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1 はじめに 有機発光ダイオード(OLED)は、電流が印加された時、電子発光(エレクトロルミ ネセンス)を示す薄膜で、テレビ・携帯電話・コンピューターモニター・時計・ディ スプレイ等、日常で見られる様々な電子機器に使用されています。OLED の継続的 な開発と実用化は、次世代ディスプレイ技術を開発する企業とそのサプライヤー にとって大きな関心事です。 OLED に基づいたデバイス(特に青色リン光発光体)構築に用いられる原材料に は最終製品の品質及び長寿命化のため高純度であることが要求されます。OLED 料に関連した多くの知的財産があるため、高品質な OLED 原材料の製造は非常 に大きな利益を生み出します。 知的財産は、OLED に基づいたデバイスのデバイスのコモディティ化(高付加価値 商品の市場価値低下)を抑制し、高い生産コストを回避できない OLED 化学材料 ビジネスのための強力な武器です。市場分析のレポートでは、OLED 市場は 2016 までの今後 5 年間で 50 億ドルの市場へ成長すると予測されています。 1 一般的に、 OLED 材料は、種々の顕微鏡技術によって分析されます。興味深いことに、 極わずかに LC ベースのメソッドが、OLED デバイスで使用されるリン光発光材料の 安定性分析として技術論文で報告されていますが、公開されている分析法の殆どは 30 分以上の分析時間を必要としています。 2,3,4 本アプリケーションノートでは、UltraPerformance Convergence Chromatography ™ UPC 2 )およびフォトダイオードアレイ(PDA)検出器と質量分析計を用いて、図1 に示すようなイリジウム錯体染料 Ir(Fppy) 3 の迅速かつ選択的な純度分析メソッド を開発しました。 Ir(Fppy) 3 は、 OLED デバイスで使用する青色エレクトロルミネセンス の長寿命化に重要なリン光発光材料です。分析法の開発は、OLED デバイスの構造 で用いられる汎用的な材料の共存下で検討しました。 UPC 2 メソッドの開発では、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)の主な移動相と して液化炭酸ガス(CO 2 )、共溶媒にはメタノールを使用し、目的成分である [MX 3 Y 3 ] 有機金属錯体を溶出させます。 ウォーターズのソリューション Waters ® ACQUITY UPC 2TM システム ACQUITY UPC 2 カラムキット ACQUITY UPC 2 PDA 検出器 ACQUITY ® SQD Empower TM 3 CDS ソフトウエア キーワード ACQUITY UPC 2 、超臨界流体クロマトグラ フィー、ファインケミカル純度、特許権 保護、安定性評価、劣化プロファイリング、 PhOLEDOLEDIr(Fppy) 3 、不純物、リン 光発光材料 アプリケーションの利点 原材料純度のプロファイリング改善に向けた アプローチ 既存の液体クロマトグラフィー技術と比較し 分析時間が 1/10 に短縮 溶媒の消費量と廃棄処理にかかるコストの 大幅な削減 HPLC で約 $1.91 vs UPC 2 で約 $0.05 順相系希釈液や OLED 分析に使用される抽出 溶媒との相溶性 UPC 2 /MSによる有機発光ダイオード材料の分析 Michael D. Jones, Andrew Aubin, Peter J. Lee, and Tim Jenkins Waters Corporation, Milford, MA, USA

UPC2/MSによる有機発光ダイオード材料の分析 - Waters ......Michael D. Jones, Andrew Aubin, Peter J. Lee, and Tim Jenkins Waters Corporation, Milford, MA, USA UPC2/MS

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  • 1

    はじめに

    有機発光ダイオード(OLED)は、電流が印加された時、電子発光(エレクトロルミ

    ネセンス)を示す薄膜で、テレビ・携帯電話・コンピューターモニター・時計・ディ

    スプレイ等、日常で見られる様々な電子機器に使用されています。OLEDの継続的

    な開発と実用化は、次世代ディスプレイ技術を開発する企業とそのサプライヤー

    にとって大きな関心事です。

    OLEDに基づいたデバイス(特に青色リン光発光体)構築に用いられる原材料に

    は最終製品の品質及び長寿命化のため高純度であることが要求されます。OLED材

    料に関連した多くの知的財産があるため、高品質な OLED原材料の製造は非常

    に大きな利益を生み出します。

    知的財産は、OLEDに基づいたデバイスのデバイスのコモディティ化(高付加価値

    商品の市場価値低下)を抑制し、高い生産コストを回避できない OLED化学材料

    ビジネスのための強力な武器です。市場分析のレポートでは、OLED市場は 2016年

    までの今後 5年間で 50億ドルの市場へ成長すると予測されています。1

    一般的に、OLED材料は、種々の顕微鏡技術によって分析されます。興味深いことに、

    極わずかに LCベースのメソッドが、OLEDデバイスで使用されるリン光発光材料の

    安定性分析として技術論文で報告されていますが、公開されている分析法の殆どは

    30分以上の分析時間を必要としています。2,3,4

    本アプリケーションノートでは、UltraPerformance Convergence Chromatography ™ (UPC2)およびフォトダイオードアレイ(PDA)検出器と質量分析計を用いて、図1

    に示すようなイリジウム錯体染料 Ir(Fppy)3の迅速かつ選択的な純度分析メソッド

    を開発しました。Ir(Fppy)3は、OLEDデバイスで使用する青色エレクトロルミネセンス

    の長寿命化に重要なリン光発光材料です。分析法の開発は、OLED デバイスの構造

    で用いられる汎用的な材料の共存下で検討しました。

    UPC2メソッドの開発では、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)の主な移動相と

    して液化炭酸ガス(CO2)、共溶媒にはメタノールを使用し、目的成分である [MX3Y3]型

    有機金属錯体を溶出させます。

    ウォーターズのソリューション

    Waters® ACQUITY UPC2TM システム

    ACQUITY UPC2 カラムキット

    ACQUITY UPC2 PDA検出器

    ACQUITY® SQD

    EmpowerTM 3 CDSソフトウエア

    キーワード

    ACQUITY UPC2、超臨界流体クロマトグラ

    フィー、ファインケミカル純度、特許権

    保護、安定性評価、劣化プロファイリング、

    PhOLED、OLED、Ir(Fppy)3、不純物、リン

    光発光材料

    アプリケーションの利点

    ■■ 原材料純度のプロファイリング改善に向けた

    アプローチ

    ■■ 既存の液体クロマトグラフィー技術と比較し

    分析時間が 1/10に短縮

    ■■ 溶媒の消費量と廃棄処理にかかるコストの

    大幅な削減

      - HPLC で約 $1.91 vs UPC2で約 $0.05

    ■■ 順相系希釈液や OLED分析に使用される抽出

    溶媒との相溶性

    UPC2/MSによる有機発光ダイオード材料の分析Michael D. Jones, Andrew Aubin, Peter J. Lee, and Tim JenkinsWaters Corporation, Milford, MA, USA

  • 2UPC2/MSによる有機発光ダイオード材料の分析

    実験方法:

    サンプル調製

    基準標準溶液は、Ir(Fppy)3 標準品をテトラヒド

    ロフランで希釈し、濃度が約 1.0 mg/mLになる

    ように調製しました。

    実用標準溶液は、Ir(Fppy)3基準標準溶液をテトラ

    ヒドロフランで希釈し、濃度 0.1 mg/mLになるよう

    に調整しました。

    分析条件

    装置: Waters ACQUITY UPC2

    カラム: ACQUITY UPC2 BEH 2-EP 3.0×100 mm, 1.7 μm

    移動相 A: CO2

    移動相 B: 2 g/Lギ酸アンモニウム含有メタノール

    洗浄溶媒: 70:30メタノール / イソプロパノール

    分離モード: グラジエント: 10 %→ 25 %B(5分)、 25 %(1分間ホールド)

    流量: 2.0 mL/分

    圧力出口: 1885 psi

    カラム温度: 60℃

    サンプル温度: 室温

    注入量: 2.0 μL

    分析時間: 5分

    検出器: ACQUITY UPC2 PDA 3Dチャンネル: 200~ 400 nm, 20 Hz 2Dチャンネル: 258 nm @ 4.8 nm (500~ 600 nm補正)

    質量分析計: ACQUITY SQD

    MS 条件: 200~1200 Da 10,000 Da/ 秒 , ES PosNeg

    Make-up 流量: なし

    データシステム: Empower3 CDS ソフトウェア

    結果および考察

    分析法の開発

    代表的な SFCシステム構成では、MS分析でイオン化効率を向上させるために

    もう1台ポンプ(メイクアップポンプ)を用いてギ酸などの溶媒をポストカラム

    で混合します。従来の SFCにおけるイオン化効率の不足は、イオン化に必要な

    プロトンを欠いた高流量の高比率液化炭酸に起因します。UPC2を使用するに

    あたって、メイクアップフローの必要性を検討しました。

    この分析では、UPC2のシステム構成にイオン化促進のためのメイクアップポン

    プを必要としませんでした。UV 検出器の後ろでフローをスプリットして質量分

    析計に導入しました。スプリッターにはアップチャーチ社製ゼロボリュームの

    PEEK Teeを使用しました。そして、MSプローブのインレットまで I.D. 0.0025イ

    ンチ、長さ 30 cmの PEEKチューブを使い、CO2の超臨界状態を維持するための

    十分な背圧をかけました。

    メソッド開発の過程において、まず初めに 3 種類の ACQUITY UPC2 カラムの

    選択性の違いを調査しました。用いたカラムは、UPC2 用に設計された UPC2

    BEH、UPC2 BEH 2-エチルピリジン (2-EP)、UPC2 CSH フルオロフェニルです。

    劣化した Ir(Fppy)3をサンプルとし、5分間のグラジエントメソッドで迅速スクリー

    ニングを行いました。

    図 2と図 3に示すように、このメソッド開発計画とシステム構成の下では、BEH

    2-EP で 7つの未知不純物を分離するための最も適した選択性と良好なピーク

    形状が得られました。図 2および図 3 の挿入図はピークの同定に使用された

    スペクトルです。図 3に示すように、MSのデータでは1~ 2分の間で微量不純物

    のピークを検出しています。MSによりこれら微量不純物を検出することでスペ

    クトル情報が得られ、そのピークが目的成分なのかそれとも関連化合物なのか

    の推定が容易になります。

     

    N

    FF

    N

    F

    F

    Ir

    N

    F

    F

    図1 トリス(2’, 4’-ジフルオロフェニル -2-ピリジン) イリジウム(Ⅲ)の化学構造。 略称は Ir(Fppy)3

  • UPC2/MSによる有機発光ダイオード材料の分析 3

    不純物の同定

    UVおよび MSで検出されたピークのスペクトル情報は、Empower3ソフトウェアの 3Dデータチャンネルから

    抽出したものです。Empower3では、対象化合物の UVピークから MSスペクトル抽出までを 1画面で実行でき、

    効率的なデータのレビューを行えます。

    得られたクロマトグラフから、ブランク注入のピークを差し引くと、合計 7つの不純物ピークが見つかりま

    した。保持時間および UVスペクトル、MSスペクトルを表 1に示します。7つの不純物のうち 3つ (RT 1.360 分、

    RT 1.463 分、RT 1.619 分)は、Ir(Fppy)3リン光発光材料と類似した UVスペクトル形状を観測しました。7つ

    のピークの MSスペクトル解析結果は、Ir(Fppy)3リン光発光材料との明らかな違いを示しました。

    図 3に見られるように、Ir(Fppy)3の MSスペクトルは、特異的な同位体比を持っています。7つの不純物ピークは、

    全て Ir(Fppy)3リン光発光材料と類似した同位体イオン比率を持っていました。後方に溶出する 4ピークの

    うち 3つでは ESI-でのイオン化を確認できました。ネガティブイオンの情報は、精密質量測定による不純物

    に焦点を当てたさらなる特性解析に役立ちます。

    1.01

    9

    AU

    0.00

    0.03

    0.06

    0.09

    0.12

    Minutes

    0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00

    1.019 Peak 1

    225.4

    258.4

    373.4AU

    0.018

    0.036

    0.054

    0.072

    nm220.00 260.00 300.00 340.00 380.00

    UV 258 nm

    Ir(Fppy)3

    図2  UV 258 nm検出での劣化した Ir(Fppy)3サンプル中の Ir(Fppy)3 および不純物のクロマトグラム(500~600 nm補正)。ピークは、Ir(Fppy)3であると同定されました。挿入図は、極大吸収(258 nm)を示すIr(Fppy)3 のUVスペクトル

    図3  MS ESI+検出での劣化した Ir(Fppy)3 サンプル中のIr(Fppy)3 および不純物のトータルイオンクロマトグラム(TIC)。ピークは、Ir(Fppy)3であると同定されました。挿入図はベースピークイオンが m/z763.9 を示すMSスペクトル

    1.00

    3

    Inte

    nsity

    1.8x107

    3.6x107

    5.4x107

    7.2x107

    9.0x107

    Minutes

    0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00

    1.004 Peak 1 - SQ 1: MS Scan 1: 300.00-1000.00 ES+, Centroid, CV=Tune

    761.95

    763.92

    Inte

    nsity

    0.0

    7.0x106

    1.4x107

    2.1x107

    2.8x107

    m/z

    744.80 748.60 752.40 756.20 760.00 763.80 767.60 771.40 775.20 779.00

    Ir(Fppy)3

    MS ES+

  • 4UPC2/MSによる有機発光ダイオード材料の分析

    ノミナル質量測定結果から未知不純物の特性解析を行うことは、一般的には望ましくありませんが、この

    実験中に観測された不純物は、親化合物の Ir(Fppy)3と同位体パターンが類似していました。MSの測定結果に

    基づいて、保持時間1.94分のピークは Ir(Fppy)3の配位異性体 (facial/maridional)と推定しました。保持時間が1.360 分、

    1.463 分、1.619 分と 2.75分の未知ピークは、フルオロフェニルのベンゼン環上のフッ素原子が1つ脱離し

    たことを表しています。保持時間 3.622分の未知ピークは、フルオロフェニルのベンゼン環のフッ素原子

    が 2つ脱離していることを示しています。図 4に示されるように、4.12分に溶出されるピークの構造を推定す

    るためには、MS/MSと精密質量測定によるさらなる詳細な測定、解析を必要とします。

    1.360 Peak 2

    213.7

    221.9227.8239.5

    262.0

    317.8322.5

    330.9

    336.8

    353.0360.2

    367.4

    381.8386.6392.6

    AU

    0.00024

    0.00048

    0.00072

    0.00096

    0.00120

    nm220.00 240.00 260.00 280.00 300.00 320.00 340.00 360.00 380.00 400.00

    1.463 Peak 3

    213.7

    228.9232.5

    260.8

    301.1

    322.5

    348.2351.8355.4362.6

    377.0385.4

    396.2

    AU

    0.00025

    0.00050

    0.00075

    0.00100

    0.00125

    nm220.00 240.00 260.00 280.00 300.00 320.00 340.00 360.00 380.00 400.00

    1.619 Peak 4

    216.0

    230.1233.6241.9

    260.8

    292.8

    315.4322.5

    330.9336.8348.2 360.2 375.8

    393.8398.6

    AU

    0.00000

    0.00025

    0.00050

    0.00075

    0.00100

    nm220.00 240.00 260.00 280.00 300.00 320.00 340.00 360.00 380.00 400.00

    1.019 Peak 1

    225.4

    258.4

    373.4

    AU

    0.018

    0.036

    0.054

    0.072

    nm220.00 240.00 260.00 280.00 300.00 320.00 340.00 360.00 380.00 400.00

    1.345 Peak 2 - SQ 1: MS Scan 1: 300.00-1000.00 ES+, Centroid, CV=Tune

    743.93

    745.90

    Inte

    nsity

    0.0

    9.0x105

    1.8x106

    2.7x106

    3.6x106

    m/z734.40 737.10 739.80 742.50 745.20 747.90 750.60 753.30 756.00 758.70

    1.446 Peak 3 - SQ 1: MS Scan 1: 300.00-1000.00 ES+, Centroid, CV=Tune

    743.97

    745.91

    Inte

    nsity

    0.0

    1.2x106

    2.4x106

    3.6x106

    4.8x106

    m/z738.00 740.00 742.00 744.00 746.00 748.00 750.00 752.00 754.00

    1.601 Peak 4 - SQ 1: MS Scan 1: 300.00-1000.00 ES+, Centroid, CV=Tune

    743.90

    745.90

    746.97

    Inte

    nsity

    0

    1x106

    2x106

    3x106

    4x106

    m/z739.20 741.30 743.40 745.50 747.60 749.70 751.80 753.90 756.00

    1.004 Peak 1 - SQ 1: MS Scan 1: 300.00-1000.00 ES+, Centroid, CV=Tune

    761.95

    763.92

    765.01

    Inte

    nsity

    0.0

    7.0x106

    1.4x107

    2.1x107

    2.8x107

    m/z759.60 760.80 762.00 763.20 764.40 765.60 766.80 768.00 769.20

    Retention Time UV Spectra MS ES+ Spectra MS ES- Spectra

    N/A

    N/A

    N/A

    N/A

    Ir(Fppy)3 RT λmax ES+ m/z ES- m/z

    1.11 分 258.4 nm 763.9 N/A

    RT λmax ES+ m/z ES- m/z

    1.36 分 262.0 nm 745.9 N/A

    RT λmax ES+ m/z ES- m/z

    1.46 分 260.8 nm 745.9 N/A

    RT λmax ES+ m/z ES- m/z

    1.62 分 260.8 nm 763.9 N/A

    4.124 Peak 8

    212.5221.9

    238.4

    264.3272.6

    314.2320.1323.7332.1345.9

    363.8367.4

    379.4383.0386.6

    AU

    0.00075

    0.00150

    0.00225

    0.00300

    0.00375

    nm220.00 240.00 260.00 280.00 300.00 320.00 340.00 360.00 380.00 400.00

    3.622 Peak 7

    212.5

    237.2

    275.0

    341.3 354.2368.6

    383.0

    AU

    0.0006

    0.0012

    0.0018

    0.0024

    0.0030

    nm220.00 240.00 260.00 280.00 300.00 320.00 340.00 360.00 380.00 400.00

    2.746 Peak 6

    236.0

    273.8

    345.9

    371.0384.2

    AU

    0.0051

    0.0102

    0.0153

    0.0204

    0.0255

    nm220.00 240.00 260.00 280.00 300.00 320.00 340.00 360.00 380.00 400.00

    1.935 Peak 5

    234.8

    270.3

    343.6

    371.0380.6

    AU

    0.013

    0.026

    0.039

    0.052

    nm220.00 240.00 260.00 280.00 300.00 320.00 340.00 360.00 380.00 400.00

    1.922 Peak 6 - SQ 1: MS Scan 1: 300.00-1000.00 ES+, Centroid, CV=Tune

    761.97

    763.93

    765.08

    Inte

    nsity

    0.0

    7.0x106

    1.4x107

    2.1x107

    2.8x107

    m/z757.80 759.60 761.40 763.20 765.00 766.80 768.60 770.40 772.20

    2.731 Peak 7 - SQ 1: MS Scan 1: 300.00-1000.00 ES+, Centroid, CV=Tune

    743.96

    745.95

    747.05

    Inte

    nsity

    0.0

    6.0x106

    1.2x107

    1.8x107

    2.4x107

    m/z738.00 740.00 742.00 744.00 746.00 748.00 750.00 752.00 754.00 756.00

    3.605 Peak 8 - SQ 1: MS Scan 1: 300.00-1000.00 ES+, Centroid, CV=Tune

    725.97

    727.94

    729.01Inte

    nsity

    0.0

    1.6x106

    3.2x106

    4.8x106

    6.4x106

    m/z722.40 723.80 725.20 726.60 728.00 729.40 730.80 732.20 733.60 735.00

    4.101 Peak 9 - SQ 1: MS Scan 1: 300.00-1000.00 ES+, Centroid, CV=Tune

    804.01

    805.99

    806.96

    Inte

    nsity

    0.0

    1.2x106

    2.4x106

    3.6x106

    4.8x106

    m/z802.80 803.70 804.60 805.50 806.40 807.30 808.20 809.10 810.00

    Retention Time UV Spectra MS ES+ Spectra MS ES- Spectra 1.920 Peak 1 - SQ 2: MS Scan 2: 300.00-1000.00 ES-, Centroid, CV=Tune

    806.0

    808.0

    809.0

    Inte

    nsity

    0.00

    2.50x106

    5.00x106

    7.50x106

    1.00x107

    m/z798.60 800.80 803.00 805.20 807.40 809.60 811.80 814.00 816.20 818.40

    2.730 Peak 2 - SQ 2: MS Scan 2: 300.00-1000.00 ES-, Centroid, CV=Tune

    787.9

    789.9

    790.9

    Inte

    nsity

    0.0

    6.0x105

    1.2x106

    1.8x106

    2.4x106

    m/z785.40 786.50 787.60 788.70 789.80 790.90 792.00 793.10 794.20 795.30

    4.103 Peak 3 - SQ 2: MS Scan 2: 300.00-1000.00 ES-, Centroid, CV=Tune

    848.0

    849.0

    850.0

    851.0Inte

    nsity

    0.0

    5.0x105

    1.0x106

    1.5x106

    2.0x106

    m/z846.00 847.00 848.00 849.00 850.00 851.00 852.00 853.00 854.00 855.00

    N/A

    RT λmax ES+ m/z ES- m/z

    1.94 分 234.8 nm 763.9 808.0

    RT λmax ES+ m/z ES- m/z

    2.75 分 236.0 nm 746.0 789.9

    RT λmax ES+ m/z ES- m/z

    3.62 分 237.2 nm 727.9 N/A

    RT λmax ES+ m/z ES- m/z

    4.12 分 238.4 nm 806.0 850.0

    表1 保持時間の表および、観測されたUVスペクトル、MS ES+スペクトル、MS ES-スペクトル。MSスペクトルプロファイルでは似通った同位体パターンが確認できました。UVスペクトルと組み合わせることで未知ピークが Ir(Fppy)3 の類縁化合物であると結論づけました。

  • UPC2/MSによる有機発光ダイオード材料の分析 5

    分離条件検討

    OLED デバイスに使用される他の主要な汎用的な材料との混合物を用いて、分析法を検討しました。混合

    試料は、Ir(Fppy)3リン光発光材料、ホール輸送材料(α-NHP)、ホスト材料(TCTA)、及び電子輸送材料 (Alq3)です。混合試料を分析した結果、このメソッドにおいて Ir[Fppy]3リン光発光材料と重なることなく 3つの成分

    すべてを分離して検出することができました。メソッド再現性評価のために注入回数 n=5で得られた結果を

    図 5に示します。

    1.01

    9

    1.36

    01.

    463

    1.61

    9

    1.93

    5

    2.74

    6

    3.62

    2

    4.12

    4

    AU

    0.00

    0.03

    0.06

    0.09

    0.12

    Mi t

    0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00

    Ir (Fppy )3

    N

    FF

    N

    F

    F

    Ir

    N

    F

    F

    N

    F

    F

    Ir

    N

    F

    F

    N

    F

    F

    Ir (Fppy )3Isomer

    N

    F

    Ir

    N

    F

    F

    N

    F

    F

    Ir (Fppy )3 –FIsomers

    N

    F

    Ir

    N

    F

    N

    F

    F

    Ir (Fppy

    Relatedunknown

    )3 -2FIr (Fppy )3 -F

    Minutes

    図4  Ir(Fppy)3リン光発光材料サンプルから見つかった未知不純物の推定構造

    1.0

    09

    1.4

    21

    1.9

    20

    2.0

    28

    2.4

    71

    AU

    0.000

    0.025

    0.050

    0.075

    0.100

    Minutes0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00

    Ir(Fppy)3Area = 0.4%Rt = 0.1%

    TCTAArea = 1.1%Rt = 0.1% Alq3

    Area = 1.1%Rt = 0.1%

    α-NHPArea = 0.4%Rt = 0.1%

    図5 メソッドの分離特性とシステム精度の確認。OLEDデバイスで汎用的に用いられる成分の混合物の重ね書きクロマトグラム(n=5)。保持時間とピーク面積の%RSDは、主要な各ピークの上に記しています。不純物のピークは Ir(Fppy)3の関連化合物です。

  • Waters および ACQUITY は Waters Corporationの登録商標です。UltraPerformance Convergence Chromatography、UPC2、ACQUITY UPC2、Empower および The Science of What’s Possible は Waters Corporationの商標です。その他すべての登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。

    ©2012 Waters Corporation. Printed in Japan. 2012年09月 20004305JA PDF

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    参考文献

    1. Bcc Research Market Report SMC069B, “Organic Light Emitting Diodes (OLEDs): Technologies and Global Markets” July 2011

    2. Sivasubramaniam et al, “Investigation of FIrpic in PhOLEDs via LC/MS Technique”, Cent. Eur. J. Chemistry, 7(4), (2009), 836-845

    3. Baranoff et al, “Sublimation Not an Innocent Technique: A Case of Bis-Cyclometalated Iridium Emoitter for OLED”, Inorg. Chem, 47, (2008), 6575-6577

    4. Kondakov, D., Lenhart, W., and Nichols, W., “Operational degradation of organic light-emitting diodes: Mechanism and identification of chemical products”, J. Appl. Physics, 101, 024512, (2007)

    結論

    Ir(Fppy)3リン光発光材料の純度分析および、長期安定性をモニ

    ターするためのアプローチとして 5 分間の UPC2/MS 迅速分析

    メソッドを開発しました。ACQUITY SQDによって提供される MSの

    データは、ACQUITY SQDによる MSデータから未知の不純物ピー

    クのうち 3つについての特性解析を容易に行うことができました。

    UPC2によるアプローチは、分析の際、100%有機溶媒を使用する

    既存の LC/MSに比べ、分析時間を1/10に短縮し、溶媒の消費量

    と廃棄量を大幅に削減します。UPC2の高い選択性と比類のない

    分離特性は化学材料製造に関わる研究者が青色発光体有機発光

    ダイオードをより理解し、コントロールするための助力になり、より

    良質の OLED製品の開発や知的財産の保護に結びつきます。