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P1-043 乳児期の多胎児を育てている家庭における育児困 難と育児支援ニーズ~虐待未然防止の観点から~ 布施 晴美 1,15 、大木 秀一 2,10,15 、大高 恵美 3,15 落合 世津子 4,13,15 、佐藤 喜美子 5,15 、志村 恵 6,10,15 服部 律子 7,9,15 、松葉 敬文 8,15 、大岸 弘子 12,13,15 糸井川 誠子 9,15 、玄田 朋絵 10,15 、田中 輝子 11,15 天羽 千恵子 12,15 、村井 麻木 14,15 1 十文字学園女子大学  2 石川県立看護大学  3 日本赤十字秋田看護大学 4 大阪大学大学院ツインリサーチセンター  5 元杏林大学  6 金沢大学 7 岐阜県立看護大学  8 岐阜聖徳学園大学  9 NPO法人ぎふ多胎ネット 10 NPO法人いしかわ多胎ネット  11 NPO法人ホームスタート・ジャパン 12 ひょうご多胎ネット  13 おおさか多胎ネット 14 ファミリーサポートセンターくるめ  15 一般社団法人日本多胎支援協会 【目的】 多胎育児家庭の8割は核家族、初産が多胎である家庭が6割 という。また、多胎育児家庭の虐待死は単胎家庭と比べる と2.5 ~ 4.0倍といわれ、乳児期に多い。本研究では虐待未 然防止の観点から多胎育児家庭への支援を検討するため、 乳児期の多胎児を養育している家庭が体験する困難と育児 支援ニーズを明らかにすることを目的とした。 【方法】 全国の多胎育児サークル等で活動している多胎児の母親29 人を対象にグループインタビューを実施した。1グループ5 ~ 6人とし、乳児期の育児困難と支援ニーズについて、半 構成的な質問ガイドに基づき自由な語りを促した。分析は、 語りの意味を損なわないように要約し、特徴を抽出しカテ ゴリーを作成した。十文字学園女子大学研究倫理委員会の 承認を得て実施した。 【結果】 乳児期に体験する育児困難について19カテゴリーを抽出し た。生後4カ月までの期間では、【体力が回復していない段 階での育児行動の開始】【多胎児の授乳困難と発育への不安】 【多胎児の泣き声と母親の自責の念】【精神的に追い詰められ 壊れそうになる】【多胎児の兄姉の育児ができない】【非協力 的な夫】【具体的な情報が入手できない】等が挙げられた。4 か月以降1歳までは、【蓄積した睡眠不足と母体の疲労】【母 親の孤立・孤独感と不全感】【疲弊して追い詰められ虐待寸 前】【外出困難】【周囲や近所の無理解】【事故発生リスク】等 が加わった。支援ニーズとしては、保健師・助産師等の専 門職に対しては、多胎児の健康状態・発育発達の確認、母 親の心の健康を保つケア、乳房マッサージ、レスパイトでき る支援の紹介、多胎育児経験者との出会いの機会の提供、 多胎育児に関する情報提供・相談等があった。子育て支援 者・ヘルパー等に対しては、買い物の代行や家事支援、沐 浴等の育児支援、外出時や健診時のサポート、相談・育児 のコツの伝授等があった。 【結論】 多胎育児家庭が体験する困難として、疲労の蓄積、延々と 続く緊張感、疲弊し虐待寸前となる思い、疎外感・孤立感 があげられた。ニーズとしては心身のレスパイトが必要で あり、孤軍奮闘している母親を理解し寄り添い、孤立感を 和らげるための支援が求められていた。多胎育児家庭への 支援は、妊娠期から始める必要があり、それが虐待の未然防 止につながるといえる。 本研究は、厚生労働省平成29年 度子ども子育て支援推進調査研究事業の助成により実施し た調査の一部である。 P1-044 養親が医療機関を受診したときに経験し た困ったこと ~養子縁組の成立前・成立 後の比較~ 池田 友美 1 、鯵坂誠之 2 、古川恵美 3 、石崎優子 4 山上 有紀 5 、田邊 敦子 5 、中村 恵 3 1 摂南大学 看護学部 2 大阪府立大学工業高等専門学校 3 畿央大学 教育学部 4 関西医科大学 小児科 5 公益社団法人家庭養護促進協会大阪事務所 【はじめに】 社会的養護を要する子どもが増加している。諸外国では彼 らは里親・養親の元で養育されることが多いが、わが国では 施設入所が多く里親・養親を増やす方策が望まれる。今回、 小児医療機関が里親・養親の推進において行うべきことを 明らかにするために養親が医療機関で困った経験を調査し た。 【対象と方法】 2018年8月、公益社団法人家庭養護促進協会大阪事務所を 通じて、20歳までの子どもを持つ養親265組に質問紙を郵 送し、無記名で記入を求め事務所宛に返信を依頼した。調 査内容は対象者の属性、自由記述として医療機関を受診し たときに経験した困ったことである。自由記述はデータ化 し、形態素解析による計量テキスト分析を行った。データ 分析には、KHCoderを使用した。本研究は畿央大学の倫理 委員会の承認を受けて実施した。 【結果】 返送数は134通(50.6%)で養子は男子61名、女子73名、 平均年齢は養父43.0歳、養母41.9歳、養子7.5歳であった。 養子縁組成立前の特徴として、「お願いしても「自分たちの 姓」で呼んでくれない」、「医療機関の養子縁組に対する認 識が足りない」といった問題が挙げられた。「母子手帳に妊 娠時や出生時の記載がない」「家族の病歴がわからない」と いった問題は、成立前後で同様に見られる特徴であった。 養子縁組成立後の特徴として、「何度も(妊娠、出生時、家 族の病歴等)聞かれるが分からないので答えられない」「成 長につれて本人の前で聞かれることへの困惑・心配」と いった問題が挙げられた。 【考察】 養子縁組の成立前後を比較してみると、成立前は妊娠時や 出生時の記載がないことや、子どもの過去(病歴や既往歴) が分からないことによる書類等への記入に戸惑う状況や医 療機関の配慮の無さによる困難が伺える。そして成立後は そうしたことを何度も聞かれたり答えたりしなければなら ない状況にあることに加え、子どもの成長につれて本人の 前でそうしたことを聞かれることへの心配も生じている。 また、成立前に困っていたことがより大きな不安に発展し ているものもある。これらの問題は子どもの成長につれて、 より顕在化してくるものと考えられる。小児医療機関は、 多様な子どもたちの育ちを支えるために、里親制度、特別 養子縁組についての理解を深める必要がある。 社会的ハイリスク 25 25 21 24 175 The 66th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health Presented by Medical*Online

P1-043 P1-044...P1-043 乳児期の多胎児を育てている家庭における育児困 難と育児支援ニーズ~虐待未然防止の観点から~ 布施 1,15晴美 、大木

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  • P1-043乳児期の多胎児を育てている家庭における育児困難と育児支援ニーズ~虐待未然防止の観点から~

    布施晴美1,15、大木秀一2,10,15、大高恵美3,15、落合世津子4,13,15、佐藤喜美子5,15、志村恵6,10,15、服部律子7,9,15、松葉敬文8,15、大岸弘子12,13,15、糸井川誠子9,15、玄田朋絵10,15、田中輝子11,15、天羽千恵子12,15、村井麻木14,151十文字学園女子大学 2石川県立看護大学 3日本赤十字秋田看護大学4大阪大学大学院ツインリサーチセンター 5元杏林大学 6金沢大学7岐阜県立看護大学 8岐阜聖徳学園大学 9NPO法人ぎふ多胎ネット10NPO法人いしかわ多胎ネット 11NPO法人ホームスタート・ジャパン12ひょうご多胎ネット 13おおさか多胎ネット14ファミリーサポートセンターくるめ 15一般社団法人日本多胎支援協会

    【目的】多胎育児家庭の8割は核家族、初産が多胎である家庭が6割という。また、多胎育児家庭の虐待死は単胎家庭と比べると2.5 ~ 4.0倍といわれ、乳児期に多い。本研究では虐待未然防止の観点から多胎育児家庭への支援を検討するため、乳児期の多胎児を養育している家庭が体験する困難と育児支援ニーズを明らかにすることを目的とした。

    【方法】全国の多胎育児サークル等で活動している多胎児の母親29人を対象にグループインタビューを実施した。1グループ5~ 6人とし、乳児期の育児困難と支援ニーズについて、半構成的な質問ガイドに基づき自由な語りを促した。分析は、語りの意味を損なわないように要約し、特徴を抽出しカテゴリーを作成した。十文字学園女子大学研究倫理委員会の承認を得て実施した。

    【結果】乳児期に体験する育児困難について19カテゴリーを抽出した。生後4カ月までの期間では、【体力が回復していない段階での育児行動の開始】【多胎児の授乳困難と発育への不安】

    【多胎児の泣き声と母親の自責の念】【精神的に追い詰められ壊れそうになる】【多胎児の兄姉の育児ができない】【非協力的な夫】【具体的な情報が入手できない】等が挙げられた。4か月以降1歳までは、【蓄積した睡眠不足と母体の疲労】【母親の孤立・孤独感と不全感】【疲弊して追い詰められ虐待寸前】【外出困難】【周囲や近所の無理解】【事故発生リスク】等が加わった。支援ニーズとしては、保健師・助産師等の専門職に対しては、多胎児の健康状態・発育発達の確認、母親の心の健康を保つケア、乳房マッサージ、レスパイトできる支援の紹介、多胎育児経験者との出会いの機会の提供、多胎育児に関する情報提供・相談等があった。子育て支援者・ヘルパー等に対しては、買い物の代行や家事支援、沐浴等の育児支援、外出時や健診時のサポート、相談・育児のコツの伝授等があった。

    【結論】多胎育児家庭が体験する困難として、疲労の蓄積、延々と続く緊張感、疲弊し虐待寸前となる思い、疎外感・孤立感があげられた。ニーズとしては心身のレスパイトが必要であり、孤軍奮闘している母親を理解し寄り添い、孤立感を和らげるための支援が求められていた。多胎育児家庭への支援は、妊娠期から始める必要があり、それが虐待の未然防止につながるといえる。 本研究は、厚生労働省平成29年度子ども子育て支援推進調査研究事業の助成により実施した調査の一部である。

    P1-044養親が医療機関を受診したときに経験した困ったこと~養子縁組の成立前・成立後の比較~

    池田友美1、鯵坂誠之2、古川恵美3、石崎優子4、山上有紀5、田邊敦子5、中村恵3

    1摂南大学 看護学部2大阪府立大学工業高等専門学校3畿央大学 教育学部4関西医科大学 小児科5公益社団法人家庭養護促進協会大阪事務所

    【はじめに】社会的養護を要する子どもが増加している。諸外国では彼らは里親・養親の元で養育されることが多いが、わが国では施設入所が多く里親・養親を増やす方策が望まれる。今回、小児医療機関が里親・養親の推進において行うべきことを明らかにするために養親が医療機関で困った経験を調査した。

    【対象と方法】2018年8月、公益社団法人家庭養護促進協会大阪事務所を通じて、20歳までの子どもを持つ養親265組に質問紙を郵送し、無記名で記入を求め事務所宛に返信を依頼した。調査内容は対象者の属性、自由記述として医療機関を受診したときに経験した困ったことである。自由記述はデータ化し、形態素解析による計量テキスト分析を行った。データ分析には、KHCoderを使用した。本研究は畿央大学の倫理委員会の承認を受けて実施した。

    【結果】返送数は134通(50.6%)で養子は男子61名、女子73名、平均年齢は養父43.0歳、養母41.9歳、養子7.5歳であった。養子縁組成立前の特徴として、「お願いしても「自分たちの姓」で呼んでくれない」、「医療機関の養子縁組に対する認識が足りない」といった問題が挙げられた。「母子手帳に妊娠時や出生時の記載がない」「家族の病歴がわからない」といった問題は、成立前後で同様に見られる特徴であった。養子縁組成立後の特徴として、「何度も(妊娠、出生時、家族の病歴等)聞かれるが分からないので答えられない」「成長につれて本人の前で聞かれることへの困惑・心配」といった問題が挙げられた。

    【考察】養子縁組の成立前後を比較してみると、成立前は妊娠時や出生時の記載がないことや、子どもの過去(病歴や既往歴)が分からないことによる書類等への記入に戸惑う状況や医療機関の配慮の無さによる困難が伺える。そして成立後はそうしたことを何度も聞かれたり答えたりしなければならない状況にあることに加え、子どもの成長につれて本人の前でそうしたことを聞かれることへの心配も生じている。また、成立前に困っていたことがより大きな不安に発展しているものもある。これらの問題は子どもの成長につれて、より顕在化してくるものと考えられる。小児医療機関は、多様な子どもたちの育ちを支えるために、里親制度、特別養子縁組についての理解を深める必要がある。

    … 社会的ハイリスク

    一般演題・口演 

    6月25日㊏

    一般演題・ポスター 

    6月25日㊏

    一般演題・ポスター 

    6月21日㊎

    一般演題・口演 

    6月24日㊎

    175The 66th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health

    Presented by Medical*Online

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