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「言語A:文学」 教師用参考資料 2015 年 第1回試験 ディプロマプログラム(DP)

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「言語A:文学」教師用参考資料

2015年 第1回試験

ディプロマプログラム(DP)

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「言語A:文学」教師用参考資料

2015年 第1回試験

ディプロマプログラム(DP)

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2011年5月に発行の

英文原本 Language A: literature teacher support material の日本語版

2014年6月発行

本資料の翻訳・刊行にあたり、

文部科学省より多大なご支援をいただいたことに感謝いたします。

注: 本資料に記載されている内容は、英文原本の発行時の情報に基づいています。

ディプロマプログラム(DP)

「言語A:文学」教師用参考資料

International Baccalaureate Organization15 Route des Morillons, 1218 Le Grand-Saconnex, Geneva, Switzerland

International Baccalaureate Organization (UK) LtdPeterson House, Malthouse Avenue, Cardiff Gate

Cardiff, Wales CF23 8GL, United Kingdom

www.ibo.org

© International Baccalaureate Organization 2014

www.ibo.org/copyrighthttp://store.ibo.org

[email protected]

International Baccalaureate Baccalauréat International Bachillerato InternacionalInternational Baccalaureate Organization

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IBの使命IB mission statement

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この「IBの学習者像」は、IBワールドスクール(IB認定校)が価値を置く人間性を 10 の人物像として表しています。こうした人物像は、個人や集団が地域社会や国、そしてグローバルなコミュニティーの責任ある一員と

なることに資すると私たちは信じています。

3

探究する人私たちは、好奇心を育み、探究し研究するスキルを身につけます。ひとりで学んだり、他の人々と共に学んだりします。熱意をもって学び、学ぶ喜びを生涯を通じてもち続けます。

知識のある人私たちは、概念的な理解を深めて活用し、幅広い分野の知識を探究します。地域社会やグローバル社会における重要な課題や考えに取り組みます。

考える人私たちは、複雑な問題を分析し、責任ある行動をとるために、批判的かつ創造的に考えるスキルを活用します。率先して理性的で倫理的な判断を下します。

コミュニケーションができる人私たちは、複数の言語やさまざまな方法を用いて、自信をもって創造的に自分自身を表現します。他の人々や他の集団のものの見方に注意深く耳を傾け、効果的に協力し合います。

信念をもつ人私たちは、誠実かつ正直に、公正な考えと強い正義感をもって行動します。そして、あらゆる人々がもつ尊厳と権利を尊重して行動します。私たちは、自分自身の行動とそれに伴う結果に責任をもちます。

心を開く人私たちは、自己の文化と個人的な経験の真価を正しく受け止めると同時に、他の人々の価値観や伝統の真価もまた正しく受け止めます。多様な視点を求め、価値を見いだし、その経験を糧に成長しようと努めます。

思いやりのある人私たちは、思いやりと共感、そして尊重の精神を示します。人の役に立ち、他の人々の生活や私たちを取り巻く世界を良くするために行動します。

挑戦する人私たちは、不確実な事態に対し、熟慮と決断力をもって向き合います。ひとりで、または協力して新しい考えや方法を探究します。挑戦と変化に機知に富んだ方法で快活に取り組みます。

バランスのとれた人私たちは、自分自身や他の人々の幸福にとって、私たちの生を構成する知性、身体、心のバランスをとることが大切だと理解しています。また、私たちが他の人々や、私たちが住むこの世界と相互に依存していることを認識しています。

振り返りができる人私たちは、世界について、そして自分の考えや経験について、深く考察します。自分自身の学びと成長を促すため、自分の長所と短所を理解するよう努めます。

IBの学習

者像

IBの学習者像すべてのIBプログラムは、国際的な視野をもつ人間の育成を目指しています。人類に共通する人間らしさと地球を共に守る責任を認識し、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する人間を育てます。

IBの学習者として、私たちは次の目標に向かって努力します。

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「言語A:文学」教師用参考資料 ix

目次

概要 1本資料の目的 1

「IBの学習者像」と「言語A :文学」 2

中核をなす「概念」と「能力」 4

文学批評と理論 10

コースの構成 12

評価 16外部評価――試験問題1 16

外部評価――試験問題2 20

外部評価――記述課題 23

内部評価――個人口述コメンタリー 28

内部評価――個人口述プレゼンテーション 35

付録 40よくある質問 40

参考文献 45

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「言語A:文学」教師用参考資料 1

本資料の目的

概要

本資料は、ディプロマプログラム(DP)の「言語A :文学」コース(2015 年第1回試

験)を指導する教師に参考資料を提供する目的で書かれたものです。『「言語A:文学」指

導の手引き』(2015年第1回試験)と併せてお読みください。

『「言語A:文学」指導の手引き』では、「『言語A』の学習」「評価目標」「シラバス」や

「評価」の詳細について記しています。

本資料『「言語A:文学」教師用参考資料』は、2011年9月から実施されているシラバ

スについての理解を深めるためのサポートをすることを目指しています。

教師を対象としていますが、本資料の内容は生徒に直接関係があるため、適宜、本資料

を生徒と共有するようにしてください。

本資料のねらいは、以下の通りです。

•教師によるコース計画の策定をサポートする。

•コースの要件に関する教師の理解をサポートする。

•各評コンポーネント

価要素への取り組み方についてアドバイスを提供する。

•指導に役立つ資料を教師に提供する。

•学習の到達目標についての教師の理解をサポートする。

内容についての説明この教師用参考資料には、以下が含まれています。

•コースの計画についての指針

•以下の各評コンポーネント

価要素への取り組み方に関する指針

- 試ペ ー パ ー

験問題1:設問つき文学分析

- 試ペ ー パ ー

験問題2:エッセイ

- 記述課題

- 個人口述コメンタリーとディスカッション、個人口述プレゼンテーション

•よくある質問

注: 本資料には、「生徒の学習成果物のサンプル」に関する項目は含まれていません。

「言語A:文学」の評価例(教師のコメントつき)については、英語版の教師用参考資料

(Language A: literature teacher support material)をご覧ください。

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「言語A:文学」教師用参考資料2

「IBの学習者像」と「言語A:文学」

概要

「IBの学習者像」は、「言語A:文学」から切り離せない要素です。各評コンポーネント

価要素に関連

する授業での学習活動をそれぞれ「IBの学習者像」に示された人物像の1つまたは2つ

と関連させることにより、生徒が(および教師も)コースの中でその人物像を体現するこ

とができます。「IBの学習者像」の人物像はそれぞれ、積極的かつ自立した学習者として

の成長に貢献する資質を示したものです。

積極的かつ自立した学習者とは、以下のような特徴を備えています。

•生まれもった好奇心を育む。

•概念を探究する。

•自発的に行動する。

•新たな役割やアイデアを主体的に探究する。

•自信をもって創造的に考えを表現する。

「IBの学習者像」は、「言語A:文学」のねらいと目標に無理なく統合できます。また、

「IBの学習者像」は、自然に「指導」と「学習」のプロセスの一部となるはずです。「IB

の学習者像」に示されている人物像を、評価に取り入れた場合の例を以下に示します。

「パート1:翻訳作品」における例「記述課題」(written assignment)では、課題を完成させるまでの4つの各段階において、

積極的かつ自立した学習者としての、特定の資質が求められます。具体的には、生徒に対

して「IBの学習者像」に示されている以下のような人物像を目指すことを奨励します。

•コミュニケーションができる人――生徒と教師は共に第1段階の「双イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・

方向の口述

活オーラル

動」に参加し、コミュニケーションを図ります。また生徒はその後、第3段階の

「教ス ー パ ー バ イ ズ ド ・ ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」で、自分自身の考えを伝えることに取り組みます。そ

して、再び第4段階の「小エ ッ セ イ

論文の作成」で自分の考えを小エ ッ セ イ

論文として仕上げなけれ

ばなりません。

•挑戦する人――生徒と教師は、テクストを探究し、グループ内で自分自身の考えを

明確に述べる準備をします。グループ内での自分の考えの発表することには、リス

クをとる要素が含まれます。

•振り返りができる人――「記述課題」の第2段階では、生徒は「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」

を書くことが求められます。

上記に加え、教師と生徒は共に「探究する人」「考える人」そして「知識のある人」であ

る必要があります。

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「IBの学習者像」と「言語A:文学」

「言語A:文学」教師用参考資料 3

以上はほんの一例にすぎません。授業での学習活動と「IBの学習者像」を関連させる

方法は他にも数多く存在します。授業の準備をする一方、前もってこれらの関連性を強調

しておくことで、生徒は自ら能動的に学習に参加する「アクティブラーニング」に取り組

むことができます。

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「言語A:文学」教師用参考資料4

中核をなす「概念」と「能力」

概要

本章では、「言語A :文学」を支える評価目標について説明します。評価目標とは、すな

わち生徒と教師が理解する必要がある「概念」と「能力」(コンピテンシー)のことです。

構成・プレゼンテーション・言語スキル評価規準の「レベルの説明」には、言語スキルに応じたレベルが示されています。各レ

ベルで求められている言語スキルは、標準レベル(SL)と上級レベル(HL)で同一で

す(また、「言語A:言語と文学」でも同様に両レベルで同一です)。評点で最高点を得るた

めには、言葉遣いが非常に明確で、効果的かつ慎重に選択され正確であり、文法、語彙、

文章の構成の精度が高く、言語使用域(レジスター)やスタイル(文体)が効果的かつ適

切であることが期待されます。

「言語A:文学」で学習することのできる言語はそれぞれ、文章の構成について独自の規

範があります。一部の言語では、効果的できフ ォ ー マ ル な

ちんとした文章の作成方法として許容されて

いる方法が複数ある場合もあります。評価規準の説明に示されている通り、最も優れた文

章とは、自分自身の考えに読者を引き込み説得するために、効果的に構成され、展開され

たものです。そのためには書式(例えば段落)を整えることも役立ちます。また、それぞ

れの段落内や段落のつながりを通じて示される考えに一貫性があることも大切です。

生徒は、小エ ッ セ イ

論文で引用を活用することが期待されています。引用は、効果的に書かれた

小エ ッ セ イ

論文には必ず見られる重要な要素で、「記述課題」では、引用を活用する能力が特に評

価されます。たいていの場合、生徒は自分自身の考えを展開するために、どのように自分

の記述物に引用を取り入れればよいかを教わる必要があります。引用は、生徒自身の考え

を妨げるものであってはなりません。また、長々とした引用は避けるよう忠告されなけれ

ばなりません。引用の典拠や、参考文献目録の正しい書き方は1つではありませんが、生

徒が学ぶのは、必ず国際的に認められた書式であるようにしてください。細目に及ぶまで

その書式を一貫して使用することが非常に重要であることを生徒に明確に示す必要があり

ます。

「個人口述コメンタリー」では、論コメンタリー

評を慎重に構成することが求められます。記述に関す

る評コンポーネント

価要素の場合と同様、正しい構成は1つではありませんが、考えの焦点が明確かつ持続

的であり、意図的に展開されたものでなければなりません。例えば、生徒の多くは「個人

口述コメンタリー」で、提示された抜粋を行ごとに分析していく方法を採用します。この

方法は、課題文によっては効果的な場合もありますが、他の構成を採用する場合と同様、

考えの展開を相互に関連づけなければなりません。

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中核をなす「概念」と「能力」

「言語A:文学」教師用参考資料 5

「個人口述プレゼンテーション」では、生徒は聞き手の関心を持続的に引きつけるテク

ニックを用いることが期待されます。この評価課題向けに適用できる学習活動には幅広い

選択肢があります。そのため、どのようなプレゼンテーションスキルが妥当かはその学習

活動で取り組む課題によります。いずれのケースにおいても、メモや資料(例えばパワー

ポイント®、ビジュアルクリップなど)の活用も含め、その課題に見合うようプレゼンテー

ションスタイルを慎重に選択します。内部評価の対象となるこの評価課題では、大量のメ

モを読み上げることは(用紙に書いたものであっても電子ファイルであっても)決して許

容される方法ではありません。

文学作品についての知識と理解生徒は、作者自身の創造性の表現として、また、その作品のジャンルや時代を象徴する

作品としての両面から文学作品についての「知識」と「理解」を示すことが求められてい

ます。

•「知識」は、その作品にどの程度、精通しているかを指します。例えば、小説であれ

ば、登場人物の名前や筋書き(プロット)がどのように展開するかを知っており、

それを説明できるということです。

•「理解」は、高次元のスキルで、作者の意図を解釈する能力と、文脈(作品の文脈

と読者が読解にもたらすものの両方)がどのようにその解釈に影響を及ぼすかを理

解する能力を指します。

「知識」と「理解」という用語は、文学的表現技法とその特徴(ジャンルや、時の経過と

ともに作者の文学的表現技法が変化する様子などを含む)にも同様に適用されます。生徒

は学習している作品の種類に関する知識(その作品が小説、詩、戯曲であるというだけで

なく、例えばポストモダン小説、ロマン派の詩、または風刺劇であるなど)を示すことが

期待されています。また、生徒は以下についても知っているべきです。

•その作品はいつ書かれたか。

•その作品の舞台はどこか。

•その作品は、そのジャンルに典型的なものか、または非典型的なものか。

生徒は、作品に見られる主な特徴を把握しなければなりません。例えば、『A Doll's House

(人形の家)』は 1879年にヘンリック・イプセンにより、舞台で上演されることを想定した

戯曲として書かれました。したがって作品には、舞台セットの指示や、スピーチ、会話が

含まれています。たいていの場合、文学のジャンルの特徴への理解は、さまざまな文学的

表現技法の有効性を評価する能力を通じて示されます。

作品間の関係性コースを構成する上で教師が気をつけなければならないのは、あらゆる機会を通じて、

文脈、スタイル(文体)、構成、テーマなどの類似点や相違点を比較し、作品間の関連性を

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中核をなす「概念」と「能力」

「言語A:文学」教師用参考資料6

論じるよう生徒を促すことです。作品間の比較が評価されるのは、「試験問題2」(「パー

ト4:自由選択」のプレゼンテーションが含まれる場合もある)だけですが、生徒は常に

そうした機会を持つべきです。例えば、1952年に発表されたサミュエル・ベケットによる

『Waiting For Godot(ゴドーを待ちながら)』(「パート1:翻訳作品」用に選択)と、1947年に

発表されたアーサー・ミラーの『All My Sons(みんな我が子)』(パート4用に選択)はいず

れも第二次世界大戦後に執筆され、両者とも作者の同大戦中の体験をもとに書かれた戯曲

です。しかし、一方の作者は人生の大半をフランスで過ごしたアイルランド人であり、も

う一方の作者はアメリカ人で、ベケットの戯曲は不条理劇、ミラーの戯曲はリアリズムの

スタイルで書かれています。

文化的価値観と文脈生徒は文学に表現された文化的な価値観と、作品における文脈の重要性を理解すること

が求められます。

文学作品における登場人物の行動は、生徒自身の時代や文化によって判断すべきではあ

りません。これは、次の例に見られるように、女性の地位や、宗教、セクシュアリティー、

人種問題への意識や民主主義など、社会的、文化的、政治的な課題への態度にもあてはま

ります。

•古代ギリシャの作家は、メディアやアンティゴネーなどの強い女性を描いています

が、フェミニストの先駆けだったわけではありません。強い女性はいかなる文化に

も存在し、「すべての女性は人類の歴史を通じて男性に抑圧されてきた」というよう

なあまりにも表面的な出だしでエッセイを書き始めることがないよう、生徒は忠告

されなければなりません。アンティゴネーの場合は、古代ギリシャの埋葬儀礼を理

解することが不可欠です。アンティゴネーが兄を埋葬したのは、自らの個性を主張

するためではなく、家族が死後に安息できるよう埋葬することが女性の義務であっ

たからです。彼女を動かしたのは、家族としての、および宗教的な義務感であり、

男性と同等になりたいという彼女の願望ではありませんでした。

•チヌア・アチェベの『Things Fall Apart(崩れゆく絆)』において、登場人物オコンク

ウォは、重婚していることを批判されるべきではありません。

•マーク・トウェインの『The Adventures of Huckleberry Finn(ハックルベリー・フィンの

冒険)』において、ハック・フィンが「nigger(黒人に対する侮蔑語)」という言葉を

使用したことで非難されるべきではありません。

アイデアの実証と正当化文学について書いたり語ったりする際、発言または主張は必ず検証され、それを裏づけ

る証エビデンス

拠を備えていなければなりません。多くの場合、作品やその一節、抜粋に関する慎重

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中核をなす「概念」と「能力」

「言語A:文学」教師用参考資料 7

に選ばれた詳細な根拠を挙げることで、生徒は自分独自の解釈や、理解の深さを示すこと

ができます。次の例を考えてみましょう。

•権力に関する小エ ッ セ イ

論文を書く際に、主人公の行動がすべて権力の獲得に関連すると述

べるだけでは不十分です。この場合、生徒は以下の質問に取り組む必要があります。

- どのような権力か。

- 彼または彼女はいかにして権力を獲得しようとしているか。

- 権力の必要性に関する引用はあるか。

また、1つの例を挙げるだけでは不十分です。優れた小エ ッ セ イ

論文では、主人公が自分

自身の目標を達成するためにとった数々の行動について言及します。

評価規準には、常に知識と理解に関するものが含まれています。生徒がこの規準で高い評

点を獲得できる唯一の方法は、詳細な知識を示すことです。引用は文脈に合わせて用い、

小エ ッ セ イ

論文の文章に統合します。引用は、説明や分析を伴わなったものでなければなりません。

「設問つき文学分析」と「論コメンタリー

評」についても同様の要件があてはまります。「設問つき文

学分析」と「論コメンタリー

評」では、試験用紙または抜粋が配布されて手元にある状態で、引用や参

照先の形で証エビデンス

拠が用意されているからです。

文学的な技法の分析生徒は言語、構成、技

テクニック

法、およびスタイル(文体)を分析する能力を示すことが求めら

れます。

以下の例のように、生徒は「説明」(description)と「分析」(analysis)の違いを知るこ

とが重要です。

•マルケスとアジェンデが共に自身の小説においてマジック・リアリズムの技テクニック

法を使

用していると生徒が書き、『The House of the Spirits(精霊の家)』におけるクララの千

里眼と、『One Hundred Years of Solitude(百年の孤独)』における多くの例の1つを挙げ

た場合、それは「説明」にすぎません。さらに必要とされているのは、マジック・

リアリズムを使用した際の効果の「分析」なのです。

- マジック・リアリズムに達成可能で、正攻法のリアリズムに達成できないこ

とは何か。

- 文学において、世界を完全にリアルに投影することは可能か。

分析は、スタイル(文体)について論じる際にも同様に重要です。詩が叙情的なスタイ

ル(文体)で書かれていると述べるだけでは不十分です。それは正確には何を意味するので

しょうか。その主張をいかに正当化することができるでしょうか。他のスタイル(文体)

は同じ詩の中で同様に効果を及ぼしているでしょうか。

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中核をなす「概念」と「能力」

「言語A:文学」教師用参考資料8

評価文学作品を「評価」するにあたって生徒は、文学が読者に影響を与える方法とその理由

を認識することが求められます。

この文脈における「評価」とは、ある作者が他の作者と文学的な意味でどのように異な

るのかを見抜く能力であるといえます。似たような文学的な技テクニック

法でも、読者に及ぼす影響

は異なります。生徒(特にHLでは)は、作者の創作上の選択に対する生徒独自の考えを

分析し、論じて、正当化できることが期待されています。以下は、この点に取り組む際に

役立つ質問です。

•作品のスタイル(文体)は内容と調和していますか。

•作者は大衆の偏見に働きかけていますか。あるいは偏見を再確認していますか。

•作者は読者のさらなる理解をもたらしたり、読者が確立された考えを再考するよう

に仕向けていますか。

独自の文学批評「試

ぺ ー パ ー

験問題1」では、生徒が初めて読む予備知識のない散文の抜粋または詩について、独

自の文学分析のスキルを適用できることが期待されています。授業で行われる作業の大半

は他の人、特に教師の判断に支えられていますが、「言語A:文学」では、生徒が自分自身

の力で行間を読むスキルを身につける必要性を重視しています。生徒は、作家がいかにし

て効果を達成したか、そして、読者が散文の抜粋や詩の主題について、作者がどのように

作者自身の見解を読者に説得しようと試みているかを、必ず理解できるようでなければな

りません。

「記述課題」や「試ペ ー パ ー

験問題2」の小エ ッ セ イ

論文についても独自性を示すことが可能です。生徒は

授業で学んだことを基盤とすべきですが、一方で、そのトピックに関する独自の見解を示

す必要があります。例えば、ある登場人物をひ弱な臆病者やいじめっ子として捉えること

を指導されたクラスで、生徒が自分自身の考えを裏づける優れた例を用いて、その登場人

物を擁護しようとすることは奨励されます。

視覚的スキル視覚的スキル(visual skill)の指導は、大掛かりなものである必要はありません。また、

映画や芸術、メディア批評の最先端の分析を用いる必要もありません。記述されたテクス

トと視覚画像(静止画像や動画)の相互作用について生徒の認識を高めるためには、多く

の場合、「見ること」のスキルに注目させ、記述されたテクストもまた、読むだけでなく

「見る」ことができるという方法を示せば十分です。さらに「言語A:文学」の学習では、

視覚的分析を論じるために高度に専門的な用語を用いることは求められていません。

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中核をなす「概念」と「能力」

「言語A:文学」教師用参考資料 9

推奨される学習活動

•特定の画像、例えば写真や絵画について論じることで、対象を「見ること」に焦点

をあてる。生徒に、文学テクストに取り組む際と同じ方法を用いるように求める。

たとえば、全般的な状況、意味、影響、(専門的用語に頼らずに)前景化やアング

ル、視点などの技術的要素を見ながら、そうした要素が作品の意味と「見る者」に

どのような影響を及ぼすかを考察する。

•授業で映画を見る時は、視覚効果とその効果が物語の提示方法にどのような影響を

与えているかに必ず注目する。特定の視覚効果やクリップを文章で描かれた場面と

比較する。さまざまなメディアを使用して物語を伝える方法について論じる。

•漫画(グラフィック・ノベル)やハイパーテクストなど、画像を組み込んだ文学テ

クスト(特に「新たなテクスト性」の選択肢)について考える。言葉と画像を組み

合わせたこの種の作品で用いられている特定の視覚効果について論じる作品は数

多く手に入る。

•何世紀もの間、作家が画像を用いたり、作品のレイアウトやデザインに注意を促し

てきた方法について注目する。

•正規の授業の一環として、生徒にブログ、ウィキおよび電子ポートフォリオを作成

させる。生徒は、複数の感覚を通じた情報処理を指すマルチモーダルなデジタル環

境の特性を利用して、自分自身のコミュニケーションに音声、静止画および動画を

付加することができる。

•表紙で本の中身を判断する。

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「言語A:文学」教師用参考資料10

文学批評と理論

概要

独自の観点から文学を分析し、論じる自信をつけるためには、生徒は文学批評というジャ

ンルに精通する必要があります。文学批評には、書評や講義、記事、書籍が含まれます。

これらは、印刷物としても、インターネット上でも、見つけることができます。

異なる批判的視点について学ぶことは不可欠です。「ミニコース」の形で批評理論を学ん

だり、特定の批評理論(例えば、ポストコロニアル主義、形式主義、構造主義、新歴史主

義、フェミニズム、マルクス主義)を通じて作品を学ぶこともできるでしょう。また、生

徒は以下の点を興味深く感じるでしょう。

•文学研究という行為そのものが研究の対象であること

•文学を分析し、ディスカッションする際に唯一の正しい答えはないということ

•文学批評の領域にも流行廃りがあること

生徒のスキルの開発生徒向けの学習活動としては、以下のようなものが推奨されます。

•「前提」(assumption)を検証する――1編の詩を取り上げ、その詩に対する初めの

段階の理解(initial response)の仕方の違いを検証する。例えば、以下のような「出

発点」を設定し、生徒はそれぞれに異なる出発点から作品に取り組む。

- 1人目の生徒は、リズムや押韻の方法など、明白な構造に注目して詩を探究

する。

- 2人目の生徒は人物の描写を検討する。

- 3人目の生徒は、最近の個人的な経験に照らし、詩の内容を検討する。

フォローアップのディスカッションでは、これらの異なるものの見方やその立脚

点、価値、関連性などについて考えることができます。

•絵画またはその他のアート作品について考える――生徒に質問することやメモを

とることを促す。

- この作品は、何についてのものか。

- どのような点が興味深いか。

「非文学的」な作品について考えることを生徒に求めることで、生徒は文学に取

り組むに際し自動的に「前提」としていた事柄をより明確に把握することができ

るようになる場合があります。

•さまざまな学派の理論を取り上げ、短い作品(詩、または短編小説)に関連づけて

指導する――特定の学派の理論が用いる基本的な概念、前提、および技テクニック

法に関し

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文学批評と理論

「言語A:文学」教師用参考資料 11

て簡単な紹介をした後、その理論に基づいた観点から文学作品についてディスカッ

ションまたは文章によるまとめを行う。

•ある作品の短い抜粋を取り上げ、異なる批評的解釈を見るだけでなく、特定の理論

的スタンス(例えば、精神分析理論、フェミニズム理論、ポストコロニアル主義理

論、形式主義理論)から書かれた批評について考える――例えば、ハロルド・ブ

ルームによるハムレットの精神分析的解釈を、スティーブン・グリーンブラットの

新歴史主義アプローチと対比させるなど。

•特定の文脈に関心をもつことと、より形式主義的なアプローチの違いについてディ

スカッションする――生徒に以下の問いを検証するよう促す。

- なぜ私たちは作者の人生や作者が生きた時代に関心があるのか。

- 私たちが関心を払う必要のない時代はあるか。

- これらの関心は排反するものであるか。

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「言語A:文学」教師用参考資料12

コースの構成

概要

「言語A:文学」のコースを構成する際、教師は適切な形で以下の要件をコースに必ず組

み込まなければなりません(「場所」についての要件が該当する場合は、その要件を考慮に

入れなければなりません)。

必読図書リスト 各言語に特有の「指定作家リスト」(PLA)と、すべての言語に共

通の「指定翻訳作品リスト」(PLT)を活用

文学作品のジャンル PLAの中から、SLは3作品、HLは4作品を学習

時代 シラバス全体で少なくとも3つの時代を学習

場所 複数の場所で使用されている言語では考慮が必要

以下の表は、コースを構成する4つの「パート」と、各パートに関する評価方法、評価

課題の提出期限の目安(具体的な詳細日程は異なる可能性があります)を示したものです。

表で示されている提出期限はある種の目安になりますが、実際には、生徒は他科目でも

多くの締め切りを抱えています。そのため、科目間の調整が不可欠です。

「記述課題」(パート1)と、内部評価の課題(個人口述課題)は、多くの場合、2年間

を通じて実施されます。表に記載された月は、ディプロマプログラムコースの第2年次の

ものです。

シラバス 評価要素 外部評価提出締め切り5月セッション

外部評価提出締め切り11月セッション

パート1翻訳作品

記述課題 3月 9月

パート2 精読学習

個人口述コメンタリー(HLで

はディスカッションを含む)

4月 10 月

パート3ジャンル別学習

試験問題2 5月実施の

最終試験

11 月実施の

最終試験

パート4自由選択

個人口述プレゼンテーション 4月 9月

いずれのパートとも無関係な項目

試験問題1 5月実施の

最終試験

11月実施の

最終試験

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コースの構成

「言語A:文学」教師用参考資料 13

指導の順序とタイミング『「言語A:文学」指導の手引き』(2015年第1回試験)の「コースの構成」で述べたと

おり、「IBの原則では、教師は独自のコースを構成し、生徒および学校独自のニーズや関

心を踏まえて指導することが強く奨励されています」。

「言語A:文学」は、柔軟にコースを構成できるようデザインされています。「指導の手

引き」に記載されている各パートの順番は、作品が指導されるべき順番を示唆するもので

はありません。

コースの構成例作品を指導する順番が対照的な2つの構成例を以下に紹介します。2つの例は、教師が

独自のシラバスと指導案を構成する際の出発点となることを意図しています。

本資料は、すべての言語の教師を対象としているため、作品はタイトルではなく数字で

示しています。

各学校はそれぞれの方法で年間および週間の授業時間を編成しています。国ごとの、ま

た世界各地のバリエーションを考慮に入れ、以下の表では、全体を4期に分けた編成を設

定しています(HLは1期あたりの授業時間60時間の授業を4期、SLは同40時間の授業

を3期と同30時間の授業を1期)。年間を各6カ月の2期に分け、DPの第1年次と第2

年次を通じて授業を行います。

例1(HL)この例では、コースの初めにまず必要となるスキルを全般的に紹介し、その後、選択さ

れた特定の作品に焦点をあてて学習します。

第1期(DP第1年次) 60時間【目標】「言語A:文学」の到達目標として求められている全スキルを生徒に紹介する。

3つの作品を学習――「パート2:精読学習」「パート3:ジャンル別学習」および

「パート4:自由選択」からそれぞれ1作品

配当時間 学習する作品 ねらい/扱うスキル

5時間 パート4の『作品1』 参照ツールの活用方法

15時間 パート4の『作品1』 口述力および記述力の育成、スタイル(文体)に関す

るスキルの育成

25時間 パート2の『作品1』 テクスト分析と論評

15時間 パート3の『作品1』 文学のジャンルの学習とその歴史的文脈

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コースの構成

「言語A:文学」教師用参考資料14

第2期(DP第1年次) 60時間4作品を学習――「パート4:自由選択」から1作品、「パート1:翻訳作品」から3

作品

配当時間 学習する作品 ねらい/扱うスキル

10時間 パート4の『作品2』 作品解釈(クロース・リーディング)の技術

30時間 パート1の翻訳作品を

3作品

文化の学習と文学的な意味において文化の果たす役割

20時間 パート1の翻訳作品を

3作品

パート1の「記述課題」

第3期(DP第2年次) 60時間3つの作品を学習――「パート2:精読学習」から2作品、「パート4:自由選択」か

ら1作品、DP1年次で学習したパート2の作品の復習

配当時間 学習する作品 ねらい/扱うスキル

10時間 パート4の『作品3』 異なる批判的アプローチを理解(パート4:「個人口述

プレゼンテーション」)

20時間 パート2の『作品2』

(およびパート2の『作

品1』の内容の復習)

テクスト分析と論評の復習

30時間 パート2の『作品3』

(詩)

文学的表現技法と特徴についての認識を高める(パー

ト2:「個人口述コメンタリー」と「ディスカッション」)

第4期(DP第2年次) 60時間「パート3:ジャンル別学習」から3つの作品を学習――DP1年次で学習したパート

3の作品を復習

配当時間 学習する作品 ねらい/扱うスキル

20 時間 パート3の『作品2』 論評の技法

30 時間 パート3の『作品3』と

『作品4』

特定のジャンルの特徴を学習

10 時間 パート3の全作品の復習 最終試験のための準備(「試験問題1」と「試験問題

2」)

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コースの構成

「言語A:文学」教師用参考資料 15

例2(SL)以下は2年間という期間を概念とスキルに分け、比較的短いテクストとシラバスからの

作品を使って指導する例です。

第1期(DP第1年次) 40時間 「作品の見方」

配当時間 学習する作品 ねらい/扱うスキル

10時間 幅広いの文学作品からの抜粋 ジャンルの紹介

10時間 パート4の『作品1』 読者と作者の文脈や文化の紹介

10時間 パート4の『作品2』 作品解釈(クロース・リーディング)の紹介

10時間 パート4の『作品3』 批判的なものの見方の紹介

第2期(DP第1年次) 40時間 「文化的視点」

配当時間 学習する作品 ねらい/扱うスキル

15時間 パート1の『作品1』 文化的視点――読者と作者

15時間 パート1の『作品2』 文脈的視点――読者と作者

10時間 パート1の『作品2』 パート1の評価課題

第3期(DP第2年次) 40時間 「文体論と口述スキル」

配当時間 学習する作品 ねらい/扱うスキル

15時間 パート2の『作品1』 詩の読解――詩の形式に関する技法

15時間 パート2の『作品2』 技法――語彙やアプローチ

10時間 パート3の『作品1』 文学的表現技法と特徴を紹介

30時間(DP第2年次)「ジャンルと比較分析」

配当時間 学習する作品 ねらい/扱うスキル

10時間 パート3の『作品2』 ジャンルの歴史的発展

10時間 パート3の『作品3』 ジャンルの概念、テーマや主題

10時間 パート3の全作品の復習 最終試験のための準備(比較分析)

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「言語A:文学」教師用参考資料16

外部評価――試験問題1

評価

文学論評とは何か「言語A:文学」のコースで使用されているとおり、「論

コメンタリー

評」(commentary)または「文リテラリー

学論コメンタリー

評」(literary commentary)という用語は文学分析、すなわち文学作品の詳細な検証を

指します。文学作品について論じるための演習には、以下の要素が含まれます。

•作品解釈(クロース・リーディング)

•文学鑑賞

•行間を読む

•文学的特徴の影響を理解する

生徒は、散文の抜粋または詩がもつ複雑さへの理解を示し、テクストを援用して自分自身

の解釈や判断について説得力のある主張を行うことが期待されています。型通りの「正し

い」答えはありません。生徒は、独自のアイデアや洞察を展開し、それらが単にあてずっ

ぽうな推測でないことを示すため、テクストを証エビデンス

拠として援用することが奨励されていま

す。教師は、生徒が分析的に考え、テクストの機微を探究するよう手助けします。優れた

論コメンタリー

評は概して、テクストに独自に向き合い、作者が使用したさまざまな文学的な技テクニック

法の効

果について鋭い理解を示しています。

生徒は、「言語A:文学」で学習している言語が何であれ、文学的なディスカッションに

適切な言語を使用することが期待されています。これには通常、一般的な文学用語を正確

に用いることが含まれます。作者が選択した文学的な技テクニック

法の有効性について論じることは

さらに重要です。文学用語を単に羅列するだけでは高い評点は得られません。

「試ペ ー パ ー

験問題1」の評価規準では、生徒は選択した散文の抜粋や詩のジャンルに関連し得る

他のテクストを参照する必要はありません。

文学論評(HL)

HLの生徒は、自分自身の文学分析を小エ ッ セ イ

論文の形式で構成することが求められます。

小エ ッ セ イ

論文は、「論コメンタリー

評」または「文リテラリーコメンタリー

学論評」とも呼ばれます。試験問題に出題される散文または

詩を生徒が知っていることはほとんどないため、この演習はたびたび「初めて読む作品に

ついての論コメンタリー

評」(unseen commentary)と呼ばれています。当然ながら、きちんとした形式で

考えを構成する方法は、国によっても、言語によっても広く異なります。また、国の中や

同一言語内でも異なるため、論コメンタリー

評を構成する方法を規定することはできません。しかしな

がら、最も優れた論コメンタリー

評は、一貫性があり理路整然と展開され、効果的に構成された、説得

力のある主張を提示しています。

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外部評価――試験問題1

「言語A:文学」教師用参考資料 17

生徒は、以下の能力により評価されます。

•十分に裏づけられた解釈を通じて、散文の抜粋、または詩についての理解を示す能力

•作者が使用した言語、構造、技法およびスタイル(文体)を特定する能力

•作者の選択がもたらす効果について論じる能力

•一貫性があり理路整然ときちんとした形式で自分の考えを構成する能力

設問つき文学分析(SL)

SLの「設問つき文学分析」(guided literary analysis)では、HLの文学評論とまった

く同じスキルが求められます。HLと異なる点は、SLでは「考ガイディングクエスチョン

察を促す問い」(guiding

questions)として2つの設問が与えられるため、生徒が散文を解釈する際に手がかりがあ

ることです。さらに、SLの生徒は、評価の一部としてしっかりとした構成の論コメンタリー

評(また

は小エ ッ セ イ

論文)に取り組むことは求められていません。この違いには2つの理由があります。

•試験時間がHLでは2時間なのに対し、SLでは1時間30分しか与えられていない

ため。「考ガイディングクエスチョン

察を促す問い」として用意された設問に答えることで、文学分析に時間

を有効にあてることができます。

•「試ペ ー パ ー

験問題1」は「言語A:文学」の中で、SLとHLの区別が配慮されている部

分であるため。SLの生徒は、説得力のある主張に貫かれた論コメンタリー

評を作成することは

求められていません。また散文の抜粋または詩について独自の視点を提示する必要

もありません。

記述と口述による文学論評の違い記述と口述のどちらのタイプの論

コメンタリー

評でも、同じ問いに答える必要があります。

•何についての文章か。

•それはどのように書かれていたか。

•それはなぜ書かれたのか。

論コメンタリー

評が成功するためには、記述、口述ともに事前に慎重に考えて計画することが求めら

れます。行うことは根本的に同じですが、以下のような違いがあります。

•「試ペ ー パ ー

験問題1」の「文リテラリーコメンタリー

学論評」(HL)、または、「設問つき文学分析」(SL)では、

生徒が試験問題を通じて手に入れることのできた証エビデンス

拠に基づき立論することが求

められます。試験で出題される散文の抜粋や詩は、生徒が授業で学んだ作品ではな

い場合がほとんどです。一方、「個人口述コメンタリー」では、授業で詳細に指導

された作品の抜粋が出題されます。生徒は出題された詩または抜粋の綿密な分析を

通じて、その作者の作品についての知識と理解を示さなければなりません。

•口述と記述で必要とされるスキルは重複しますが、まったく同じではありません。

「個人口述コメンタリー」の前には、生徒はメモを取り、それらを発表する順番に

並べる必要があります。生徒は明確かつ流暢に話す方法を身につけ、文学の解釈に

関する質問に自信をもって回答します。「個人口述コメンタリー」では、知識の欠

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外部評価――試験問題1

「言語A:文学」教師用参考資料18

如をごまかすことが非常に難しいため、成功するためには「パート2:精読学習」

の作品を復習することが重要です。

論評の指導「言語A:文学」を履修する生徒の読み書き能力にはかなりの差異があることでしょう。

そうした生徒のほとんどにとって、口述または記述で自信をもって綿密な文学分析ができ

るようになるまでには、かなりの練習が必要になります。論コメンタリー

評の指導は一夜漬けではでき

ません。1カ月でさえ不可能です。コースの2年間を通じて幅広い種類のテクストで継続

的に練習することが必要です。初期段階では、授業のうち週1回を論コメンタリー

評の作業にあてると

良いでしょう。

短い抜粋は、文学の要素、文学用語、ジャンル研究、または新たなジャンルやテクスト

を簡単に紹介する上で特に有用です。また、短いテクストにコメントする機会を生徒に与

えることも、生徒の言語運用能力を発達させるのに役立ちます。生徒が慎重に言葉を選択

し、適切できちんとした文学的語彙を使用することを奨励することで、生徒の言語運用能

力を伸ばすことができます。

生徒がテクストの分析方法を学習するためには、自分自身で分析をしてみる必要があり

ます。自転車に乗るのと同様、たとえ誰かが繰り返し乗り方を指示しても、自分で自転車

にまたがり、乗ろうとしない限り決して身につけることはできません。したがって、初期

における論コメンタリー

評の指導は、ディスカッションとグループワークを通して行われるべきです。

推奨される学習活動

•広告、童謡、写真、画像および短い新聞記事など、隠されたメッセージの解読が容

易なテクストから始める。

•授業でディスカッションするための資料を自分で持ち込むように生徒に求める。

•タイトルと最初の行、あるいはその一方に基づいて推論を行うよう生徒に求める。

•生徒が自信をもって文学についての自らの考えを明確に述べられるようにするた

めに、体系化されたプロンプト(発問)を用いる。例えば、クラス全員に短い抜粋

を配布し、生徒は「この行は動揺を示している、なぜなら…」のようなプロンプト

(発問)に答える。

•生徒に自分の創作を持参し、生徒同士でその作品についてディスカッションするの

を奨励することで、創作を促す。さまざまなスタイル(文体)について学ぶには、

生徒に模倣作(パスティーシュ)を書かせるとよい。例えば、学校の年間行事の中

からあるイベントを選択し、コースで学んだ一部の作家の作風をまねて、それに関

する説明を書かせる。

•可能な限り幅広い文章に触れさせる。くだけた表現から非常に格式のある表現、詩

的なものからテクニカルなもの、時代背景が異なるもの、単純なものから複雑なも

のまで、生徒にさまざまな文章を紹介する。

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外部評価――試験問題1

「言語A:文学」教師用参考資料 19

•散文の抜粋または詩からキーワードを削除することで、穴埋め式の文章をつくる。

生徒はグループに分かれ、あてはまる言葉を考え、クラスで発表して共有する。ク

ラス全体で最も適切な単語を選び、その選択についてコメントする。その後、各グ

ループはそのグループの結論にたどり着くために用いた考え方を分析する。再びク

ラスで各グループが学んだ内容を共有し、考え方を評価する。そして、最も効果的

な考え方を選択する。

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「言語A:文学」教師用参考資料20

外部評価――試験問題2

評価

比較し対比する小エ ッ セ イ

論文を書くことが求められている場合、生徒は作者がどのように文学

的表現技法を用いたかについて理解していることを示さなければなりません。

「文学的表現技法」(literary convention)は、例えば以下のような文学のジャンルの特徴

を指します。

•戯曲には、スピーチや会話、筋書きと登場人物が含まれている。

•散文小説には、伏線やフラッシュバックなどの特徴がある。

•韻文には韻律、脚韻および音韻的な工夫がある。

文学的表現技法の解釈については、「指導の手引き」の「『言語A:文学』の指導の方法」

の「文学的表現技法」を参照してください。

作品の選択文学的表現技法は文学を探究する素晴らしい機会を提供します。ジャンルと文学的表現

技法の視点を通じて学習する限りにおいて、どのように作品を組み合わせても効果的です。

「パート3:ジャンル別学習」で学ぶ作品の選択には、多くの選択肢があります(SLで

は3作品、HLでは4作品)。ただし、作品は「指定作家リスト」(PLA)の同一ジャン

ルから選択されたもので、「資料持ち込み不可の試験」(Closed-book examination)にふさわ

しいものでなければなりません。

以下に、各ジャンルの作品の選択に関する参考例を挙げます。選択に際してのアイデア

とすることを意図しています。

詩•音と意味の関係について論じるために、定型脚韻詩と定型韻律詩などの形式の異な

る詩の組み合わせを選択。

•詩人(ロマン派、近代派、神秘派、哲学派)など、異なる文芸運動またはアプロー

チを代表する詩人をグループ分けすることにより組み合わせを生成。

戯曲•演劇――共感できる主人公あるいは主唱者とその競争相手が敵対する力関係を描

いた政治的な劇、主人公とその競争相手が象徴的な関係にある哲学的な劇、または

競争相手に共感できる哲学的な劇、または競争相手が主人公の邪悪な面を暴く哲学

的な劇(ポイントは、主人公と相手との異なる組み合わせ)。

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外部評価――試験問題2

「言語A:文学」教師用参考資料 21

•哲学劇、政治劇、表現主義および古典的な劇におけるスピーチの使用――組み合わ

せのポイントは、スピーチが劇中にどのように挿入されているかと、それがもたら

す効果の違い。

小説および短編小説•小説――介入的な語り手、信頼できない語り手、複数の語り、主人公でない登場人

物による一人称の語り――組み合わせのポイントは、対照的な語り。

•歴史上、現代、外国および未来を舞台にした短編小説――組み合わせのポイント

は、異なる情景を作者がどのように、そして何の目的で用いているかについて。

小説以外の散文•旅行記――作者と出来事(年代順)、著者が見ているもの(場所)、作家が場所に鋭

い視線を投げかけているもの(現在と過去の間を移動)、作家が見えるものに重要

な意味を与えているもの(哲学的)――ここでの組み合わせのポイントは、作品の

構成方法の違い。

•随筆――ユーモアのあるもの、目から鱗が落ちるようなもの、哲学的なもの、科学

的/宗教的なもの――視点や語り手が異なることを比較するために、自伝または伝

記の組み合わせにすることも可能。

優れた小論文を書くために必要なスキルの育成以下の「鍵となる問い」(key question)を投げかけます。

•この作品は、どのような点でそのジャンルを代表する作品なのか。

•何が作品A、B、C、またはDを相互に結びつけているのか。

•作者たちがそのトピック/結びつきにアプローチした方法はどのように異なるか。

以下の「鍵となる領域」(key area)について準備します。

•文学的表現技法を理解する。

•学習した作品について優れた知識と理解を得る。

•クラスで共通に学習した内容を繰り返すのではなく、比較を用いた小エ ッ セ イ

論文の書き方

を理解する。

•小エ ッ セ イ

論文に自立的に取り組む(「IBの学習者像」参照)。

•「知の理論」(TOK)の「芸術作品は、芸術家が気づいていない意味を含んだり、

伝えたりすることが可能か」という問いについて考える。

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外部評価――試験問題2

「言語A:文学」教師用参考資料22

推奨される学習活動

•ジャンルの変換――生徒は、学習している作品と同じトピックを用いて、異なる

ジャンルで文章を書く(生徒に、ジャンルによってどのように内容が変化するかを

理解するよう促す)。

•ロールプレイ――学習中の作品の設定と一致する部分のある映画/ビデオクリッ

プなどを用いる。生徒にとって刺激となる最近の素材を用いること。生徒は映画な

どの状況において、登場人物になりきって反応してみる。

•学習中の詩のパロディまたはオマージュ――その後、生徒が試みようとしたことに

ついての説明とディスカッションを行う。

•関連するジャンルにおける創作――作者が取り組まなかった材料を提供する(生

徒は作者の観点から創作を経験することを通じて、ジャンルや形式、スタイル(文

体)への理解を深めることができる)。

•ジャンルが映画でどのように用いられているかを検討する。

•グループでのディスカッションやプレゼンテーションを行う。

リソース

•教師の対象作品に関する知識――作品の歴史的・社会的文脈の概要や文体の変化に

関する知識を含む

•異なる年代を反映する抜粋見本

•選ばれた作品とは対照的または補完的な抜粋見本

•関連するパフォーマンスの上演DVD

•批評

•関連するウェブサイトの知識

•補助教材(companion books)との関連づけ

•IBのオンラインカリキュラムセンター(OCC)のフォーラムおよびリソース

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「言語A:文学」教師用参考資料 23

外部評価――記述課題

評価

翻訳は、別の文化との間をつなぐ「言語による架け橋」であり、その文化がもつ、いく

つかの側面についての私たちの理解を照らし出してくれます。

同じ作品を翻訳しても、翻訳者によって翻訳後の作品には違いがあります。作品の「文

学性」を探究する際には、翻訳者が原作者のスタイル(文体)や語調などの文学的要素を

伝えようと同等の言葉や芸術性を見つける際に技巧をこらしたことを念頭に置くとよいで

しょう。

可能であれば、同一作品の異なる翻訳作品(短い抜粋でも可)を比較してください。こ

れは、以下の諸課題を際立たせる重要な演習となります。

•何が翻訳されているか。

•どのように翻訳されているか。

•翻訳作品ではどのように解釈されているか。

•翻訳で何が失われたか。

パート1の翻訳作品を選択作品は必ず「指定翻訳作品リスト」(PLT)から選択されなければなりません。SLは

2作品、HLは3作品です。

「記述課題」のプロセス

第1段階:対話形式の口述活動(インタラクティブ・オーラル)

「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」(interactive oral)には多くの実施方法があります。「言語A:教

師用参考映像(teacher support film)」のデモンストレーションでは、4人の生徒がそれぞれ

作品の異なる側面を提示した後、クラス全体でのディスカッションを行っています。この

方法は、映像の中の生徒たちの様子から非常に効果的なことが示されています。ただし、

映像で示されている方法は、あくまでも授業で有効な数多くあるアイデアの一例です。

【必須条件】

•学習した作品それぞれにつき、必ず少なくとも1回の「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」を実

施しなければなりません。

•(学習した全作品についての)「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」のうちのいずれかの回で、生

徒は各自、何らかの特定の役割を担わなければなりません。

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外部評価――記述課題

「言語A:文学」教師用参考資料24

•生徒が取り組むプロンプト(発問)は、必ず作品の文化的および文脈的基盤を生徒

に探究させるものでなければなりません。また、これらの考察が作品の理解にどの

ような影響を与えるかを検討させるものでなければなりません。

•「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」は理想的には形式的な「つけ足し」ではなく、作品を指導

する上での不可欠な部分であるべきものです。

以下は、「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」として推奨されるいくつかの種類の学習活動案です。い

ずれのケースにおいても、プロンプト(発問)、またはディスカッションのための刺激が、

作品の特定の部分に直接的に関係する、テーマを絞ったものであることが推奨されます。

•1回の授業中に、数人の生徒が文化または文脈を理解する上での問題点を紹介し、

クラス全体と教師とで提起されたそれぞれの問題点をディスカッションする。

•ある作品に関する授業において、生徒が教師の役割を担い、論点を紹介し、クラス

でのディスカッションをリードする。

•生徒が、個別またはグループで映画のクリップまたはその他の視覚的メディアを選

択し、それらが文化や文脈の理解をどのように深めるかについてのディスカッショ

ンをリードする。

第2段階:振り返りの記述(リフレクティブ・ステートメント)【必須条件】

•「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」(reflective statement)は、必ず「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」の後、可

能な限り速やかに実施されなければなりません。「言語A:教師用参考映像(teacher

support film)」に示されているように、生徒は、「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」を書く際に役立

つように「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」のディスカッションの最中にメモを取ることが推

奨されます。

•各生徒は、学習した各作品につき1つの「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」を必ず書かなければな

りません。1つの作品につき複数の「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」がある場合(多くの場

合、複数ある)、任意ではありますが、「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」のそれぞれについて

「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」を書くことが推奨されます。

•小エ ッ セ イ

論文で取り上げる作品についての「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」は、小エ ッ セ イ

論文とともに評価の

対象となることを、生徒は必ず認識していなければなりません。

•「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」には、「考ガイディングクエスチョン

察を促す問い」が1つあります。それは以下のような

ものです。

-「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」を通じて、作品の文化的および文脈的な考察に対す

るあなたの理解はどのように発展しましたか。

「文脈」とは、考えられる文脈すべてを指しています。それは、以下に記すような特定の

要素に目を向けることにより、作品の文化的基盤を捉えることを意図しています。

•作品が書かれた時と場所

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外部評価――記述課題

「言語A:文学」教師用参考資料 25

•作者に関する情報(特に作品の中で提示された作者の見解が現代社会の状況と一致

するかどうかについて)

•哲学的、政治的および社会的文脈

•生徒自身が作品にもたらすアイデア

「発展した」(developed)は、上記の問いのもう1つのキーワードです。「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」

は、個人的な意見の表明(ステートメント)であり、通常、第一人称で書かれます。そし

て、その内容は理解の発展に関する正直な説明であるべきです。生徒が学んだことはあま

りないと感じるのであれば、まだ理解していないことについて振り返るようにします。

「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」のねらいは、ディスカッションの焦点を十分なチャレンジを伴うもの

とすることです。そうすることで、生徒が刺激され、作品のもつ要素についてより深く考

えるようになります。

「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」の評価規準では、「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」の基盤となっている問いと同じ

言葉が用いられています。生徒が問いに正直かつ十分に答えれば、3点を達成することが

できます。

振り返りの記述の例OCC上で見られる「Example 3」(英語版)の項では、イワン・ツルゲーネフの『Fathers

and Sons(父と子)』についての「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」の例が示されています。

冒頭に、取り組まなければならない問いが記されています。また、学習した作品のタイ

トルと作者名も明記されています。

第3段階:トピックの展開――「教師の監督下での記述活動」【必須条件】

授業の始めに、教師は学習した作品について、3つないし4つのプロンプト(発問)を

提示します。プロンプトは、生徒はそれまでに見たことのあるものであってはなりません。

教室内で実施される「教ス ー パ ー バ イ ズ ド・ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」(supervised writing)は、独自の思考と

トピックの選択の力を刺激することを意図しています。記述するのは、必ず連続した散文

でなければなりません。ただし、書式は規定されていません。日誌のような形式(ジャー

ナル・ライティング)または下書きのようなものであってもかまいません。

この段階では、作品の文化的または文脈的要素を考慮することは、もはや重要ではあり

ません。

生徒は、「教ス ー パ ー バ イ ズ ド ・ ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」で記述物を3つ完成させます。そして、その

3つのうちの1つから小エ ッ セ イ

論文のトピックを作成します。最終的なタイトルの選択と、

「教ス ー パ ー バ イ ズ ド・ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」の結びつきは必ずしも直接的である必要はありませんが、必

ずアイデアの萌芽をたどれなければなりません。

生徒がどの作品について書くか(そして、「教ス ー パ ー バ イ ズ ド・ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」の記述のうちの

どれを出発点として使用するかを)を決定する際、決め手となるのは「教スーパーバイズド・

師の監督下での

記ライティング

述活動」の記述の質ではなく、小エ ッ セ イ

論文との結びつきです。

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外部評価――記述課題

「言語A:文学」教師用参考資料26

生徒が「教ス ー パ ー バ イ ズ ド・ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」の記述から、小エ ッ セ イ

論文のためのしっかりと的の絞ら

れたタイトルへと発展させるために、教師は必ず鍵となる役割を果たさなければなりませ

ん。以下の例は、「教ス ー パ ー バ イ ズ ド・ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」のためのプロンプト(発問)がどのように

して小エ ッ セ イ

論文の明確なタイトルにつながり得るかを示しています。

「教師の監督下での記述活動」のプロンプトとエッセイのタイトルプロンプト:作品の中には歴史および伝統の代弁者がどのように存在しているか。

作品:センベーヌ・ウスマン著『God's Bits of Wood(神の森の木々)』

エッセイのタイトル:年齢と知恵:『神の森の木々』におけるラマトゥライの重要性

プロンプト:作品のもつインパクトにとって自然の景観はどの程度重要か。

作品:バオ・ニン著『The Sorrow of War(戦争の悲しみ)』

エッセイのタイトル:『戦争の悲しみ』において景観はキエンがたどり着く結末にとって

どのような影響を及ぼしているか

プロンプト:作家は作品において、時の経過をどのように伝えているか。

作品:アレクサンドル・ソルジェニーツィン著『One Day in the Life of Ivan Denisovich(イワ

ン・デニーソヴィチの一日)』

エッセイのタイトル:『イワン・デニーソヴィチの一日』の中でシューホフにとっての時

間の重要性

プロンプト:考えや感情を表現するために異なるさまざまな「声」がどのように用いられ

ているか。その「声」は、その詩に対するあなたの受け止め方にどのような影響を与え

たか。

作品:デレク·ウォルコット著『Selected poems(詩選集)』

エッセイのタイトル:デレク・ウォルコットの詩における忠誠とアイデンティティー

プロンプト:作品において記憶はどのように重要か。

作品:シャーロット・ブロンテ著『Jane Eyre(ジェーン・エア)』

エッセイのタイトル:『ジェーン・エア』のジェーンにとっての記憶の重要性

プロンプト:外部と内部の構造は互いにどのように作用しているか。

作品:サミュエル・ベケット著『Waiting For Godot(ゴドーを待ちながら)』

エッセイのタイトル:『ゴドーを待ちながら』における目的意識の伝達

第4段階:小論文の作成

教師の役割【必須条件】

•教師は、小エ ッ セ イ

論文の作成において、生徒が自分の能力に見合った、適切なチャレンジ

を伴うトピックを展開し、「記述課題」用に選択した作品についての洞察を示すこ

とができるようサポートします。

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外部評価――記述課題

「言語A:文学」教師用参考資料 27

•教師は、小エ ッ セ イ

論文の最初の草稿について、口頭または別紙のメモによりコメントする

ことが奨励されています。ただし、教師は生徒の小エ ッ セ イ

論文に書き込みをしたり、その

後の草稿の執筆のサポートをしてはなりません。

プレゼンテーション小エ ッ セ イ

論文は、タイトルと主張を展開させたきちんとした形式の記述物であるべきです。主

な参考文献は、小エ ッ セ イ

論文のために選択された文学作品となるでしょう。広く認められている

文献引用の書式を一貫して使用し、参考文献目録には使用した作品の完全な出典(版も含

めて)が示されていることが不可欠です。必須ではありませんが、二次資料を使用するこ

ともできます。これらも同じ書式を使用して引用し、参考文献目録に含めなければなりま

せん。

生徒は自らのアイデアを構成し発展させ、取り上げた作品からの例を統合させる能力を

評価されます。生徒は、小エ ッ セ イ

論文の執筆に先駆けて、自らの主張を擁護しながら、さらに展

開させるために文学作品からの引用を用いることを豊富に練習をしておくことが重要です。

【「記述課題」のチェックリスト】

□ 各作品についての「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」はクラスで完了したか。

□ 各生徒は、「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」を書いたか。

□ 各生徒は、学習した作品それぞれについて「教ス ー パ ー バ イ ズ ド・ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」を書い

たか。

□ 「教ス ー パ ー バ イ ズ ド・ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」での記述物の1つから小エ ッ セ イ

論文のトピックが作成され

ているか。

□ 「振リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」の長さは、300~400語(日本語の場合は600~800字)、小エ ッ セ イ

論文

は1200~1500語(日本語の場合は2400~3000字)になっているか。

□ 生徒と教師の両者がカバーシートに署名したか。

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「言語A:文学」教師用参考資料28

内部評価――個人口述コメンタリー

評価

「パート2:精読学習」のための作品を選択学習する作品はすべて、必ず「指定作家リスト」(PLA)から選択しなければなりませ

ん。各作品は、必ず異なるジャンルのものでなければなりません(SLは2ジャンル、H

Lは3ジャンルを学習)。

HLでは、学習するジャンルのうちの1つとして必ず詩を学ばなければなりません。

綿密な分析にふさわしい内容で、スタイル(文体)の面でも十分に複雑である作品を選

択させ、かつ他の用件も満たすようにするのは、教師の責任です。

内部評価の課題「パート2:精読学習」の「内部評価」は、口述課題について評価され、学校内で担当教

師により採点されます。SLとHLの生徒とでは、正規の口述課題で求められる内容に明

確な違いがあります。以下の表は、規準の違いの概要を記したものです。

標準レベル(SL)

評価規準 評点

A:課題文(抜粋)についての知識と理解 10点

B:作者の選択についての認識 10点

C:構成とプレゼンテーション 5点

D:言語 5点

合計 30点

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内部評価――個人口述コメンタリー

「言語A:文学」教師用参考資料 29

上級レベル(HL)

評価規準 評点

A:詩の知識と理解 5点

B:作者の選択の認識 5点

C:論評の構成とプレゼンテーション 5点

D:ディスカッションに使用された作品についての知識と理解 5点

E:ディスカッションの問いに対する答え 5点

F:言語 5点

合計 30点

個人口述コメンタリーSLとHLの生徒はいずれも「個人口述コメンタリー」に取り組むことが求められます。

「個人口述コメンタリー」は、「パート2:精読学習」で学んだ作品の1つから抜粋した課

題文について、きちんとした形式の文学分析を発表します。SLの生徒は、10分間の口頭

での論コメンタリー

評がパート2の評価のすべてとなります。HLの生徒は、10分間の口頭での論コメンタリー

評の

後、パート2の残る作品のうちの1つに関して10分間のディスカッションを行います。

抜粋の選択

推奨されている長さは20~30行です。生徒が論コメンタリー

評に使える時間は約10分間で、このうち

約2分間は論コメンタリー

評の後の質疑応答に使われます。したがって、抜粋が過度に長くないことが

重要です。課題文は、1つの完全な詩であっても構いません。また、全体で20~30行に満

たない詩でも内容が十分に複雑なものであれば、課題文として完全に許容可能です。「個人

口述コメンタリー」の準備時間(20分間)は、抜粋を選択した時に開始します。

抜粋はディテールや重要性に富み、生徒が以下の点を発揮できるようなものでなければ

なりません。

•作品の知識と理解

•言葉遣い、構成、技テクニック

法とスタイル(文体)を分析する能力

また抜粋は授業中に練習として使用したものと同程度の難易度で、かつ異なるものでな

ければなりません。

各抜粋の行ごとに番号をつけることを強く推奨します。最も一般的に使用されている付

番方式は、5行ごとに番号をつけるものです。これは生徒が自分の分析を裏づけるために

テクストを引用する際に便利なシステムで、モデレーション(評価の適正化)を担当する

IBのモデレーターが、生徒のコメントをたどるのをより容易にします。

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内部評価――個人口述コメンタリー

「言語A:文学」教師用参考資料30

抜粋の数

「個人口述コメンタリー」のためにどの抜粋が出題される可能性が高いかを、生徒に事前

に知られないようにすることが不可欠です。履修している生徒数に応じて最低限用意しな

ければならない抜粋の数については、『「言語A:文学」指導の手引き』の「内部評価」を

参照してください。

考察を促す問い

「考ガイディングクエスチョン

察を促す問い」の目的は、抜粋の重要な特徴について生徒の関心を向けることです。

設問を通じて、生徒に過度の情報を与えるべきではありません。過度の情報が与えられた

場合、生徒が独自の理解を示すことが困難になるためです。

「指導の手引き」には、一般的な「考ガイディングクエスチョン

察を促す問い」の例が収録されています。本資料で

も、いくつかの設問例を列挙しています。ただし、教師は特定の抜粋にふさわしい独自の

質問を作成したり、一般的な質問を適切な形につくり直したりするようにしてください。

さらに、一方の設問は知識と理解を引き出し、もう一方は作者の選択についての分析を引

き出すものとすることが強く推奨されています。生徒が評価規準の要件を満たすのに役立

つためです。

生徒は、設問に回答する義務はありません。これらはプロンプト(発問)として提示さ

れています。SLの生徒に対しては、以下の問いであればどれでも使用することが可能で

す。HLの生徒には、詩についての問いのみがあてはまります。

散文:小説および短編小説•抜粋は、主人公の態度や感情をどのように示しているか。

•言葉遣いは、どのような方法で潜在的な緊張を明らかにしているか。

•抜粋において、作品の設定の重要性はどのように明らかにされているか。

•作品の中心となる考えは、抜粋でどのように伝えられているか。

•抜粋の中では、作品のその後の展開についての伏線がどのように張られているか。

•抜粋は筋書きの構成にどのように重要か。

小説以外の散文•抜粋の中で伝えられている考えやものの見方、思想について、ここでの視点は、抜

粋の中で伝えられている考えに対する私たちの態度に、どのように影響を与えてい

るか。

•抜粋部分は、作品全体にとって、どのような点で重要か。

•読者に影響を与えるため、言葉遣いはどのように用いられているか。

•抜粋の中で、場所に対する特別な思いがどのように伝えられているか。

•作家の視点を伝えるのにリズムとバランスはどれくらい重要な要素か。

•抜粋は、主題に関する作家の態度をどのように明らかにしているか。

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内部評価――個人口述コメンタリー

「言語A:文学」教師用参考資料 31

詩•作者は意味と感情的効果、またはそのいずれかを伝えるために繰り返しをどのよう

に使用しているか。

•ペルソナを用いることは、詩の劇的な力にどのように寄与しているか。

•シンボリズムは意味を伝えるためにどのように使用されているか。

•最終行/連は詩全体についてのあなたの理解をどのように変えるか。

•詩人は重要な考えを強調するため、どのようなやり方で繰り返しを用いているか。

•詩の思想や感情を補完するため、リズムはどのように使用されているか。

戯曲•ジェスチャーやアクションは登場人物の精神状態を伝えるためどのように使用さ

れているか。

•登場人物を対比させるために言葉遣いはどのように用いられているか。

•抜粋は、劇中で対立が発展するのをどのように示しているか、あるいは暗示してい

るか。

•抜粋は、劇のアクションの場所と時間をどのように明らかにしているか。

•抜粋は、XとYとの関係の何を明らかにしているか。

•抜粋は、劇の重要な考えを明らかにする上でどのような点で重要か。

個人口述コメンタリーの実施

注:「個人口述コメンタリー」は、各生徒につきそれぞれ1回しか実施できません。

【必須条件】

•「個人口述コメンタリー」を実施するための静かな部屋と、その部屋に近接した論コメンタリー

の準備(20分間)のための部屋

•準備時間中の監督者(HLの生徒については準備時間は論コメンタリー

評のためで、ディスカッ

ションの準備のためではありません)

•良質の録音機器(デジタルが望ましい)

•どの抜粋が選択されているか生徒自身にも教師にもわからないような形で生徒に

抜粋を提供する方法(教師は各抜粋を白紙の封筒に入れて置いておき、各生徒に自

分で封筒を選択させることが推奨されている)

•文脈に関する情報を消し、行に番号が付された抜粋のクリーンなコピー(詩のタイ

トルは残すことが可能)

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内部評価――個人口述コメンタリー

「言語A:文学」教師用参考資料32

個人口述コメンタリーで生徒は、中断されることなく最大8分間話すことが必ず許可されなければなりません。

その後、必ず、質問が生徒に提示されなければなりません。質問は、生徒が見逃した(ま

たは扱いが不十分であった)点をカバーする機会となります。

生徒が8分間にわたって話すことができない場合でも、教師が質問することで10分間を

満たさなければなりません。

この課題の焦点は作品全体についてではなく、抜粋について詳しく述べることです。抜

粋が作品全体にどのように関連しているかの理解を示すために多少の文脈づけをすること

は大切ですが、論コメンタリー

評のメインの部分は、あくまでも抜粋そのものの詳細な文学分析です。

個人口述コメンタリーの後に口述課題の実施と採点に複数の教師が携わる場合、最終評点を付与する前に教師間の評

価を標準化する時間をもつことが不可欠です。

IBに提出される各生徒の評点は、2つの内部評価課題の平均点です。評点が提出され

ると、モデレーション(評価の適正化)のためにIBによって生徒が無作為に選択されま

す。選択された生徒の「個人口述コメンタリー」(HLの場合はディスカッションも含む)

の録音が、提出されます。録音は、必ず、使用された抜粋や、2つの課題の評点を項目別

に記した「フォーム1/LIA」とともに提出しなければなりません。

HLのディスカッション

ディスカッションのための作品の選択HLの生徒は「パート2:精読学習」で3つの作品を学習します。口述コメンタリーは詩

に基づいているため、ディスカッションは必ず残りの2作品のうちの1つに基づいて行い

ます。パート2の作品を確実に完全にカバーするため、口述コメンタリーを終えるまで、

どの作品に基づいてディスカッションが行われるのか、生徒に知らされていないことが重

要です。

ディスカッションの実施教師の役割は、生徒が独自の文学的なディスカッションに取り組む能力を示すことがで

きるようにすることです。教師と生徒の間で本格的な文学的意見を交換することが理想的

ですが、ディスカッションを開始するには質問を準備する必要があるでしょう。

多くの場合、質問は、ディスカッションの対象となる作品に直接関係するものなので、

以下(および「指導の手引き」)では、生徒から独自の回答を引き出すようなタイプの質問

を挙げています。

散文:小説および短編小説•作者はどの程度あなたを説得して特定の方法で諸課題やアイデアについて考えさ

せようとしていると思うか。

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内部評価――個人口述コメンタリー

「言語A:文学」教師用参考資料 33

•あなたは、作家が1つの時間帯から別の時間帯への移行をどの程度巧みに扱ってい

ると思うか。

•あなたは、作家がどの登場人物に最も親しみを感じていると思うか。そう思うのは

なぜか。

•物語と登場人物に興味を抱かせるため、作家はどのような種類の技テクニック

法を用いている

か。あなたは、それらの技テクニック

法が成功していると思うか。

•小説の中であなたが特にチャレンジに満ちていると感じた部分、わくわくした部

分、または感動すると思った部分はどこか。あなたのそのような反応を導き出した

ものは何だと思うか。

戯曲•あなたは作家が登場人物の1人に特に同情的であると思うか。そう考えるのはなぜか。

•あなたは、作家が設定への強い意識を確立するために、舞台をどのように巧みに用

いていると考えるか。

•劇の最後のセクションの終わり方についてあなたはどのように考えるか。あなたは

その終わり方に満足か、あるいは不満か。

•劇の中の中心的な対立は何であると感じるか。その対立の原因となる理由はどれく

らい重要か。

•作者は聴衆を楽しませ続ける一方でどれほど明確に有意義な考えを伝えることが

できているか。

小説以外の散文•文章のどのようなところが作者を強く意識させるか。

•文章のスタイル(文体)は作者が伝えようとしているアイデアと十分に合っている

と思うか。

•作品は出来事やアイデアをどの程度巧みに構成しているか。セクション内またはセ

クション間に効果的な区分はあるか。

•作品のどの要素が最も説得力があると思うか。

•作家の特徴的な技テクニック

法のうち、あなたが特に効果的であると考えるものは何か。

•文章の中に、あなたが特に共感する、または対立すると感じるアイデアまたは意見

は打ち出されているか。何がそのように強い反応を促したと考えるか。

ディスカッションの評価に関する「レベルの説明」に記されているように、この課題の

ねらいは、生徒にパート2の残りの作品についての知識と理解、そして文学についての独

自の批クリティカル

判的なディスカッションに取り組む能力を示す機会を与えることです。例えば、規

準Dの「ディスカッションに使用された作品についての知識と理解」で満点を達成するに

は、生徒は「ディスカッションの対象となった作品の内容と含意についての知識と理解が

非常に優れている」ことを示す必要があります。規準Eの「ディスカッションの問いかけ

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内部評価――個人口述コメンタリー

「言語A:文学」教師用参考資料34

に対する答え」では、生徒は「ディスカッションの問いかけに対し、説得力があり自分自

身の考えを示している」必要があります。

【必須条件】

•ディスカッションは10分間継続され、口述コメンタリー直後に録音を止めずに行わ

れなければなりません。

•ディスカッションは必ずパート2で学んだ2つの作品のうちの1つ(詩以外)に基

づかなければなりません。

•生徒は絶対にどの「他の作品」が選ばれるかを事前に知っていてはなりません。

•ディスカッションは可能な限り自然に展開することが認められるべきですが、教師

は指定した作品から焦点が外れないよう確認し、生徒が含意を探究し、作品につい

ての独自の評価を述べるようにします。

個人口述コメンタリーの採点(およびHLのディスカッションの採点)

SLの「個人口述コメンタリー」と、HLの「個人口述コメンタリー」および「ディス

カッション」には異なる規準が設けられています。教師は生徒の成果物を採点する際、こ

れらの規準を用いることが求められます。すべての論コメンタリー

評は必ず録音されなければなりませ

ん。録音は、IBのモデレーション(評価の適正化)担当者がサンプルとして使用する可

能性があるだけでなく、教師が評価規準の「レベルの説明」の正しい理解を確立したり、

学校内でのモデレーション(評価の適正化)に役立てたりするために用いられます。

評価規準の使用「個人口述コメンタリー」と「個人口述プレゼンテーション」の評点は加算した後、等分

して平均点を算出します。この平均した評点がIBに提出されます。その時点で、学校は

学校外でのIBによるモデレーション(評価の適正化)のために、無作為に選択された録

音のサンプルをIBに送るよう求められます。「個人口述プレゼンテーション」の得点は、

「個人口述コメンタリー」の得点を通じて適正化されます。

「個人口述コメンタリー」のサンプルに選ばれた生徒は、「フォーム1/LIA」のすべ

ての項目を必ず記入しなければなりません。このフォームはダウンロードが可能で、「個人

口述プレゼンテーション」と「個人口述コメンタリー」に付与された評点の裏づけとする

教師のコメント欄が含まれています。これらの書類は、録音や抜粋とともにIBに送付さ

れます。

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「言語A:文学」教師用参考資料 35

内部評価――個人口述プレゼンテーション

評価

「パート4:自由選択」のための作品の選択教師は、「言語A:文学」で学習している言語の「指定作家リスト」(PLA)の作品、

または学習した翻訳作品の中から自由な組み合わせで作品を選択できます。制約として設

けられているのは以下の点のみです。

•作品の難易度は、必ず生徒にとって適切なレベルでなければならない。

•コースで取り上げる作品は全体としてコースの要件を必ず満たさなければならない。

コースの他の部分での選択次第では、教師はコースの他の部分で扱わなかった時代、場

所、またはジャンルを含めるためにパート4を利用する必要がある場合もあります。

「学校のサポートの下で行われる自己学習コース」の履修生は必ず「指定作家リスト」

(PLA)から作品を選択しなければなりません。

パート4は、以下を強調するために「自由選択」と名づけられています。

•パート4では教師が作品を自由に選択することができる。

•作品を学ぶには多くの異なるアプローチがある。

パート4で学習することができるジャンルには、学習している言語の「指定作家リスト」

(PLA)には含まれていないものがあります。例えば、言語によっては「指定作家リス

ト」(PLA)にノンフィクションが含まれていません。また、「新たなテクスト性」をも

つ作品も多くの場合、含まれていません。

コース全体を通じ、SLの生徒は「指定作家リスト」(PLA)から必ず3作品を学ばな

ければなりません。一方で、HLの生徒は必ず4作品を学ばなければなりません。教師は

パート4で、これらのジャンルのうちの1つを取り上げることができます。例えば、SL

で教師がパート2用に選択した作品の1つと同じジャンルの作品をパート3で選択するこ

とを望む場合、パート4で3つ目のジャンルを学習する必要があります。学習できるジャ

ンルには「選択肢3:文学と映画」も含まれています。

以下の例では、コースを構成するにあたって、ジャンルの要件を満たすためにパート4

を使用する方法を示しています。

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内部評価――個人口述プレゼンテーション

「言語A:文学」教師用参考資料36

標準レベル(SL) 上級レベル(HL)

コースのセクション

学習する文学ジャンル 学習する文学ジャンル

パート2 小説

戯曲

小説

戯曲

パート3 小説 戯曲

パート4 詩はパート4で少なくとも1つを学

習する。

選択肢1:フィクション以外の散文の

学習を生徒のさまざまなスタイル(文

体)の学習につなげる。

選択肢選択肢では、以下を意図しています。

•「パート4:自由選択」で、どのようにして文学の学習ができるかを提示する。

•「言語A:文学」のコースに現代文学の発展を組み込む方法を示す。

IBは視覚的作品(特に映画やグラフィックテクスト)と記述作品を組み合わせる可能性

について、学校から多くの問い合わせを受けています。選択肢2の「新たなテクスト性」

と、選択肢3の「文学と映画」は、そのような対象を学習で取り上げる際の「言語A:文

学」コースの要件を説明し、こうした選択に興味のある教師を奨励し支援する目的で書か

れています。

ただし、これは決して上記の選択肢を選ぶことが義務づけられていることを示唆するもので

はありません。パート4は、従来の文学の学習のほか、学校の地域の教育課程の要件を満たす

ためにも用いることができます。

教師は、3つの選択肢のうちの1つを選択し、それを自分自身または生徒の興味に合う

ように、あるいはコース構成の要件を満たすよう適合させることもできます。文学から映

画への変換は、小説や戯曲、漫画(グラフィック・ノベル)のほか、恐らく他のジャンル

からも可能でしょう。テクストが一定の質と適切な難易度を保っている限りは、特に制限

は設けられていません。

「個人口述プレゼンテーション」のために推奨されている学習活動の1つとして、「指導

の手引き」に記載されているのは、「学習した文学ジャンルの1つのスタイル(文体)を踏

襲して作成された生徒独自の記述物の批評」です。選択肢1は、ノンフィクションが記述

活動につながることを示唆しています。しかしながら、ノンフィクションのようなジャン

ルを含まない「指定作家リスト」(PLA)がかなりある上、リストにノンフィクションが

含まれていた場合であっても、「パート3:ジャンル別学習」の教材にノンフィクションを

選択しない学校は多いのです。この選択肢にアイデアを得て、それを他の文学ジャンルや

複合ジャンルの学習に用いることも可能です。

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内部評価――個人口述プレゼンテーション

「言語A:文学」教師用参考資料 37

個人口述プレゼンテーションこのパートでは、生徒が最も自分自身の興味と能力に見合った評価用の活動を選択する

ことができます。

【必須条件】

•生徒は必ず、プレゼンテーションに用いる作品の知識と理解を示すことができなけ

ればなりません。

•生徒は必ず選択した話し方にふさわしいプレゼンテーションの方法を選択し、プレ

ゼンテーションを聞き手に対して興味深いものにするストラテジーを用いなけれ

ばなりません。

•言葉遣いは、必ず活動のタイプや話し方に見合うものでなければなりません。生徒

がロールプレイで登場人物のキャラクターの考えを伝えようとするならば、くだけ

た言葉遣い(レジスター)に、生徒が分析を提示しようとするならきちんとした言

葉遣いにします。

•プレゼンテーションの後に必ずディスカッションを行わなければなりません。その

ため、授業での学習活動の一環として実施したり、聴衆を前にして行ったりするの

が最適です。

論理的根拠

ねらいは、生徒が自分の口述プレゼンテーションのスキルを発達させるための動機づけ

を与えることです。生徒自身が興味のある領域に取り組むことが、動機づけとなります。

プレゼンテーションは以下の形をとることができます。

•理路整然とした分析や批クリティカル

判的なディスカッションを展開する。

•ロールプレイで演技力を試す。

•他の生徒と協力して共に活動する。

•ディベートのスキルを養う。

この課題は、将来に向けたライフスキルの予行演習です。スキルを通じて生徒が将来に

対して自信を高めるのに役立ちます。この課題では、生徒はプレゼンテーションの聞き手

をどのようにすれば引き込むことができるかを真剣に考えます。生徒はトピックについて

の質疑にも対応します。

生徒はいかなる場合でも、あらかじめ用意した話を読み上げてはなりません。これは「指

導の手引き」の「指導と『生徒本人が取り組んだものであること』の認証」に明確に記載

されています。

教師の役割は、以下を行うことです。

•生徒が自分自身とトピックに適切なプレゼンテーションのスタイルを選ぶことを

サポートする。

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内部評価――個人口述プレゼンテーション

「言語A:文学」教師用参考資料38

•生徒と連携し、プレゼンテーションが3つの評価規準に対応していることを確認する。

•各生徒のプレゼンテーションが10~15分間継続することを確認する。

•後に続くフォローアップのディスカッションをリードする。

留意すべき点•生徒が協力してプレゼンテーションを行う場合には、教師は必ずそれぞれの生徒に

個別に評価規準を適用しなければなりません。そのような状況では、評価の助けと

するため、教師がプレゼンテーションを録画しておくことを強く推奨します。

•生徒がロールプレイを用いることを選択した場合は、そのパフォーマンスを通じて

何を達成しようとしているかを説明する論理的根拠を示さなければなりません。

•生徒がパワーポイント®などの視覚素材を使用する場合は、そのような手段の効果

的な使用方法を指導する必要があります。例えば、生徒は多数のスライドを読むこ

とに終始するべきではありません。これは、実質的に用意した話を読み上げること

と同様で、聞き手の注意をひきつけるのは到底不可能です。

•生徒は、教師の指導の下、プレゼンテーションのトピックの選択と計画を自分自身

で行います。

•プレゼンテーションのトピックは生徒間で使い回すべきではありません。

•生徒はプレゼンテーションを1回しか行うことができません。それが試験として扱

われます。

•この課題の制限時間は10~15分です(質問を含む。理想的には、クラス内での短い

ディスカッションも含む)。生徒に制限時間をこえて続けさせないでください。

•プレゼンテーションの計画と実施のプロセスにおいて、生徒が評価規準に精通して

いることを確認してください。

個人口述プレゼンテーションの採点

教師は生徒の成果物を採点する際、「個人口述プレゼンテーション」用の評価規準を用

います。評価規準は、SLとHLには異なる規準が設けられています。同じスキルについ

て評価されますが、HLの生徒には、より深い理解に加えて、トピックに合ったプレゼン

テーションのスタイルを選ぶことや、聞き手を引き込むストラテジーなどについての思慮

深さを示すことが期待されています。

プレゼンテーションを録画する必要はありませんが、録画は採点のプロセスと内部モデ

レーションを行う際に役立ちます。

評価規準の使用「個人口述プレゼンテーション」の評点は、「個人口述コメンタリー」(およびHLのディ

スカッション)の評点に加算された後、等分して平均点を算出します。

教師は、「個人口述プレゼンテーション」の採点記録と、その点数を付与した理由の記述

を保管しておくことが非常に重要です。モデレーション(評価の適正化)のためにIBに

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内部評価――個人口述プレゼンテーション

「言語A:文学」教師用参考資料 39

学習成果物を提出する各生徒は、「フォーム1/LIA」のすべての項目を記入しなければ

なりません。この書類には、教師が「個人口述プレゼンテーション」の採点を裏づけるコ

メントを記載する欄があります。

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「言語A:文学」教師用参考資料40

よくある質問

付録

試験問題2――小論文(パート3:ジャンル別学習)SLとHLの生徒が同じ問題で受験する場合、どのように区別されますか。規準Bの「設問への答え」では、HLの生徒は、評点が4と5のレベルにおいて、生徒

自身による作品の評価を含めることが求められています。

SLの生徒に与えられる試験時間は1時間30分です。HLの生徒には2時間与えられます。

記述課題(パート1:翻訳作品)HLとSLの生徒が同じディスカッションに参加することはできますか。はい、ディスカッションに使用されるテクストが両者で共通であれば可能です。

生徒は「対話形式の口述活動」のトピックを自分自身で選択できますか。はい、トピックが作品の文化的および文脈的考察、またはそのいずれかに関するもので

あれば可能です。

パート1の「記述課題」について、所定の記述活動の段階を踏む必要はありますか。はい。「対

イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」の後の段階で、必ず「教ス ー パ ー バ イ ズ ド ・ ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」を行わ

なければなりません。また、その記述に基づいて小エ ッ セ イ

論文を展開させなければなりません。

このプロセスは、生徒が積極的な読者かつ自立して考える人になるのを支援することを意

図しています。

「振り返りの記述」は「対話形式の口述活動」の直後に記述しなければならないのですか。はい。「振

リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」は「対イ ン タ ラ ク テ ィ ブ・オ ー ラ ル

話形式の口述活動」の直後に完成させなければなりませ

ん(「指導の手引き」の「外部評価」を参照)。

「対話形式の口述活動」は評価されますか。いいえ、課題の一部として採点されるのは「振

リフレクティブ・ステートメント

り返りの記述」です。

「監督下での記述活動」を行う際、生徒は本をもち込みますか。はい。

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よくある質問

「言語A:文学」教師用参考資料 41

「教師の監督下での記述活動」において辞書の使用は認められていますか。はい。しかし、記事などその他の二次的な情報源の使用は認められていません。生徒は

絶対にインターネットにはアクセスできません。

教師は「教師の監督下での記述活動」の記述物を採点すべきですか。いいえ。その記述物は生徒がエッセイのアイデアを発展させるためのものです。

「教師の監督下での記述活動」を行っている際、クラスの生徒全員が揃っていない場合はどうなりますか。教師が「教

ス ー パ ー バ イ ズ ド ・ ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」のセッションを新たに設ける必要があります。

「教師の監督下での記述活動」を宿題として出すことはできますか。いいえ。必ず授業中に教師の監督下で行われなければなりません。

小論文が完了した後、「教師の監督下での記述活動」はどうなりますか。「教

ス ー パ ー バ イ ズ ド ・ ラ イ テ ィ ン グ

師の監督下での記述活動」の記述物は提出されませんが、IBから提出を求められ

る可能性がありますので、評価セッションが完了するまで、学校で安全に保管してくだ

さい。

どの時点で、生徒に評価規準を説明しますか。生徒は「記述課題」のプロセスに取り組む前に評価規準についてよく知っていなければ

なりません。

個人口述コメンタリー(パート2:精読学習)HLの生徒は口述課題を開始する前にパート2の3作品のすべてを学習することが必要ですか。はい。HLの生徒は、残りの2作品のうち、どちらがディスカッションに使用されるか、

絶対に事前に知ってはならないためです。

「個人口述コメンタリー」を授業の一環として行うことはできますか。いいえ。正規の個人口述課題ですので、クラスの授業とは別個に行われるべきです。

「個人口述コメンタリー」を複数の教師が実施することは可能ですか。口述課題の最中に複数の教師がその場にいる場合でも、口述課題を実施し、その後の質

問を行う責任を負うのは1名の教師とすべきです。

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よくある質問

「言語A:文学」教師用参考資料42

クラスの練習で使用したのと同一の抜粋を個人口述課題で使用することは可能ですか。生徒がすでに「個人口述コメンタリー」の練習を行った抜粋、または詩を本番で受け取

ることがあってはなりません。例えば、口述課題の模擬試験や非公式の練習の際に使用さ

れた抜粋または詩は、最終的な口述課題の試験では絶対に使用してはいけません。

生徒が自分たちだけで準備を行うことはできますか。いいえ。生徒は準備時間中に必ず監督されていなければなりません。

どの抜粋をどの生徒に与えるか、教師が決定できますか。いいえ。生徒がどの抜粋を選んでいるか、または生徒にどの抜粋が与えられたかを教師

が事前に知ってはいけません。

生徒が初めての口述課題でうまくできなかった場合、もう一度チャンスを与えることはできますか。いいえ。個人口述課題に与えられた時間は時間の決められた試験と同等に扱われ、生徒

にはチャンスが1回しか与えられません。

生徒が「個人口述コメンタリー」で8分間話すことができなかった場合は、どうなりますか。質問することによって、残り時間を満たすのは教師の責任です。生徒の知識や理解、分

析能力や言語能力は論コメンタリー

評を通してだけでなく、質問の答えによっても評価できます。8分

間話すことができなかったことで、最も影響を受ける可能性が高い評価規準は、規準Cの

「構成とプレゼンテーション」です。

生徒が10分間話し続けた場合はどうなりますか。教師は時間の経過をチェックしながら、生徒に10分が経過するより前に論

コメンタリー

評を止めるよ

う伝えてください。

生徒にディスカッション用の質問リストを配布すべきでしょうか。この準備リストは教師用です。ディスカッションのためだけに使用できます。

IBは同じ学校内の評価規準が教師により異なることを考慮しますか。いいえ。学校は必ず採点を確定する前に学校内でモデレーション(評価の適正化)を行

わなければなりません。IBのモデレーションの手続きにおいては、すべてのサンプルを

同じ教師または同じレベルで評価されたものとして扱います。

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よくある質問

「言語A:文学」教師用参考資料 43

個人口述プレゼンテーション(パート4――自由選択)「個人口述プレゼンテーション」はクラス全体の学習活動として行われるべきでしょうか。はい。この課題は、生徒が聴衆の前でプレゼンテーションを行うスキルを身につけること

を意図したものであり、クラスの学習活動の対象の1つです。クラスの規模が非常に小さ

い場合は、代わりとなる聴衆を見つけることが必要です。漫画(グラフィック・ノベル)

についての口述プレゼンテーションについては、言語Aの教師用指導参考映像に例があり

ます。

生徒のプレゼンテーションの後に質問を提示する必要がありますか。はい。生徒には自分がプレゼンテーションを終えた後で手際よく質問に答える機会が与

えられます。これにより、生徒はトピックについてのさらなる理解を示し、会場からの質

問に答えるスキルを磨く機会を得ることができます。

生徒はプレゼンテーション用にどんな文学作品でも使用することができますか。いいえ。生徒は必ず「パート4:自由選択」の作品の中からプレゼンテーションに使用

する作品(1つまたは複数)を選ばなければなりません。

ロールプレイや、演劇パフォーマンスの形でプレゼンテーションを行うことは可能ですか。はい。しかし生徒は必ずその論理的根拠をプレゼンテーションに含めなければなりません。

生徒が合同でプレゼンテーションを行うことは許容されますか。はい。しかし、その場合でも各生徒が最低10分間のプレゼンテーションを行い、生徒そ

れぞれが質問に答える機会を与えられることが不可欠です。さらに、教師は必ず各生徒に

個別の基準を適用する必要があります。

準備したテクストを読んでもいいですか。いいえ。準備したテクストを読むことは、用紙に書いたものであれ、電子ファイルであ

れ許可されていません(「指導の手引き」の「内部評価」を参照)。ただし、生徒が短いメ

モをもとに話したり、電子画像やプロンプトを用いることはまったく問題ありません。

生徒が初めての口述プレゼンテーションでうまくできなかった場合、もう一度その機会を得ることはできますか。いいえ。「個人口述プレゼンテーション」に指定された時間は時間が決められた試験と同

様、一度限りです。

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よくある質問

「言語A:文学」教師用参考資料44

プレゼンテーションが10分間持続しない場合はどうなりますか。教師は必ずプレゼンテーションが10~15分間持続するよう、生徒に対して質問がなされ

るようにしてください。

プレゼンテーションが15分以上続いた場合はどうなりますか。教師は常に時間の経過を追い、フォローアップの質問のための時間がとれるようにプレ

ゼンテーションを 15 分以内に終えるよう生徒に合図してください。

IBは同じ学校内の評価規準が教師により異なることを考慮しますか。いいえ。学校は必ず採点を確定する前に学校内でモデレーション(評価の適正化)を行

わなければなりません。モデレーションの手続きにおいては、すべてのサンプルを同じ教

師または同じレベルで評価されたものとして扱います。

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「言語A:文学」教師用参考資料 45

参考文献

付録

IB資料Language A: literature guide. February 2011. Cardiff, UK. International Baccalaureate.

Prescribed list of authors (various languages). February 2011. Cardiff, UK. International

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Perennial Modern Classics. (Original work published 1967.)

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参考文献

「言語A:文学」教師用参考資料46

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