

図3.3.2.1 等利得合成

位相調整

アンテナ

アンテナ

12

3.3.3 最大比合成法

最大比合成は,図 3.3.3.1 に示すように各ブランチ信号を同相化し,レベルに比

例した重みを各ブランチ信号につけ,加算する方法である.CN 比が高く,信号レ

ベルの大きなブランチほど出力に寄与する割合が大きくなるので,等利得合成より

もダイバーシチによる効果が大きい.最大比合成は合成後の CN 比を最大にすると

いう意味で最適な合成法であることがしられている.

受信回路

受信回路

包絡線レベル比較

包絡線レベル比較

位相検波

復調器回路+

アンテナ

アンテナ

図3.3.3.1 最大比合成

位相調整

13

第4章 OFDM-IDMA 無線実験

OFDM-IDMA における受信ダイバーシチの効果を検証するために,実際に無線

実験装置を用いて実験を行った.その実験結果とシミュレーションの結果を用いて

比較,検討した.

4.1 実験環境と実験装置の概要 実験装置の諸元を表 4.1.1 に示す.アンテナは,送信側が指向性アンテナ,受信

側が無指向性アンテナを採用している.図 4.1.1 に実験環境を示す.送信機と受信

機の距離を 20m とり,設置した.NLOS 環境での測定は,送信機を反時計回りに

90 度回転させて測定を行った.また,図 4.1.2 にダイバーシチ方式を用いた

OFDM-IDMA 受信機構成を示す.FFT 後の出力に対してユーザ毎のインターリーバ,

デインターリーバ,ESE(Elementary Signal Estimator)で構成される干渉キャンセラに

よる繰り返し処理によりマルチユーザ検出を行う.マルチユーザ検出後に各ユーザ

の対数尤度比(LLR)を得て,復号器(DEC)により復号ビットが出力される.図 4.1.2(a)選択合成法では,最大レベルのものを選択し,図 4.1.2 (b)最大比合成法では,各ブ

ランチの LLR を合成することでダイバーシチの効果を得ることができる.

表 4.1.1 実験装置の諸元

周波数帯 5150-5250[MHz]

送信電力 50[mW]/1 アンテナ

送信アンテナ NATEC 製型番 PAT509S-4953 利得 9dBi,垂直面 58 度,水平面 76 度

受信アンテナ 三省電機製型番 ANTP-011A0

利得 0dBi,垂直面 360 度,水平面 360 度

FFT 点数 128

サブキャリア数 108

サブキャリア間隔 78.125[kHz]

ガードインターバル長 320[ns]

変調方式 QPSK

14

(a) 実験装置

(b)実験環境 図 4.1.1 実験装置及び環境

建物

建物

20m

アンテナ指向方向

送信機

見通し内(LOS)

見通し外(NLOS)

送信機

受信機

15

(a)選択合成法

(b)最大比合成法

図 4.1.2 ダイバーシチ方式を用いた OFDM-IDMA 受信機構成

FFTESE

10−π

11

−−K

π

1−Kπ

DEC

DEC

Input Output

マルチユーザ検出器

LLR

選択

選択

ダイバーシチブランチ

FFT ESE

10−π

11

−−K

π

1−Kπ

DEC

DEC

Input Output

LLR

マルチユーザ検出器

ダイバーシチブランチ

16

4.2 実験・シミュレーション条件 無線実験の測定条件とシミュレーション条件を表 4.2.1 に示す. MATLAB を用

いてシミュレーションを行い,Eb/N0 対ビット誤り率(BER)特性を調べる.

表 4.2.1 実験・シミュレーション条件

変調方式 QPSK

周波数帯域 5.2GHz 帯

サブキャリア数 108

パケットサイズ 512[bit]

繰り返し回数 1000

GI 長 800[ns]

インターリーバ設定 ランダム

送受信機間距離 20[m]

繰り返し符号長 8

多重ユーザ数 8

送信電力 7[dBm]

受信アンテナ数 1,2,3,4

見通し環境条件 見通し内(LOS),見通し外(NLOS)

実験データ 測定した信号に人工的に白色雑音を付加し IDMA 変調を行ったものとする.

シミュレーション

測定したデータからチャネル係数データを抽出し,ベースバンドシミュレーショ

ン上の伝搬路でチャネル係数データを与えて,振幅・位相を変化させたものとする.

17

4.3 実験・シミュレーション結果 選択合成法,最大比合成法を用いたときのシミュレーション結果,実験結果を示

す.選択合成法のシミュレーション結果を図 4.2.1,実験結果を図 4.2.2 に示す.最

大比合成法のシミュレーション結果を図 4.2.3,実験結果を図 4.2.4 に示す.

図 4.2.1 選択合成(シミュレーション)

5 10 15 20 2510

-7

10-6

10-5

10-4

10-3

10-2

10-1

100

Eb/N0[dB]

BE

R

M=1(LOS)M=2(LOS)M=3(LOS)M=4(LOS)M=1(NLOS)M=2(NLOS)M=3(NLOS)M=4(NLOS)

18

図 4.2.2 選択合成(実験データ)

5 10 15 20 2510

-5

10-4

10-3

10-2

10-1

100

Eb/N0[dB]

BE

R

M=1(LOS)M=2(LOS)M=3(LOS)M=4(LOS)M=1(NLOS)M=2(NLOS)M=3(NLOS)M=4(NLOS)

19

図 4.2.3 最大比合成法(シミュレーション)

5 10 15 20 2510

-7

10-6

10-5

10-4

10-3

10-2

10-1

100

Eb/N0[dB]

BE

R

M=1(LOS)M=2(LOS)M=3(LOS)M=4(LOS)M=1(NLOS)M=2(NLOS)M=3(NLOS)M=4(NLOS)

20

図 4.2.4 最大比合成法(実験データ)

図 4.2.1 と図 4.2.2 の選択合成法の結果を考察する.まず,LOS と NLOS では,

LOS 環境の方が Eb/N0 対 BER(ビット誤り率)特性が良いことが分かる.受信ア

ンテナ数を増やすことで特性がよくなる.また,シミュレーションでは BER10−4に対して受信アンテナ数 4 で Eb/N0 が 2~3dB 低減している.実験データでは

BER10−4(LOS), BER10−3(NLOS)に対して受信アンテナ数 4 で Eb/N0 が 5~6dB 低

減しているのが分かる.図 4.2.3 と図 4.2.4 の最大比合成法の結果を考察する.選択

合成法と同様に,LOS 環境において特性が良くなることが分かる.シミュレーショ

ンでは BER10−4(LOS), BER10−3(NLOS)に対して受信アンテナ 4 で Eb/N0 が 4dB

5 10 15 20 2510

-6

10-5

10-4

10-3

10-2

10-1

100

Eb/N0[dB]

BE

R

M=1(LOS)M=2(LOS)M=3(LOS)M=4(LOS)M=1(NLOS)M=2(NLOS)M=3(NLOS)M=4(NLOS)

21

低減している.実験データでは,BER10−4(LOS),BER10−3(NLOS)に対して受信アン

テナ数 4 で Eb/N0 が 9dB 低減している.また,選択合成法よりも最大比合成法を

用いたとき通信特性が良くなることが分かる.さらに,受信アンテナ数を増やすこ

とによって特性が良くなることが分かった. 3.3.1 節や 3.3.3 節で述べた一般的な選択合成法,最大比合成法ダイバーシチを用

いた場合,アンテナ数を増やすことによりダイバーシチ受信の効果が得られる.ま

た,選択合成法よりも最大比合成法を用いたとき大きな改善効果を得る[6].よっ

て,本研究で得た結果(4.3 節に示す)は妥当であると言える.

22

第5章 まとめ

OFDM-IDMA 無線実験を実際に行い,OFDM-IDMA における受信ダイバーシチの

通信特性評価を行った.受信ダイバーシチ技術である選択合成法と最大比合成法を

用いた場合での効果を調べた.選択合成法では受信アンテナ数 4でEb/N0が 5~6dB,

最大比合成法では受信アンテナ数 4 で Eb/N0 が 9dB 低減できることが分かった. 選択合成法よりも最大比合成法を用いた場合にダイバーシチの効果を得ることが

でき,アンテナ数が多い場合に大きな改善効果を得ることができる[6].よって,

本研究で得た結果は妥当であると言える.

謝辞

本研究を行うにあたり,日頃より親身になってご指導を賜りました吉澤真吾准教授,

谷本洋教授,に深く感謝いたします.研究を進めていく中で,助言を頂いた集積シ

ステム研究室の院生,電気機械研究室の小岩健太氏,同研究室の学部生の皆様に御

礼を申し上げます.

23

参考文献

[1]吉澤 真吾,畑川 養幸,松本 知子,小西 聡,宮永 喜一“IDMA 無線シス

テム実現のための干渉除去器ハードウェア実装”電子情報通信学会 RCS 研究会, RCS2013-52, pp. 91-96, 20-21 Jun. 2013.

[2]高畑 文雄,“ディジタル無線通信入門”培風館, pp.61-64, 2002 [3]伊丹 誠,“わかりやすい OFDM 技術”オーム社, 2009.

[4]石井 聡,“無線通信とディジタル変復調技術”CQ 出版社, pp. 330-331, 2005

[5]笹岡 秀一,“移動通信”オーム社, pp.193-199, 1998 [6]前田 隆正,林 昭彦,岩切 直彦,“移動体通信のはなし”日刊工業新聞社,

pp.117-118,2001

24