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Point Master 34 胸部X線写真の読影④ ABCDEFプロトコール

Pm34 胸部x線写真の読影④

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Point Master 34 胸部X線写真の読影④ ABCDEFプロトコール

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82歳女性: 発熱、意識障害

ER portable 2週間前より発熱が持続。 意識レベルが低下しvitalが不安定となってきた。

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82歳女性: 発熱、意識障害

ER portable 2週間前より発熱が持続。 意識レベルが低下しvitalが不安定となってきた。

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82歳女性: 発熱、意識障害

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82歳女性: 発熱、意識障害

A) ER portable 右内頚よりCVラインが挿入されています。

B) 胸郭の変形はなく、骨軟骨部に異常を認めません。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管・右左気管支とも異常はない。

E) 心拡大なし。左右の心辺縁および、下大静脈もスムーズに追え、左右肺門部の拡大はありません。

F) 両肺上葉、右肺下葉に多発する結節がみられる。一部には空洞形成が疑われる。

[評価] 肺胞に浸潤のある肺胞性肺炎の所見、肺炎球菌性肺炎を考えるが陰影の辺縁がは

っきりせずスリガラス様のためマイコプラズマによる肺炎も考慮する必要がある。

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82歳女性: 発熱、意識障害

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82歳女性: 発熱、意識障害

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82歳女性: 発熱、意識障害

胸部CT: 両肺上葉および右肺下葉S6に、1cm強

の結節が多数みられ、多くのものは内部に空洞を伴っている。臨床症状と併せて、敗血症性塞栓が最も疑われる。 <臨床経過> 血液培養から黄色ぶどう球菌が検出された。

<敗血症性塞栓(Septic pulmonary emboli)>

病原菌は黄色ぶどう球菌、連鎖球菌が多い。リスクファクターや背景として、アルコール多飲者、免疫不全者(特に悪性リンパ腫)、IV drug abuser、慢性心不全、皮膚感染症が挙げられる。感染源としてIVカテーテル感染、ペースメーカーのワイヤー、透析のシャント、骨盤内塞栓性静脈炎、咽頭膿瘍、骨髄炎、三尖弁の心内膜炎(特にIV drug abuserの場合)等がある。好発年齢は40歳以下で、臨床症状としては、敗血症、高熱、咳、血痰、呼吸不全、胸痛、重症の洞性頻脈などがある。治療、血液培養の結果を待たずに、まずは頻度から黄色ブドウ球菌による感染を想定して耐性ブドウ菌用ペニシリンの投与を開始し、培養の結果にてその後、抗生剤変更を行うのが妥当と現時点ではされている。

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敗血症性肺塞栓の画像

胸部X線写真:末梢下葉優位の、やや境界不明瞭な多発肺結節が典型的な所見で

ある。薄い壁を持つ空洞が約半数に認められ、その形成は比較的早期に起こり急速な傾向にある。空洞は病巣が壊死に陥ったものが末梢気管支からドレナージされて生じると考えられる。よって、速やかに治療が行われた場合は認められない事が多い。また、空洞内部にfluidがあることは少ない。時に空洞内部に充実性部分がみられ"target sign"と呼ばれる。これは、壊死に陥った肺実質が周囲から剥離したものが画像上描出されたものである。 その他、CT上は、結節内部のair bronchogramが約3割に認められる。また、結節に肺動脈が連続する”feeding vessel sign”はCT上で約7割弱にみられる。縦隔や肺門のリンパ節腫大が時々認められるが、胸水出現は比較的稀である。 画像上の鑑別としては、空洞を伴う多発肺結節を示すものとして、真菌症、肺好酸球性肉芽腫症、転移(特に大腸、膵、頭頚部から)、Wegener肉芽腫などが挙げられる。

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73歳女性: 検診異常

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73歳女性: 検診異常

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73歳女性: 検診異常

A) 立位AP (側面では前屈で撮影されている。)

B) 胸郭の変形はなく、胸部では骨軟骨部に異常を認めません。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管・右左気管支とも異常はない。

E) 心拡大なし。左右の心辺縁および、下大静脈もスムーズに追え、左右肺門部の拡大はありません。

F) 左肺底部背側に辺縁平滑な腫瘤が見られる。

[評価] CTで見ると、この陰影は横隔膜欠損部から逸脱した脂肪組織であることがわかる。

Bochdalekヘルニアの所見である。

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73歳女性: 検診異常

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73歳女性: 検診異常

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73歳女性: 検診異常

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Bochdalekヘルニア

概説 横隔膜の後部外側の先天性欠損による横隔膜ヘルニアで、1848年にBochdalekにより最初に報告された。80~90%は左側に発生するといわれている。成人での左右比は2:1で右側のものもまれではないという報告もある。 頻度は剖検例による検討での2000~7000人に1人というものから、成人でのCTによる検討の報告では6%という高いものもある。また、小さい横隔膜の欠損は年齢ととも

に増加し、後天性のものが多いことも報告されている。欠損の大きさは様々で、欠損の大きなものでは片側の横隔膜がほとんど欠損し、腹腔内容物がほとんど胸腔内に入り込んでしまうが、小さいものでは後腹膜の脂肪、脾臓や腎などが脱出することが多い。 症状 大きなものでは、生下時から呼吸不全を来し患側の肺の低形成を伴う。 小さなものは無症状で単純写真で偶然発見されるものがほとんどである。

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Bochdalekヘルニア

画像所見 X線所見はヘルニアの内容や大きさ、腸管内のガスや液体の量によって様々である。 新生児期の典型的なものでは、胸郭内に入り込んだ腸管により種々の濃度の多数の嚢胞状陰影がみられ、縦隔は対側へ偏位する。また、腸管の蠕動により陰影の形態や透過性に変化がみられる。出生直後には腸管がほとんど液体で満たされており充実性の陰影を呈するが、経過を追うと内部にガスが同定できるようになる。診断は単純写真のみで可能であるが、嚢胞形成を伴う肺炎、あるいは先天性の嚢胞性腺腫様奇形との鑑別が困難な場合がある。消化管造影は脱出した消化管の同定に有用である。CTでは消化管以外の実質臓器のヘルニアも診断が可能である。 成人になって発見されるものはほとんどが無症状で、横隔膜後部に腫瘤状に突出する平滑な陰影を呈する。後腹膜の脂肪や脾、腎などがヘルニアを来すことが多い。CTで脂肪、腎、脾の脱出を伴う横隔膜の欠損が示されれば診断を確認でき、他の検査は不必要なことが多い。 鑑別診断 胸部腎(intrathoracic kidney)、胸部脾(intrathoracic spleen)などの先天性異常も類似の所見を呈するが、横隔膜の欠損は見られない。

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その他の横隔膜ヘルニア

Morgagniヘルニア; Morgagni裂孔(横隔膜の胸骨付着部両側にあり、前胸壁に底辺をもつ三角形の横隔膜の欠損部で、脂肪組織と上腹壁動脈、リンパ管が通っている)を介する。通常右側に起こり、大網が脱出するものがほとんど。 食道裂孔ヘルニア; 最も頻度が高い。 外傷性ヘルニア; 鈍的外傷によって腹腔内圧が増大することによって生じる。左側に多く、横隔膜の中央後部から内側に断裂を来す。

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20歳男性: 発熱・呼吸困難

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20歳男性: 発熱・呼吸困難

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20歳男性: 発熱・呼吸困難

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20歳男性: 発熱・呼吸困難

A) 立位PA

B) 胸郭の変形はなく、骨軟骨部に異常を認めません。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管・右左気管支とも異常はない。

E) 心拡大なし。左右の心辺縁および、下大静脈もスムーズに追え、左右肺門部の拡大はありません。

F) 全体に末梢優位の間質影が目立ち、いわゆるKerleyのA,Bラインが描出されている。

胸部CT:両肺には全体に間質影が目立ち、末梢側には限局性のややdenseなスリガラス陰影や斑状影が散見される。肺底部では肥厚した小葉間隔壁が描出されている。間質影 + 末梢側優位のいわゆる”negative butterfly appearance”を呈しており、病歴と併せて急性好酸球性肺炎が疑われる。

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20歳男性: 発熱・呼吸困難

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20歳男性: 発熱・呼吸困難

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20歳男性: 発熱・呼吸困難

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20歳男性: 発熱・呼吸困難

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好酸球性肺炎

好酸球性肺炎は、好酸球性の肺浸潤と末梢血の好酸球増多によってまとめられる複数の病態の総称である。 Lofflerによる末梢血の好酸急増多を伴う一過性肺浸潤(Loffler症候群)の報告以来、異なった病像を持つ好酸球性肺炎がみつかってきたが、末梢血の好酸急増多は必ずしも認められるとは限らないので注意が必要である。 この場合には、BAL(broncho-alveolar lavage)による好酸球増多の証明が決め手となる。病因がわかっているものと不明なもの(特発性)に大別される。いずれにおいても単純写真やCTにおける肺浸潤像に大差は無いので、鑑別するためには臨床症状および経過と、基礎となる疾患や原因となるものがないかを十分に把握する必要がある。 また、肺病変を伴う好酸球増多症として、膠原病や血管炎(Wegener肉芽腫など)があるが、原疾患に特有な症状とX線・CT像を示し、肺炎像が主たる所見となるわけではないので、鑑別は容易である。

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Kerley line

肥厚した小葉間隔壁を表し、肺野に見られる線状影でその部位・長さ・走行によってA・B・Cの3つのラインがある。 急性・一過性では肺水腫が、慢性では僧帽弁狭窄症・癌性リンパ管症などのリンパ流路の障害・肺線維症などがあげられる。 1)A線⇒肺門から血管や気管支の走行とは無関係末梢肺野へ向かう線状影で長さは2~6cm。 2)B線⇒直線的線状影で主として下肺野の肋骨横隔膜洞近くにみられ、長さ1.5~2cm。 3)C線⇒下肺野にみられる網状影。 ①心不全 ②癌性リンパ管症(胃癌・乳癌が多い) ③急性好酸球性肺炎(タバコ・薬剤が原因)

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13歳女性: 胸写異常

立位PA 以前より胸写異常を指摘されている。 症状は無い。

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13歳女性: 胸写異常

立位PA 以前より胸写異常を指摘されている。 症状は無い。

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13歳女性: 胸写異常

立位PA 以前より胸写異常を指摘されている。 症状は無い。

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13歳女性: 胸写異常

A) 立位PA

B) 左第3-4肋骨の低形成がみられる。また、左の乳房のラインは対側に比して描出されておらず、乳腺の低形成が推測される。透過性も左側でやや亢進しており、左乳腺低形成や大胸筋欠損が推測される。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管・右左気管支とも異常はない。

E) 心拡大なし。左右の心辺縁および、下大静脈もスムーズに追え、左右肺門部の拡大はありません。心はやや右側へ偏位している。

F) 全体肺野に明らかな異常陰影をは認めらない。

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13歳女性: MR(T2WI)

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39歳女性: 発熱 咳 呼吸苦

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39歳女性: 発熱 咳 呼吸苦

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39歳女性: 発熱 咳 呼吸苦

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39歳女性: 発熱 咳 呼吸苦

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39歳女性: 発熱 咳 呼吸苦

A) 立位PA

B) 胸椎はやや側弯、その他骨軟骨部に異常を認めません。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管・右左気管支とも異常はない。

E) 心拡大なし。左右の心辺縁および、下大静脈もスムーズに追え、左右肺門部の拡大はありません。

F) 全体両肺には広く淡い微細粒状影が認められる。小葉中心性の分布を呈している。リンパ節腫大など見られない。

<経過> 転地およびステロイド内服にて改善した。

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過敏性肺臓炎

過敏性肺臓炎は、真菌胞子や異種蛋白などの有機塵埃の反復吸入により、経気道的に感作されて生じるびまん性肉芽腫性間質性肺炎である。わが国では、夏型過敏性肺炎といわれるものが多く、6~8月に見られる。その他、いわゆる農夫肺、空調によるもの、ハト飼者に見られるもの等がある。 病理学的には、細気管支炎、細気管支周囲炎と肺胞炎が主病変で、小葉中心部に主たる病変が認められる。 過敏性肺臓炎は、剥離型間質性肺炎(DIP)と共に、単純X線上、一見正常と見える場合の多いびまん性肺疾患のひとつである。 CT所見としては、小葉中心性粒状影、スリガラス様陰影、斑状の肺野高吸収域、上葉優位の蜂窩肺(慢性型の場合)などがある。

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70歳/女性: 胸写異常

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70歳/女性: 胸写異常

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70歳/女性: 胸写異常

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70歳/女性: 胸写異常

A) 立位PA

B) 骨軟骨部に異常を認めません。

C) 左 CP angle は やや dull です。

D) 気管右側に長軸1.5cm程度の範囲で限局性壁肥厚を認める。

E) 心拡大なし。左右の心辺縁および、下大静脈もスムーズに追え、左右肺門部の拡大はありません。

F) 右中肺野に浸潤陰影を認める。

【評価】 気管内腫瘤

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54歳/女性: 咳嗽 胸写異常

咳嗽と胸写異常にて緊急紹介 右鎖骨上窩に拍動性の腫瘤を触知、胸骨右縁に収縮期雑音聴取。 喘鳴は殆ど見られない

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54歳/女性: 咳嗽 胸写異常

A) 立位PA

B) 提示された写真範囲内では、骨軟骨部に異常を認めません。

D) 気管は左に圧排され狭窄し、右気管傍線(rt. paratracheal stripe)も不明瞭となっている。気管壁に接する右上縦隔腫瘤の所見。気管の最大偏位レベルは右胸腔への突出するレベル

とほぼ等しく、右側縁~下縁~左側縁とほぼ球形に近い形態であるように見える。上行大動脈~大動脈弓部~下行大動脈の陰影とは離れている。比較的濃度の高い腫瘤で、その上部の頸部に明らかな濃度上昇、左右差はないようである。肺野については提示画像内では明らかな結節は見られず、肺門腫大も見られない

E) 心拡大なし。左右の心辺縁および、下大静脈もスムーズに追え、左右肺門部の拡大はありません。

F) 右上肺野内側に外側凸の半球状陰影を認める。腫瘤の下部、右側の辺縁は明瞭、上部は不明瞭。胸郭からの立ち上がりはなだらか。(extrapleural sign 胸膜外徴候) 肺外病変であることが示唆される。

【評価】 右鎖骨下動脈瘤

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右鎖骨下動脈瘤

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右鎖骨下動脈瘤

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鎖骨下動脈瘤

上肢の動脈瘤は稀であるが、その中で鎖骨下動脈瘤は最も多い。主な原因は動脈硬化、胸郭出口症候群、外傷であるが、本邦では大動脈炎症候群も病因として重視される。 無症状のこともあるが、破裂、圧迫、閉塞などによる症状が起こりうる。上腕神経叢、反回神経、横隔神経、星状神経節等の圧迫や、破裂や増大に伴う気管の圧迫、椎骨動脈や右総頚動脈の塞栓が問題になる。 鎖骨上窩の拍動性腫瘤として触知することがあるが、特に右では蛇行症との鑑別が必要。 胸部X線写真では、上縦隔の異常陰影として描出されるため、CTやMRIにより上縦隔腫瘍との鑑別が必要。確定診断には、血管造影を要する。 治療は、外科的な切除及び血行再建以外にない。椎骨動脈を含むものは対側の椎骨動脈の発達の程度によっては再建が必要である。

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19歳/男性: 胸部単純写真異常

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19歳/男性: 胸部単純写真異常

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19歳/男性: 胸部単純写真異常

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19歳/男性: 胸部単純写真異常

A) 立位PA

B) 左頚部・左側胸部にも皮下気腫と思われる透過性亢進域がある。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管・右左気管支とも異常はない。

E) 食道左縁や下行大動脈に沿って線状の透過性亢進が見られ、縦隔気腫が疑われる。

F) 右肺尖部には境界明瞭な線状影がある。

【診断】(特発性)縦隔気腫、皮下気腫、右奇静脈葉

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特発性縦隔気腫

特発性のものは稀であり、ERを受診する患者の30,000人に1人、入院患者の800~42,000人に1人の割合と報告されている。 症状としては、胸痛(89%)、呼吸苦(67%)、頚部痛(11%)、頚部腫脹・嗄声(共に6%)、嚥下困難感(3%)がある。身体所見では皮下気腫が最も多く、特に初期には頚部で顕著であり徐々に胸部まで拡がる。Hamman音(聴診上、心拍動に合わせて聞こえるcrunching/bubbling音;『バリバリ、ボコボコ』)も特徴的である。 特発性であれば通常1週間もすれば自然治癒し、後遺症を残すことは殆どな

い。この症例でも頚部痛・呼吸苦が初期症状であり、痛みは徐々に胸部に拡がった。Hamman音も聴取し、典型的な病歴・身体所見を呈した。喫煙歴や非合法ドラッグの使用歴、喘息の既往もなかった。約1週間の経過観察後、軽快し退院した。 【参考文献】 ・Andrew E. Newcomb, C. Peter Clarke. Spontaneous pneumomediastinum; A benign curiosity or a significant problem? CHEST 2005;128:3298-3302