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ガバナンス論 ( 赤尾 )③ インターネットガバ ナンス

Gov Akao2009 03

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ガバナンス論 ( 赤尾)③

インターネットガバナンス

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本日のメニュー

通信と標準化

インターネットの管理組織

インターネット・ガバナンスの問題点

CGM のガバナンス

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国連作業部会の定義(2005.6)「インターネットガバナンスとは政府や民間や市民社会などそれぞれの役割により、共有原則・基準・規則・意思決定手順・インターネットの進化と使用のための綱領を開発し適用することである」

民間だけではない。「情報基盤」となった限りは,政府も関与せざるをえない。しかし, NPO ・ NGO ・専門家組織の関与も不可欠

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インターネット・ガバナンスの本質

Organizing Without Organizations管理組織なしに管理する

自発的で無償の管理参加「人のためではなく自分のため」だが,回り回って人のためになる ( 互酬性 )

影響力の高まりにともない,自主管理から機関規制の気運 ?

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通信と

標準化

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通信分野の標準化 ( 政府主導 )国際電気通信 ( 無線通信 ) 主管庁会議CCITT

CCIR

標準化内容は ISO( 国際標準化機関 ) に登録

国内では,主管庁 ( 日本では総

務省 ) が,標準に準拠したことを認

定する端末認定制度

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相互接続・運用性の確保

A国 B国

国際通信を前提にすると,世界で同じ規格を採用する必要

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異機種間通信方法

OSI(open system interconnection) が 80 年代末,専門家集団の協議を経て,プロトコルが ISO( 国際標準化機構 ) で策定され,デジュア・スタンダードに

電子メールも X.400 MHS(Message Handling System) として標準化。日本では JUST PC 規格

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OSI 参照モデル

より緩やかな規格

汎用性高い規格

工夫の余地ある規格TCP/IPが事実上の標準に

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NIH 症候群

Not Invented Here Syndrome

自前主義症候群

「他人が考えたことを実施するだけではやる気がおこらない」

OSI ・ MHS =ごく一部の専門家が集まり,閉鎖的な会議で利害調整して作られた標準規格。自分があずかりしらないところで決められた標準規格

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TCP/IP の標準化

RFC(Request for Comments :コメントのお願い) =誰もが参加できる開かれた意思決定。スピーディ。技術の急速な進歩に即応できる。知的所有権も共有 ( オープンソースの原点 )

ISO の標準化作業→選出された限られた専門家集団による閉ざされた意思決定。所属企業・団体の思惑もからみ,遅延がちで足して二で割る標準化

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RFC の内実

「誰もが」は潜在的可能性の話であり,「誰もが」現実にコメントできるわけではなく,専門家集団の約束事

そもそも素人にはコメントは不可能。その標準化に興味関心があり,一定レベルの技術を有し,草案に対して的確な意見を( 英語で ) 記述できること

代表制をとる標準化作業へのアンチ

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インターネット

の管理組織

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ネットワーク組織の変遷

1979 年,防衛高等研究計画局(ARPA) に ICCB(Internet Configuration Control Board)

1984 年, IAB(Internet Advisory Board) に改称。 86年,さらに Internet Activities Board に改称

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IETF

1986 年、アメリカ政府はインターネット標準を開発・推進するため Internet Engineering Task Force(IETF) を組織

当初, IETF は研究者によって組織されていたが,その年の終わりには所属に関係なく人員が集められた。 IETF 内での意思の疎通はメールにて行われた

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ジョン = ポステル

南カリフォルニア大学 (USC) 情報科学研究所 (ISI) のコンピュータネットワーク部の部長

ネット草創期から 98 年の死まで,IP アドレスの配分任務の監督, DNS ルートサーバの管理を担当。

ポステルの死後, IANA(Internet Assigned Numbers Authority) に移管

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RIR

地域インターネットレジストリAmerican Registry for Internet Numbers (ARIN)

RIPE Network Coordination Centre (RIPE NCC)

Asia-Pacific Network Information Centre (APNIC)

Latin American and Caribbean Internet Address Registry

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インターネットと政治

IAHC

International AdHoc Committee,1996

.com のドメイン名の爆発的増加に伴う新たなトップレベルドメイン名( TLD )の創設

ドメイン名の登録商標に伴うトラブル

.com , .org , .net の三つの TLD の登録を担当していた Network Solutions Inc. (当時)の目を見張る収益の伸びに対する批判

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中央集権的な決定

1997 年初め, gTLD-MoU と呼ばれる文書を含む一連の政策提言

1998 年には新しい TLD を創設する計画

アメリカ政府が電子商取引で, Green Paper(98.1) , White Paper(98.6)

IAHC は破綻し, ICANN に舞台を移して議論の仕切り直し

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ICANN

The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers

カリフォルニア州認可の非営利団体

理事は「指名委員会」が選任

新 TLD の創設 (00.11) ,ドメイン名登録事業の独占に対する対策( レジストリ・レジストラ制の導入 ) 、商標権とドメイン名の対立の問題 (UDRP の導入 )

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現在の ICANN の組織

分野別ドメイン名支持組織( GNSO )

国コードドメイン名支持組織( ccNSO )

IP アドレス支持組織( ASO )

いくつかの諮問委員会が援助する体制

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ISOC

1992 年, Internet Society

世界中の利用者のためインターネットの開かれた開発・進化・利用を保証

企業・団体・政府・大学・個人

会員資格はオープン

IAB , IETF を包含

2002 年以降は,企業メンバーの発言権が高まる

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標準化作業

主な標準化活動は IETF と インターネットアーキテクチャ委員会(IAB) を通して行われる

ISOC は .ORG トップレベルドメインを運用している Public Interest Registry の親会社となっている

ISOC のオフィスはバージニア州とジュネーヴにある

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日本インターネット協会

財団法人。 Internet Association Japan

1993 年設立。電子ネットワーク協議会( 1992 年創設)と合併し, 2001 年から現法人に

インターネット・ホットラインセンター,フィルタリングソフトの開発なども手がける

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インターネット・

ガバナンスの

問題点

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反アメリカの風潮

アメリカ合衆国商務省がインターネットの管理者という地位を有してきた

ICANN の運営, DNS のルートサーバレコードの管理権などはアメリカ政府がイニシアチブを握っている

「アメリカによる実効的なインターネット支配は継続している」との批判が潜在している

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民間団体でいいのか ?

世界の情報基盤になったインターネットを,一民間団体 (ICANN) に管理を任せることは妥当なのか ?

中国や発展途上国を中心に、インターネットの管理を国際電気通信連合( ITU )や国際連合に新たに専門組織を設けて委譲すべきという意見もある

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日本の立場

民間主導を支持しており現状維持派

ただし, IAJapan は「財団法人」であり,監督官庁である「総務省」の影響力がきわめて強い

例えば「有害コンテンツ・ブロッキングソフト」を開発する場合,IAJapan が「純然たる民間団体」か否かは疑問が残る

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Internet Governance Forum インターネットガバナンスの方針・原則について国際的に広く議論を行うため, Internet Governance Forum(IGF) を国連が設立

ICANN 中心の運営か, ITU への移管か,新たな管理組織の設立かという根本問題を含め,息が長い議論が予定されている

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CGM の

ガバナンス Co ns ume r Ge ne ra te d Me d ia

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ブログ

コメント・トラックバックでスパムが猖獗を極める。システムでブロックしても,それをかいくぐって侵入してくる

読者数が増えれば「粘着厨」と呼ばれる批判的コメンテイターが登場する。ブログ炎上が起これば,ネットイナゴが集まる

コメント欄を閉じれば「チキン」と呼ばれる

アナーキズムとの付き合いは根気

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シスオペ

システムオペレーターの略(sysop)

管理人。通常の利用者には制限された一部の操作を行う権限を持った利用者グループ

コメント内容の審議 / 削除,利用者に対する勧告や調停,投稿ブロックの設定 / 解除,不服申請への対応など広範囲

しかし,ほとんどがボランティア

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Wikipedia

自薦・他薦の立候補方式

アカウント作成後の活動実績( 編集回数 ) などをもとに,管理人の信任投票で依嘱

ページ保護 / 解除などに際し利用者と衝突した時,冷静・慎重に議論できるかどうか

現在の管理者は 65 名

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Wikipedia の利用者

IP 利用者 ログインせずに編集などの操作を行う利用者

接続に用いた IP アドレスで識別。履歴やログにだれでも見られる状態で IP アドレスが表示

登録利用者 アカウントを作成して編集する利用者

操作履歴は利用者名で記録される

自動承認された利用者

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Google 八分

個人・法人にとって都合が悪い ( 問題を含む ) ページへのリンクは, Google に申請すれば,リンクから外す措置をとる

検索語を入れても,該当するはずのページが存在しない「 Google 八分」

申請主義であり,法人としてのGoogle がどんな基準で「八分」を決定しているのか,プロセスがきわめて不透明

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mixi のコミュニティ

最初は「コミュニティを作った人」=シスオペ ( 自発的に手を挙げた人 )

シスオペが放置したコミュニティを乗っ取る事案があり,副管理人制度ができた ( 依嘱された / 自発的に手を挙げた )

2 ちゃんねるの「削除隊」も同様。「自警団」として巡回し,多様な「問題書き込み」を削除する ( 「あぼーん」と表示 )

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出会い系サイト規制法

2009 年 2 月施行

サイト運営者は届出

18 歳未満の児童を性

行為目的で誘い出す書

き込みなどを禁じ,罰則化

mixi など SNS も対象に。 18 歳未満の会員は「コミュニティ」から除外など

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通信と放送の総合的な法体系不特定多数が大規模に集う「 CGM 」などに,放送と同等の内容規制を企図

総務省が直接に監理・指導するわけではなく,業界団体などの自主規制に委ねるのが基本

しかし「届出」「認可」など総務省が許認可権を掌握し,最終的には行政処分ができる権限を留保

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基本的対立

① アナーキズム原理 ネット上での「表現行為」は過剰に規制すべきではない。混沌状態にみえるのが活力の源泉

アラシ,スパム,権利侵害が頻発して,社会的なノイズ ( 雑音 ) が増幅する危険性

② コントロール原理 当事者・利害関係者などが自分たちの立場を有利にするために,管理に過剰に関与する

管理者が「超越的権限」を行使し,ネット内に強制的に「秩序」を持ち込むべく奮闘する

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二つの原理の永遠の抗争

企業でも,自社の CGM の全リソースをすべてコントロール下に置くのは不可能

自発・自主的に管理に参加する人も,どの原理をベースとするかはまちまち

どこかをコントロールしても,どこかにアナーキズムのパラダイスはできる

アナーキズムによるマイナス効果は,ネット社会で不可欠なコストなのか ?

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ご静聴多謝。小リポート①

mixi , 2 ちゃんねる, twitter , Wikipedia , OKWave,ブログなど対象は何でもかまいませんが, CGM で起きている二つの原理の対立のなかで,今後,管理者あるいは利用者は,どんな管理 ( 利用 ) 法をしていくべきですか ? できれば,具体的な事例に則して考えてください。システム的な改良,利用規則の改訂など

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小リポート②

分量 :400 字程度

締切 :8 月 4 日 ( 火 )23:59:59

方法 : 各自のブログにエントリブログ演習の終了は 7 月 31 日( 金 )23:59:59 ですが,この小リポートと後述の「ブログ演習最終課題」については,それぞれ適用除外とします

繰り返しますが,小リポート ( メディアスタディーズ演習含む ) に関するエントリは当該科目での評価にのみ用い,ブログ演習にカウントしません

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「ガバナンス論」試験

7 月 28 日 ( 火 )78 限(14:25-15:55)

情 24 教室

持ち込みはいっさい不可

試験範囲は 3 人の教員が授業で講述したこと (+α =その応用 )

やむをえない理由で欠席した場合は, 3 人の誰か ( 第一選択は吉田教員) に理由書を添えて申し出ること

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試験対策をコソッと

赤尾は基本的にそんなに進化する教員ではありません

授業内容は 3 回に圧縮しましたが,ほぼ前年度と同じ内容です

論述だけでなく,得点が稼げる短答式の設問も用意します

ということは……