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Strategy for Making Innovation 理の社会実装を目指して

Strategy for Making Innovation - cris.hokudai.ac.jp · 薬を必要な場所に,必要な量・ 必要な時間だけ作用させるド ラッグデリバリーシステム(dds)

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Strategy for Making Innovation理の社会実装を目指して

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川端和重Kawabata Kazushige

産学・地域協働推進機構長(理事・副学長)

未来創出に挑む北大の研究者たち …… 1

高田礼人(人獣共通感染症リサーチセンター)

長谷山美紀(大学院情報科学研究科)

秋田英万(大学院薬学研究院) 黒川孝幸(先端生命科学研究院)

清水研一(触媒化学研究センター)

グレーベ ラルフ(低温科学研究所)

玉腰暁子(大学院医学研究科)

伊藤肇(大学院工学研究院)

  

Contents

企業の視点 …… 8

アンメットメディカルニーズをどう解決するか(日東電工 丸山景資)

地域のために産学でできること(日立製作所 吉野正則)

  産学・地域協働を支える北大の施設とシステム …… 9

社会変革への取り組み ―― COI の目指すもの

食と健康の国際拠点として ―― 産学と社会をつなぐ FMI

最先端の研究施設・設備を開放 ―― 充実したオープンファシリティ

「知」の創造から活用まで ―― 都心に広がるリサーチ&ビジネスパーク

  「産学連携」から「産学・地域協働」へ …… 13

「理の社会実装」に向けて

 これまでの大学の産学連携は,大学と企業の研究者同士がコラボレートし,研究のための産学連携になっていました。よい成果が出ても,その先につながらない。また,プロジェクトを統括する大学の研究者はマネージメント業務に時間をとられ,研究に全力を尽くすことができなくなります。 このような産学連携を脱し,大学と企業のマネージメントレイヤーが話し合い,組織対組織の信頼を基に社会実装を目指した研究を進めていきたい。そのために,北海道大学は,平成 27 年 4 月,産学・地域協働推進機構を創設いたします。 同年 3 月には,北キャンパスに「フード&メディカルイノベーション国際研究拠点」が竣工し,ここでは,複数の企業の方々が安心して北大の研究者と研究開発に取り組んでいただけます。食と健康のイノベーションを目指す企業,研究者,地域の方々が,対話により発想を刺激し,未来を共有できるパブリックスペースも設けております。 このようにハード・ソフト両面からイノベーション創出の体制を整え,27 年度は研究戦略担当理事として北大全体の研究をプロモーションしていきます。一人研究のレベルを上げるというのではなく,一つ一つの研究のステージを変えます。 一人研究からグループ研究,グループ研究から大学を超えた研究へ。産学連携では,社会実装に向けて組織対組織の研究へ。地域の知の発信地として,この世界の理(ことわり)の社会実装を促進する Do Tank として北海道大学が新しいステージに登ります。

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高速道路橋の変状評価システム,胃がんの発症リスクを高める

ピロリ菌感染の自動診断,バイオミメティクス(生物模倣)支援システム(下図)。これらはすべて長谷山が 2000 年代から研究している映像処理(検索)の理論が応用され,実用化に向けて動き出した技術である。 私たちが慣れ親しんでいる PCやスマートフォンを使った検索は,ユーザーが入力したキーワードをもとに,インターネット上にある文字・画像・映像情報を表示するものだ。これに対して長谷山が開発した検索システムは,膨大な画像情報から類似の画像を探し出しモニターに表示する。ユーザーが望む画像を選択すると,あたかも画像同士がコミュニ

ケーションをしているかのように動き出し,類似するものは近くに,異なるものは遠くに自動的に配置される。 「10 年ほど前から言っているのですが『想起・創発』の検索システムですね」 ユーザーの潜在的な知識や記憶が呼び覚まされ,本当にほしい画像を見付け出すことができる。 高速道路橋の変状評価システムやピロリ菌感染の自動診断,バイオミメティクス支援システムも,この検索システムが応用されている。 「要素技術は数学の理論で,再現性のある抽象概念。いろいろなシステムに応用できます」 バイオミメティクスでは,猫の舌

を模した掃除機,蛾の眼を模した無反射フィルムなど,すでにいろいろな商品が誕生している。技術が点在しているため大きな産業に育っていないが,ISO が立ち上がったのを機に,その発展が期待されている。長谷山の研究室でもすでにトヨタ自動車や日立製作所との共同開発が始まっている。 「私の役割の一つは,人間に気づきを与える検索エンジンを広く使っていただき,点在している知識を結びつけること。点在している知識が結び付けば,新しいものが生まれるでしょう」 長谷山の研究はさまざまな産業で実用化され,社会実装されている。その理由は明確だ。 「好きな数学は,ツールとして応用することで,一般に適用することが可能な抽象概念。学んだ電子工学は,起こす・作るといった『実』の空間。抽象化した概念を生みだす『理』と

『実』の両方を北大で育てていただいたおかげです」 長谷山の興味は一貫して,人間の知識獲得のプロセスにある。 「行き着く先は,人間のように考えるロボットの脳の実現。人間の脳を再現してみたい。今は不可能ですが,20 〜 30 年後には変わると思います」 PC の概念を生み出したアラン・ケイは,“The best way to predict the future is to invent it.” と言った。未来予測を的中させるための最良の方法は,その未来を作ってしまうこと。長谷山の好きな言葉の一つである。

メディアネットワーク 長谷山美紀 Haseyama Miki

大学院情報科学研究科教授,工学博士

人間の知識獲得プロセスと画像検索システム

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薬を必要な場所に,必要な量・必要な時間だけ作用させるド

ラッグデリバリーシステム(DDS)は,医薬品の多様化が進むにつれ,複雑・高度化している。 秋田は,遺伝子,核酸などの高分子を「薬」とした DDS を中心に研究をしている。なかでも力を入れているのが「細胞内動態制御」である。

薬は細胞に到達させるだけでなく,細胞内の特定の部位に届かないと効かない。細胞内で物質を自由に動かすナノテクノロジーを開発できれば,さまざまな治療薬が誕生する。 秋田らの DDS に欠かせないのが、中性粒子を形成するための ssPalmと呼ばれる脂質様材料である。秋田らが開発し,2014 年から販売も開

始した。 この粒子の優れた特長は二つある。まず,血液内を流れていくときは電荷的に中性を保つということ。従来の運び役だった遺伝子核酸ベクターはプラスの電荷を帯びていたため,マイナスの赤血球と引き合って固まりとなり,血管を詰まらせたりすることがあった。中性粒子は赤血球と引き合うこともなく,さらさらと血管の中を流れていく(左下図)。 もう一つの特長は,細胞の中に入るとプラスに変化し,エンドソームに飲み込まれてもその膜を破壊して脱出し,さらに細胞内で分解されてバラバラになること。つまり,細胞内に到達して初めて,遺伝子や核酸をばらまく。 実に複雑なシステムだが,細胞内制御がここまで可能なら,人工的にウイルスを模倣した粒子をつくることもできる。ウイルスは人体にとっては病気を起こす危険な異物なので,ワクチンとして使う場合にはリスクを伴う。これをすべて人工の材料に替えることができれば,安全かつ効果的な治療につながる。  秋 田 は 次 世 代 ワ ク チ ン と し てDNA ワクチンの開発を考えている。天然のウイルスを扱うには特殊な設備が必要なため,利用できる医療施設が限られる。もしウイルスの機能を有した人工的な遺伝子内封粒子を開発できれば,多くの医療施設で使える製剤として応用することができる。 DNA ワクチンには,がんを予防する効果があることもわかってきた。 「マウスレベルですが,樹状細胞に遺伝子を導入してマウスに戻すと,がんがほとんど成長しない。つまり予防できるということです」 ヒトの樹状細胞にも遺伝子を導入できることがわかってきた。 「目に見えないミクロの宇宙で自由にモノを動かすことができるようになったら,それは 21 世紀最大の技術革新になる。21 世紀版のアポロ計画ですね」

薬剤分子設計学 秋田英万Akita Hidetake

大学院薬学研究員准教授,薬学博士

21世紀の技術革新となるナノ粒子の細胞内制御技術

ナノ粒子調製原理と in vivo 血中投与製剤としてのメリット肝臓血管内におけるナノ粒子の動的挙動

プラス電荷の粒子 *緑部分が血管

中性粒子 (ssPalm 粒子 )

投与直後 5分1分 9分

人間の知識獲得プロセスと画像検索システム

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黒川らは,きわめて丈夫なゲルを作る。その基礎になってい

るのが「犠牲結合」で,黒川が所属するソフト&ウェットマター研究室の龔剣萍(グンチェンピン)教授が一般化した原理である。ゲルの中にもろい結合をあえて入れ,それが壊れる(犠牲になる)ことで全体の強度を高めることができる。この原理を応用することで,トラックで轢い

ても壊れないほど高強度なゲルを創製することに成功した(下図,高強度ダブルネットワークゲル)。 このダブルネットワークゲル(DNゲル)を再生医療に使うための研究を北大医学部と共同で行っているが,ウサギの軟骨欠損部に埋め込み軟骨を自然再生させることに世界で初めて成功させている。 医療分野への応用へ向けての基礎

研究は,最も期待される分野の一つである。 ゲルは一言でいうと「水を多く含んだ固体」。 「つまり生き物に近い材料なので,動植物と触れ合う部分でいろいろと使えるのが,これまでの材料にないゲルの面白さです」 生体に近い性質を持つため,生体内で再生医療に使うだけでなく,細胞を培養する基板としてゲルを使うこともできる。 「通常,動物の細胞をシャーレの上で育てようとすると,育つことは育つが元気がない。ゲルの上だと生体と似た環境なので,細胞がいきいきと育ちます」 こうしたゲルの性質を利用した応用は,じつに多岐にわたる。最近になって発表した成果に,ゲルを使った海上農園がある。海水から塩を除いて水だけをゲルに吸わせ,そこで植物を育てる。まだ実験室レベルだが,植物が育つことが確認できた。実際に太陽熱で海水を温め,ゲルに水を吸わせる実験プラントの実現が待たれる。 黒川が目指す最終的なゴールはどこなのか。 「僕らが目指しているのは,人を幸せにする材料をゲルでつくること。生き物の組織が持っているやわらかさや,透過する機能,動き,丈夫さ。それらのすべての機能をゲルにより真似できると思っています」 人を幸せにするゲルを研究することは,生き物の性質を徹底的に理解することに等しい。逆にゲルを研究していると,「生き物が『材料』に見えてくる」。 研究室には,年間 30 社ほどから問い合わせがくる。業種は電器,化学,素材,医療とさまざまで,「高機能ハイドロゲル」の応用範囲の広さと潜在力の高さを物語っている。

高機能ハイドロゲル 黒川孝幸Kurokawa Takayuki

大学院先端生命科学研究院准教授,博士(理学)

ゲルを研究していると生き物が材料に見えてくる

複合構造によるゲルの 高強度化

破壊エネルギー1J/m2

破壊エネルギー10J/m2

破壊エネルギー

1000~J/m2

1st NetworkPAMPS

2nd NetworkPAAm

Double Networkゲル

電解質剛直・脆い

中性柔軟・伸縮性

相互侵入網目ゲル超高強度

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「石油はすぐになくなるわけではないが,石油が安い

うちに,①高効率なエネルギー変換技術と,②ムダの少ない化学品合成技術を作り上げておく」ことを清水は目標に掲げている。 長く①の一環として銀を活性成分とする自動車の排ガス浄化触媒の研究を手がけてきたが,5年前から②に有効な触媒の設計にも力を注いでいる。 石油から合成される薬品や農薬の原料などの化学品の多くは,これまでは触媒を使わずに多段階を経て合成されていた。また従来の有望な触媒の多くは,生成物を含む溶媒に白金族系触媒が溶けてしまい濾別できなかった。こうした「ムダの多い化

学合成」を分離回収可能な固体触媒によって一段階で実現させることができれば,ハロゲン等の補助剤や希少金属資源の消費量を最小限におさえ,化学合成の際に出るゴミも少なくできる(上図)。環境保全の観点からも,従来の「毒性物質(ハロゲンなど)を使って有害なゴミが出る」化学合成から脱却する必要がある。このようなグリーン有機合成は,大きなトレンドであり,清水らはそれを固体の金属ナノクラスターを使ってやろうとしている。 触媒研究のもう1つのトレンドは

脱白金族触媒の開発だ。背景には,さまざまな触媒に最も多く使われてきた白金族(ルテニウム,ロジウム,パラジウム,オスミウム,イリジウム,白金)の供給リスクがある。価格が高いうえ,埋蔵地域が極端に遍在しているからだ。そのため,白金族需要の大半を占める触媒用途での使用量を抑えることが望まれている。 白金族の性能を代替・凌駕する金属ナノクラスター触媒の開発が行きつく先には,「シーズとか夢を飛び越えて,研究者としてやらなければならないこと」が控えている。 現在,世界中の自動車のすべてがロジウム,パラジウム,白金を触媒として搭載している。その使用量は世界の産出量の大半を占める。しかも,インドや中国での車需要が高まっているため,販売台数は増える一方だ。 埋蔵地域が遍在するこの三つの金属を使いつづければ,やがて入手が困難となる。そうなれば,自動車の製造さえおぼつかなくなる可能性もある。 もちろん,自動車メーカーではかなり前から,白金族を使わない排ガス浄化触媒の研究を重ねている。 「にもかかわらず,できないということは,原理的に難しいということで,根本的に何か新しいコンセプトが必要」であり,原理の発見,コンセプトの提案こそ企業ではなく

「学」の役割であると清水は考えている。

触媒・資源化学プロセス 清水研一 Shimizu Ken-ichi

触媒化学研究センター教授,工学博士

金属ナノクラスターによるグリーン有機合成が担う大きな役割

理想的な有機合成

多段階法を多用する化学品製造の体系を 固体触媒を用いた一段合成に塗り替える

RCIRCOOCI

ROHRCOOH Chemicals

理想反応

従来

HCISOCI2

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 20 年前,グレーベがドイツで研究生活をスタートさせたときには,氷床のコンピューターシミュレーションを専門とする研究者は世界に10 人程度しかいなかった。現在でも,大気や海洋に比べれば小さな分野だが,地球規模の温暖化による海面上

昇が問題視されるようになってから,研究者の数は増えつづけている。 氷床とは,陸を覆う巨大な氷で,南極大陸とグリーンランドだけに存在する。厚さは 1000 メートル以上あり,この氷が溶ければ海面が上昇するだけでなく,海洋や大気の循環

にも変化をもたらし,人類に深刻な影響を及ぼす。氷床の研究は,温暖化が進む地球の未来を予測するために重要な役割を担っている。 グレーベは,自ら開発したプログラム「SICOPOLIS」を使い,氷床の動きをターゲットとしたコンピューターシミュレーションを行っている。このプログラムはインターネット上で公開され,だれでも無料でダウンロードできる。 人類がいまと同じように温室効果ガスを排出し続けたとすれば,海面はどのくらい上昇するのだろうか。  グ レ ー ベ の「SICOPOLIS」 は500 年後の海面上昇を 1.5m と予測しているが,1 mに満たない予測を出すプログラムもあれば,3 m以上の上昇を予測しているものもある。この差は,氷床が物理的に解明しきれていないこともあるが,コンピューターの性能やプログラムの違いも大きい。精緻なシミュレーションを実現するには,コンピューターの性能をさらに高める必要がある。 「温室効果ガスが大気と海洋の温暖化を引き起こし氷床を溶かしていることは現実に起こっている事実。ただ加速を緩めることはできます」 そのためには,産学官セクターを超えた,地球規模の協力が欠かせない。

 2012 年に名古屋を離れて北海道大学に着任した玉腰は,コホート研究をこの地で試みることにした。人の集団を観察し,生活習慣や生活環境,心理社会的な要因,身体の状態がその後の病気や死亡原因とどのように関連するかを検討するコホート

氷床・氷河力学 グレーベ ラルフ Ralf Greve

低温科学研究所教授,理学博士

公衆衛生学 玉腰暁子 Tamakoshi Akiko

大学院医学研究科教授,医学博士

気候予測の分野で注目される氷床の溶解シミュレーション

新規コホート研究で高齢社会対策を立案

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 伊藤の研究には二つの方向性がある。一つは有機合成化学で,複雑な有機物をいかに安く簡単に作るか,あるいは,作れないとされてきたものをいかに作るか。 その一つに,ホウ素化合物の合成がある。ペプチド合成に匹敵するような基本的な化学合成となった「鈴木・宮浦カップリング」にはジレンマがあった。この化学合成にはホウ

研究の目的は,健康で長生きする対策を立案することにある。 かつては,ベースラインのデータを一度だけとり,それが変わらない前提で 20 年,30 年にわたって集団を追いかけていた。しかし日本人のライフスタイルは大きく変化し,変化のスピードも速くなっている。今回のコホート研究では 5 年ごとに

素化合物を使うが,そのホウ素化合物の効率のいい合成法が確立されていなかったのだ。伊藤は銅の触媒反応が有機ホウ素化合物を合成するのに適した性能を有していることを発見し,その応用で数多くの化合物を作った。 もう一つの方向性は有機化合物を使った材料開発である。伊藤が発見した「発光性メカノクロニミズム」

横断調査を行う構想だ。 脱落なく追跡するには対象地域との密着が不可欠だ。行政や住民側にメリットがなければ,協力は得られない。玉腰は,研究対象の候補になっている町に足を運び,住民との対話を重ねている(左写真)。「北海道は東京や名古屋などの大都市圏より地域と密着しやすく,協力も得やすい」と感じる。 「こんなに地域の方に必要とされていることを知り驚きであり,うれしくもある。北大に来て本当によかったと思っているんです」 研究は始まったばかりで,どんな結果が出るかは予測がつかない。

は,機械的刺激による分子の構造変化が発光の劇的変化として観察できる性質をいう。また,「分子ドミノ」は,上記とは異なる化合物を使うが,やはり発光性があって変化を観察できるというものだ。結晶がちょっとした機械的刺激によってドミノ倒しのように次々と変化する。 分子は極めて小さいため,直接見ることはできない。東京ドームがゴマの大きさだとすると,分子はさらにその中に置いたゴマ程度の大きさしかない。そうしたミクロの世界を視覚的に観察できる性質は,いろいろな装置の開発に役立つ。 たとえばセンサーに利用すれば,生物の小さな細胞で起こっている変化を観察・計測できるので,医療をはじめとするさまざまな分野で応用が可能である。 研究の世界は不均一に広がる。研究される分野はどんどん研究されるが,一方でいつまでたっても広がらない広大な未踏の部分がある。 伊藤は自分の研究を「巨大な穴に石を一個入れるようなもの」と表現する。 「何に役立つのかわからない研究もあるが,30 年後には必ず広がる自信があります」

 「5 年後のことはわからない,ということがわかる研究といえます」 高齢期になると,認知機能や運動機能が低下するが,健康で自立的に生活できる高齢者を増やさなければ,高齢化社会は立ち行かない。高齢者の自立阻害要因は,突然あらわれるわけではく,若年期の不健康な生活習慣からつながっていることが多い。ではどんな生活習慣がのちに高齢期の自立阻害になっていくのか。この調査結果は,北海道のみならず,日本全体の対策を考えるうえでも貴重な資料となる。

有機元素化学 伊藤肇Ito Hajime

大学院工学研究院教授,工学博士

「何に役立つのかわからない」研究の30年後新規コホート研究で

高齢社会対策を立案

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企業の視点Strategy for Making Innovation

 日東電工の新規事業の一つに難治性疾患治療薬の開発があります。北海道では,札幌医科大学と共同で線維症の治療薬を開発してきましたが,いよいよ北海道に拠点が必要になり,2008 年 4 月,北海道大学に日東電工の北海道研究所を開設しました。現在ではほかに米国にも私たちの開発拠点があり,札幌医大と北大,そして米国の医療施設や研究機関と連携し,線維症治療薬の開発を進めています。 北大には医学部,薬学部,先端生命科学,宇宙工学,あらゆる学問分野があります。キャンパスも広大です。ここにいればすべての専門知識やインフラが整うのが魅力です。同位体顕微鏡や DNA シーケンサーなどの共用機器を利用することで開発スピードも上がります。

 我々のような企業が新規事業を起こすには,ベンチャー企業の技術を買う方法もあります。しかしそれだと,得られる技術は一つです。産学連携を選んだのは,大学には数多くの「学」があって選択肢が増えるからです。 あとは何を選択するかですが,私たちが注目するのは,その研究に新規性や進歩性があるか,競争力はあるか,アンメットメディカルニーズを解決するのかどうか,そして権威ある科学誌に論文が書け,特許をとることができるのかどうか,ということです。「社会実装」という言葉が使われ始めていますが,まさに研究は社会に使われて初めて意義があります。 企業は,基礎研究を維持せずに応用研究から入りたいと考えるようになっています。社会や人のニーズに沿った基礎研究を担ってくださる学との連携は,今後はますます欠かせないものになっていくでしょう。

 昨年(2014 年)から北海道大学と一緒に新しいプロジェクトを進めています。2013 年に北大が拠点として採択されて始まった COI-T(センターオブイノベーション - トライアル。2015 年 COI STREAM に昇格,次ページ参照)で,「少子高齢化先進国としての持続性確保」がテーマです。 北大が「食と健康の達人拠点」となり,健康で笑顔のあふれる生活を実現していこうというスローガンを掲げていますが,別の言い方をすれば,これは,リアルな結びのコミュニティを各地域に作る試みです。 かつて日本にあった「公衆」が今は失われています。「公衆」の新しい形をもう一度つくっていこう,町をリデザインしていこうという考え方です。とくに女性が働きやすく住みやすい地域をつくることが大

きなテーマで,そのために大学や企業ができることは何か,社会のニーズは何かということを考えていくことになります。 これまでの産学連携では,大学にある何かを使って企業が商品化・サービス化するという考えでしたが,これからは違います。もちろん商品化は大いに結構ですが,目指すのはそこではなく,そのもとになる種を産学で一緒に探したいと考えています。 その意味で,北大の「フード&メディカルイノベーション国際研究拠点」(FMI,次ページ参照)がオープンイノベーションである点は大きな魅力です。複数の企業が集まり,それぞれがやりたいことを研究して他社や地域との交流もできます。 大学も企業も変わっていかなければなりません。自分たちが変われる場を COIや FMI を通じてつくっていきたいと考えています。

アンメットメディカルニーズをどう解決するか

地域のために産学でできること

吉野正則Yoshino Masanori

日立製作所 中央研究所 シニアプロジェクトマネージャー

丸山景資Maruyama Kageshi

日東電工 執行役員 事業開発統括部長

北海道大学では,日本経済のカンフル剤となるような,ひいては社会を変革するような事業創出を目指して産業界と連携し,年間 5000 件にのぼる共同研究を行っています。それらを確実に社会に還元していくにはどのような連携が望ましいのか,またどんな変革が求められるのか,北大との産学連携で実績を上げている企業のリーダーにご意見をうかがいました。

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産学・地域協働を支える北大の施設とシステムStrategy for Making Innovation

COI( セ ン タ ー オ ブ イ ノ ベ ーション)プログラムは,文部

科学省が 2013 年から開始した COI STREAM(革新的イノベーション創出プログラム)事業に基づき科学技術振興機構が実施しています。北海道大学では、昨年度より COI-T

(トライアル)「食と健康の達人」拠点として本事業に取り組み、今年度COI STREAM へ昇格を果たしました。 COI STREAM のコンセプトは,

「10 年後,どのように『人が変わる』

のか,『社会が変わる』のか,その目指すべき社会像を見据えたビジョン主導型の研究開発プログラム」で,既存概念を打破し,革新的なイノベーションを産学連携で創出するプラットフォームの整備を目的としています。 北海道大学では同事業のビジョンの一つである「少子高齢化先進国としての持続性の確保」を実現するため,①健康創造拠点を「病院」から

「家庭」へ,②健康創造方法を「治療」から「健康増進」へ,③健康情報の管理活用を「医療機関における分散管理」から「個人における一元活用」へと移すパラダイムシフトの実現を目指し、筑波大学,北里大学、

企業とのイコールパートナーシップによる「一つ屋根の下」体制のもとで「食と健康の達人」拠点を運営しています。本拠点は「女性に優しく、子供から高齢者まで笑顔あふれるコミュニティ」を創生することで、市民、企業、大学、地域、行政の枠を超え、みんなで集まり、みんなで考え、みんなで「暮らしの社会イノベーション」の場を創っていきます。 具体的な取り組みとしては,①北海道大学病院での心不全退院患者を対象にした患者と医師をつなぐ実証実験,②岩見沢市(少子高齢化が進んでいるが IT 先進自治体でもある)でのプレママと子どもを対象とした健康コミュニティの構築,ICT を活用した自律型の健康増進・生活支援システムの実証実験を開始しています。

産官学が「一つ屋根の下」で

COI プログラムの実践拠点となるのが,2015 年 3 月に竣工し

た「フード&メディカルイノベーション国際拠点」(FMI)です。 FMI 棟は北大北キャンパスにあり,5 階建てで,研究エリア,共有エリア,市民エリアに分かれています(次ページフロア図)。オープンファシリティも充実していて,次世代シーケンサーをはじめとする最先端の共有機器を利用できます。 FMI の大きな特徴は,企業の研究所を置き,社会実装という目的をもった研究施設であること,多目的ホールや展示スペースになる明るく開放的なエントランスなど,市民も参加できる空間が用意されていることにあります。北大が進める COI プログラムの実践の舞台です。

社会変革への取り組みCOIの目指すもの

食と健康の国際拠点として産学と社会をつなぐFMI

FMIの外観。北大の北キャンパスに2015年3月20日竣工

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フューチャールームディスカッションルーム □□□□□□□□□□□□□□

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多目的ホール(最大収容可能数192席)

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 ここに集う企業と北大が共同で研究する課題は,主に次の四つが挙げられます。① セルフヘルスケアプラットフォー

ム:個人の健康度をリアルタイムで把握し本人に自立、継続的行動変容を楽しく促す仕組みの開発

② 健康ものさし:食・運動研究に基づく健康を測る画期的な評価系

(健康ものさし)の開発と標準化③ 美味しい食・楽しい運動:食・

運動の「健康ものさし」指標を改善する、食素材や食品ならびに運動プログラムの開発

④ 健康コミュニティ:研究開発成果の実証実験、社会実装を行い、リアルな場と ICT で地域課題を解決する健康コミュニティの創造

 FMI が目指すのは,北海道大学が札幌農学校時代から続けてきた

「食」にまつわる研究と,医療分野の先進的な研究の融合を図りながら,

 FMI 拠点では,企業が安心して入居できるセキュリティを実現可能なネットワーク環境が整備されています。たとえば、研究開発の進展によって集められる個人の食・健康などのデータへは,建物内の特定の PC からのみアクセス可能とするなど,集められるデータはプライバシーやセキュリティが充分に担保されたシステムに保管することができます。データを安全に保存しつつ活用の可能性を探る取り組みは,それ自体がイノベーションの創出に向けた研究開発課題とも言えるでしょう。

(北海道大学 産学・地域協働推進機構 産学推進本部 杉村逸郎)

産学官と市民が「一つ屋根の下」に集う「未来社会の創造拠点」です。

社会実装を加速させる運営 FMI での共同研究を加速させ,企業や関連機関の事業化(社会実装)を推進するため,2015 年 4 月,事業戦略室、研究部門、戦略支援部門および運営委員会からなる FMI 推進本部を新設しました。FMI 推進本部では,①産学官(学外が過半数)で構成される運営委員会が決定権を持つイコールパートナーシップ、②北大独自の「産業創出型IPPolicy」 と「A2B2C」(Academia to Business to Consumer)を採用することにより、社会実装を加速化します。 起業マインドを持った人材育成や,企業研究者への学内身分付与・学位授与など,人的交流や人材育成にも積極的に取り組んでいきます。

エントランスEntrance

応接室

共用機器室

多目的ホールHall

応接室

共用機器室

産学連携室駐輪場

bicycle-parkingSpace

ホワイエ

エントランス

フューチャールーム

Foyer

Entrance

Terraceテラス

オープンカフェ

セミナールーム 展示スペース

ミーティングルーム

ディスカッションプラザ

Cafe

Seminar roomExhibition

spaceMeeting

room

Discussionplaza

204 205 206 207 208 209

212 213 214 215 216

218

219

Void

: 一般開放: セキュリティゾーン

共用実験室

共用実験室

共用実験室

共用機器室

共用実験室

共用実験室

310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320

Void

Void

408 409 410 411 412 413 414 415

401 402 403 404 405 407

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1F▼

2F▼

3F▼

5F ▼4F ▼安心を保証するセキュリティーシステム

FMI のフロアマップラボが並ぶセキュリティーゾーンと,地域や学生との交流の場となる開放ゾーンで構成される

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網塚 浩(共用機器管理センター長)

北海道大学には,高度な研究設備を学内外の方々にも有効に

活用していただくための「オープンファシリティシステム」があります。100 台を超える設備が用意され,固体や液体,細胞,タンパク質,DNA など多岐に渡る物質・材料を対象とする精密分析から,ナノスケールの微細加工まで、様々な用

途でご利用いただけます。これらの装置群の中には小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った微粒子を分析した,同位体顕微鏡と呼ばれる世界で1 台の装置もあります。 オープンファシリティには,機器

操作の講習を受けた後にユーザーご自身で使っていただく「共用機器」と,試験体を預けていただき北大の専門技術者が分析を行う「委託分析」の二つの機能があります。いずれも初めての方のために「相談窓口」を用意しております。ぜひお気軽にご相談いただきたいと思います。 新たな共同研究ネットワークを創る場としてもご活用いただければ幸いです。お待ちしております。

共用実験室

共用実験室

共用実験室

共用機器室

共用実験室

共用実験室

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Void

最先端の研究施設・設備を開放充実したオープンファシリティ

利用できる装置

■X線照射装置X線照射装置

■画像分析装置走査形プローブ顕微鏡/電界放射型走査型電子顕微鏡/走査型電子顕微鏡/分子間力プローブ顕微鏡/小動物用X線CT装置/非侵襲高感度発光・蛍光生体内イメージングシステム(IVIS Spectrum)/蛍光相関顕微鏡システム/多光子励起共焦点レーザー走査型多機能顕微鏡システム/電界放射型透過型電子顕微鏡/環境試験装置

■クリーンルーム内設置装置マスクアライナー/真空蒸着装置/反応性イオンエッチング装置/ICP高密度プラズマエッチング装置/プラズマCVD装置/ICPドライエッチング装置/液体ソースプラズマCVD装置/ヘリコンスパッタリング装置/超高精度電子ビーム描画装置/真空紫外光露光装置/分子線エピタキシー装置/超高精度電子ビーム描画装置/ドライエッチング装置/反応性イオンエッチング装置/レーザー描画装置/原子層堆積装置

[北キャンパス総合研究棟2号館内] 共焦点レーザースキャン顕微鏡

[工学部棟内] 電子線描画装置/集束イオンビーム加工装置

[創成棟内] コンパクトスパッタ装置

[理学部棟内] 超広帯域波長可変レーザー分光装置 ■成膜・加工装置集束イオンビーム加工観察装置/イオンビームスパッタ装置/イオンミリング装置 ■専用測定装置吸着測定装置/ファイバー光学動的光散乱光度計/同位体顕微鏡システム/ゼータ電位 粒度分布測定装置/ソーラシミュレータ/NanoScope IIIa 原子間力顕微鏡/次世代同位体顕微鏡システム/多重極限高磁場

(19/17T)測定装置

■電磁気分析装置スピン偏極走査電子顕微鏡 *当面は走査(オージェ)顕微鏡としてのみ利用可/磁気特性測定装置/物理特性測定装置

[核磁気共鳴] 核磁気共鳴装置/核磁気共鳴装置(NMR)―液体試料専用/500MHz NMR測定装置(cancer)―液体試料専用/800MHz NMR測定装置(migi)―液体試料専用/800MHz NMR測定装置(hidari)―液体試料専用/超伝導フーリエ変換核磁気共鳴装置―液体試料専用/600MHz 固体高分解能核磁気共鳴装置―固体試料専用

[質量分析] 質量分析装置(MALDI TOF)/コールドスプレーイオン化飛行時間型質量分析計(CSI-TOFMass)/液体クロマトグラ

フ飛行時間型質量分析計/リニアイオンイオントラップ電場型FT質量分析装置/高分解能・高感度質量分析計 飛行時間型質量分析装置/飛行時間型質量分析装置

■電磁波分析装置[X線] X線光電子分光装置/高分解能X線回

折装置/X線回折装置/X線光電子分光装置/ナノスケールX線構造解析装置/極低温X線4軸型回折計

[分光] 超薄膜評価装置 ■バイオ関連分析装置フローサイトメーター/DNAシーケンサー/クライオスタット/超遠心分離機/細胞調製システム/表面プラズモン共鳴測定装置/リアルタイム定量PCRシステム/卓上セルソーターシステム/モレキュラーイメージャー/ジェネティックアナライザ/モレキュラーイメージャー(化学発光検出)/高速レーザー共焦点顕微鏡/全反射蛍光顕微鏡/多色蛍光タイムラプス顕微鏡/リアルタイム共焦点顕微鏡/ABI PRISM 3100 DNA seqencer/高圧凍結装置/凍結置換装置/ウルトラミクロトーム/細胞インキュベーター蛍光顕微鏡/熱レンズ顕微鏡システム

■表面分析・形態観測用装置環境制御型走査型原子間力顕微鏡/共焦点レーザ走査型顕微鏡/高分解能電界放射型

*メーカー,型名,設置場所,料金等については北大オープンファシリティのサイト内にある リスト(http://openfacility.cris.hokudai.ac.jp/apparatus_list)をご参照ください。

走査型電子顕微鏡/低真空走査型電子顕微鏡/分子間力プローブ顕微鏡/カラー3Dレーザー顕微鏡/電界放射型透過型電子顕微鏡/形状測定レーザー顕微鏡システム

■分光分析装置フーリエ変換型ラマン分光光度計/FT-IR(フーリエ変換赤外線吸収分光光度計)/紫外可視近赤外分光光度計/結晶分子構造解析装置(顕微 FTIR)/ICP発光分析装置/顕微ラマンマイクロスコープシステム/時間分解磁気光学効果測定システム/生理活性物質試験システム 円二色性分散計/糖鎖解析システム GlycoStation TM/振動円偏光二色性分光光度計

■分解・蒸留・分離・濃縮・抽出装置マイクロ波試料前処理装置

■分離分析装置高分子構造解析マルチディテクションシステム(SEC-MALS)

■理学研究院附属天文台設置装置[画像分析装置] 口径1.6m光学望遠鏡(マル

チスペクトル撮像観測装置使用時)[天体望遠鏡] 口径1.6m光学望遠鏡

① ②

①同位体顕微鏡。二次イオン質量分析計(CAMECA ims-1270)を改良した北大オリジナルの世界最先端の装置 ②顕微ラマン分光装置(RENISHAW)。共用機器部門で管理。貸し出す際にユーザー教育も ③委託分析部門で管理。各専門に基づいたスタッフが分析 ④先端NMRファシリティには600-800MHzの装置が計4台 ⑤電界放出型電子顕微鏡(JEOL JSM-7400F) ⑥最新型のレーザー顕微鏡(KEYENCE vkx200) ⑦スピン偏極電子顕微鏡。北大オリジナルの最先端装置

⑤ ⑥ ⑦

●共用機器部門 → http://openfacility.cris.hokudai.ac.jp/●委託分析部門 → http://www.hokudai.ac.jp/pharma/analys/

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 北キャンパスの3つの研究棟(創成科学研究棟①、北キャンパス総合研究棟 3 号館②および 6 号館③)には、大小様々なレンタルラボスペース「オープンラボラトリー」が設置されています。OA フロアの居室仕様、ウェットタイプのラボ仕様、動物飼育・実験が出来る施設など多

 北キャンパスには、オープンラボラトリーの入居者をサポートする研究支援組織や設備環境が整っています。 札幌駅から地下鉄で 2 駅、タクシーで約 10 分と近く、居住生活エリアと研究エリアが一体となっていることも 190 万都市・札幌の魅力のひとつです。

彩な分野の研究開発に対応可能です。北海道大学の研究者と共同研究する企業の方も入居できます。

「知」の創造から活用まで都心に広がるリサーチ&ビジネスパーク

①創成科学研究棟 ②�北キャンパス�総合研究棟3号館

オープンラボラトリ例1

③�北キャンパス�総合研究棟6号館

オープンラボラトリ例2

◆入居条件・利用料金等

◆研究をサポートする組織

◆利用できる施設

●競争的資金を用いて行う研究2,300 円 / 月・㎡

●共同研究・受託研究契約を締結している研究

3,000 円 / 月・㎡(研究代表者は本学の教員であること)

●産学・地域協働推進機構共同研究・受託研究・知的財産の活用をサポートします。

●共用機器管理センターオープンファシリティの最先端装置を管理します。

●創成研究機構 研究支援室オープンラボラトリーの入居をサポートします。

●北海道大学附属図書館学内 LAN を使って電子ジャーナルを閲覧できます。

●共用スペース大小様々な会議スペース、リフレッシュコーナーを利用できます。

●福利厚生施設お食事・休憩にレストランポプラ、売店が利用できます。

●子育て支援キャンパス内に 3 つの事業所内保育所が設置されています。

●交流産学官の関係者が交流する機会として、研究サロンやバーベキューなども頻繁に開催されています。

オープンラボラトリーの利用を希望される方はこちらまで北海道大学 創成研究機構 研究支援室〒 001-0021 北海道札幌市北区北 21 条西 10 丁目 TEL: 011-706-9274 E-mail: [email protected] URL: http://www.cris.hokudai.ac.jp/cris

「北 大リサーチ&ビジネスパー ク」と呼ばれる北キャンパ

ス研究機関集積エリアは、北海道の自治体、経済界、大学が一体となって研究開発から事業化までの一貫したシステムを構築する研究・産業拠点です。 現在、北海道大学の関連施設が 7施設、北海道立工業試験場等の道立研究機関が 4 施設、ノーステック財団が運営する北海道産学官協働センター(愛称:コラボほっかいどう)、シオノギ創薬イノベーションセンターと、中小企業基盤整備機構による「北大ビジネス・スプリング」があります。

キャンパス内に構える研究拠点多彩な分野に対応できるオープンラボラトリー 

様々な角度からの研究支援研究設備から福利厚生まで

低温科学研究所

電子科学研究所人獣共通感染症リサーチセンター

創成研究機構(北キャンパス総合研究棟3号艦)

北海道立総合研究機構 本部北海道立総合研究機構 工業試験場

北海道立衛生研究所

北海道立総合研究機構環境科学研究センター

北海道立総合研究機構地質研究所

北大農場

北海道大学�キャンバス

北大ビジネス・スプリング

ノーステック財団(コラボほっかいどう)

産学連携本部生物機能分子研究開発プラットフォーム

先端生命科学研究院附属次世代ポストゲノム研究センター

シオノギ創薬イノベーションセンター

創成研究機構触媒化学研究センター電子科学研究所附属

グリーンナノテクノロジー研究センター

北キャンパス研究機関集積エリア

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《 共同(受託)研究開始までの手続き 》興味がある研究を行っている教員が見つかりましたら、まずは共同(受託)研究の受け入れが可能か否かについて当該教員とご相談ください。また、不明な点等は、お気軽に産学・地域協働推進機構までご連絡ください。問合せフォームがあります。

共同(受託)研究を行う教員が決まりましたら、共同研究申請書(※共同研究の場合)のご提出をお願いします。提出先は当該教員が所属する部局(学部)の担当事務部門です。

共同(受託)研究の受け入れを審査します。審査は申請を受けた部局で行います。審査に要する時間は部局によって異なります。申請時に部局事務担当者にお問い合わせください。

共同(受託)研究受け入れ許可となった場合は、共同(受託)研究契約を締結します。契約書の雛形は北海道大学で用意しています。契約書の内容修正をご希望の場合は担当事務部門にお問い合わせ下さい。

契約締結後、送付される請求書に従い研究経費をお支払い下さい。

共同(受託)研究スタート。

オープンラボラトリ例2

鷲見芳彦 SumiYoshihiko

産学・地域協働推進機構産学推進本部産学協働部門長

「産学連携」から「産学・地域協働」へ

 2015 年 4 月から、「産学連携本部」は「産学・地域協働推進機構」に生まれ変わりました。新たに加わった「地域」には、企業のカテゴリーには含まれない団体や人々のすべて、北海道の市町村(行政)、第一次産業の生産者や地域に根差した金融機関、北海道の他大学等が含まれます。産学・地域協働推進機構では、大学と産業界および地方自治体等がともにその機能を理解し協働することにより、大学が持つ知的資産を大企業における事業化や自治体等の政策提言などに組織的に展開し、その成果をより早くより効果的に国民に還元することを最優先に行っていきます。

企業の方向けワンストップ窓口 (お問合わせフォームがあります)

http://www.mcip.hokudai.ac.jp/北海道大学 産学・地域協働推進機構  〒 001-0021 札幌市北区北 21 条西 11 丁目 北キャンパス総合研究棟 3 号館 2FTEL 011-706-9561 FAX 011-706-9550

産学・地域協働推進機構の四つの柱

共同研究、受託研究について

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 産学・地域協働推進機構は、以下の四つの柱をテーマに、研究から社会実装へのステージアップを推進します。

①産学協働 大学と企業が組織対組織で信頼関係に基づいて付き合うための関係構築の窓口を作ります。具体的には、学内に企業等が共同研究拠点(産業創出部門)を設置し、本学研究者とともに大学資産を有効に活用して事業化を進めます。

②地域協働 系部局を中心に展開している、地域課題解決のための取り組みについて情報を集約し、地域と公共自治体、北大が組織として連携できるように支援を行います。

③人材育成 アントレプレナーシップを有しプランを持った人材を発掘し、学外の企業メンターおよびキャピタル等とのコーディネートを行うことで大学発ベンチャーを積極的に創出します。

④資産活用 特許等の知的財産のみならず、研究者のノウハウやニーズ、大学のブランド名等の無形資産、大学にある先端的な施設や機器の有形資産を積極的に活用し、イノベーションを起こします。

お問合せ

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Strategy for Making Innovation理の社会実装を目指して

北海道大学 産学・地域協働推進機構〒001-0021 札幌市北区北21条西11丁目 北キャンパス総合研究棟3号館TEL 011-706-9561 FAX 011-706-9550http://www.mcip.hokudai.ac.jp