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Page 1: エクルーシス試薬エベロリムスの使用経験試薬共に低濃度試料でCV10%未満,中~高濃度試料で CV5%未満であった。直線性試験は両試薬とも、希釈が高

【はじめに】エベロリムスはシロリムスの誘導体で、

mTOR阻害剤としての作用を持つ免疫抑制剤・抗がん剤の1つである。今回、我々は電気化学発光免疫測定法(ECLIA)を測定原理とする「エクルーシス試薬エベロリムス」の院内導入に向けた基礎的検討を行った。

【対象と測定機器】対象はエベロリムス血中薬物量測定依

頼のあった EDTA-2K加全血 100検体を用いた。測定はメタノールを含む前処理液と検体を等量混和し、除蛋白処理

後上清を測定した。また、検体量や測定までの時間につい

ても検討した。試薬はエクルーシス試薬エベロリムス(ロシュ社)、測定機器は Cobas e411(ロシュ社)を用いた。【方法と結果】

(1) 同時再現性:同一管理試料 3濃度を 10回同時測定した。測定値の CVは 1.4~2.8%であった。(2) 日差再現性:管理試料を 28日間連続測定した。測定値の CVは 2.5~4.0%であった。(3) 前処理に使用する検体量:10検体について規定量(300 µL)を 200 µLに減量し規定量の測定値と比較した。それ

ぞれの検体測定値の変動率は-7%~+12%であったが、有意差は認めなかった。

(4) 前処理後測定まで時間:5検体について、前処理して測定カップに移した直後、5分後、15分後、30分後に測定した。またメタノールを含む前処理液の揮発による濃縮を防

ぐ目的で前処理後に蓋をした状態で 30分後に測定カップに移し測定した。直後の測定値に比べ 5~30分後の測定値は平均+3~+7%、蓋をした状態の 30分後の測定値は平均-1%変動したが、いずれも有意差は認めなかった。

【結語】エクルーシス試薬エベロリムスの同時再現性、日

差再現性は CV値がそれぞれ 1.4~2.8%、2.5~4.0%と良好であった。また、検体量は少なくとも 200 µLまで減量可能と考えられる。今回、前処理後の測定値に揮発による有意な

差は認められなかったが、蓋をした状態の 30分後の測定値はさらに変動が少なかった。すなわち、測定値の変動に及

ぼす影響をさらに軽減し精度を向上させることを目的とし

た場合、蓋をすることは有用であると考えられた。

〈連絡先:臨床検査技術部 0798-45-6304〉

エクルーシス試薬エベロリムスの使用経験

◎武本 浩実 1)、井川 由起 1)、佐藤 元哉 1)、石井 里佳 1)、狩野 春艶 1)、和田 恭直 1)、井垣 歩 1)、小柴賢洋 2)

兵庫医科大学病院 臨床検査技術部 1)、兵庫医科大学 臨床検査医学講座 2)

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【背景】現在当院で使用している血中 β-D-グルカン測定機器はトキシノメーターMT5500(和光純薬工業、以下トキシノメーター)である。2016年 8月に血中 β-D-グルカン測定機器 ESアナライザー(日水製薬)が新発売された。トキシノメーターと ESアナライザーは反応原理が同一であるが、検体前処理法、測定法、カットオフ値が異なる。今

回我々は ESアナライザーを検討する機会を得たので報告する。

【対象・方法】2017年 2月から 3月の間に β-D-グルカンのトキシノメーターによる測定(以下、T法)を実施した 31検体を用いて ESアナライザーによる測定(以下 E法)も実施し測定値の解析を行った。検討項目は、1)同時再現性、2)反応時間と測定作業量、3)測定値の相関、4)コスト比較とした。

【結果】1)同時再現性は E法で、約 45pg/mL検体測定でCV3.64%、約 430pg/mL検体測定で CV3.95%と良好であった。2)反応時間は T法で 90分、E法で 30分と E法が優れており、検体処理にかかる手間は変わらなかった。3)両法

の測定値の相関係数は 0.955となり、相関は良好であったが、E法の測定値は T法に比べ約 3倍程度の高値になる傾向を示した。陽性一致率は 76.5%、陰性一致率は 77.8%、全体一致率は 87.1%、不一致例で T法のみ陽性が 1件、E法のみ陽性が 3件であった。4)1検体あたりのコストは両法で同程度であった。

【考察】E法と T法はカットオフ値が異なるが、両法の陽性・陰性の全体一致率は高いため、両法のカットオフ値は

妥当であると思われる。反応時間は E法の方が短く、両法の測定作業量が同程度なため E法の方が結果が早く報告できる。現在、当院の T法による β-D-グルカン測定では、測定時間が長いために、結果の当日報告ができない場合があ

る。ES-アナライザーで測定することで、より多くの検体で当日報告が可能となる。よって、本法による β-D-グルカンの報告時間の短縮は、深在性真菌症が疑われる症例での迅

速な診断と治療法選択に貢献できるものと考える。

連絡先:0120-364-489 (内線 2227)

血中 β-D-グルカン測定機器 ESアナライザーの検討

◎東池 佳苗 1)、井尻 健太郎 1)、堂下 誠一 1)、東山 智宣 1)

淀川キリスト教病院 1)

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【はじめに】ACCURUN2 2700(協和メデックス社)は、HIV 1/2、HCV、HBs-Ag、TP、HTLV-I/Ⅱ、HBc、CMVの7項目に対応している感染症検査用のマルチコントロール精度管理試料であり新発売された。当院における免疫血清

検査の日々の精度管理は従来、水溶性試料であるシングル

コントロールを用いて行ってきた。今回、ACCURUN2 2700導入のための検討を実施したので報告する。【方法】精度管理試料に ACCURUN2 2700を使用し、従来のシングルコントロールとの成績を比較した。測定機器

は ARCHITECT アナライザー i2000SR(アボット社)を使用して、検査項目 HIV Ag/Ab、HCV、HBsAg、HTLVについて検討した。測定用試薬は、各項目のアボット社試薬を

使用した。日差再現性は導入前の 10日間、日内差も同時に測定した。精度管理試料は添付書に従い 15分室温に戻した後に測定に使用し、その後冷蔵保存した。

【結果】日差再現性は HIV Ag/Ab(Mean:4.77、SD:0.14、CV:2.92%)、HCV(Mean:4.01、SD:0.28、CV:7.06%)、HBs-Ag(Mean:0.10、SD:0.01、CV:7.53%)、

HTLV(Mean:3.58、SD:0.11、CV3.17%)、日内差は HIV Ag/Ab(Mean:0.17、SD:0.16)、HCV(Mean:0.34、SD:0.24)、HBs-Ag(Mean:0.02、SD:0.03)、HTLV(Mean:0.13、SD:0.09)でシングルコントロールと同程度の結果であった。

【考察】今回の検討で試料の日差再現性のデータより試料

の安定性は十分であった。試薬コスト面ではシングルコン

トロールとほぼ同等と考えられるが、測定前の分注操作の

軽減に伴い、コントロール測定に要する時間の短縮と操作

の簡略化により、検査の効率化につながった。これにより、

日常業務をより円滑に行えるようになった。

【結語】マルチコントロール ACCURUN2 2700を導入したことで、免疫血清検査の感染症項目コントロール測定で効

率が良い運用に変更できた。さらに、当院では今後の試薬

検討として HBc抗体試薬の導入を予定しており、ACCURUN2 2700を使用した精度管理の追加も検討の視野に入れている。

感染症検査用マルチコントロール ACCURUNの導入

◎井尻 健太郎 1)、東池 佳苗 1)、堂下 誠一 1)、東山 智宣 1)

淀川キリスト教病院 1)

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梅毒 RPRにおいて繁用されている定量試薬(自動化法)はカード法と値が一致しないとの報告がある。そこで今回、

2種類の定量試薬の基本性能,測定値が乖離する状況およびグロブリンクラスの反応性について検討した。

【測定試薬および測定機器】定量試薬に LASAYオートRPR(シマ研究所,以下(L))およびメディエース RPR(極東製薬,以下(メ))を用い、対照試薬に RPRテスト三光(エーディア,以下カード法)を用いた。

測定機器は日立 7180形自動分析装置を用いた。【検討内容および結果】併行精度および室内再現精度は両

試薬共に低濃度試料で CV10%未満,中~高濃度試料でCV5%未満であった。直線性試験は両試薬とも、希釈が高倍率となる低値域において理論値より高値となった。

カード法の希釈倍数と各定量試薬測定値の相関はなく、

(L)試薬で κ=0.56,(メ)試薬で κ=0.65であった。定量試薬間の相関は、(メ)試薬の測定範囲上限である 8.0 R.U.以下でR=0.96 ,y=1.0x-0.2と良好であったが、それ以上では測定値が乖離した。

カード法と 50%以上乖離した 9例の IgGおよび IgMを分取しそれぞれの梅毒脂質抗体を測定した。結果、(L)試薬はほぼ IgMとのみ反応し、(メ)試薬はカード法と同様に IgG,IgMいずれとも反応性を示した。【考察】2種の定量試薬は、直線性,相関試験いずれにおいても、検体の希釈により理論値や相関性が明らかに失わ

れ反応性が変化すると推察された。(L)試薬は IgM抗体とのみ反応するため、感染初期の診断,治療効果の判定に有用

であるが、感染後期の患者で陰性化する可能性がある。

【結語】両定量試薬の基本性能は概ね良好であった。各測

定法,各試薬で測定値が乖離する原因はグロブリンクラス

の反応性の違いおよび検体希釈による反応性変化であり、

各々の試薬の特性を認識する必要がある。          

連絡先:0743-63-7811

2種類の梅毒脂質抗体定量試薬の基本的性能と特性

◎森山 寛之 1)、藤川 麻由美 2)、伊東 裕之 2)、嶋田 昌司 2)、松尾 収二 2)

天理医療大学 1)、公益財団法人 天理よろづ相談所病院 2)

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【目的】Pro-GRPは、脳腸ホルモンの一種であるガストリン放出ペプチドの前駆体である。小細胞肺癌で高頻度かつ

大量に産生されることから同癌の腫瘍マーカーとして非常

に有用である。今回、トロンビンの影響を回避できる電気

化学発光免疫測定法(ECLIA法)を原理とするエクルーシス試薬 Pro-GRPの検討を行い若干の知見を得たので報告する。【試薬・機器】測定試薬:エクルーシス試薬 Pro-GRP、測定機器:Cobas8000(ロシュ社製)、対照試薬:アーキテクト・ Pro-GRP、対照機器:ARCHITECT(アボット社製)【対象】当センターにおいて Pro-GRPの依頼があった患者検体、当センター職員 3名より採取した検体【結果】

1)同時再現性:専用コントロールⅠ、Ⅱを用いて連続20回測定した結果、平均値±1S.D.pg/mLおよび C.V.%は、Ⅰは 58.5±0.65pg/mL、1.11%、Ⅱは 830.3±5.14pg/mL、0.62%であった。2)日差再現性:専用コントロールⅠ、Ⅱを用いて 20日間測定した結果、平均値±1S.D.pg/mLおよび C.V.%は、Ⅰは

57.2±1.08pg/mL、1.89%、Ⅱは 813±23.3pg/mL、2.86%であった。

3)経時的変化を検討するために 3名の職員から 3種類の採血管に採取した検体(血清 2種、血漿)を遠心分離直後、続いて室温、冷蔵庫にて保存、1、2、5、24時間後に 2方法にて測定した。検討試薬では採取管、保存方法、保存時間

で差はほとんどみられなかったが、対照試薬では大きな差

がみられた。

4)相関:検討試薬の血清と血漿の相関は、y=1.10x-4.27,r=0.995(n=19)、対照試薬の血清と血漿の相関は、

y=0.66x-10.6,r=0.995(n=19)【まとめ】検討試薬の同時再現性、日差再現性は良好であ

った。血清、血漿、保存条件の違いによる経時的変化、

血清、血漿の相関においても対照法と比較した結果、血清

と血漿の差はほとんどみられなかった事から、トロンビン

の影響が回避できていると考えられた。

連絡先:06-6692-1201(内線 5251)

ECLIA法による Pro-GRPの検討

血清と血漿検体の比較を中心に

◎穴吹 大耀 1)、入汐 弘美 1)、大窪 元子 1)、谷 恵理子 1)、正木 裕美子 1)、越智 楓 1)、田路 夕海 1)、岩田 和友子 1)

地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター 1)

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ガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP)は、肺小細胞癌に特異性を示すマーカーであり、診断に広く用いられて

いる。今回、ProGRPが<3.0pg/mlと極低値を示した症例に遭遇し、その原因検索を行ったので報告する。

【症例】胸部X線にて異常陰影を指摘され当院受診。右肺

癌疑いで、血液検査実施され ProGRP<3.0pg/ml(カットオフ値<81pg/ml)、2ヶ月後も<3.0pg/mlであった。血清蛋白分画に異常は認めなかった。

【検討内容】(1)他法との比較:本法は ECLIA法で、測定機器及び試薬にコバス 8000e602モジュール、エクルーシス試薬 ProGRP(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いた。他法には CLIA法を用いた。(2)添加回収:①患者検体と ProGRP校正液(143.0pg/ml)を 1対 1の割合で混合し、30分室温静置後 ProGRP値を測定した。対照には免疫グロブリンが基準範囲内であった患者血清(ProGRP 37.7pg/ml)を用いた。②患者の IgG分画及び IgG除去分画についても①と同様の方法で ProGRP値を測定した。その際、対照には①と同様の患者血清(ProGRP 56.5pg/ml)を用いた。なお、

IgG分画分取にはアフィニティクロマトグラフィー(MabTrapKit)を用いた。【結果および考察】(1)他法との比較:ECLIA法でProGRP値<3.0pg/ml、CLIA法は 15.7pg/mlであった。(2)回収率:回収率は、患者血清で 4%、患者 IgG分画で4%、及び患者 IgG除去分画で 88%に対し、対照血清 101%、対照 IgG分画 99%及び、対照 IgG除去分画 85%であった。対照と比し患者血清及び患者 IgG分画での回収率は低かった。また、患者 IgG除去分画での回収率は 88%で ProGRP 48.5pg/mlとなり、これに対して、CLIA法 15.7pg/mlと低値であった。以上より、患者 IgGが ECLIA法のみならずCLIA法においても測定系に干渉し、偽低値となったと思われた。

【結語】ECLIA法において ProGRP<3.0pg/mlの症例を経験し、IgG分取の結果、患者血清中 IgGが測定に影響を及ぼしていたと思われた。

  連絡先 0743-63-5611(内線 7435)

ガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP)が極低値を示した一症例

◎佐藤 京子 1)、畑中 徳子 2)、松村 充子 1)、伊東 裕之 1)、嶋田 昌司 1)、松尾 収二 1)

公益財団法人 天理よろづ相談所病院 1)、学校法人 天理よろづ相談所学園 天理医療大学 2)

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【はじめに】

好中球ゼラチナーゼ結合性リポカイン(NGAL)は、リポカインファミリーに属する分子量 25kDaのポリペプチドである。腎臓が障害されると遠位尿細管で NGALの産生が増加し、尿中の NGALが早期に上昇するため、急性腎障害(AKI)早期診断の尿中バイオマーカーとして期待されている。

今回、化学発光免疫測定法(CLIA)を測定原理とする「アーキテクト®U-NGAL」試薬について、基礎的検討を行ったので、以下に報告する。

【方法・対象】

測定機器は ARCHITECT i2000SR(アボット社製)を、測定試薬はアーキテクト®U-NGAL(アボット社製)を使用した。【結果】

1)同時再現性:専用コントロール L、M、Hを 20回測定した結果、平均値±1S.D.及び C.V.%は、Lは20±1.18ng/mL、5.90%、Mは 193.65±6.37ng/mL、3.29%、Hは 1206.44±27.63ng/mL、2.29%であった。2)日差再現性:専用コントロール L、M、Hを 20回測定し

た結果、平均値±1S.D.及び C.V.%は、Lは21.65±1.18ng/mL、5.43%、Mは 199.2±7.75ng/mL、3.89%、Hは 1217.16±28.28ng/mL、2.32%であった。3)定量限界:段階希釈した低濃度試料を 10回測定して求めた結果、C.V.10%点の定量限界は 1.40ng/mLであった。4)希釈直線性:2濃度の高濃度試料を 10段階希釈し 2重測定した結果、約 1200ng/mLまで良好な希釈直線性が認められた。

5)検体の安定性:3濃度の検体を用いて、室温保存と冷蔵保存による影響を評価した結果、7日間まで安定していた。6)共存物質の影響:赤血球を溶血させ添加・調整した尿を段階希釈した結果、ヘモグロビンによる明らかな影響は認

められなかった。

【まとめ】

今回、「アーキテクト®U-NGAL」試薬による基礎的検討は良好な結果が得られた。

大阪急性期・総合医療センター tel.06-6692-1201(内線 5251)

CLIA法による U-NGALの基礎的検討

◎田路 夕海 1)、入汐 弘美 1)、大窪 元子 1)、正木 裕美子 1)、穴吹 大耀 1)、越智 楓 1)、春名 希依子 1)、岩田 和友子 1)

地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター 1)

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【はじめに】好中球ゼラチナーゼ結合性リポカイン(NGAL)は活性化好中球顆粒に存在するほか、全身の様々なヒト組織に存在

する。腎障害時にはヘレンループ上行脚および集合管へ発現が誘

導され、CKDでも上昇するが AKIでは強い発現を示す。今回平成 29年 2月より新規保険収載項目となった尿中の好中球ゼラチナーゼ結合性リポカイン(U-NGAL)の測定試薬を検討する機会を得たので報告する。

【検討機器・試薬・測定条件】ARCHITECTi1000SR(Abbott社)U-NGAL・アボット(Abbott社)測定条件はメーカー指定のパラメータを用いて行った。

【検討内容】性能特性の妥当性の確認のため、精密度の確

認にメーカー指定のコントロール物質を用い、1)併行精度 2)中間精度の検証を行い、測定範囲の確認にメーカー指定のキャリブレーターを用

い 3)定量限界並びに 4)直線性の検証を行った。尚、結果の評価には日本臨床化学会のバリデーション算出 PGを用いた。5)また、遠心条件の違いによるデータ差の検証のため、一般的な血清遠心条件である 1500G/5minと尿沈渣時に用いられる 500G/5minで比較を行った。

【結果】1)併行精度:基準値下限域で CV1.33% 異常濃度域で 1.82%であった。2)中間精度:3.20%であった。3)定量限界:CV10%点で 1.63ng/mLであった。4)直線性:1500ng/mLまで確認できた。5)1500G/5minの条件を Y軸とした場合 y=0.9896x+0.269であった。【考察】今回の検討結果、測定試薬の添付文書に記載され

た性能を上回り、測定範囲では CV10%において 1.63ng/mLであること、直線性は 1500ng/mLまで確認できたことから添付文書記載の測定範囲である 10~1500ng/mLにおいては定量的で精度のよい検査が行えるものと思われる。ま

た、遠心条件における差は認めらなかった。以上より、U-NGAL・アボットは一般的な条件で検査が行うことができ、緊急性の高い AKIにおいて夜間・休日問わず測定できると言える。

済生会泉尾病院 検査科 06-6552-7533

尿中の好中球ゼラチナーゼ結合性リポカイン測定試薬 U-NGAL・アボットの基礎的検討

◎川畑 久美 1)、今田 久美子 1)、縄田 俊 2)

社会福祉法人恩賜財団済生会 大阪府済生会 泉尾病院 1)、株式会社保健科学 西日本 2)

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【目的】可溶性インターロイキン 2受容体(以下 sIL-2R)は、

悪性リンパ腫の補助的診断や経過観察、膠原病などの炎症

マーカーとして多くの診療科で測定されている検査である。

今回、sIL-2Rの診療前報告という臨床医および患者サービ

スに応えるべく、院内導入に向けて「ステイシア CLEIA

IL-2R」の基礎的検討を行ったので報告する。【方法】ステイシア CLEIA IL-2Rを STACIA(LSIメディエ

ンス)で測定した。委託検査会社のデタミナー CL IL-2Rと

CL-JACK NX(協和メディックス)を比較対照とした。

【結果】①同時再現性(n=10):2濃度の血漿検体(383U/ml、1,756U/ml)の変動係数(以下 CV)は各々3.21%、5.02%であっ

た。②日差再現性:2濃度の精度管理試料で 20日間測定を

行った。CVは各々4.3%、5.5%であった。③希釈直線性:

100,000U/ml以上まで良好な直線性が認められた。④キャ

リーオーバー:高値検体とブランク検体を交互に測定した

結果、ブランク検体に影響は認められなかった。⑤共存物

質の影響:低値濃度(450U/ml)と高値濃度(1,599U/ml)の患者

プール血清で BIL-C 39.6mg/dl、BIL-F 38.2mg/dl、溶血ヘモ

グロビン 850mg/dl、乳び 2,800FTUまではそれぞれ影響が

みられなかった。⑥検体安定性:冷蔵(5℃)で血漿を 1か月

間、血清を 2週間まで保存し、それぞれ安定した測定結果

が得られた。⑦血清と血漿(EDTA2K)の相関(n=54):回帰式

は y=0.9347x+50.23、相関係数(以下 r)は 0.999であった。⑧デタミナー CLとの相関(n=100):回帰式は y=0.985x+

145.02、rは 0.995であった。⑨最小検出感度:0U/mlの+

2SD値と 15U/mlの-2SD値は重複しなかった。

【結論】今回、ステイシア CLEIA IL-2Rの基礎的検討を行

ったところ、すべての項目で良好な結果が得られた。院内

導入に伴う診療前検査が可能となり、臨床に貢献できると

思われる。    連絡先:06-6387-3311(内線:3201)

可溶性インターロイキン 2受容体測定試薬の院内導入にむけた基礎的検討

◎株元 麻衣 1)、吉川 慎一 1)、米田 伊作 1)

市立吹田市民病院 1)

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 インターロイキン 2受容体(以下 IL-2R)は抗原刺激により活性化された T及び B細胞表面に発現する蛋白である。IL-2Rは α鎖(55kDa)、β鎖(75kDa)、γ鎖(64kDa)の3つのポリペプチド鎖からなり、過度にT細胞が活性化された状態や、T細胞性白血病の一部では可溶性 IL-2R(以下sIL-2R)が血中に検出されることがある。ATLや非ホジキンリンパ腫の病態や治療効果の評価などに有用な検査である。

【材料及び方法】測定機器は JCA-BM6050(日本電子)。検討試薬は積水メディカルのナノピア IL-2R(以下、検討法)を用いて基礎性能試験及び、シーメンス・イムライズ

IL-2RⅡ(以下、現行法)との相関性をみた。【結果及び考察】①同時再現性(n=20):IL-2RコントロールⅠは平均 515.9U/mLで CV1.70%、IL-2RコントロールⅡは平均 1995.2U/mLで CV1.00%であった。②直線性:高濃度試料(約 11000U/mL)を生理食塩水で希釈し、約11000U/mLまで認めた。③最小検出感度:低濃度試料を生理食塩水で希釈し 2.6SD法(n=10)では 47.9U/mLであり、現行法と同等であった。④プロゾーンの確認:高濃度試料

(1/1=約 120,000 U/mL)を生理食塩水で希釈していき、プロゾーン現象の確認を行った。1/1倍で 22,000U/mLであり、フック現象は認められなかった。⑤相関性:患者試料(n=284)を測定し、依頼科を集計した。現行法を基準としたとき、回帰式は y=0.90x+128.52、r=0.975となり概ね一致した値が得られたが、検討法と現行法で結果が 20%以上乖離した試料が 7検体あった。全体の依頼科は血液内科、次いで小児科、神経内科の順であったが、依頼科別乖離検体

出現頻度は皮膚科が 25%と高く、皮膚科領域疾患において現行法との乖離する要因が存在すると考えられた為、追加

検証を行った。詳細は当日報告する。

【まとめ】ナノピア IL-2Rの基礎性能は良好であり、現行法と概ね一致した値が得られたことにより日常検査法とし

て適応可能であると考えられた。また測定時間が短縮され

たことで、診察前報告が可能となり治療効果の判定や治療

方針の変更が可能と思われる。

連絡先 073-447-2300(内線 2389)

sIL-2R測定試薬「ナノピア IL-2R」の基礎的検討及び相関乖離検体についての検証

◎鈴木 誠也 1)、和田 哲 1)、磯貝 好美 1)、堀端 伸行 1)、大石 千早 1)、大石 博晃 1)、赤水 尚史 2)

公立大学法人 和歌山県立医科大学附属病院 1)、公立大学法人 和歌山県立医科大学附属病院 内科学 第一講座 2)

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Page 11: エクルーシス試薬エベロリムスの使用経験試薬共に低濃度試料でCV10%未満,中~高濃度試料で CV5%未満であった。直線性試験は両試薬とも、希釈が高

【はじめに】

PIVKA-Ⅱは肝細胞癌の代表的な腫瘍マーカーである。今回、ステイシア CLEIA PIVKA-Ⅱエーザイの基礎性能評価を行う機会を得たので報告する。

【方法】

当院検査室に PIVKA-Ⅱ測定依頼のあった患者検体を対象とした。測定機器・試薬は STACIA・ステイシア CLEIA PIVKA-Ⅱエーザイを使用した。対照機器・試薬としてA法:ARCHITECT i2000SR・ ARCHITECT PIVKA-Ⅱ、B法:ピコルミ・ピコルミ PIVKA-Ⅱを使用した。【検討内容】

1)同時再現性:2濃度のコントロール検体を 10回測定したときの CV(%)は 2.36、2.49であった。2)日差再現性:2濃度のコントロール検体を 10日間測定したときのCV(%)は 3.00、3.16であった。3)直線性:低濃度、中濃度、高濃度の試料を各 5段階希釈し測定した結果、75000mAU/mLまで良好な直線性が得られた。4)検出限界:0濃度標準液および低値検体の 10回測定から求めた検

出限界は 0.25mAU/mLであった。5)干渉物質の影響:干渉チェック・ Aプラスを用いて評価した結果、遊離型ビリルビン F、抱合型ビリルビン C、ヘモグロビン、乳びについて測定値への影響は確認されなかった。6)相関:A法との相関は y=0.993x+0.449、r=0.98、B法との相関はy=0.941x+0.765、r=0.97であった。7)乖離検体の確認:相関性試験において本試薬による測定値のみが乖離した 1例について、B法改良試薬ピコルミ PIVKA-ⅡMONOで測定したところ、本試薬の測定値と近似した値が得られた。

【考察】

本試薬の基礎性能は良好であり、他法との相関も良好であ

った。乖離検体については対照測定法における異好抗体が

原因と考えられる。

【結語】

ステイシア CLEIA PIVKA-Ⅱエーザイは日常検査に充分対応できる性能を有する。

連絡先 市立敦賀病院検査室 (0770)22-3611 内線 4240

ステイシア CLEIA PIVKA-Ⅱエーザイの基礎的検討

◎小野 早織 1)、東 正浩 1)、窪田 映里子 1)、高城 茂弘 1)、川端 しのぶ 1)、川端 直樹 1)

市立敦賀病院 1)

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