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02 2016.10

ジョウロウホトトギス

京都府立植物園長な が

澤さ わ

淳じゅん

一い ち

ⅠA類(CR):ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いものⅠB類(EN):ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険        性が高いものⅡ類(VU):絶滅の危険が増大している種

和名

学名

科・属名

開花期

分布

危惧種ランク

ジョウロウホトトギス

Tricyrtis macrantha

ユリ科ホトトギス属

10月上旬

四国

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

稀少な個性派セレクション

 

高知県の石灰岩地帯に分布し、トサジョウロウホトトギス

とも呼ばれる多年草です。1885年に※

牧まき

野の

富とみ

太た

郎ろう

博士が郷

里近くの横倉山で採取した標本を、ロシアの植物学者マキシ

モヴィチに送り、1888年に彼によって新種として記載さ

れました。3カ所の自生地が知られ、いずれでも個体数が減

る中、特に横倉山では著しく減少しています。三つの産地は

直線距離で10㎞と離れていませんが遺伝的な隔離が見られ、

保全上は別々の個体群として認識する必要があるそうです。

ホトトギス属は東南アジアに約20種が自生し、日本には13種

とその変種が数種自生します。多くが日本にしかない固有種

で、7種と2変種が絶滅危惧植物に指定されています。

 

湿り気の多い崖に生え、茎が下垂し、釣鐘型で半開する黄

色の花を下向きにつける一群をジョウロウホトトギス類と呼

びます。本種を含めて3種と1変種が本州や四国に点在して、

いずれも絶滅危惧植物に指定されています。紀伊半島にはキ

イジョウロウホトトギスが自生し、この類の中では最も広範

囲に最も多くの個体が自生し、大型で丈夫です。ジョウロウ

ホトトギスとキイジョウロウホトトギスは、茎に対する葉の

つき方と花被片の内側にある斑点をていねいに観察すること

で、比較的容易に判別できます。

水の流れない小さな谷の斜面で、露出する石灰岩にへばりつくように点々と自生していた。その標高差は約 200 ⅿ。それより下部にある堆たい

積せき

岩の地層には自生がなかった。

岩場にひっそりと咲く日本の固有種

ジョウロウホトトギスは、花被片の内部にある茶褐色の斑点がまばらに先端までまんべんなくある。

キイジョウロウホトトギスは、花被片の内部にある茶褐色の斑点は密だが、先端までは届かず覆輪状に見える。

※植物学者(1862〜1957)。現在の高知県高岡郡佐川町の出身。生涯に約40万枚の標本を収集、1,500 種類以上の植物 を命名し、日本植物分類学の基礎を築いた第一人者。

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