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触れたこともなかったRevitで実案件にBIM導入を決意 建築家・山形雄次郎氏が主催するヤマガタ設計(富山県高岡市)は、北 陸から首都圏に至る各地で、さまざまな建築物の設計監理を請負っ ている。代表の山形氏は3D CADやCGソフトのヘビーユーザとして も知られ、山形雄次郎デジタルデザインの名称で3DやCGなどの啓 蒙支援サービスも展開している。特に3DソフトSketchUpについては 造詣が深く、各地で講座や講演も開催している。そんな山形氏がBIM に関心を持つようになったのは約1年前、2009年3月のことだった。 「きっかけは四国で開かれたある研究会のセミナーです。SketchUp を広めようと参加したんですが、そこでBIMを知り魅了されてしまっ たんです。丁度その時、基本構想段階だった共同住宅物件でRevitを 使おう!といま思えば無謀ともいえる決意をしたんです(笑)」。なんと BIMという言葉を初めて聞いた翌日に、3日間連続のRevitの操作ト レーニングを予約。同時に少しでも設計を進めておこうとSketchUp を使い敷地の入力を開始した。斜線制限カゴ等を工夫しながら3Dモ デル作りを始めたのだ。 「先にイメージを固めておきたかったので、SketchUpのモデルで外 観を検討したんですが、これが施主にも好評で、早くも3D効果を実感 しましたね」。やがて講習で一通り操作を学んだ同氏はRevitを実作業 に投入した。とはいえ設計工程に余裕がなく、Revitによる作業も「最 低限、平面だけでもいいから、できる範囲でRevitを使おう」と割り 切って行っていった。このことが功を奏し、全くのぶっつけ本番だった BIM設計を最後まで進めることができたのである。 「部品を配置していくような感じのBIM設計は、2D設計とは全く違い ます。新形状の建具など課題もありましたが、基本設計の資料を作り やすく変更対応も容易で、当初からBIMの醍醐味を味わえました」。こ うして作った平面は同期データとして建具キープランや階段図内平 面、法規チェックなどにフル活用。SketchUpで作った斜線制限3Dカ ゴはRevitに取込んで使うことができた。 「最終的にはRevitの建築モデルをもう一度SketchUpに戻して、施主 へのプレゼンや施工会社との打合せにも活用できました。苦労しま したが、顧客や施工者との信頼関係向上は得がたい財産となりまし たね」 Revitで初のBIM設計に挑戦 混迷する建築業界の「次の一手」で 顧客満足度と作業効率の両方が大きく向上 確かにBIMは始まったばかりで、普及には多 くの課題があると感じます。しかしそれらの 改善が進むにつれ、建築界への浸透は確実 に進むでしょう。では、2009年がBIM元年 だったとすればその先はどうなるのか。大胆 に予想すれば、5年後にはある程度普及して 一般の認識も進み、10年後にはほとんどの 建築設計者がBIMで設計しているでしょう。 ――それは丁度手書きからCADに移行した 時のように、一度味をしめるともう元には戻 れません。まずはとにかくBIMに興味を持つ こと。今年はそこから始めてほしいですね。 ヤマガタ設計 代表 山形雄次郎 氏 ヤマガタ設計 代表 山形雄次郎 氏 Autodesk ® Revit ® Architecture ヤマガタ設計 活用事例

Revitで初のBIM設計に挑戦 混迷する建築業界の「次の一手」 …yy18.fc2-rentalserver.com/pdf/reaf02.pdfBIM、Revit、SketchUpなどに興味をお持ちの方は、

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Page 1: Revitで初のBIM設計に挑戦 混迷する建築業界の「次の一手」 …yy18.fc2-rentalserver.com/pdf/reaf02.pdfBIM、Revit、SketchUpなどに興味をお持ちの方は、

触れたこともなかったRevitで実案件にBIM導入を決意

建築家・山形雄次郎氏が主催するヤマガタ設計(富山県高岡市)は、北

陸から首都圏に至る各地で、さまざまな建築物の設計監理を請負っ

ている。代表の山形氏は3D CADやCGソフトのヘビーユーザとして

も知られ、山形雄次郎デジタルデザインの名称で3DやCGなどの啓

蒙支援サービスも展開している。特に3DソフトSketchUpについては

造詣が深く、各地で講座や講演も開催している。そんな山形氏がBIM

に関心を持つようになったのは約1年前、2009年3月のことだった。

「きっかけは四国で開かれたある研究会のセミナーです。SketchUp

を広めようと参加したんですが、そこでBIMを知り魅了されてしまっ

たんです。丁度その時、基本構想段階だった共同住宅物件でRevitを

使おう!といま思えば無謀ともいえる決意をしたんです(笑)」。なんと

BIMという言葉を初めて聞いた翌日に、3日間連続のRevitの操作ト

レーニングを予約。同時に少しでも設計を進めておこうとSketchUp

を使い敷地の入力を開始した。斜線制限カゴ等を工夫しながら3Dモ

デル作りを始めたのだ。

「先にイメージを固めておきたかったので、SketchUpのモデルで外

観を検討したんですが、これが施主にも好評で、早くも3D効果を実感

しましたね」。やがて講習で一通り操作を学んだ同氏はRevitを実作業

に投入した。とはいえ設計工程に余裕がなく、Revitによる作業も「最

低限、平面だけでもいいから、できる範囲でRevitを使おう」と割り

切って行っていった。このことが功を奏し、全くのぶっつけ本番だった

BIM設計を最後まで進めることができたのである。

「部品を配置していくような感じのBIM設計は、2D設計とは全く違い

ます。新形状の建具など課題もありましたが、基本設計の資料を作り

やすく変更対応も容易で、当初からBIMの醍醐味を味わえました」。こ

うして作った平面は同期データとして建具キープランや階段図内平

面、法規チェックなどにフル活用。SketchUpで作った斜線制限3Dカ

ゴはRevitに取込んで使うことができた。

「最終的にはRevitの建築モデルをもう一度SketchUpに戻して、施主

へのプレゼンや施工会社との打合せにも活用できました。苦労しま

したが、顧客や施工者との信頼関係向上は得がたい財産となりまし

たね」

Revitで初のBIM設計に挑戦混迷する建築業界の「次の一手」で顧客満足度と作業効率の両方が大きく向上

確かにBIMは始まったばかりで、普及には多

くの課題があると感じます。しかしそれらの

改善が進むにつれ、建築界への浸透は確実

に進むでしょう。では、2009年がBIM元年

だったとすればその先はどうなるのか。大胆

に予想すれば、5年後にはある程度普及して

一般の認識も進み、10年後にはほとんどの

建築設計者がBIMで設計しているでしょう。

――それは丁度手書きからCADに移行した

時のように、一度味をしめるともう元には戻

れません。まずはとにかくBIMに興味を持つ

こと。今年はそこから始めてほしいですね。

ヤマガタ設計代表山形雄次郎 氏

ヤマガタ設計代表山形雄次郎 氏

Autodesk® Revit® Architecture

ヤマガタ設計活用事例

Page 2: Revitで初のBIM設計に挑戦 混迷する建築業界の「次の一手」 …yy18.fc2-rentalserver.com/pdf/reaf02.pdfBIM、Revit、SketchUpなどに興味をお持ちの方は、

建築家が選ぶべき「次の一手」は

『BIM』と『地球環境問題』である

こうして設計を終えた山形氏初のBIM物件は、4月

の竣工を目指し順調に工事が進んでいる。現在も現

場のある東京と高岡市を度々往復する山形氏は、

RevitによるBIM設計から生まれるメリットについて

特に次のようなポイントを強調した。

「斜線制限の確認など、素人にも分かる3Dでリアル

タイムに行えるのは非常に効果的でした。またそれ

以上に大きかったのが、Revitで作る多様な図面が

常に同期され、どれか一つ変更しても食い違いが発

生しない点です」。無論BIM設計なら当然の効果だ

が、それが設計者に与える影響は想像以上に大きい

と山形氏は語る。各図面の連動により、整合性チェッ

ク等の“設計とは直接関係ない無駄な時間”を大幅

に削減できたのだ。

「BIMで行った設計の作業量は、Revitは初めてにも

関わらず通常の2/3程度まで削減できました。結果

として、それは非常に大きなコストダウンと品質向

上に繋がったのです」。すなわち、当初の計画では避

けられないと考えていた意匠図の外注コストが一切

発生せず、逆に余裕が生まれた作業時間を、純粋に

設計そのものに注ぎ込むことができたのである。

じっくりとアイディアを練り、試すことができたのは

もちろん、煩雑な雑務から開放されたことで、クリエ

イターとしてのモチベーションも高く維持すること

ができたのだ。

「近年、設計者の作業量は増える一方です。誰もが目

の前の仕事をこなすのに精いっぱいで、中々建築家

として何をすべきか考える余裕が生まれないのが現

状ではないかと思います。しかし、BIM設計で余裕が

生まれれば、より良い建築を造るためのモチベー

ションを回復し、維持することができる。建築家に

取ってそれがどれほど重要か、皆さんもお分かりで

しょう?」。

厳しさを増す建築法規に増え続ける手間、削られる

一方の工期に予算と、建築設計者を取り巻く環境は

厳しさを増し続けている。そんななかでの“次の一

手”は何なのか?

「BIMと地球環境問題がそれだ、と私は考えていま

す。業界の流れがBIMへ向かうのは必然ですし、環境

問題に対する関心の高まりはいうまでもありませ

ん。そしてBIMを使えば建築家もそこから生まれる

精神的余裕から、法規制からくる形だけの緑化計画

ではなく、心から地球環境のことを考えるように

なってくるのではないか。この2つは意外なところで

深くリンクしていると感じます。私自身もBIMの普及

を積極的に支援したいと考え、活動を始めています。

BIM、Revit、SketchUpなどに興味をお持ちの方は、

ぜひ私のサイト【建築夢想】をご覧下さい!」

導入製品/ソリューション● Autodesk Revit Architecture

導入目的●実案件でBIM設計の理念を実証するため●顧客満足度をアップさせるため

導入ポイント●世界で最もシェアが高いBIM製品であること●信頼する知人の勧め

導入効果●計画、検討時の作業効率の向上●リアルタイムな3Dプレゼンの威力●修整、変更時の革命的なスピードアップ●部屋面積自動集計による作業性向上●雑務から開放され高いモチベーションを維持●BIMの本格的展開へ向けた課題の確認

今後の課題●ボリューム検討など、より初期段階での活用●シミュレーション、分析など周辺業務との連携●新形状の建具の3D部品データの製作

オフィス:富山県高岡市

代表:山形雄次郎

設立:1996年

事業概要:建築設計監理、建築設計支援(3D・CG・BIM)

URL: 【建築夢想】 

 http://yyamagata18.blog83.fc2.com/

名称:レジデンスAT新築工事

場所:東京都品川区

構造:鉄筋コンクリート壁式構造 4階建

延床:493.62㎡

施主:(株)AT情報研

設計:ヤマガタ設計

施工:大友建設(株)

オートデスク株式会社 www.autodesk.co.jp〒104-6024 東京都中央区晴海1-8-10 晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーX 24F

〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪トラストタワー 3F

TEL:0570-064-787(オートデスク インフォメーション センター)

Autodesk、Revitは、米国および/またはその他の国々における、Autodesk, Inc.、その子会社、関連会社の登録商標または商標です。その他のすべてのブランド名、製品名、または商標は、それぞれの所有者に帰属します。オートデスクは、通知を行うことなくいつでも該当製品の提供および機能を変更する権利を留保し、本書中の誤植または図表の誤りについて責任を負いません。©2010 Autodesk, Inc. All rights reserved.

ヤマガタ設計

会社概要

BSD402-1003(Z) ユーザ事例:ヤマガタ設計

斜線制限の法規チェックは、当初SketchUpで作成した斜線制限(道路斜線、北側斜線、高度地区、逆日影)の3DのカゴをRevitに取り込んで活用

Revitの3D建築モデルから生成される多彩な図面は常に同期され、一つを変更しても食い違いが発生しない。その効果は想像以上だ

ユニットバスや便器などはを、3Dデータを探す時間がなかったため、従来2次元CADで使っていたJWWの2Dデータを持ってきて使用した

物件概要