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Title 副詞節の階層性について Author(s) 副島, 健作 Citation 言語文化研究紀要 : Scripsimus(16): 53-70 Issue Date 2007-10 URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/3015 Rights

Title 副詞節の階層性について 言語文化研究紀要 ...ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/bitstream/20.500.12000/3015/1/No16...南(1974)の分類でのA類が単文2型,B類が複文2型,C類が複文4型,D類

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Title 副詞節の階層性について

Author(s) 副島, 健作

Citation 言語文化研究紀要 : Scripsimus(16): 53-70

Issue Date 2007-10

URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/3015

Rights

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言語文化研究紀要SORIPSIMUSNo16,2007

副詞節の階層性について

副島健作

0.序

本稿では,三上(1953),南(1974),益岡(1997)等で提案されている現代

日本語の文の階層構造の一部を修正し,副詞節階層を提案する。

I副詞節

本稿で言う「副詞節(adverbialrelations)」は複文の従属節,すなわちそ

れだけでは文になれない節のうち,以下の例のように,主文述語を修飾する節

を考える。例えば

(1)花がぱっと咲くように薬をまいておいた。

(2)二十歳を過ぎると,お肌の手入れも大変だね。

などの「花がぱっと咲くように」,「二十歳を過ぎると」の部分である。また,

(3)空で何かピカッと光ったかとおもうと,ドーンという大きな音がした。

(4)今から謝ったところで,彼女は許してはくれまい。

などの「空で何かピカッと光ったかとおもうと」,「今から謝ったところで」の

部分も副詞節と考える。本稿では,こうした,形式化した語や助詞などが複合

しあい,全体が1つの付属語として機能し,副詞節を形成する,いわゆる「複

合接続詞」を扱うことで,従来の枠組みでは捉えきれなかった現象に着目し,

現代日本語の副詞節の体系と意味を分析する。

2.日本語の従属節の階層

南(1974)は,複文の分類として日本語の従属節をどのような要素を内部に

含むことができるか,ということを基準にし,(5)のような分類を提案した。な

お,本稿の記述では文を受ける接続助詞を「~ので」「~から」のように表記

し,動詞の語形変化十接辞による接続の形をシテ,シナガラのように表記する

-53-

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ことをあらかじめ断っておく。

(5)A類:シナガラ(継続),シツツ,シテ(状態副詞的),シシ(←連用形

反復),形容詞と形容動詞の連用形

B類:シテ/シ(原因・理由),スルト,シナガラ(逆接),スレバシ

タラ,シテモ,シテ/シ(継起的),セズ(セズニ),シナイデ,

~ので,~のに,~なら

c類:シテ/シ(前置き的),~が,~から,~けれど,~し

D類:直接引用節

A類はガ格以外の格成分やヴォイスとそれに関連する副詞成分のみ含まれる。

(6)太郎は花子を罵りながら,殴った。

B類はA類やガ格,アスペクト肯否,丁寧さ,テンスと,関連する副詞成分

が含まれる。

(7)明日雨が降らなければ,試合は行われる。

C類はA類やB類,主題,対事的モダリティとそれに関連する副詞成分が含ま

れる。

(8)花子は多分パーティに来るだろうが,わたしは彼女には会いたくない。

直接引用節で現れ,対人的モダリティほか,すべての要素が含まれるのがD類

である。

(9)彼女は私に「今夜飲みに行こう」と言った。

この分類により,日本語の従属節の構造が,より副詞的`性質の濃いA類から

より文としてのJ性質の度合いが高いD類に至るまで,段階的,階層的になって

いることが明らかになった。つまり,A類のゼロからD類に進むにつれて節の

「文らしさ」が高くなる。

田窪(1987)は南(1974)をA類の特徴付けについて修正し,「A類1=様

態・頻度の副詞十動詞」,「A類2=頻度の副詞十対象主格十動詞(+否定)」

とした。

寺村(1982)もこれらとほぼ同じ様に分類している。単文と複文とは主体

(および補語)が同一か否かで分類される。「文らしさ」は単文2型から複文4

型へと高くなっていく!。

-54-

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(10)単文1型:「地球は太陽の回りを公転している」

2型:「おじいさんが山へ行って,柴を刈った。」

複文1型:シ,シテ形が,主たる文の述語と別の補語をもっている場

合,並立節を含む文。「おじいさんは山へ行きおばあさ

んは川へ行く」

2型:あとに続く活用形,スレバシタラ,で終わる節を含むも

の。および,スル形,イ形に条件の卜が結びついた節を含

む文。

3型:連体節を含む文。「冬の夜空に見えた星は…」

4型:接続節を含む文。「地球は太陽の回りを公転しているので,

冬の…」

5型:引用節を含む文。

南(1974)の分類でのA類が単文2型,B類が複文2型,C類が複文4型,D類

が複文5型にほぼ対応する。この分類では南(1974)でB類とされていた「~

ので」,「~のに」,「~なら」はいわゆる接続助詞であるので,接続節すなわち

複文4型として分類される。

以上の分類は殆ど同じものである。これらと異なるものに城田(1998)の分

類がある。城田(1998)は,従属節を形成する接続形や接続助詞にたいして

「関連」という文法カテゴリーを提案し,その体系を形態論的観点から提示し

た。「関連」の体系は動詞の変化形と接続助詞とに分類される。そこでは,変

化形は述語の表す内容が主文述語をどう修飾するか,を表すが,接続助詞は述

語そのものではなく,文全体にかかって,文の表す内容が主文述語とどういう

関係にあるか,を表すとされる2.変化形による副詞節は寺村の単文2型と複

文2型,接続助詞による副詞節は複文4型に対応する。

以下では,城田以外の分類の場合に生じる問題を見て行こう。

B類とC類との区別は,「~だろう」のような対事的モダリテイ及びそれと関

係する副詞成分と共起できないものはB類とされ,「~ので」,「~のに」,「~

なら」もB類に分類されていた。しかし,以下のような例が可能である。

(11)明日は雨が降るかもしれないのに,ピクニックに行くと言い張った。

-55-

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(12)明日は雨が降るにちがいないので,ピクニックは中止にしよう。

(13)彼は会議に出席しなければならないなら,這ってでも行くつもりだ。

従って,これらは寺村(1982)同様,C類へ分類すべきである。「~のに」,

「~ので」,「~なら」以外のB類にはおおよそテンスの対立(スルーシタの対立)

がない(南1974:128-129の第14表参照)ので,テンスはB類ではなく,C類

に含まれる要素だとも考えられる。

A類とB類との区別は,ガ格名詞句との共起が問題とされる。しかし次の,

(14)警察の調べが進むにしたがって,事件の真相が明らかになってきた。

の副詞節内には「警察の調べが」というガ格名詞句があるので,一見B類と思

われるが,アスペクトや否定その他,B類に含まれる要素が現れず,A類であ

るとも考えられる。田窪(1987:38)は非意志的動作・過程の主体であればA

類でもガ格名詞句と共起可能であるとしている。また,肯定否定は本来はA類

には含まれない要素であるので,

(15)秘密をしゃべらせないために,太郎は花子を殺してしまった。

のスルタメニはB類だと思われるが,副詞節と主文述語とで異なる主語が現れ

ず,アスペクトその他のB類の要素を含むこともできないので,A類とも言え

る。結論として言えることは,A類とB類とは連続体をなしていて,明快に区

別することは困難であるということである。

本稿では,こうした問題に鑑み,まず,次のように考える。

(16)副詞節には,節内の述語の形や共起する要素が制限される「語形変化十

接辞」型と,節内の規則がほぼ文に相当する「文十接続助詞」型とがある。

副詞節を分類する場合,それが文に近いかどうかを分類したほうが,副詞に

近いかどうかを分類するよりも基準が明白で区別しやすい。益岡(1997)もA

類,B類は同じ「対象領域のレベル(命題のレベル)」に属するとし,「主体領

域のレベル(モダリティのレベル)」に属するとするC類,D類との違いを認め

ている。本稿ではこの(16)の分類を採用し,以下「語形変化十接辞」型を「語形

変化型」,「文十接続助詞型」を「接続助詞型」と呼ぶ3.語形変化型の副詞節

にはどんなものがあるか,表1にまとめる。

-56-

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表1.語形変化型

illJm:の副詞節

7A

-57-

類 意味 述語の形 接辞 例

7B 条件・譲歩・理由

仮定条件・確定条件

仮定条件・確定条件

仮定条件・確定条件

仮定条件・確定条件

仮定条件・確定条件

仮定条件・確定条件

仮定条件・確定条件

時間的条件

対比条件

理由条件

付加条件

逆接仮定条件

逆接・譲歩

逆接・譲歩

原因・理由

原因・理由

並列

並列

/形

/タラ形

/夕形/タラ形

シテ形

スル形

スル形

スレパ形

スル形

スル形

スレバ形

スレパ形スル形

シダ形

シタッテ形

シテ形

シ形

シテ形

シ形

シテ形

()

がさいごさいご

かぎり

うちに

かわりに

こそ

~もV~も~もVなら~も

ところで

()

()

ロシアが参加し,6カ国になる。

家に帰ったら,手紙が来ていた。

このキーをいったん押したら最後,デー勺l士全鄭拙気TL主い±す_

歩いて,40分ぐらいかかる。

費任者が賛成しないかぎり.この企画譜存彌すわけにはいかない_

ジョークが笑われないと.とても恥すかしい、

この薬を飲めば.病気は治ります。

東京にいるうちに,ぜひ-.緒に食事をしようって言って先んだ_

雨だったので.テニスをするかわI)に.うちでテレビを見ました。

君の将来を考えればこそ.忠告するの溶一

あしたは数学の試験もあればレポートも梶出しなければならない㈹

今から走って行ったところで,間に合うはずがない。

どんなに練習したって.優勝には手が届かないよ。

いくら言っても.聞かないんじや,しようがない。

雨が降り,大会は中止になった。

頭痛がして,休みました。

夏休みにイ休み.僕に

E子はよく遊び.太郎はよく[よく学んだ.

今日は,花子は三越に行って,太郎はジャスコに行斉主す_

7A 条件・譲歩

仮定条件・確定条件

仮定条件・確定条件

仮定条件・確定条件

逆接仮定条件

逆接仮定条件

シ形

シナイ形

ショウ形

ショウ形

ショウ形一スル形

さえすれば

ことには

ものなら

がとも

がVまいが

とVまいと

これは,薬を飲みさえすれば,なおるしいう続気でI士ない_

売オ1るかどうかは.市場調査をしてみないこしには断志で麦ない_

この学校は厳しいから.断らずに欠席しようものなら.大変だ。

誰がげな

何と言おうが.わたしは決心を曲㈹つ*)n形へ

雨が毎年

塚ろうと降るまいと,この行事は可じ、に行なわれます.

6 時間的関係

時間的前後関係

時間的前後関係

時間的前後関係

時間的前後関係

時間的前後関係

時間的前後関係

時間的前後関係

時間的前後関係

時間的前後関係

時間的前後関係

時間的前後関係

時間的同時性

時間的同時性

時間的同時性

時間的対応

シ形

シダ形

シダ形

シテ形

シテ形

シテ形

/テ形

シテ形

シテ形

スル形

スル形

シダ形

スル形

スル形

スル形

あと(で)

ところ

0

いらい

はじめて

から

からでないとからでなければ

からというもの

にさきだって

まえに

とたん(に)

うえで

やいなやや

たび(に)

家に帰り,風呂に入った。

食事をした後,ディスコへ行った。

久しぶりに先生のお宅をお訪ねしたとZZ)杵牛I±お留守形っガー

戸をきちんと閉めて,出てください。

大学を卒業して以来,中山さんには一態下、合ってい主什A`_

入院してはじめて.健康のありがたさがわかりました。

結婚してから.もう3年になる。

野菜を生で食べるなら,よく洗ってかF、でたいし鰹蕊プバ`iY、配汚一

たばこをやめてからというもの,食欲が出て体の調子がとてもいい.

目↑日刀L]LL間l】恩キ1「-im向9。トープ[;jLつし,

関係者の調継が行われた。

ごはんを食べる前に.手を洗う。

ずっと本を読んでいて急に立ち上がっガン夫A’1h才いhfL主I‘光一

今度の企画を成功させる上で.ぜひみA,なの協力が,脚璽【なの芳一

そのニュースが伝わるや否や,テレビ局に抗議が藷至Ilした③

あの人は,会うたびに,新しい話題を聞かせてくれる。

5 例示

例示

例示

例示

例示

例示

シタリ形

スル形

スル形

スル形

スル形

とかVとか

やらVやら

にしてもVにしても

なりVなり

いつも朝は新聞を読んだり.コーヒー弄飲ん滞りして・渦ごすへ

親と話かしてI

,合うとか,先輩に相談するとk黙存オヒ1W)て<岸きいへ

びっくりするやら,悲しむやら.聴衆の斤旋I士齢々滞っ方

泳ぐにかすと1

しても,走るにしても.体を動壁は遜備i困iFhが,隊襲汚へ

黙っていないで,反対するなり賛成すろだ、t計圓左三rっTぐ汚六い_

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 ̄は多えれば苛兀るほ

■弼騒圃円一国■■‘’まれながらも ̄ ̄--′’F凧配■ ̄■■■■■F圃配P ̄円一

結果状態放匠

 ̄ ̄--1

一m河--m研里F9…ヨーュ・函唾画■呵鼎四一聯=証廻ョ■圃図鯛調騨鰯F湿田凸混目■■宇田因■ ̄ ̄邸■鵬騨瀞裂靭撫7…五■P研同一一F--L轟H1琴1脚糎驍涙---P研岡田一一ロ臘ヨ`.…國垣ご… ̄、……P、司河-,閲■UblL鯉鱸悪干矼…宛…ヨ伊而研一一m一

’1111

-58-

類 意味 述語の形 接辞 例

5 例示例示的相関

例示的逆接

スレバ形一スル形

シ形

Vほど

ながら(も)

職職試験のことは,考えれば考えるほ’J八目flrだってくる_

彼は豊かな才能に恵まれながらも.病で32歳でなくなってしまった。

4 目的・結果

目的

結果状態

結果状態

結果状態放置

スル形

シ形

シテ形

シダ形/シナイ形

ために

()

まま

真実をより早く解明するために,我々は前准するしかないへ

眼鏡をかけず,出掛けた。

髪をふりみだして,探す。

暑かったので,窓を開けたまま.寝た◎

3 付帯状態・経過

時間的同時性

時間的同時性

時間的同時性

時点・場面

時点・場面

時点・場面

付帯状態

付帯状態

付帯状態

付帯状態

付帯状態

付帯状態

付帯状態

付帯状態

付帯状態

付帯状態

様子

様子

様子

比較

比較

比較

目的

目的

経過

経過

経過

強調

強調

シ形

シ形

スル形

シダ形

スル形

スル形

シ形

シ形

シ形

シ形

シ形

シ形

シ形

シ形一シ形

スル形

スル形

シ形一シ形

シナイ形語幹

スル形

シナイ形

ショウ形一スル形

スル形

シナイ形緬幹

スル形

シダ形

シダ形

シダ形

シテ形

スル形

しだい

ざまに

なり

うえで

にさいして

にあたって

がけに

かたがた

がてら

しなに

ついでに

つつ(も)

ながら

VV(シ形反復)

かたわら

ことなく

つVつ

んばかりに

ともなくともなしに

までも

かVまいか

につけて

んがために

べく

あげく(に)

きり

jにひ■■1q

》え

まで

だに

そちらに着き次第.先方に敵話します。

振りIhlきざまに.斬りつけた。

fど;泣きI

>は母親の顔を見るなり,ワシと{し主L方一

詳しいことはお目にかかった上で,説HlIいかし主すへ

この調査を始めるに際して.関係者の-'螺存し后左'十れぽな角ない_

新居を1Wl入するにあたって.わたしど羊】い易い高女調杏葬L主L方今

夫が帰りがけに.鰯を買ってきてくれた⑥

家へ帰宅しかたがた.昼食を食べてき方公

遊びがてら,田舎へ行ってきた。

帰りしなに,夕日を眺めた。

学校に行きついでに,図番館に寄ってみた。

俳句を作りつつ.古都を訪れる。

歌をくちずさみながら.歩く

酒を飲み飲み.話をした。

川田さんは銀行に勤めるかたわら,作曲家としても活躍している 。

敵に知られることなく、島に上陸するのは難しい。

礎な男の人がうちの前を行きつ戻りつ1MDIしている。

皮女は泣かんばかりに「手紙をくださ,】ねlと言ってRIlオI方へ

見るともなく窓の外を見ると.流れ星力1鳳貢光一

休みごとには帰らないまでも.1旧Iぐ''二mいけ1崎議L先'三、_

1週間に

朝出かけるときはいつも,かさを持つTf〒こうか1千<主いか上洙弓鳧

あの人の暗い顔を見るにつけて.わたしは子どもの頃存鳳いⅡ」}すへ

研究を完成させんがため,彼は昼夜寝ずにがんばった。

ひとこと鈴木さんに別れの言葉を言うべ<_マンシコン参論才l方へ

大学を受験するかどうか、考えたあげ<‘号けない辰しIF津lhか_

子どもが朝.出かけたきり.夜の8時になっても帰って来ない。

柵国するというのは,さんざん迷った弓IFI-IHl提浬杢鶏6-7sせ・

映画の仕事は彼が家出をしてまでやり犬hLへた戸しか(71ナざ

あの人との再会は,想像するだに胸がドキドキする。

2 希望・目標希望仮定条件

結果・目標

スル形

スル形

ものなら

ように

できるものなら烏になって国へ帰りたい。

風邪が早く治るように.注射をしてもらいました。

1 客観的変化

客観的同時

客観的経過

相関関係

相関関係

相関関係

相関関係

シダ形

スル形

スル形

スル形

スル形

スル形

(か)とおもうと(か)とお*)っ方ら

にいたって(は)

にしたがって

につれて

にともなって

とともに

空で何かピカッと光ったかと思うと.ドーンとnh両が嬬才l光へ

Illl係者は子どもが自殺するに至って.ネJ1めて蕊の函犬さ涛知っ万一

警察の綱べが進むにしたがって.次々」新Lぃ蜂問占が}HT夫方一

時間がたつにつれて.印象が次第に河れていった。

問題解決の能力は,経験をI、ねるに伴って.身についてくる。

陽射しが強まり,気温が高くなるとともに次々と花が開き始める。

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表2.語形変化型の副詞節の分類

現象

判断

文の概念

レベル

事霧襄名

+は,ある要素がある節の中に存在可能であることを示す。-は存在不可能。

類1

23

45

67

意味

客観的変化希望目標

付帯状態・経過

目的結果

例示

時間的関係

条件・譲歩・理由

7A

7B

限定的

非限定的

シダ(力)

トオモウト,

シダ(力)

トオモッタ

フスルニ

イタッテ

(ハ),スル

ニシタガッ

フースルニ

ツレテ

ルニトモナッ

フースルト

トモニ

スルモ

ノナラ,

スルヨ

ウニ

シシダイ,シザマニ,スルナ

リ,

、 ̄

ンフー

ケニ

シタウエデ,スルニサイ

スルニアタ

ツナ,シガ

シカタガタ,シガテラ,

シシナニ,シツイデニ,シツ

ツ(モ),シナガラ,シシ

ルカタワラ,スルコトナク,

シツシツ,センバカリニ,ス

ルトモナク,スルトモナシニ,

シナイマデモ,シヨウカスル

マイカ,スルニツケテ,セン

ガタメニ,スルベク,シタア

ゲク(二),シタキリ,シタス

エ(二),シテマデ,スルダニ

川ニパシシスメシマテ

シタリ

スルトカ

スルヤラ,

スルニシ

テモ

ルナリ

スレバス

ルホド

シナガラ

(モ)

シタアトデ,シタト

コロ

シテイライ,

シテハジメテ,シテ

力フ,シテカラデナ

イト,シテカラデナ

ケレバ,シテカラト

イウモノ,スルニサ

キダッテ,スルマエ

二,シタトタン(二),

スルウエデ,スルマ

エニ

スルヤイナヤ,

スルヤ,スルタビ

(二)~ ̄、

ンナ,ン

シサエスレ

(シナイ

コトニハ,

シヨウモノ

ナラ

ウガ

シヨ

シヨ

ウトモ,シ

ヨウガスル

マイガ,

ヨウトスル

マイト

シダラ

サイゴ

サイゴ

ギリ

スレバ

チニ

リニ

ソ ~モ

シダガ

シタラ

スルカ

スルト,

スルウ

スルカワ

スレバ.

~モスレバ

~モスル

ナラーモ,シダ

トコロデ,シタッ

フー

シテモ,

フー,ン

要素

言語主体主語

意志動詞

肯定否定

アスペクト

異主語

+く

+一+’j

+く

++||’

+++’一

++++一

++|’+

++|++

+++++

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3.副詞節階層

ここでは,表2の様な語形変化型の副詞節の分類を提案する。

この分類を考える時に,意味と形の両面を考慮した。意味の面では,副詞節

が主文述語とどのような関係にあるかという点を中心に考えた。形の面では,

ある副詞節がどのような要素と共起可能かを考慮した。さらに話し手及び聞

き手といった言語主体が主語として現れるかどうか,副詞節と主文述語の主語

が異なる場合があるかないかも考慮に入れた。

この分類は,副詞節のうち,語形変化型だけを考察の対象とする。接続助詞

型も階層的に分類できると思われるが,量的に膨大になるので,それに関して

は別稿で考察したいと考えている。

3.1.副詞節の意味的な分類

ThompsonandLongacre(1985),Cristofaro(2003)等は言語類型論

的観点から副詞節を意味上次の6タイプに分類している。

(17)(i)目的,(Ⅱ)先行動作(「before」関係),(iii)後行動作(「after」

関係),(iv)同時動作(「when」関係),(v)条件,(vi)理由

しかし,日本語の場合,複合接続詞も含めて考えると,これら以外にも様々な

タイプの副詞節が存在していることが明らかになる。したがって,本稿では次

の7タイプに分類し,階層をなすことを主張する。

(18)客観的変化>希望・目標>付帯状態・経過>目的・結果>例示>時間的

関係>条件・譲歩・理由

意味の点から言うと,まず,この階層の左の方の副詞節は特定の時点で起こっ

た出来事を表しにくい。その意味で出来事の様子を表す副詞(様態副詞)に近

い`性質を持っていると言える。それに対して,階層の右の方は,特定の時点で

起こった出来事を表すことができる。より文に近い`性質を持っていると言える。

別の言い方をすれば,副詞節が主文述語にどれくらい包摂されているかの度

合いの傾斜を表しているとも言える。包摂されているというのは,関連`性が高

い,と言い換えてもいい。1類では副詞節が主文述語に包摂されているが,右

へ行くほど包摂されなくなる。例えば,1類「客観的変化」では副詞節の変化

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に応じて主文述語が変化することを表し,副詞節と主文述語との関係は切って

も切れないほど密接なものであるが,2類「希望・目標」ではそれほど密接で

はないので,1類のほうが2類よりも主文述語に包摂されていると言える。2

類では副詞節は主文述語と関係が密接ではないが,相対的にいうと,3類「付

帯状態・経過」よりも密接であると言える。それは,2類では,例えばスルヨ

ウニは意志を表さない動詞,スルモノナラは可能の意味を含む動詞としか共起

できず,さらに後者は主文述語も希望や命令などの話す人の意志を表す場合に

のみ使われるという制限があり,副詞節と主文述語がある程度関係づけられて

いるが,3類ではそうした制限は特に見られない。従って,2類の方が3類よ

りも,相対的には,副詞節と主文述語との関係が密接であると言える。4類

「目的・結果」,5類「例示」,6類「時間的関係」,7類「条件・譲歩・理由」

までを見ても,4類は副詞節が主文述語に付帯したものであるが,5類では単

なる例であるから,関連’性は相対的に5類のほうが低い。さらに,6類は主文

述語との時間的関係を示すが,少なくとも時間軸上2つの出来事は独立してお

り,さらに副詞節との関連性は低くなる。7類に至ると,副詞節の状況と主文

述語の状況とは時間を超えた因果関係として,ほぼ対等にしか関連性がなく,

もはや主文述語が副詞節を包摂しているとは言えない。

類の下位分類についても,包摂の度合いを考慮した。7類で7Aは限定的な

条件,譲歩を表す。

(19)謝りさえすれば,許してくれる

というのは,-番必要な条件を仮定する時に使い,

(20)試験を受けようと受けまいと,君の成績はもう不可だ

というのは,どちらの場合にも成立するとして逆接条件を仮定する時に使う。

したがって,条件が限定的であり,より強調されている。その証拠にこれら

は仮定された条件以外のことが実現すると,後件の成立可能性は限りなく低く

なる。後者においては,仮定された条件以外の実現すらあり得ない。しかし,

7Bは

(21)君が行かないかぎり,僕も行かない

(22)宝くじにはずれたって,家を買うつもりだ

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のように,相対的に7Aほどの限定は見られず,仮定された条件以外のことが

実現しても,後件が成立する可能性は残されている。また,

(23)シベリア寒気団が南下して,雪が降った

といった理由を表す表現もある。従って,条件の限定が少ないという点で,7

Bのほうが7Aよりも,包摂度が低いと言える。

ここまでは,表2が副詞節が主文述語に包摂される度合いを示していること

を見た。

3.2副詞節の品詞的な特徴

品詞について見ると,表2の左の方では,動詞である。しかも,3.1で既

述したように動詞の種類まで限定されている。しかし,表2の右の方に行く

に従って動詞の種類の限定はなくなり,動詞だけではなく,形容詞も出てくる。

また,右の方に行くに従って丁寧さも増す。

(24)マラソンで3位になって,うれしいやら悔しいやら複雑な気持ちだ。

(25)元気なうちに,もっといろいろ経験しておきたかった。

(26)先日はご挨拶もいたしませぬまま,退席しまして,失礼いたしました。

(27)今度断らずに欠席しましたらさいご,除籍処分になってしまいます。

(24)は5類,(25)は6類の例で,形容詞による節の形成も可能となってい

る。また,(26)や(27)の例のように,4類や6類であれば丁寧体の使用も

可能である。

3.3.副詞節のとる要素

31では,表2の意味的側面を見た。この分類は形の面にも反映している。

以下では,表2の副詞節の形の面での分類の根拠と,副詞節の類の配列の根拠

を見よう。

3.3.1.分類の根拠

表2の提案する副詞節の種類は各類の名前が示す通りの意味的な種類である

が,実は副詞節のとる文法的な要素にその分類の大きな根拠がある。これらは

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従来A類とB類に2分されてきたものであるが,各類が含む要素を見ると,表

2のように7類に分類する根拠が十分にある。

例えば,肯定否定の分化は2類,4類,5類,7B類には見られるが,その

他にはない。

(28)単語を忘れないように毎日たくさん日本語で話しました。

(29)返事を出さないまま,数ヶ月が過ぎた。

(30)宿題をしなかったり,授業に出なかったりして,先生を怒らせた。

(31)僕が行かないかわりに,君が行けばいいよ。

また,アスペクトの分化は5類,7類にしか見られない。

(32)テレビを見ているなり,本を読んでいるなりして,待っていてください。

(33)一生懸命練習していればこそ,本番でもいい演技ができるんだ。

さらに,1類では主文であれ副詞節であれ,主語が言語主体である場合は用い

られない。

(34)*私は40度の熱が3日も続くにいたって,やっと医者へ行った。

一方,主文述語とは異なる意志的動作の主語をとれる副詞節は6類,7類のみ

である。

(35)太郎が部屋へ入るやいなや,花子が出て行った。

(36)君が参加しないことには,だれも参加しないよ。

この様に様々な例を見ると,表2の副詞節分類の根拠が,形の面,この場合

は肯定否定やアスペクトの分化,ガ格名詞句が現れるかどうかといった副詞節

のとる要素にもあることが分かる。同じことが下位分類についても言える。7

類の副詞節は条件・譲歩を表し,下位分類の必要がない様に見える。しかし,

3.1.で見た様に,7Aでは副詞節における仮定条件が限定的であるが,7Bで

は限定的であるともないとも言っていないという様に意味の点で違いがある。

形の点でも,7Aと7Bの違いがわかる。7Aのシサエスレバシヨウトスル

マイトなどには肯定否定の分化がないが,7Bのスルカギリ,シタッテなどに

はある。

(37)薬を飲みさえすれば,治る。

(38)雨が降ろうと降るまいと,明日はピクニックに行く。

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(39)

(40)

みんなが反対しないかぎり,この意見は採用される。

今日できなくったって,明日があるさ。

以上,副詞節分類の形の側面,特に副詞節のとる要素を見て来た。この様に

してみると,語形変化型の副詞節は従来A類とB類とに2分されてきたが,実

は,意味の面だけでなく,副詞節のとる要素の面でも,本稿のように分類する

根拠があることが分かる。

3.3.2.副詞節の類の配列

表2は事態の客観的な現れ方の度合いにも反映している。1類や2類の副詞

節は無意志動詞しか現れ得ない。言語主体ではなく,第三者や物が主語となり,

客観的な事態を描写している。しかし,右の方へ行くに従って,言語主体が主

語となる表現が出てくる。

表2の左の方の副詞節が表すことは,話し手および聞き手といった言語主体

の具体的な行為として実現はしないし,体現することもできない。

(41)時間がたつにつれて,犯した罪の重さに耐えられなくなってきた。

(42)帰れるものなら,とっくに帰っているよ。

というような例について見ると,時間がたつことや帰れるということは言語主

体の具体的な行為ではなく,客観的な事態である。しかし,表2の右の方の副

詞節の場合,

(43)わたしが結婚してからでないと,妹も結婚しないんでしょうね。

(44)僕が結婚したいと思っていたところで,彼女がいいと言わないさ゜

で,結婚するということや,結婚したいと思っていたことは,言語主体の特定

の行為である。この場合,言語主体が主文述語とは異なる主語となることもで

きる。

このように,1類が客観的な事態を描写しているということは,主文であれ

副詞節であれ,主語が言語主体である場合には用いられないことからもはっき

りする。また,逆の傾向を示す事実として,6類,7類のみが主文述語とは異

なる意志的動作の主語をとれるというのがある。

1類と2類も異なる主語をとれるが,これらは変化の主体である。そういう

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意味で,前に述べた異なる意志的動作の主語とは区別される。((表2では

(+)で示した。)

(45)夫が成長するにともなって,妻も成長した。

(46)娘が立派になるように,私は一生懸命育てます。

表2ように分類すると,客観的な事態から言語主体が関与する事態へと傾斜

しているように見える。

野田(1995:325)は,「現場依存の視点」,「文脈依存の視点」という概念を,

「視点には,『私があなたに今ここで』という発話の現場を基準にした『現場依

存の視点』と,文脈によって設定された場,言い換えれば,文中で表されてい

る内容が実現する場を基準にした『文脈依存の視点』の2つがある」と主張し

た。その考え方を借りれば,表2の左のほうは「文脈依存の視点」しかとれな

いが,右にいくにしたがって,「現場依存の視点」も可能となってくるという

ことになる。

現場依存の視点が可能かどうかは,異主語が可能かどうか,でおおよそ判断

ができる。例(45),(46)のように副詞節において異主語が可能であれば,文

脈上主文述語の主語が言語主体ではなくても,副詞節の主語が言語主体である

可能性が残されるからである。

したがって,表2を一見すると,5類の「例示」のほうが6類の「時間的関

係」よりも共起する要素が多く,「階層」として右側に位置づけたほうが適切

であるようにみえるが,本稿では,異主語が可能かどうか,現場依存の視点に

よる表現ができるかどうか,という点を重視し,異主語の可能な6類,7類を

それが不可能な5類よりも右側に位置づけ,表2のような階層を提起する。

3.4.文の概念レベルへの反映

南(1974)は,副詞節のA類,B類,C類,D類の4つの段階の背後に「描叙

段階」,「判断段階」,「提出段階」,「表出段階」という文の概念レベルが区別で

きるとした。描叙段階については,「陳述的な性格がすぐなく,ことがら的性

格がもっぱら問題になる」(南1974:158),「ことがら的`性格といっても,それ

は単純なものではなく,いわば一般から限定への過程がそこに見られる」(南

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1974:161)と指摘し,判断段階については,「前の段階より意味の限定の程度

が進んでくる」とした上で,その一般的」性格を「その文で表現されるべきこと

がらに対する言語主体の認定」(1974:163)と規定している。

益岡(1997)はこれを修正・発展させ,「対象領域のレベル(命題のレベル)」

に属するA類,B類を,それぞれ「事態命名レベル」,「現象レベル」として特

徴づけている。

本稿で提案した分類も,ほぼ同様の傾向を示す。表2の左の方ではものごと

そのものやものどと間の関係,様子,程度,量など,ある事態の型を総称的に

指し示す表現が多く,表2の右の方では特定の時空間に実現する個別的な事態

を指し示す表現,現場依存の視点をともなった表現が多くなる。

南(1974)は「描叙段階」,「判断段階」を「言語主体の認定」がないかある

かで,益岡(1997)は「事態命名レベル」,「現象レベル」を「テンスの関与」

がないかあるかで明確に区別しようとする。指標としては,それぞれ後者の段

階が「昨日」,「仕事中」,「午後1時から5時まで」といった時の修飾語によって

時間的に限定できたり,「とにかく」,「やはり」,「感心にも」,「残念なことに」

といった言語主体の意向を示す副詞句が現れうるといったものがあげられる。

しかし,これらを明確に区別する事は簡単ではない。

(47)残念なことに給料は十分とは言えないまでも,何とか暮らしています。

(48)8時に飛行機に乗るために6時半に家を出た。

これらの例では,言語主体の意向を示す副詞句や時の修飾語が現れているので

B類と考えてもよいが,アスペクトの分化が見られず,異主語も現れないので

A類と考えることもできる。つまり,A類とB類とはきちんと分けられる性格

のものではなく,中間的なものがその境界線上にあり,連続性のなかで捉えた

方が事実に即していると言える。

すなわち,既に明らかな様に,この表2は,文の概念レベルの点では,「描

叙段階」から「判断段階」へ,「事態命名レベル」から「現象レベル」への程

度の傾斜,つまり一般から特定へと意味が限定され,言語主体の関与が見られ

るようになっていく段階を示す。

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4結

本稿では,現代日本語の副詞節の体系を形態論的特徴から語形変化十接辞に

よるものと,文十接続助詞によるものの大きく2つに分けることを提案し,さ

らに,語形変化型の副詞節の分類を提案した。この分類は,意味の点でも形の

点でも,それから文の概念レベルの点でも,副詞節の文らしさの程度を示して

いる。

(1)意味の側面:副詞節が主文述語に包摂される度合い。

(Ⅱ)形の側面:肯定否定,アスペクトの分化の度合い,言語主体や異主語

の現れやすさの度合い。

(Ⅲ)文の概念レベルの側面:事態命名レベルから現象レベルまでの度合い。

本稿では,複合接続詞を議論の俎上に載せることで,現代日本語の語形変化

型の副詞節の体系と意味の大枠をそれなりに解明できた。こうした視座は,従

来の枠組みで捉えきれなかった現象を鮮明にし,現代日本語の副詞節の体系と

意味を分析するうえで重要であると考えられる。また,これからの日本語研究

および日本語教育においては,複合辞のような周辺的な文法現象を詳しく検討

することが求められよう。

ここでは副詞節階層の見取り図を示したが,副詞節はひとつひとつ独自性が

あり,複合接続詞もひとつひとつ独自性がある。それぞれの複合接続詞がそれ

ぞれの副詞節においてどのような意味を示すのかは,さらに詳しく研究する必

要がある。

本稿で提案したような副詞節の分類が,日本語だけではなく,他の言語の現

象も同じ枠組みで説明できるのか,といったところも興味深い点である。これ

らを今後の課題としておきたい。

(1)異主語のシ,シテは意味・用法が広いため,他の複文とは区別して複文1

型とされる.

(2)城田(1998)はこれを「文尾助辞」による「文の活用」と呼ぶ。「文尾助

辞」には接続助詞以外,~そうだ,~のだ,~ようだ,~らしい,~にち

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がいない,~みたいだ,~かもしれない,~だろう,~です等,モダリテイ

を中心とした表現もある。

(3)これらはテンスの対立があれば接続助詞型,なければ語形変化型と区別で

きる。

(4)表lの作成にあたっては,グループ・ジヤマシイ(1998),庵ほか(2001),

益岡・田窪(1992),森田・松木(1989),友松ほか(1996)等を参考にし

た。

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益岡隆志・田窪行則(1992)『基礎日本語文法(改訂版)』くるしお出版.

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The Hierarchy for Adverbial Relations in Japanese

SOEJIMA Kensaku(University of the Ryukyus)

Abstract

This paper examines the compound conjunction that forms the sys­

tem of adverbial relations. I will demonstrate the system of adverbial

relations as follows. The adverbial relations with the compound conjunc­

tion are classified into the inflectional type that consists of "inflection

of the word + affix" and the conjunctive particle type that consists of

"sentence + conjunctive particle." Moreover, I will also argue that the

inflectional type of the adverbial relations is classified in 7 part as hier­

archy. And this classification is supported at the semantic features, the

morphological features and the features of the notional level of sen­

tences.

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